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  • 特許-物体の反射率に依存しない飛行時間 図1
  • 特許-物体の反射率に依存しない飛行時間 図2
  • 特許-物体の反射率に依存しない飛行時間 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】物体の反射率に依存しない飛行時間
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4865 20200101AFI20241115BHJP
   G01S 7/484 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G01S7/4865
G01S7/484
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020161608
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2021056223
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】16/585,293
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516320322
【氏名又は名称】センサーズ・アンリミテッド・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】トゥック-ウエン グエン
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113530(JP,A)
【文献】特開2019-082331(JP,A)
【文献】特開2017-053833(JP,A)
【文献】特開平06-331744(JP,A)
【文献】実開平05-087583(JP,U)
【文献】国際公開第2017/006546(WO,A1)
【文献】独国特許発明第102014117097(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G01C 3/00 - 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の照明電力レベルにおいて第1の照明パルスで物体に光を当てることと、
前記第1の照明電力レベルよりも低い第2の照明電力レベルにおいて第2の照明パルスで前記物体に光を当てることと、
前記物体から戻る前記第1の照明パルスである第1の復帰パルスの少なくとも一部を所定の閾値まで積分して、第1の復帰時間を判定することと、
前記物体から戻る前記第2の照明パルスである第2の復帰パルスの少なくとも一部を前記所定の閾値まで積分して、第2の復帰時間を判定することと、
ルックアップテーブル(LUT)において、前記第1の復帰時間及び前記第2の復帰時間を前記物体までの距離に相関付けることと、
前記第1の復帰時間及び前記第2の復帰時間と、前記ルックアップテーブル(LUT)を使用して、前記物体の反射率に依存せずに前記物体までの距離を判定することと、
を含、方法。
【請求項2】
前記LUTは動作空間に限定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記LUTは5メートルから10メートルまでの範囲の動作空間に限定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の照明電力レベルは前記第1の照明電力レベルの80%である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の照明パルス及び前記第2の照明パルスは、それぞれ、ガウス時間プロファイルに適合する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記LUTを使用することは、パルス毎に1つずつ、2つのサブテーブルを使用することを含み、各サブテーブルは各々の測定された進行時間を既定の実際の進行時間に相関付け、前記LUTを使用することは、相互に最もマッチする前記サブテーブルのそれぞれにおける既定の実際の進行時間を特定することを含み、前記物体までの実際の距離を計算するために前記実際の進行時間を使用できる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の照明光源及び第2の照明光源で前記物体に光を当てることを繰り返すことによって、前記物体までの距離を更新することと、前記第1の復帰パルス及び前記第2の復帰パルスを積分することと、前記物体までの距離を判定することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
2つの異なるレベルの照明電力でシーンに光を当てるように構成される照明器と、
前記照明器からの照明を感知するセンサと、
前記照明器及び前記センサに動作可能に接続されるコントローラであって、前記センサ及び前記照明器を前記2つの異なるレベルの照明電力で使用して、物体の反射率に依存せずに前記物体までの範囲を測るように構成される、前記コントローラと、を備え、
前記コントローラは機械可読命令を含み、前記機械可読命令は、前記コントローラに、
前記照明器を使用して、第1の照明電力レベルにおいて第1の照明パルスで物体に光を当てることと、
前記照明器を使用して、前記第1の照明電力レベルよりも低い第2の照明電力レベルにおいて第2の照明パルスで前記物体に光を当てることと、
前記センサを使用して、前記物体から戻る前記第1の照明パルスである第1の復帰パルスの少なくとも一部を所定の閾値まで積分して、第1の復帰時間を判定することと、
前記センサを使用して、前記物体から戻る前記第2の照明パルスである第2の復帰パルスの少なくとも一部を前記所定の閾値まで積分して、第2の復帰時間を判定することと、
ルックアップテーブル(LUT)において、前記第1の復帰時間及び前記第2の復帰時間を前記物体までの距離に相関付けることと、
前記第1の復帰時間及び前記第2の復帰時間と、前記ルックアップテーブル(LUT)を使用して、前記物体の反射率に依存せずに前記物体までの距離を判定することと、を行わせるように構成され、システム。
【請求項9】
前記LUTは動作空間に限定される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記LUTは5メートルから10メートルまでの範囲の動作空間に限定される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2の照明電力レベルは前記第1の照明電力レベルの80%である、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の照明パルス及び前記第2の照明パルスは、それぞれ、ガウス時間プロファイルに適合する、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記LUTを使用することは、パルス毎に1つずつ、2つのサブテーブルを使用することを含み、各サブテーブルは各々の測定された進行時間を既定の実際の進行時間に相関付け、前記LUTを使用することは、相互に最もマッチする前記サブテーブルのそれぞれにおける既定の実際の進行時間を特定することを含み、前記物体までの実際の距離を計算するために前記実際の進行時間を使用できる、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府支援の研究または開発に関する記載)
本発明は、「NIGHT VISION LAB AND ELECTRONIC SENSOR DIRECTORATE」(米国陸軍)によって与えられた契約番号40010791の下、政府支援により作られたものである。政府は、本発明の特定の権利を有する。
【0002】
本開示は、画像化に関し、より詳細には、光学視差式距離計及びライダー(LIDAR)システム等の飛行時間の画像化に関する。
【背景技術】
【0003】
発光式飛行時間(ToF)深度感知適用では、深度または距離の情報は、光パルスの進行時間に基づいて計算される。再調整されたパルスが積分され閾値を超えると、受信ピクセルが戻された光の受信をマークする。反射率が不明な物体は、システムの深度精度を著しく損なう可能性がある。反射率の高い物体は、同じ距離にある反射率の低い物体よりも近くに見える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術は、その意図された目的を満たすと考えられてきた。しかしながら、飛行時間を判定するためのシステム及び方法の改善の必要性が絶えず存在している。本開示は、この必要性に対する解決策を提供している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
方法は、第1の照明電力レベルにおいて第1の照明パルスで物体に光を当てることと、第1の照明電力レベルと異なる第2の照明電力レベルにおいて第2の照明パルスで物体に光を当てることと、物体から戻る第1の照明パルスである第1の復帰パルスの少なくとも一部を積分して、第1の復帰時間を判定することと、物体から戻る第2の照明パルスである第2の復帰パルスの少なくとも一部を積分して、第2の復帰時間を判定することと、を含む。本方法は、第1の復帰時間及び第2の復帰時間を使用して、物体の反射率に依存せずに物体までの距離を判定することを含む。
【0006】
時間差を使用して物体までの距離を判定することは、ルックアップテーブル(LUT)を使用して第1の復帰時間及び第2の復帰時間を物体までの距離に相関付けることを含み得る。LUTは5メートルから10メートルまでの範囲の動作空間等の動作空間に限定され得る。
【0007】
第2の照明電力レベルは第1の照明電力レベルの80%であり得る。第1の照明パルス及び第2の照明パルスは、それぞれ、ガウス時間プロファイルに適合し得る。LUTを使用することは、パルス毎に1つずつ2つのサブテーブルを使用することを含み得、各サブテーブルは各々の測定された進行時間を既定の実際の進行時間に相関付け、LUTを使用することは、相互に最もマッチするサブテーブルのそれぞれにおける既定の実際の進行時間を特定することを含み、物体までの実際の距離を計算するために実際の進行時間を使用できる。本方法は、第1の照明光源及び第2の照明光源で物体に光を当てることを繰り返すことによって、物体までの距離を更新することと、第1の復帰パルス及び第2の復帰パルスを積分することと、時間差を判定することと、物体までの距離を判定することと、を含み得る。
【0008】
システムは、2つの異なるレベルの照明電力においてシーンに光を当てるように構成される照明器と、照明器からの照明を感知するセンサとを含む。コントローラは、照明器及びセンサに動作可能に接続される。コントローラは、センサ及び照明器を2つの異なるレベルの照明電力で使用して、物体の反射率に依存せずに物体までの範囲を測るように構成される。コントローラは、照明器及びセンサを使用して、上記に開示した方法を実施するように構成される機械可読命令を含み得る。
【0009】
主題の開示のシステム及び方法のこれら及び他の特徴は、図面と併せて解釈される以下の好ましい実施形態の詳細な説明から、当業者により容易に明らかになる。
【0010】
主題の開示に関係する当業者は、過度に試験をしないで主題の開示のデバイス及び方法を作成及び使用する方法を容易に理解できるように、特定の図面を参照して、本明細書で下記に、その好ましい実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】照明器、センサ、及びコントローラを示す、本開示に従って構造化されるシステムの実施形態の概略的斜視図である。
図2図1のシステムを使用してプロセスを示す、本開示に従った方法を示す図である。
図3図2に示されるLUT手順についてより詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで図面を参照するが、同様の参照番号は、主題の開示の同様の構造的特徴または態様を識別する。限定ではなく説明及び例示の目的で、本開示に従ったシステムの実施形態の部分図が図1に示され、全体的に参照文字100によって示される。本開示に従ったシステムの他の実施形態またはその態様は説明されるように図2図3に提供される。本明細書に説明されるシステム及び方法は、レーザ式距離測定またはLIDAR(光検出及び測距)等で、物体の反射率に依存せずに物体までの距離を測るために使用できる。
【0013】
システム100は、2つの異なるレベルの照明電力においてシーンに光を当てるように構成される照明器102を含む。図2の光の円錐106は、照明器102からの照明を示す。システム100は、また、照明器102からの照明を感知するセンサ104を含む。図1の破線によって示されるように、センサは、物体110から反射される照明器102からの照明パルスの戻りを検出できる。反射パルスの戻りのタイミングは、物体110とシステム100との間の範囲を判定するために使用される。コントローラ108は、照明器102及びセンサ104に動作可能に接続される。コントローラ108は、センサ104及び照明器102を2つの異なるレベルの照明電力で使用して、物体110の反射率に依存せずに物体110までの範囲を測るように構成される。コントローラ108は、照明器102及びセンサ104を使用して、本明細書に開示される方法を実施するように構成される機械可読命令を含み得る。
【0014】
ここで図2を参照すると、方法112は、ボックス114によって示されるように、第1の照明電力レベルにおいて第1の照明パルスで物体に光を当てることを含む。方法112は、また、図2のボックス116によって示されるように、第1の照明電力レベルよりも低い第2の照明電力レベルにおいて第2の照明パルスで物体に光を当てることを含み、パルスは時間関数としてガウス時間プロファイル曲線として表され、第2のパルスのピーク照明電力レベル(ボックス116)は第1のパルスのピーク電力レベル(ボックス114)の80%であることに留意されたい。当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、2つのパルス間の任意の他の適切な電力比を使用できることを容易に認識する。
【0015】
方法112は、ボックス118の積分によって示されるように、物体から戻る第1の照明パルスである第1の復帰パルスを少なくとも部分的に積分して、第1の復帰時間を判定することを含む。物体から戻る第2の照明パルスである復帰パルスは、ボックス120に示されるような第2の復帰時間を判定するために(少なくとも部分的に)同様に積分できる。これらの積分のそれぞれは、例えば、同じ閾値が両方のパルスに使用される場合、所定の閾値まで積分することを含み得る。本方法は、第1の復帰時間及び第2の復帰時間を使用して、物体の反射率に依存せずに、ボックス122に示されるような物体までの距離を判定することを含む。
【0016】
第1の復帰時間及び第2の復帰時間を使用して物体までの距離を判定することは、ルックアップテーブル(LUT)124を使用して第1の復帰時間及び第2の復帰時間を物体までの距離に相関付けることを含み得る。LUT124は、物体に実際の時間126(すなわち、物体が100%の反射率を有する場合にパルスが物体から戻るのにかかる時間)を提供できる。この実際の時間126は、物体の反射率に依存せずに、物体までの実際の距離を計算するために使用できる。LUT124は、5メートルから10メートルの範囲の動作空間等の動作空間、または所与の用途のための他の任意の適切な範囲に限定できる。
【0017】
ここで図3を参照すると、LUTを使用することは、パルス毎に1つずつ、2つのサブテーブル128及び130を使用することを含み得る。サブテーブル128、130のそれぞれは、縦軸上の各々の測定された進行時間を、既定の実際の進行時間と相関付ける。実際の進行時間は横軸に沿って位置する。サブテーブル128及び130は、次の方程式を使用してガウス時間プロファイルに関して生成でき、
Val=1+erf(B0.5(ti-Δt))
ここで、Valは、ti(測定または記録された進行時間)とΔt(ゼロを中心とする最初の開始パルスからカウントされた実際の進行時間)の所与の組み合わせのサブテーブル値であり、erf()はガウス誤差関数を指し、Bは次の方程式によって与えられ、
B=(4 ln(2))/(w2
ここで、wは所与のガウス時間プロファイルの半値全幅である。上記のValを計算するための方程式を使用して、2次元配列は、tiとΔtの値を(所望の動作範囲に対応する)値の範囲にわたって変動させることによって作られることができる。これは、パルスで使用される2つの異なる電力レベルで行われ、2つのサブテーブル128及び130を作ることができる。
【0018】
2つのサブテーブル128、130を使用するために、図2の方法112は、入力として第1の測定された復帰時間及び第2の測定された復帰時間を取る。(図3の両方向矢印で示されるような)サブテーブル128、130のそれぞれの行132、134の各々を分析し、行132、134に沿った垂直位置136を判定し、テーブルの値(上記の方程式から得たVal)は、2つのサブテーブル128、130に可能な限り近くなる。サブテーブル128または130のいずれかからの垂直位置136は、距離測定で使用するために計算された実際の時間である。LUT124を使用することにより、コントローラ108(図1に示される)が誤差関数を実行する必要を回避することを可能にし、したがって計算費用を節約する。当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく他のパルス形状を使用でき、LUT124が適切に修正されることを容易に認識する。本方法は、例えば、図2図3に示されるプロセスを繰り返すことによって、物体までの距離を更新することを含み得る。当業者は、LUT124及び関連プロセスが、ハードウェアがerf誤差関数を実行することを要求することを回避することが望ましい画像化プラットフォームで使用できるが、本開示の範囲から逸脱することなく、ハードウェアが許可される場合、erfを簡単に使用することが可能であることを容易に認識する。
【0019】
上記に説明し及び図面に示されるように本開示の方法及びシステムは、表面反射率に依存しない距離測定を提供する。本主題の開示の装置及び方法が好ましい実施形態を参照して示され及び説明されているが、当業者は、本主題の開示の範囲から逸脱することなく、本実施形態に変更及び/または修正がなされることを容易に認識する。
図1
図2
図3