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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】電動式の小型移動式クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/12 20060101AFI20241115BHJP
   B66C 23/40 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B66C13/12 D
B66C23/40
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020144955
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039774
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000148380
【氏名又は名称】株式会社前田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】徳留 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】緑川 正和
(72)【発明者】
【氏名】和田 光章
(72)【発明者】
【氏名】西牧 優汰
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-225050(JP,A)
【文献】特開2014-008903(JP,A)
【文献】特開2014-107929(JP,A)
【文献】特開2007-166775(JP,A)
【文献】特開2016-222401(JP,A)
【文献】特開2011-241034(JP,A)
【文献】特開2014-193763(JP,A)
【文献】特開2001-016891(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0197181(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/12
B66C 23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用およびクレーン操作用の油圧アクチュエータを駆動するための圧油を発生する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、
バッテリと、
外部交流電源からの給電がある場合に、前記外部交流電源から供給される電力を規定の電圧範囲の一定電流の直流に変換して出力する充電器と、
オン位置およびオフ位置に操作され、前記オフ位置から前記オン位置に切り替わると、前記バッテリから前記電動モータへの給電ラインが接続状態に切り替わるキースイッチと、
前記電動モータの給電制御および前記バッテリの充電制御を行う制御装置と、
を有しており、
前記制御装置は、
前記外部交流電源からの給電がある場合において、前記キースイッチが操作されて前記オフ位置から前記オン位置に切り替わると、前記充電器の出力電流を前記バッテリおよび前記電動モータに供給し、前記充電器の出力電流によって前記バッテリの充電を開始し、前記充電器の出力電流を前記電動モータの駆動電流として用い、前記電動モータの消費電流が前記充電器の前記出力電流を超えると、前記消費電流と前記出力電流との差である不足電流を、前記バッテリから前記電動モータに供給し
前記バッテリの前記充電制御においては、
前記キースイッチの状態を監視し、
前記キースイッチが前記オン位置の状態においては、バッテリ残容量が、100%未満の予め定めた上限値を超えた場合には前記バッテリの充電を終了し、前記残容量が予め定めた下限値を下回った場合には前記バッテリの充電を開始し、
前記キースイッチが前記オン位置の状態から前記オフ位置の状態に切り替わると、前記バッテリ残容量が100%になるまで充電を行い、制御を終了することを特徴とする小型移動式クレーン。
【請求項2】
請求項1に記載の小型移動式クレーンにおいて、
前記制御装置は、
前記バッテリのセルの最大電圧値が予め定めた設定値以上になった場合には、前記バッテリの充電を停止する小型移動式クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体サイズが相対的に小さい小型移動式クレーンに関する。更に詳しくは、駆動電源としてバッテリおよび外部交流電源を用いる電動式の小型移動式クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンとして、バッテリを駆動電源とする電動式のものが知られている。このタイプの移動式クレーンでは、電動モータによって駆動される油圧ポンプから発生する圧油によってクレーン操作用、走行用の油圧アクチュエータが駆動される。バッテリ残量が少なくなると、商用電源を用いて充電される。
【0003】
従来における電動式の移動式建設機械においては、動作モードを、駆動モードと充電モードに選択的に切り替え可能となっている(特許文献1、2)。また、商用電源に電源ケーブルが接続された状態のままで、走行、作業等が行われないように構成されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5737598号公報
【文献】実開平5-62104号公報
【文献】実開平4-108302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、移動式クレーンの中には、機体サイズが相対的に小さく、吊り下げ荷重が8トン程度以下の小型移動式クレーンがある。小型移動式クレーンは、機体サイズが小さいので、積載できるバッテリのサイズにも自ずと制限があり、したがって、バッテリ容量も限られる。搭載バッテリの容量が小さいと、電動式の小型移動式クレーンの連続運転時間が短くなり、頻繁にバッテリの充電が必要になり、作業効率も低下する。
【0006】
小型移動式クレーンのクレーン作業は一般にアウトリガを張り出した定置状態で行われる。したがって、電源ケーブルを介して外部電源から駆動電力を得ながらクレーン作業を行うことが考えられる。クレーン作業における作業負荷が大きいと、電動モータの消費電力も多くなり、外部電源のみでは電力不足になり、不足電力をバッテリから供給する場合がある。バッテリ容量が小さいと、バッテリ充電のために動作モードを作業モードから充電モードに頻繁に切り替える必要があるので、長時間に亘ってクレーン作業を行うことができない場合がある。
【0007】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、搭載されているバッテリが小型で小容量であってもクレーン作業等を長時間に亘り連続して行うことのできる電動式の小型移動式クレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の小型移動式クレーンは、
走行およびクレーン操作用の油圧アクチュエータを駆動するための圧油を発生する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプを駆動する電動モータと、
バッテリと、
外部交流電源からの給電がある場合に、前記外部交流電源から供給される電力を規定の電圧範囲の一定電流の直流に変換して出力する充電器と、
オン位置およびオフ位置に操作されるキースイッチと、
前記電動モータの給電制御および前記バッテリの充電制御を行う制御装置と
を有している。
【0009】
前記制御装置は、
前記キースイッチが前記オン位置の状態において、前記外部交流電源からの給電が無い場合には、前記バッテリの出力電流を前記電動モータに供給し、
前記キースイッチが前記オン位置の状態において、前記外部交流電源からの給電がある場合には、前記充電器の出力電流を前記バッテリおよび前記電動モータに供給し、
前記外部交流電源からの給電がある場合に、前記電動モータの消費電流が前記充電器の出力電流を超えると、前記消費電流と前記出力電流との差である不足電流を、前記バッテリから前記電動モータに供給する制御を行うことを特徴としている。
【0010】
本発明の小型移動式クレーンにおいては、外部から電力が供給されない場合には、バッテリを駆動電源として用いて電動モータを駆動して走行等が行われる。外部から電力が供給される場合には、外部電源を駆動電源として用いて電動モータが駆動され、クレーン作業等が行われる。これと並行して、外部電源を用いて搭載されているバッテリの充電が行われる。
【0011】
このように、外部電源に接続された状態では、バッテリの充電量が低下すると、電動モータの駆動とバッテリの充電とが並行して行われる。バッテリの残容量不足が頻繁に発生することを回避でき、これに起因する作業効率の低下を回避できる。また、従来のバッテリ搭載型の移動式クレーンとは異なり、バッテリ充電のために、操作者が、駆動モードを充電モードに切り替えて作業を中断する操作も不要となる。
【0012】
なお、一般的な大型の電動式の移動式クレーンの場合とは異なり、小型移動式クレーンの場合には、走行範囲、作業範囲も狭く、吊り荷作業は一般にアウトリガを張り出して行う定置作業である。よって、外部電源に電源ケーブルを繋げた状態であっても、実際上においてクレーン作業に制約あるいは支障を来すことは少ない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用した小型移動式クレーンを示す側面図および作業状態を示す斜視図である。
図2】小型移動式クレーンの制御系を示す概略ブロック図である。
図3】バッテリの充放電制御動作を示す概略フローチャートである。
図4】バッテリの充放電特性の一例を示す特性曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したバッテリ搭載型の小型移動式クレーンの実施の形態を説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の一例を示すものであり、本発明は、実施の形態の構成に限定することを意図したものではない。
【0015】
図1(a)は本実施の形態に係る小型移動式クレーン1の概略側面図であり、図1(b)はクレーン作業のためにアウトリガを張り出した定置状態の一例を示す概略斜視図である。小型移動式クレーン1は、クローラー式の下部走行体2と、この上に搭載された上部フレーム3とを備えている。下部走行体2は例えば油圧駆動式の走行体である。上部フレーム3はクレーンブーム4を備えている。下部走行体2の四隅には4基のアウトリガ5が取り付けられている。下部走行体2の一方の端部には、当該下部走行体2の走行操作部6が配置され、下部走行体2の他方の端部にはモニタ7を備えたクレーン操作部8が配置されている。走行時においては、図1に示すように、操作者は、走行操作部6の側に立って操作レバーなどを操作して、小型移動式クレーン1を走行させる。
【0016】
クレーンブーム4は多段ブームであり、起伏シリンダ9、不図示の伸縮シリンダなどの油圧アクチュエータによって起伏、伸縮動作を行う。格納状態からアウトリガ5を、アウトリガ張り出しシリンダなどによって外向きとなるように旋回して張り出して、下部走行体2を接地面から浮き上がらせて安定した状態に固定される。この状態で、クレーンブーム4の起伏、伸長を行って、クレーン作業が行われる。この場合には、作業者は、クレーン操作部8の側に立って、モニタ7の画面入力操作、操作レバーの操作等を行ってアウトリガ5の張出、クレーンブーム4の旋回、起伏、伸縮動作等を行う。
【0017】
下部走行体2には、クレーン操作用の起伏シリンダ9等の油圧アクチュエータを駆動するための圧油を発生する油圧ポンプ11、および、油圧ポンプ11を駆動するための電動モータ12が搭載されている。上部フレーム3には、電動モータ12等の駆動電源であるバッテリ13が搭載されている。また、上部フレーム3の内部には、バッテリ13の充電を行う充電器14が搭載されている。充電器14からは電源ケーブル(図2参照)が引き出されている。充電器14は、外部交流電源から供給される電力を一定電圧(例えば54V)の直流に変換する。充電器14の出力電流は、バッテリ13の充電用電流および電動モータ12の駆動電流として用いられる。また、上部フレーム3の内部には、各部の駆動を制御する制御装置15が搭載されている。
【0018】
図2は小型移動式クレーン1の制御系の概略ブロック図であり、駆動電力の供給系を中心に示す。制御装置15は、電動モータ12の制御機能、走行制御機能、クレーン操作制御機能、電動モータ12への給電制御機能、バッテリ13の充電制御機能、その他の制御機能を備えている。走行操作部6あるいはクレーン操作部8に配置されているキースイッチ21がオンに切り替わると、バッテリ13から各部に電力が供給され、動作可能な状態になる。給電口22が電源ケーブル23を介して外部交流電源に接続されている場合には、電源ケーブル23を介して供給される交流電流が、充電器14に供給され、充電器14において規定の電圧範囲の一定電流(例えば、38V~66Vの50A)の直流に変換される。充電器14の出力電流によってバッテリ13が充電される。また、充電器14の出力電流は、モータドライバ24を介して、電動モータ12の駆動電力として利用される。外部交流電源に接続されていない場合には、バッテリ13が電動モータ12の駆動電源として用いられる。
【0019】
電動モータ12によって駆動される油圧ポンプ11から発生する圧油は、方向切替弁等を備えた油圧制御回路25を介して、下部走行体2の走行用油圧アクチュエータ群26、上部フレーム3のブーム起伏シリンダ等のクレーン操作用油圧アクチュエータ群27等に供給される。走行操作部6、クレーン操作部8に配置されている各種の操作レバーの操作に応じて、制御装置15により油圧制御回路25が制御され、必要な油圧アクチュエータが駆動されて、所定の走行動作、クレーン動作が行われる。
【0020】
図3はバッテリ13の充放電制御動作を示す概略フローチャートであり、図4はバッテリ13の充放電特性の一例を示す特性曲線図である。
【0021】
これらの図を参照して説明すると、操作者によってキースイッチ21が操作されてオフ位置からオン位置に切り替わると(図3のST1)、バッテリ13から各部への給電ラインが接続状態に切り替わる(図3のST2)。
【0022】
電源ケーブル23が外部交流電源に接続されて、外部交流電源からの電力が充電器14に供給されると(図3のST3)、キースイッチ21がオフ位置の場合には制御を終了する(図3のST4→ST5)。キースイッチ21がオン位置の場合には、充電器14からバッテリ13に一定電流が供給されて充電が開始する(図3のST6、図4の時点t1)。また、充電器14の出力電流が、電動モータ12の駆動電流の一部として供給可能になる。
【0023】
なお、事前に、商用電源プラグまたはブレーカより、定格電流を読み取り、クレーン操作部8のモニタ7(図2参照)上で、入力電流値を選択し、充電器14への入力上限電流を設定しておく。
【0024】
充電開始後は、制御装置15によりバッテリ13のセル電圧が監視される。セル最大電圧が予め設定した値以上、例えば2.7V以上になったことが検出されると、充電器14によるバッテリ13の充電を停止する(図3のST7→ST8)。この後は、モニタ7にエラー表示を出力し、処理を終了する(図3のST9、ST10)。
【0025】
一方、充電が正常に行われている場合には、充電中のキースイッチ21の状態を監視し(図3のST11)、キースイッチ21がオンの状態の場合には、バッテリ残容量(SOC)が一定値になるまで充電し、その後、充電を終了する(図3のST12、ST13、図4の時点t1~t2)。例えば、バッテリ残容量が90%になると充電を終了する。
【0026】
ここで、キースイッチ21がオンの状態において、外部交流電源に接続されている場合には、充電器14の出力電流が、電動モータ12に対して駆動電流として供給される。また、電動モータ12の消費電流が充電器14から供給される出力電流を上回った場合には、制御装置15は、不足電流を、バッテリ13の側から供給する制御を行う。また、キースイッチ21がオンの状態において、外部交流電源に接続されていない場合には、バッテリ13の出力電流が、電動モータ12に対して駆動電流として供給される。
【0027】
例えば、キースイッチ21がオンの状態で、外部交流電源に接続されている場合において、電動モータ12が駆動される場合には(図4の時点t3~t5)、充電器14から電動モータ12に駆動電流が供給される。また、必要に応じてバッテリ13から不足電流が補給され、徐々にバッテリ13の残容量が低下する。バッテリ13の残容量が予め設定した下限値、例えば、50%を下回ると(図4の時点t4)、バッテリ13の充電が再開される(図3のST14→ST3、ST4、ST6)。
【0028】
一方、キースイッチ21がオフの状態の場合において、外部交流電源に接続されている場合(図3のST11→ST15)には、バッテリ残容量が100%になるまで充電を行い、制御を終了する(図3のST16、ST17、ST18)
【0029】
以上説明したように、小型移動式クレーン1においては、制御装置15の制御の下でバッテリ13の充電制御および電動モータ12の給電制御が行われる。キースイッチ21がオンに切り替わった電源オンの状態において、外部交流電源からの給電が無い場合には、バッテリ13を電動モータ12の駆動電源として用いている。これに対して、電源オンの状態において、外部交流電源からの給電がある場合には、充電器14によってバッテリ13を充電すると共に、充電器14の出力電流を、電動モータ12の駆動電流として用いている。また、クレーン作業等の高負荷運転時等において電動モータ12の消費電流が充電器14の出力電流を超える場合には、不足電流を、バッテリ13から電動モータ12に供給している。
【0030】
電動モータ12の駆動と並行してバッテリ13の充電動作が自動的に行われる。よって、小容量で小型のバッテリ13が搭載されていても、クレーン作業を中断することなく行うことができる。
【0031】
また、制御装置15は、キースイッチ21がオフに切り替わった電源オフの状態においては、バッテリ13を残容量が100%となるまで充電している。これに対して、キースイッチ21がオンに切り替わった電源オンの状態においては、100%未満の残容量で充電を終了させている。これにより、バッテリ13の寿命の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0032】
1 小型移動式クレーン
2 下部走行体
3 上部フレーム
4 クレーンブーム
5 アウトリガ
6 走行操作部
7 モニタ
8 クレーン操作部
9 起伏シリンダ
11 油圧ポンプ
12 電動モータ
13 バッテリ
14 充電器
15 制御装置
21 キースイッチ
22 給電口
23 電源ケーブル
24 モータドライバ
25 油圧制御回路
26 走行用油圧アクチュエータ群
27 クレーン操作用油圧アクチュエータ群
図1
図2
図3
図4