(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】積層ホース
(51)【国際特許分類】
F16L 11/08 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
F16L11/08 Z
(21)【出願番号】P 2020206341
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】外輪 高滋
(72)【発明者】
【氏名】黒田 泰介
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 亮
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-026062(JP,A)
【文献】特開昭58-017283(JP,A)
【文献】特開昭61-192988(JP,A)
【文献】特開平04-288920(JP,A)
【文献】特開2018-194068(JP,A)
【文献】特開2018-025236(JP,A)
【文献】特開平11-141751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース本体と、前記ホース本体の外周側に積層された複数の補強層とを有し、前記複数の補強層のそれぞれが補強ワイヤーを含む、積層ホースであって、
前記複数の補強層の全ての、当該補強層のワイヤー密度は、90%以上かつ96%未満であ
り、
前記積層ホースを当該積層ホースの仕様で決定された曲げ半径で曲げたときの、前記複数の補強層のそれぞれの、当該補強層の前記ワイヤー密度は、100%を超えないワイヤー密度である、積層ホース。
【請求項2】
ホース本体と、前記ホース本体の外周側に積層された複数の補強層とを有し、前記複数の補強層のそれぞれが補強ワイヤーを含む、積層ホースであって、
前記複数の補強層の全ての、当該補強層のワイヤー密度は、90%以上かつ95%未満であ
り、
前記積層ホースを当該積層ホースの仕様で決定された曲げ半径で曲げたときの、前記複数の補強層のそれぞれの、当該補強層の前記ワイヤー密度は、100%を超えないワイヤー密度である、積層ホース。
【請求項3】
ホース本体と、前記ホース本体の外周側に積層された複数の補強層とを有し、前記複数の補強層のそれぞれが補強ワイヤーを含む、積層ホースであって、
前記複数の補強層の全ての、当該補強層のワイヤー密度は、90%以上かつ95%未満であり、
前記複数の補強層のそれぞれの、当該補強層の前記ワイヤー密度は、前記ホース本体に最も近い最内側補強層から、前記ホース本体から最も遠い最外側補強層に向かうに従って小さくなっている
、積層ホース。
【請求項4】
前記複数の補強層のそれぞれの、前記補強ワイヤーの巻き付け角度は、40°以上かつ70°以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載された積層ホース。
【請求項5】
前記積層ホースを当該積層ホースの仕様で決定された曲げ半径で曲げたときの、前記複数の補強層のそれぞれの、当該補強層の前記ワイヤー密度は、100%を超えないワイヤー密度である、請求項
3に記載された積層ホース。
【請求項6】
前記積層ホースは、前記補強ワイヤーをスパイラル状に巻き付けたワイヤースパイラルホースである、請求項1~5のいずれか1項に記載された積層ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
積層ホースには、例えば、補強ワイヤーをスパイラル状に巻き付けた補強層を備える高圧ホースがある(例えば、「特許文献1」および「特許文献2」参照。)。前記高圧ホースは、内管ゴム層に前記補強層の複数を積層させている。こうした高圧ホースは、耐圧性能、耐久性能を確保する上で、前記補強層のそれぞれで前記補強ワイヤーを密に巻き付ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-151994号公報
【文献】特開平9-26062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、補強ワイヤーの密度を高めると、積層ホースの柔軟性が損なわれる。その結果、積層ホースの耐久性能は、補強ワイヤーの密度を高めたことにより、むしろ低下することになる場合がある。例えば、積層ホースの耐久性能には、揺動耐久性能と呼ばれるものがある。ここで、揺動耐久性能とは、積層ホースに対して繰り返し屈曲を与えながら、当該積層ホースに内圧を付与したときの耐久性能をいう。前記揺動耐久性能は、補強ワイヤーの密度が高まることにより積層ホースの柔軟性が損なわれると、むしろ低下することになる場合がある。
【0005】
これに対して、補強ワイヤーの密度を低くすることも考えられる。しかしながら、補強ワイヤーの密度を低くすると、耐圧性能が低下してしまう場合がある。また、補強ワイヤーの密度を低くすると、製造時において、補強ワイヤーが均一に並び難くなる傾向があった。したがって、従来の積層ホースには、耐圧性能を確保しながら揺動耐久性能を向上させることにより、耐圧性能と揺動耐久性能とを両立させる点で改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、耐圧性能と揺動耐久性能とを両立させることが可能な積層ホースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る積層ホースは、ホース本体と、前記ホース本体の外周側に積層された複数の補強層とを有し、前記複数の補強層のそれぞれが補強ワイヤーを含む、積層ホースであって、前記複数の補強層の全ての、当該補強層のワイヤー密度は、90%以上かつ96%未満である。本発明に係る積層ホースによれば、耐圧性能と揺動耐久性能とを両立させることが可能である。
【0008】
本発明に係る積層ホースは、ホース本体と、前記ホース本体の外周側に積層された複数の補強層とを有し、前記複数の補強層のそれぞれが補強ワイヤーを含む、積層ホースであって、前記複数の補強層の全ての、当該補強層のワイヤー密度は、90%以上かつ95%未満である。本発明に係る積層ホースによれば、耐圧性能と揺動耐久性能とを両立させることが可能である。
【0009】
本発明に係る積層ホースにおいて、前記複数の補強層のそれぞれの、当該補強層の前記ワイヤー密度は、前記ホース本体に最も近い最内側補強層から、前記ホース本体から最も遠い最外側補強層に向かうに従って小さくなっていることが好ましい。この場合、耐圧性能と揺動耐久性能とを効果的に両立させることができる。
【0010】
本発明に係る積層ホースにおいて、前記複数の補強層のそれぞれの、前記補強ワイヤーの巻き付け角度は、40°以上かつ70°以下であることが好ましい。この場合、特に、50°~60°が好ましい。
【0011】
本発明に係る積層ホースにおいて、前記積層ホースを当該積層ホースの仕様で決定された曲げ半径で曲げたときの、前記複数の補強層のそれぞれの、当該補強層の前記ワイヤー密度は、100%を超えないワイヤー密度であることが好ましい。この場合、揺動耐久性能をより向上させることができる。
【0012】
本発明に係る積層ホースにおいて、前記積層ホースは、前記補強ワイヤーをスパイラル状に巻き付けたワイヤースパイラルホースであることが好ましい。この場合、積層ホースは、簡易に製造可能な積層ホースとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐圧性能と揺動耐久性能とを両立させることが可能な積層ホースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る積層ホースの内部構造を概略的に示す部分斜視図である。
【
図2】
図1の積層ホースの補強層の一部を概略的に示す図である。
【
図3】
図2の補強層に含まれる補強ワイヤーの一部を例にとり、当該補強ワイヤーの巻き付け状態を概略的に示す図である。
【
図4】
図1の積層ホースを曲げ半径Rbで曲げたときの当該積層ホースの曲げ状態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の様々な実施形態に係る積層ホースについて説明する。
【0016】
図1は、本発明の第一実施形態に係る積層ホース1の内部構造を概略的に示す部分斜視図である。
図1に示すように、積層ホース1は、ホース本体11と、ホース本体11の外周側に積層された複数の補強層12とを有し、複数の補強層12のそれぞれは、補強ワイヤー13を含んでいる。
【0017】
本実施形態では、積層ホース1は、複数の筒状層を同心円状に積層してなる。積層ホース1は、液体を流通させる流路として機能する他、例えば、油圧ホースとして用いることができる。具体的には、積層ホース1は、油圧を使用して作動させる装置において、ポンプからの作動油を流通させる高圧ホースとして使用される。
【0018】
以下、積層ホース1について、より具体的に説明する。
【0019】
図1中、符号11は、上述のとおり、ホース本体である。ホース本体11は、積層ホース1を構成する筒状層のうち、最も内側に配置された内層である。本実施形態では、ホース本体11は、ゴムを含有する内側ゴム層(ゴム部材)である。本実施形態では、ホース本体11の内側には、高圧の作動油(液体)が充填されている。前記作動油は、例えば、油圧ポンプからの供給圧を、当該作動油の圧力を利用して作動する装置(例えば、建設機械)に伝達し、当該装置を作動させることができる。
【0020】
符号12は、補強層12である。補強層12は、積層ホース1を構成する筒状層のうち、積層ホース1の内層と外層との間に配置された中間層である。補強層12は、補強ワイヤー13を含んでいる。本実施形態では、補強ワイヤー13は、スパイラル(螺旋)状に巻き付けられた鋼線(ワイヤロープ)からなる。積層ホース1は、補強層12を備えることにより、積層ホース1の耐圧性能が高められている。
【0021】
本実施形態では、積層ホース1は、複数の補強層12を備えることにより、耐圧性能がより高められている。これにより、積層ホース1は、例えば、80MPa以上の高圧に対応できる。本実施形態では、積層ホース1は、4つの補強層12を備えている。
図1に示すように、4つの補強層12のそれぞれの、当該補強層12の補強ワイヤー13の巻き付け方向は、ホース厚み方向(ホース径方向)で隣り合う補強層12の補強ワイヤー13の巻き付け方向に対して互いに逆方向である。これにより、積層ホース1は、例えば、112MPa~168MPaの高圧に対応できる。
【0022】
本実施形態では、4つの補強層12は、それぞれ、第1補強層12a、第2補強層12b、第3補強層12cおよび第4補強層12dである。第1補強層12aは、ホース本体11に最も近い最内側補強層である。第2補強層12bは、第1補強層12aよりもホース本体11から遠い中間補強層である。第3補強層12cは、第2補強層12bよりもホース本体11から遠い中間補強層である。第4補強層12dは、第3補強層12cよりもホース本体11から遠い最外側補強層である。本実施形態では、第4補強層12dは、当該ホース本体11から最も遠い補強層である。
【0023】
符号10は、外被層である。外被層10は、積層ホース1を構成する筒状層のうち、最も外側に配置された外層である。本実施形態では、外被層10は、ゴムを含有するゴム層(ゴム部材)である。外被層10は、補強層12及び中間ゴム層13を介して、ホース本体11と一体に形成されている。
【0024】
また、積層ホース1は、6つの補強層12を備えることができる。この場合、積層ホース1は、例えば、112MPa~168MPaの高圧に対応できる。
【0025】
補強層12が6つの場合、当該6つの補強層12は、それぞれ、第1補強層12a、第2補強層12b、第3補強層12c、第4補強層12dに加えて、図示が省略された第5補強層12eおよび第6補強層12fである。第1補強層12aは、ホース本体11に最も近い最内側補強層である。第2補強層12bは、第1補強層12aよりもホース本体11から遠い中間補強層である。第3補強層12cは、第2補強層12bよりもホース本体11から遠い中間補強層である。第4補強層12dは、第3補強層12cよりもホース本体11から遠い中間補強層である。第5補強層12eは、第4補強層12dよりもホース本体11から遠い中間補強層である。第6補強層12fは、第5補強層12eよりもホース本体11から遠い最外側補強層である。この例では、第6補強層12fは、ホース本体11から最も遠い補強層である。
【0026】
符号14は、中間ゴム層である。中間ゴム層14は、補強層12と同様、積層ホース1を構成する筒状層のうち、積層ホース1の内層と外層との間に配置された中間層である。本実施形態では、中間ゴム層14は、ゴムを含有するゴム部材である。本実施形態では、中間ゴム層14は、4つの中間ゴム層14を含む。4つの中間ゴム層14は、それぞれ、ホース本体11と第1補強層12aとの相互間と、第1補強層12aと第2補強層12bの相互間と、第2補強層12bと第3補強層12cの相互間と、第3補強層12cと第4補強層12dの相互間と、に配置されている。
【0027】
複数の補強層12が積層された積層ホース1において、補強層12のワイヤー密度ρを高めれば、積層ホース1の耐圧性能を確保できる一方、積層ホース1の揺動耐久性能が低下することがある。
【0028】
これに対し、積層ホース1において、複数の補強層12の全ての、当該補強層12のワイヤー密度ρを、90%以上かつ96%未満とすれば、耐圧性能を確保するためのワイヤー密度ρを維持しつつ、揺動耐久性能を向上させることができる。したがって、積層ホース1によれば、耐圧性能を確保しながら揺動耐久性能を向上させることができる。これにより、積層ホース1は、耐圧性能と揺動耐久性能とを両立させることが可能である。また、ワイヤー密度ρを低くすると、製造時において、補強ワイヤー13が均一に並び難くなる傾向があった。これに対し、積層ホース1は、補強層12のそれぞれのワイヤー密度ρが一定の密度に高められていることから、製造時において補強ワイヤー13が均一に並び易くなる。このため、積層ホース1は品質の均一な積層ホースとなる。
【0029】
また、積層ホース1において、複数の補強層12の全ての、当該補強層12のワイヤー密度ρを、90%以上かつ95%未満とすれば、耐圧性能を確保するためのワイヤー密度ρを維持しつつ、揺動耐久性能を向上させることができる。したがって、積層ホース1によれば、耐圧性能を確保しながら揺動耐久性能を向上させることができる。これにより、積層ホース1は、耐圧性能と揺動耐久性能とを両立させることが可能である。また、上記ワイヤー密度ρの積層ホース1も、製造時において補強ワイヤー13が均一に並び易くなる。このため、積層ホース1は品質の均一な積層ホースとなる。
【0030】
ところで、補強層12のワイヤー密度ρは、補強層12の単位面積S12あたりに、補強ワイヤー13の面積Swが占める割合(%)をいう。ここで、補強層12の単位面積S12は、積層ホース1を平面で視たときの、補強層12の任意の面積で表すことができる。或いは、補強層12の単位面積S12は、補強層12を展開したときの、当該補強層12の任意の面積で表すこともできる。
【0031】
図2には、積層ホース1の補強層12の一部を概略的に示す。
図2は、補強層12の平面図であるが、補強層12の展開図も同様の構図である。単位面積S12の具体例としては、積層ホース1を直線状に延ばしたときの、当該積層ホース1の延在方向d1に沿った、或る一定の長さLsと、補強層12の直径D12とを基にした、これらの積(Ls×D12)によって求めることができる。
【0032】
ただし、補強層12の単位面積S12を算出する方法は、この具体例に限定されるものではない。例えば、補強層12のワイヤー密度ρは、(1)補強ワイヤー13の巻き付け直径Dw、(2)補強ワイヤー13の線径(直径)D13、(3)補強ワイヤー13の本数N13、(4)補強ワイヤー13の巻き付け角度A13の、4つのパラメータを使用して算出することができる。
【0033】
例示的な、補強層12のワイヤー密度ρの算出式は、次のとおりである。
【0034】
【0035】
また、積層ホース1において、複数の補強層12のそれぞれの、当該補強層12のワイヤー密度13は、ホース本体11に最も近い最内側補強層(12a)から、ホース本体11から最も遠い最外側補強層(12d)に向かうに従って小さくなっていることが好ましい。この場合、圧力の加わり易い積層ホース1の内側のワイヤー密度ρが高まることにより、耐圧性能を効果的に高めることができる。その一方、積層ホース1の内側のワイヤー密度ρの上昇が抑えられることにより、柔軟性を効果的に高めることができる。したがって、積層ホース1によれば、耐圧性能と揺動耐久性能とを効果的に両立させることができる。
【0036】
積層ホース1では、4つの補強層12のそれぞれの、各補強層12のワイヤー密度ρは、第1補強層12aから第4補強層12dに向かうに従って小さくなるように設定されている。積層ホース1では、第1補強層12aのワイヤー密度ρ1は、4つの補強層12のうちで最もワイヤー密度が高い。第2補強層12bのワイヤー密度ρ2は、第1補強層12aのワイヤー密度ρ1よりもワイヤー密度が低い。第3補強層12cのワイヤー密度ρ3は、第2補強層12bのワイヤー密度ρ2よりもワイヤー密度が低い。第4補強層12dのワイヤー密度ρ4は、第3補強層12cのワイヤー密度ρ3よりもワイヤー密度が低い。したがって、本実施形態では、第4補強層12dのワイヤー密度ρ4は、4つの補強層12のうちで最もワイヤー密度が低い。
【0037】
また、積層ホース1において、複数の補強層12のそれぞれの、補強ワイヤー13の巻き付け角度Aは、40°以上かつ70°以下であることが好ましい。この場合、特に、50~60°が好適である。
【0038】
図3には、
図2の補強層12に含まれる補強ワイヤー13の一部を例にとり、当該補強ワイヤー13の巻き付け状態を概略的に示す。積層ホース1では、第1補強層12aから第4補強層12dまでの全ての補強層12は、補強ワイヤー13の巻き付け角度A13が50°以上かつ60°以下となるように設定されている。補強ワイヤー13の巻き付け角度A13の具体例としては、
図3に示すように、補強ワイヤー13の中心線L13が積層ホース1の延在方向d1に対してなす鋭角側角度が挙げられる。ただし、補強ワイヤー13の巻き付け角度A13は、この例に限定されるものではない。補強ワイヤー13の巻き付け角度A13は、例えば、積層ホース1の延在方向d1に対してなす鈍角側角度とすることができる。また、補強ワイヤー13の巻き付け角度A13は、積層ホース1を平面で視たときの、積層ホース1の延在方向d1に対して直交する方向(積層ホース1の径方向)d2に対してなす鈍角側角度または鈍角側角度とすることもできる。
【0039】
また、積層ホース1では、積層ホース1を当該積層ホース1の仕様で決定された曲げ半径Rbで曲げたときの、複数の補強層12のそれぞれの、当該補強層12のワイヤー密度ρは、100%を超えないワイヤー密度であることが好ましい。この場合、補強層12に含まれる補強ワイヤー13は、積層ホース1を曲げたときに互いに干渉し難くなる。したがって、積層ホース1によれば、揺動耐久性能をより向上させることができる。
【0040】
図4には、積層ホース1を曲げ半径Rbで曲げたときの当該積層ホース1の曲げ状態を概略的に示す。ワイヤー曲げ密度ρbは、積層ホース1の仕様で決定された曲げ半径Rbで当該積層ホース1を曲げたときの当該補強層12のワイヤー密度ρである。具体的には、補強層12のワイヤー密度ρは、積層ホース1を曲げたときの、曲げ半径方向内周側から外周側で視たときの、補強層12のワイヤー密度ρである。曲げ半径Rbは、許容曲げ半径ともいい、積層ホースとしての使用に耐え得る限界の曲げ半径をいう。曲げ半径Rbは、積層ホース1を曲げたときの当該積層ホース1の曲げ半径方向最内周側に生じる曲率半径である。積層ホース1の仕様としては、例えば、積層ホースの使用状況に応じてその都度個別に求められる規格、ホースメーカーごとに予め設定された規格等が挙げられる。
【0041】
積層ホース1では、積層ホース1の仕様で決定された曲げ半径Rbで当該積層ホース1を曲げたときの、4つの補強層12のそれぞれの、各補強層12のワイヤー曲げ密度ρbが100%を超えないように設定されている。積層ホース1では、4つの補強層12のワイヤー曲げ密度ρbの全てが実質的に100%となるように各補強層12が構成されている。
【0042】
ここで、「実質的に100%」とは、100%に対して「-0.5」の誤差を含む意味である。好適には、100%に対して「-0.3」の誤差、より好適には、100%に対して「-0.2」の誤差である。即ち、積層ホース1では、当該積層ホース1を曲げ半径Rbで曲げたときの、4つの補強層12の全てのワイヤー曲げ密度ρbは、99.5~100の間、好適には、99.7~100の間、より好適には、99.8~100の間にある。
【0043】
また、積層ホース1において、積層ホース1は、補強ワイヤー13をスパイラル状に巻き付けたワイヤースパイラルホースであることが好ましい。この場合、補強層12の補強ワイヤー13はスパイラル状に巻き付けることにより配置することができる。したがって、積層ホース1は、簡易に製造可能な積層ホースとなる。
【0044】
積層ホース1は、ワイヤースパイラルホースである。積層ホース1において、補強層12は、補強ワイヤー13をスパイラル状に巻き付けたスパイラルワイヤー層である。本実施形態では、補強層12の補強ワイヤー13は、隣り合う補強層12の補強ワイヤー13の巻き付け方向に対して逆方向に巻き付けられている。
【実施例】
【0045】
以下の表1には、本発明の実施例1と、比較例1とを示す。
【0046】
【0047】
実施例1は、補強層12が四層の積層ホースである。比較例1は、補強層12が四層の積層ホースである。
【0048】
表1中、ホース口径は、ホース本体11の内径(内側直径)である。単位は、mmである。
【0049】
また、表1中、ワイヤー密度ρ1~ρ4はそれぞれ、第1補強層12aのワイヤー密度ρ、第2補強層12bのワイヤー密度ρ、第3補強層12cのワイヤー密度ρ、第4補強層12dのワイヤー密度ρである。
【0050】
また、ワイヤー曲げ密度ρb1~ρb4はそれぞれ、第1補強層12aのワイヤー曲げ密度ρb、第2補強層12bのワイヤー曲げ密度ρb、第3補強層12cのワイヤー曲げ密度ρb、第4補強層12dのワイヤー曲げ密度ρbである。ワイヤー密度ρ、ワイヤー曲げ密度ρbは、割合(%)である。
【0051】
さらに、表1中、計算破壊圧力は、積層ホース1に高圧の液体を圧送したときに、当該積層ホース1が破壊される限界の圧力である。単位は、MPaである。計算破壊圧力は、積層ホース1の耐圧性能評価の指標である。計算破壊圧力が高いほど、耐圧性能は良好である。実施例1の計算破壊圧力はいずれも、80MPa以上である。
【0052】
また、揺動インパルス回数は、積層ホース1を曲げ半径Rbで曲げたときの曲げ回数である。単位は、万回である。揺動インパルス回数は、積層ホース1の揺動耐久性能評価の指標である。揺動インパルス回数が多いほど、揺動耐久性能は良好である。実施例1の曲げ半径Rbは、140mmである。比較例1の曲げ半径Rbは、620mmである。実施例1の揺動インパルス回数は、60万回以上である。
【0053】
実施例1において、4つの補強層12の全ての、当該補強層12のワイヤー密度ρは、90%以上かつ96%未満である。同様に、実施例1において、4つの補強層12の全ての、当該補強層12のワイヤー密度ρは、90%以上かつ95%未満である。
【0054】
表1を参照すれば、実施例1は、耐圧性能を確保しながら揺動耐久性能が向上していると評価できる。したがって、表1を参照すれば、実施例1は、耐圧性能と揺動耐久性能とを両立させることが可能であることが明らかである。
【0055】
また、実施例1を参照すれば、4つの補強層12は、補強層12のワイヤー密度ρが第1補強層12aから第4補強層12dに向かうに従って小さくなるように、構成されている。
【0056】
また、実施例1を参照すれば、積層ホース1は、第1補強層12aのワイヤー曲げ密度ρb1から第4補強層12dのワイヤー曲げ密度ρb4までの全てが実質的に100%となるように、各補強層12が構成されている。
【0057】
また、表1を参照すれば、実施例1において、第4補強層12dのワイヤー曲げ密度ρが実質的に100%となるように、構成されている。
【0058】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。また、上述した各実施形態に採用された様々な構成は、相互に適宜、置き換えることができる。
【符号の説明】
【0059】
1:積層ホース, 10:外被層, 11:ホース本体, 12:補強層, 12a:第1補強層(最内側補強層), 12b:第2補強層, 12c:第3補強層, 12d:第4補強層(最外側補強層), 12e:第5補強層, 12f:第6補強層(最外側補強層), S12:補強層12の単位面積, 13:補強ワイヤー, A13:補強ワイヤーの巻き付け角度, 14:中間ゴム層, Rb:曲げ半径, ρ:ワイヤー密度, ρb:ワイヤー曲げ密度