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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ヒートポンプシステムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 30/02 20060101AFI20241115BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241115BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20241115BHJP
   F24H 4/02 20220101ALN20241115BHJP
【FI】
F25B30/02 A
F25B30/02 Z
F25B30/02 F
F25B1/00 399Y
F24F5/00 101Z
F24H4/02 V
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021018835
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022121873
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】堤 友哉
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 誠司
(72)【発明者】
【氏名】坂井 正頌
(72)【発明者】
【氏名】岩田 伸治
(72)【発明者】
【氏名】國枝 直人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 敦
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 透
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-170770(JP,A)
【文献】特開2004-257650(JP,A)
【文献】特開平05-099532(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0409887(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 30/02
F25B 1/00
F24F 5/00
F24H 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱液体を昇温し、供給先へ供給する第一ヒートポンプと、
所定の機器との間で前記被加熱液体を循環させつつ、前記被加熱液体を加温する第二ヒートポンプと、
負荷へ供給する前記被加熱液体を貯留する負荷用タンクと、
前記第一ヒートポンプに供給する前記被加熱液体を貯留する供給用タンクと、
前記負荷用タンクから前記第二ヒートポンプへ流れる前記被加熱液体が通る配管と前記供給用タンクとを接続する冷却配管と、前記冷却配管に設けられ、前記第二ヒートポンプの入り口における前記被加熱液体の温度が所定値より高くなると開とされる弁と、
を備え、
前記第一ヒートポンプは、昇温した前記被加熱液体を、前記供給先である前記負荷用タンクへ供給し、
前記第二ヒートポンプは、前記第一ヒートポンプが前記負荷用タンクへ供給した前記被加熱液体を、前記所定の機器である前記負荷用タンクとの間で循環させつつ加温する、
ヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記負荷用タンクと前記供給用タンクが連通されている、
請求項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項3】
前記被加熱液体が前記第二ヒートポンプと前記負荷用タンクとの間で循環動作中に、前記負荷用タンクから前記負荷への前記被加熱液体の供給が可能なように構成された、
請求項1から請求項の何れか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記第一ヒートポンプの入口における前記被加熱液体の温度と出口における前記被加熱液体の温度との差が、前記第二ヒートポンプの入口における前記被加熱液体の温度と出口における前記被加熱液体の温度との差よりも大きい、
請求項1から請求項の何れか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項5】
前記第二ヒートポンプは、前記第一ヒートポンプに比べ、単位時間あたりに前記負荷用タンクへ多量の前記被加熱液体を供給することができる、
請求項1から請求項の何れか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項6】
前記負荷用タンクに貯留された前記被加熱液体を負荷へ放出する流路と、
前記負荷用タンクに貯留された前記被加熱液体を、負荷との熱交換を行う熱交換器へ供給し、前記熱交換器から前記被加熱液体を前記負荷用タンクへ戻す流路と、
をさらに備える請求項1から請求項の何れか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項7】
被加熱液体を昇温し、供給先へ供給する第一ヒートポンプと、
所定の機器との間で前記被加熱液体を循環させつつ、前記被加熱液体を加温する第二ヒートポンプと、
負荷へ供給する前記被加熱液体を貯留する負荷用タンクと、
前記第一ヒートポンプに供給する前記被加熱液体を貯留する供給用タンクと、
前記負荷用タンクから前記第二ヒートポンプへ流れる前記被加熱液体が通る配管と前記供給用タンクとを接続する冷却配管と、前記冷却配管に設けられ、前記第二ヒートポンプの入り口における前記被加熱液体の温度が所定値より高くなると開とされる弁と、
を備えるヒートポンプシステムにおいて、
前記第一ヒートポンプによって昇温された前記被加熱液体を、前記供給先である前記負荷用タンクへ供給し、
前記第一ヒートポンプが前記負荷用タンクへ供給した前記被加熱液体を、前記所定の機器である前記負荷用タンクと前記第二ヒートポンプとの間で循環させつつ加温する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒートポンプシステムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に温浴施設などでは、昇温した湯水を浴槽へ供給する給湯負荷と、浴槽に貯めた湯水の水温を維持するための保温負荷への対応が必要である。これらの給湯(昇温)、保温の両方の負荷に対して、従来はボイラシステムで対応していた。近年では、省エネルギの観点から、ボイラシステムに換えてヒートポンプシステムへの置換えが進んでいる。ヒートポンプには、一過式ヒートポンプと、循環式ヒートポンプがあり、要求される負荷の性質により導入するヒートポンプが決定される。一過式ヒートポンプは、温度の低い水を高温に昇温してその湯水を供給し、供給された湯水は、一過式ヒートポンプに戻ることがない。これに対し、循環式ヒートポンプは、湯水をタンク等との間で循環させながら、湯水の温度を設定温度に保つために加温する。一過式ヒートポンプは、温度を大幅に昇温することを得意とし、循環式ヒートポンプは、水の昇温幅は小さいが、大量に給湯することを得意とする。例えば、一過式ヒートポンプではCO2冷媒が用いられ、循環式ヒートポンプでは、R410、R454C等のHFC冷媒が用いられる。
【0003】
特許文献1には、高温沸上用ヒートポンプと中温沸上用ヒートポンプを並列に配置して、中温水及び高温水を共に大量もしくは連続的に使用する場合においても、両温度帯の湯の追加沸上げを効率よく行う給湯システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-2585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
温浴施設にヒートポンプを導入する場合、給湯負荷に対応するために一過式ヒートポンプを必要台数導入して給湯専用のシステムを構築し、これとは別に、保温負荷に対応するために循環式ヒートポンプを必要台数導入し、保温専用のシステムを構築することが多い。このようなシステムの場合、例えば、給湯時には、一過式ヒートポンプのみが稼働し、循環式ヒートポンプは停止しており、設備稼働率が低く非効率になりがちである。また、一過式ヒートポンプの導入台数が多く、コストが増大しやすい。
【0006】
そこで本開示は、上述の課題を解決することのできるヒートポンプシステムおよび制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、ヒートポンプシステムは、被加熱液体を昇温し、供給先へ供給する第一ヒートポンプと、所定の機器との間で前記被加熱液体を循環させつつ、前記被加熱液体を加温する第二ヒートポンプと、負荷へ供給する前記被加熱液体を貯留する負荷用タンクと、前記第一ヒートポンプに供給する前記被加熱液体を貯留する供給用タンクと、前記負荷用タンクから前記第二ヒートポンプへ流れる前記被加熱液体が通る配管と前記供給用タンクとを接続する冷却配管と、前記冷却配管に設けられ、前記第二ヒートポンプの入り口における前記被加熱液体の温度が所定値より高くなると開とされる弁と、を備え、前記第一ヒートポンプは、昇温した前記被加熱液体を、前記供給先である前記負荷用タンクへ供給し、前記第二ヒートポンプは、前記第一ヒートポンプが前記負荷用タンクへ供給した前記被加熱液体を、前記所定の機器である前記負荷用タンクとの間で循環させつつ加温する。
【0008】
本開示の一態様によれば、被加熱液体を昇温し、供給先へ供給する第一ヒートポンプと、所定の機器との間で前記被加熱液体を循環させつつ、前記被加熱液体を加温する第二ヒートポンプと、負荷へ供給する前記被加熱液体を貯留する負荷用タンクと、前記第一ヒートポンプに供給する前記被加熱液体を貯留する供給用タンクと、前記負荷用タンクから前記第二ヒートポンプへ流れる前記被加熱液体が通る配管と前記供給用タンクとを接続する冷却配管と、前記冷却配管に設けられ、前記第二ヒートポンプの入り口における前記被加熱液体の温度が所定値より高くなると開とされる弁と、を備えるヒートポンプシステムにおいて、前記第一ヒートポンプによって昇温された前記被加熱液体を、前記供給先である前記負荷用タンクへ供給させ、前記第一ヒートポンプが前記負荷用タンクへ供給した前記被加熱液体を、前記所定の機器である前記負荷用タンクと前記第二ヒートポンプとの間で循環させつつ加温させる、制御方法である。
【発明の効果】
【0009】
本開示のヒートポンプシステムおよび制御方法によれば、一過式ヒートポンプ、循環式ヒートポンプの両方を必要とするヒートポンプシステムにおいて、循環式ヒートポンプの稼働率を向上し、一過式ヒートポンプの導入台数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るヒートポンプシステムの一例を示す図である。
図2】一実施形態に係るヒートポンプシステムの立ち上げ時の動作を示す図である。
図3】一実施形態に係るヒートポンプシステムの給湯運転時の動作を示す図である。
図4】一実施形態に係るヒートポンプシステムの保温運転時の動作を示す図である。
図5】一実施形態に係るヒートポンプシステムの停止時の動作を示す図である。
図6】一実施形態に係るヒートポンプシステムの一例を示す第2図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、実施形態に係るヒートポンプシステムについて、図1図6を参照しながら説明する。
【0012】
(ヒートポンプシステムの構成)
図1は、一実施形態に係るヒートポンプシステムの一例を示す図である。
ヒートポンプシステム100は、一過式ヒートポンプ1と、循環式ヒートポンプ2と、給水タンク3と、貯湯タンク4と、熱交換器5と、制御装置10と、を備える。
一過式ヒートポンプ1は、外部から供給された水を昇温して、昇温後の湯水を供給先の設備へ供給する。一過式ヒートポンプ1は、低温の水(例えば、20℃)を高温(例えば、60℃)へ昇温するような用途に適し、給水の入口温度と出口温度の温度差が小さい運転には適さない(例えば、運転効率が低下する)。
循環式ヒートポンプ2は、循環式ヒートポンプ2と貯湯タンク4との間で湯水を循環させ、その湯水を加温する。循環式ヒートポンプ2における湯水の入口温度と出口温度の温度差は一過式ヒートポンプ1に比べ小さく、5~10℃程度である。また、一過式ヒートポンプ1が低温の水を昇温して送り出す一方通行であるのに対し、循環式ヒートポンプ2は、貯湯タンク4との間で湯水を循環させる点が異なる。また、循環式ヒートポンプ2は、単位時間あたりに、一過式ヒートポンプ1に比べて多量の湯水を設定温度まで加温して送り出すことができる。
給水タンク3は、一過式ヒートポンプ1へ供給する水を貯留するタンクである。
貯湯タンク4は、負荷6、7へ提供する湯水を貯留するタンクである。
熱交換器5は、貯湯タンク4の湯水と、負荷7の熱媒体と熱交換する目的で設けられている。
制御装置10は、マイコン等のコンピュータを備え、ヒートポンプシステム100を制御する。
【0013】
給水タンク3には、配管P1が接続され、配管P1を通じて低温の水が給水タンク3へ供給される。給水タンク3と一過式ヒートポンプ1は配管P2で接続され、配管P2を通じて、昇温すべき水が一過式ヒートポンプ1へ供給される。一過式ヒートポンプ1は、配管P3、P4によって貯湯タンク4と接続されている。配管P3と配管P4は三方弁V1で接続されている。一過式ヒートポンプ1は、配管P3、P4を通じて昇温後の湯水を貯湯タンク4へ供給する。三方弁V1は、配管P3、P4、P15のうちの2つ又は3つを連通する。通常は、配管P3、P4が連通され、一過式ヒートポンプ1の除霜運転をおこなうときだけ配管P3、P15が連通される。貯湯タンク4は、配管P5、P6によって循環式ヒートポンプ2と接続されている。配管P5と配管P6は三方弁V2で接続されている。三方弁V2は、配管P5、P6、P14のうちの2つ又は3つを連通する。配管P14は、給水タンク3と三方弁V2とを接続する。三方弁V2では、通常、配管P5、P6が連通され、循環式ヒートポンプ2の入口における湯水の温度が閾値以上となったときに、配管P5と配管P6と配管P14とが連通され、給水タンク3の低温の水を、貯湯タンク4から送出された湯水に混ぜて循環式ヒートポンプ2へ流入するように制御される。また、貯湯タンク4と循環式ヒートポンプ2とは配管P7によって接続されている。配管P6にはポンプU1が設けられ、ポンプU1が駆動することにより、貯湯タンク4に貯留された湯水が、貯湯タンク4、配管P5、配管P6、循環式ヒートポンプ2、配管P7、貯湯タンク4の順に循環する。この循環において、循環式ヒートポンプ2は、貯湯タンク4から送られてきた湯水を加温する。
【0014】
貯湯タンク4と負荷6は、配管P8によって接続される。負荷6は、所定温度の湯水を供給する給湯負荷である。配管P8には、ポンプU2が設けられ、ポンプU2が駆動することにより、負荷6へ貯湯タンク4の湯水が供給される。負荷6とは、例えば、温浴施設のカラン、シャワー等である。貯湯タンク4と熱交換器5は、配管P9で接続されている。貯湯タンク4と熱交換器5は、配管P10で接続されている。配管P9には、ポンプU3が設けられ、ポンプU3が駆動することにより、貯湯タンク4の湯水が、貯湯タンク4、配管P9、熱交換器5、配管P10、貯湯タンク4の順で循環する。熱交換器5と負荷7は、配管P11で接続されている。熱交換器5と負荷7は、配管P12で接続されている。配管P12には、ポンプU4が設けられ、ポンプU4が駆動することにより、負荷7を温める熱媒体が、負荷7、配管P12、熱交換器5、配管P11、負荷7の順で循環する。負荷7とは、例えば、温浴施設の浴場、や空調対象の空間である。浴場の場合、浴槽の湯水が、浴場(負荷7)と熱交換器5の間を循環し、貯湯タンク4と熱交換器5の間を循環する湯水によって温められる。空調の場合、空調対象の部屋の空気が、部屋(負荷7)と熱交換器5の間を循環し、貯湯タンク4と熱交換器5の間を循環する湯水によって温められる。負荷7は、保温負荷である。保温負荷へは、湯水の熱だけを供給し、湯水自体は戻ってくる。
また、給水タンク3と貯湯タンク4は配管P13によって接続され、給水タンク3と貯湯タンク4は常時連通している。配管P13によって、給水タンク3の水と貯湯タンク4の湯水が行き来することで、水と湯水が混合される。
【0015】
一過式ヒートポンプ1の入口と出口には、それぞれ、一過式ヒートポンプ1への給水温度を計測する温度センサTH1、一過式ヒートポンプ1から送出される湯水の温度を計測する温度センサTH2が設けられている。給水タンク3には、給水タンク3に貯留された水の温度を計測する温度センサTH3と、水の水位を計測する水位センサWL1が設けられている。循環式ヒートポンプ2の入口と出口には、それぞれ循環式ヒートポンプ2へ流入する湯水の温度を計測する温度センサTH4、循環式ヒートポンプ2から送出される湯水の温度を計測する温度センサTH5が設けられている。貯湯タンク4には、貯湯タンク4に貯留された湯水の温度を計測する温度センサTH6と、給水の水位を計測する水位センサWL2が設けられている。配管P10には、熱交換器5から貯湯タンク4へ戻る湯水の温度を計測する温度センサTH7が設けられている。これらのセンサは一例であって、上記以外のセンサが設けられていてもよいし、図示したセンサの全てが設けられていなくてもよい。温度センサTH1~TH7、水位センサWL1~WL2によって計測された計測データは、制御装置10へ送信される。制御装置10は、これらセンサによる計測データや、一過式ヒートポンプ1が送出する湯水の設定温度、循環式ヒートポンプ2が送出する湯水の設定温度、貯湯タンク4に貯留された湯水について設定された設定温度等に基づいて、一過式ヒートポンプ1および循環式ヒートポンプ2の運転を制御する。また、制御装置10は、ポンプU1~U4、三方弁V1~V2を制御する。
次にヒートポンプシステム100の動作について状況別に説明する。
【0016】
(立ち上げ時)
図2は、ヒートポンプシステム100の立ち上げ時の動作を示す図である。
ヒートポンプシステム100の立ち上げ時において、給水タンク3および貯湯タンク4は、例えば、空の状態である。外部の給水設備から配管P1を通じて20℃の水が給水タンク3へ供給される。水位センサWL1の計測する値が所定値に達すると、制御装置10は、一過式ヒートポンプ1を起動する。すると、給水タンク3から配管P2を通じて一過式ヒートポンプ1へ20℃の水が供給され、一過式ヒートポンプ1は、20℃の水を、例えば60℃まで昇温し、配管P3、P4を通じて60℃の湯水を貯湯タンク4へ供給する。貯湯タンク4の湯水の設定温度は、例えば、60~63℃に設定されている。水位センサWL2が計測する値が所定値に達すると、制御装置10は、循環式ヒートポンプ2、ポンプU1を起動する。立ち上げ時には、例えば、循環式ヒートポンプ2が送出する湯水温度は少し高めの70℃に設定されている。循環式ヒートポンプ2には、配管P5、P6を通じて貯湯タンク4の湯水が送られ、循環式ヒートポンプ2は、この湯水を70℃に加温して、配管P7を通じて70℃の湯水を貯湯タンク4へ送出する。立ち上げ時の給水の経路を太線で示す。
【0017】
立ち上げ時に貯湯タンク4に60℃の湯水を貯める処理は給湯負荷である。この給湯負荷に対応するために、従来から行われているように一過式ヒートポンプだけでシステムを構築する場合、例えば、一過式ヒートポンプが複数台必要になる可能性がある。しかし、本実施形態のヒートポンプシステムであれば、循環式ヒートポンプ2の加温能力を利用して、貯湯タンク4の湯水の温度を調節(上記例では70℃に設定している。)することができる。その為、従来システムよりも一過式ヒートポンプの導入台数を少なくすることができる。また、立ち上げ時には、一般的には循環ヒートポンプを使用せず、一過式ヒートポンプを稼働させるが、本実施形態のヒートポンプシステムであれば、立ち上げ時にも循環式ヒートポンプ2を活用するので、循環式ヒートポンプ2の稼働率を向上することができる。
【0018】
(給湯運転時)
図3は、ヒートポンプシステム100の給湯時の動作を示す図である。
給湯運転とは、負荷6へ湯水を供給する運転状態、又は負荷6および負荷7(熱交換器5)へ湯水を供給する運転状態のことである。図3に負荷6および負荷7に湯水を供給しているときの様子を示す。給水タンク3から一過式ヒートポンプ1への水の流れ、一過式ヒートポンプ1から貯湯タンク4への湯水の流れ、循環式ヒートポンプ2と貯湯タンク4の間の湯水の循環については図2の場合と同様である。立ち上げ期が過ぎて通常の運転状態となると、例えば、循環式ヒートポンプ2が送出する湯水の設定温度は、立ち上げ期より低い65℃に設定される。また、制御装置10がポンプU3を駆動することにより、貯湯タンク4の湯水が熱交換器5へ供給される。この湯水は、熱交換により温度が低下し、例えば、55℃となって貯湯タンク4へ戻る。負荷7への熱供給の影響で低下しがちになる貯湯タンク4の湯水を維持するため、循環式ヒートポンプ2は、貯湯タンク4との間で湯水を循環させて加温する。また、制御装置10がポンプU2を駆動することにより、貯湯タンク4の湯水が負荷6へ供給される。給湯運転時には、貯湯タンク4の湯水が負荷6へ流出するため、貯湯タンク4の貯湯量は低下する。貯湯タンク4の貯湯量を所定のレベル以上に保つため、一過式ヒートポンプ1は、給水タンク3の給水を昇温し、貯湯タンク4へ供給する。水位センサWL2が計測する水位が所定以上となると、制御装置10は、一過式ヒートポンプ1の運転を停止してもよい。また、貯湯タンク4と給水タンク3は連通しているので、貯湯タンク4の湯水と給水タンク3の水が混合し、給水タンク3には、温度境界層TBが形成される。給湯運転時の給水の経路を太線で示す。
【0019】
このように、一過式ヒートポンプ1と循環式ヒートポンプ2を組み合わせることで、循環式ヒートポンプ2が通常運転を継続しながら、循環式ヒートポンプ2が循環させる湯水を負荷6へ供給することができる。換言すれば、一過式ヒートポンプ1が供給する湯水の温度を循環式ヒートポンプ2によって保温しながら(又は更に昇温しながら)、湯水を負荷6へ供給することができる。これにより、一過式ヒートポンプ1の導入台数を抑えることができる。
【0020】
(保温運転時)
図4は、一実施形態に係るヒートポンプシステムの保温運転時の動作を示す図である。
保温運転とは、負荷6への湯水を供給が無く(少なく)、負荷7(熱交換器5)へ湯水を供給する運転状態のことである。図4に負荷7へ湯水を供給しているときの様子を示す。給湯運転時と異なり、貯湯タンク4の貯湯量が変わらないが、貯湯タンク4と給水タンク3が連通しているため、貯湯タンク4の湯水と給水タンク3の水が混合し、温度境界層TBは徐々に低下する。保温運転時には、制御装置10は、一過式ヒートポンプ1の運転を停止する。あるいは、制御装置10は、一過式ヒートポンプ1の入口側の温度センサTH1が計測する温度が所定の閾値(例えば60℃)未満の状態では、図3の給湯運転と同様に一過式ヒートポンプ1を運転させ、温度センサTH3が計測する温度が閾値(例えば60℃)以上となると(温度境界層TBが一過式ヒートポンプ1へ供給される水が存在する層のあたりまで低下すると)、一過式ヒートポンプ1を停止させてもよい。配管13を通じて、貯湯タンク4の湯水と給水タンク3の水が混合するので、湯水の流出(減少)が無い状態では、貯湯タンク4と給水タンク3の水が共に60℃以上となると、一過式ヒートポンプ1が停止する。この状態では、貯湯タンク4の湯水温度は、循環式ヒートポンプ2の動作範囲内(仕様内)となっているので、循環式ヒートポンプ2は、問題なく、通常の循環運転を行うことができる。湯水は、循環式ヒートポンプ2と貯湯タンク4の間を循環し、循環式ヒートポンプ2は、加温した湯水を貯湯タンク4へ送出する。これにより、貯湯タンク4の湯水が保温される。また、負荷7へ熱を供給するために、湯水は、貯湯タンク4と熱交換器5の間を循環する。熱交換器5における熱交換の影響により、湯水は55℃程度となって貯湯タンク4へ戻り、循環式ヒートポンプ2には60℃以下の湯水が供給される。循環式ヒートポンプ2は、この湯水を、例えば65℃に加温し、貯湯タンク4へ供給する。
【0021】
このように、保温運転時には、一過式ヒートポンプ1を補助的に使用又は停止させ、循環式ヒートポンプ2に循環運転を実行させる。一過式ヒートポンプ1を補助的に使用することで、貯湯タンク4の温度を循環式ヒートポンプ2の動作範囲内に制御することができる。
【0022】
なお、給湯運転や循環運転時に温度センサTH4が計測する温度が所定の閾値以上となると、制御装置10は、三方弁V2を制御して、配管P14を通じて、給水タンク3の水を循環式ヒートポンプ2が吸い込む湯水に混ぜて温度を低下させ、循環式ヒートポンプ2を保護する。
【0023】
(停止時)
図5は、一実施形態に係るヒートポンプシステムの停止時の動作を示す図である。
停止時とは、負荷6、負荷7への湯水の供給が無い(少ない)運転状態のことである。図5に負荷6、負荷7への湯水の供給を停止したときの様子を示す。負荷6、負荷7への湯水の供給が無いため、循環式ヒートポンプ2と貯湯タンク4の間を循環する湯水の温度は、徐々に上昇する。例えば、温度センサTH6が計測する貯湯タンク4の湯水の温度が62℃、温度センサTH4が計測する循環式ヒートポンプ2の入口の湯水の温度が62℃、温度センサTH5が計測する循環式ヒートポンプ2の出口での湯水の温度が65℃のような状態となる。制御装置10は、循環式ヒートポンプ2の出口での湯水の温度が所定の閾値となったことに基づいて、循環式ヒートポンプ2の運転を停止する。制御装置10は、貯湯タンク4の湯水の温度を監視して、湯水の温度が閾値以下となると、再び、循環式ヒートポンプ2の運転を開始してもよい。
【0024】
また、停止期間が長くなり(例えば、長期休暇など)、貯湯タンク4の湯水の温度が例えば、20℃まで低下した場合、循環式ヒートポンプ2は停止したまま、一過式ヒートポンプ1を起動し、給水タンク3の水を昇温して貯湯タンク4へ供給し、貯湯タンク4の水が配管P13を通じて給水タンク3へ移動することにより、水を給水タンク3、一過式ヒートポンプ1、貯湯タンク4、給水タンク3の順に循環させながら、貯湯タンク4の湯水温度を上昇させることができる。
【0025】
なお、一過式ヒートポンプ1、循環式ヒートポンプ2の台数は1台ずつとは限らない。負荷の大きさに応じて、複数台を設けるようにしてもよい。図6に一過式ヒートポンプ1と一過式ヒートポンプ1a、循環式ヒートポンプ2と循環式ヒートポンプ2aを設けたヒートポンプシステム100aの構成例を示す。一過式ヒートポンプ1と一過式ヒートポンプ1aは、システムに対して並列に接続する。例えば、配管P2と一過式ヒートポンプ1aを配管P2aで接続し、配管P3と一過式ヒートポンプ1aを配管P3aで接続してもよい。同様に循環式ヒートポンプ2と循環式ヒートポンプ2aはシステムに対して並列に接続する。例えば、配管P6と循環式ヒートポンプ2aを配管P6aで接続し、配管P7と循環式ヒートポンプ2aを配管P7aで接続してもよい。
また、給湯負荷が大きい場合には、一過式ヒートポンプ1を多く設け、保温負荷が大きい場合には、循環式ヒートポンプ2を多く設けるようにしてもよい。
【0026】
上記説明したように、本実施形態によれば、一過式ヒートポンプ1と循環式ヒートポンプ2を、貯湯タンク4を介して直列的に接続し、立ち上げ時や給湯運転時には、一過式ヒートポンプ1が昇温した湯水を、循環式ヒートポンプ2で更に加温することとした。また、循環式ヒートポンプ2については、一過式ヒートポンプ1が運転を停止している時でも、貯湯タンク4との間で湯水を循環させることができるようにした。つまり、循環式ヒートポンプ2について、給湯と保温の両方に対応できる湯水回路構成とした。また、給湯時には、循環式ヒートポンプ2の仕様の範囲で動作できるように、所定の温度まで、一過式ヒートポンプ1によって昇温する構成とした。これにより、一過式ヒートポンプ1の導入台数を低減することができ、循環式ヒートポンプ2の稼働率を向上することができる。
【0027】
また、給水タンク3を設け、一過式ヒートポンプ1が、給水タンク3から給水を受けて湯水を作成し、貯湯タンク4に貯めることができるようにした。これにより、貯湯タンク4の貯湯量が足りないときには、一過式ヒートポンプ1が給水タンク3から必要な量の湯水を供給することができる。
【0028】
なお、上記の制御装置10はコンピュータを備えている。コンピュータは、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、入出力インタフェース、通信インタフェース等を備える。制御装置10における各処理の過程は、例えば制御装置10が有するCPU等がプログラムを実行することによって実現できる。制御装置10によって実行されるプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録され、この記録媒体に記録されたプログラムを読み出して実行することによって実現してもよい。なお、制御装置10は、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、コンピュータが読み取り可能な記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、制御装置10に内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。
【0029】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0030】
<付記>
各実施形態に記載のヒートポンプシステム100および制御方法は、例えば以下のように把握される。
【0031】
(1)第1の態様に係るヒートポンプシステム100は、被加熱液体(水)を昇温し、供給先(例えば、貯湯タンク4)へ供給する第一ヒートポンプ(一過式ヒートポンプ1)と、所定の機器(例えば、貯湯タンク4)との間で前記被加熱液体を循環させつつ、前記被加熱液体を加温する第二ヒートポンプ(循環式ヒートポンプ2)と、負荷6,7へ供給する前記被加熱液体を貯留する負荷用タンク(貯湯タンク4)と、を備え、前記第一ヒートポンプは、昇温した前記被加熱液体(水)を前記負荷用タンク(貯湯タンク4)へ供給し、前記第二ヒートポンプは、前記第一ヒートポンプが前記負荷用タンク(貯湯タンク4)へ供給した前記被加熱液体(湯水)を、前記負荷用タンク(貯湯タンク4)との間で循環させつつ加温する。
これにより、一過式ヒートポンプ1の設置台数の削減し、循環式ヒートポンプ2の稼働率を向上することができる。
【0032】
(2)第2の態様に係るヒートポンプシステム100は、(1)のヒートポンプシステム100であって、前記第一ヒートポンプに供給する前記被加熱液体(水)を貯留する供給用タンク(給水タンク3)をさらに備える。
貯湯タンク4の貯湯量が足りないような場合に、給水タンク3の水を昇温して貯湯タンク4へ供給することができる。
【0033】
(3)第3の態様に係るヒートポンプシステム100は、(2)のヒートポンプシステム100であって、前記負荷用タンクと前記供給用タンクが連通されている。
これにより、負荷用タンク(貯湯タンク4)の湯水が冷めて水となった場合に、供給用タンク(給水タンク3)へ逃すことができる。
【0034】
(4)第4の態様に係るヒートポンプシステム100は、(2)~(3)のヒートポンプシステム100であって、前記負荷用タンクから前記第二ヒートポンプへ流れる前記被加熱液体が通る配管と前記供給用タンクとを接続する冷却配管と、前記冷却配管に設けられ、前記第二ヒートポンプの入り口における前記被加熱液体の温度が所定値より高くなると開とされる弁と、をさらに備える。
循環式ヒートポンプ2への高温の湯水の流入を防ぎ、循環式ヒートポンプ2を保護することができる。
【0035】
(5)第5の態様に係るヒートポンプシステム100は、(1)~(4)のヒートポンプシステム100であって、前記被加熱液体(湯水)が前記第二ヒートポンプと前記負荷用タンクとの間で循環動作中に、前記負荷用タンクから前記負荷への前記被加熱液体の供給が可能なように構成されている。
給湯負荷に対して、一過式ヒートポンプ1だけでなく循環式ヒートポンプ2を利用することで、一過式ヒートポンプ1の導入台数を減らし、循環式ヒートポンプ2の稼働率を向上することができる。また、一過式ヒートポンプ1と循環式ヒートポンプ2を組み合わせることで、通常の循環式ヒートポンプ2の動作だけではなく、負荷への給湯を行うことができる。
【0036】
(6)第6の態様に係るヒートポンプシステム100は、(1)~(5)のヒートポンプシステム100であって、前記第一ヒートポンプの入口における前記被加熱液体の温度と出口における前記被加熱液体の温度との差が、前記第二ヒートポンプの入口における前記被加熱液体の温度と出口における前記被加熱液体の温度との差よりも大きい。
【0037】
(7)第7の態様に係るヒートポンプシステム100は、(1)~(6)のヒートポンプシステム100であって、前記第二ヒートポンプは、前記第一ヒートポンプに比べ、単位時間あたりに前記負荷用タンクへ多量の前記被加熱液体を供給することができる。
【0038】
(8)第8の態様に係るヒートポンプシステム100は、(1)~(7)のヒートポンプシステム100であって、前記負荷用タンクに貯留された前記被加熱液体を負荷へ放出する流路(配管P8)と、前記負荷用タンクに貯留された前記被加熱液体を、負荷との熱交換を行う熱交換器5へ供給し、前記熱交換器5から前記被加熱液体を前記負荷用タンクへ戻す流路(配管P9、P10)と、をさらに備える。
これにより、給湯負荷と保温負荷に同時並行的に対応することができる。
【0039】
(9)第9の態様に係る制御方法は、被加熱液体を昇温し、供給先へ供給する第一ヒートポンプと、所定の機器との間で前記被加熱液体を循環させつつ、前記被加熱液体を加温する第二ヒートポンプと、負荷へ供給する前記被加熱液体を貯留する負荷用タンクと、を備えるヒートポンプシステムにおいて、前記第一ヒートポンプによって昇温された前記被加熱液体を前記負荷用タンクへ供給させ、前記第一ヒートポンプが前記負荷用タンクへ供給した前記被加熱液体を、前記負荷用タンクと前記第二ヒートポンプとの間で循環させつつ加温させる。
【符号の説明】
【0040】
100・・・ヒートポンプシステム
1・・・一過式ヒートポンプ
2・・・循環式ヒートポンプ
3・・・給水タンク
4・・・貯湯タンク
5・・・熱交換器
6、7・・・負荷
10・・・制御装置
P1~P15・・・配管
V1、V2・・・三方弁
U1~U4・・・ポンプ
TH1~TH7・・・温度センサ
WL1~WL2・・・水位センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6