(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】搬送車
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241115BHJP
【FI】
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2020140833
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】阪下 英知
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-076008(JP,A)
【文献】特表2020-506478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体周辺に存在し得る障害物までの距離を測定するセンサ部と、
車体の進行方向側に位置し、少なくとも車幅よりも広い幅を有する第1領域内に前記障害物が存在する場合に、前記センサ部により測定された前記障害物までの複数の距離データに基づいて、前記障害物の仮想の位置を示す近似直線を算出する算出部と、
車体前辺の中点を始点とし、大きさを前記第1領域の縦方向の長さとする車体の進行方向ベクトルと前記近似直線とのなす角が減少するように、車体の進行方向を制御する走行制御部と、
を備え、
前記算出部は、前記センサ部により測定された前記障害物までの複数の距離データに基づいて、仮の前記近似直線である仮近似直線を算出し、さらに、前記センサ部により測定された前記障害物までの複数の距離データに基づいて、前記第1領域内で前記障害物の一部として特定される点のうち、
前記車体の進行方向ベクトルに最も近い点を通るように、前記仮近似直線を平行移動させて前記近似直線を算出する、
搬送車。
【請求項2】
前記走行制御部は、
前記車体の進行方向ベクトルと前記近似直線によるベクトルとの差分が減少するように、車体の進行方向を制御する、
請求項1記載の搬送車。
【請求項3】
前記走行制御部は、車体の進行方向の単位ベクトルと前記近似直線による単位ベクトルとの内積が1に近づくように、車体の進行方向を制御する、
請求項1記載の搬送車。
【請求項4】
前記算出部は、前記第1領域を進行方向に対して左右に分けた領域のそれぞれに前記障害物が検知された場合に、それぞれの前記障害物に対応する前記近似直線を算出し、当該算出した各前記近似直線の中央に位置する直線を算出し、
前記走行制御部は、
前記車体の進行方向ベクトルと前記中央に位置する直線とのなす角が減少するように、車体の進行方向を制御する、
請求項1記載の搬送車。
【請求項5】
前記走行制御部は、前記第1領域の内側に位置する第2領域内に前記障害物が検知された場合に、前記障害物が第2領域の外側に外れるように、車体を回転させる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送車。
【請求項6】
前記走行制御部は、前記第1領域の内側に位置する第2領域内に前記障害物が検知された場合に、前記障害物が第2領域の外側に外れるように、前記障害物が検知されたときの進行方向とは異なる方向に車体を走行させる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、目的地までの走行経路に沿って自律的に走行することで、被案内者を目的地まで案内する案内用ロボットが開示されている。この案内用ロボットは、誘導型モードと操作型モードとを切り替えながら走行する。誘導型モードは、走行経路に基づいて決定される進行方向に対して自律的に走行するモードである。他方、操作型モードは、入力装置であるグリップに対する入力操作に基づいて決定される方向に移動するモードである。案内用ロボットは、通常は、誘導型モードで走行し、エレベータホールやエレベータ内等のモード切り替えエリアに移動したときにのみ、操作型モードに切り替えて移動する。案内用ロボットは、操作型モードで移動する際も走行経路に沿って走行することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工場等で荷物等を搬送する搬送車の中には、特許文献1の案内用ロボットのように、予め設定された走行経路に沿って移動するだけではなく、工場内を自在に走行する搬送車もある。このような搬送車の走行を手動で操作する場合、車体の両側に十分なスペースがある場合には、搬送車を安定して走行させることができる。しかしながら、車体の両側に十分なスペースがないような狭所では、例えば障害物検知機能により減速や停止が頻繁に発生してしまい、搬送車を安定して走行させることに困難を要する。
【0005】
そこで、本発明は、狭所での走行を容易にすることができる搬送車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による搬送車は、車体周辺に存在し得る障害物までの距離を測定するセンサ部と、車体の進行方向側に位置し、少なくとも車幅よりも広い幅を有する第1領域内に障害物が存在する場合に、センサ部により測定された障害物までの距離に基づいて、障害物の仮想の位置を示す近似直線を算出する算出部と、車体の進行方向ベクトルと近似直線とのなす角が減少するように、車体の進行方向を制御する走行制御部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、搬送車の進行方向側に位置する第1領域内に障害物が存在する場合に、センシングされた障害物までの距離に基づいて障害物の仮想の位置を示す近似直線を算出し、その近似直線と搬送車の進行方向ベクトルとのなす角が減少するように、搬送車の進行方向を制御することができる。これにより、搬送車が障害物に近づきすぎないように抑制することが可能となる。
【0008】
上記態様において、走行制御部は、車体の進行方向ベクトルと近似直線によるベクトルとの差分が減少するように、車体の進行方向を制御することとしてもよい。
【0009】
この態様によれば、搬送車の進行方向ベクトルと近似直線によるベクトルとの差分が減少するように搬送車の進行方向を制御することができるため、搬送車が障害物に近づきすぎないように抑制することが可能となる。
【0010】
上記態様において、走行制御部は、車体の進行方向の単位ベクトルと近似直線による単位ベクトルとの内積が1に近づくように、車体の進行方向を制御することとしてもよい。
【0011】
この態様によれば、搬送車の進行方向の単位ベクトルと近似直線による単位ベクトルとの内積が1に近づくように制御することができるため、搬送車が障害物に近づきすぎないように抑制することが可能となる。
【0012】
上記態様において、算出部は、第1領域を進行方向に対して左右に分けた領域のそれぞれに障害物が検知された場合には、それぞれの障害物に対応する近似直線を算出し、当該算出した各近似直線の中央に位置する直線を算出し、走行制御部は、車体の進行方向ベクトルと中央に位置する直線とのなす角が減少するように、車体の進行方向を制御することとしてもよい。
【0013】
この態様によれば、上記第1領域を進行方向に対して左右に分けた領域のそれぞれに障害物が検知された場合には、左右それぞれの障害物に対応する近似直線を算出し、それら近似直線の中央に位置する直線と搬送車の進行方向ベクトルとのなす角が減少するように、搬送車の進行方向を制御することができる。これにより、搬送車が左右両側にある障害物に近づきすぎないように抑制することが可能となる。
【0014】
上記態様において、走行制御部は、第1領域の内側に位置する第2領域内に障害物が検知された場合に、障害物が第2領域の外側に外れるように、車体を回転させることとしてもよい。
【0015】
この態様によれば、上記第1領域の内側に位置する第2領域内に障害物が検知された場合には、障害物が第2領域の外側に外れるように搬送車を回転させ、搬送車の向きを変更させることができるため、障害物に迫ろうとする搬送車を障害物から退避させることができる。
【0016】
上記態様において、走行制御部は、第1領域の内側に位置する第2領域内に障害物が検知された場合に、障害物が第2領域の外側に外れるように、障害物が検知されたときの進行方向とは異なる方向に車体を走行させることとしてもよい。
【0017】
この態様によれば、上記第1領域の内側に位置する第2領域内に障害物が検知された場合には、障害物が検知されたときの進行方向とは異なる方向に搬送車を走行させて、障害物が第2領域の外側に外れるように搬送車の位置を変更させることができるため、障害物に迫ろうとする搬送車を障害物から退避させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、狭所での走行を容易にすることができる搬送車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る搬送車を真上から観た模式図である。
【
図2】
図1に示す搬送車の機能構成を例示するブロック図である。
【
図3】通路を走行する搬送車を真上から観た模式図である。
【
図4】通路を走行する搬送車を真上から観た模式図である。
【
図5A】監視エリア内に障害物を検知した搬送車を真上から観た模式図である。
【
図5B】監視エリア内に障害物を検知した搬送車を真上から観た模式図である。
【
図6】監視エリア内に障害物を検知した搬送車を真上から観た模式図である。
【
図7】車幅監視エリア内に障害物を検知した搬送車を真上から観た模式図である。
【
図8】実施形態に係る搬送車の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0021】
図1は、実施形態に係る搬送車を真上から観た模式図である。搬送車1は、自律的に走行する装置であり、例えば、車体上に荷物等を載せて搬送する搬送台車であってもよいし、荷物等を搬送する搬送ロボットであってもよい。本実施形態では、例示的に、搬送車1が、搬送台車である場合について説明する。搬送車1は、自動又は手動で360度全ての方向に移動することができる。
【0022】
搬送車1は、2つのセンサSa、Sbを搭載する。センサSa、Sbは、対象物までの距離を測定するセンサであり、例えば、レーザースキャナや、TOF(Time Of Flight)センサが該当する。本実施形態では、センサSa、Sbが、レーザー光で270度の範囲を走査可能なレーザースキャナである場合について説明する。
【0023】
図1に示すように、センサSaの走査範囲RaとセンサSbの走査範囲Rbとは一部で重なり合い、二つの走査範囲Ra、Rbを合わせることで、搬送車1の周囲全体を走査することができる。これにより、搬送車1の周辺(全方位)に存在し得る障害物を検知することができる。
【0024】
なお、搬送車1に搭載するセンサは、2つであることには限定されず、1つであっても、3つ以上であってもよい。搬送車1が移動することができる全ての方向に存在する障害物を、搭載したセンサを用いて検知することができればよい。
【0025】
搬送車1は、障害物検知機能を搭載する。障害物検知機能は、センサSa、Sbにより検出された障害物が所定の減速エリア内に存在する場合には搬送車1を減速させ、センサSa、Sbにより検出された障害物が所定の停止エリア内に存在する場合には搬送車1を停止させる。減速エリア及び停止エリアは、安全性を考慮して適宜設定することができるが、停止エリアは、減速エリアよりも狭い範囲に設定される。
【0026】
図2を参照して、搬送車1の機能構成について説明する。同図に示すように、搬送車1は、機能的な構成として、例えば、センサ部11と、算出部12と、走行制御部13と、を有する。
【0027】
センサ部11は、物理的には、上記センサSa、Sbであり、搬送車1の周辺に存在する障害物までの距離を測定する。障害物として、例えば、通路壁、通路に配置されている棚や配管、通路に存在する他の搬送車や人物等が該当する。
【0028】
算出部12は、搬送車1の進行方向側に位置する監視エリア(第1領域)内に障害物が存在すると判定した場合に、障害物までの距離に基づいて障害物の仮想の位置を示す近似直線を算出する。この算出部12について、以下に詳細に説明する。
【0029】
図3を参照し、監視エリアについて説明する。同図は、通路を走行する搬送車1を真上から観た模式図である。搬送車1は、通路壁Wa、Wbにより形成される通路上を、矢印Yの向きに走行している。監視エリアAの縦方向の長さはDであり、監視エリアAの横方向の長さはLである。車体前辺の中点を始点とし、向きを矢印Y方向とし、大きさをDとするベクトルを、搬送車1の進行方向ベクトルVとする。
【0030】
監視エリアAの縦方向の長さDは、例えば、停止エリアの縦方向の長さに設定することが好ましい。なお、監視エリアAの縦方向の長さDを、停止エリアの縦方向の長さから減速エリアの縦方向の長さまでの間に設定することとしてもよい。
【0031】
監視エリアAの横方向の長さLは、少なくとも搬送車1の車幅Lwよりも長い長さに設定する。
【0032】
なお、
図3では、搬送車1の進行方向が矢印Y方向であるため、搬送車1の紙面上側に監視エリアAが位置しているが、監視エリアAの位置はこれに限定されない。例えば、搬送車1の進行方向が矢印Y方向と垂直に交わる紙面右方向である場合には、搬送車1の紙面右側に監視エリアAが位置することになる。
【0033】
図4を参照し、算出部12が、監視エリアA内に障害物を検知する機能について説明する。同図は、通路を走行する搬送車1を真上から観た模式図である。搬送車1は、通路壁Wa、Wbにより形成される通路上を、進行方向ベクトルVの向きに走行している。同図では、監視エリアA内に通路壁Waの一部が存在している。
【0034】
この場合、算出部12は、センサSaにより測定される各距離データに基づいて、監視エリアAの縦方向の長さDよりも短い距離データdが、監視エリアA内に存在すると判定する。つまり、算出部12は、監視エリアA内に障害物が存在すると判定する。このとき、判定誤差を低減するために、長さDよりも短い距離データdの数が、所定数以上ある場合に、監視エリアA内に障害物が存在すると判定することが好ましい。
【0035】
図5A及び
図5Bを参照し、算出部12が、近似直線を算出する機能について説明する。
図5A及び
図5Bは、監視エリアA内に障害物を検知した搬送車1を真上から観た模式図である。
【0036】
図5Aに示すように、算出部12は、センサSaにより測定される通路壁Waまでの各距離データに基づいて、通路壁Waの仮想の位置を示す近似直線Mを算出する。近似直線Mは、例えば最小二乗法等の公知の手法を用いて算出することができる。算出部12は、算出した近似直線Mを、点Pを通るように平行移動させる(
図5B参照)。点Pは、監視エリアA内で測定された各距離データにより特定される通路壁Waのうち、進行方向ベクトルVに最も近い点である。
【0037】
図4及び
図5は、搬送車1が進行方向左側にある通路壁Waに近づいた場合について例示した図となる。しかしながら、搬送車1が進行方向右側にある通路壁Wbに近づく場合や、搬送車1が左右両側にある通路壁Wa、Wb等の障害物に近づく場合もある。
【0038】
そこで、本実施形態では、搬送車1の左右のどちら側に障害物が存在するのかを区別するために、
図4及び
図5に示すように、監視エリアAを、左右2つのエリアAl、Arに分割する。そして、それぞれのエリアAl、Arごとに障害物が存在するかどうかを判定し、障害物が存在すると判定したエリアAl、Arについて、上述した手順に従って近似直線Mを算出する。つまり、搬送車1が進行方向右側にある通路壁Wbに近づいた場合には、上述した搬送車1が進行方向左側にある通路壁Waに近づいた場合と同様の手順で、近似直線Mを算出することができる。
【0039】
他方、搬送車1が左右両側にある通路壁Wa、Wbに近づいた場合には、例えば、以下のように近似直線Mを算出することができる。
図6を参照して具体的に説明する。
【0040】
同図に示す状況において、算出部12は、左右2つのエリアAl、Arそれぞれに障害物が存在すると判定することになる。算出部12は、左右2つのエリアAl、Arごとに、それぞれの障害物となる通路壁Wa、Wbに対応する近似直線Ml、Mrを算出する。近似直線Ml、Mrは、上述した搬送車1が進行方向左側にある通路壁Waに近づいた場合と同様に算出することができる。
【0041】
算出部12は、算出した各近似直線Ml、Mrの中央に位置する直線を算出し、その直線に基づいて近似直線ベクトルVmを算出する。
【0042】
図2の説明に戻る。走行制御部13は、搬送車1(車体)の走行を制御する。例えば、走行モードが自動モードである場合に、走行制御部13は、メモリに格納された制御プログラム及び制御データ並びに各種センサにより検出されたデータ等に基づいて、搬送車1を自律的に走行させる。他方、走行モードが手動モードである場合に、走行制御部13は、メモリに格納された制御プログラム及び制御データ並びに各種センサにより検出されたデータに加え、ユーザが操作するリモコン(手動操作器)から送信される操作信号に基づいて搬送車1を走行させる。
【0043】
本実施形態では、例示的に、走行モードが手動モードである場合を前提にして説明するが、走行モードが自動モードである場合にも同様に適用することができる。
【0044】
走行制御部13は、搬送車1の進行方向ベクトルVと、近似直線M又は近似直線ベクトルVmとのなす角が減少するように、搬送車1の進行方向を制御する。具体的に、走行制御部13は、以下の(a)又は(b)に記載のように、搬送車1の進行方向を制御する。
【0045】
(a)走行制御部13は、搬送車1の進行方向ベクトルVと、近似直線Mによるベクトル又は近似直線ベクトルVmとの差分が減少するように、搬送車1の進行方向を制御する。
【0046】
(b)走行制御部13は、搬送車1の進行方向ベクトルVの単位ベクトルと、近似直線によるベクトルの単位ベクトル又は近似直線ベクトルVmの単位ベクトルとの内積が1に近づくように、搬送車1の進行方向を制御する。
【0047】
走行制御部13は、監視エリアAの内側に位置する車幅監視エリア(第2領域)Aw内に障害物が検知された場合に、以下の(c)又は(d)に記載のように、搬送車1を制御する。
図3に示すように、車幅監視エリアAwの縦方向の長さは、監視エリアAと同じDであるが、車幅監視エリアAwの横方向の長さは、監視エリアAの横方向の長さLよりも短い車幅の長さLwとなる。
【0048】
(c)走行制御部13は、障害物が車幅監視エリアAwの外側に外れるように、搬送車1を回転させる。
【0049】
(d)走行制御部13は、障害物が車幅監視エリアAwの外側に外れるように、障害物が検知されたときの進行方向とは異なる方向に搬送車1を走行させる。
【0050】
上記(c)又は(d)により搬送車1を制御し、障害物が車幅監視エリアAwの外側に外れた場合には、上記(a)又は(b)により搬送車1の進行方向を制御することとすればよい。
【0051】
ここで、
図7を参照し、算出部12が、車幅監視エリアAw内に障害物を検知する機能について説明する。同図は、車幅監視エリアAw内に障害物を検知した搬送車1を真上から観た模式図である。搬送車1は、通路壁Wa、Wbにより形成される通路上を、進行方向ベクトルVの向きに走行している。同図では、監視エリアA及び車幅監視エリアAw内に通路壁Waの一部が障害物として存在している。
【0052】
この場合、算出部12は、センサSaにより測定される各距離データに基づいて、監視エリアAの縦方向の長さDよりも短い距離データdが、車幅監視エリアAw内に存在すると判定する。つまり、算出部12は、車幅監視エリアAw内に障害物が存在すると判定する。このとき、判定誤差を低減するために、長さDよりも短い距離データdの数が、所定数以上ある場合に、車幅監視エリアAw内に障害物が存在すると判定することが好ましい。
【0053】
次に、
図8を参照し、実施形態に係る搬送車1の動作について、その一例を説明する。
【0054】
最初に、搬送車1の算出部12は、センサ部11により測定される各距離データに基づいて、監視エリアA内に障害物が存在するか否かを判定する(ステップS101)。この判定がNOの場合(ステップS101;NO)、YESになるまでこの判定を繰り返す。
【0055】
上記ステップS101の判定で、監視エリアA内に障害物が存在すると判定された場合(ステップS101;YES)に、搬送車1の算出部12は、センサ部11により測定される各距離データに基づいて、車幅監視エリアAw内に障害物が存在するか否かを判定する(ステップS102)。
【0056】
この判定がYESの場合(ステップS102;YES)に、搬送車1の走行制御部13は、障害物が車幅監視エリアAwの外側に外れるように、搬送車1を回転させる(ステップS103)。そして、このステップS102の判定がNOになるまで当該判定処理を繰り返す。
【0057】
上記ステップS102の判定で、車幅監視エリアAw内に障害物が存在しないと判定された場合(ステップS102;NO)に、搬送車1の算出部12は、センサ部11により測定される障害物までの各距離データに基づいて、障害物の仮想の位置を示す近似直線Mを算出する(ステップS104)。
【0058】
続いて、搬送車1の走行制御部13は、搬送車1の進行方向ベクトルVと、近似直線Mとのなす角が減少するように、搬送車1の進行方向を制御する(ステップS105)そして、上記ステップS101の判定処理に戻る。
【0059】
上述したように、実施形態における搬送車1によれば、搬送車1の進行方向側に位置する監視エリアA内に障害物が存在する場合に、センサによりセンシングされた障害物までの距離に基づいて障害物の仮想の位置を示す近似直線Mを算出し、その近似直線Mと搬送車1の進行方向ベクトルVとのなす角が減少するように、搬送車1の進行方向を制御することができる。これにより、搬送車1が障害物に近づきすぎないように抑制することが可能となる。
【0060】
また、実施形態における搬送車1によれば、車幅監視エリアAw内に障害物が検知された場合には、障害物が車幅監視エリアAwの外側に外れるように搬送車1を回転させ、搬送車1の向きを変更させることができる。これにより、障害物に迫ろうとする搬送車1を障害物から退避させることができる。
【0061】
さらに、実施形態における搬送車1によれば、監視エリアAを左右に分けた2つのエリアAl、Arのそれぞれに障害物が検知された場合には、左右それぞれの障害物に対応する近似直線Ml、Mrを算出し、それら近似直線Ml、Mrの中央に位置する直線と搬送車1の進行方向ベクトルVとのなす角が減少するように、搬送車1の進行方向を制御することができる。これにより、搬送車1が左右両側にある障害物に近づきすぎないように抑制することが可能となる。
【0062】
それゆえ、実施形態における搬送車1によれば、狭所での走行を容易にすることができる。
【0063】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…搬送車、11…センサ部、12…算出部、13…走行制御部、A…監視エリア、Aw…車幅監視エリア、M…近似直線、Sa,Sb…センサ、V…進行方向ベクトル、Vm…近似直線ベクトル、Wa,Wb…通路壁