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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】軸受パッド、及び軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/03 20060101AFI20241115BHJP
   F16C 37/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
F16C17/03
F16C37/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020195800
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084138
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】亀山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 拓造
(72)【発明者】
【氏名】吉峰 千尋
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-145453(JP,A)
【文献】特開2006-112499(JP,A)
【文献】特開2013-234746(JP,A)
【文献】特開2016-109269(JP,A)
【文献】特表2019-519707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/03
F16C 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転する回転軸を支持する軸受パッドであって、
内部に形成された中空部と、該中空部に潤滑油を供給する潤滑油供給路と、該中空部から外部に潤滑油を排出する潤滑油排出路と、を有するパッド本体と、
前記中空部内に充填され、空間を包含しながら前記中空部を形成する内壁面を径方向に接続する支持構造体と、
を備え、
前記支持構造体は、径方向に延びるとともに、前記内壁面に沿って間隔をあけて配列された複数のピンを有する軸受パッド。
【請求項2】
軸線回りに回転する回転軸を支持する軸受パッドであって、
内部に形成された中空部と、該中空部に潤滑油を供給する潤滑油供給路と、該中空部から外部に潤滑油を排出する潤滑油排出路と、を有するパッド本体と、
前記中空部内に充填され、空間を包含しながら前記中空部を形成する内壁面を径方向に接続する支持構造体と、
を備え、
前記支持構造体は、径方向に延びるとともに、前記内壁面に沿って間隔をあけて配列された複数のフィンを有する軸受パッド。
【請求項3】
軸線回りに回転する回転軸を支持する軸受パッドであって、
内部に形成された中空部と、該中空部に潤滑油を供給する潤滑油供給路と、該中空部から外部に潤滑油を排出する潤滑油排出路と、を有するパッド本体と、
前記中空部内に充填され、空間を包含しながら前記中空部を形成する内壁面を径方向に接続する支持構造体と、
を備え、
前記中空部は、前記パッド本体における前記回転軸の回転方向の前方側に偏った領域に形成されることで、径方向から見て周方向に延びる第一端面の寸法が前記軸線方向に延びる第二端面の寸法よりも小さく設定され、
前記潤滑油供給路、及び前記潤滑油排出路は、前記中空部の前記第一端面にそれぞれ開口している軸受パッド。
【請求項4】
軸線回りに回転する回転軸を支持する軸受パッドであって、
内部に形成された中空部と、該中空部に潤滑油を供給する潤滑油供給路と、該中空部から外部に潤滑油を排出する潤滑油排出路と、を有するパッド本体と、
前記中空部内に充填され、空間を包含しながら前記中空部を形成する内壁面を径方向に接続する支持構造体と、
を備え、
前記中空部内に設けられ、前記潤滑油供給路の出口側を向く対向面を有する仕切板をさらに有する軸受パッド。
【請求項5】
前記仕切板は、前記潤滑油供給路側から前記潤滑油排出路側に向かう第一方向に間隔をあけて複数配置されるとともに、前記第一方向に直交する第二方向に交互に配列されている請求項4に記載の軸受パッド。
【請求項6】
前記中空部は、前記パッド本体における周方向の全域にわたって形成されている請求項に記載の軸受パッド。
【請求項7】
前記潤滑油排出路は、前記軸線方向に間隔をあけて複数形成されている請求項1からのいずれか一項に記載の軸受パッド。
【請求項8】
周方向に配列された請求項1から7のいずれか一項に記載の複数の軸受パッドと、
前記軸受パッドを外周側から覆うハウジングと、
前記ハウジングの内周面に設けられ、前記軸受パッドをそれぞれ支持するピボットと、
を備える軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸受パッド、及び軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガスタービンや遠心圧縮機を含む回転機械は、軸線回りに回転する回転体であるロータと、ロータを外周側から囲む静止体であるケーシングと、を備えている。ロータの軸端は、軸受装置によって回転可能に支持されている。このような軸受装置としては、径方向の荷重を支持するジャーナル軸受や、軸線方向の荷重を支持するスラスト軸受が広く用いられている。ジャーナル軸受の具体例として下記特許文献1に記載された装置が知られている。下記特許文献1に係るティルティングパッド軸受は、ロータの外周面に油膜(潤滑油)を介して摺接する複数の軸受パッドと、この軸受パッドを外周側から支持するハウジングと、を備えている。
【0003】
ここで、回転機械の運転中には、ロータの外周面と軸受パッドとの間で油膜にせん断発熱が生じるため、軸受パッドが高温となる傾向にある。軸受パッドが高温になると、軸受装置としての性能に影響が及んでしまう。そこで、下記特許文献1には、軸受パッドの内部に潤滑油の流路(パッド内部孔)を形成して、パッド面から潤滑油の一部を軸受パッドの内部に流通させる構成を採っている。これにより、軸受パッドに対する冷却効果が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-11698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のように軸受パッドの内部に流路を形成するのみでは十分な冷却効果が得られない虞がある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、さらに高い冷却効果を有する軸受パッド、及び軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本開示に係る軸受パッドは、軸線回りに回転する回転軸を支持する軸受パッドであって、内部に形成された中空部と、該中空部に潤滑油を供給する潤滑油供給路と、該中空部から外部に潤滑油を排出する潤滑油排出路と、を有するパッド本体と、前記中空部内に充填され、空間を包含しながら前記中空部を形成する内壁面を径方向に接続する支持構造体と、を備え、前記支持構造体は、径方向に延びるとともに、前記内壁面に沿って間隔をあけて配列された複数のピンを有する。
本開示に係る軸受パッドは、軸線回りに回転する回転軸を支持する軸受パッドであって、内部に形成された中空部と、該中空部に潤滑油を供給する潤滑油供給路と、該中空部から外部に潤滑油を排出する潤滑油排出路と、を有するパッド本体と、前記中空部内に充填され、空間を包含しながら前記中空部を形成する内壁面を径方向に接続する支持構造体と、を備え、前記支持構造体は、径方向に延びるとともに、前記内壁面に沿って間隔をあけて配列された複数のフィンを有する。
本開示に係る軸受パッドは、軸線回りに回転する回転軸を支持する軸受パッドであって、内部に形成された中空部と、該中空部に潤滑油を供給する潤滑油供給路と、該中空部から外部に潤滑油を排出する潤滑油排出路と、を有するパッド本体と、前記中空部内に充填され、空間を包含しながら前記中空部を形成する内壁面を径方向に接続する支持構造体と、を備え、前記中空部は、前記パッド本体における前記回転軸の回転方向の前方側に偏った領域に形成されることで、径方向から見て周方向に延びる第一端面の寸法が前記軸線方向に延びる第二端面の寸法よりも小さく設定され、前記潤滑油供給路、及び前記潤滑油排出路は、前記中空部の前記第一端面にそれぞれ開口している。
本開示に係る軸受パッドは、軸線回りに回転する回転軸を支持する軸受パッドであって、
内部に形成された中空部と、該中空部に潤滑油を供給する潤滑油供給路と、該中空部から外部に潤滑油を排出する潤滑油排出路と、を有するパッド本体と、前記中空部内に充填され、空間を包含しながら前記中空部を形成する内壁面を径方向に接続する支持構造体と、を備え、前記中空部内に設けられ、前記潤滑油供給路の出口側を向く対向面を有する仕切板をさらに有する。
本開示に係る軸受パッドは、軸線回りに回転する回転軸を支持する軸受パッドであって、内部に形成された中空部と、該中空部に潤滑油を供給する潤滑油供給路と、該中空部から外部に潤滑油を排出する潤滑油排出路と、を有するパッド本体と、前記中空部内に充填され、空間を包含しながら前記中空部を形成する内壁面を径方向に接続する支持構造体と、を備え、前記中空部は、前記パッド本体における前記回転軸の回転方向の前方側に偏った領域に形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、さらに高い冷却効果を有する軸受パッド、及び軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第一実施形態に係る軸受装置の構成を示す断面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る軸受パッドの構成を示す斜視図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る軸受パッドの構成を示す断面図である。
図4】本開示の第一実施形態に係る支持構造体としてのラティス構造体の構成を示す斜視図である。
図5】本開示の第一実施形態に係る支持構造体のラティス構造体の他の例を示す斜視図である。
図6】本開示の第一実施形態に係る支持構造体としてのピン構造体の構成を示す斜視図である。
図7】本開示の第一実施形態に係る支持構造体としてのフィン構造体の構成を示す斜視図である。
図8】本開示の第一実施形態に係る軸受パッドを径方向内側から見た透視図である。
図9】本開示の第二実施形態に係る軸受パッドを径方向内側から見た透視図である。
図10】本開示の第二実施形態に係る軸受パッドの変形例を示す透視図である。
図11】本開示の第三実施形態に係る軸受パッドの構成を示す断面図である。
図12】本開示の第三実施形態に係る軸受パッドを径方向内側から見た透視図である。
図13】本開示の第三実施形態に係る軸受パッドの変形例を示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
(軸受装置の構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る軸受装置100について、図1から図8を参照して説明する。この軸受装置100は、例えばガスタービンや圧縮機を含む回転機械の回転軸90を回転可能に支持するためのティルティングパッド軸受である。図1に示すように、軸受装置100は、軸受パッド1と、ハウジング2と、ピボット3と、ノズル4と、を備えている。
【0011】
軸受パッド1は、軸線Acを中心とする円形断面を有する回転軸90の外周面(回転軸外周面90A)に沿って周方向に間隔をあけて複数(一例として5つ)設けられている。それぞれの軸受パッド1は、軸線Ac方向から見て周方向に湾曲した断面形状を有している。
【0012】
軸受パッド1の内周側を向く面である摺動面1Sは、回転軸外周面90Aに対して隙間をあけて対向している。摺動面1Sは、軸線Acを中心とする径方向外側に向かって凸となるように湾曲している。摺動面1Sの曲率半径は、回転軸外周面90Aの曲率半径
と同一か、わずかに大きく設定されている。摺動面1Sと回転軸外周面90Aとの間には、ノズル4(後述)から供給された潤滑油が油膜となって介在している。
【0013】
軸受パッド1の外周側を向く面であるパッド外周面1Aは、軸線Acを中心とする径方向外側に向かって凸となるように湾曲している。パッド外周面1Aの周方向における中央部は、ピボット4(後述)に当接している。
【0014】
ハウジング2は、これら複数の軸受パッド1を外周側から覆う筒状をなしている。ハウジング2には、周方向に間隔をあけて配列された複数のノズル4が設けられている。ノズル4は、外部から供給された潤滑油をハウジング2内の空間に供給する。ノズル4は、周方向において、互いに隣接する一対の軸受パッド1同士の間にそれぞれ設けられている。
【0015】
さらに、ハウジング4の内周面(ハウジング内周面2A)には、周方向に間隔をあけて配列された複数のピボット3が設けられている。ピボット3の頂部はパッド外周面1Aに点接触している。つまり、ピボット3は、軸受パッド1を揺動可能に支持している。
【0016】
(軸受パッドの詳細な構成)
次に、図2図3を参照して、軸受パッド1の詳細な構成について説明する。図2に示すように、軸受パッド1は、パッド本体10と、支持構造体Mと、を有している。パッド本体10は、軸受パッド1の外形をなす部材であり、上述の摺動面1S、パッド外周面1Aがそれぞれ形成されている。パッド本体10は、中空部Vと、潤滑油供給路11と、潤滑油排出路12と、を有している。
【0017】
中空部Vは、パッド本体10の内部に形成された空間である。中空部Vは、周方向における一方側に偏った領域にのみ形成されている。言い換えると、中空部Vは、回転軸90の回転方向における前方側(つまり、回転軸90が回っていく側:潤滑油の流れ方向における下流側)に形成されている。より詳細には、中空部Vは、パッド本体10の周方向長さのうち、回転方向前方側(下流側)の端部から1/4~1/2の範囲内に形成されている。より望ましくは、中空部Vは、回転方向前方側の端部から1/3の領域に形成される。
【0018】
中空部Vは、6つの内壁面によって形成されている。具体的には、中空部Vは、軸線Ac方向を向く一対の第一端面V1と、周方向を向く一対の第二端面V2と、径方向内側の天面V3(図3参照)と、径方向外側の底面V4(図3参照)と、によって画成されている。径方向から見た場合、第一端面V1の長さは第二端面V2の長さよりも小さく設定されている。つまり、この中空部Vは、軸線Ac方向を長辺とする長方形の断面形状を有している。
【0019】
上記の内壁面のうち、底面V4には、潤滑油供給路11の一端が開口している。潤滑油供給路11は、径方向に延びる流路である。潤滑油供給路11の他端はパッド外周面1Aに開口している。さらに、一対の第二端面V2のうち、回転方向後方側の第二端面V2には、複数(一例として4つ)の潤滑油排出路12の一端が開口している。これら潤滑油排出路12は、軸線Ac方向に間隔をあけて配列されている。図3に示すように、それぞれの潤滑油排出路12は、周方向に延びる周方向流路12Aと、この周方向流路12Aの回転方向後方側の端部から径方向内側に向かって延びる径方向流路12Bと、を有している。
【0020】
径方向流路12Bの径方向内側の端部は、摺動面1Sに形成された潤滑油出口13に接続されている。潤滑油出口13は軸線Ac方向に延びる長孔である。潤滑油出口13は、摺動面1Sにおける回転方向後方側の端部からわずかに前方側に離間した位置に形成されている。さらに、摺動面1Sにおける当該領域には、径方向内側に向かって凹むとともに軸線Ac方向に延びる切り欠きRが形成されている。潤滑油出口13はこの切り欠きR内に開口している。
【0021】
(支持構造体の構成)
中空部V内には、支持構造体Mが充填されている。支持構造体Mはラティス構造を有している。ラティス構造とは、内部に空間を包含しながら中空部V内における径方向の荷重を負担することが可能な三次元構造である。本実施形態に係る支持構造体Mは、複数の単位構造を中空部Vの内壁面に沿って配列することで形成されている。より具体的には図4に示すように、この支持構造体Mの単位構造は、径方向に延びるとともに一端が頂点Pで互いに接続された3つの柱状部M1と、これら柱状部M1の他端同士を接続する3つの接続部M2と、を有している。つまり、この単位構造は、四面体の辺部のみによって構成されている。
【0022】
なお、支持構造体Mを構成する単位構造の他の例として、図5から図7に示す形状を採ることも可能である。図5の例では、互いに交差する3つの柱状部M1bによって支持構造体Mbの単位構造が形成されている。3つの柱状部M1bの端部によって平面上に三角形の投影面が形成される。図6の例では、径方向に延びるピンM1cを複数配列することによって支持構造体Mcが形成されている。図7の例では、径方向に広がるフィンM1dを複数配列することによって支持構造体Mdが形成されている。また、詳しくは図示しないが、ポーラスラティス構造と呼ばれる三次元構造を用いて支持構造体Mを形成することも可能である。
【0023】
(中空部の内部の構成)
次いで、図8を参照して、中空部Vの内部の構成について説明する。なお、同図中では図示簡略化のため、支持構造体Mを省略している。同図に示すように、中空部V内には、複数(一例として2つ)の仕切板14が設けられている。これら仕切板14は、軸線Ac方向に間隔をあけて配列されている。それぞれの仕切板14は、中空部V内で径方向及び軸線Ac方向によって形成される面に沿って広がっている。仕切板14の厚さ方向における一方側の面(回転軸90の回転方向後方側を向く面)は、潤滑油供給路11の出口を向く対向面14Aとされている。つまり、これら仕切板14は、回転軸90の回転方向において、潤滑油供給路11の出口よりも後方側に位置している。また、軸線Ac方向において、仕切板14と潤滑油供給路11の出口とは重ならない位置にそれぞれ形成されている。仕切板14における上記の対向面14Aとは反対側を向く面(裏面14B)は、潤滑油排出路12の入口に対向している。
【0024】
(作用効果)
次に、本実施形態に係る軸受装置100の動作について説明する。回転軸90が回転するとき、軸受パッド1の摺動面1Sと回転軸外周面90Aとの間には、ノズル4から供給された潤滑油によって薄い油膜が形成される。この油膜が介在することによって、回転軸外周面90Aと摺動面1Sとの間の摩擦抵抗が軽減される。これにより、回転軸90を円滑に回転させた状態で当該回転軸90による径方向の荷重を軸受パッド1が支持する。
【0025】
ここで、回転機械の運転中には、回転軸外周面90Aと摺動面1Sとの間で油膜にせん断発熱が生じるため、軸受パッド1が高温となる傾向にある。軸受パッド1が高温になると、軸受装置100としての性能に影響が及んでしまう。そこで、本実施形態では、上述したように、軸受パッド1の内部に中空部Vが形成され、当該中空部V内に支持構造体Mが充填されている。
【0026】
上記構成によれば、中空部Vに充填された支持構造体Mの空間を潤滑油が流通することで、パッド本体10に生じた熱は当該潤滑油に伝達される。これにより、パッド本体10が中実に形成されている場合とは異なり、パッド本体10の外側だけでなく内側からも冷却することができる。したがって、パッド本体10をさらに効率的に冷却することが可能となる。さらに、支持構造体Mは中空部Vの内壁面を径方向に接続していることから、例えば中空部V内に何ら構造物が設けられていない場合に比べて、パッド本体10の剛性低下を抑えることも可能となる。一方で、支持構造体Mを設けない場合、中空部Vを形成したことによる剛性低下によって軸受パッド1の荷重性能が損なわれる虞がある。上記構成によれば、このような可能性を低減することができる。
【0027】
さらに、上記構成によれば、支持構造体Mとしてのラティス構造体が複数配列されていることによって、中空部Vの内壁面に加わる荷重を広い範囲に分散させ、より安定的に当該荷重を負担することができる。加えて、支持構造体Mの内側に形成されている空間を潤滑油が流通することで、潤滑油と支持構造体Mとの接触面積が増大する。これにより、潤滑油とパッド本体10との間の熱伝達率が高まるため、パッド本体10に対する高い冷却効果を得ることができる。
【0028】
また、上記構成によれば、軸線Ac方向に間隔をあけて複数の潤滑油排出路12が形成されていることから、軸線Ac方向におけるより広い範囲で中空部Vから潤滑油を円滑に排出させることができる。
【0029】
さらに、上記構成によれば、中空部V内に設けられた仕切板14に潤滑油の流れが衝突することで、当該仕切板14の対向面に沿って流れが分散する。より具体的には図8中の矢印で示すように、潤滑油の流れは潤滑油供給路11から中空部Vに流入した後、対向面14Aに沿って軸線Ac方向の両側に広がる。この流れは、裏面14Bに沿って再び軸線Ac方向の中央側に向かう成分と、軸線Ac方向の両側を流れ続ける成分とに分かれる。これにより、中空部V内におけるより広い範囲に潤滑油を安定的に行き渡らせることができる。その結果、当該潤滑油による冷却効果を中空部Vの全域でむらなく発揮させることができる。
【0030】
加えて、上記構成によれば、回転軸90の回転による潤滑油の発熱が顕著な回転方向前方側の領域に偏って中空部Vが形成されている。これにより、当該前方側の領域に対して潤滑油による冷却効果を積極的に与えることができる。また、中空部Vを軸受パッド1の周方向全域に形成した場合に比べて、当該中空部Vを形成したことによる剛性の低下を最小限に抑えることができる。
【0031】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、軸受パッド1の数は上記の5つに限定されず、設計や仕様に応じて4つ以下や6つ以上とすることが可能である。ノズル4の数についても同様に変更することが可能である。
【0032】
<第二実施形態>
続いて、本開示の第二実施形態に係る軸受パッド1bについて、図9を参照して説明する。なお、上記の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0033】
図9に示すように、本実施形態では潤滑油供給路11´と潤滑油排出路12´の構成が上記第一実施形態とは異なっている。潤滑油供給路11´の一端は、パッド本体10の側面10S(つまり、軸線Ac方向を向く端面)に開口している。潤滑油供給路11´の他端は、中空部Vの一方の第一端面V1に開口している。つまり、この潤滑油供給路11´は軸線Ac方向に延びている。潤滑油排出路12´は、上記の潤滑油供給路11´が接続されている第一端面V1とは異なる他方の第一端面V1から、潤滑油出口13にかけてC字状に延びている。
【0034】
さらに、中空部V内には仕切板14bが設けられている。仕切板14bは、径方向から見て、周方向を長辺とする板状をなしている。仕切板14bの厚さ方向一方側の面は、潤滑油供給路11´の出口に対向する対向面14Aとされている。仕切板14bは、軸線Ac方向において潤滑油供給路11´側に偏った位置に1つのみ設けられている。また、仕切板14bの周方向における端部と第二端面V2との間には隙間が形成されている。
【0035】
上記構成によれば、中空部Vの端面のうち、径方向から見た場合の寸法が小さい第一端面V1にそれぞれ潤滑油供給路11´、及び潤滑油排出路12´が開口している。これにより、例えば寸法が大きい第二端面V2同士の間で潤滑油が流通する場合に比べて、流路断面積が小さくなる。その結果、中空部V内における潤滑油の流速が大きくなる。したがって、潤滑油によるパッド本体10の冷却効果をさらに高めることができる。
【0036】
さらに、上記構成では、中空部V内に仕切板14bが設けられている。潤滑油供給路11´を通じて中空部V内に流入した潤滑油は、仕切板14bに衝突することで周方向に分散する(図9中の矢印)。これにより、仕切板14bの後流側では潤滑油が広く行き渡ることとなる。その結果、中空部V内で潤滑油による冷却効果をむらなく発揮させることが可能となる。
【0037】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、第二実施形態の変形例として図10に示す構成を採ることが可能である。本変形例に係る軸受パッド1cでは、中空部V内に軸線Ac方向である第一方向に間隔をあけて複数の仕切板14cが配列されている。これら仕切板14cは、第一方向に直交する第二方向(つまり、周方向)における位置が互いに異なっている。言い換えると、仕切板14cは、周方向に交互となるように配列されている。これにより、中空部V内にはジグザグ状の流路が形成されている。したがって、上記第二実施形態に係る構成と同様に、中空部V内におけるより広い範囲に潤滑油を行き渡らせることができる。
【0038】
<第三実施形態>
続いて、本開示の第三実施形態に係る軸受パッド1dについて、図11図12を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図11に示すように、本実施形態では中空部V´の構成が上記の各実施形態とは異なっている。中空部V´は、パッド本体10における周方向の全域にわたって形成されている。なお、ここで言う「周方向の全域にわたって形成されている」とは、パッド本体10の周方向の両端部に最小限の厚さを残した状態で、パッド本体10内を中空とする構成を指す。
【0039】
中空部V´内における回転軸90の回転方向前方側には潤滑油供給路11の出口が開口している。この出口は軸線Ac方向における中央部に配置されている。回転方向後方側には複数(一例として4つ)の潤滑油排出路12の入口が開口している。これら入口は、軸線Ac方向に間隔をあけて配列されている。
【0040】
中空部V´内には、複数(一例として6つ)の仕切板15が設けられている。これら仕切板15は、潤滑油供給路11の出口よりも回転方向の後方側に位置している。仕切板15は、径方向から見て、軸線Ac方向を長辺とする板状をなしている。また、これら仕切板15は、軸線Ac方向に間隔をあけて配列されている。仕切板15の厚さ方向一方側の面は、潤滑油供給路11の出口に対向する対向面15Aとされている。
【0041】
上記構成によれば、中空部V´がパッド本体10の周方向全域にわたって形成されている。これにより、パッド本体10の周方向全域で、より安定的に潤滑油による冷却効果を得ることができる。また、上述の各実施形態と同様に中空部V内に支持構造体Mが充填されていることから、中空部V´を形成したことによるパッド本体10の剛性低下を最小限に抑えることができる。
【0042】
さらに、上記構成では、中空部V´内に仕切板15が設けられている。潤滑油供給路11を通じて中空部V内に流入した潤滑油は、仕切板15に衝突することで軸線Ac方向に分散する(図12中の矢印)。これにより、仕切板15の後流側では潤滑油が広く行き渡ることとなる。その結果、中空部V´内で潤滑油による冷却効果をむらなく発揮させることが可能となる。
【0043】
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、第三実施形態の変形例として図13に示す構成を採ることが可能である。本変形例に係る軸受パッド1eでは、中空部V´内に周方向である第一方向に間隔をあけて複数の仕切板15bが配列されている。これら仕切板15bは、第一方向に直交する第二方向(つまり、軸線Ac方向)における位置が互いに異なっている。言い換えると、仕切板15bは、軸線Ac方向に交互となるように配列されている。これにより、中空部V´内にはジグザグ状の流路が形成されている。したがって、上記第三実施形態に係る構成と同様に、中空部V´内におけるより広い範囲に潤滑油を行き渡らせることができる。
【0044】
また、上記第一実施形態から第三実施形態に共通する変形例として、潤滑油供給路11の出口が形成される位置を変更することが可能である。具体的には、潤滑油供給路の出口は、パッド本体10の摺動面1S以外の面であればいずれの面にも形成することが可能である。設計や仕様に応じて当該位置が適宜設定される。
【0045】
<付記>
各実施形態に記載の軸受パッド1、及び軸受装置100は、例えば以下のように把握される。
【0046】
(1)第1の態様に係る軸受パッド1は、軸線Ac回りに回転する回転軸90を支持する軸受パッド1であって、内部に形成された中空部Vと、該中空部Vに潤滑油を供給する潤滑油供給路11と、該中空部Vから外部に潤滑油を排出する潤滑油排出路12と、を有するパッド本体10と、前記中空部V内に充填され、空間を包含しながら前記中空部Vを形成する内壁面を径方向に接続する支持構造体Mと、を備える。
【0047】
上記構成によれば、中空部Vに充填された支持構造体Mの空間を潤滑油が流通することで、パッド本体10に生じた熱は当該潤滑油に伝播する。これにより、パッド本体10を効率的に冷却することが可能となる。さらに、支持構造体Mは中空部Vの内壁面を径方向に接続していることから、例えば中空部V内に何ら構造物が設けられていない場合に比べて、パッド本体10の剛性低下を抑えることも可能となる。
【0048】
(2)第2の態様に係る軸受パッド1では、前記支持構造体Mは、少なくとも径方向に延びる柱状部M1を有するとともに、前記内壁面に沿って配列された複数のラティス構造体を有する。
【0049】
上記構成によれば、ラティス構造体が複数配列されていることによって、内壁面に加わる荷重を安定的に負担することができる。さらに、ラティス構造体の内側に形成されている空間を潤滑油が流通することで、潤滑油とパッド本体10との間の熱伝達率が高まるため、パッド本体10に対する高い冷却効果を得ることができる。
【0050】
(3)第3の態様に係る軸受パッド1では、前記支持構造体Mcは、径方向に延びるとともに、前記内壁面に沿って間隔をあけて配列された複数のピンM1cを有する。
【0051】
上記構成によれば、複数のピンM1cによって、内壁面に加わる荷重を安定的に負担することができる。さらに、ピンM1c同士の間の空間を潤滑油が流通することで、潤滑油とパッド本体10との間の熱伝達率が高まるため、パッド本体10に対する高い冷却効果を得ることができる。
【0052】
(4)第4の態様に係る軸受パッド1では、前記支持構造体Mdは、径方向に延びるとともに、前記内壁面に沿って間隔をあけて配列された複数のフィンM1dを有する。
【0053】
上記構成によれば、複数のフィンM1dによって、内壁面に加わる荷重を安定的に負担することができる。さらに、フィンM1d同士の間の空間を潤滑油が流通することで、潤滑油とパッド本体10との間の熱伝達率が高まるため、パッド本体10に対する高い冷却効果を得ることができる。
【0054】
(5)第5の態様に係る軸受パッド1では、前記潤滑油排出路12は、前記軸線Ac方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0055】
上記構成によれば、軸線Ac方向に間隔をあけて複数の潤滑油排出路12が形成されていることから、軸線Ac方向におけるより広い範囲で中空部Vから潤滑油を円滑に排出させることができる。
【0056】
(6)第6の態様に係る軸受パッド1bでは、前記中空部Vは、前記パッド本体10における前記回転軸90の回転方向の前方側に偏った領域に形成されることで、径方向から見て周方向に延びる第一端面V1の寸法が前記軸線Ac方向に延びる第二端面V2の寸法よりも小さく設定され、前記潤滑油供給路11´、及び前記潤滑油排出路12´は、前記中空部Vの前記第一端面V1にそれぞれ開口している。
【0057】
上記構成によれば、中空部Vの端面のうち、径方向から見た場合の寸法が小さい第一端面V1にそれぞれ潤滑油供給路11´、及び潤滑油排出路12´が開口している。これにより、例えば寸法が大きい第二端面V2同士の間で潤滑油が流通する場合に比べて、流路断面積が小さくなる。その結果、中空部V内における潤滑油の流速が大きくなる。したがって、潤滑油によるパッド本体10の冷却効果をさらに高めることができる。
【0058】
(7)第7の態様に係る軸受パッド1は、前記中空部V内に設けられ、前記潤滑油供給路の出口側を向く対向面14Aを有する仕切板14をさらに有する。
【0059】
上記構成によれば、仕切板14に潤滑油の流れが衝突することで、当該仕切板14の対向面14Aに沿って流れが分散する。これにより、中空部V内におけるより広い範囲に潤滑油を行き渡らせることができる。
【0060】
(8)第8の態様に係る軸受パッド1cでは、前記仕切板14cは、前記潤滑油供給路11´側から前記潤滑油排出路12´側に向かう第一方向に間隔をあけて複数配置されるとともに、前記第一方向に直交する第二方向に交互に配列されている。
【0061】
上記構成によれば、仕切板14cによって中空部V内にジグザグ状の流路が形成される。これにより、中空部V内におけるより広い範囲に潤滑油を行き渡らせることができる。
【0062】
(9)第9の態様に係る軸受パッド1では、前記中空部Vは、前記パッド本体10における前記回転軸90の回転方向の前方側に偏った領域に形成されている。
【0063】
上記構成によれば、回転軸90の回転による潤滑油の発熱が顕著な前方側の領域に中空部Vが形成されている。これにより、当該前方側の領域に対して潤滑油による冷却効果を積極的に与えることができる。
【0064】
(10)第10の態様に係る軸受パッド1dでは、前記中空部V´は、前記パッド本体10における周方向の全域にわたって形成されている。
【0065】
上記構成によれば、パッド本体10における周方向の全域で、より安定的に潤滑油による冷却効果を得ることができる。
【0066】
(11)第11の態様に係る軸受装置100は、周方向に配列された複数の軸受パッド1と、前記軸受パッド1を外周側から覆うハウジング2と、前記ハウジング2の内周面に設けられ、前記軸受パッド1をそれぞれ支持するピボット3と、を備える。
【0067】
上記構成によれば、高い冷却効果を実現しつつ、剛性低下が最小限に抑えられた軸受装置100を提供することができる。
【符号の説明】
【0068】
100 軸受装置
90 回転軸
90A 回転軸外周面
1,1b,1c,1d,1e 軸受パッド
1A パッド外周面
1S 摺動面
2 ハウジング
2A ハウジング内周面
3 ピボット
4 ノズル
10 パッド本体
10S 側面
11,11´ 潤滑油供給路
12,12´ 潤滑油排出路
12A 周方向流路
12B 径方向流路
13 潤滑油出口
14,14b,14c,15,15b 仕切板
14A,15A 対向面
14B 裏面
Ac 軸線
M,Mb,Mc,Md 支持構造体
M1,M1b 柱状部
M1c ピン
M1d フィン
M2 接続部
P 頂点
R 切り欠き
V,V´ 中空部
V1 第一端面
V2 第二端面
V3 天面
V4 底面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13