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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】球状活性炭及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/20 20060101AFI20241115BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241115BHJP
   B01J 20/32 20060101ALI20241115BHJP
   C01B 32/354 20170101ALI20241115BHJP
   A24D 3/16 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B01J20/20 E
B01J20/28 Z
B01J20/32 Z
C01B32/354
A24D3/16
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020052080
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021146325
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504318739
【氏名又は名称】伯方化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 邦寿
(72)【発明者】
【氏名】関 建司
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/019013(WO,A1)
【文献】特開2007-111692(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129409(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/20 - 20/28
B01J 20/32
C01B 32/354
A24D 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭及びガラス転移温度が30℃以上である有機バインダーを含む活性炭組成物の造粒物からなり、MS硬度が70.0%以上である、球状活性炭。
【請求項2】
平均粒子径が0.3mm以上0.6mm未満である、請求項1に記載の球状活性炭。
【請求項3】
真球度が1.10以下である、請求項1又は2に記載の球状活性炭。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の球状活性炭の製造方法であって、
活性炭及びガラス転移温度が30℃以上である有機バインダーを含む活性炭組成物を用いて造粒することによって前記球状活性炭を得る工程
を備える、製造方法。
【請求項5】
造粒温度が0℃以上30℃未満である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記有機バインダーの平均粒子径が10~300nmである、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記有機バインダーの粘度が1~20mPa/sである、請求項4~6のいずれか1項に記の載製造方法。
【請求項8】
前記造粒工程が、前記活性炭組成物に対して水を噴霧し、球状活性炭の形状に成形した後に熱処理する工程である、請求項4~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載の球状活性炭を用いたキャビンフィルター。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載の球状活性炭を用いたタバコフィルター。
【請求項11】
請求項10に記載のタバコフィルターを備える、タバコ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状活性炭及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工業において、活性炭は分離プロセス、精製、触媒、溶剤回収への利用、地球環境汚染問題と関連する排水処理、公害対策、医療用途等と多岐にわたって利用されている。
【0003】
小粒径の活性炭は、繊維シート、布等の層間に挿入してフィルターとして多用される。このとき、通気性の確保が重要となり、圧力損失を低下でき、活性炭自体の耐摩耗性がよく、微粉の発生が少ないものが好まれる。
【0004】
このような場合、使用する活性炭の形状は、破砕炭状よりも球状であるほうが、使用過程で微粉が少なくなる。このことから、小粒径で真球度の小さい(真球に近い)活性炭が求められている。
【0005】
例えば、特許文献1及び2には、球状活性炭及びその製造方法が提案されている。特許1によれば、1.5mm以上、4.0mm以下の球状活性炭を提供しており、特許文献2では平均粒子径0.6mm~10mmの範囲での球状活性炭に関するものである。特許文献3では、平均粒子径0.1mm~1.5mmの球状活性炭を入手できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/116947号
【文献】特開2006-083052号公報
【文献】特開2005-119947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法では、アスペクト比が0.7以上の活性炭が得られている。しかしながら、得られる活性炭は、平均粒子径が1.5mm以上、4.0mm以下である活性炭であり、さらなる小粒径化が求められる。また、特許文献2においても、得られる活性炭は0.6~10mmであり、さらなる小粒径化が求められる。
【0008】
さらに、特許文献3の方法では、石油タール、石炭タール、エチレンボトム油等の重質炭化水素油を原料として温和なプロセスにより得られた等方性の多孔性球状ピッチを、不融化後、炭化及び賦活することにより、良好な性状の球状活性炭を入手できるが、上記複数工程で高温処理(430~600℃程度)を経ることが必須となり、煩雑であり、生産コストも課題となる。また、出発原料が限定されてしまうため、賦活度を変更したとしても細孔分布はある程度画一的になり、様々な気相及び液相の吸着課題や用途展開を考えた際に、対応できず、限定されてしまう。
【0009】
本発明は、このような課題を解決しようとするものであり、小粒径で真球度の高い球状活性炭を簡便な方法で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、活性炭及びガラス転移温度が30℃以上である有機バインダーを含む活性炭組成物を用いて造粒することで、小粒径で真球度の高い球場活性炭を簡便な方法で提供することができることを見出した。本発明者は、このような知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の構成を包含する。
【0011】
項1.活性炭及びガラス転移温度が30℃以上である有機バインダーを含む活性炭組成物の造粒物からなる、球状活性炭。
【0012】
項2.平均粒子径が0.3mm以上0.6mm未満である、項1に記載の球状活性炭。
【0013】
項3.真球度が1.10以下である、項1又は2に記載の球状活性炭。
【0014】
項4.MS硬度が70.0%以上である、項1~3のいずれか1項に記載の球状活性炭。
【0015】
項5.項1~4のいずれか1項に記載の球状活性炭の製造方法であって、
活性炭及びガラス転移温度が30℃以上である有機バインダーを含む活性炭組成物を用いて造粒する工程を備える、製造方法。
【0016】
項6.造粒温度が0℃以上30℃未満である、項5に記載の製造方法。
【0017】
項7.前記有機バインダーの平均粒子径が10~300nmである、項5又は6に記載の製造方法。
【0018】
項8.前記有機バインダーの粘度が1~20mPa/sである、項5~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【0019】
項9.前記造粒工程が、前記活性炭組成物に対して水を噴霧し、球状活性炭の形状に成形した後に熱処理する工程である、項5~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【0020】
項10.項1~4のいずれか1項に記載の球状活性炭を用いたキャビンフィルター。
【0021】
項11.項1~4のいずれか1項に記載の球状活性炭を用いたタバコフィルター。
【0022】
項12.項11に記載のタバコフィルターを備える、タバコ。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、小粒径で真球度の高い球状活性炭を簡便な方法で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1で得られた球状活性炭の外観写真である。
図2】比較例1で得られた球状活性炭の外観写真である。
図3】MS硬度の測定に用いた容器の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0026】
本発明の球状活性炭は、活性炭及びガラス転移温度が30℃以上である有機バインダーを含む活性炭組成物の造粒物からなる。具体的には、活性炭及びガラス転移温度が30℃以上である有機バインダーを含む活性炭組成物を用いて造粒する工程を備える製造方法により得られる。
【0027】
このような本発明の球状活性炭は、小さいサイズの球状活性炭として得られるために、活性炭粒子間に存在する有機バインダーの融着状態の影響に大きく真球度が左右される。この融着状態を有機バインダーのガラス転移温度で制御することで、真球度の高い小粒径の球状活性炭を得ることができる。
【0028】
活性炭としては、粉末状の活性炭であれば特に制限はなく、一般的に使用されている気相及び液相の活性炭を使用することができる。活性炭は、石炭系、ヤシガラ系、木質系、リグニン系等の種々の原料から得られるものを使用でき、水蒸気賦活品;炭酸ガス賦活品;リン酸、塩化亜鉛、アルカリ金属等による薬品賦活品等の活性炭の賦活品を使用できる。これらの活性炭は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0029】
また本発明に適用される活性炭は、粉末状、粒状、破砕炭状等の形態を問わないが、粒子が再配列しやすく、バインダーにより結着しやすいため細孔を有する粉末状のもの(活性炭粉末)が好ましい。
【0030】
活性炭粉末の平均粒子径は、特に制限はなく、得られる球状活性炭の平均粒子径及び真球度の観点から、例えば1μm~10mmが好ましく、5μm~1mmがより好ましく、10~100μmがさらに好ましい。活性炭粉末の平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル(株)製:マイクロトラックMT3300EXII)により測定し、体積基準の累積50%時の粒子径を平均粒子径とする。
【0031】
活性炭の比表面積は、特に制限はなく、得られる球状活性炭の平均粒子径及び真球度の観点から、例えば500~2600m/gが好ましく、600~2400m/gがより好ましく、800~2000m/gがさらに好ましい。活性炭の比表面積は、Cranston-Inkley(CI)法により測定する。
【0032】
活性炭の細孔容積は、特に制限はなく、得られる球状活性炭の平均粒子径及び真球度の観点から、例えば0.10~1.70mL/gが好ましく、0.20~1.50mL/gがより好ましく、0.30~1.00mL/gがさらに好ましい。活性炭の直径30nm以下の細孔容積は、比表面積/細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル(株)製:Belsorp miniII)により測定し、液体窒素温度での活性炭の窒素吸着等温線を作成し、CI法により計算する。
【0033】
活性炭組成物中の活性炭の添加量は、有機バインダーによる結着力を適度に調整して真球度及び硬度を向上させやすい観点から、活性炭組成物の固形分の総量を100質量%として、70~97質量%が好ましく、80~96質量%がより好ましく、85~95質量%がさらに好ましい。
【0034】
ガラス転移温度は、ポリマー分子の相対的な位置は変化しないが分子主鎖が回転や振動(ミクロブラウン運動)を始める又は停止する温度を意味する。この温度以下ではガラス状に凍結するのでガラス転移温度と称している。
【0035】
一般に、ポリマーは、ガラス転移温度以上の温度で連続皮膜を形成し、ガラス転移温度と最低成膜温度はほぼ一致することが知られている。成型では、活性炭粒子間に存在する有機バインダーの融着状態の影響も受けることから、真球度は有機ポリマーのガラス転移温度に依存する。
【0036】
つまり、造粒温度以上のガラス転移温度を有する有機バインダーを用いれば、使用環境下でガラス状態になっており、融着せずに活性炭粒子間で点として存在しやすい。これにより造粒過程で、うまく球状を保ったまま粒子が締まっていき、粒子成長しやすい。
【0037】
以上から、使用する有機バインダーのガラス転移温度は、得られる球状活性炭の平均粒子径及び真球度の観点から、造粒温度以上となるように調整することが好ましい。具体的には、有機バインダーのガラス転移温度は、30℃以上、好ましくは30~100℃、より好ましくは30~70℃である。有機バインダーのガラス転移温度は、DSC7020(示差走査熱量計、セイコーインスツル(株)製)により測定する。なお、ガラス転移温度を有さない有機バインダーは本発明の対象外である。
【0038】
有機バインダーは、特に制限はないが、適度な粘性を有することにより、得られる球状活性炭の形状がいびつになることを抑制しやすい。このため、得られる球状活性炭の平均粒子径及び真球度の観点から、有機バインダーの粘度は、例えば、1~20mPa/sが好ましく、3~19mPa/sがより好ましく、5~18mPa/sがさらに好ましい。有機バインダーの平均粒子径は、BL型粘度計により25℃下、攪拌後1分後に測定する。
【0039】
有機バインダーの平均粒子径は、特に制限はなく、得られる球状活性炭の平均粒子径及び真球度の観点から、例えば10~300nmが好ましく、15~270nmがより好ましく、20~250nmがさらに好ましい。有機バインダーの平均粒子径は、nanoSAQLA(多検体ナノ粒子測定システム、大塚電子(株)製)により測定する。
【0040】
以上のような条件を有する本発明で使用できる有機バインダー(樹脂)は、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもよい。このような有機バインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリメチルペンテン、ポリイミド樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン系ラテックス、スチレン‐ブタジエン系ラテックス、アクリレート系ラテックス、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。これらの有機バインダーは、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。なお、有機バインダーは、固体状態のみに限定されず、溶液、分散液、懸濁液等の溶媒を含む形態で用いることもできる。
【0041】
活性炭組成物中の有機バインダーの添加量は、有機バインダーによる結着力を適度に調整して真球度及び硬度を向上させやすい観点から、活性炭組成物の固形分の総量を100質量%として、3~30質量%が好ましく、4~20質量%がより好ましく、5~15質量%がさらに好ましい。なお、有機バインダーは、溶液、分散液、懸濁液等の溶媒を含む形態で用いることもでき、その場合、固形分の含有量が上記範囲になるように調整することが好ましい。
【0042】
上記した活性炭組成物中には、各種添加剤を添加することもできる。このような添加剤としては、例えば、分散剤としてポリカルボン酸、滑剤としてエステルワックス、脂肪酸、脂肪酸アミド、粘結剤としてカルボキシメチルセルロース、硬ピッチ、軟ピッチ、パルプ廃液(主成分はリグニンスルホン酸塩)、結晶性セルロース等が挙げられる。これら添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲とすることが好ましく、活性炭組成物の固形分の総量を100質量%として、0~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましい。
【0043】
また、上記した活性炭組成物中には、造粒機に投入する前に、少量の水を添加することもできる。これにより、活性炭粒子間が水分で満たされ、粒子同士が十分に練られやすく、充填密度が向上しやすい。この際の水の含有量は、要求特性に応じて適宜設定することができる。
【0044】
本発明では、上記した活性炭組成物を用いて、造粒工程を施すことにより、本発明の球状活性炭を得ることができる。
【0045】
使用される造粒機としては、特に制限はなく、攪拌造粒機、圧縮造粒機、噴霧造粒機、転動造粒機、押出造粒機、マルメライザー等の一般的な造粒機を用い成型することができる。
【0046】
また、採用できる造粒工程としては、特に制限はないが、例えば、活性炭組成物に対して水を噴霧し、球状活性炭の形状に成形した後に熱処理することが挙げられる。
【0047】
水の噴霧は、特に制限はなく、例えば、スプレー、霧吹き、噴霧器等によって行うことができる。水の全噴霧量は、要求特性に応じて適宜設定することができる。
【0048】
水を噴霧した後、球状活性炭の形状に成形する方法は特に制限はなく、常法に従うことができる。
【0049】
また、成形後の熱処理温度は、造粒効率、真球度、平均粒子径、硬度等の観点から、有機バインダーの熱分解温度以下が好ましく、50~200℃が好ましく、70~180℃がより好ましく、80~150℃がさらに好ましい。
【0050】
成形後の熱処理時間は、十分に小粒径且つ真球度の高い球状活性炭を得られる時間とすることができ、造粒効率、真球度、平均粒子径、硬度等の観点から、10分~10時間が好ましく、30分~5時間がより好ましく、1~4時間がさらに好ましい。この際、得られる球状活性炭の含水率が10質量%以下、特に5質量%以下となるように調整することが好ましい。
【0051】
このように、本発明においては、球状活性炭を焼結することなく簡便な方法で製造することができ、製造コストを低減できる。
【0052】
このようにして得られる本発明の球状活性炭は、粒径を小さくすることができる。具体的には、本発明の球状活性炭の平均粒子径は、0.3mm以上0.6mm未満が好ましく、0.32~0.58mmがより好ましく、0.35~0.55mmがさらに好ましい。本発明の球状活性炭の平均粒子径は、JIS K1474(2014)に準じ、ロータップと篩を用いて篩別し、質量平均粒子径を算出する。
【0053】
また、このようにして得られる本発明の球状活性炭は、均一な球状とすることができる。具体的には、本発明の球状活性炭の真球度は、1.10以下が好ましく、1.00~1.09がより好ましく、1.02~1.08がさらに好ましい。本発明の球状活性炭の真球度は、デジタルマイクロスコープを用いて撮影した像より、最長径(a)/最短径(b)を求めることにより測定する。
【0054】
また、このようにして得られる本発明の球状活性炭は、硬度を高くすることができる。具体的には、本発明の球状活性炭のMS硬度は、70.0%以上が好ましく、71.0~80.0%がより好ましく、72.0~75.0%がさらに好ましい。本発明の球状活性炭のMS硬度は、図3に示す容器に球状活性炭を鋼球10個と共に入れ、毎分25回転で40分回転後、活性炭と鋼球を分離し、活性炭を0.212mmの篩で篩い分けたとき、
[篩上の質量]×100(%)/[篩上の質量+篩下の質量]
で求める。この方法は、衝撃、摩擦に対する耐久性を求める方法である。
【0055】
上記のような本発明の球状活性炭は、小粒径で且つ真球度が高く硬度も高いという優れた性質を有するため、繊維シート、布等の層間に挿入してフィルターとして使用することができる。特に、本発明の球状活性炭は、小さいサイズでありながら真球度が高いことから、摩擦が生じても角ばった部分が少ないために微粉が生じにくい。このため、タバコフィルター用やキャビンフィルター用として有用である。
【実施例
【0056】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例の態様に限定されない。
【0057】
なお、以下の実施例及び比較例において、有機バインダーのガラス転移温度はDSC7020(示差走査熱量計、セイコーインスツル(株)製)により測定し、粘度はBL粘度計により25℃での値を測定し、平均粒子径はnanoSAQLA(多検体ナノ粒子測定システム、大塚電子(株)製)により測定し、体積基準の累積50%時の粒子径を平均粒子径とした。
【0058】
実施例1
平均粒子径40μm(166メッシュパス98質量%)に調整したヤシ殻活性炭を用いた。CI法で算出した活性炭の比表面積は1086m/g、細孔容積0.47mL/gであった。
【0059】
造粒機(自社製)を動かしながら、あらかじめ有機バインダー、上記活性炭及び適量の水を混錬した。このとき、混合物中の有機バインダーとして、塩化ビニルエマルジョン(日信化学工業(株)製ビニブラン700、固形分濃度30質量%)を、混合物の固形分総量を100質量%として6.0質量%となるように配合し、上記活性炭を、混合物の固形分総量を100質量%として94.0質量%となるように配合した。
【0060】
この後、解砕した混合物を造粒機に投入し、水を適量噴霧しながら、26℃で造粒した。この際の水の噴霧速度は20mL/分とした。
【0061】
その後、球状活性炭の形状に成形し、115℃で3時間以上乾燥させ、成型物の含水率を5質量%未満とした。その後得られた成型物の大きさに応じて篩を選定して篩別した。得られた球状活性炭の外観写真を図1に示す。
【0062】
実施例2
有機バインダーとしてエチレン-塩化ビニル共重合体樹脂エマルジョン(住化ケムテックス(株)製スミエリート1320、固形分濃度51.8質量%)を用いたこと以外は実施例1と同様に、実施例2の球状活性炭を得た。
【0063】
比較例1
有機バインダーとして塩化ビニルエマルジョン(日信化学工業(株)製ビニブラン715S、固形分濃度23.8質量%)を用いたこと以外は実施例1と同様に、比較例1の球状活性炭を得た。得られた球状活性炭の外観写真を図2に示す。
【0064】
比較例2
有機バインダーとしてポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製ゴーセノールN300、固形分濃度7.0質量%)を用いたこと以外は実施例1と同様に、比較例2の球状活性炭を得た。
【0065】
比較例3
有機バインダーとしてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙(株)製サンローズF30MC)を用いること以外は実施例1と同様に、比較例3の球状活性炭を得た。
【0066】
比較例4
有機バインダーとしてエチレン-酢酸ビニル樹脂(デンカ(株)製EVAテックス#100、固形分濃度55.0質量%)を用いたこと以外は実施例1と同様に、比較例4の球状活性炭を得た。
【0067】
比較例5
有機バインダーとしてアクリレート系ラテックス(日本ゼオン(株)製NipolLX851C、固形分濃度45質量%)を用いたこと以外は実施例1と同様に、比較例5の球状活性炭を得た。
【0068】
試験例1:球状活性炭の平均粒子径
得られた球状活性炭の平均粒子径は、JIS K 1474(2014)に準拠し測定し、質量平均粒子径により算出した。実施例では、篩は目開き0.3mmから0.71mmのものを用いて評価でき、比較例では成型物に応じ篩の目開きを変えて評価した。
【0069】
試験例2:MS硬度
図3に示す容器にあらかじめ粒度範囲の篩を用いて篩い分けた活性炭10mLを直径7.94mmの鋼球10個と共に入れ、毎分25回転で40分回転後、活性炭と鋼球を分離し、活性炭を0.212mmの篩で篩い分けたとき、
[篩上の質量]×100(%)/[篩上の質量+篩下の質量]
で求めた。この方法は、衝撃、摩擦に対する耐久性を求める方法である。
【0070】
試験例3:真球度
得られた球状活性炭(N=10)をデジタルマイクロスコープ((株)ハイロックス製KH-8700)を用いて撮影した像より、その球状活性炭の最長径(a)/最短径(b)を求めることにより真球度の測定を行った。
【0071】
結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例1及び比較例1の球状活性炭を比較すると、実施例1(図1)では真球度が高いことが分かる一方で、比較例1(図2)ではいびつな、破砕炭になっていることが分かる。本発明のように、ガラス転移温度が20℃以上である有機バインダーを用いた場合は、造粒性がよく、実施例1及び2では真球度が1.06であった。真球度は1.00に近いほど、凹凸がなく球に近づく値である。
【0074】
造粒時の温度は30℃未満(実測26℃)となっており、ガラス転移温度が高い有機バインダーを使う実施例1及び2では、有機バインダーの融着はしていないことになる。これにより、活性炭粒子同士が点で結着することになり、結果として造粒過程で、粒子間でうまく最密構造を取り球状になると考えられる。
【0075】
一方、比較例1、4及び5に見られるガラス転移温度が低いバインダーでは、造粒時の温度において融着しており、活性炭粒子自体を有機バインダーが覆ってしまい、粒子間で広く結着してしまい、一旦、造粒粒子の表面が凹凸になるとそのまま成長してしまうため、結果として形がいびつな破砕炭になってしまった。
【0076】
MS硬度については、表1の実施例1及び2で示す通り、MS硬度が70%以上を達成する一方で、比較例ではMS硬度が70%未満となっていることが分かる。これは、比較例の試料では角ばった部分が摩擦によりとれることで微粉が発生しやすくなることを示している。
【0077】
比較例2及び3で用いたPVA及びCMCは造膜性が良く、有機バインダーの粘性自体も高くなる傾向があり、これにより成型品自体のMS硬度は上がる傾向(68%以上70%未満)にあるが、球状活性炭としての造粒性は著しく下がった。
図1
図2
図3