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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】配管洗浄方法、及び送液システム
(51)【国際特許分類】
   F04C 14/26 20060101AFI20241115BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20241115BHJP
   F04C 14/24 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
F04C14/26 A
C08G73/10
F04C14/24 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021022950
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125382
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】竪山 瑛人
(72)【発明者】
【氏名】豊田 倶透
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-127790(JP,U)
【文献】特開昭61-265371(JP,A)
【文献】特開2020-055959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 14/26
C08G 73/10
F04C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高粘度の第1流体と低粘度の第2流体を送液するための送液装置を用いた配管洗浄方法であって、
前記送液装置は、
前記第1流体を送液するための第1ポンプと、
前記第1ポンプの吸入流路となる第1流路と、
前記第1ポンプの吐出流路となる第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路とを連通する第1バイパス流路とを備え、
前記第1流体及び/又は前記第2流体の粘度を判断するための物理量に関する1以上の第1測定情報を取得するための1以上の第1測定部を、前記第1流路及び/又は前記第1バイパス流路に備え、
前記第1流体を前記第1ポンプが設置された流路を経由して送液し、前記第2流体を圧送によって前記第1バイパス流路を経由して送液するものであり、前記第1流体がポリアミック酸を含む流体であり、前記第2流体がポリアミック酸を可溶な流体である、配管洗浄方法
【請求項2】
高粘度の第1流体と低粘度の第2流体を送液するための送液装置を用いた配管洗浄方法であって、
前記送液装置は、
前記第1流体を送液するための第1ポンプと、
前記第1ポンプの吸入流路となる第1流路と、
前記第1ポンプの吐出流路となる第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路とを連通する第1バイパス流路とを備え、
第1流路の上流に前記第1流体及び/又は前記第2流体を格納して前記第1流路に供給する第1格納部を備え、
前記第1流体及び/又は前記第2流体の粘度を判断するための物理量に関する1以上の第1測定情報を取得するための1以上の第1測定部を、前記第1流路、前記第1バイパス流路、前記第1格納部からなる群より選択されるいずれか1以上に備え、
前記第1流体を前記第1ポンプが設置された流路を経由して送液し、前記第2流体を圧送によって前記第1バイパス流路を経由して送液するものであり、前記第1流体がポリアミック酸を含む流体であり、前記第2流体がポリアミック酸を可溶な流体である、配管洗浄方法
【請求項3】
前記送液装置は、
前記第1流路、前記第2流路、前記第1バイパス流路からなる群より選択されるいずれか1以上に、前記第1ポンプが設置された流路と前記第1バイパス流路とを切り替えるための1以上の第1流路切替バルブを備える、請求項1または請求項2に記載の配管洗浄方法
【請求項4】
前記送液装置は、
前記第1流路に流路内を加圧する気体を導入するか、及び/又は第1流路の上流に前記第1流体及び/又は前記第2流体を格納して前記第1流路に供給する第1格納部を備える場合には、前記第1格納部に流路内を加圧する気体を導入するための1以上の第1ガスラインを備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の配管洗浄方法
【請求項5】
前記送液装置において、
前記第1測定部は、粘度計、密度計、圧力計、温度計、吸光光度計、赤外分光計、近赤外分光計、色差計、屈折率計、分光光度計、濁度計、及び超音波センサからなる群より選択されるいずれか1以上を有して構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の配管洗浄方法
【請求項6】
前記送液装置において、
前記第1ポンプはギアポンプである、請求項1~5のいずれか1項に記載の配管洗浄方法
【請求項7】
前記送液装置は、
前記第1流路、前記第2流路、前記第1バイパス流路からなる群より選択されるいずれか1以上に、前記第1ポンプが設置された流路と前記第1バイパス流路とを切り替えるための1以上の第1流路切替バルブと、
前記第1流路に流路内を加圧する気体を導入するか、及び/又は第1流路の上流に前記第1流体及び/又は前記第2流体を格納して前記第1流路に供給する第1格納部を備える場合には、当該第1格納部に流路内を加圧する気体を導入するための1以上の第1ガスラインと、を備え、
前記第1測定部によって前記第1測定情報を取得する工程を有し、
さらに、前記第1測定情報に基づいて前記第1ポンプの発停を決定する工程、前記第1測定情報に基づいて前記第1流路切替バルブの開閉を決定する工程、前記第1測定情報に基づいて前記第1ガスラインから気体を導入して前記第1流路を加圧する工程、からなる群より選択されるいずれか1以上の工程を有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の配管洗浄方法に用いられる送液システム。
【請求項8】
求項7に記載の送液システムを用いた、配管洗浄方法
【請求項9】
求項7に記載の送液システムを用いた、前記第1流体と前記第2流体が流通時の温度において100倍~1000000倍の範囲の粘度の異なるポリアミック酸を含む流体である配管洗浄方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送液装置、送液システム、及び送液方法に関する。詳細には、本発明は、粘度が大きく異なる2種以上の流体を送液可能な送液装置、送液システム、及び送液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリアミック酸等の重合体が溶解した粘度の高い溶液を定量送液する際、高い吐出圧が必要な場合には、ギアポンプが用いられる。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
しかしながら、ギアポンプでは、軸受の潤滑が悪くなるため、低粘度の液体を送液することができない。そのため、品種切り替えの際などに、ポリアミック酸溶液が充填された配管に溶剤を流して洗浄しようとしても、ギアポンプでは送液することができない。また、圧送で溶剤を流そうとしても、ギアポンプの圧力損失が大きいため、十分な流量が出ない。そのため、送液による洗浄が行えず、配管を分解洗浄する必要があった。
【0004】
これを解決する方法として、ギアポンプを迂回するバイパス流路を設け、このバイパス流路を経由して低粘度の流体を送液する方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-214912号公報
【文献】実開平2-127790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に開示された方法では、配管内の流体の粘度を知る手段が無いため、高粘度の溶液から低粘度の溶剤に徐々に切り替わっていく際に、動作中のギアポンプに低粘度の溶剤が流入してしまう恐れがある。その結果、ギアポンプの破損や、溶剤の漏洩のリスクがあるという課題があった。
【0007】
このような状況下、ポンプの破損や、溶剤の漏洩のリスクが無く、粘度が大きく異なる2種以上の溶液を安定して送液することができる送液装置、送液システム及び送液方法が求められている。また、送液する流体の粘度に応じて送液方法を切り替える際に、作業員の作業負荷の小さい方法が求められている。
【0008】
本発明は、高粘度の流体と低粘度の洗浄液のいずれも送液することが可能であり、ポンプの破損や溶剤の漏洩のリスクが低い送液装置、送液システム、及び送液方法を提供すること目的とする。また、送液する流体の粘度に応じて自動で送液方法を切り替える送液装置、送液システム、及び送液方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>高粘度の第1流体と低粘度の第2流体を送液するための送液装置であって、
前記第1流体を送液するための第1ポンプと、
前記第1ポンプの吸入流路となる第1流路と、
前記第1ポンプの吐出流路となる第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路とを連通する第1バイパス流路とを備え、
前記第1流体及び/又は前記第2流体の物理量に関する1以上の第1測定情報を取得するための1以上の第1測定部を、前記第1流路及び/又は前記第1バイパス流路に備え、
前記第1流体を前記第1ポンプが設置された流路を経由して送液し、前記第2流体を圧送によって前記第1バイパス流路を経由して送液する送液装置。
【0010】
<2>高粘度の第1流体と低粘度の第2流体を送液するための送液装置であって、
前記第1流体を送液するための第1ポンプと、
前記第1ポンプの吸入流路となる第1流路と、
前記第1ポンプの吐出流路となる第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路とを連通する第1バイパス流路とを備え、
第1流路の上流に前記第1流体及び/又は前記第2流体を格納して前記第1流路に供給する第1格納部を備え、
前記第1流体及び/又は前記第2流体の物理量に関する1以上の第1測定情報を取得するための1以上の第1測定部を、前記第1流路、前記第1バイパス流路、前記第1格納部、からなる群より選択されるいずれか1以上に備え、
前記第1流体を前記第1ポンプが設置された流路を経由して送液し、前記第2流体を圧送によって前記第1バイパス流路を経由して送液する送液装置。
【0011】
<3>前記第1流路、前記第2流路、前記第1バイパス流路からなる群より選択されるいずれか1以上に、前記第1ポンプが設置された流路と前記第1バイパス流路とを切り替えるための1以上の第1流路切替バルブを備える、<1>または<2>に記載の送液装置。
【0012】
<4>前記第1流路及び/又は前記第1格納部に、流路内を加圧する気体を導入するための1以上の第1ガスラインを備える、
<1>~<3>のいずれか1項に記載の送液装置。
【0013】
<5>前記第1測定部は、粘度計、密度計、圧力計、温度計、吸光光度計、赤外分光計、近赤外分光計、色差計、屈折率計、分光光度計、濁度計、及び超音波センサからなる群より選択されるいずれか1以上を有して構成される、<1>~<4>のいずれか1項に記載の送液装置。
【0014】
<6>前記第1ポンプはギアポンプである、<1>~<5>のいずれか1項に記載の送液装置。
【0015】
<7>前記第1測定部によって前記第1測定情報を取得する工程を有し、
さらに、前記第1測定情報に基づいて前記第1ポンプの発停を決定する工程、前記第1測定情報に基づいて前記第1流路切替バルブの開閉を決定する工程、前記第1測定情報に基づいて前記第1ガスラインから気体を導入して前記第1流路を加圧する工程、からなる群より選択されるいずれか1以上の工程を有する、
<1>~<6>のいずれか1項に記載の送液装置を用いた送液システム。
【0016】
<8> <1>~<6>のいずれか1項に記載の送液装置及び/又は<7>に記載の送液システムを用いた、流体の送液方法。
【0017】
<9> <1>~<6>のいずれか1項に記載の送液装置及び/又は<7>に記載の送液システムを用いた、前記第1流体がポリアミック酸を含む流体であり、前記第2流体がポリアミック酸を可溶な流体である送液方法。
【0018】
<10> <1>~<6>のいずれか1項に記載の送液装置及び/又は<7>に記載の送液システムを用いた、前記第1流体と前記第2流体が流通時の温度において100倍~1000000倍の範囲の粘度の異なるポリアミック酸を含む流体である送液方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高粘度の流体と低粘度の洗浄液のいずれも送液することが可能であり、ポンプの破損や溶剤の漏洩のリスクが低い送液装置、送液システム、及び送液方法を提供することができる。また、流体の粘度を検知して自動で適切な送液方法に切り替える送液装置、送液システム、及び送液方法により、製造工程における作業員の作業負荷を低減し、コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態における送液システムを示す図である。
図2】第1実施形態における重合体製造システムのブロック図である。
図3】第1実施形態における重合体製造システムの動作を説明するフロー図である。
図4】第1実施形態における重合体製造システムの他の動作を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
第1実施形態は、粘度の高い溶液、及び、装置洗浄用の粘度の低い溶剤を送液できる送液システムの例であって、測定部からの測定情報に基づいて送液流路を変更可能なシステムの例である。
【0022】
<第1実施形態>
図1から図4により、第1実施形態における送液システムについて説明する。図1は、第1実施形態における送液システムを示す図である。図2は、第1実施形態における送液システムのブロック図である。図3は、第1実施形態における送液システムの動作を説明するフロー図である。図4は、第1実施形態における送液システムの他の動作を説明するフロー図である。
【0023】
まず、第1実施形態における送液システム1の概要について説明する。
送液システム1は、粘度の高い第1流体A1と、装置洗浄用の溶剤である粘度の低い第2流体A2とを送液できる送液システムである。
【0024】
以下では一例として、第1流体A1が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの重付加によって生成するポリアミック酸が溶解した溶液であり、第2流体A2がポリアミック酸を溶解可能な液体である場合について説明する。
【0025】
テトラカルボン酸二無水物としては、特に制限されず、従来のポリイミド合成で用いられているものと同様のものを用いることができる。テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,3-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',6,6'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、アントラセン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物;シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物等の脂環族テトラカルボン酸二無水物;チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ピリジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等の複素環族テトラカルボン酸二無水物;などが挙げられる。テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ジアミンとしては、特に制限されず、従来のポリイミド合成で用いられているものと同様のものを用いることができる。ジアミンの具体例としては、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3'-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,3'-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4'-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、2,6’-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノクロロベンゼン、1,2-ジアミノアントラキノン、1,4-ジアミノアントラキノン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノビベンジル等の芳香族ジアミン;1,2-ジアミノエタン、1,4-ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、1,10-ジアミノドデカン等の脂肪族ジアミン;1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ジアミン;3,4-ジアミノピリジン等の複素環族ジアミン;などが挙げられる。ジアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
第1流体A1の溶媒としては、ポリアミック酸が溶解するものが用いられる。溶媒の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、2-プロパノン、3-ペンタノン、テトラヒドロピレン、エピクロロヒドリン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトアニリド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0028】
第1流体A1は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの重付加によって生成するポリアミック酸溶解性を高めるため、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンを少量含有していてもよい。
【0029】
第1流体A1には、ポリアミック酸と溶媒以外の成分が含まれていても良い。例えば、未反応のテトラカルボン酸二無水物及び/又はジアミンが溶解していても良い。また、ポリイミドフィルムの滑剤となるフィラーが分散されていても良い。滑剤としては、例えば、酸化チタン、第二リン酸カルシウム無水物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、アルミナ、硫酸バリウム、ジルコニア、カオリン、タルク、クレー、マイカ、などの無機粒子や、アクリル酸類、スチレン類等を構成成分とする有機粒子を例示することができる。また、フィルムの強度、熱伝導性といったポリイミドフィルムの他の特性を変化させる目的で添加する無機粒子や有機粒子が分散されていても良い。
【0030】
第1流体A1の粘度としては、後述する第1ポンプ33によって送液可能な粘度のものが適しており、送液時の温度において0.1~10000poise程度のものが好ましい。粘度の測定方法については、特に制限されないが、例えばE型粘度計を用いた測定方法が挙げられる。
【0031】
第2流体A2としては、ポリアミック酸が溶解するものが用いられる。溶媒の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、2-プロパノン、3-ペンタノン、テトラヒドロピレン、エピクロロヒドリン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトアニリド、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0032】
第2流体A2は、溶解性を高めるため、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンを少量含有していてもよい。
【0033】
第2流体A2は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、ポリアミック酸を少量含有していても良く、その他の不純物等が含まれていても良い。ただし、装置洗浄性を高めるためには、第2流体A2は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、ポリアミック酸等の不純物の含有量が低いものの方が好ましい。
【0034】
第2流体A2の粘度としては、後述する第1バイパス流路22を経由した圧送によって送液可能な粘度のものを用いることができ、例えば、送液時の温度において0.002poise~10poise程度のものが好ましい。
【0035】
図1に示すように、送液システム1は、第1ポンプ33の吸入流路である第1流路21と、第1ポンプ33の吐出流路である第2流路26とを、第1バイパス流路22が連通する構造となっている。そして、高粘度の第1流体A1を第1ポンプ33によって第1流路21及び第2流路26を経由して送液する。低粘度の第2流体A2は、第1バイパス流路22を経由して圧送するよう構成されている。ここで、圧送とは、流路内に形成された圧力勾配による送液のことを示す。第1タンクガスライン12及び/又は第1流路ガスライン24は送液システムの上流側を加圧することによって、流路内に圧力勾配を形成する。
【0036】
続けて、送液システム1の具体的な構成について説明する。
図1に示すように、送液システム1は、第1タンク11と、第1ポンプ33と、第1タンクガスライン12と、第1流路ガスライン24と、第1バイパス流路バルブ23と、第1流路バルブ31と、第2流路バルブ34と、第1タンク測定部13と、第1流路測定部32と、第1バイパス流路測定部41と、を備える。
【0037】
第1タンク11は、ポリアミック酸を溶解した高粘度の第1流体A1を送液する際には第1流体A1を、配管洗浄時などの低粘度の流体を送液する際には第2流体A2を収容する。
【0038】
第1タンク11の底部には、必要であればバルブ(第1タンク払出弁14)を設けても良い。第1タンク払出弁14を設ける場合、後述する第1ガスライン、第1ポンプ33や下流側のバルブを操作するときに、第1タンク11内の流体の重量による意図しない送液が起きないようにするため、第1タンク払出弁14の開閉状態を調整しても良い。
【0039】
第1ポンプ33は、第1タンク11に収容されている第1流体A1を送液する。第1ポンプ33としては、送液する第1流体A1の粘度に適した種類及び規格のものを用いる。第1ポンプ33としては、例えば、ギアポンプ、ねじポンプ、ベーンポンプ等の高粘度の流体の送液が可能なポンプが好適であり、高吐出圧で定量性の高い送液が必要な場合にはギアポンプを用いるのが特に好ましい。
【0040】
第1タンクガスライン12(第1ガスライン)は、圧力勾配によって粘度の低い第2流体を送液するため、第1タンクに気体を導入して加圧する。第1タンクガスライン12が導入する気体の種類としては特に制限されないが、コストの安い、空気、窒素ガス、炭酸ガスのいずれか1以上を用いるのが好ましい。また、本実施形態のように第1流体A1及び/又は第2流体A2が可燃性の流体である場合には、爆発火災のリスクを低減するため、窒素ガス及び/又は炭酸ガスを用いるのが特に好ましい。
【0041】
第1タンクガスライン12が気体を供給する際の圧力としては、特に制限されず、第1タンク11及び第1タンク11よりも下流の流路を構成する部材の耐圧と、第2流体A2が下流の流路を流れる際の圧力損失を考慮して決定するのが良い。一般的には1kPa~10MPaの範囲内で調整するのが好ましく、10kPa~1MPaの範囲内で調整するのが特に好ましい。
【0042】
第1流路ガスライン24(第1ガスライン)は、圧力勾配によって粘度の低い第2流体を送液するため、第1流路21に気体を導入して加圧する。第1流路ガスライン24が導入する気体の種類としては特に制限されないが、コストの安い、空気、窒素ガス、炭酸ガスのいずれか1以上を用いるのが好ましい。また、本実施形態のように第1流体A1及び/又は第2流体A2が可燃性の流体である場合には、爆発火災のリスクを低減するため、窒素ガス及び/又は炭酸ガスを用いるのが特に好ましい。
【0043】
第1流路ガスライン24が気体を供給する際の圧力としては、特に制限されず、第1流路21を構成する部材の耐圧と、第2流体A2が下流の流路を流れる際の圧力損失を考慮して決定するのが良い。一般的には1kPa~10MPaの範囲内で調整するのが好ましく、10kPa~1MPaの範囲内で調整するのが特に好ましい。
【0044】
送液システム1においては、第1ガスラインによって第1タンク11と第1流路21のいずれにも気体を導入できる装置の構成を示したが、第2流体A2を所望の流量で送液することができれば、第1タンクガスライン12と第1流路ガスライン24はいずれか一方を備えていれば良い。また、第1タンク11に収容した溶液の重量によって第1流路21が加圧され、第2流体A2を所望の流量で送液するために十分な圧力勾配が発生する場合には、必ずしも第1ガスラインを備えていなくても良い。
【0045】
第1バイパス流路22、第1流路21、第2流路26にそれぞれ設置されている、第1バイパス流路バルブ23、第1流路バルブ31、第2流路バルブ34は、バルブの開閉によって、第1ポンプ33を経由する流路と第1バイパス流路22とを切り替える。第1流路バルブ31は、第1流路21と第1バイパス流路22との分岐よりも下流側に設置されている。第2流路バルブ34は、第1バイパス流路22と第2流路26との分岐よりも上流側に設置されている。第1ポンプ33を用いて第1流体A1を送液する場合には、第1バイパス流路バルブ23が閉となり、第1流路バルブ31及び第2流路バルブ34が開となる。第1バイパス流路22を経由して第2流体A2を送液する場合には、第1バイパス流路バルブ23が開となり、第1流路バルブ31及び/又は第2流路バルブ34が閉となる。
【0046】
第1ポンプ33を停止させて第2流体A2を圧送する際に、第1ポンプ33を通過するときの圧力損失が十分に大きければ、第1流路21及び/又は第2流路26をバルブによって閉じなくても、圧力勾配が生じた際に第2流体A2は圧力損失の小さい第1バイパス流路22を流れる。そのため、第1流路バルブ31及び第2流路バルブ34は必ずしも必要ではない。ただし、第1ポンプ33の内部が加圧されると溶液が漏洩する恐れがあることから、第2流体A2の圧送中に第1ポンプ33が加圧されないように、第1流路バルブ31及び第2流路バルブ34を設置するのが好ましい。
【0047】
第1ポンプ33を運転して第1流体A1を送液している状態において、第1バイパス流路バルブ23が無くても第1流体A1が第1バイパス流路22を逆流せず、下流側に流れていく装置構成であれば、第1バイパス流路バルブ23は必ずしも必要ではない。この例としては、例えば、第1バイパス流路22の圧力損失に比べて第2流路の下流の圧力損失が十分に小さい場合が挙げられる。ただし、流路の切り替えを確実に実施するためには、第1バイパス流路バルブ23を設置する方が好ましい。また、図1では、第1バイパス流路測定部41の上流側に第1バイパス流路バルブ23を備える構成を示しているが、第1バイパス流路22と第2流路26の下流側との分岐と、第1バイパス流路測定部41との間に、必要に応じてバルブを設置してもよい。
【0048】
第1バイパス流路バルブ23、第1流路バルブ31、第2流路バルブ34の操作は、開と閉の切り替えに限らず、流量を調整するために開度の調整ができるようなものであっても良い。第1バイパス流路バルブ23、第1流路バルブ31、第2流路バルブ34のバルブの種類としては、流路の切り替え及び/又は開度の調整ができるものであれば特に制限は無く、例えば、ボールバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、ニードルバルブ、バタフライバルブ、ダイヤフラムバルブなどを用いることができる。
【0049】
また、第1ポンプ33によって第1流体A1を、第1バイパス流路22を経由した圧送によって第2流体A2を、送液システム1の下流側に送液することが可能であれば、第1バイパス流路バルブ23、第1流路バルブ31、第2流路バルブ34としては、背圧弁や逆止弁を用いても良い。
【0050】
第1タンク測定部13(第1測定部)は、第1タンク11内の流体(第1測定対象)の粘度を判断するための物理量に関する情報(第1測定情報)を取得する。
【0051】
第1流路測定部32(第1測定部)は、第1流路21内の流体(第1測定対象)の粘度を判断するための物理量に関する情報(第1測定情報)を取得する。
【0052】
第1バイパス流路測定部41(第1測定部)は、第1バイパス流路22内の流体(第1測定対象)の粘度を判断するための物理量に関する情報(第1測定情報)を取得する。
【0053】
第1測定部は、流体の粘度を直接測定するものに限定されない。例えば、第1測定対象の温度や圧力等を測定することによって第1測定対象の粘度を算出するものであっても良い。また、流体の密度測定や光学的な測定等によって、第1測定対象中の第1流体A1と第2流体A2との割合を算出し、粘度を決定するものであっても良い。
【0054】
図1では複数の第1測定部を有する送液システムを例示したが、第1測定部は1つでも良く、第1タンク測定部13、第1流路測定部32、第1バイパス流路測定部41のうちのいずれか1以上を備えていれば良い。また、第1流路測定部32は、第1流路21と第1バイパス流路22との分岐よりも上流側に設置されていても良く、下流側に設置されていても良い。ただし、装置全体を効率的に洗浄し、かつ第1ポンプ33の破損や漏洩のリスクを低減するためには、第1流路測定部32を第1ポンプ33の吸入流路の直近に備えているのが特に好ましい。
【0055】
第1測定部が第1タンク11、及び/又は、第1流路21と第1バイパス流路22との分岐よりも上流側に設置されている場合では、第1測定部が流体の粘度の変化を検知した直後に送液方法を切り替えると、第1ポンプ33の吸入流路に少量の第2流体A2が、あるいは第1バイパス流路22に少量の第1流体A1が流入する場合がある。ポンプの破損や漏洩等の不具合が起きなければそれでも問題は無いが、第1測定部が粘度の変化を検知してから、第1流路21と第1バイパス流路22との分岐までの流体の滞留時間だけ遅らせてから送液方法を切り替えるのがより好ましい。
【0056】
第1測定部は、例えば、粘度計、密度計、圧力計、温度計、吸光光度計、赤外分光計、近赤外分光計、色差計、屈折率計、分光光度計、濁度計、及び超音波センサからなる群より選択される1又は2以上を有して構成される。粘度計としては、例えば、振動式粘度計、超音波式粘度計、細管式粘度計、差圧式粘度計等が挙げられる。
【0057】
本実施形態における送液システム1がポリイミド製造工程にポリアミック酸溶液を送液するものである場合、送液システム1の下流側には、ポリアミック酸をイミド化するイミド化工程を更に備える。イミド化部(不図示)は、例えば、熱的に脱水閉環する熱的イミド化方法、脱水剤及びイミド化促進剤を用いる化学的イミド化方法等により、ポリアミック酸をイミド化する。
【0058】
本実施形態における送液システム1が、重付加反応をさらに進めて、より分子量の大きいポリアミック酸の溶液を製造する工程に対してポリアミック酸溶液を送液するものである場合、送液システム1の下流側には重付加反応を進行させる反応器を更に備える。反応器は、例えば第1流体A1と、第1流体A1に含まれるポリアミック酸と反応する別種のポリアミック酸、テトラカルボン酸二無水物、ジアミンのいずれか1以上とを、混合器によって混合し、重付加反応を進行させる。混合器の種類としては、例えば、撹拌槽、遠心ポンプ、渦巻きポンプ、撹拌羽を有するインラインミキサー等の駆動型混合器、スタティックミキサー、ノズル、オリフィス等の静止型混合器、等が挙げられる。
【0059】
次に、図2により、第1実施形態における重合体製造システム1のブロック図について説明する。
図2に示すように、重合体製造システム1は、1以上の第1測定部(第1測定部群)と、第1制御部200と、第1記憶部300と、制御対象である第1制御対象群とを有する。第1制御対象群は、第1バイパス流路バルブ23、第1流路バルブ31、第2流路バルブ34、第1ポンプ33、第1タンクガスライン12、第1流路ガスライン24、のいずれか1以上によって構成される。
【0060】
第1測定部群は、上述の通り、流体の粘度を判断するための物理量に関する情報である第1測定情報を取得する。第1測定部群は、第1タンク測定部13、第1流路測定部32、第1バイパス流路測定部41、のいずれか1以上によって構成される。
ここで、第1測定情報は、物理量の測定値等の数値情報のほか、物理量に対応して変化する電気信号等を含む。
【0061】
第1制御部200は、第1測定部群により取得された第1測定情報に基づいて、送液方法を切り替えるための制御対象である、第1制御対象群の動作を制御する。
第1制御部200は、判定部210と、選択部220と、指示部230と、を有する。
【0062】
判定部210は、第1測定部群からの第1測定情報に基づいて、送液する流体の物理量に関する測定値等が所定の許容範囲内であるか否かを判定する。判定部210は、後述する測定間隔情報記憶部310に記憶された測定間隔に基づいて第1測定部群から第1測定情報を取得するとともに、後述する許容範囲情報記憶部320に記憶された許容範囲情報に基づいて、取得された第1測定情報が所定の許容範囲内であるか否かを判定する。
【0063】
選択部220は、判定部210が許容範囲外であると判定した第1測定情報が複数ある場合、後述する優先度情報記憶部330からの優先度情報に基づいて、制御において優先する第1測定情報を選択する。
【0064】
指示部230は、判定部210及び選択部220からの情報に基づいて制御情報記憶部340に記憶される制御内容である制御情報を取得する。そして、指示部230は、取得した制御情報に基づいて、第1制御対象群の条件を制御する。
【0065】
続けて、第1記憶部300は、測定間隔情報記憶部310と、許容範囲情報記憶部320と、優先度情報記憶部330と、制御情報記憶部340と、を有する。
【0066】
測定間隔情報記憶部310は、第1制御部200(判定部210)が第1測定部から第1測定情報を取得する間隔に関する測定間隔情報を記憶する。測定間隔は、第1測定部(第1測定情報)ごとに設定されている。また、測定間隔は、第1測定部が配置されている位置に応じて設定される。
【0067】
許容範囲情報記憶部320は、各第1測定部により取得された第1測定情報ごとに、第1ポンプ33によって安定した送液をするために必要な粘度に対応した許容範囲(例えば、測定値の範囲、信号の強弱等)の情報を記憶する。
【0068】
優先度情報記憶部330は、複数の第1測定情報(第1測定部)が上記許容範囲外にあると判定部210に判定された場合、優先すべき第1測定情報に関する情報(例えば、優先順位の情報)を記憶する。
【0069】
制御情報記憶部340は、許容範囲外と判定された第1測定情報の内容に対応した制御内容に関する情報を記憶する。制御情報記憶部340は、例えば、第1ポンプ33を運転/停止させたり、第1流路バルブ31を開閉させたりする内容の制御情報を記憶する。
【0070】
次に、図3により、第1実施形態における重合体製造システム1の動作を説明する。ここでは一例として、送液する流体が粘度の高い第1流体A1から粘度の低い第2流体A2に切り替わっていく際に、第1流路測定部32から、第1測定情報として粘度情報を取得して、送液方法を切り替える場合の制御について説明している。
この例において、図3に示す開始の時点では、第1ポンプ33が運転しており、第1バイパス流路バルブ23は閉となっており、第1流路バルブ31及び第2流路バルブ34は開となっている。また、第1タンクガスライン12及び/又は第1流路ガスライン24による加圧はされていないか、第1ポンプ33の吸入流路に第1流体A1を所望の圧力で供給するように圧力が調整されている。
【0071】
ステップST11において、判定部210は、第1測定部である第1流路測定部32から第1測定情報である粘度情報を取得する。
【0072】
次いで、ステップST12において、判定部210は、許容範囲情報記憶部320に記憶される許容範囲情報に基づいて、取得した粘度情報が所定の許容範囲内にあるか否かを判定する。そして、判定部210は、粘度情報(粘度の値)が所定範囲内にあると判定した場合(YES)、第1制御対象群の条件を変更しない(ステップST13)。
【0073】
次いで、第1制御部200は、待機状態となる(ステップST18)。ここで、第1制御部200は、測定間隔情報記憶部310に記憶された測定間隔情報に基づいて、所定間隔で第1流路測定部32から粘度情報を取得する。
【0074】
ステップST12において、判定部210が粘度情報(粘度の値)が所定範囲内にないと判定した場合(NO)、処理をステップST16に進める。
【0075】
次いで、ステップST16において、指示部230は、粘度情報の内容に基づいて、制御情報記憶部340から制御条件等の制御情報を取得する。そして、指示部230は、取得した制御情報に基づいて、第1制御対象群の条件を制御する。具体的には、第1ポンプ33を停止し、第1流路バルブ31及び第2流路バルブ34を閉とし、第1タンクガスライン12及び/又は第1流路ガスライン24を調整して第2流体A2を所望の流量で送液するために適切な圧力勾配を形成する。そして、第1バイパス流路バルブ23を開として、第2流体A2を圧送によって送液する。
【0076】
次に、図4により、第1実施形態における送液システム1の他の動作を説明する。ここでは一例として、送液する流体が粘度の高い第1流体A1から粘度の低い第2流体A2に切り替わっていく際に、複数の第1測定情報を利用した制御について説明している。
この例において、図4に示す開始の時点では、第1ポンプ33が運転しており、第1バイパス流路バルブ23は閉となっており、第1流路バルブ31及び第2流路バルブ34は開となっている。また、第1タンクガスライン12及び/又は第1流路ガスライン24による加圧はされていないか、第1ポンプ33の吸入流路に第1流体A1を所望の圧力で供給するように圧力が調整されている。
【0077】
図4に示すように、ステップST21において、判定部210は、第1測定部群の各測定部からの第1測定情報を取得する。
【0078】
次いで、ステップST22において、判定部210は、許容範囲情報記憶部320に記憶される許容範囲情報に基づいて、取得した全ての第1測定情報が所定の許容範囲内にあるか否かを判定する。そして、判定部210は、全ての第1測定情報が所定範囲内にあると判定した場合(YES)、第1制御対象群の条件を変更せず(ステップST23)、処理をステップST29に進める。
【0079】
ステップST22において、判定部210が全ての第1測定情報が所定範囲内にあるのではない(1つ以上の第1反応情報が所定範囲外)と判定した場合(NO)、処理をステップST25に進める。
【0080】
次いで、ステップST25において、選択部220は、優先度情報記憶部330に記録された優先度情報に基づいて、優先度の高い第1測定情報(種類)を選択する。
【0081】
次いで、ステップST26において、指示部230は、ステップST25で選択した優先度の高い第1測定情報の内容に基づいて、制御情報記憶部340から制御条件等の制御情報を取得する。
そして、指示部230は、取得した制御情報に基づいて送液方法を変更する必要があるか否かを判断し、送液方法の変更が必要でない場合(NO)、第1制御対象群の条件を変更せず(ステップST23)、処理をステップST29に進める。
一方、ステップST26において、送液方法の変更が必要である場合(YES)、処理をステップST27に進める。
【0082】
次いで、ステップST27において、指示部230は、粘度情報の内容に基づいて、制御情報記憶部340から制御条件等の制御情報を取得する。そして、指示部230は、取得した制御情報に基づいて、第1制御対象群の条件を制御する。具体的には、第1ポンプ33を停止し、第1流路バルブ31及び第2流路バルブ34を閉とし、第1タンクガスライン12及び/又は第1流路ガスライン24を調製して第2流体A2を所望の流量で送液するために適切な圧力勾配を形成する。そして、第1バイパス流路バルブ23を開として第2流体A2を圧送によって送液する。
【0083】
ステップST29では、第1制御部200は待機状態となる。ここで、第1制御部200は、測定間隔情報記憶部310に記憶された測定間隔情報に基づいて、所定間隔で第1測定部群の各測定部からの第1測定情報を取得する。
【0084】
本実施形態の送液システム1によれば、以下の効果を奏する。
重合体製造システム1は、測定対象となる流体の物理量に関する1以上の第1測定情報を取得する第1測定部と、第1測定部により取得された第1測定情報に基づいて、送液方法を変更するよう送液条件を制御する第1制御部200と、を備える。そして、送液システム1は、所望の重合体が得られるよう、第1測定部により取得された第1測定情報に基づいて、第1バイパス流路バルブ23、第1流路バルブ31、第2流路バルブ34、第1ポンプ33、第1タンクガスライン12、第1流路ガスライン24の条件を制御している。
【0085】
このような送液システム1によれば、送液中に大きく粘度が変化するような流体を安定的に送液することが可能であり、装置破損や漏洩のリスクを大きく低減できる。また、送液システム1によれば、通常高粘度の流体を送液する装置において、装置洗浄用の低粘度の溶剤も送液することができるため、装置を分解して洗浄する手間とコストを削減することができる。さらに、流体の粘度を検知して自動で適切な送液方法に切り替えるため、製造工程における作業員の作業負荷を低減し、コストを削減することができる。
【0086】
<制御の具体例>
以下、送液システム1における制御の具体例について説明する。ただし、以下の具体例に限定されるものではない。
【0087】
(1)例1
送液する流体が粘度の高い第1流体A1から粘度の低い第2流体A2に切り替わっていくとき、第1ポンプ33によって送液している状況を想定する。この際、第1流体A1よりも第2流体A2の方が密度が低いものとする。第1タンク11の底部に密度計を設置し、第1測定対象の密度情報を経時的に取得する。第1ポンプ33の特性に応じて、第1測定対象の密度が基準値を下回った場合に、第1ポンプ33を停止し、第1バイパス流路22を経由する圧送となるように第1制御対象群を調整し、各バルブの開閉状態と流路内の圧力を制御すれば良い。
【0088】
(2)例2
送液する流体が粘度の高い第1流体A1から粘度の低い第2流体A2に切り替わっていくとき、第1ポンプ33によって送液している状況を想定する。この際、第1流体A1は着色しており、第2流体A2は無色透明であり、これらの違いがインライン分光光度計によって判別できるものとする。第1ポンプ33の吸入流路にインライン分光光度計を設置し、第1測定対象の吸光度情報を経時的に取得する。第1ポンプ33の特性に応じて、第1測定対象の吸光度が基準値から外れた場合に、第1ポンプ33を停止し、第1バイパス流路22を経由する圧送となるように第1制御対象群を調整し、各バルブの開閉状態と流路内の圧力を制御すれば良い。
【0089】
<変形例>
以上、2つの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0090】
例えば、上述の実施形態では、送液する流体が高粘度の第1流体A1から低粘度の第2流体A2に徐々に切り替わる場合について述べたが、これに限定されず、送液する流体が低粘度の第2流体A2から高粘度の第1流体A1に徐々に切り替わる場合でもよい。この場合では、初め第1バイパス流路22を経由して低粘度の第2流体A2が圧送されている状態から、第1タンク測定部13、第1流路測定部32、第1バイパス流路測定部41のいずれか1以上が粘度の上昇を検知したら、圧送による送液を止め、第1ポンプ33を経由する流路に切り替えて、第1ポンプ33を起動するように制御すれば良い。また、上述の実施形態では粘度の異なる2種類の流体を送液する場合について述べたが、この送液装置、送液システム及び送液方法によって送液できる流体の種類は2種類に限定されず、例えば粘度の異なる3種類以上の流体について、それぞれ適切な送液方法を選択して送液できるようにしても良い。
【0091】
また、上述の実施形態では、送液方法の切り替えが自動で制御される例について述べたが、必ずしも第1制御対象群の全ての動作が自動で制御される必要は無く、第1測定部が粘度の変化を検知したときに作業員が手動でポンプの発停やバルブ操作を実施しても良い。ただし、作業員の作業負担低減及びコスト低減のためには、第1制御対象群が自動で制御される方が好ましい。
【0092】
また、上述の実施形態では、第1流体A1と第2流体A2をいずれも第1タンクに収容する場合について述べたが、第1流体A1と第2流体A2を収容するタンクをそれぞれ別に備えていても良い。また、送液システムとして必ずしもタンクは必要ではなく、例えば、第1流体A1及び/又は第2流体A2が、管型反応器等によってタンクを介さずに連続的に供給されるようなものであっても良い。
【0093】
また、上述の実施形態では、ポリアミック酸溶液及びポリアミック酸溶液を洗浄する溶剤を送液する場合の送液システムについて説明したが、送液する流体はこれらに限定されない。例えば、送液システムは、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂が溶解した溶液及びその洗浄溶剤を送液するものであっても良い。第1流体A1及び/又は第2流体A2は有機溶剤や有機溶剤を溶媒とする溶液に限定されず、水や水溶液であっても良い。また、第1流体A1は溶液に限らず、液状樹脂や加熱して溶融させたポリマーであっても良い。
【0094】
第1流路21、第2流路26と、第1バイパス流路とは、別々の配管によって構成される場合に限定されない。例えば、第1ポンプ33の一部として、ポンプの駆動部を経由せずに送液できる別の流路が形成されているような構造であっても良い。
【実施例
【0095】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
<実施例1>
実施例1では、図1に示すような構造の送液システム1を用いて、N,N-ジメチルホルムアミドにポリアミック酸が溶解した粘度10poiseの溶液(第1流体A1)を送液した。その後、装置を洗浄するための溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミド(第2流体A2)を送液した。
【0097】
まず、第1タンク11には粘度10poiseのポリアミック酸溶液が格納されており、これをギアポンプ(第1ポンプ33)によって流量140kg/hで送液した。このとき、第1流路バルブ31及び第2流路バルブ34は開とし、第1バイパス流路バルブ23は閉としていた。これらのバルブとしては、いずれもボールバルブを用いた。また、第1タンク11からギアポンプの吸入流路までの配管内は、ポリアミック酸溶液をギアポンプの吸入流路に供給するため、第1タンクガスライン12から窒素ガスを導入することによって0.1MPaに加圧していた。第1流路21に第1流路測定部32として密度計を設置し、第1流路内の流体の密度を測定した。
【0098】
第1タンク11内のポリアミック酸溶液の残量が少なくなったところで、装置洗浄用の溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミドを第1タンクの上部から仕込み、ギアポンプによる送液を継続した。密度の高いポリアミック酸溶液が第1タンク11の底に沈んだまま先に送液され、ポリアミック酸溶液が全て第1タンク11から流出した後に、第1流路21内の流体が粘度の低いN,N-ジメチルホルムアミドに置換されていった。
【0099】
ポリアミック酸溶液の送液中、密度計の値は1.07g/ccを示していたが、N,N-ジメチルホルムアミドに置換されると密度計の指示値が低下していった。そこで、密度計の値が1.00g/ccとなったところでギアポンプを停止し、第1流路バルブ31及び第2流路バルブ34を閉とした。続いて、第1タンクガスライン12による加圧は0.1MPaのままとし、第1バイパス流路バルブ23の開度を調節して、圧送によるN,N-ジメチルホルムアミドの送液流量を調整し、160kg/hで送液した。
【符号の説明】
【0100】
1 送液システム
11 第1タンク(第1格納部)
12 第1タンクガスライン(第1ガスライン)
13 第1タンク測定部(第1測定部)
14 第1タンク払出弁
21 第1流路
22 第1バイパス流路
23 第1バイパス流路バルブ(第1流路切替バルブ)
24 第1流路ガスライン(第1ガスライン)
26 第2流路
31 第1流路バルブ(第1流路切替バルブ)
32 第1流路測定部(第1測定部)
33 第1ポンプ
34 第2流路バルブ(第1流路切替バルブ)
41 第1バイパス流路測定部(第1測定部)
図1
図2
図3
図4