(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】水路トンネル検査装置、飛行制御方法及びガス注入方法
(51)【国際特許分類】
E21F 17/00 20060101AFI20241115BHJP
B64B 1/06 20060101ALI20241115BHJP
E02B 5/00 20060101ALI20241115BHJP
E03F 7/00 20060101ALI20241115BHJP
E03F 9/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
E21F17/00
B64B1/06
E02B5/00 Z
E03F7/00
E03F9/00
(21)【出願番号】P 2021008450
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2020073538
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】山本 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】松浦 誠司
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184045(JP,A)
【文献】国際公開第2019/198768(WO,A1)
【文献】特開2001-206293(JP,A)
【文献】特開2019-167044(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199940(WO,A1)
【文献】特開2020-001493(JP,A)
【文献】特開2016-043922(JP,A)
【文献】特開2018-199915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 17/00
B64B 1/06
E02B 5/00
E03F 7/00
E03F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路トンネルの内部を飛行するように構成された水路トンネル検査装置であって、
バルーンと、
前記バルーンに接合されるガイド機構と
、
弾性的に変形可能であるように構成された第1ロッド及び第2ロッドを備えるガイドフレームと
を備え、
前記ガイド機構が、
アームと、
前記アームの先端に回転可能に接合されたローラーと
を備え
、
前記第1ロッド及び前記第2ロッドのそれぞれの両端は、それぞれの中間部分が前記バルーンから離れているように前記バルーンに接合され、
前記第1ロッドと前記第2ロッドとが、前記中間部分において互いに交差するように連結された
水路トンネル検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水路トンネル検査装置であって、
前記ガイド機構が、更に、前記バルーンに接合され、前記アームを支持する第1ベース部を備えており、
前記第1ベース部は、前記第1ベース部に対する前記アームの角度が調節可能であるように構成された
水路トンネル検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の水路トンネル検査装置であって、
前記アームが弾性的に変形可能であるように構成されている
水路トンネル検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水路トンネル検査装置であって、
更に、複数のスラスタを搭載する機体
を備え、
前記機体は、前記複数のスラスタが個別に脱着自在に構成されている
水路トンネル検査装置。
【請求項5】
水路トンネルの内部を飛行するように構成された水路トンネル検査装置であって、
バルーンと、
前記バルーンに接合されるガイド機構と、
前記バルーンを巻回するように設けられたテープ状部材
と
を備え、
前記ガイド機構が、
アームと、
前記アームの先端に回転可能に接合されたローラーと
を備えており、
前記テープ状部材の少なくとも一部に目盛りが設けられている
水路トンネル検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の水路トンネル検査装置であって、
更に、
バラスト水を蓄積する容器と、
前記バラスト水を前記水路トンネル検査装置の外部に滴下するように構成されたバラスト水滴下装置と
を備える
水路トンネル検査装置。
【請求項7】
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の水路トンネル検査装置であって、
更に、所望のガスを検知するように構成されたガス検知器を備える
水路トンネル検査装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の水路トンネル検査装置であって、
前記所望のガスが、可燃性ガス、硫化水素、一酸化炭素、酸素の少なくとも一を含む
水路トンネル検査装置。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の水路トンネル検査装置
を水路トンネルの内部
で飛行
させることと、
前記水路トンネル検査装置を前記水路トンネルの内部で飛行させるときの前記水路トンネル内の風を制御すること
と
を含み、
前記水路トンネル内の風を制御することが、
前記水路トンネルの少なくとも一方の坑口を、少なくとも部分的に閉塞することと、
送風機により前記水路トンネルの内部に風を送ることと
の少なくとも一方を含む
飛行制御方法。
【請求項10】
請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の水路トンネル検査装置を前記水路トンネル内に搬入することと、
前記バルーンに注入するガスを蓄積するボンベを前記水路トンネルの外に設置することと、
前記ボンベから前記ガスを、前記ボンベと前記バルーンの間に接続されたホースを介して前記バルーンに注入することと
を含む
ガス注入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路トンネル検査装置、飛行制御方法及びガス注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
利水、灌漑その他の目的で、多くの水路が建設され、供用されている。水路の中には、地下に建設されているもの、即ち、水路トンネル(地下水路)として建設されているものもある。
【0003】
このような水路トンネルについて検査する要望がある。水路トンネルは、経年劣化し得るので、水路トンネルの安全で安定的な供用のためには、水路トンネルの状態を定期的に検査することが望ましい。特に、大きな地震が発生したような場合には、水路トンネルの健全性を確認するために水路トンネルの壁面を検査することが望ましい。
【0004】
本出願の出願人は、先に、水路トンネルの壁面を検査するための水路トンネル検査装置について特許出願を行っている(特開2018-199915号公報参照)。特開2018-199915号公報は、バルーンに観測システム及びコントローラを搭載し、水路トンネルの内部を自律的に飛行しながら壁面を検査する飛行船型水路トンネル検査装置を開示している。
【0005】
水路トンネルの検査の精度を向上するためには、飛行船型水路トンネル検査装置を水路トンネル内で安定して飛行させることが好ましい。安定した飛行の実現のためには、飛行船型水路トンネル検査装置は、水路トンネルの壁面への接触を抑制するように構成されることが望ましく、また、仮に接触しても飛行を継続できるように構成されていることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的の一つは、水路トンネル検査装置の飛行の安定性を向上するための技術を提供することにある。本発明の他の目的及び新規な特徴は、以下の開示から当業者には理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の観点では、水路トンネルの内部を飛行するように構成された水路トンネル検査装置が提供される。当該水路トンネル検査装置は、バルーンと、前記バルーンに接合されるガイド機構とを備えている。前記ガイド機構は、アームと、前記アームの先端に回転可能に接合されたローラーとを備えている。
【0009】
本発明の他の観点では、水路トンネル検査装置の水路トンネルの内部における飛行を制御する飛行制御方法が提供される。当該飛行制御方法は、前記水路トンネル検査装置を前記水路トンネルの内部で飛行させるときの前記水路トンネル内の風を制御することを含む。前記水路トンネル内の風を制御することが、前記水路トンネルの少なくとも一方の坑口を、少なくとも部分的に閉塞することと、送風機により前記水路トンネルの内部に風を送ることとの少なくとも一方を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水路トンネル検査装置の飛行の安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態における水路トンネル検査装置の構成を示す側面図である。
【
図2】一実施形態における水路トンネル検査装置の構成を示す正面図である。
【
図3】一実施形態における機体の構成を示す側面図である。
【
図4】一実施形態における機体の構成を示す上面図である。
【
図5】一実施形態における、バルーンの上部に接合されるガイド機構の構成を示す斜視図である。
【
図6】一実施形態における、バルーンの側部に接合されるガイド機構の構成を示す斜視図である。
【
図7】一実施形態における、
図6のガイド機構の支持部材の構成を示す正面図である。
【
図8】一実施形態における、
図6のガイド機構の機能を示している。
【
図9】一実施形態におけるガイドフレームの構成を示す下面図である。
【
図10】一実施形態におけるガイドフレームの構成を示す斜視図である。
【
図11】一実施形態におけるバラスト水滴下装置の構成を示している。
【
図12】一実施形態におけるチャンバーの構成を示している断面図である。
【
図13】一実施形態における周長管理巻尺の構成を示す側面図である。
【
図14】一実施形態における機体固定テープの構成を示す側面図である。
【
図15】一実施形態における撮像モジュール保持機構の構成を示している斜視図である。
【
図16】一実施形態におけるスラスタ保持機構の構成を示している斜視図である。
【
図17】一実施形態における水路トンネル検査装置の構成を示す側面図である。
【
図18】一実施形態における水路トンネルの検査方法を示すフローチャートである。
【
図19】一実施形態におけるバルーンへのガスの注入方法を示している。
【
図20】一実施形態における水路トンネル内の風の制御方法を示している。
【
図21】一実施形態における水路トンネル内の風の制御方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<全体構成>
図1は、一実施形態における水路トンネル検査装置100の構成を示す側面図であり、
図2は、正面図である。なお、以下の説明においては、水路トンネル検査装置100の横方向にX軸が規定され、前後方向にY軸が規定され、上下方向にZ軸が規定されたXYZ直交座標系が、方向を表すために用いられることがある。図示された実施形態では、水路トンネル検査装置100は、
図1において+Y方向として図示されている前方向に飛行することに適した構成を有している。ただし、飛行方向は、+Y方向に限定されない。
【0013】
水路トンネル検査装置100は、飛行船として構成されており、水路トンネルの内部を飛行して壁面を検査するように構成されている。水路トンネルは、地下に設けられている水路であってもよい。一実施形態では、水路トンネル検査装置100は、水路トンネルの内部を飛行しながら水路トンネルの壁面を撮像して撮像画像を取得するように構成される。
【0014】
一実施形態では、
図1に図示されているように、水路トンネル検査装置100が、バルーン1と、サイドスラスタ2と、メインスラスタ3と、撮像モジュール4と、機体5とを備えている。サイドスラスタ2と、メインスラスタ3と、撮像モジュール4と、機体5とは、いずれも、バルーン1に搭載されている。
【0015】
バルーン1は、その内部に空気よりも軽い気体、例えば、ヘリウムが封入され、水路トンネル検査装置100を浮かせるための浮力を生成する。水路トンネル検査装置100は、バルーン1によって得られる浮力を利用して飛行する。バルーン1は、
図1においてY軸方向として示されている前後方向に長い略円筒形の形状を有している。一実施形態では、バルーン1は、柔軟性を有する材料、例えば、塩化ビニル製シートで形成される。バルーン1として柔軟性を有する材料を用いることで、バルーン1が折りたたみ可能になり、水路トンネル検査装置100の可搬性を向上することができる。バルーン1は、薄く軽い素材で形成されることが好ましく、塩化ビニル製シートはこのような要求を満たす材料の一つである。
【0016】
サイドスラスタ2は、バルーン1の下部に接合されており、
図1、
図2においてX軸方向として示されている横方向に推力を発生する第1の推力発生機構として構成されている。図示された実施形態では、前後方向に異なる位置に2つのサイドスラスタ2が設けられている。サイドスラスタ2は、水路トンネル検査装置100を横方向に平行移動させるための推力の発生、及び、水路トンネル検査装置100を水平面内で旋回させるための推力の発生に用いられる。2つのサイドスラスタ2が推力を発生する方向は、同一とは限らない。例えば水路トンネル検査装置100を水平面内で旋回させる場合、サイドスラスタ2の一方が+X方向に推力を発生し、他方が-X方向に推力を発生する。
【0017】
メインスラスタ3は、バルーン1の前後方向の一端、例えば後端に接合されており、水路トンネル検査装置100の前後方向に推力を発生する第2の推力発生機構として構成されている。
【0018】
撮像モジュール4は、バルーン1の前後方向の他端、例えば前端に接合されており、水路トンネルの壁面を撮像して壁面の撮像画像を取得するように構成されている。一実施形態では、撮像モジュール4は、360°カメラと照明装置を備えていてもよい。
【0019】
機体5は、バルーン1の下部に接合されており、水路トンネル検査装置100の飛行を制御するための様々な機構を搭載している。
図3は、一実施形態における機体5の構成を示す側面図であり、
図4は、上面図である。図示された実施形態では、機体5は、メカデッキ6と、一対のバーチカルスラスタ7と、コントローラ8と、バッテリー9とを備えている。メカデッキ6は、バルーン1の下部に接合可能に構成されており、バーチカルスラスタ7と、コントローラ8と、バッテリー9とを搭載して保持する。バーチカルスラスタ7は、水路トンネル検査装置100の上下方向に推力を発生する第3の推力発生機構として構成されている。一実施形態では、バーチカルスラスタ7のそれぞれが、メカデッキ6と脱着自在に連結される。バーチカルスラスタ7が機体5から個別に脱着可能である。このような実施形態では、水路トンネル検査装置100は、サイドスラスタ2、メインスラスタ3及びバーチカルスラスタ7が、互いに分離可能であるように構成されることになる。これは、後述のように、水路トンネル検査装置100を構成するパーツの水路トンネルの内部への搬入を容易にする。コントローラ8は、上述したサイドスラスタ2、メインスラスタ3、及び、バーチカルスラスタ7を制御して水路トンネル検査装置100の飛行経路を制御する。バッテリー9は、サイドスラスタ2、メインスラスタ3、バーチカルスラスタ7及びコントローラ8を動作するための電力を蓄積している。
【0020】
<ガイド機構>
図1、
図2を再度に参照して、一実施形態では、バルーン1の上部に少なくとも一のガイド機構10が接合され、側部に少なくとも一のガイド機構20が接合されている。
図1に示す実施形態では、バルーン1の上部に2つのガイド機構10が接合され、左側部に2つのガイド機構20が接合され、更に右側部に2つのガイド機構20(
図1には図示されていない)が接合されている。ガイド機構10、20は、水路トンネル検査装置100が水路トンネルの壁面に接触したときに接触の影響を小さくし、飛行の安定性を向上するために設けられている。
【0021】
図5は、一実施形態における、バルーン1の上部に接合されるガイド機構10の構成を示す斜視図である。図示した実施形態では、ガイド機構10が、バルーン1の表面に装着されるベース部11と、ベース部11に接合された一対のアーム12と、アーム12の先端に結合されたローラー13とを備えている。ベース部11は、一対のアーム12を支持するように構成されており、前側バー14と、後側バー15と、これらを連結する一対のロッド16とを備えている。ベース部11は、前側バー14が後側バー15よりも水路トンネル検査装置100の前方向に位置するようにバルーン1に接合される。アーム12は、前側バー14に接合されている。アーム12は、ベース部11に対して斜めになるように前側バー14に接合されている。アーム12が前側バー14に接合される位置は、ローラー13よりも前方向に位置している。このような構造は、水路トンネル検査装置100が前方向に飛行しているときにローラー13が壁面に接触したときの衝撃を吸収することに寄与する。一実施形態では、アーム12は、弾性変形可能な材料、例えば、炭素繊維強化プラスチックやガラス繊維強化プラスチックで形成される。ローラー13は、1対のアーム12の間に挟まれており、各アーム12に回転可能に結合されている。
【0022】
このような構造のガイド機構10は、水路トンネル検査装置100が過剰に上昇して水路トンネルの上側の壁面に接触したときに、接触の影響を抑制することができる。水路トンネル検査装置100が過剰に上昇した場合、まず、ガイド機構10のローラー13が水路トンネルの上側の壁面に接触する。ローラー13が壁面に接触して転がることで、衝撃が緩和される。これは、水路トンネル検査装置100の飛行の安定性の向上に寄与する。加えて、バルーン1が柔軟性を有する材料で形成されている場合には、ベース部11がバルーン1に食い込むことで衝撃が緩和され得る。これも水路トンネル検査装置100の飛行の安定性に寄与する。更に、アーム12が弾性変形可能な材料で形成されている場合には、アーム12のしなりによって衝撃が一層に吸収され、これも飛行の安定性の向上に寄与し得る。
【0023】
図6は、一実施形態における、バルーン1の側部に接合されるガイド機構20の構成を示す斜視図である。図示されている実施形態では、ガイド機構20が、バルーン1の表面に装着されるベース部21と、ベース部21に接合されたアーム22と、アーム22の先端に結合されたローラー23と、アーム22を支持する支持部材24と、支持部材24に接合された連結プレート25とを備えている。ベース部21は、アーム22を支持するように構成されており、前端バー26と、後端バー27と、これらを連結する一対のロッド28とを備えている。ローラー23は、アーム22に回転可能に結合されている。支持部材24は、
図7に図示されているように、トラス構造として構成されており、アーム22に連結される連結部24aと、ロッド28が嵌合されるノッチ24cが形成されている嵌合部24bとを有している。
図6に戻り、連結プレート25は、支持部材24の位置決めに用いられる。連結プレート25の一端が支持部材24に固定的に接合されている一方で、連結プレート25には前端バー26との連結に用いられる穴25aが複数設けられている。複数の穴25aのうちの一つを用いて連結プレート25が前端バー26に連結される。
図6には、連結プレート25の端に最も近い穴25a(図示されない)が前端バー26との連結に用いられている状態が図示されている。
【0024】
ガイド機構20は、アーム22のベース部21に対する角度が調節可能であるように構成されている。このような構成は、アーム22の先端に設けられたローラー23のバルーン1からの距離を水路トンネルの幅に応じて調節することを可能にする。ローラー23のバルーン1からの距離は、ローラー23が水路トンネルの壁面に接触する頻度に影響するので、ローラー23のバルーン1からの距離を適正に調節することは、水路トンネル検査装置100の飛行の安定性の向上に寄与する。
【0025】
アーム22のベース部21に対する角度を調節可能にするために、アーム22は、前端バー26に回動可能であるように連結されており、支持部材24は、アーム22となす角が自在であるようにアーム22に連結されている。このような構成では、
図8に図示されているように、支持部材24と前端バー26との間の距離を調節することで、アーム22のベース部21に対する角度を所望の角度に調節することができる。支持部材24と前端バー26との間の距離の調節は、連結プレート25と前端バー26との連結に用いられる穴25aの選択によって行われてもよい。アーム22のベース部21に対する角度を所望の角度にする支持部材24と前端バー26との間の距離に応じた穴25aが選択され、選択された穴25aを用いて連結プレート25が前端バー26に連結される。
【0026】
上述された実施形態では、ガイド機構10がバルーン1の上部に接合され、ガイド機構20がバルーン1の側部に接合されるが、ガイド機構10、20がバルーン1に接合される位置は、これらに限定されない。例えば、ガイド機構20がバルーン1の上部に接合されてもよく、ガイド機構10がバルーン1の側部に接合されてもよい。
【0027】
<ガイドフレーム>
図1を再度に参照して、一実施形態では、バルーン1の下部にサイドスラスタ2を保護するためのガイドフレーム30が接合される。
図9は、一実施形態におけるガイドフレーム30の構成を示す下面図であり、
図10は、斜視図である。ガイドフレーム30は、2本のロッド31、32と、ベース部33、34、35、36とを備えている。ロッド31、32は、弾性変形が可能であるように形成されている。一実施形態では、ロッド31、32は、弾性変形可能な材料で形成される。ロッド31、32は、例えば、炭素繊維強化プラスチックやガラス繊維強化プラスチックで形成されてもよい。ロッド31、32は、それらが交差する位置で結束体37(例えば、結束バンド)によって互いに結束されている。ロッド31は、その一端がベース部33に連結され、他端がベース部34に連結されている。ベース部33、34は、バルーン1に接合されており、ロッド31を保持するために用いられる。同様に、ロッド32は、その一端がベース部35に連結され、他端がベース部36に連結されている。ベース部35、36は、バルーン1に接合されており、ロッド32を保持するために用いられる。
【0028】
サイドスラスタ2は、このように構成されたガイドフレーム30とバルーン1の間に位置するように配置される。このような構造では、バルーン1が水路トンネルの壁面に近づいたときにはサイドスラスタ2よりも先にガイドフレーム30が壁面に接触してサイドスラスタ2を保護する。これは、水路トンネル検査装置100の飛行の安定性の向上に寄与する。
【0029】
<バラスト水滴下装置>
バルーン1には、空気よりも軽いガス、例えば、ヘリウムガスが封入されるが、空気よりも軽いガスは分子量が小さく、バルーン1から漏れやすい。バルーン1内のガスは、例えば、バルーン1のシート面やシート接合面を透過し得る。このため、時間の経過に伴ってバルーン1からのガスが徐々に抜け、バルーン1の浮力が徐々に低下する事態が生じ得る。バルーン1の浮力が徐々に低下すると、水路トンネル検査装置100が降下し得るので、バーチカルスラスタ7によって垂直方向に推力を発生する必要が生じ得る。これは、消費電力の不所望な増大を招き得る。
【0030】
このような問題に対応するために、一実施形態では、
図3、
図4に図示されているように、機体5にバラスト水滴下装置40が搭載される。バラスト水滴下装置40は、バラスト水を蓄積する容器41を備えており、容器41に蓄積されたバラスト水を徐々に滴下して水路トンネル検査装置100の外部に放出するように構成されている。一実施形態では、バラスト水滴下装置40は、サーボモーターで動作して容器41に蓄積されたバラスト水を徐々に放出するように構成された放水バルブ42を備えている。バラスト水が徐々に滴下されて放出されることで、水路トンネル検査装置100の全体の重量が徐々に減少し、バルーン1の浮力の低下が補償される。単位時間あたりに放出されるバラスト水の量は、単位時間あたりのバルーン1の浮力の低下量に応じて調節される。バラスト水の放出によってバルーン1の浮力の低下を補償することにより、垂直方向に推力を発生するための消費電力を低減し、更に、水路トンネル検査装置100の飛行の安定性を向上することができる。
【0031】
他の実施形態では、
図11に示すバラスト水滴下装置40Aがバラスト水を水路トンネル検査装置100の外部に滴下するために用いられてもよい。バラスト水滴下装置40Aは、電力の供給を受けずにバラスト水を徐々に滴下するように構成される。図示された実施形態では、バラスト水滴下装置40Aが、容器43と、チャンバー44と、クランプ45とを備えている。
【0032】
容器43は、バラスト水を蓄積するように構成されている。容器43には、その内部に空気を導入するための入口チューブ46と、容器43からチャンバー44にバラスト水を送るための上流側チューブ47とが接続されている。
【0033】
チャンバー44は、容器43から受け取ったバラスト水をその内部に滴下して蓄積するように構成されている。
図12は、一実施形態におけるチャンバー44の構成を図示している。図示された実施形態では、チャンバー44が、チャンバー本体44aと、チャンバー本体44aの上流側の端の開口を塞ぐ蓋体44bとを備えている。チャンバー本体44aは、内径寸法が下流方向に徐々に狭くなる略円筒形に形成されている。蓋体44bには流路が形成されており、蓋体44bは、上流側チューブ47から供給されるバラスト水を液滴としてチャンバー本体44aの内部に滴下するように構成されている。チャンバー本体44aの下流側の端は、下流側チューブ48が接続されており、チャンバー44に蓄積されたバラスト水は、下流側チューブ48に送られる。
図11に示すように、クランプ45は、下流側チューブ48を挟み込んで設けられている。クランプ45は、下流側チューブ48を挟み込む挟み込み量が可変であるように構成されている。クランプ45としてローラークランプが用いられる場合、該ローラークランプのローラーの位置を調節することで挟み込み量を調節してもよい。下流側チューブ48は、その端部が機体5から垂れ下がるように配置され、バラスト水は、下流側チューブ48から水路トンネル検査装置100の外部に滴下される。
【0034】
このような構成のバラスト水滴下装置40Aでは、クランプ45の挟み込み量を調節することで、単位時間あたりに放出されるバラスト水の量が調節される。単位時間あたりに放出されるバラスト水の量は、単位時間あたりのバルーン1の浮力の低下量に応じて調節され、これにより、バルーン1の浮力の低下が補償される。バラスト水滴下装置40Aは、電力を用いずにバラスト水を放出可能であり、これは、バッテリー9に蓄積された電力の節約に好適である。
【0035】
<バルーンの周長管理>
垂直方向に推力を発生するための消費電力を低減し、及び/又は、水路トンネル検査装置100の飛行の安定性を向上するためには、バルーン1が生成する浮力を適切に調節することが望ましい。バルーン1が生成する浮力は、バルーン1に封入されるガスの量に依存するので、適正な浮力を得るためには、バルーン1に封入されるガスの量を適切に管理することが望ましい。
【0036】
バルーン1に封入されるガスの量を管理するために、一実施形態では、
図1に図示されているように、少なくとも一の周長管理巻尺50が、バルーン1を巻回するように設けられている。周長管理巻尺50は、バルーン1の周長を測定し、管理するために用いられる。バルーン1の周長は、バルーン1に封入されるガスの量に依存しているので、バルーン1の周長を管理することで、バルーン1に封入されるガスの量を適切に管理することができる。一実施形態では、前後方向に異なる位置に、2本の周長管理巻尺50が設けられる。図示された実施形態では、2本の周長管理巻尺50の1本が、前側のサイドスラスタ2の近傍に設けられ、もう1本は、後側のサイドスラスタ2の近傍に設けられている。
【0037】
図13は、一実施形態における周長管理巻尺50を示している。周長管理巻尺50は、少なくとも一部に目盛りが形成されたテープ状部材として構成されている。周長管理巻尺50の端50aは、バルーン1の表面に接合されており、周長管理巻尺50がバルーン1を巻回するように設けられた状態での端50aの目盛り上の位置からバルーン1の周長が読み取られる。読み取られたバルーン1の周長に基づいて、バルーン1に封入されるガスの量が適正かが判断される。周長管理巻尺50をバルーン1の表面に常時設置しておくことで、測定のたびに周長管理巻尺50を配置する必要がなくなり、バルーン1の周長を随時測定することができる。これは、バルーン1に封入されるガスの量の管理を容易にする。
【0038】
<機体のバルーンへの固定>
図1を再度に参照して、一実施形態では、機体5が、複数の機体固定テープ60によってバルーン1に固定される。機体固定テープ60は、バルーン1に密着するようにバルーン1を巻回して設けられ、その両端が機体5に結合される。機体固定テープ60によって機体5をバルーン1に固定する構造は、機体5の取り付け位置を自在に調整することを可能にする。水路トンネル検査装置100は、組み立ての都度、前後の重量バランスの変動があり得る。機体固定テープ60によって機体5をバルーン1に固定する構造を採用することにより、重量バランスの変動に応じて機体5の取り付け位置を調整することが容易になる。
【0039】
一実施形態では、
図14に示すように、機体固定テープ60が、弾性的に伸縮可能な伸縮部分60aを有している。伸縮部分60aは、バルーン1からガスが徐々に漏れたときにバルーン1の周長の減少に追随して縮み、機体固定テープ60の緩みを防止する。一実施形態では、伸縮部分60aがゴムバンドで形成されてもよい。
【0040】
<バルーンへの機器の取り付け>
図1、
図2を再度に参照して、柔軟性を有するバルーン1の前端に撮像モジュール4を取り付ける場合、撮像モジュール4の重量によって撮像モジュール4の向きが下に傾き得る。これは、撮像モジュール4によって得られる画像の質に影響を及ぼし得る。例えば、撮像モジュール4の向きが不適性であると、所望の撮像範囲の画像が得られないことがあり得る。
【0041】
撮像モジュール4を適正な向きでバルーン1に接合するために、一実施形態では、
図15に示すような構成の撮像モジュール保持機構70が用いられる。図示された実施形態では、撮像モジュール4が、360°カメラ51と、水路トンネルの内部を照明するためのLED (light emitting diode) モジュール52と、台座53とを備えており、撮像モジュール保持機構70が、複数の固定用ピース71と、複数の固定ケーブル72、73とを備えている。図示された実施形態では、360°カメラ51がLEDモジュール52に接合されており、該LEDモジュール52が更に台座53に接合されている。台座53は、LEDモジュール52に接合されるハブ部53aと、リング状のリム部53bと、リム部53bをハブ部53aに連結する複数のスポーク部材53cとを備えている。固定用ピース71は、バルーン1に接合されており、それぞれが固定ケーブル72を保持するように構成されている。固定ケーブル72は、端が固定用ピース71に結合されており、更に、撮像モジュール4の台座53に縛着されている。固定用ピース71は、十分に広い間隔で設置されており、固定用ピース71にそれぞれに結合されている複数の固定ケーブル72が、異なる方向から台座53を引っ張って保持している。固定ケーブル73は、端が固定用ピース71に結合されており、更に、LEDモジュール52に縛着されている。図示された実施形態では、2本の固定ケーブル73が、撮像モジュール4に対して斜め上方にある2個の固定用ピース71にそれぞれ結合されており、固定ケーブル73は、斜め上方からLEDモジュール52を引っ張って保持している。このような構成の撮像モジュール保持機構70は、異なる方向から撮像モジュール4を引っ張って支持しており、撮像モジュール4を適正な向きに保持することができる。
図15には、固定用ピース71及び固定ケーブル72の数が4であり、固定ケーブル73の数が2である実施形態が図示されているが、固定用ピース71及び固定ケーブル72、73の数は、これらに限定されない。
【0042】
同様に、メインスラスタ3を取り付ける場合、メインスラスタ3の重量によってメインスラスタ3の向きが下に傾き得る。メインスラスタ3の向きが下に傾くと、上向きの推力が発生するので、推力のロスや水路トンネル検査装置100の姿勢の乱れが生じ得る。
【0043】
メインスラスタ3を適正な向きでバルーン1に接合するために、一実施形態では、
図16に示すような構成のスラスタ保持機構80が用いられる。図示された実施形態では、メインスラスタ3が、上述した撮像モジュール4の台座53と同様の構成を有する台座54を備えており、スラスタ保持機構80が、複数の固定用ピース81と、複数の固定ケーブル82とを備えている。台座54は、ハブ部54aと、リング状のリム部54bと、リム部54bをハブ部54aに連結する複数のスポーク部材54cとを備えている。固定用ピース81は、バルーン1に接合されており、それぞれが固定ケーブル82を保持するように構成されている。固定ケーブル82は、端が固定用ピース81に結合されており、更に、台座54に縛着されている。固定用ピース81は、十分に広い間隔で設置されており、複数の固定ケーブル82が、異なる方向から台座54を引っ張って保持している。このような構成のスラスタ保持機構80は、メインスラスタ3を適正な向きに保持することができる。
図16には、固定用ピース81及び固定ケーブル82の数が4である実施形態が図示されているが、固定用ピース81及び固定ケーブル82の数は、これに限定されない。
【0044】
<トンネル内のガス検知>
一実施形態では、水路トンネル検査装置100が、水路トンネルの壁面の検査に加えて、又は、水路トンネルの壁面の検査の代わりに、水路トンネル内のガス検知を行うように構成されてもよい。例えば延長が1000mを超えるような長大なトンネルでは、坑内ガスの組成が作業員による作業に不適切であるような場所があり得る。例えば、長大なトンネルには、酸素濃度が低い場所が存在することがあり、また、有毒ガス及び/又は可燃性ガスが存在する場所が存在し得る。このようなトンネルの検査では、従前は、トンネル内の換気を行ってからガス検知器を携行してトンネルに入坑しており、水路トンネルなど小断面のトンネルの作業は、坑内で屈んで移動するなどの苦渋作業を伴う場合がある。以下に述べられるようなガス検知機能を有する水路トンネル検査装置100を使用することは、水路トンネルの内部における作業における労力を低減しながら作業の安全性を確保するために有用である。
【0045】
図17は、一実施形態における、水路トンネル検査装置100がガス検知機能を有する場合の水路トンネル検査装置100の構成の例を図示している。
図17に示す実施形態では、水路トンネル検査装置100が、ガス検知器90を備えている。ガス検知器90は、所望のガスを検知可能に構成される。ガスの検知においては、当該ガスの存在の有無の検知を行ってもよく、及び/又は、当該ガスの濃度の計測を行ってもよい。一実施形態では、ガス検知器90は、所望のガスの存在の有無を検知し、及び/又は、所望のガスの濃度を計測するように構成される。ガス検知器90が検知するガスの例としては、可燃性ガス、硫化水素、一酸化炭素、酸素等が挙げられる。ガス検知器90は、可燃性ガス、硫化水素、一酸化炭素、酸素のうちの少なくとも一の存在の有無を検知するように構成されてもよく、及び/又は可燃性ガス、硫化水素、一酸化炭素、酸素のうちの少なくとも一の濃度を計測するように構成されてもよい。一実施形態では、ガス検知器90は、可燃性ガス、硫化水素、一酸化炭素、酸素の濃度を計測するように構成される。
【0046】
ガス検知器90は、検知したガス濃度を設定周期(例えば、5秒毎)で記録するロギング機能を有していてもよい。水路トンネル検査装置100を飛行させながら、ガス濃度を計測して記録し、計測終了後に記録時刻とガス濃度のデータを取り出すことで、水路トンネル内のガス濃度分布を把握することができる。例えば、水路トンネル検査装置100を一定の速度で飛行させながらガス濃度の計測を行えば、記録時刻から各時刻における水路トンネル検査装置100の位置、即ち、ガス濃度の計測位置を同定し、水路トンネルの各位置におけるガス濃度を同定することができる。ガス検知器90は、検知したガス濃度に加え、各時刻における温度を記録するように構成されてもよい。
【0047】
一実施形態では、撮像モジュール4(又は、水路トンネル検査装置100に設けられた他の撮像装置)による水路トンネルの壁面の撮影と、ガス検知器90によるガスの検知とが、同期して(又はリンクして)行われてもよい。このような実施形態では、水路トンネルの壁面の撮像画像と、当該撮像画像の撮影に同期して計測されたガス濃度のデータとが、対応づけられて適宜の記録装置(例えば、コントローラ8に組み込まれた記録装置、又は、水路トンネル検査装置100に設けられた他の記録装置)に記録されてもよい。このような構成によれば、対応する撮像画像を参照することにより、ガス濃度の計測位置の同定が容易になる。一実施形態では、水路トンネスの検査シーケンスが、撮像画像の撮影とガス濃度の計測とを含んでいる。検査シーケンスは、コントローラ8の制御の下、設定周期(例えば、5秒ごと)で繰り返して行われてもよいし、ユーザによる操作に応じて行われてもよい。このような実施形態では、同一の検査シーケンスにおいて撮影された撮像画像とガス濃度とが対応づけられて、例えばコントローラ8に組み込まれた記録装置に記録されてもよい。また、各検査シーケンスが実行された実行時刻が当該記録装置に記録されてもよい。このような実施形態では、水路トンネル検査装置100を一定の速度で飛行させながら検査シーケンスを繰り返して行うことにより、実行時刻と撮像画像から当該検査シーケンスが実行された位置を同定し、更に水路トンネルの各位置におけるガス濃度を同定することが容易になる。
【0048】
図17では、ガス検知器90がバルーン1の先端に搭載されている構成が図示されているが、ガス検知器90の設置位置は、ガス検知を行いたい位置(例えば、水路トンネルの中心、上側、下側)及び/又は検知するガスの種類に応じて決定してもよい。例えば、水路トンネルの上側のガス検知を行いたい場合には、ガス検知器90をバルーン1の上部に搭載してもよい。また、検知するガスの比重が空気よりも大きい場合には、ガス検知器90をバルーン1の下部、例えば、機体5に搭載してもよい。また、水路トンネル検査装置100の機体5に自律飛行用の制御機器が搭載されないなど、機体5が軽量であるような場合には、ガス検知器90は、バルーン1の下側、例えば、機体5に搭載されてもよい。なお、ガス検知は、水路トンネル以外の長大なトンネルの検査を行うトンネル検査装置にも有用であり、上記の水路トンネル検査装置100の構成は、トンネル検査装置に一般に適用可能である。
【0049】
<水路トンネルの検査方法>
図18は、一実施形態における、水路トンネル検査装置100による水路トンネルの検査方法を示すフローチャートである。ステップS01では、水路トンネル検査装置100を構成するパーツが水路トンネル内に搬入される。上述された、サイドスラスタ2、メインスラスタ3及びバーチカルスラスタ7が互いに分離可能であるように水路トンネル検査装置100が構成されている実施形態は、水路トンネル検査装置100を構成する各パーツの水路トンネルの内部への搬入を容易にするため好適である。例えば、サイドスラスタ2及びメインスラスタ3が個別にバルーン1に取り付け可能であり、バーチカルスラスタ7が機体5に脱着可能であるような実施形態では、サイドスラスタ2、メインスラスタ3及びバーチカルスラスタ7が互いに分離可能である。これは、水路トンネル検査装置100を構成するパーツの水路トンネル内への搬入の容易化の観点から好適である。
【0050】
ステップS02では、水路トンネル内で、水路トンネル検査装置100が組み立てられる。水路トンネル検査装置100の組み立ては、バルーン1にガスを注入する工程を含んでいる。バルーン1にガスが注入されて膨らまされた後、バルーン1に、上述された水路トンネル検査装置100の各パーツが取り付けられる。
【0051】
一実施形態では、
図19に図示されているように、バルーン1へのガスの注入において、注入すべきガスを蓄積するガスボンベ91が水路トンネル200の外に設置される。ガスボンベ91はホース92によってバルーン1に接続され、ガスボンベ91からバルーン1にホース92を介してガスが注入される。このような手順は、作業の手間を軽減するとともに安全性を高めることに寄与する。ガスボンベ91は多くの場合、重量物であり、ガスボンベ91を水路トンネル200の内部に搬入する手間が大きい場合が生じ得る。例えば、水路トンネル200の坑口が立坑の下にあるなど、坑口まで車両にガスボンベ91を積載して直接運搬できない場合には、ガスボンベ91を水路トンネル200の内部に搬入する手間が大きい。また、ガスボンベ91を水路トンネル200の内部に搬入した場合、ガスボンベ91やホース92からガスが漏れると、水路トンネル200の内部で酸欠が生じ得る。ガスボンベ91を水路トンネル200の外に設置することで、酸欠の発生を防止できる。
【0052】
ステップS03では、組み立てられた水路トンネル検査装置100を、水路トンネルの内部で飛行させる。一度飛行が開始されると、水路トンネル検査装置100は、コントローラ8による制御の下で、自律的に飛行する。水路トンネル内に風が吹いている場合、一実施形態では、風下方向に水路トンネル検査装置100を飛行させる。これは、水路トンネル検査装置100の消費電力を低減し、バッテリー9に蓄積されている電力を節約するために有効である。
【0053】
一実施形態では、水路トンネル内の風を積極的に制御してもよい。
図20に示すように、水路トンネル200の内部の風速が大きすぎる場合、水路トンネル200の坑口を少なくとも部分的に閉塞する遮蔽物93を設置してもよい。水路トンネル200の内部の風速が過剰に大きいと、水路トンネル検査装置100の飛行速度が過剰に大きくなり、水路トンネル200の壁面の撮像画像の鮮明度が低下することがある。遮蔽物93を設置することにより、水路トンネル200の内部の風速を低減することができる。水路トンネル200の坑口の一方にのみ遮蔽物93を設置してもよく、両方の坑口に遮蔽物93を設置してもよい。水路トンネル200の内部に風が吹いていない場合、又は風速が小さすぎる場合、
図21に示すように、水路トンネル200の坑口に送風機94を設置して水路トンネル200の内部に所望の風を発生させてもよい。送風機94は、水路トンネル200の内部に設置してもよい。水路トンネル内の風を積極的に制御することで、水路トンネル検査装置100を最適な速度で飛行させることができる。これは、水路トンネル200の壁面の撮像画像の画質を向上させ、また、水路トンネル検査装置100の消費電力の低減に有効である。
【0054】
ステップS04では、水路トンネル検査装置100を飛行させながら、水路トンネル200の壁面の撮像画像を逐次に取得する。撮像画像は、コントローラ8及び/又は撮像モジュール4に設けられた記憶装置(図示されない)に格納される。水路トンネル200の検査すべき区間の壁面の撮像画素の取得が完了した後、水路トンネル検査装置100が回収される。一実施形態では、水路トンネル検査装置100が到達する位置に人員を配置することで水路トンネル検査装置100が回収されてもよい。また、水路トンネル検査装置100を水路トンネル200の検査すべき区間を飛行させた後、メインスラスタ3の推進力を逆転させ、水路トンネル検査装置100を所望の位置(例えば、出発地点又はその近傍)まで後退させることで水路トンネル検査装置100を回収してもよい。一実施形態では、水路トンネル検査装置100の先端にセンサを設置し、当該センサが壁面や障害物を感知した場合にメインスラスタ3の推進力を逆転させて所望の位置に水路トンネル検査装置100を戻らせて回収してもよい。他の実施形態では、タイマー等で出発からの時間を計測し、一定時間が経過した後にメインスラスタ3の推進力を逆転させ、所望の位置に水路トンネル検査装置100を戻らせて回収してもよい。コントローラ8及び/又は撮像モジュール4に設けられた記憶装置に格納された撮像画像から水路トンネル200の壁面の状態を把握することができる。水路トンネル検査装置100にガス検知器90が搭載される実施形態では、更に、ガス検知器90のロギング機能により記録されたガス濃度及び/又は温度と記録時刻のデータが取り出され、水路トンネル200のガス濃度分布の同定に用いられてもよい。
【0055】
以上には、様々な実施形態が具体的に記載されているが、本明細書に開示された技術が様々な変更と共に実施され得ることは当業者には自明的であろう。
【符号の説明】
【0056】
100 :水路トンネル検査装置
1 :バルーン
2 :サイドスラスタ
3 :メインスラスタ
4 :撮像モジュール
5 :機体
6 :メカデッキ
7 :バーチカルスラスタ
8 :コントローラ
9 :バッテリー
10 :ガイド機構
11 :ベース部
12 :アーム
13 :ローラー
14 :前側バー
15 :後側バー
16 :ロッド
20 :ガイド機構
21 :ベース部
22 :アーム
23 :ローラー
24 :支持部材
24a :連結部
24b :嵌合部
24c :ノッチ
25 :連結プレート
25a :穴
26 :前端バー
27 :後端バー
28 :ロッド
30 :ガイドフレーム
31 :ロッド
32 :ロッド
33 :ベース部
34 :ベース部
35 :ベース部
36 :ベース部
37 :結束体
40 :バラスト水滴下装置
40A :バラスト水滴下装置
41 :容器
42 :放水バルブ
43 :容器
44 :チャンバー
44a :チャンバー本体
44b :蓋体
45 :クランプ
46 :入口チューブ
47 :上流側チューブ
48 :下流側チューブ
50 :周長管理巻尺
50a :端
51 :360°カメラ
52 :LEDモジュール
53 :台座
53a :ハブ部
53b :リム部
53c :スポーク部材
54 :台座
54a :ハブ部
54b :リム部
54c :スポーク部材
60 :機体固定テープ
60a :伸縮部分
70 :撮像モジュール保持機構
71 :固定用ピース
72 :固定ケーブル
73 :固定ケーブル
80 :スラスタ保持機構
81 :固定用ピース
82 :固定ケーブル
90 :ガス検知器
91 :ガスボンベ
92 :ホース
93 :遮蔽物
94 :送風機
200 :水路トンネル