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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ロール装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/038 20060101AFI20241115BHJP
   B65H 18/26 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B65H23/038 Z
B65H18/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020207640
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094641
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】314017635
【氏名又は名称】株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 誠
(72)【発明者】
【氏名】団 一星
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-071360(JP,A)
【文献】特開2004-307091(JP,A)
【文献】特開平10-279148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 18/00-18/28,23/00-23/16,
23/24-23/34,27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送または巻回されるフィルムの表面を押圧可能な複数のタッチロール機構を備えるロール装置であって、
前記タッチロール機構が、
中心軸周りに回転可能に支持される円柱状のロールと、
前記ロールを前記フィルムの面方向に移動可能な第1の駆動装置と、
前記ロールを、前記フィルムの表面に近づく方向及び前記フィルムの表面から離れる方向に移動可能な第2の駆動装置と、
前記ロールを、前記ロールの中心軸と直交する軸を中心として回転可能な第3の駆動装置とを備え
複数の前記タッチロール機構の1つの前記ロールの外径と、複数の前記タッチロール機構の他の1つの前記ロールの外径とが異なる、ロール装置。
【請求項2】
前記ロールは、前記ロールの回転が制御させる駆動ロール、または前記ロールが接触する前記フィルムに伴って回転するフリーロールである、請求項1に記載のロール装置。
【請求項3】
搬送に伴って生じた前記フィルムのシワを、前記フィルムの幅方向から挟むように前記タッチロール機構の前記ロールを配置可能であり、前記ロールが前記シワから離れる方向に回転する、請求項1または2に記載のロール装置。
【請求項4】
前記タッチロール機構の前記ロールは、前記フィルムをロール状に巻き取る巻取部に設けられる、請求項1~のいずれかに記載のロール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム製品の製造において、フィルムの搬送時に基材の伸縮によってフィルムに生じるシワを抑制/除去する方法について検討されており、例えば、タッチロールで搬送中のフィルムを押圧することにより、フィルム内での張力の変動や反りを低減してシワの抑制/除去する方法が知られている(特許文献1)。また、より精度よくシワを抑制/除去するために、ロールの形状や材質を特殊なものにすることも検討されており、例えば、ヘリカルロール、クラウンロール、エキスパンダーロールなどが知られている。また、搬送中のフィルムのズレ量を検出し、当該ズレ量に応じてフィルムの搬送方向を調整するガイドロール機構(自動蛇行修正装置)を用いて、シワを抑制する方法も知られている。
【0003】
また、フィルムの巻き取り時に空気を巻き込むことで生じるエアーフィルムの除去の方法についても検討されている(特許文献2)。エアーフィルムの除去の方法として、例えば、タッチロールで搬送中のフィルムを均一な圧力及び温度で押圧することで、フィルムの巻取部への密着性を高めてエアーフィルムを除去する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-015319号公報
【文献】特開2014-057905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、シワを抑制/除去するために用いられるヘリカルロールやクラウンロールは、発生したシワの発生位置や形状に応じてロール自体の設計が必要になるという問題がある。特に、クラウンロールの加工難易度は高く、ゴム系の材質であった場合はさらに加工精度が低くなり再現性も低くなる。エキスパンダーロールは、ロール軸を湾曲させることで様々なシワに対応することができるため、ヘリカルロールやクラウンロールのようなロールの再設計の必要はないが、ロールの機構変更は必要なため、コストや時間を要するという問題がある。自動蛇行修正装置においても、シワの発生状況に応じてガイドロール等の機構変更が必要となるため、コストや時間を要するという問題がある。
【0006】
それ故に、本発明は、搬送時にフィルムに生じるシワやエアーフィルムを効率的に除去可能なロール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るロール装置は、搬送または巻回されるフィルムの表面を押圧可能な複数のタッチロール機構を備えるロール装置であって、タッチロール機構が、中心軸周りに回転可能に支持される円柱状のロールと、ロールをフィルムの面方向に移動可能な第1の駆動装置と、ロールを、フィルムの表面に近づく方向及びフィルムの表面から離れる方向に移動可能な第2の駆動装置と、ロールを、ロールの中心軸と直交する軸を中心として回転可能な第3の駆動装置とを備え、複数のタッチロール機構の1つのロールの外径と、複数のタッチロール機構の他の1つのロールの外径とが異なる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送時にフィルムに生じるシワやエアーフィルムを効率的に除去可能なロール装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るタッチロール機構の概略構成を示す正面図
図2】実施形態に係るロール装置の使用状態の一例を示す斜視図
図3】実施形態に係るロール装置の使用状態の他の一例を示す斜視図
図4】実施形態に係るロール装置とフィルムの部分平面図
図5】実施形態に係るロール装置とフィルムの部分平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係るタッチロール機構の概略構成を示す正面図であり、図2及び図3は実施形態に係るロール装置の使用状態を示す斜視図である。図2及び図3においては、ロール装置100を構成するロール4のみを記載し、他の構成の記載を省略している。なお、図2及び図3において、ロール4の数は7個であるが、1以上であれば任意に変更可能とする。
【0011】
本実施形態のロール装置100は、タッチロール機構10を1以上備える。図2に示す例では、ロール装置100を構成する複数のタッチロール機構10が、搬送装置等に設けられる任意の2つの処理ロール6(搬送用ロール)の間のフィルム5の上面側に配置されている。また、図3に示す例では、ロール装置100を構成する複数のタッチロール機構10が、フィルム5をロール状に巻き取る巻取部7あるいは巻取部7の直前に設けられる。
【0012】
図1に示すように、タッチロール機構10は、第1の駆動装置1、第2の駆動装置2、第3の駆動装置3、及びロール4を備えており、フィルム5の表面を押圧可能に設けられる。ロール装置100がタッチロール機構10を複数備える場合、ロール装置100は、各タッチロール機構10の第1の駆動装置1、第2の駆動装置2、及び第3の駆動装置3をそれぞれ独立して駆動することができる。
【0013】
第1の駆動装置1は、ロール4をフィルム5の面方向に移動可能にする装置であり、シワまたはエアーフィルムの発生場所や形状に応じて、適切な場所にロール4を移動させることができる。第1の駆動装置1は、例えば、モータやシリンダー等の動力を備え、当該動力を伝達するために必要なギア、ベルト、チェーン等の部品を備えてもよい。シリンダーの駆動量は、例えば、電気、空気、磁力等で調整することができる。
【0014】
第2の駆動装置2は、ロール4をフィルム5の表面に近づく方向及びフィルム5の表面から離れる方向に移動可能にする装置であり、シワまたはエアーフィルムの形状や濃淡に応じて、ロール4のフィルム5表面への押圧力を調整することができる。第2の駆動装置2は、例えば、モータやシリンダー等の動力を備え、当該動力を伝達するために必要なギア、ベルト、チェーン等の部品を備えてもよい。
【0015】
第3の駆動装置3は、ロール4を、ロール4の中心軸Aと直交する軸Bを中心として回転可能にする装置であり、シワやエアーフィルムの発生場所や形状に応じて、ロール4の搬送方向に対する角度を調整することができる。第3の駆動装置3は、例えば、モータやシリンダー等の動力を備え、当該動力を伝達するために必要なギア、ベルト、チェーン等の部品を備えてもよい。
【0016】
ロール4は、フィルム5に発生したシワの近傍、またはエアーフィルムの発生部分を、中心軸Aを軸として回転しながら押圧することで、シワまたはエアーフィルムを除去する部材である。ロール4は、例えば円柱形状をしており、フィルム5と接する部分であるロール4の表面の材質は、例えば金属やゴムである。タッチロール機構10が複数ある場合、複数のタッチロール機構10のそれぞれのロール4の材質または大きさ(直径、長さ)は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0017】
ロール4は、中心軸Aを軸とした回転が制御される駆動ロールであってもよいし、フィルム5の搬送に伴って回転するフリーロールであってもよい。駆動ロールの場合、ロール4は、周辺に設けられる処理ロールやモータ等の動力と、ギア、ベルト、チェーン等を介して接続されることで駆動する。
【0018】
(シワの除去)
ロール装置100によるシワの除去の方法について、図4を用いて説明する。図4は、実施形態に係るロール装置とフィルムの部分平面図である。図4においては、タッチロール機構10のうちロール4以外の部分は省略し、搬送方向は白抜き矢印の方向とする。
【0019】
フィルム5に発生したシワを除去する場合、ロール装置100の各タッチロール機構10は、例えば、任意の2つの処理ロール6の間に設けられる(図2参照)。また、タッチロール機構10は、図4(a)~(f)に示すように、シワに沿って配置され、ロール4がシワから離れる方向に回転することで、シワが除去される。以下に、ロール4をロール4a~4tとして図4(a)~(f)を説明する。
【0020】
図4(a)は、搬送方向に沿ってシワが発生した場合のタッチロール機構10の配置例を示す。タッチロール機構10は、搬送方向に沿って発生したシワ(直線シワ)をフィルム5の幅方向から挟むように配置され、ロール4a及びロール4bが、直線シワから離れる方向(図4(a)の矢印の方向)に回転する。各タッチロール機構10のロール4の材質、大きさ、回転速度は同じである。ロール4の回転方向は、直線シワに対して幅方向の同じ側に配置されるロールどうしで同じとなる。具体的には、紙面においてシワの左側に配置された3つのロール4aがそれぞれ同じ方向に回転し、シワの右側に配置された3つのロール4bは、ロール4aの回転方向と直線シワを軸に線対称となる方向に回転する。これにより、フィルム5に発生した直線シワは両側から延ばされ、除去される。
【0021】
図4(b)も図4(a)と同様、直線シワが発生した場合のタッチロール機構10の配置例を示す。図4(b)では、直線シワを挟んだフィルム5の幅方向に、直線シワから離れる方向(図4(b)の矢印の方向)に回転するロール4cと、ロール4cによってフィルム5に発生する張力をカットする張力カットロール4dとが配置される。このとき、張力カットロール4dは、例えば、フリーロールとすることができる。張力カットロール4dでフィルム5を押圧することにより、ロール4cがシワを伸ばすためにフィルム5に与える張力が、張力を与える必要のない部分にまで及ぶことを阻止することができる。これにより、フィルム5に発生したシワは好適に延ばされ、除去される。
【0022】
図4(c)は、シワの形状(幅、長さ)及び濃淡(深さ)の異なる2種類の直線シワが発生した場合のタッチロール機構10の配置例を示す。いずれのシワも、図3(b)のように、直線シワから離れる方向(図4(c)の矢印の方向)に回転するロール4e、4fと、張力カットロール4g、4hとで、シワを除去することができる。ただし、シワの形状や濃淡、発生場所に応じてロールの数や材質を変更してもよく、例えば、図4(c)において直線シワから離れる方向に回転するロール4e、ロール4f、及び張力カットロール4g、ロール4hは、それぞれ材質が異なっていてもよい。これにより、発生状況に応じてより好適にシワの除去を行うことが可能となる。
【0023】
図4(d)も図4(a)、(b)と同様、直線シワが発生した場合のタッチロール機構10の配置例を示す。ただし、図4(d)では、フィルム5の幅方向に並んだ、径の異なる複数のロール4l~4pが直線シワから離れる方向(図4(d)の矢印の方向)に回転することによってシワの除去が行われる。ロール4l~4pが駆動ロールである場合、ロールの径に応じてロールの周速が異なるため、ロールによってフィルム5に与える張力を変えることができる。そのため、発生状況に応じてより好適にシワの除去を行うことが可能となる。
【0024】
図4(e)は、搬送方向に対して斜めにシワが発生した場合のタッチロール機構10の配置例を示す。タッチロール機構10は、搬送方向に対して斜めに発生したシワ(斜めシワ)をフィルム5の幅方向から挟むように配置され、ロール4が、斜めシワから離れる方向(図4(e)の矢印の方向)に回転する。このとき、図4(e)のように、シワを挟んでフィルム5の幅方向に配置されるロール4qの回転方向と搬送方向とがなす角度は、ロール4rの回転方向と搬送方向とがなす角度と異なる。また、ロール4qとロール4rとは押圧力が異なっていてもよい。これにより、フィルム5に斜めシワが発生した場合であっても、好適にシワの除去が可能となる。
【0025】
図4(f)は、直線シワと斜めシワの両方が発生した場合のタッチロール機構10の配置例を示す。図4(f)では、両シワを挟んで配置されるロール4sとロール4tとが、それぞれ最も近いシワから離れる方向(図4(f)の矢印の方向)に回転する。このとき、ロール4sとロール4tとの径及び長さが異なる。また、ロール4sの回転方向と搬送方向とのなす角度は、ロール4tの回転方向と搬送方向とのなす角度と異なっていてもよく、ロール4sとロール4tとは押圧力が異なっていてもよい。これにより、フィルム5に直線及び斜めシワが発生した場合であっても、好適にシワの除去が可能となる。
【0026】
(エアーフィルムの除去)
ロール装置100によるエアーフィルムの除去の方法について図5を用いて説明する。図5は、実施形態に係るロール装置とフィルムの部分平面図である。図5においては、タッチロール機構10のうちロール4以外の部分は省略し、搬送方向は白抜き矢印の方向とする。また、フィルム5においてパターン塗りを施した部分がエアーフィルムの発生している部分とする。
【0027】
エアーフィルムの除去を行う場合、ロール装置100の各タッチロール機構10は、フィルム5の巻き取りを行う巻取部7、または搬送方向に対して巻取部7の直前に設けられる(図3参照)。図5においてエアーフィルムの除去に用いるロール4は、フリーロールとするが、これに限定されず、駆動ロールであってもよい。
【0028】
図5(a)は、フィルム5の両端からの空気の巻き込みを防ぐことによりエアーフィルムを除去する場合のタッチロール機構10の配置例を示す。ロール4は、フィルム5の両端に巻き込まれる空気を排出するように、フィルム5の両端にそれぞれ配置される。ロール4の大きさ及び配置角度は、図5(a)のように、径が小さく、長さのあるロールであってもよく、また、左右で搬送方向に対する角度が異なっていてもよい。これにより、フィルム5のエアーフィルムを好適に除去することができる。
【0029】
図5(b)は、フィルムの両端のみエアーフィルムを除去する場合を示す。図に示すように、ロール4は、全体的に発生したエアーフィルムのうち、フィルム5の両端のエアーフィルムのみ除去するように、フィルム5の両端にそれぞれ配置される。このように、特定箇所のエアーフィルムを残すことで、フィルムのブロッキングを抑制することができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態においては、ロール装置100のタッチロール機構10は、第1の駆動装置1、第2の駆動装置2、及び第3の駆動装置3を備えるため、ロール4の、フィルム5の面方向への移動、フィルム5の表面に直交する方向への移動、及び軸Bを中心とした回転が可能となる。そのため、搬送時にフィルムに生じるシワやエアーフィルムを効率的に除去可能なロール装置100を提供することができる。
【0031】
また、タッチロール機構10が複数設けられる場合は、単数の場合よりも精度よくシワの除去が可能となる。
【0032】
また、複数のタッチロール機構10のそれぞれのロール4の大きさ(直径、長さ)および材質は自由に組み合わせ可能であるため、シワ及びエアーフィルムの発生状況に応じて適宜組み合わせることで、より精度よくシワ及びエアーフィルムの除去が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、フィルム製品の製造時において発生するシワの抑制/除去及びエアーフィルムの除去をするロール装置として利用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 第1の駆動装置
2 第2の駆動装置
3 第3の駆動装置
4 ロール
5 フィルム
7 巻取部
10 タッチロール機構
100 ロール装置
図1
図2
図3
図4
図5