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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】貯水装置、及び排水システム
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/10 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
E03F5/10 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021036059
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136446
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012353(JP,A)
【文献】実開平02-047282(JP,U)
【文献】特開2015-040387(JP,A)
【文献】実開昭63-156282(JP,U)
【文献】米国特許第05290434(US,A)
【文献】特開2005-330776(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1701387(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水を排水する排水流路を形成する管路上に配置される貯水装置であって、
外部から注水して水を溜めることが可能であって、筒状に形成され、内部に導入された水を流出させるための流出口を備えた貯水部と、
開閉部形成体、及び開閉部材を備えた開閉部と、
前記流出口が設けられた位置よりも高さ方向に高い位置であって前記貯水部の内部に収まる位置において開口した取水口を有する排水経路と、
を有し、
前記開閉部形成体は、前記流出口と連通する孔部を有するものであり、

前記開閉部材は、前記排水経路をなす管部と連通する取付孔を有するものであり、
前記開閉部材は、前記開閉部形成体の前記孔部を開閉することにより、
前記貯水部の内部に貯留された水が前記孔部を介して前記流出口に流れるのを許容する状態と、
前記貯水部における水位が前記取水口の位置に到達せず、前記孔部と前記取付孔とが連通した状態において、前記貯水部の内部に貯留された水が前記孔部を介して前記流出口へ流れるのを制限する状態と、
に切り替え可能なものであり、
前記排水経路は、前記貯水部における水位が前記取水口の位置まで達してもなお、前記貯水部への注水を継続することにより、前記取水口から水を排水経路に導入し、前記流出口を経て前記貯水部の外部に排出できること、
を特徴とする貯水装置。
【請求項2】
前記開閉部に接続され、前記貯水部の外側から前記開閉部の開閉状態を切り替える切替操作を可能とする操作部を有し、
前記操作部の少なくとも一部が、内部を水が通過可能な通水路を内部に備えた筒体によって構成されており、
前記通水路が、前記取水口、及び前記流出口に対して連通して、前記排水経路を構成すること、を特徴とする請求項1に記載の貯水装置。
【請求項3】
水が通過可能な通水路を内部に備えた排水管を有し、
前記通水路が、前記取水口、及び前記流出口に対して連通して、前記排水経路を構成すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の貯水装置。
【請求項4】
前記排水経路が、前記取水口から導入された空気の前記流出口への流れを許容するものであること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の貯水装置。
【請求項5】
前記開閉部に接続され、前記貯水部の外側から前記開閉部の開閉状態を切り替える切替操作を可能とする操作部を有し、
前記操作部が、
前記開閉部に取り付けられる第一管体と、
前記第一管体と連結される第二管体とを備え、
前記第一管体及び前記第二管体が連結された状態において、前記貯水部の外側に突出し、
前記第二管体を前記第一管体から取り外した状態において、前記第一管体が前記貯水部の内部に収まること、を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の貯水装置。
【請求項6】
前記第一管体及び前記第二管体を連結する管継手を有し、
前記取水口が、前記管継手によって形成されていることを特徴とする請求項5に記載の貯水装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の貯水装置と、
汚水を排水する排水流路を形成する管路と、
給水源とを有し、
前記貯水装置が、前記管路上であって前記給水源よりも下流側に設けられていることを特徴とする排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水を排水する排水流路を形成する管路上に配置される貯水装置、及び当該貯水装置を用いた排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されている貯水装置や排水システム等が提供されている。特許文献1に開示されている貯水装置は、流出口と、流出口を閉塞可能とする開閉部と、開閉部と連結された操作部と、操作部を挿通可能とされた挿通部が形成され、開口を閉塞可能とする蓋体とを備え、操作部が操作されることにより流出口を開閉可能なものとされている。この貯水装置においては、操作部が管状の部材とされており、操作部の一端に給水口が設けられており、他端に給水口から取り込まれた水を吐出する吐出口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-012353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した貯水装置のようなものに外部から注水して水を溜める場合、注水を停止するタイミングが遅れると、水が貯水装置から溢れ出してしまう可能性がある。一方、注水を止めるタイミングが早いと、貯水装置に貯留される水量が、排水流路に溜まった汚水を流すのに必要な水量を下回ってしまう可能性がある。そのため、上記特許文献1に開示されているような貯水装置は、注水を停止するタイミングが遅れたとしても、水が貯水装置から溢れ出さない構成とすることにより、適量の水を貯水装置に準備しやすくなり、より一層利便性を向上させ得ると考えられる。
【0005】
そこで本発明は、貯水部から水を溢れ出させることなく、適量の水を貯留可能な貯水装置、及び当該貯水装置を用いた排水システムの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の貯水装置は、汚水を排水する排水流路を形成する管路上に配置されるものであって、筒状に形成され、内部に導入された水を流出させるための流出口を備えた貯水部と、前記貯水部の内部に貯留された水の前記流出口への流れを許容する開状態、及び前記流出口への水の流れを制限する閉状態に開閉状態を切替可能な開閉部と、少なくとも前記開閉部が閉状態である状態において、前記貯水部の内部に貯留された水の前記流出口への流れを許容する排水経路と、を有し、前記排水経路の取水口が、前記貯水部の内部において高さ方向に所定の位置で開口していること、を特徴とするものである。
【0007】
本発明の貯水装置は、開閉部を閉状態として流出口への水の流れを制限することにより、貯水部に水を溜めることができる。また、本発明の貯水装置は、開閉部を開状態として貯水部の内部に貯留された水の前記流出口への流れを許容することにより、貯水部に貯められた水を流出口から排出させることができる。さらに、本発明の貯水装置は、取水口が貯水部の内部において高さ方向に所定の位置において開口した排水経路を備えている。また、排水経路は、少なくとも開閉部が閉状態である状態において、貯水部の内部に貯留された水の流出口への流れを許容するものとされている。そのため、本発明の貯水装置は、開閉部が閉状態とされつつ、貯水部の内部において高さ方向に所定の位置まで注水された状態において、さらに注水が行われた場合に、排水経路を介して流出口から余剰の水を排出させ、貯水部から水が溢れ出すのを抑制できる。従って、本発明によれば、貯水部から水を溢れ出させることなく、適量の水を貯留可能な貯水装置を提供できる。
【0008】
(2)上述した貯水装置は、前記開閉部に接続され、前記貯水部の外側から前記開閉部の開閉状態を切り替える切替操作を可能とする操作部を有し、前記操作部の少なくとも一部が、内部を水が通過可能な通水路を内部に備えた筒体によって構成されており、前記通水路が、前記取水口、及び前記流出口に対して連通して、前記排水経路を構成すること、を特徴とするものであると良い。
【0009】
かかる構成によれば、操作部をなす筒体を排水経路として活用することができる。従って、上述した構成によれば、貯水装置の構成をシンプルなものとしつつ、貯水部から水を溢れ出させることなく、適量の水を貯留可能な貯水装置を提供できる。
【0010】
(3)上述した貯水装置は、水が通過可能な通水路を内部に備えた排水管を有し、前記通水路が、前記取水口、及び前記流出口に対して連通して、前記排水経路を構成すること、を特徴とするものであると良い。
【0011】
かかる構成によれば、貯水部に対して過剰に注水が行われた場合に、排水管によって構成された排水経路を介して余剰の水を流出口から排出させ、貯水部から水が溢れ出すのを抑制できる。従って、本発明によれば、貯水部から水を溢れ出させることなく、適量の水を貯留可能な貯水装置を提供できる。
【0012】
(4)上述した貯水装置は、前記排水経路が、前記取水口から導入された空気の前記流出口への流れを許容するものであると良い。
【0013】
かかる構成によれば、例えば、貯水部を開閉するための蓋を閉じる場合などした場合に、空気を貯水部から外部に逃がすための経路として排水経路を活用できる。
【0014】
(5)上述した貯水装置は、前記開閉部に接続され、前記貯水部の外側から前記開閉部の開閉状態を切り替える切替操作を可能とする操作部を有し、前記操作部が、前記開閉部に取り付けられる第一管体と、前記第一管体と連結される第二管体とを備え、前記第一管体及び前記第二管体が連結された状態において、前記貯水部の外側に突出し、前記第二管体を前記第一管体から取り外した状態において、前記第一管体が前記貯水部の内部に収まること、を特徴とするものであると良い。
【0015】
かかる構成によれば、貯水装置を使用しないときに操作部を第一管体及び第二管体に分解し、操作部が貯水装置の外部に突出しない状態とすることができる。また、上述した構成によれば、貯水装置を使用する際には第一管体及び第二管体を連結することで、操作部を介して貯水部の外部から開閉部を操作可能な状態とすることができる。
【0016】
(6)上述した貯水装置は、前記第一管体及び前記第二管体を連結する管継手を有し、前記取水口が、前記管継手によって形成されていることを特徴とするものであると良い。
【0017】
かかる構成によれば、管継手を活用して取水口を設けることができ、貯水装置をシンプルな構成のものとすることができる。
【0018】
(7)本発明の排水システムは、上述した貯水装置と、汚水を排水する排水流路を形成する管路と、給水源とを有し、前記貯水装置が、前記管路上であって前記給水源よりも下流側に設けられていることを特徴とするものである。
【0019】
かかる構成によれば、貯水部から水を溢れ出させることなく、排水流路に溜まった汚水を流すのに適量の水を貯留可能な貯水装置に貯留させることが可能となる。そのため、上述した構成によれば、貯水装置の貯水部から水が溢れ出すのを抑制しつつ、貯水装置に確保された適切な量の水により汚水を確実に流すことが可能な排水システムを提供できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、貯水部から水を溢れ出させることなく、適量の水を貯留可能な貯水装置、及び当該貯水装置を用いた排水システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の排水システムを示す模式図である。
図2】本発明の貯水装置を示す断面図である。
図3図2の貯水装置の分解斜視図である。
図4】(a)は図2の閉状態とされた貯水装置に所定の水位以下の水を貯留した状態を示す断面図、(b)は図2の閉状態とされた貯水装置に所定の水位を越えて水を注水した状態を示す断面図である。
図5】(a)は変形例に係る貯水装置に所定の水位以下の水を貯留した状態を示す断面図、(b)は変形例に係る貯水装置に所定の水位を越えて水を注水した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る貯水装置10、及びこれを用いた排水システムSについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、上下方向等の位置関係については、特に断りのない限り、貯水装置10や排水システムSを設置した状態を基準として説明する。また、以下の説明において、上流側及び下流側との表現は、貯水装置10や排水システムSにおいて、給水源側を上流とし、その反対側を下流側として説明する。以下、本発明の一実施形態である排水システムSの概略構成について説明した後、これに用いられる貯水装置10の構成について詳細に説明する。
【0023】
≪排水システムSについて≫
図1は、本発明の排水システムSを示す模式図である。排水システムSは、排水設備3から排出される汚水を、下水本管4等の下流側に向けて排出させるものである。排水システムSは、排水設備3から排出される汚水を、下水本管4等の下流側に向けて排出させるものである。
【0024】
ここで、排水設備3は、汚水を排出する設備である。排水設備3には、トイレ、風呂、流し台などのように建物1等おいてに既設のもの(以下、「既設排水設備3a」とも称す)や、建物1の外側等において仮設の設備として設置された仮設トイレ、仮設の流し台など(以下、「仮設排水設備3b」とも称す)などがある。ここで、本明細書において、「汚水」とは、例えばトイレ、風呂および台所の流し台などから排出される水を指す。また、下水本管4は、汚水を汚水処理場(図示せず)に導くために地中に埋設する等して敷設された配管である。
【0025】
排水システムSは、貯水装置10、管路40、及び給水源(本実施形態では貯水タンク80)を基本構成として備えている。図1に示した排水システムSは、これらの構成に加えて、切替式排水マス50、逆流抑止マス70及び汚水貯留槽84を備えたものとされている。また、排水システムSは、これらの構成に加え、給水ポンプ82(ポンプ)や、仮設排水設備3bを設置して使用することができる。
【0026】
貯水装置10は、給水源となる貯水タンク80から供給された水を貯留しておき、汚水を流す際に貯留しておいた水を管路40に供給するための水門として設けられている。貯水装置10は、例えば塩化ビニル、繊維強化プラスチックなどの樹脂素材を加工成形したものとすることができる。貯水装置10の詳細な構造については、後に詳述する。
【0027】
管路40は、複数の管材や継手などを連結することにより、汚水の流路となる排水流路Cを構成するものである。管路40は、一本の配管により構成されていても良いが、本実施形態で例示するように、複数本の配管とそれらを接続する継手とにより構成すると良い。
【0028】
図1に示すとおり、管路40は、第一管路42、及び第二管路44を備えている。また、管路40には、複数の立管48が設けられている。管路40には、貯水装置10、切替式排水マス50、及び逆流抑止マス70が配置されている。
【0029】
第一管路42は、貯水装置10から下水本管4に至るように設けられている。また、第二管路44は、切替式排水マス50から汚水貯留槽84に至るように設けられている。管路40は、第一管路42及び第二管路44により、汚水の排水流路Cとして、二つの系統を形成可能としている。具体的には、管路40は、第一管路42を介して汚水を下水本管4に排水させる第一流路c1と、第二管路44を介して汚水を汚水貯留槽84に排出させる第二流路c2とを形成可能としている。
【0030】
管路40は、汚水を第一流路c1により下水本管4に排出させる通常時用の排水流路Cとして、第一流路c1を形成している。また、管路40は、下水本管4や、第二管路44との分岐部分よりも下流側の第一管路42等の破損など、汚水が上流側へ逆流するおそれがある排出不能時用の排水流路Cとして、汚水貯留槽84に汚水を排出させる第二流路c2を形成している。
【0031】
立管48は、管路40上に設けられている。より具体的には、立管48は、管路40に設けられた排水マス47に設けられている。なお、立管48は、排水マスに設けられるもののほか、管路40と継手を介して連結されるものであってもよい。また、立管48が設けられる排水マスは、汚水マス、雨水マス等、種々選択可能である。
【0032】
立管48は、地面から下方に向かって延びた管である。立管48の上端は、地面に向かって開口している。図1に示すように、立管48の上端には、仮設排水設備3bを取り付けることができる。災害時以外の通常時など、仮設排水設備3bが設けられていない状態では、立管48の上端の開口は、蓋49が被せられて閉塞される。また、災害時など仮設排水設備3bが設置される状況では、蓋49が立管48の開口から取り外され、仮設排水設備3bが取り付けられる。立管48の下端は、第一管路42に連結されている。
【0033】
なお、図1では、既設排水設備3aよりも下流側に設けられた立管48に仮設排水設備3bを設けた例を示したが、仮設排水設備3bは、既設排水設備3aよりも上流側の立管48に設けてもよい。例えば、既設排水設備3aよりも上流側であって、貯水装置10よりも下流側に立管48が設けられている場合には、当該立管48に仮設排水設備3bが設けられてもよい。
【0034】
切替式排水マス50は、排水流路Cを、第一流路c1と第二流路c2とに切り替え可能とするために設けられている。切替式排水マス50は、建物1の外の地中に埋設されている。また、逆流抑止マス70は、切替式排水マス50よりも排水流路Cの下流側に設けられている排水マスである。逆流抑止マス70には、逆流抑制弁72が設けられており、下流側から上流側への汚水の逆流を抑制できるものとされている。
【0035】
貯水タンク80(貯水槽、給水源)は、貯水装置10に供給するための水を貯留しておくためのタンクである。貯水タンク80には、例えば、雨水、生活用水などの水が貯留される。貯水タンク80は、図1に示すように地中に埋設されているものや、地上に設置されたものとすることができる。
【0036】
給水ポンプ82(ポンプ)は、貯水タンク80に貯留された水を貯水装置10に搬送するためのものである。給水ポンプ82は、災害時などに既設排水設備3aへの水の供給が停止した場合など、災害時対応として排水システムSを機能させようとする際に準備される。
【0037】
汚水貯留槽84は、排水設備3から排出した汚水を貯留する槽である。図1に示すように、汚水貯留槽84は、第二管路44を介して切替式排水マス50と接続されている。汚水貯留槽84には、第二流出口56から流れる汚水が貯留される。
【0038】
排水システムSは、排水設備3への水の供給が機能している場合(給水機能時)であって、かつ下水本管4への排水が機能している場合(排水機能時)には、排水設備3から排出される汚水を、下水本管4等の下流側に向けて排出させることができる。すなわち、排水システムSにおいては、排水設備3への給水が機能している状態であって、かつ下水本管4への排水が機能している状態(以下、このような状態である場合を「給排水可能時」又は「通常時」とも称す)には、排水設備3に供給されている水により、排水設備3から排出される汚水を下水本管4等に向けて排出させることができる。本実施形態では、管路40の中途に切替式排水マス50が設けられており、排水流路Cを第一流路c1及び第二流路c2に切り替え可能とされている。そのため、排水システムSは、給排水可能時において、排水流路Cが第一流路c1となるように切替式排水マス50を切り替えることにより、排水設備3から排出される汚水を下水本管4等に向けて排出させることができる。
【0039】
一方、排水システムSは、地震などの災害により、下水本管4や管路40の一部に破損が発生して下水本管4への汚水の排水が困難な場合(排水不能時)に、汚水を汚水貯留槽84に排出することができる。本実施形態の排水システムSでは、排水不能時に管路40の中途に設けられた切替式排水マス50の切替操作により、排水流路Cを第二流路c2に切り替えることにより、排水設備3から排出される汚水を汚水貯留槽84に向けて排出させることができる。
【0040】
また、排水システムSは、水の供給が停止(断水)してしまい、排水設備3への給水が機能しなくなっている場合や、給水設備が十分ではない屋外等の場所で仮設トイレなどを設置するため給水機能が不足している場合(給水不能時)には、貯水装置10に貯留された貯留水を管路40に供給して汚水を下流側へ排出することができる。ここで、給水不能時において、下水本管4への汚水の排水が可能である場合(排水可能時)には、切替式排水マス50を給排水可能時と同様に排水流路Cが第一流路c1となるようにし、汚水を下水本管4に向けて排出させる。一方、排水システムSは、給水不能、かつ排水不能の場合(給排水不能時)には、貯水装置10に貯留された貯留水を管路40に供給しつつ、排水設備3から排出される汚水を汚水貯留槽84に向けて排出させることができる。具体的には、排水システムSは、給排水不能時に、管路40の中途に設けられた切替式排水マス50によって排水流路Cを第二流路c2に切り替える。排水設備3から排出される汚水を、貯水装置10から排出された水により汚水貯留槽84に向けて排出させることができる。
【0041】
上述したように、排水システムSは、排水設備3への給水が機能しなくなる等した場合であっても、貯水タンク80から貯水装置10に貯留された貯留水を用いて、排水設備3から排出される汚水を下水本管4や汚水貯留槽84に向けて排出させる状態(以下、このような状態である場合を「貯水装置稼働時」とも称す)に切り替えて使用することができる。図1において仮想線(二点鎖線)で示すように、排水システムSは、貯水装置稼働時に給水ポンプ82を設置することにより、給水ポンプ82によって貯水タンク80から水を汲み上げ、貯水装置10に対して供給することができる。また、排水システムSは、貯水装置稼働時に、図1において仮想線(二点鎖線)で示すように仮設排水設備3bを設置して使用することができる。
【0042】
≪貯水装置10について≫
図2図3に示すように、貯水装置10は、貯水部12、開閉部15、操作部20を備えている。貯水装置10は、例えば樹脂素材や、セラミックス素材、コンクリート素材等、適宜の素材を用いて構成できるが、本実施形態では塩化ビニルや、繊維強化プラスチックなどの樹脂素材を用いて各部を構成したものとされている。
【0043】
貯水部12は、上方に開口が形成され、下方が閉塞された有底筒状のものである。図3に示すとおり、貯水部12の側部(周部)には、流出口14が設けられている。流出口14には、第一管路42が接続される。貯水装置10は、内部に供給された水を流出口14から第一管路42に向けて流出させることができる。
【0044】
また、貯水部12は、上端側の開口部分を蓋部13により開閉可能とされている。蓋部13は、蓋体13aと、蓋枠13bと、鎖13cを有する。図2図5に示すように、蓋体13aは、貯水部12の開口部分を開閉するためのものとされている。また、蓋枠13bは、貯水部12の開口部分に取り付けられ、蓋体13aを嵌め込み可能な枠体とされている(図3では図示せず省略)。また、本実施形態では、図2図4図5において二点鎖線で示した蓋体13aは、貯水装置10の使用時に蓋枠13bから取り外される。そのため、貯水装置10の使用時には、貯水部12の上端側の開口部分が露出した状態になる。そこで、本実施形態では、蓋枠13bから蓋体13aを取り外した状態において、人が誤って貯水部12に嵌まるのを防止するために、蓋枠13bに対して鎖13cが取り付けられている。鎖13cは、貯水部12の径方向外側から中心側(貯水部12の軸心側)に延びるように蓋枠13bに対して取り付けられている。また、鎖13cは、貯水部12の略軸心位置を中心として周方向に所定の間隔ごとに複数(本実施形態では略90度毎に4本)設けられている。
【0045】
開閉部15は、貯水部12の内部に貯留された水の流出口14への流れを許容する状態(開状態)と、流出口14への水の流れを制限する状態(閉状態)とに切り替えるものである。開閉部15は、開閉部形成体16と、開閉部材18とを備えたものとされている。
【0046】
図3に示すとおり、開閉部形成体16は、ガイド部16aを有する。ガイド部16aは、開閉部材18を軸線方向Xに沿って変位可能なようにガイドするものである。図3に示すとおり、ガイド部16aは、軸線方向Xに延びる溝状のものとされている。開閉部形成体16やガイド部16aは、貯水部12に対して直接形成されたものであってもよいが、本実施形態では、貯水部12とは別体として開閉部形成体16を設けると共に、開閉部形成体16にガイド部16aを設け、開閉部形成体16を貯水部12に対して取り付けたものとされている。
【0047】
図3に示すとおり、開閉部形成体16は、上述したガイド部16aに加えて、取付部16bと嵌込部16cとを備えている。取付部16bは、貯水部12の内壁面に沿うように湾曲した形状とされている。取付部16bの略中央には、孔部16dが形成されている。また、嵌込部16cは、孔部16dに対応する位置において、取付部16bから突出するように形成されている。開閉部形成体16は、嵌込部16cを流出口14の内側に嵌め込み、取付部16bを貯水部12の内壁面に沿うように取り付けることにより、貯水部12と一体化されている。
【0048】
図3に示すとおり、開閉部材18は、摺動部18aと、接続部18bとを有している。摺動部18aは、開閉部材18を軸線方向Xに移動させる際に、開閉部形成体16の取付部16bに対して摺動する部分である。摺動部18aは、軸線方向Xに沿って直線状に延びる突起状の凸部18cを有する。開閉部材18は、凸部18cとガイド部16aとが噛み合うように開閉部形成体16に取り付けられる。開閉部材18は、凸部18cとガイド部16aとの嵌合構造により、軸線方向Xにガイドされつつ貯水部12に対して摺動して変位可能とされている。
【0049】
接続部18bは、摺動部18aから貯水装置10の径方向内側に突出する形状とされている。接続部18bには、取付孔18dが設けられている。接続部18bの取付孔18dには、後述する操作部20の第一管体22に設けられた突出部22aが嵌め込まれ、第一管体22が取り付けられる。また、取付孔18dは、突出部22aの嵌め込み方向に向けて開閉部材18を貫通するように形成されている。これにより、開閉部材18を開閉部形成体16に対して取り付けた状態において、開閉部形成体16に設けられた孔部16dに対し、取付孔18dが連通した状態になる。
【0050】
操作部20は、貯水部12の外側から開閉部材18の開閉状態を切り替える切替操作を可能とするために設けられたものである。すなわち、操作部20は、開閉部材18を軸線方向Xに変位させる操作を行うために設けられている。操作部20は、開閉部材18に対して接続されている。図3に示すとおり、操作部20は、第一管体22、第二管体24、及び管継手26を備えている。
【0051】
第一管体22は、管状の部材である。第一管体22には、径方向の外側に突出するように突出部22aが設けられている。第一管体22は、突出部22aを開閉部材18の取付孔18dに嵌め込むことにより、開閉部材18に取り付けられる。これにより、第一管体22と開閉部材18の摺動部18aとが一体化されると共に、第一管体22が取付孔18dに連通した状態になる。また、第二管体24は、第二管体24の上端部には、第二管体24に対して交差する方向に延びる把持部25が設けられている。
【0052】
ここで、操作部20を構成する管(本実施形態では第一管体22及び第二管体24)の直径Dは、適宜規定することができるが、例えば操作性や、後に詳述する排水経路30による排水能力、強度等の観点から適正な値に設定すると良い。具体的には、操作性の観点からすると、開閉部材18の開閉操作に際して把持される第二管体24の直径Dを細くすることで把持しやすくなる反面、強度を考慮すると直径Dを過剰に小さくすることは得策ではない。また、第一管体22を用いて構成される排水経路30の排水能力を考慮すると、少なくとも第一管体22の直径Dについては、排水能力を確保するうえで必要な大きさ以上とすることが望ましい。
【0053】
管継手26は、第一管体22と第二管体24とを分離可能に連結するものである。管継手26は、第一ポート26a、第二ポート26b、及び第三ポート26cを備えた、外観形状が略T字型の継手である。管継手26は、第一ポート26a及び第二ポート26bが軸線方向Xに向く姿勢とされ、第一管体22及び第二管体24に対して接続される。具体的には、管継手26は、第一ポート26aに対して第一管体22を接続すると共に、第一ポート26aに対して反対側に位置する第二ポート26bに対して第二管体24を接続することにより、第一管体22及び第二管体24を軸線方向Xに向けて略真っ直ぐに延びるように連結することができる。また、第三ポート26cは、第一ポート26a及び第二ポート26bの軸線方向Xの中間位置に設けられている。第三ポート26cは、第一管体22及び第二管体24を連結した状態において、軸線方向Xに対して交差する方向に向けて開口するように形成されている。
【0054】
また、管継手26は、第二ポート26bに対して第二管体24を適宜着脱可能なものとされている。また、第二管体24を管継手26から取り外して第一管体22から取り外された状態(分離状態)において、管継手26は、貯水部12の内部に収まる位置、すなわち貯水部12の上端側の開口よりも下方側に配置される。そのため、貯水装置10は、管継手26から第二管体24を取り外し、蓋部13によって貯水部12の上端側の開口部を閉塞することにより、蓋部13から操作部20が突出しない状態とすることができる。また、管継手26から取り外した第二管体24は、貯水装置10の内部に収容しておくことができる長さとされている。そのため、貯水装置10は、操作部20を操作する必要がない通常時などには、操作部20を貯水部12の内部に収容しておける。これにより、例えば人が往来する際などに、操作部20が邪魔になるのを抑制できる。
【0055】
一方、図2に示すとおり、蓋体13aを取り外し、第二管体24が第一管体22に取り付けられた状態(連結状態)とすると、操作部20の両端のうち上方の端部(第二管体24側の端部)が、貯水装置10の外側に取り出された状態になる。また、この状態において、操作部20を下げた状態とすることにより、開閉部材18が閉状態となり、貯水部12に貯められた水の流出口14への流れが制限された状態になる。これとは逆に、操作部20を引き上げた状態とすることにより、開閉部材18が開状態となり、貯水部12に貯められた水の流出口14への流れが許容された状態になる。
【0056】
また、管継手26は、内部において第一ポート26aと第三ポート26cとを連通する一方で、第二ポート26bは第一ポート26a及び第三ポート26cのいずれとも連通しない構造とされている。そのため、第一ポート26aに接続された第一管体22と、第二ポート26bに接続された第二管体24とは、管継手26を介して非連通の状態で連結されている。また、第一管体22は、一端側(上端側)において管継手26の第三ポート26cと連通すると共に、他端側(下端側)において突出部22aに対して開閉部材18の取付孔18dに連通している。取付孔18dは、少なくとも開閉部材18が閉状態である状態において、流出口14と連通する位置に設けられている。そのため、管継手26の第一ポート26aに対して第一管体22を接続することにより、少なくとも開閉部材18が閉状態である状態において、第三ポート26cから第一管体22を経て流出口14に到達するように連通した経路(排水経路30)が形成される。
【0057】
排水経路30は、管継手26の第三ポート26cの開口を取水口32とし、貯水部12の内部に貯められた水を取り込み可能とされている。また、筒状に形成された第一管体22の内部空間が、排水経路30を構成する通水路34として機能し、取水口32及び流出口14に対して連通する。排水経路30は、少なくとも開閉部材18が閉状態である状態においても、取水口32から流出口14への水の流れを許容する経路を構成する。また、取水口32は、貯水部12の内部において高さ方向に所定の位置において開口している。貯水装置10においては、流出口14が設けられた位置からさらに高さ方向に第一管体22の長さ(高さ)分だけ高い位置において管継手26が配置され、第三ポート26cに取水口32が開口している。また、取水口32は、貯水部12に貯留される水の水面に対して交差する方向(本実施形態では略直交する方向)に向けて開口している。
【0058】
貯水装置10は、上述したような位置に排水経路30の取水口32が設けられている。そのため、貯水装置10においては、開閉部材18を閉状態とした状態で注水を行うと、図4(a)のように貯水部12における水位が取水口32よりも低い間は、注水された水が貯水部12から排出されることなく溜まり続ける。一方、貯水部12における水位が取水口32の位置まで達してもなお、開閉部材18を閉状態とした状態で注水を継続すると、図4(b)のように、取水口32から水が排水経路30に入り、流出口14を経て貯水部12の外部に排出される。これにより、取水口32が設けられた位置を越える高さまで貯水部12に水が溜まるのを抑制し、貯水部12から水が溢れ出すのを回避できる。
【0059】
≪貯水装置10及び排水システムSの作用効果≫
上述した貯水装置10、及び排水システムSによれば、以下に記載するような作用効果が得られる。
【0060】
本実施形態の貯水装置10は、開閉部材18を閉状態として流出口14への水の流れを制限することにより、貯水部12に水を溜めることができる。また、貯水装置10は、開閉部材18を開状態として貯水部12の内部に貯留された水の流出口14への流れを許容することにより、貯水部12に貯められた水を流出口14から排出させることができる。これにより、地震等の影響によって排水設備3への給水ができない状況等においても、貯水装置10に貯留した水を利用して汚水を下流側に流すことが可能となる。
【0061】
本実施形態の貯水装置10は、取水口32が貯水部12の内部において高さ方向に所定の位置において開口した排水経路30を備えている。また、貯水装置10は、少なくとも開閉部材18が閉状態である状態において、貯水部12の内部に貯留された水の流出口14への流れを許容するものとされている。そのため、貯水装置10は、開閉部材18が閉状態とされつつ、貯水部12の内部において高さ方向に所定の位置まで注水された状態において、さらに注水が行われた場合に、排水経路30を介して余剰の水を流出口14から排出される、これにより、貯水装置10によれば、貯水部12から水を溢れ出させることなく、適量の水を貯留することができる。
【0062】
また、上述した貯水装置10は、開閉部材18に接続され、貯水部12の外側から開閉部材18の開閉状態を切り替える切替操作を可能とする操作部20を有する。また、操作部20の少なくとも一部(本実施形態では第一管体22)が、通水路34を内部に備えた筒体によって構成されている。また、貯水装置10は、通水路34が取水口32及び流出口14に対して連通することにより、排水経路30が構成されている。このように、貯水装置10は、操作部20をなす筒体を排水経路30として活用でき、その分だけ装置構成がシンプルなものとされている。
【0063】
上述した貯水装置10は、排水経路30が、取水口32から導入された水だけではなく、空気についても流出口14に向けて導出可能なものとされている。そのため、貯水装置10においては、例えば貯水装置10を使用する必要がない場合などにおいて、第二管体24を取り外し、貯水部12を開閉するための蓋部13を閉じる場合などした場合に、空気を貯水部12から外部に逃がすための経路として排水経路30を活用できる。これにより、蓋部13の開閉をスムーズに行えるようになる。
【0064】
なお、本実施形態では、空気を貯水部12から外部に逃がすための排気路として、排水経路30を流用する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、貯水装置10は、貯水部12から外部に排気するための開口や排気経路を別途貯水部12に設ける等したものでも良い。
【0065】
上述した貯水装置10は、開閉部材18に接続され、貯水部12の外側から開閉部材18の開閉状態を切り替える切替操作を可能とする操作部20を有する。また、操作部20は、閉塞部に取り付けられる第一管体22と、第一管体22と連結される第二管体24とを備え、第一管体22及び第二管体24が連結された状態において、貯水部12の外側に突出し、第二管体24を第一管体22から取り外した状態において、第一管体22が貯水部12の内部に収まるものとされている。これにより、貯水装置10は、操作部20を使用する必要がないときに、操作部20を第一管体22及び第二管体24に分解し、操作部20が貯水装置10の外部に突出しない状態とすることができる。また、上述した構成によれば、貯水装置10を使用する際に、第一管体22及び第二管体24を連結して、操作部20を介して貯水部12の外部から開閉部材18を操作可能な状態とすることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、操作部20を第一管体22及び第二管体24によって構成し、適宜組み立て及び分解可能にした例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、操作部20をさらに多数の管体によって構成したり、伸縮可能な構成としたりして、上記とは異なる構成としても良い。また、操作部20の操作が必要でない場合でも、操作部20を貯水部12の外部に突出させておいても支障がない場合等においては、操作部20を分解式のものや伸縮式のもの等としなくても良い。
【0067】
上述した貯水装置10は、第一管体22及び第二管体24を連結する管継手26を有し、取水口32が、管継手26によって形成されたものとされている。これにより、貯水装置10は、管継手26を活用して取水口32を設けたシンプルな構成とすることができる。なお、本実施形態では、管継手26を活用して取水口32を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の部材を取水口32としても活用したり、取水口32を別途設けた構成としたりしても良い。
【0068】
本実施形態の排水システムSは、上述した貯水装置10と、汚水を排水する排水流路Cを形成する管路40と、給水源となる貯水タンク80とを有し、貯水装置10が、管路40上であって給水源となる貯水タンク80よりも下流側に設けられたものとされている。これにより、排水システムSは、貯水部12から水を溢れ出させることなく、排水流路Cに溜まった汚水を流すのに適量の水を貯留可能な貯水装置10に貯留させることが可能となる。そのため、上述した構成によれば、貯水装置10の貯水部12から水が溢れ出すのを抑制しつつ、貯水装置10に確保された適切な量の水により汚水を確実に流すことが可能となる。
【0069】
なお、本実施形態で例示した排水システムSは、貯水装置10や管路40、貯水タンク80等の必須の部材以外にも様々な構成を付加的に設けたものとして例示したが、本発明はこれに限定されず、付加的に設けた部材を備えていないものや、さらに他の付加的な部材を備えたもの等としても良い。
【0070】
また、上述した排水システムSでは、貯水装置10を既設排水設備3aよりも上流側に設けた例を示したが、本発明の排水システムは上述の実施形態に限定されない。例えば、本発明の排水システムは、給水が機能しいる場合において既設排水設備3aから排出される汚水を通常の水道管より供給される水により排出しつつ、仮設排水設備3bから排出される汚水を水道管とは別の給水源(例えば貯水タンク)より水を供給して排水するために用いられるものであってもよい。その場合には、既設排水設備3aよりも下流側に本発明の貯水装置が設けられるものであってもよい。また、本発明の排水システムは、貯水装置が複数設けられたものであってもよい。
【0071】
上述した排水システムSでは、汚水貯留槽84を設けた例を示したが、本発明の排水システムはこれに限定されない。例えば、本発明の排水システムは、第二流路により汚水を排出する場合に、下水本管4とは別系統の下水本管へと排出させてもよいし、これら以外の排出系統に汚水を排出するものであってもよい。
【0072】
上述した貯水装置10は、操作部20及び管継手26を活用して排水経路30を構築する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、水が通過可能な通水路102を内部に備えた排水管100を設け、通水路102によって取水口32、及び流出口14に対して連通した排水経路130を構成するようにしても良い。図5に示す例においては、排水管100の一端側が、開閉部15を構成する開閉部形成体16において、開閉部材18が取り付けられる位置よりも下流側(流出口14側)に外れた位置に連通するように形成されている。また、排水管100の他端側には、取水口132として機能するように開口している。取水口132は、上記実施形態の取水口32と同様に、貯水部12内において所定の高さにおいて開口している。
【0073】
図5に示すような排水管100を設けた構成とした場合についても、貯水装置10は、貯水部12に対して過剰に注水が行われた場合に、排水管100によって構成された排水経路130を介して余剰の水を取水口132から取り込み、流出口14から排出させることができる。これにより、貯水部12から水が溢れ出すのを抑制しつつ、適量の水を貯留することができる。
【0074】
なお、図5に示した変形例においては、排水管100を軸線方向Xに略真っ直ぐ伸びる直管によって構成した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、排水管100は、中途において屈曲した箇所を設けてトラップを構成するようにしたもの等とすると良い。また、図5に示した変形例では、取水口132を上方に向けて開口させた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば取水口132と同様に、水面に対して交差する方向に開口したもの等とすると良い。図5に示した変形例では、第一管体22及び第二管体24を管継手26のように取水口32として機能する開口を備えていない管継手126を用いた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、管継手126に代えて、管継手26を設けて取水口32を形成し、取水口132から取り込んだ水だけでなく、取水口32から取り込んだ水も流出口14から排出させることができるようにしても良い。
【0075】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の排水システム及び貯水装置は、汚水を排水する排水システム、及び当該排水システムに用いる貯水装置として好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0077】
4 :下水本管
10 :貯水装置
12 :貯水部
14 :流出口
15 :開閉部
16 :開閉部形成体
18 :開閉部材
20 :操作部
22 :第一管体
24 :第二管体
26 :管継手
30 :排水経路
32 :取水口
34 :通水路
40 :管路
80 :貯水タンク(給水源)
84 :汚水貯留槽
100 :排水管
102 :通水路
126 :管継手
130 :排水経路
132 :取水口
C :排水流路
S :排水システム
X :軸線方向
図1
図2
図3
図4
図5