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特許7588493フッ素系樹脂粒子含有繊維及び繊維集合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】フッ素系樹脂粒子含有繊維及び繊維集合体
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/32 20060101AFI20241115BHJP
   D01F 1/10 20060101ALI20241115BHJP
   D01F 6/08 20060101ALI20241115BHJP
   D04H 1/4318 20120101ALI20241115BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20241115BHJP
【FI】
D01F6/32
D01F1/10
D01F6/08 A
D04H1/4318
D04H1/728
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020177562
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068725
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】倉持 政宏
(72)【発明者】
【氏名】山内 俊
(72)【発明者】
【氏名】道畑 典子
(72)【発明者】
【氏名】川部 雅章
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-026919(JP,A)
【文献】特開2020-070536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F1/00- 6/96
9/00- 9/04
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系樹脂粒子を含み、また、水に不溶なポリフッ化ビニリデン又はポリイミドを含む、繊維であり、前記フッ素系樹脂粒子は粒径が10~1000nmであり、40mass%以上の割合で、突起状の状態で繊維に含まれている、繊維。
【請求項2】
フッ素系樹脂粒子が、ポリテトラフルオロエチレン粒子である、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
フッ素系樹脂粒子を含み、また、水に不溶な樹脂を含む繊維から構成された繊維集合体であり、前記フッ素系樹脂粒子は粒径が10~1000nmであり、40mass%以上の割合で、突起状の状態で繊維に含まれており、しかも繊維集合体の水に対する接触角が139°よりも大きい繊維集合体。
【請求項4】
水に不溶な樹脂がポリフッ化ビニリデン又はポリイミドである、請求項3に記載の繊維集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン粒子などのフッ素系樹脂粒子を含む繊維、及び前記繊維から構成された繊維集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をはじめとしたフッ素系樹脂は、優れた撥水性、耐薬品性、耐熱性を有する樹脂であることが知られているが、PTFEなどの多くのフッ素系樹脂は溶媒に溶けず、加熱しても流動性を示さないことから、繊維化等の加工が困難な樹脂であることが知られている。特許文献1には、PTFEを繊維化したフィルタが開示されており、実施例にはPTFE粒子水分散液に水溶性のポリエチレンオキシドを混合し、電界紡糸して製造したことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-511173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1のフィルタを構成する繊維には、水溶性の樹脂であるポリエチレンオキシドを繊維に含んでいることから、撥水性を有する繊維ではなかった。
【0005】
本発明はこのような状況においてなされたものであり、PTFEなどのフッ素系樹脂を含み、撥水性に優れる繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1にかかる発明は、「フッ素系樹脂粒子を含み、また、水に不溶な樹脂を含む、繊維。」である。
【0007】
本発明の請求項2にかかる発明は、「フッ素系樹脂粒子が、ポリテトラフルオロエチレン粒子である、請求項1に記載の繊維。」である。
【0008】
本発明の請求項3にかかる発明は、「水に不溶な樹脂が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリルのうち少なくとも1種類である、請求項1又は2に記載の繊維。」である。
【0009】
本発明の請求項4にかかる発明は、「請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維から構成された、繊維集合体。」である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1にかかる繊維は、フッ素系樹脂粒子を含み、また、水に不溶な樹脂を含むことから、撥水性に優れる繊維である。
【0011】
本発明の請求項2にかかる繊維は、繊維に含まれるフッ素系樹脂粒子が、フッ素系樹脂の中でも特に撥水性に優れる樹脂であるポリテトラフルオロエチレンから構成された粒子であることから、より撥水性に優れる繊維である。
【0012】
本発明の請求項3にかかる繊維は、繊維に含まれる水に不溶な樹脂が、特に水に溶けにくいポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリルのうち少なくとも1種類の樹脂であることから、より撥水性に優れる繊維である。
【0013】
本発明の請求項4にかかる繊維集合体は、撥水性に優れる繊維から構成されていることから、撥水性に優れる繊維集合体である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の構成を有する繊維を、SEMで拡大(倍率:10000倍)して撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の繊維には、フッ素系樹脂粒子、及び水に不溶な樹脂を含む。繊維にフッ素系樹脂粒子を含有することにより、撥水性に優れ、また、耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性、非粘着性に優れる繊維であることができる。また、フッ素系樹脂が粒子であることで、繊維の比表面積が大きく、その上、前記繊維が集合した繊維集合体がかさ高く、通気性が優れる。さらに、繊維に水に不溶な樹脂を含むことで、フッ素系樹脂粒子のみでは繊維化が困難である一方、水に不溶な樹脂と複合することで繊維化が可能になり、また、繊維が撥水性を有することができる。このフッ素系樹脂粒子に含まれるフッ素系樹脂としては、樹脂の繰り返し単位にフッ素を含む樹脂のことをいい、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及び前記樹脂を構成する各種モノマーの共重合体であることができる。また、これらのフッ素系樹脂はヒドロキシ基やカルボキシル基などの官能基の導入など、変性していてもよい。これらのフッ素系樹脂の中でも、特に撥水性に優れる樹脂である、ポリテトラフルオロエチレンがより好ましい。なお、フッ素系樹脂の構造は、直鎖状または分岐状のいずれからなるものでも構わず、また樹脂の構造がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。
【0016】
フッ素系樹脂粒子は、1種類のフッ素系樹脂で構成されていても、2種類以上のフッ素系樹脂で構成されていてもよい。なお、繊維に含まれるフッ素系樹脂が粒子であることは、繊維を顕微鏡で拡大して観察することで、繊維に含まれるフッ素系樹脂粒子の存在を確認できる。例えば、図1は電子顕微鏡の一種であるSEMで10000倍に拡大した本発明の構成を有する繊維であるが、繊維を構成している突起状の部分が、フッ素系樹脂粒子である。
【0017】
フッ素系樹脂粒子の粒径は、特に限定するものではないが、10~2000nmであることができ、50~1000nmであることができ、100~500nmであることができる。なお、本発明における粒径は、電子顕微鏡画像から測定した、粒子の最も長い長径と、長径の中点で長径と直交する短径の平均値である。
【0018】
繊維に含まれるフッ素系樹脂粒子の割合は、高ければ高いほど、より撥水性に優れ、また耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性、非粘着性に優れる繊維であることができることから、20mass%以上が好ましく、30mass%以上がより好ましく、40mass%以上が更に好ましい。繊維に含まれるフッ素系樹脂粒子の割合の上限は、繊維に含まれるフッ素系樹脂粒子の割合が高すぎると繊維形状を保てなくなるおそれがあることから、99mass%以下が現実的である。
【0019】
本発明の繊維に含まれる水に不溶な樹脂は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及び前記樹脂を構成する各種モノマーの共重合体、などのフッ素系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、ポリウレタン(PU)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリロニトリル共重合体、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂などであることができる。これらの水に不溶な樹脂の中でも、樹脂を紡糸して繊維にした際に繊維の強度が高くなる傾向があることから、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリルのいずれかであるのがより好ましく、ポリフッ化ビニリデンであるのが更に好ましい。なお、水に不溶な樹脂の構造は、直鎖状または分岐状のいずれからなるものでも構わず、また樹脂の構造がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。また、繊維に1種類のみ水に不溶な樹脂を含んでいてもよいし、繊維に2種類以上の水に不溶な樹脂を含んでいてもよい。
【0020】
繊維に含まれる水に不溶な樹脂の割合は、高ければ高いほど、繊維の強度が優れることから、1mass%以上が好ましく、5mass%以上がより好ましく、10mass%以上が更に好ましい。繊維に含まれる水に不溶な樹脂の割合の上限は、水に不溶な樹脂の割合が高すぎると、フッ素系樹脂粒子の含有量が少なく、撥水性が劣るおそれがあることから、80mass%以下が現実的である。
【0021】
本発明の繊維は、フッ素系樹脂粒子、及び水に不溶な樹脂を含むものであるが、繊維の撥水性に影響しない範囲で、添加物を含んでいても良い。添加物としては、例えば、分散剤、架橋剤、紡糸助剤などを挙げることができる。
【0022】
本発明の繊維の繊維径は、分離性能、液体保持性能、払拭性能、絶縁性能、或いは柔軟性など、様々な性能に優れるように、2μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下が更に好ましい。平均繊維径の下限は適宜選択できるが、強度に優れる繊維であるように、50nm以上が現実的である。本発明における「繊維径」は、繊維を撮影した1000~10000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定した、繊維の長軸方向に対して直交する方向における円の直径をいう。繊維の断面が円形でない異形断面の場合は、異形断面の断面積を計測し、その断面積を有する円の直径を繊維径とみなす。
【0023】
本発明の繊維の繊維径のCV値は、CV値が小さければ小さいほど、繊維径が揃っていることを意味し、繊維径が揃っていることによって、本発明の繊維が有する撥水性、耐薬品性、耐熱性などの物性が繊維によって差異が生じにくいことから、0.80以下が好ましく、0.60以下がより好ましく、0.40以下が更に好ましく、理想としては0である。この繊維径のCV値は、繊維径の標準偏差を平均繊維径で除した値、つまり、(繊維径の標準偏差/平均繊維径)である。なお、「平均繊維径」は、繊維50本の繊維径の平均をいい、「繊維径の標準偏差」は後述する平均繊維径測定時に選択した50本の繊維の各繊維径から算出した値である。
【0024】
本発明の繊維の繊維長については、特に限定するものではない。本発明における「繊維長」は、繊維を撮影した50~5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定した、繊維の長軸方向における長さをいう。
【0025】
本発明の繊維は、(繊維長/繊維径)で表すことのできるアスペクト比が200以下の短繊維であっても、アスペクト比が200を超える長繊維であってもよい。また、長繊維の中でも、繊維長が特に長い連続繊維であってもよい。なお連続繊維とは、繊維を撮影した500倍の電子顕微鏡写真において、過半数の繊維における両端部を確認できないことを意味する。更に、繊維が短繊維、長繊維のどちらかであるに関わらず、繊維を集積した繊維集合体であってもよい。
【0026】
本発明の繊維が繊維集合体である場合、繊維集合体の目付、厚さについては、使用する用途によって最適な目付、厚さが異なるため特に限定するものではない。なお、目付とは、繊維集合体の最も広い面1mあたりの質量をいい、厚さは、3.5N荷重時の厚さをいう。
【0027】
本発明の繊維は、例えば、以下の方法で製造することができる。
【0028】
最初に、粉末状もしくは有機溶媒に分散したフッ素系樹脂粒子、水に不溶な樹脂、及び水に不溶な樹脂を溶解できる溶媒を混合し、水に不溶な樹脂が溶解し、フッ素系樹脂粒子が分散した紡糸液を製造する。この溶媒は、用いるフッ素系樹脂粒子、水に不溶な樹脂により異なるため特に限定するものではなく、適宜選択できる。また、フッ素系樹脂粒子が分散した溶媒と、水に不溶な樹脂を溶解できる溶媒は同じ溶媒であっても異なる溶媒であってもよいが、紡糸する際に異なる溶媒を含んでいると、紡糸液のゲル化や紡糸液の分離による紡糸液の保存安定性の低下の恐れがあることから、フッ素系樹脂粒子が分散した溶媒と、水に不溶な樹脂を溶解できる溶媒は同じ溶媒であるのが好ましい。紡糸液におけるフッ素系樹脂粒子、及び水に不溶な樹脂の固形分濃度は、使用するフッ素系樹脂粒子、水に不溶な樹脂によって最適な値が異なるため、適宜調整できる。
【0029】
次に、前記紡糸液を紡糸して繊維を形成する。この紡糸方法として、従来公知の紡糸方法を採用することができる。例えば、湿式紡糸法、乾式紡糸法、フラッシュ紡糸法、遠心紡糸法、静電紡糸法、特開2009-287138号公報に開示されているような、ガスの剪断作用により紡糸する方法、あるいは特開2011-32593号公報に開示されているような、電界の作用に加えてガスの剪断力を作用させて紡糸する方法などによって紡糸し、繊維を形成することが出来る。これらの中でも静電紡糸法によれば、繊維径の小さい繊維を紡糸しやすいため好適である。また、紡糸した繊維を集積した繊維集合体を製造してもよい。
【0030】
なお、静電紡糸法により紡糸する場合、紡糸液の導電性が不十分であると、紡糸性に劣り、繊維化するのが困難な場合があるため、このような場合には、紡糸液に塩(紡糸助剤)を適量添加して、導電性を調節することもできる。また、繊維に含まれる溶媒の除去や、繊維の構成樹脂の結晶性向上による強度向上などの目的で、繊維を熱処理してもよい。
【0031】
アスペクト比が200以上の長繊維あるいは繊維集合体は、粉砕することで、アスペクト比が200以下の短繊維を得ることができる。粉砕方法としては、特に限定するものではないが、例えば石臼やピンミル、超音波粉砕機、カット機を使用する方法が挙げられる。
【実施例
【0032】
以下、具体例によって本発明を説明するが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
(紡糸液Aの製造)
分子量が100万のポリフッ化ビニリデン(PVDF)(A)をN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させ、PVDF(A)溶液(固形分濃度:7.5mass%)を製造した。次に、PVDF(A)溶液にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液(溶媒:DMAc、固形分濃度:40mass%)を、後述の質量比を示す繊維集合体を製造できるように混合し、紡糸液Aを製造した。
(繊維集合体の製造)
紡糸液Aを下記の条件で静電紡糸し、静電紡糸したものを160℃で30分間熱処理し、PTFE粒子とPVDF(A)から構成された繊維集合体(PTFE粒子とPVDF(A)の質量比=90:10、PTFE粒子の粒径:200~300nm、繊維径:760nm、繊維長:連続繊維、目付:7.9g/m、厚さ:17μm)を製造した。
<紡糸条件>
・電極:金属製ノズル(内径:0.33mm)
・捕集体:アースしたステンレスドラム
・ノズルからの吐出量:1g/時間
・ノズル先端と捕集体との距離:8cm
・紡糸容器内の温湿度:25℃/35%RH
・ノズルへの印加電圧:10kV
【0034】
(実施例2)
(紡糸液Bの製造)
実施例1と同じPVDF(A)溶液、及びPTFE分散液を、後述の質量比を示す繊維集合体を製造できるように混合し、紡糸液Bを製造した。
(繊維集合体の製造)
紡糸液Bを実施例1と同じ条件で静電紡糸し、静電紡糸したものを160℃で30分間熱処理し、PTFE粒子とPVDF(A)から構成された繊維集合体(PTFE粒子とPVDF(A)の質量比=80:20、PTFE粒子の粒径:200~300nm、繊維径:910nm、繊維長:連続繊維、目付:4.8g/m、厚さ:10μm)を製造した。
【0035】
(実施例3)
(紡糸液Cの製造)
分子量が75万のPVDF(B)をDMAcに溶解させ、PVDF(B)溶液(固形分濃度:14mass%)を製造した。次に、PVDF(B)溶液に実施例1と同じPTFE分散液を、後述の質量比を示す繊維集合体を製造できるように混合し、紡糸液Cを製造した。
(繊維集合体の製造)
紡糸液Cを下記の条件で静電紡糸し、静電紡糸したものを160℃で30分間熱処理し、PTFE粒子とPVDF(B)から構成された繊維集合体(PTFE粒子とPVDF(B)の質量比=90:10、PTFE粒子の粒径:200~300nm、繊維径:310nm、繊維長:連続繊維、目付:5.2g/m、厚さ:13μm)を製造した。
<紡糸条件>
・電極:金属製ノズル(内径:0.33mm)
・捕集体:アースしたステンレスドラム
・ノズルからの吐出量:1g/時間
・ノズル先端と捕集体との距離:10cm
・紡糸容器内の温湿度:25℃/35%RH
・ノズルへの印加電圧:15kV
【0036】
(実施例4)
(紡糸液Dの製造)
実施例3と同じPVDF(B)溶液、及びPTFE分散液を、後述の質量比を示す繊維集合体を製造できるように混合し、紡糸液Dを製造した。
(繊維集合体の製造)
紡糸液Dを実施例3と同じ条件で静電紡糸し、静電紡糸したものを160℃で30分間熱処理し、PTFE粒子とPVDF(B)から構成された繊維集合体(PTFE粒子とPVDF(B)の質量比=80:20、PTFE粒子の粒径:200~300nm、繊維径:300nm、繊維長:連続繊維、目付:5.0g/m、厚さ:12μm)を製造した。
【0037】
(実施例5)
(紡糸液Eの製造)
ポリイミド(PI)樹脂の前駆体であるポリアミック酸溶液(溶媒:DMAc、固形分濃度:22mass%)と実施例1と同じPTFE分散液を、後述の質量比を示す繊維集合体を製造できるように混合し、紡糸液Eを製造した。
(繊維集合体の製造)
紡糸液Eを下記の条件で静電紡糸し、静電紡糸したものを300℃で30分間熱処理し、熱処理によりポリアミック酸を脱水環化させてPIに変化させ、PTFE粒子とPIから構成された繊維集合体(PTFE粒子とPIの質量比=40:60、PTFE粒子の粒径:200~300nm、繊維径:260nm、繊維長:連続繊維、目付:2.2g/m、厚さ:5.0μm)を製造した。
<紡糸条件>
・電極:金属製ノズル(内径:0.33mm)
・捕集体:アースしたステンレスドラム
・ノズルからの吐出量:1g/時間
・ノズル先端と捕集体との距離:10cm
・紡糸容器内の温湿度:25℃/35%RH
・ノズルへの印加電圧:15kV
【0038】
(比較例1)
(繊維集合体の製造)
実施例1に記載のPVDF(A)溶液を実施例1と同じ条件で静電紡糸及び熱処理し、PVDFのみを含む繊維集合体(繊維径:190nm、繊維長:連続繊維、目付:2.9g/m、厚さ:7.0μm)を製造した。
【0039】
(比較例2)
(繊維集合体の製造)
実施例3に記載のPVDF(B)溶液を実施例3と同じ条件で静電紡糸及び熱処理し、PVDFのみを含む繊維集合体(繊維径:390nm、繊維長:連続繊維、目付:3.1g/m、厚さ:11μm)を製造した。
【0040】
(比較例3)
(繊維集合体の製造)
実施例5に記載のポリアミック酸を実施例5と同じ条件で静電紡糸及び熱処理し、PIのみから構成された繊維集合体(繊維径:480nm、繊維長:連続繊維、目付:1.6g/m、厚さ:7.0μm)を製造した。
【0041】
次に、実施例及び比較例の繊維集合体を、以下の方法で評価した。
【0042】
(接触角測定)
実施例及び比較例の繊維集合体に3μLの水を滴下し、10秒後の接触角(°)を、接触角測定装置(協和界面化学株式会社製、DM-500)を用いてθ/2により測定した。接触角が大きいほど、繊維集合体がぬれにくく撥水性が高いと評価した。
【0043】
実施例及び比較例の繊維集合体の構成樹脂と物性、及び繊維集合体の接触角を、以下の表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例1~5の繊維集合体は、繊維化が困難なPTFE樹脂を含んでいるにもかかわらず繊維集合体を製造可能であった。
また、接触角測定の結果から、フッ素系樹脂粒子であるPTFE粒子を含んでいる実施例1~5の繊維集合体は、PTFE粒子を含まない比較例1~3の繊維集合体よりも撥水性が高いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の繊維及び繊維集合体は、撥水性、耐薬品性、耐熱性を有することから、これらの物性を必要とする用途、例えば、透湿防水布や気体フィルタや液体フィルタ、電気化学素子用セパレータ、燃料電池材料、医療用材料など様々な産業用途に使用できる。
図1