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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
G02B6/44 376
G02B6/44 381
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020126489
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023503
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本庄 武史
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 亮
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0037942(US,A1)
【文献】特開2005-049505(JP,A)
【文献】特開2002-323647(JP,A)
【文献】特開2007-071929(JP,A)
【文献】特開2005-283624(JP,A)
【文献】特開2005-068617(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067611(WO,A1)
【文献】特開2017-058593(JP,A)
【文献】特開2014-119635(JP,A)
【文献】特開2012-013770(JP,A)
【文献】特開2000-241681(JP,A)
【文献】特開2004-117675(JP,A)
【文献】特開2005-107256(JP,A)
【文献】特開2002-098868(JP,A)
【文献】特開2007-011018(JP,A)
【文献】特開2017-044951(JP,A)
【文献】特開2010-008923(JP,A)
【文献】特開2013-228647(JP,A)
【文献】特許第5719052(JP,B1)
【文献】国際公開第2018/092880(WO,A1)
【文献】特開2018-022064(JP,A)
【文献】特開平03-020704(JP,A)
【文献】国際公開第2019/108384(WO,A1)
【文献】特開2004-294899(JP,A)
【文献】矩形テンションメンバを用いた耐摩耗・低摩擦光ドロップケーブル,古河電工時報,日本,古河電気工業株式会社,2010年02月,第125号,pp.1―3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを有するケーブル本体部と、
前記ケーブル本体部を収容する筒状の外部シースと、
前記外部シースに埋設され、前記ケーブル本体部の中心を通る第1の仮想直線上に、前記ケーブル本体部を挟んで相互に対向するように並べられた一対の第1の抗張力体と、
前記外部シースに埋設され、前記ケーブル本体部の中心を通る第2の仮想直線上に、前記ケーブル本体部を挟んで相互に対向するように並べられた一対の第2の抗張力体と、を備え、
前記第1の仮想直線と前記第2の仮想直線とは実質的に直交しており、
前記第1の抗張力体は、前記第2の抗張力体よりも太く、
前記第1の抗張力体の最大幅は、前記第2の抗張力体の最大幅より大きく、
下記(2)式を満たす光ファイバケーブル。
0.09≦I/I≦0.36 … (2)
但し、上記(2)式において、Iは、前記光ファイバケーブルの前記第1の仮想直線に関する断面二次モーメントであり、Iは、前記光ファイバケーブルの前記第2の仮想直線に関する断面二次モーメントである。
【請求項2】
光ファイバケーブルであって、
光ファイバを有するケーブル本体部と、
前記ケーブル本体部を収容する筒状の外部シースと、
前記外部シースに埋設され、前記ケーブル本体部の中心を通る第1の仮想直線上に、前記ケーブル本体部を挟んで相互に対向するように並べられた一対の第1の抗張力体と、
前記外部シースに埋設され、前記ケーブル本体部の中心を通る第2の仮想直線上に、前記ケーブル本体部を挟んで相互に対向するように並べられた一対の第2の抗張力体と、を備え、
前記第1の仮想直線と前記第2の仮想直線とは実質的に直交しており、
前記第1の抗張力体は、前記第2の抗張力体よりも太く、
前記光ファイバケーブルは、シースとして、単一の前記外部シースのみを備えており、
全ての前記第1及び第2の抗張力体は、前記単一の外部シースに埋設されており、
前記光ファイバケーブルの断面は、円形であり、
前記第1の抗張力体の最大幅は、前記第2の抗張力体の最大幅より大きく、
下記(3)式を満たす光ファイバケーブル。
0.09≦S/S≦0.36 … (3)
但し、上記(3)式において、Sは、前記第1の抗張力体の断面積であり、Sは、前記第2の抗張力体の断面積である。
【請求項3】
光ファイバケーブルであって、
光ファイバを有するケーブル本体部と、
前記ケーブル本体部を収容する筒状の外部シースと、
前記外部シースに埋設され、前記ケーブル本体部の中心を通る第1の仮想直線上に、前記ケーブル本体部を挟んで相互に対向するように並べられた一対の第1の抗張力体と、
前記外部シースに埋設され、前記ケーブル本体部の中心を通る第2の仮想直線上に、前記ケーブル本体部を挟んで相互に対向するように並べられた一対の第2の抗張力体と、を備え、
前記第1の仮想直線と前記第2の仮想直線とは実質的に直交しており、
前記第1の抗張力体は、前記第2の抗張力体よりも太く、
前記光ファイバケーブルは、シースとして、単一の前記外部シースのみを備えており、
全ての前記第1及び第2の抗張力体は、前記単一の外部シースに埋設されており、
前記光ファイバケーブルの断面は、円形であり、
前記第1の抗張力体の最大幅は、前記第2の抗張力体の最大幅より大きく、
前記第1及び第2の抗張力体の断面形状は真円であり、
下記(4)式を満たす光ファイバケーブル。
0.3≦d/d≦0.6 … (4)
但し、上記(4)式において、dは、前記第1の抗張力体の直径であり、dは、前記第2の抗張力体の直径である。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光ファイバケーブルであって、
前記第1及び第2の抗張力体の断面形状は、楕円又は長方形である光ファイバケーブル。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の光ファイバケーブルであって、
前記光ファイバケーブルは、前記外部シースを引裂くためのリップコードをさらに備える光ファイバケーブル。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の光ファイバケーブルであって、
前記第1及び第2の抗張力体の全周面は、前記外部シースに覆われている光ファイバケーブル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の光ファイバケーブルであって、
前記第1及び第2の抗張力体を構成する材料は、繊維強化プラスチック又は金属材料である光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルは、光ファイバ心線と、光ファイバ心線の外周に設けられた抗張力繊維層と、抗張力繊維層の外周に設けられた外皮と、外皮に埋設された一対の抗張力体と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-208430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような光ファイバケーブルには、敷設時に張力から光ファイバを保護しつつ、当該光ファイバケーブルに曲げ易い方向を設定して(曲げ方向性を持たせて)敷設作業性を容易にするために、一対の抗張力体が設けられている。
【0005】
また、このような光ファイバケーブルの敷設工程では、通常、将来の増設等に備えて、光ファイバケーブルの一部を余らせて敷設する。この余らせた部分は、上記の曲げ易い方向に曲げられることで環状に束取され、マンホール等の内部に立てた状態で保管されることがある。しかしながら、保管環境の温度が高温となった場合に、光ファイバケーブルの外皮が軟化し、自重によって束がつぶれてしまうことがある。このとき、光ファイバケーブルの曲率が大きい部分に荷重が集中してしまう。これにより、光ファイバケーブルが座屈して、外皮が割れてしまったり、急激な曲げが光ファイバに加わることで光ファイバケーブルの伝送品質が悪化してしまう場合がある、という問題がある。
【0006】
本発明の目的は、曲げ方向性を維持しつつ、光ファイバケーブルの座屈の発生の抑制を図ることができる光ファイバケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明に係る光ファイバケーブルは、光ファイバを有するケーブル本体部と、前記ケーブル本体部を収容する筒状の外部シースと、前記外部シースに埋設され、前記ケーブル本体部の中心を通る第1の仮想直線上に、前記ケーブル本体部を挟んで相互に対向するように並べられた一対の第1の抗張力体と、前記外部シースに埋設され、前記ケーブル本体部の中心を通る第2の仮想直線上に、前記ケーブル本体部を挟んで相互に対向するように並べられた一対の第2の抗張力体と、を備え、前記第1の仮想直線と前記第2の仮想直線とは実質的に直交しており、前記第1の抗張力体は、前記第2の抗張力体よりも太い光ファイバケーブルである。
【0008】
[2]上記発明において、下記(2)式を満たしていてもよい。
0.09≦I/I≦0.36 … (2)
但し、上記(2)式において、Iは、前記光ファイバケーブルの前記第1の仮想直線に関する断面二次モーメントであり、Iは、前記光ファイバケーブルの前記第2の仮想直線に関する断面二次モーメントである。
【0009】
[3]上記発明において、下記(3)式を満たす光ファイバケーブル。
0.09≦S/S≦0.36 … (3)
但し、上記(3)式において、Sは、前記第1の抗張力体の断面積であり、Sは、前記第2の抗張力体の断面積である。
【0010】
[4]上記発明において、前記第1及び第2の抗張力体の断面形状は真円であり、下記(4)式を満たしていてもよい。
0.3≦d/d≦0.6 … (4)
但し、上記(4)式において、dは、前記第1の抗張力体の直径であり、dは、前記第2の抗張力体の直径である。
【0011】
[5]上記発明において、前記第1及び第2の抗張力体の断面形状は、楕円又は長方形であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光ファイバケーブルでは、第1の抗張力体が、前記第2の抗張力体よりも太い。そのため、光ファイバケーブルは、第2の仮想直線を曲げの中立線とする方向に曲げる場合と比較して、第1の仮想直線を曲げの中立線とする方向に曲げ易くなっている。すなわち、光ファイバケーブルが、第1の仮想直線を曲げの中立線とする方向に曲げ方向性を有する。
【0013】
また、高温下で外部シースが軟化したとしても、第1の仮想直線を曲げの中立線とする方向に光ファイバケーブルが過度に曲がることを、第2の抗張力体によって抑制することができる。また、第2の抗張力体が外部シースに埋設されていることで、当該第2の抗張力体が、光ファイバケーブルの周方向にずれることがない。そのため、第2の抗張力体によって、光ファイバケーブルの座屈の発生を抑制することができる。
【0014】
以上より、本発明の光ファイバケーブルであれば、曲げ方向性を維持しつつ、光ファイバケーブルの座屈の発生の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態における光ファイバケーブルを示す断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態における光ファイバユニットを示す斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態における間欠固定型の光ファイバテープ心線を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態における光ファイバケーブルの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態における光ファイバケーブルを示す断面図である。図2は、本実施形態における光ファイバユニットを示す斜視図である。図3は、本実施形態における間欠固定型の光ファイバテープ心線を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、光ファイバケーブル1は、ケーブル本体部10と、外部シース20と、第1の抗張力体31と、第2の抗張力体32と、を備えている。
【0018】
本実施形態におけるケーブル本体部10は、光ファイバケーブル1の長手方向に沿って線状に延在する部材である。このケーブル本体部10は、外部シース20に覆われて光ファイバケーブル1の略中央に位置している。このケーブル本体部10は、光ファイバ集合体11と、押さえ巻きテープ17と、を有している。
【0019】
光ファイバ集合体11は、複数の光ファイバ14を集合させた集合体である。具体的には、本実施形態では、光ファイバ集合体11は、複数の光ファイバユニット12を束ねることで形成されている。さらに、それぞれの光ファイバユニット12は、図2に示すように、複数の光ファイバテープ心線13と、バンドル材16と、を備えている。
【0020】
それぞれの光ファイバテープ心線13は、図3に示すように、複数(本例では4本)の光ファイバ(光ファイバ素線)14を並列させて間欠的に連結した間欠接着型の光ファイバテープである。具体的には、相互に隣り合う光ファイバ14(光ファイバ素線)同士が、所定の間隔を空けて間欠的に接着部15で接着されている。この接着部15は、例えば、紫外線硬化型樹脂又は熱可塑性樹脂によって形成されている。接着部15同士は、光ファイバテープ心線13の長手方向に対して相互にずれて配置されている。
【0021】
図2に示すように、光ファイバユニット12は、バンドル材16により束ねられた複数の光ファイバテープ心線13から構成されている。バンドル材16は、光ファイバテープ心線13の束の外周に巻き付けられた部材である。なお、特に図示しないが、バンドル材16として、光ファイバテープ心線13の束の外周に螺旋状やSZ状に巻き付けられた紐状の部材を用いてもよい。このバンドル材16は、1本であってもよいし複数本であってもよい。複数の光ファイバが束ねられた状態を保持できれば、バンドル材16の構成は特に限定されない。
【0022】
そして、図1に示すように、複数の光ファイバユニット12が相互に撚り合わせられることで、光ファイバ集合体11が形成されている。光ファイバユニット12の撚り合わせ方の具体例としては、SZ撚りや一方向撚りを挙げることができる。SZ撚りとは、所定間隔毎に撚り方向を反転させながら複数の線状体を撚り合わせる撚り方である。一方向撚りとは、撚り方向を一方向のみとする複数の線状体の撚り方であり、すなわち、複数の線状体を螺旋状に撚り合わせる撚り方である。
【0023】
なお、光ファイバテープ心線13の構成は、上記に限定されない。例えば、光ファイバ14が間欠的に接着されたものではなく、光ファイバ14の全体が相互に接着されていてもよい。また、光ファイバユニット12の構成も、特に上記の構成に限定されない。例えば、光ファイバテープ心線13を用いずに、複数の光ファイバ素線14を束ねるだけで光ファイバユニット12を構成してもよい。また、光ファイバ集合体11の構成も、特に上記の構成に限定されない。例えば、光ファイバユニット12を用いずに、複数の光ファイバ素線14を撚り合わせるだけで光ファイバ集合体11を構成してもよい。また、光ファイバ集合体11を光ファイバを収容したルースチューブで構成してもよい。
【0024】
この光ファイバ集合体11は、押さえ巻きテープ17によって周囲を覆われている。本実施形態では、押さえ巻きテープ17の長手方向が光ファイバケーブル1の軸方向と実質的に一致し、且つ、当該押さえ巻きテープ17の幅方向が光ファイバケーブル1の周方向と実質的に一致するように、押さえ巻きテープ17が光ファイバ集合体11の外周に縦添え巻きされている。押さえ巻きテープ17の巻き方を縦添え巻きとすることで、光ファイバケーブル1からの光ファイバ14の取出作業の作業性が向上する。なお、押さえ巻きテープ17の巻き方は、縦添え巻きに限定されず、例えば、横巻き(螺旋巻き)であってもよい。
【0025】
この押さえ巻きテープ17は、不織布、又は、フィルムから構成されている。押さえ巻きテープ17を構成する不織布の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の繊維からなる不織布を挙げることができる。押さえ巻きテープ17を構成するフィルムの具体例としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、若しくは、ナイロン等の樹脂からなるフィルムを挙げることができる。押さえ巻きテープ17として、吸水性の部材を用いてもよい。押さえ巻きテープ17は必須の構成ではないが、押さえ巻きテープ17を配置すれば光ファイバ14を保護することができる。
【0026】
図1に示すように、外部シース20は、押さえ巻きテープ17の外周を覆っている筒状の部材である。この外部シース20は、内部にケーブル本体部10を内部に収容している。この外部シース20は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、フッ化エチレン、又は、ポリプロピレン(PP)等の樹脂材料から構成されている。
【0027】
一対の第1の抗張力体31は、ケーブル本体部10と略平行に延在する抗張力線である。第1の抗張力体31の幅方向における断面は、真円形状を有している。一対の第1の抗張力体31は、互いに略同一の直径dを有している。第1の抗張力体31は、第2の抗張力体32よりも太い。本実施形態において、「太い」とは、第1の抗張力体31の最大幅が、第2の抗張力体32の最大幅より大きいことをいう。本実施形態において、第1及び第2の抗張力体31,32の最大幅は直径となる。
【0028】
第1の抗張力体31は、外部シース20に埋設されている。また、第1の抗張力体31の中心Cは、ケーブル本体部10の中心Cから距離Rだけ離れている。第1の抗張力体31の中心Cは、第1の仮想直線L上に位置している。また、一対の第1の抗張力体31は、第1の仮想直線Lと実質的に直交する第2の仮想直線Lに対して線対称となるように設けられている。そのため、一対の第1の抗張力体31は、上述のケーブル本体部10の両側から当該ケーブル本体部10を挟むように対向している。
【0029】
本実施形態における第1の仮想直線Lは、光ファイバケーブル1の幅方向断面において、ケーブル本体部10の中心C及び一対の第1の抗張力体31の中心Cを通る直線である。本実施形態における第2の仮想直線Lは、光ファイバケーブル1の幅方向断面において、ケーブル本体部10の中心C及び一対の第2の抗張力体32(後述)の中心Cを通る直線である。
【0030】
第1の抗張力体31を構成する材料としては、ノンメタリック材料やメタリック材料を例示することができる。ノンメタリック材料の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、ケブラー(登録商標)により強化したアラミド繊維強化プラスチック(KFRP)、ポリエチレン繊維により強化したポリエチレン繊維強化プラスチック、及び、炭素繊維により強化した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の繊維強化プラスチック(FRP)を挙げることができる。メタリック材料の具体例としては、特に限定されないが、例えば、鋼線等の金属線を挙げることができる。
【0031】
一対の第2の抗張力体32は、ケーブル本体部10と略平行に延在する抗張力線である。第2の抗張力体32の幅方向における断面は、真円形状を有している。一対の第2の抗張力体32は、互いに略同一の直径dを有している。
【0032】
第2の抗張力体32は、第1の抗張力体31とは独立した部材である。本実施形態の光ファイバケーブル1は合計4本の抗張力体31,32を備えている。この第2の抗張力体32は、外部シース20に埋設されている。また、第2の抗張力体32の中心Cは、ケーブル本体部10の中心Cから距離Rだけ離れている。この距離Rは、特に限定されないが、上述の距離Rと実質的に同一となっている(R=R)。第2の抗張力体32の中心Cは、第1の仮想直線Lと実質的に直交する第2の仮想直線L上に位置している。また、一対の第2の抗張力体32は、第1の仮想直線Lに対して線対称となるように設けられている。そのため、一対の第2の抗張力体32は、上述のケーブル本体部10の両側から当該ケーブル本体部10を挟むように対向している。第2の抗張力体32を構成する材料としては、第1の抗張力体31を構成する材料と同様のものを用いることができる。
【0033】
第2の抗張力体32の直径dは、下記(5)式に示すように、第1の抗張力体31の直径dよりも小さくなっている。抗張力体の直径dは、光ファイバケーブル1に要求される許容張力に応じて、抗張力体の材質や太さを調整することで適宜設計される。例えば、48心~10368心の範囲の心数をもつ光ファイバケーブルにおいて、光ファイバとして50GPaの引張弾性率のガラスFRPを用いることができる。第1の抗張力体31の直径dは、例えば、1.5mmより大きく3.0mm以下とすることができる(1.5mm<d≦3.0mm)。第2の抗張力体32の直径dは、例えば、0.25mm以上3.0mm未満とすることができる(0.25mm≦d<3.0mm)。
>d … (5)
【0034】
以上のような本実施形態における光ファイバケーブル1では、上記(5)式の通り、第1の抗張力体31の直径dに対して、第2の抗張力体32の直径dが小さい。そのため、光ファイバケーブルは、第1の仮想直線Lを曲げの中立線とする方向(第1の方向D)に曲げ方向性を有している。
【0035】
また、第1の方向Dに曲げた状態で束取りされた光ファイバケーブル1において、外部シース20が高温下で軟化した場合、光ファイバケーブル1の曲げの外側に位置する第2の抗張力体32に引張応力が掛かり、光ファイバケーブル1の曲げの内側に位置する第2の抗張力体32に圧縮応力が掛かる。このとき、光ファイバケーブル1の曲げの内側に位置する第2の抗張力体32が圧縮応力に耐えることで、第1の方向Dに光ファイバケーブル1が過度に曲がることを抑制することができる。これにより、光ファイバケーブル1の座屈の発生の抑制を図ることができる。
【0036】
また、第2の抗張力体が外部シースに固定されていない場合、光ファイバケーブルが第1の方向に曲がった際に、第2の抗張力体が光ファイバケーブルの第1の仮想直線に近づくようにずれてしまう。このように、第2の抗張力体がずれてしまうと、第1の方向に光ファイバケーブルが過度に曲がることを抑制することができない。これに対して、本実施形態では、第2の抗張力体32が外部シース20に埋設されていることで、光ファイバケーブル1が第1の方向Dに曲がった際に、第2の抗張力体32がずれることがない。そのため、第2の抗張力体32によって、光ファイバケーブル1の座屈の発生の抑制を図ることができる。
【0037】
以上より、本実施形態における光ファイバケーブル1であれば、曲げ方向性を維持しつつ、光ファイバケーブル1の座屈の発生を抑制することができ、外部シース20の割れの発生や光ファイバケーブル1の伝送品質の悪化を抑制することができる。
【0038】
また、上記(5)式の通り、第1の抗張力体31の直径dに比べて、第2の抗張力体32の直径dは小さくなっている。そのため、光ファイバケーブル1の第1の仮想直線Lに関する断面二次モーメントIは、光ファイバケーブル1の第2の仮想直線Lに関する断面二次モーメントIよりも小さくなっている(I<I)。
【0039】
光ファイバケーブル1の特定の方向に対する曲げ易さは、当該光ファイバケーブル1の断面二次モーメントによって決まる。ここで、外部シース20の弾性率は、第1及び第2の抗張力体31,32の弾性率に比べて小さく、光ファイバケーブル1の断面二次モーメントを算出する際には十分に無視することができる。よって、本実施形態において、光ファイバケーブル1の断面二次モーメントI,Iは、第1の抗張力体31及び第2の抗張力体32が同じ材料から構成されている場合、下記(6)式及び(7)式のように、第1の抗張力体31及び第2の抗張力体32の断面二次モーメントによって表すことができ、第1及び第2の抗張力体31,32の直径d,dに大きく依存している。
【数1】
【数2】
【0040】
本実施形態において、断面二次モーメントの比I/Iは、下記(8)式を満たすことが好ましい。比I/Iを0.09以上とすることで、光ファイバケーブル1の外部シース20が軟化した場合であっても、第1の方向Dに光ファイバケーブル1が過度に曲がることを抑制できるため、光ファイバケーブル1の座屈の発生をより抑制することができる。また、比I/Iを0.36以下とすることで、光ファイバケーブル1を第2の仮想直線Lを曲げの中立線とする方向(第2の方向D)に曲げる場合と比較して、第1の方向Dに光ファイバケーブル1をより曲げ易くなる。
0.09≦I/I≦0.36 … (8)
【0041】
また、本実施形態における断面二次モーメントの比I/Iは、第1の抗張力体31の断面積Sに対する第2の抗張力体32の断面積Sの比S/Sで近似することができる。断面二次モーメントIを示す上記(6)式では、d及びdに対してRが十分に大きい値であるので、右辺の第1項及び第2項を無視することができる。よって、断面二次モーメントIは、下記(9)式のように表すことができる。同様に、断面二次モーメントIも、RがRと同値であるので、右辺の第1項及び第2項を無視することで、下記(10)式のように表すことができる。よって、断面二次モーメントの比I/Iは、下記(9)、(10)式より、下記(11)式のように表すことができる。
【数3】
【数4】
【数5】
【0042】
ここで、第1の抗張力体31の断面積Sに対する第2の抗張力体32の断面積Sの比S/Sは、下記(12)式のように表すことができる。よって、上記(11)式及び下記(12)式から、比I/Iと比S/Sが近似することを示す下記(13)式を導き出すことができる。
【数6】
【数7】
【0043】
よって、上記(8)式及び(13)式から、比S/Sが、I/Iと同様に、下記(14)式を満たすことが好ましい。
0.09≦S/S≦0.36 … (14)
【0044】
また、本実施形態において、第1の抗張力体31の直径dに対する第2の抗張力体32の直径dの比d/dは、下記(15)式を満たすことが好ましい。比d/dを0.3以上とすることで、光ファイバケーブル1の外部シース20が軟化した場合であっても、第1の方向Dに光ファイバケーブル1が過度に曲がることを抑制できるため、光ファイバケーブル1の座屈の発生をより抑制することができる。また、比d/dを0.6以下とすることで、光ファイバケーブル1を第2の方向Dに曲げる場合と比較して、第1の方向Dに光ファイバケーブル1をより曲げ易くなる。
0.3≦d/d≦0.6 … (15)
【0045】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0046】
また、ケーブル本体部10の外形も、本願の趣旨を逸脱しない範囲であれば、特に限定されない。例えば、ケーブル本体部10の外形は、丸形、平形、異形、又は不定形であってもよい。また、ケーブル本体部10は、内部シースを備えるセンターチューブ構造であってもよい。また、光ファイバケーブル1が、外部シース20を引裂くためのリップコードを備えていてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、第1及び第2の抗張力体31,32の断面形状は真円であったが、当該断面形状は楕円又は長方形であってもよい。当該断面形状が楕円の場合、当該楕円の最大幅である長軸の長さが第2の抗張力体32と比較して第1の抗張力体31のほうが大きい場合に、第2の抗張力体32よりも第1の抗張力体31のほうが太いと言える。また、断面形状が長方形の場合、当該楕円の最大幅である長辺の長さが、第2の抗張力体32と比較して第1の抗張力体31のほうが大きい場合に、第2の抗張力体32よりも第1の抗張力体31のほうが太いと言える。
【0048】
図4は、本実施形態における光ファイバケーブルの変形例を示す断面図である。この変形例では、光ファイバケーブル1Bの第1及び第2の抗張力体31B,32Bの断面形状が楕円である場合を説明する。
【0049】
図4に示すように、第1の抗張力体31Bの断面形状は、長軸の長さがd1y、短軸の長さがd1xの楕円である。第2の抗張力体32Bの断面形状は、長軸の長さがd2x、短軸の長さがd2yの楕円である。長軸d1yは長軸d2xよりも長いため(d1y>d2x)、第1の抗張力体31Bは、第2の抗張力体よりも太くなっている。また、短軸d1xも短軸の長さd2yよりも長くなっている(d1x>d2y)。
【0050】
第1の抗張力体31Bは、長軸が第1の仮想直線Lに対して略垂直になり、かつ、短軸が第1の仮想直線Lに対して略平行になるように配置されている。第2の抗張力体32Bは、長軸が第2の仮想直線Lに対して略垂直になり、かつ、短軸が第2の仮想直線Lに対して略平行になるように配置されている。第1及び第2の抗張力体31B,32Bの短軸方向を外部シース20の厚さ方向と略平行とすることで外部シース20をより薄くすることができるため、光ファイバケーブル1Bの線形をより細くすることができる。
【0051】
また、光ファイバケーブル1Bの断面二次モーメントI,Iは、第1の抗張力体31B及び第2の抗張力体32Bが同じ材料から構成されている場合、下記(16)式及び(17)式のように、第1の抗張力体31B及び第2の抗張力体32Bの断面二次モーメントによって表すことができる。この場合においても、上記実施形態と同様に、断面二次モーメントの比I/Iは、上記(8)式の関係を満たしていることが好ましい。
【数8】
【数9】
【0052】
また、本変形例においても、断面二次モーメントの比I/Iは、第1の抗張力体31Bの断面積Sに対する第2の抗張力体32Bの断面積Sの比S/Sで近似することができる。断面二次モーメントを示す上記(16)式及び(17)式においても、d1x,d1y,d2x,d2yに対して、R,Rが十分に大きい値であるので、右辺の第1項及び第2項を無視することができる。よって、断面二次モーメントの比I/Iは、下記(18)式のように表すことができる。ここで、断面積の比S/Sは、楕円の面積公式を用いて、下記(19)式のように表すことができる。したがって、下記(18)式及び下記(19)式から、比I/Iと比S/Sが近似することを示す下記(20)式を導き出すことができる。
【数10】
【数11】
【数12】
【0053】
従って、本変形例においても、比S/Sが上記(14)式を満たしている。本変形例では、楕円の短軸と長軸がどのような方向に延在していても、上記(14)式が成り立っている。そのため、光ファイバケーブルの曲げ方向性及び耐座屈性は、楕円の長軸及び短軸の方向に依存しておらず、断面積の比に依存していると言える。よって、本変形例においても、上記実施形態と同様の光ファイバケーブルの曲げ方向性及び耐座屈性が得られる。なお、抗張力体の断面形状が長方形である場合においても、(14)式を満たす範囲において、上記実施形態と同様の光ファイバケーブルの曲げ方向性及び耐座屈性が得られるのは自明である。
【実施例
【0054】
以下、本実施形態における実施例及び比較例を説明する。下記の実施例及び比較例では、光ファイバケーブルを作製し、当該光ファイバケーブルの曲げ方向性及び耐座屈性を評価した。
【0055】
(実施例1~9)
第2の抗張力体32の直径dを、第1の抗張力体31の直径d未満の範囲で変化させて、図1に示すような光ファイバケーブル1を作製した。そして、作製した光ファイバケーブル1の曲げ方向性を評価するとともに、高温下での耐座屈性を評価した。このとき、光ファイバケーブル1の外形は34mmとした。また、外部シース20の厚さは3mmとした。また、ケーブル本体部10の中心Cと第1の抗張力体31の中心Cの間の距離Rは16mmとした。また、ケーブル本体部10の中心Cと第2の抗張力体32の中心Cの間の距離Rも16mmとした。
【0056】
曲げ方向性の評価は、以下のように行った。すなわち、光ファイバケーブル1を図1に示す第1の方向Dと、第2の方向Dとにそれぞれ曲げ、第1の方向Dに曲げた場合と第2の方向Dに曲げた場合に差異を感じるかを評価した。下記表1では、差異を明確に感じる場合を「◎」と判定した。また、差異を感じる場合を「〇」と判定した。また、差異をやや感じる場合を「△」と判定した。また、差異を感じない場合を「×」と判定した。
【0057】
耐座屈性の評価は、以下のように行った。すなわち、まず、光ファイバケーブル1を第1の方向Dに曲げて円環状に束取した。このとき、束の直径は1.5mとした。その後、束取した光ファイバケーブル1を立てた状態で、気温70℃の環境下で24時間放置した。その後、光ファイバケーブル1の束が自重によって楕円状に変形しているか否かを目視で確認すると共に、外部シース20の割れが生じているか否かを目視で確認した。下記表1では、光ファイバケーブル1の束に変形も割れも生じていない場合を「〇」と判定した。また、光ファイバケーブル1の変形が生じているものの座屈及び割れは生じていない場合を「△」と判定した。また、光ファイバケーブル1が大きく変形して座屈及び割れが生じている場合を「×」と判定した。なお、ここでは、光ファイバケーブル1の束の高さが、当初の束径の80%未満となった場合に、「変形が生じている」と判定した。
【0058】
(比較例1)
光ファイバケーブルに一対の第2の抗張力体を設けていないこと以外、実施例1~9と同様にして光ファイバケーブルを作製した。そして、実施例と同様に、作製した光ファイバケーブルの曲げ方向性を評価するとともに、高温下での耐座屈性を評価した。
【0059】
(比較例2)
第2の抗張力体32の直径dを、第1の抗張力体31の直径dと同じ値として光ファイバケーブルを作製した。そして、実施例と同様に、作製した光ファイバケーブルの曲げ方向性を評価するとともに、高温下での耐座屈性を評価した。
【0060】
【表1】
表1に示すように、実施例1~9では、光ファイバケーブルの束の座屈が生じることがなかった。なお、実施例1,2において、光ファイバケーブルの束が若干変形したが、この光ファイバケーブルは品質上問題のないものであった。これに対して、比較例1では、光ファイバケーブルが大きく変形して座屈し、外部シースに割れが生じてしまった。
【0061】
また、実施例1~9では、光ファイバケーブルを第1の方向Dに曲げた場合と第2の方向Dに曲げた場合に差異を感じることができた。一方で、比較例2では、当該差異を感じることができなかった。
【0062】
よって、実施例1~9では、光ファイバケーブルの曲げ方向性を維持できるとともに、光ファイバケーブルの座屈の発生を抑制できることが確認できた。
【0063】
また、上記の通り、実施例3~6では変形がほとんど生じていないので、実施例1,2と比較して座屈の発生を確実に抑制できることを確認できた。また、実施例3~6では、実施例7~9と比較して、光ファイバケーブルを第1の方向Dに曲げた場合と第2の方向Dに曲げた場合に差異をより明確に感じることができた。よって、実施例3~6では、光ファイバケーブルの曲げ方向性をより明確にすることができるとともに、光ファイバケーブルの座屈の発生を確実に抑制できることが確認できた。なお、第1及び第2の抗張力体の断面形状を、楕円又は長方形等とした場合にも、上記表1と同様の結果が得られることは自明である。
【符号の説明】
【0064】
1,1B…光ファイバケーブル
10…ケーブル本体部
…中心
11…光ファイバ集合体
12…光ファイバユニット
13…光ファイバテープ心線
14…光ファイバ
15…接着部
16…バンドル材
17…押さえ巻きテープ
20…外部シース
31,31B…第1の抗張力線
…中心

32,32B…第2の抗張力線
…中心
…第1の仮想直線
…第2の仮想直線
図1
図2
図3
図4