(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】シート給送装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 3/48 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
B65H3/48 320A
(21)【出願番号】P 2020093037
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西沢 聖児
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-172700(JP,A)
【文献】特開2015-016954(JP,A)
【文献】特開2016-084232(JP,A)
【文献】特開2004-331258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを積載する積載トレイと、前記積載トレイ上の最上位のシートに接触し、前記積載トレイ上の複数枚のシートを順次連続して給紙する繰出ローラーと、前記積載トレイ上のシートの端部にエアーを吹き付けるエアー吹き付け手段と、を備えるシート給送装置において、
前記エアー吹き付け手段は、
前記繰出ローラーが前記積載トレイ上のシートに接触してシートの給紙を開始する前から所定枚数のシートが給紙されるまでの間、シートの端部へのエアーの吹き付けを停止または第1の風速でエアーをシートの端部に吹き付けるとともに、前記所定枚数のシートが給紙される
とシートの端部
への吹き付けを停止または前記第1の風速から前記第1の風速より大きい第2の風速に変更
し、それ以降は前記第2の風速でエアーをシートの端部に吹き付けるシート給送装置。
【請求項2】
前記エアー吹き付け手段は、前記繰出ローラーによる給紙の開始前に所定時間、前記積載トレイ上のシートの端部にエアーを吹き付けることを特徴とする
請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記エアー吹き付け手段は、前記シートの端部に吹き付けるエアーを発生させるための送風ファンを有し、前記送風ファンの回転数によって前記エアーの風速を
変更する請求項1
または請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれかに記載のシート給
送装置と、
前記シート給装装置から給送されるシートに画像を形成する画像形成装置と、
を備える画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを給紙するシート給送装置に関し、より詳細には、シートを積載して昇降可能な積載トレイを備えたシート給送装置に関するものである。更に本発明は、かかるシート給送装置を備えた画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンター等の画像形成装置には、画像形成部にシートを給送するシート給送装置が内蔵され又は外付けで装備されている。一般にシート給送装置は、例えば数千枚に及ぶ大容量のシートを収納可能な収納庫と、収納庫内でシートを積載する積載トレイと、積載トレイ上の最上位シートを給送する給紙機構を備えている。
【0003】
シート給紙装置には、積載トレイから給紙する際に2枚以上のシートが重なり合った状態で給送される重送等の給紙不良の発生を防止するために、積載トレイ上のシート束にエアーを吹き付ける送風機構を組み込んだものが知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。送風機構は、積載トレイ上のシート束を、その側面に給紙方向の下流側やシート幅方向(給紙方向に直交する向き)の端部側からエアーを吹き付けて浮き上がらせることによって、捌くように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-108150号公報
【文献】特開2019-163120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のシート給送装置に設けられた送風機構において、シート幅方向の一方の端部側からエアーを吹き付けると、シート幅方向の反対の端部側で、浮き上がった最上位1~2枚程のシートの幅方向の端部が該端部を規制するシート規制部材に押し付けられて、シート全体がシート幅方向に上向き凸に湾曲し、シート規制部材側に片寄りする虞がある。このようにシート幅方向に片寄った状態で、最上位のシートを積載トレイから給送するために、その上に繰出ローラを下降させると、該最上位のシートには、該繰出ローラとシート規制部材との間で撓みが発生する。かかる撓みは、繰出ローラにより繰り出されるシートの挙動を不安定にし、シートの斜行や横ずれ、ジャム等を発生させる原因となり得る。この問題は、特に、シートが坪量の小さいコート紙や薄紙の場合に顕著に現れる。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、積載トレイ上のシートにエアーを吹き付けて捌く送風機構を備えたシート給送装置において、積載トレイからシートを確実に安定させて給送できるようにすることにある。
【0007】
更に本発明は、かかるシート給送装置を備えた画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シートを積載する積載トレイと、前記積載トレイ上の最上位のシートに接触し、前記積載トレイ上の複数枚のシートを順次連続して給紙する繰出ローラーと、前記積載トレイ上のシートの端部にエアーを吹き付けるエアー吹き付け手段と、を備えるシート給送装置において、前記エアー吹き付け手段は、前記繰出ローラーが前記積載トレイ上のシートに接触してシートの給紙を開始する前から所定枚数のシートが給紙されるまでの間、シートの端部へのエアーの吹き付けを停止または第1の風速でエアーをシートの端部に吹き付けるとともに、前記所定枚数のシートが給紙されとシートの端部への吹き付けを停止または前記第1の風速から前記第1の風速より大きい第2の風速に変更し、それ以降は前記第2の風速でエアーをシートの端部に吹き付ける。
【0009】
本発明の別の側面によれば、上述した本発明のシート給装装置と、前記シート給装装置から給送されるシートに画像を形成する画像形成装置と、を備える画像形成システムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシート給送装置によれば、積載トレイ上のシートの端部に吹き付けるエアーの風速を、給紙手段による給紙の開始から所定枚数のシートが給紙されるまでと、それ以降とで変更することにより、積載トレイからシートを確実に安定させて給送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の好適な実施形態にかかるシート給紙装置を備えた画像形成システムの全体構成図である。
【
図2】シート給紙装置の内部構成を正面側(
図1の手前側)から見た概略図である。
【
図3】シート給紙装置の送風機構を示す斜視図である。
【
図4】シート給紙装置の積載トレイ及び送風機構を示す上面図である。
【
図5】奥側の側端規制部材及びエアー吹き出し口を正面側から見た部分図である。
【
図6】シート給紙装置の給紙機構を正面側から示す部分拡大図である。
【
図7】シート給紙装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図8】シート給紙装置の給紙動作を示すフロー図である。
【
図9】送風機構による送風動作の好適なパターンを示すタイミングチャートである。
【
図10】(a)、(b)図は、それぞれ送風機構による送風動作パターンの変形例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の画像形成システム100の全体構成を示している。画像形成システム100は、画像形成装置1と、シート給紙装置2とを備える。シート給送装置2は、画像形成装置1の一方(
図1中、右側)の側面1aに連結されている。画像形成装置1には、原稿読取装置3と原稿給送装置4とシート集積装置5とが一体に装着されている。
【0014】
(画像形成装置)
画像形成装置1は、所定枚数(例えば、100枚程度)のシートを収納可能な給紙カセット6(図示する実施形態では、2つの給紙カセット6a,6b)を内部に備えている。シート給紙装置2は、給紙カセット6a,6bよりも多数枚のシートの積載に対応可能に比較的大容量に構成されている。
【0015】
画像形成装置1は、原稿読取装置3によって原稿シートから読み取られた画像データに基づいて、給紙カセット6a,6b又はシート給紙装置2から供給されたシート上に画像形成を行い、画像形成されたシートをシート集積装置5に集積、収納する。原稿読取装置3には、原稿給送装置4によって原稿シートを自動で給送することもできる。ここで、画像形成システム100において扱われるシートには、A6,B5、A4等の小サイズやB4、A3等の大サイズの普通紙の他、規格サイズ以外の長尺シート、OHPシート、トレーシングペーパー、コート紙などの特殊シートを含むものとする。
【0016】
画像形成装置2は、例えば、複写機、プリンター、ファクシミリ等であり、シートに画像を形成し得るものであれば、公知の様々な画像形成機構を採用することができ、例えば床面に設置される。図示される実施形態の画像形成装置2は、画像形成機構として静電式画像形成機構を採用しているが、これに限定されるものではなく、インクジェット式画像形成機構、オフセット式画像形成機構等を採用することも可能である。
【0017】
図1に示す画像形成装置2は、投光器(レーザーヘッド等)7と、感光ドラム8と、現像器9と、転写チャージャー10と、定着ローラー11とを備えている。各給紙カセット6a,6bに収納されているシートは、その最上面に接触している送出ローラー12によって送り出され、分離ローラー対13によって1枚ずつに分離され、搬送ローラー対14によって搬送路15を転写チャージャー10へと送られる。シート給紙装置2から搬入されたシートは、同様に搬送ローラー対14によって搬送路15を転写チャージャー10へと送られる。
【0018】
給紙カセット6a,6b又はシート給紙装置2から供給されたシートには、感光ドラム8の表面に投光器7で形成した静電潜像(静止画像)に現像器9で付着させたトナーが、転写チャージャー10によって転写される。トナーが転写されたシートは、下流側に配置される定着ローラー11に送られて、シート上のトナーを加熱定着させた後、排紙ローラー対16によってシート集積装置5へ排出される。
【0019】
原稿読取装置3の上部には、透明なガラスで形成された第1のプラテン17と第2のプラテン18とが水平方向に並設されている。第1のプラテン17は、手置きでセットされる原稿の読み取りに用いられ、対応可能な最大サイズの原稿を載置できるようなサイズに形成されている。第2のプラテン18は、原稿給送装置4から給送されて所定速度で移動する原稿の読み取りに用いられる。
【0020】
原稿読取装置3の内部には、第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20と、集光レンズ21及び光電変換素子22を有する光電変換手段が設けられている。第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20は、図示されないキャリッジモーターによって駆動されて、第1のプラテン17の下方を副走査方向に往復移動する。第1のプラテン17上に載置された原稿の読み取りを行うとき、第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20を移動させながら、第1の読取キャリッジ19のランプから光を第1のプラテン17上の原稿の画像へ照射し、原稿からの反射光を、第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20のミラーから集光レンズ21を介して光電変換素子22に案内し、電気信号に変換することによって画像データを生成させる。
【0021】
原稿給送装置4は、給紙トレイ23と、シート搬送機構24と、排紙トレイ25とを備える。給紙トレイ23上に載置された原稿は、シート搬送機構24によって1枚ずつ搬送され、第2のプラテン18上を通過し、排紙トレイ25に排出される。原稿給送装置4から給送されて第2のプラテン18上を通過する原稿を読み取るとき、第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20は、第2のプラテン18の下方で予め停止させておき、第2のプラテン18上を通過する原稿から画像データを生成させる。
【0022】
(シート給送装置)
次に、
図1及び
図2を参照して、シート給送装置2の構造を詳細に説明する。
シート給送装置2は、装置全体を収容する筐体31内に、画像形成装置1に供給するシートを収納する収納庫32と、収納庫32内のシートを1枚ずつに分離して画像形成装置1に向けて供給する分離給紙機構33と、昇降機構34とを備える。
【0023】
収納庫32は、上部に開口部を設けた概略箱型形状を有し、その内側には、積載トレイ38が、昇降機構34により上下方向に昇降可能に設けられている。積載トレイ38は、板状のプレート部材からなり、その実質的に平坦な上面に所定サイズのシートの全体を積載できるようになっている。収納庫32は、シート給送装置2から画像形成装置1へシートを供給する給紙方向と直交する正面方向(
図1中、手前側)に筐体31から引き出し可能であり、そのように引き出した状態で、前記上部の開口部を通して積載トレイ38上にシートを装填、積載することができる。
【0024】
収納庫32内部の積載トレイ38を収容する空間(以下、「積載トレイ収容空間」と称する)には、積載トレイ38上のシートを幅方向(給紙方向に直交する方向)に両側から挟んで位置する左右の側端規制部材(図示しない)と、積載トレイ38上のシートの後端(給紙方向に画像形成装置1から遠い側の端部)側に位置する後端規制部材43とが設けられている。積載トレイ38上のシートSは、幅方向の両側端の位置が前記側端規制部材によって規制され、給紙方向の後端の位置が後端規制部材43によって規制されるようになっている。
【0025】
前記側端規制部材は、例えばラックとピニオンとによって互いに連動してシートの幅方向にスライド可能に収納庫32の底部に立設されている。後端規制部材43は、給紙方向にスライド可能に収納庫32の底部に立設されている。前記側端規制部材及び後端規制部材43のいずれも、積載トレイ38と干渉しないように、該積載トレイに設けられた窓部(図示せず)を貫通して延びている。このような構成により、積載トレイ38上で積載されるシートのサイズに応じて、前記側端規制部材及び/又は後端規制部材43を収納庫32の底部上で移動させて、その側端位置及び/又は後端位置を規制することができる。
【0026】
積載トレイ38は、昇降機構34によって収納庫32内で上下方向に昇降可能に支持されている。積載トレイ38は、それぞれ幅方向の両側辺の角部近傍の位置から幅方向外向きに突設された4つの支持部45(
図2には、簡単のために1つだけを例示)を有する。昇降機構34は、積載トレイ38の各支持部46にそれぞれ一端を固定された吊下げ部材としての4本のワイヤー46と、対応する各ワイヤー46を巻き取る4つの巻取プーリー47と、各巻取プーリー47と対応する支持部45との間に延びるワイヤー46をそれぞれ巻き掛ける複数の中間プーリー48と、巻取プーリー47を回転駆動させる昇降モーターM1とによって構成されている。
【0027】
例えば昇降モーターM1を正転駆動すると、4つの巻取プーリー47が同時に回転してそれぞれワイヤー46を巻き取ることによって、積載トレイ38は、4つの支持部45が同時に引き上げられ、略水平状態を維持したまま上昇する。昇降モーターM1を逆転駆動すれば、4つの巻取プーリー47が上昇時とは反対方向に回転駆動されて、各ワイヤー46が繰り出されることによって、積載トレイ38は、自重によって略水平状態を維持したまま下降する。昇降機構34は、このように積載トレイ38を略水平状態を保ったまま昇降できるものであればよく、本実施形態のものに限定されない。
【0028】
分離給紙機構33は、積載トレイ38上に積載されたシートの最上面に接触してシートを送り出す繰出ローラー51と、送り出されたシートを一枚ずつに分離して画像形成装置1へ搬送する分離搬送手段とを含んでいる。前記分離搬送手段は、給紙ローラー52と、該給紙ローラーに圧接して2枚目以降のシートの供給を阻止する分離ローラー53とによって構成される。前記分離搬送手段の下流側には、シートを画像形成装置1の搬送路15内に送り出すための搬送ローラー対54が設けられている。
【0029】
繰出ローラー51は、積載トレイ38の最上位のシートの上面に接触する作動位置と、該シートの上面から離れた待機位置との間で移動可能に構成されている。繰出ローラー51は、給紙モーターM2によって回転駆動され、積載トレイ38から最上位のシートを送り出す。給紙ローラー52は、同様に給紙モーターM2によって、図示されていない複数のギアやタイミングベルトを介して駆動されて回転し、繰出ローラー51によって積載トレイ38上から送り出されたシートを給紙方向に送り出す。搬送ローラー対54は、搬送モーターM3によって回転駆動され、給紙ローラー52から送り出されたシートを画像形成装置1へ供給する。
【0030】
繰出ローラー51は、給紙ローラー52の回転軸の周りに回動自在に支持されるブラケット(図示せず)の先端に、回転可能に支持することができる。給紙モーターM2による給紙ローラー52の回転軸の回転が、複数のギアを介して前記ブラケットに伝達され、繰出ローラー51を回転駆動するように構成する。この場合、例えばソレノイドによって前記ブラケットを給紙ローラー52の回転軸周りに揺動させ、繰出ローラー51を前記作動位置と待機位置との間で移動させることもできる。
【0031】
分離ローラー53は、その回転軸にトルクリミッター(図示せず)が取り付けられている。これにより、給紙ローラー52と分離ローラー53との圧接部でシートが2枚以上重なってニップされたとき、分離ローラー53が停止して上から2枚目以降のシートの供給を阻止するようになっている。例えば複数のシートが重なって給紙ローラー52と分離ローラー53とのニップ部に進入すると、給紙ローラー52の駆動力が最上位のシートに伝達される一方、分離ローラー53の回転が停止されるので、最上位のシートとそれより下のシートとの間で滑りが生じ、最上位のシートだけがそれより下のシートから分離して送り出される。当然ながら、分離ローラー53に代えて分離パッドなど他の部材を用いてもよい。
【0032】
(センサー手段)
シート給送装置2は、積載トレイ38及びシートの昇降方向の位置を検出するために、下限センサー61と上面センサー64とを備える。
図2に示すように、下限センサー61は、積載トレイ38の昇降範囲における下限位置PBに配置されている。上面センサー64は、積載トレイ38上の最上位のシートSが、分離給紙機構33によって画像形成装置1に向けて給送可能な高さ位置即ち給紙位置PUに到達したことを検出する。
【0033】
更にシート給送装置2は、給紙ローラー52のシート出口付近即ち給紙方向の直ぐ下流側に配置されたシート検出センサー66を有する。シート検出センサー66は、後述するように、給紙ローラー52から搬送ローラー対54へ送り出されるシートの後端を検出する。
【0034】
シート給送装置2は、起動されると、又は筐体31から引き出された収納庫32が筐体31内に収容されたことを検知センサー(図示せず)によって検出すると、昇降モーターM1を駆動して積載トレイ38を上昇させる。上面センサー64によって積載トレイ38上の最上位のシートS上面が給紙位置PUに到達したことを検出すると、昇降モーターM1を制御して積載トレイ38の上昇を停止させる。
【0035】
更に、繰出ローラー51を前記作動位置に移動させて、積載トレイ38上の最上位のシートSを繰り出し可能な状態にする。また、シート給送装置2は、積載トレイ38から繰出ローラー51によって所定枚数のシートが繰り出される毎に、積載トレイ38を上昇させて、最上位のシートS上面が給紙位置PUとなるように制御する。
【0036】
例えば、シート給送装置2内の温度や湿度等の影響で積載トレイ38の上下シート間に摩擦係数の変化が生じたり、シート辺縁に残った裁断バリによって上下シートが密着している等の場合には、分離給紙機構33によってしても、最上位のシートに次のシートが重なり合って給送される重送が発生し得る。かかる重送を防止するために、本願発明のシート給送装置2は、積載トレイ38上のシートにエアーを吹き付けて捌くエアー吹き付け部として、以下に説明する送風機構を備えている。
【0037】
(送風機構)
図3は、本実施形態による送風機構80を示している。シート給送装置2は、上述したように、
図4の積載トレイ38の給紙方向に直交するシート幅方向の両側に1対の側端規制部材41,42が、給紙方向のシートの後端側に後端規制部材43がそれぞれ設けられている。側端規制部材41,42には、積載トレイ38の最上面とシートSの給紙方向の両側縁を上から規制するために、給紙方向に沿って複数のシート押え部材44が配設されている。
【0038】
送風機構80は、シート給送装置2の奥側(
図4中左側)に配置された側端規制部材42の背後に配置されている。送風機構80は、給紙方向に沿って画像形成装置1側の第1エアーブロワ81と、それより後端側の第2エアーブロワ82とから構成される。第1エアーブロワ81及び第2エアーブロワ82は、それぞれ第1及び第2送風ファン83,84を有し、第1エアーブロワ81には、送風ファン83の上流側にヒーター85が設けられている。
【0039】
送風ファン83,84は、回転速度を切り替え可能であり、それぞれ第1及び第2エアーブロワ81,82から送り出す風速を変更することができる。ヒーター85は、任意の温度に設定可能であり、それにより第1エアーブロワ81は、所望の温度に加熱したエアーを送り出すことができる。例えば、シート給送装置2を設置した雰囲気の湿度が高い場合、乾燥したエアーが送り出される。
【0040】
第1及び第2エアーブロワ81,82の上端部には、積載トレイ38側に向けて第1及び第2エアー吹出口86,87が概ね水平に開設されている。送風機構80は、第1及び第2エアー吹出口86,87からのエアー吹出方向を上下方向に変更するための、吹出方向変更機構88を有する。本実施形態の吹出方向変更機構88は、第1及び第2エアー吹出口86,87の内側に、上下方向に揺動可能に枢支されたフラップ部材89,90を有する。フラップ部材89,90は、第1及び第2エアー吹出口86,87間に横架された共通の駆動シャフト91の両端に一体回動可能に結合されている。第1及び第2エアーブロワ81,82間には、モーター等からなる駆動機構92が設けられ、該駆動機構により駆動シャフト91を会同することによって、フラップ部材89,90を上下方向に揺動させ、積載トレイ38側に向けて吹き出すエアーの向きを上下方向に変更することができる。
【0041】
送風機構80は、第1及び第2エアー吹出口86,87が、給紙位置PUよりも高く設けられた側端規制部材42の上部壁面に開口する窓から積載トレイ38の上位のシートの側辺を臨むように配設される。第1及び第2エアー吹出口86,87は、その上端が給紙位置PUに位置する積載トレイ38の最上位のシートよりも幾分上方に位置し、その下端が前記最上位のシートよりも下側の複数シートを含むような寸法及び形状に形成されている。また、第1及び第2エアー吹出口86,87は、第1エアーブロワ81からのエアーが、積載トレイ38上のシートの給紙方向先端側(下流側)に吹き付けられ、第2エアーブロワ82からのエアーが、積載トレイ38上のシートの給紙方向後端側(上流側)に吹き付けられるように、給紙方向に離隔して配置される。
【0042】
次に、
図6を参照しつつ、送風機構80の動作について説明する。本実施形態では、積載トレイ38から繰り出されるシートの密着状態を解消するために、最上位のシートの繰出しを開始する前に、送風機構80によるエアーの吹付けを行う。それにより、積載トレイ38の最上位のシートを画像形成装置1側に送り出す際に、該最上位のシートをそれより下側のシートからより容易に分離させることができる。
【0043】
送風機構80は、後述する制御部から入力した積載トレイ38上のシート情報に基づいて、第1及び第2送風ファン83,84を駆動し、第1及び第2エアー吹出口86,87からエアーを所定の風速で送り出す。前記シート情報には、例えばシートのサイズ、坪量、種類、表面状態(表面粗さ等)、送りの向き等が含まれる。また、送風機構80は、シート給送装置2の設置環境(温度、湿度等)に対応して、エアーの風速(第1及び第2送風ファン83,84の回転速度)及び/又はヒーター85のオンオフ並びに加熱温度を適宜設定、調整することができる。更に必要に応じて吹出方向変更機構88を駆動し、第1及び第2エアー吹出口86,87からのエアー吹出方向を上下方向に変更し又は上下に揺動させることができる。
【0044】
上述したように、シート給送装置2が起動され、又は引き出された収納庫32が筐体31内に戻されると、積載トレイ38は昇降モーターM1によって、最上位のシートS上面が給紙位置PUに到達する位置まで上昇する。本実施形態では、このとき、送風ファン83,84を駆動し、かつ必要に応じてヒーター85を加熱して、第1及び第2エアー吹出口86,87から上位シートの側辺部分にエアーを吹き付ける。このように上位シートの先端側及び後端側で同時にエアーを吹き付けることにより、積載トレイ38の上位のシートを捌いてシート同士の密着状態を効果的に解消することができる。
【0045】
繰出ローラー51は、図示するように、積載トレイ38の最上位のシートに接触した状態で、上面センサー64がオンしてシートを検知すると、給紙モーターM2が駆動され、それにより回転して最上位のシートSを給紙方向に繰り出す。繰り出されたシートSは、前記分離搬送手段の給紙ローラー52と分離ローラー53とによって、1枚ずつ分離して搬送される。
【0046】
(制御部)
シート給送装置2は、その動作を制御するための制御部70を備える。
図7に示すように、制御部70は、中央演算処理装置(CPU)71からなり、読み出し専用メモリであるROM72と、書き換え可能なメモリであるRAM73とが接続されている。ROM72には、後述する制御手順を予め記憶されている。RAM73は、入力データの記憶用及び作業用記憶領域等として使用される主記憶装置である。
【0047】
制御部70には、下限センサー61と、上面センサー64と、シート検出センサー66と、サーミスター95からなる温度センサーと、湿度センサー96とが接続され、これら各センサーからの検出信号がリアルタイムで受信されるようになっている。サーミスター95及び湿度センサー96は、シート給送装置2の設置環境の温度及び湿度を検出する。更に制御部70には、昇降モーターM1、給紙モーターM2、搬送モーターM3、第1送風ファン83、第2送風ファン84、ヒーター85、及び吹出方向変更機構88が接続されており、CPU71は、これらの動作を前記各センサーからの検出信号に基づいて制御する。また、制御部70には、ユーザーによって操作される画像形成装置1の操作パネル74、及び積載トレイ38からの給紙枚数を数えるカウンター97が接続されている。
【0048】
以下に、
図8のフロー図及び
図9のタイミングチャートを用いて、シート給送装置2の給紙動作について説明する。
図9において、横軸tは時間軸、縦軸は第1及び第2送風ファン83,84の回転数(rps)である。
【0049】
先ず、ユーザーによって操作パネル88の給紙ボタンが押され、画像形成装置1から給紙指示を受信する(ステップST01)と、制御部70は、第1及び第2送風ファン83,84を第1の回転速度、例えば60rpsの高速度で回転させる(ステップST02)。これにより、積載トレイ38上の上位の複数シートは、その一方の側方からエアーが第1の風速で吹き付けられて捌かれる。この時点で、カウンター97は、カウンタ値1にリセットされている。
【0050】
第1及び第2送風ファン83,84の回転開始から所定時間経過する(時刻t2)(ステップST03)と、制御部70は、第1及び第2送風ファン83,84の回転速度を前記第1の回転速度から、それより遅い第2の回転速度、例えば40rpsの低速度に変更する(ステップST04)。前記第2の回転速度への減速後、所定の僅かな時間経過する(時刻t3)(ステップST05)と、1枚目のシートの給紙動作を開始する(ステップST06)。ステップST03における所定時間は、第1及び第2送風ファン83,84の回転数の減速を開始した直後から前記第2の回転速度に到達するまでに要する時間に基づいて、その時間より少なくとも短くならないように設定される。
【0051】
給紙動作は、
図6に関連して上述したように実行される。即ち、積載トレイ38から最上位の1枚のシートが、繰出ローラー51、前記分離搬送手段、及び搬送ローラー対54によって繰り出され、画像形成装置1に給送される。
【0052】
シート検出センサー66が、搬送ローラー対54により搬送されるシートの後端を検出して、ON状態からOFF状態に変化する(ステップST07のY)と、制御部70は、今搬送ローラー対54から搬送されたばかりのシートが、現在実行中の1つの給紙ジョブの最終のシートか否かを確認する(ステップST08)。
【0053】
この確認は、ステップST01で画像形成装置1から制御部70に送信された前記給紙ジョブのシート情報に含まれる、該給紙ジョブの最終のシートにかかる情報に基づいて行われる。例えば、前記給紙ジョブのシート情報に、該給紙ジョブで給紙されるシート枚数が含まれている場合、制御部70は、給紙動作開始後にシート検出センサー66が検出するシート枚数をカウンター97が数えることによって、最終のシートか否かを容易に確認することができる。
【0054】
ステップST08において、シート検出センサー66により検出された前記シートが前記実行中の給紙ジョブの最終のシートである場合、制御部70は、第1及び第2送風ファン83,84を停止させ、給紙動作を終了する(ステップST09)。これと同時に、カウンター97は、カウンタ値1にリセットされる。
【0055】
ステップST08において、シート検出センサー66により検出された前記シートが前記実行中の給紙ジョブの最終のシートではない場合、制御部70は、カウンター97をカウントアップ(1カウント加える)し、前記給紙ジョブの給紙動作を継続する(ステップST10)。
【0056】
カウンター97のカウンタ値が、予め設定された値(シート枚数)になる(時刻t4)(ステップST11のY)と、制御部70は、第1及び第2送風ファン83,84の回転速度を前記第2の回転速度から、それより速い第1の回転速度に変更する(ステップST12)。ステップST12から所定時間が経過した後(時刻t5)(ステップST13)、前記給紙ジョブの次のシートの給紙動作を実行する(ステップST06)。ステップST13における前記所定時間は、第1及び第2送風ファン83,84の回転数の増速を開始した直後から前記第1の回転速度に到達するまでに要する時間に基づいて、その時間より少なくとも短くならないように設定される。
【0057】
ステップST11において、カウンター97のカウンタ値が、予め設定された値(シート枚数)でない場合、制御部70は、第1及び第2送風ファン83,84の回転速度を前記第2の回転速度に維持したまま、前記給紙ジョブの次のシートの給紙動作を実行する(ステップST06)。
【0058】
(エアーの吹き付け制御)
送風機構80によるエアーの吹き付けは、その要否、エアーの風速、風速変更の要否等の条件を、積載トレイ38に積載されるシートの厚さ(坪量)、材質、種類等に対応して適当に選択することができる。次の表1は、本願発明者が、様々なシートについて行った試験結果に基づいて好適と判断した制御条件の一例である。
【0059】
【0060】
表1では、シートの種類を普通紙とコート紙とに分け、更にそれぞれの坪量を52g~128g、129g~150g、151g~の3段階に分けた。同表において、符号Aは、エアーの吹き付けを行うが、1給紙ジョブの過程で給紙したシートの枚数による風速変更を行わない場合、符号Bは、エアーの吹き付けを行い、かつ給紙動作の過程で給紙したシートの枚数による風速変更を行う場合、符号Cは、エアーの吹き付けを行わない場合をそれぞれ表している。特に坪量52g~128g及び129g~150gのコート紙は、1給紙ジョブ中に吹き付けるエアーの風速を変更することによって、良好なシートの捌き効果を得られることが確認された。
【0061】
(変形例)
図10(a)、(b)は、
図8及び
図9に関連して上述したシート給送装置2における給紙動作の制御の変形例を示している。
図10(a)の変形例では、給紙動作開始前の積載トレイ38上のシートに吹き付けるエアーの風速(
図9における第1の風速)を、給紙動作開始時の風速(
図9における第2の風速)に設定する。これにより、
図9において第1の風速から第2の風速に変更する際に、第1及び第2送風ファン83,84が所望の回転数に到達するのを待つための時間を設定する必要が無い。従って、シート給送装置2における給紙動作の生産性が向上する。
【0062】
図10(b)の変形例では、給紙動作開始前の積載トレイ38上のシートに対するエアーの吹き付け後、給紙動作開始時の風速(
図9における第2の風速)を0に変更する。積載トレイ38に積載されるシートの厚さ(坪量)、材質、種類等によっては、給紙動作開始前に所定の風速でエアーを吹き付けることにより、積載トレイ38の上位のシートが十分に捌かれ、上下シート間の密着が解消されている場合が有り得る。これは、例えば事前に実験等から、風速によって確実に捌かれるシート枚数を確認することができる。
【0063】
このような場合、給紙動作開始前のエアーの吹き付けによって確実に捌かれるシート枚数については、エアーの風速を0にすることができる。これにより、給紙動作の開始時にシートが過度に捌かれることを防止することができる。また、エアーの風速を0にすることは、第1及び第2送風ファン83,84の回転を停止し、又は第1及び第2送風ファン83,84から第1及び第2エアー吹出口86,87へのエアー通路を閉鎖することによって容易に行われる。
【0064】
以上、添付図面の実施形態を参照して、本発明によるシート給送装置及びこれを備える画像形成システムについて説明したが、本発明は、図示される実施形態に限定されるものではない。例えば、送風機構80におけるエアーの風速は、送風ファンからエアー吹出口に至るエアー通路の開度を調整することによっても可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 画像形成装置
2 シート給送装置
32 収納庫
33 分離給紙機構
34 昇降機構
38 積載トレイ
41,42 側端規制部材
61 下限センサー
64 上面センサー
66 シート検出センサー
70 制御部
80 送風機構
83 第1送風ファン
84 第2送風ファン
85 ヒーター
97 カウンター
100 画像形成システム
M1 昇降モーター
M2 給紙モーター
M3 搬送モーター