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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】金属調積層体および金属調成形体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
B32B15/08 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021041734
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141429
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藤野 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】内藤 純也
(72)【発明者】
【氏名】福田 剛
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-164794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052244(US,A1)
【文献】特開2009-262501(JP,A)
【文献】特開2010-167648(JP,A)
【文献】特開2017-222155(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110882(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/087761(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 1/00-5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂層、アルミニウム層および接着剤層がこの順で重なっており、
前記接着剤層は、ポリエステル系接着剤で構成され、
前記接着剤層の下記式から算出される硬化指数は、15以上である、金属調積層体。
(式)
硬化指数=酸価×水酸基価×水酸基価当量の架橋度
(前記式中、「酸価」は、前記ポリエステル系接着剤の酸価(mgKOH/g)であり、「水酸基価」は、前記ポリエステル系接着剤の水酸基価(mgKOH/g)であり、「水酸基価当量の架橋度」は、前記接着剤層において前記ポリエステル系接着剤のポリエステルが有する水酸基が架橋に供される割合である。)
【請求項2】
前記接着剤層の硬化指数は、30以上である、請求項1に記載の金属調積層体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂層は、ベンゼン環およびシクロヘキサン環を主鎖に有するポリエステルで構成されている、請求項1または2に記載の金属調積層体。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の金属調積層体が成形されてなる金属調成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属調積層体および金属調成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンブレムのような自動車における外装用の金属調の装飾具として、金属調の成形体が知られている。このような金属調成形体には、透明な熱可塑性樹脂フィルム、金属層、接着剤層および熱可塑性樹脂フィルムをこの順で有する積層シートを成形してなる成形体が知られている(例えば、特許文献1参照)。この成形体における透明な熱可塑性樹脂フィルムは、例えばベンゼン環シクロヘキサン環と主鎖に有するポリエステル系高分子化合物であり、金属層の金属は、例えばインジウムである。また、接着剤層における接着剤は、例えばポリウレタン系の接着剤である。
【0003】
また、上記の金属調成形体には、透明あるいは半透明の表面フィルム層、接着剤層、少なくとも片面に金属層を有するポリエステル系フィルムあるいはポリオレフィン系フィルムの金属層保持用フィルム層、ウレタン系接着剤層、および、ベースフィルム層、をこの順で有する積層シートを成形してなる成形体が知られている(例えば、特許文献2参照)。この成形体における金属層は、例えば金属層保持用フィルム層におけるベースフィルム層側の面に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-370311号公報
【文献】特開2004-001243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車の洗車時に用いられる洗剤、あるいは自動車におけるウィンドウウオッシャ液は、通常、いずれもアルカリ性である。これは、自然界で付着する酸性の汚れを容易に落とすためである。しかしながら、上記金属調成形体における金属層にアルミニウム層を用いた場合では、上記のアルカリ性の液と成形体との接触によってアルミニウム層が溶解し、成形体における金属調の外観が損なわれることがある。
【0006】
本発明は、アルミニウム層のアルカリに対する十分な耐食性を有する積層体および成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る金属調積層体は、熱可塑性樹脂層、アルミニウム層および接着剤層がこの順で重なっており、前記接着剤層は、ポリエステル系接着剤で構成され、前記接着剤層の下記式から算出される硬化指数は、15以上である。
(式)
硬化指数=酸価×水酸基価×水酸基価当量の架橋度
(前記式中、「酸価」は、前記ポリエステル系接着剤の酸価(mgKOH/g)であり、「水酸基価」は、前記ポリエステル系接着剤の水酸基価(mgKOH/g)であり、「水酸基価当量の架橋度」は、前記接着剤層において前記ポリエステル系接着剤のポリエステルが有する水酸基が架橋に供される割合である。)
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明に係る金属調成形体は、上記の本発明の金属調積層体が成形されてなる金属調成形体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アルミニウム層のアルカリに対する十分な耐食性を有する積層体および成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る積層体の層構成を示す断面図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る積層体の層構成を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る成形体の層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔金属調積層体〕
図1は、本発明の一実施形態に係る金属調積層体(以下、単に「積層体」とも言う)の層構成を示す断面図である。図1に示されるように、本実施形態の積層体10は、熱可塑性樹脂層1、アルミニウム層2および第一の接着剤層3がこの順で重なっている。積層体10では、金属層としてアルミニウム層が用いられ、第一の接着剤層3の接着剤にはポリエステル系接着剤が用いられる。
【0012】
[熱可塑性樹脂層]
熱可塑性樹脂層1は、熱可塑性樹脂で構成されている。熱可塑性樹脂層1は、実質的に透明であってもよいし、不透明であってもよい。「実質的に透明」とは、成形体がアルミニウム層による金属調の外観を呈するのに十分な透明性であればよい。実質的に透明な熱可塑性樹脂層1は、成形体の表面を構成する表面層になり得る。
【0013】
熱可塑性樹脂層1の厚さは、薄すぎると、アルミニウム蒸着加工時に熱可塑性樹脂層1にシワが入り易く、アルミニウムの蒸着が不均一に付着しやすくなる。また、熱可塑性樹脂層1の厚さが薄すぎると、第一の接着剤層3を塗布する際、あるいは後述の表面樹脂層さらに貼り合わせる際に、熱可塑性樹脂層1にシワが入りやすくなることがある。熱可塑性樹脂層1の厚さが厚すぎると、積層体を成形する際に必要な柔軟性が不足し、所望の成形体が得られないことがある。あるいは、熱可塑性樹脂層1の厚さが厚すぎると、成形時に内部応力が残りやすく、成形体を高温環境下に曝した場合に成形体がその応力により変形しやすくなる。熱可塑性樹脂層1の厚さは、機械的強度、光学的機能および積層体10の所期の成形性などの諸条件に基づいて、例えば10~50μm、より好ましくは15~30μmの間から適宜に決めることが可能である。
【0014】
熱可塑性樹脂層1を構成する熱可塑性樹脂は、後述する成形体の成形を可能とする熱可塑性を有していればよい。熱可塑性樹脂は、一種でもそれ以上でもよいし、本実施形態の効果が得られる範囲において添加物を含んでいてもよい。さらに、熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂層1において所望の物性(例えば、耐アルカリ性、透明性、成形性など)を発現させる観点から適宜に決めることが可能である。
【0015】
熱可塑性樹脂層1を構成する熱可塑性樹脂の例には、ポリエチレンテレフタラート(PET)などのポリエステル、グリコール変性ポリエチレンテレフタラート(PETG)などの変性ポリエステル、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、塩化ビニル樹脂およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂が含まれる。
【0016】
熱可塑性樹脂層1は、成形体の用途に応じた十分な耐アルカリ性を有することが、成形体のアルカリによる劣化を抑制する観点から好ましい。通常、アルカリ液の浸透性が低いことから、熱可塑性樹脂層1を構成する熱可塑性樹脂は、ポリエステルであることが好ましく、その中でもPETは、耐アルカリ性が高いことに加えて、入手が容易であり積層体および成形体の生産性を高める観点からより好ましい。
【0017】
熱可塑性樹脂層1を構成する熱可塑性樹脂は、PETGのような、ベンゼン環およびシクロヘキサン環を主鎖に有するポリエステルであることが、積層体の成形性をより高める観点から好ましい。PETGは、グリコール変性ポリエチレンテレフタラートであり、PETのモノマーにおけるエチレングリコール由来の構成単位の一部がシクロヘキサンジメタノール由来の構成単位に置き換えられた分子構造を有する。エチレングリコール由来の構成単位からシクロヘキサンジメタノール由来の構成単位への置換率は、所望の成形性の観点から適宜に決めることが可能であり、例えば30~40モル%であってよい。
【0018】
[アルミニウム層]
アルミニウム層2は、金属のアルミニウムで構成された層である。所期の金属調の外観を呈する範囲において、アルミニウム層2は、アルミニウム以外の他の元素を含有していてもよい。たとえば、アルミニウム層2は、アルミニウム以外に、金属調の外観における色相を変化させるためにドーパントを含有していてもよい。
【0019】
アルミニウム層2の厚さが薄すぎると、アルミニウム層2の光線透過率が高くなりすぎて、金属光沢の発現が不十分となることがある。アルミニウム層2の厚さが厚すぎると、アルミニウム層2による金属調の外観の発現および隠蔽性が頭打ちになり、コストアップになることがあり、また、成形体の製造における加熱成形時にクラックまたは白化が起きやすくなることがある。アルミニウム層2の厚さは、光学的な効果および積層体10の所期の成形性などの諸条件に基づいて、好ましくは20~100nmの間から適宜に決めることが可能である。
【0020】
アルミニウム層2は、熱可塑性樹脂層1の表面に密着していることが、成形体において耐アルカリ性を十分に発現させる観点から好ましい。このようなアルミニウム層2は、真空蒸着、スパッタリングおよび化学気相成長(CVD)などの公知の技術を用いて熱可塑性樹脂層1の表面に形成することが可能である。アルミニウムは、面形状での蒸着が可能であり、また高い反射率および高い輝度を有する層を形成することが可能である。よって、アルミニウム層2は、成形体におけるL値(明度)を高める観点で有利である。
【0021】
[第一の接着剤層]
第一の接着剤層3は、ポリエステル系接着剤で構成されている。ポリエステル系接着剤は、ポリエステルを主成分とする組成物で構成されている。ここで「主成分」とは、当該組成物において最も量の多い成分であることを意味する。ポリテル系接着剤を構成するポリエステルは、一種でもそれ以上でもよい。
【0022】
ポリエステル系接着剤は、ポリエステルを主成分とするほかに、後述する硬化指数の条件を満足する範囲において、他の樹脂および添加剤をさらに含有してもよい。他の樹脂の例には、第一の接着剤層3における凝集力を高めるために添加される、極性基を有する樹脂が含まれ、上記ポリエステルと相溶し得る樹脂であればよく、その例には、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレンおよびポリビニルエーテルが含まれる。添加剤の例には、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および着色剤が含まれる。ポリエステル系接着剤は、ポリウレタン系あるいはアクリル系の接着剤に比べて、積層体および成形体における耐アルカリ性を高めることができる。
【0023】
第一の接着剤層3の硬化指数は、15以上である。「硬化指数」は、下記式から算出される。
(式)
硬化指数=酸価×水酸基価×水酸基価当量の架橋度
【0024】
硬化指数は、大きいほど、積層体または成形体におけるアルカリ液によるアルミニウム層2の腐食を軽減(耐アルカリ性を高く)することが可能である。このような観点から、硬化指数は、20以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましく、30以上であることがさらに好ましく、40以上であることがより一層好ましい。当該硬化指数は、ポリエステルの構造によって実現可能な範囲であればよく、このような観点から350以下であってよい。硬化指数は、上記式に記載の酸価、水酸基価および水酸基価当量の架橋度によって調整可能である。
【0025】
上記式中の「酸価」は、第一の接着剤層3におけるポリエステル系接着剤の酸価(mgKOH/g)である。当該酸価は、極性の表面に対する良好な接着を実現する観点から、高いことが好ましい。上記酸価が高い場合では、第一の接着剤層3とそれに接着するアルミニウム層2との界面での密着が強まり、両層の界面での気泡の発生が少なく、その結果、当該界面へのアルカリ液の侵入を防止するのに効果的である。また、上記酸価が高い場合では、ポリエステル系接着剤に凝集力向上のための樹脂を混合する場合の両樹脂の相溶性がより高められる。
【0026】
上記ポリエステル系接着剤の酸価は、上記式における硬化指数、水酸基価および水酸基価当量の架橋度に応じて適宜に決めることが可能であり、上記の観点から、上記ポリエステル系接着剤の酸価は、0.3mgKOH/g以上であることが好ましく、0.4mgKOH/g以上であることがより好ましい。上記ポリエステル系接着剤の酸価は、硬化指数を高める観点では高いほどよいが、ポリエステル系接着剤で実現可能な範囲であればよく、また塗材として十分な安定性を有することが求められる。上記ポリエステル系接着剤の酸価は、このような観点から、例えば40mgKOH/g以下であってよく、あるいは35mgKOH/g以下であってよい。なお、ポリエステル系接着剤の酸価は、二種以上のポリエステル系接着剤を併用することで、上記酸価の範囲内に調整してもよい。
【0027】
上記ポリエステル系接着剤の酸価は、日本産業規格(JIS)K0070:1992で規定されるようなポリエステル系接着剤の酸価を測定する公知の方法による測定値であってよく、カタログ値であってもよい。当該酸価は、上記ポリエステル系接着剤中の遊離脂肪酸の量によって調整することが可能である。上記酸価は、ポリエステル系接着剤がポリエステル以外に酸価を有する成分を実質的に含有しない場合には、ポリエステル系接着剤中のポリエステルの酸価であってもよい。
【0028】
上記式中の「水酸基価」は、第一の接着剤層3におけるポリエステル系接着剤の水酸基価(mgKOH/g)である。当該水酸基価は、ポリエステル系接着剤において架橋点になり得る水酸基をより多くする観点から、高いことが好ましい。上記水酸基価が高い場合では、ポリエステル系接着剤を構成するポリエステルの水酸基が架橋に供されることによって第一の接着剤層3の凝集力が高まることから、第一の接着剤層3とアルミニウム層2との密着を強めるのに効果的である。
【0029】
上記ポリエステル系接着剤の水酸基価も、酸価と同様に、上記式における硬化指数、酸価および水酸基価当量の架橋度に応じて適宜に決めることが可能であり、上記の観点から、上記ポリエステル系接着剤の水酸基価は、0.5mgKOH/g以上であることが好ましい。上記ポリエステル系接着剤の水酸基価は、硬化指数を高める観点では高いほどよいが、ポリエステル系接着剤で実現可能な範囲であればよく、例えば40mgKOH/g以下であってよい。なお、ポリエステル系接着剤の水酸基価は、二種以上のポリエステル系接着剤を併用することで、上記水酸基価の範囲内に調整してもよい。
【0030】
上記ポリエステル系接着剤の水酸基価は、JIS K0070:1992で規定されるようなポリエステル系接着剤を構成するポリエステルの水酸基価を測定する公知の方法による測定値であってよく、カタログ値であってもよい。当該水酸基価は、例えばポリエステル系接着剤を構成するポリエステルへの水酸基の導入によって調整することが可能である。上記水酸基価は、ポリエステル系接着剤がポリエステル以外に水酸基価を有する成分を実質的に含有しない場合には、ポリエステル系接着剤中のポリエステルの水酸基価であってもよい。
【0031】
上記式中の「水酸基価当量の架橋度」は、第一の接着剤層3においてポリエステル系接着剤のポリエステルが有する水酸基が架橋に供される割合である。当該架橋度は、架橋剤の種類と量に応じて決めることが可能である。たとえば、架橋剤がポリイソシアネートである場合では、イソシアネート基は、通常、ポリエステルが有する水酸基と実質的に一対一で反応する。よって、架橋剤がポリイソシアネートであるとすれば、「水酸基価当量の架橋度」は、第一の接着剤層3中におけるポリエステルの水酸基の量に対するイソシアネート基の量の比で表される。
【0032】
より具体的には、「水酸基価当量の架橋度」は、1水酸基当量当りの架橋性官能基の架橋度であり、架橋性官能基であるイソシアネートのNCO当量と、ポリエステルの水酸基当量との比、つまりNCO当量/水酸基当量として求められる。ここで、NCO当量は、ポリイソシアネートの使用量(単位g)、当該ポリイソシアネートのNCO%、1モル相当のNCOの質量(42g)から算出すればよい。水酸基当量は、ポリエステル系樹脂の使用量(単位g)、当該ポリエステル系樹脂の水酸基価、及び1モル相当のOHの質量(17g)から算出すればよい。
【0033】
当該水酸基価当量の架橋度は、第一の接着剤層3とアルミニウム層2との密着を強め、また積層体または成形体の耐アルカリ性を高める観点から、高いことが好ましい。ポリエステル系接着剤を構成するポリエステル由来の水酸基が架橋点となることにより、第一の接着剤層3中に化学結合または水素結合などの結合がさらに導入され、第一の接着剤層3中により密な三次元構造を形成することが可能となる。その結果、第一の接着剤層3の凝集力をより高めることが可能となり、アルカリ液の浸透をより抑制することが可能となる。
【0034】
上記水酸基価当量の架橋度は、架橋剤の種類あるいはポリエステルの種類に応じて好ましい範囲が異なることがあり、一概には言えないが、空気中の水分による架橋性官能基の失活の影響を抑制する観点、および、未架橋の水酸基による積層体または成形体における耐水性および耐アルカリ性の影響を抑制する観点から、上記水酸基価当量の架橋度は、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましく、1であることが最も好ましい。
【0035】
ただし、ポリエステル系接着剤組成物を製造するときに算出する水酸基価当量の架橋度は、理論値としての1を超えてもよく、例えば1.2以下であってもよく、あるいは1.1以下であってもよい。たとえば、当該架橋度を1から1を超える方向へ増やすこと、例えば1から1.2に近づけることは、より速やかに架橋剤とポリエステル系樹脂との反応を終了させる観点から好ましい。また、当該架橋度を、1を超える側から1に向けて減らすこと、例えば1.2以下から1に近づけることは、第一の接着剤層に含まれる未架橋の架橋剤の量を低減させる観点から好ましい。また、上記架橋度を0.1から1に近づけることは、未反応の架橋剤による積層体または成形体における耐アルカリ性の影響を抑制する観点から好ましい。
【0036】
上記水酸基価当量の架橋度は、第一の接着剤層3に配合される架橋剤の種類あるいは第一の接着剤層3が接着に供される条件における当該架橋剤の水酸基に対する反応性と、架橋剤の量によって適宜に決めることができる。前述したように、ポリイソシアネートのように、通常、常温で水酸基に結合する架橋剤であれば、水酸基価当量の架橋度は、水酸基の量に対する架橋剤が有する架橋性官能基の量の比で表され得る。第一の接着剤層3が接着に供される条件において1未満の所定の割合で水酸基に対する反応性を有する架橋剤であれば、水酸基の量に対する架橋剤の量の比に架橋剤の水酸基への反応率を乗じることによって、水酸基価当量の架橋度が求められ得る。
【0037】
当該水酸基価当量の架橋度は、例えば水酸基に反応する官能基を複数有するポリイソシアネートなどの架橋剤のポリエステル系接着剤への添加量によって調整することが可能である。また、上記水酸基価当量の架橋度は、水酸基への反応率が異なる架橋剤を使用することによって調整することが可能である。
【0038】
なお、好ましい架橋剤の例にはポリイソシアネートが含まれ、その例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート、これらのポリイソシアネートのトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー、が含まれる。
【0039】
本実施形態の積層体を製造する場合では、水酸基価当量の架橋度は、積層体の製造条件および第一の接着剤層の材料に応じて推定すればよい。たとえば、架橋剤が化学量論的に全てポリエステル系樹脂と反応すると推定し、ポリエステル系接着剤の使用量と架橋剤の使用量とから、当該積層体における水酸基価当量の架橋度を推定し、決定するとよい。なお、理論上、1.0よりも高い水酸基価当量の架橋度になるように、架橋剤の使用量を決定してもよいが、過剰な架橋剤により、本願発明の効果が損なわれない範囲において決定されるべきである。
【0040】
あるいは、酸価、水酸基価および水酸基価当量の架橋度は、積層体または成形体における第一の接着剤層3の加水分解によって推定してもよい。たとえば、積層体または成形体における第一の接着剤層3を、ウレタン結合を加水分解する所定の条件で処理する。そして、ポリエステル系接着剤由来の高分子化合物において当該処理で生成した水酸基およびそれと実質的に同量のアミノ基を架橋前の水酸基と推定することによって、第一の接着剤層3における水酸基価および水酸基価当量の架橋度を推定してもよい。同様に、第一の接着剤層3の加水分解物のうち、上記高分子化合物よりも低分子の化合物について上記のように推定することにより、第一の接着剤層3における酸価を推定してもよい。
【0041】
第一の接着剤層3は、本実施形態における効果を奏する範囲において、硬化指数以外の他の物性を備えていてもよい。第一の接着剤層3におけるポリエステルの分子量は、ポリエステル系接着剤の所期の物性に応じて適宜に決めることが可能である。たとえば、第一の接着剤層3におけるポリエステルの分子量は、ポリエステル系接着剤の剪断力、密着強度および粘度などの物性の観点から、適宜に決めてもよい。ポリエステルの分子量を適宜に決定することにより、第一の接着剤層3の密着性、あるいはポリエステル系接着剤の塗工性をより高めることが可能である。
【0042】
第一の接着剤層3におけるポリエステルの分子量は、例えば第一の接着剤層3の密着性を高める観点から、数平均分子量で、5000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましい。また、例えばポリエステル系接着剤の塗工性の観点から、第一の接着剤層3におけるポリエステルの分子量は、数平均分子量で、50000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましい。
【0043】
ポリエステルの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のような、ポリエステル系接着剤を構成するポリエステルの数平均分子量を測定する公知の技術による測定値であってよく、カタログ値であってもよい。
【0044】
また、第一の接着剤層3におけるポリエステルのガラス転移温度は、積層体の取り扱い性の観点から適宜に決めることが可能である。当該ガラス転移温度が低すぎると、高温環境下での第一の接着剤層3における樹脂の粘度あるいは貯蔵弾性率が低下し、高温での耐久性能が不十分となることがある。上記ガラス転移温度が高すぎると、第一の接着剤層3の変形性が不十分となり、例えば後述する表面樹脂層との貼り合わせにおいて貼り合わせる材料に対する密着性が不十分となることがある。第一の接着剤層3の変形性が不十分であっても、貼り合わせによる密着性を十分に高める方法として、加熱ロールで加熱しながら貼り合わせる方法もあり得る。この方法では、熱可塑性樹脂層にシワが生じやすいため注意を要する。上記の高温での耐久性および変形性を十分に発現させる観点から、上記ガラス転移温度は、-10~30℃であることが好ましく、0~20℃であることがより好ましい。また、第一の接着剤層3を室温(例えば20℃)において接着面に十分に追従して変形可能にする観点によれば、当該ガラス転移温度は、20℃以下であることが好ましい。
【0045】
第一の接着剤層3におけるポリエステルのガラス転移温度は、JIS K7121:2012で規定されるような、ポリエステル系接着剤を構成するポリエステルのガラス転移温度を測定する公知の方法による測定値であってよく、カタログ値であってもよい。
【0046】
第一の接着剤層3のポリエステル系接着剤は、上記のような所望の物性を有する範囲において適宜に選択し得る。ポリエステル系接着剤は、合成品であってもよいし、市販品であってもよい。
【0047】
第一の接着剤層3の厚さは、第一の接着剤層3が接着する表面の状態および所期の接着強度などの積層体または成形体において要求される諸条件に応じて適宜に決めてよい。第一の接着剤層3の厚さが薄すぎると、ポリエステル系接着剤を熱可塑性樹脂層に塗布する際に接着剤の部分的なヌケ、ハジキを生じやすい。また、第一の接着剤層3の厚さが薄すぎると、第一の接着剤層3に接着されるべき(貼り合わされる)部位に対する濡れも不十分となり、接着力が不十分となることがある。一方で、第一の接着剤層3の厚さが厚すぎると、第一の接着剤層3に剪断力がかかった場合に第一の接着剤層3に生じるストレスが大きくなり、第一の接着剤層3における剥離が生じやすくなる。第一の接着剤層3の所期の接着性および耐剥離性は、積層体の用途に応じて適宜に決めることができ、よって第一の接着剤層3の厚さは、積層体の用途に応じて適宜に決めることができる。たとえば、自動車の外装用の成形体を構成するための積層体であれば、第一の接着剤層3の厚さは、4~10μmの範囲から適宜(例えば10μmなど)に決めてよい。
【0048】
[その他の層]
本実施形態の積層体は、本実施形態の効果が得られる範囲において上記以外の他の層をさらに有していてもよい。当該他の層は、その所期の機能を発現可能な範囲において、厚さを適宜に決めてよく、また添加剤などの主成分以外の他の成分を適宜に含有していてもよい。
【0049】
たとえば、積層体10は、第一の接着剤層3に接着する表面樹脂層をさらに有していてもよい。
【0050】
表面樹脂層は、積層体10の表面を構成する層である。表面樹脂層が透明性を有することは、アルミニウム層2による金属調の外観をより明瞭に得る観点から好ましい。また、表面樹脂層が耐候性を有することは、積層体または成形体の外装用途での耐久性を高める観点から好ましい。さらに、表面樹脂層が熱可塑性樹脂で構成されていることは、積層体の成形性を確保する観点から好ましい。
【0051】
上記の観点から、表面樹脂層は、透明性および耐候性を有する熱可塑性樹脂で構成されていることが好ましい。透明性を有する熱可塑性樹脂の例には、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ABS樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、シリコーン樹脂および脂環式ポリオレフィンが含まれる。耐候性を有する熱可塑性樹脂の例には、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、シリコーン樹脂および脂環式ポリオレフィンが含まれる。中でも、透明性および耐候性を十分に有する観点から、アクリル樹脂が好ましい。
【0052】
また、例えば、積層体10は、さらなる接着剤層(以下、「第二の接着剤層」とも言う)および基材層をさらに有していてもよい。接着剤層および基材層は、この順で、熱可塑性樹脂層1のアルミニウム層2とは反対側にさらに重なって配置される。
【0053】
第二の接着剤層は、熱可塑性樹脂層1と基材層とを接着させるための層である。第二の接着剤層は、熱可塑性樹脂層1と基材層とを接着可能な接着剤で構成される。当該接着剤は、両層の材料に応じて公知の接着剤から適宜に選択することが可能である。たとえば、第二の接着剤層を構成する接着剤は、前述したポリエステル系接着剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
前述したポリエステル系接着剤以外の当該接着剤の例には、ポリウレタン系、ポリエチレン系、ポリアミド系、ポリ塩化ビニル系、ポリクロロプレン系、カルボキシル化ゴム系、熱可塑性スチレン-ブタジエンゴム系、アクリル系、スチレン系、セルロース系、アルキド系、ポリ酢酸ビニル系、エチレン酢酸ビニル共重合体系、ポリビニルアルコール系、エポキシ系およびシリコーン系の接着剤、ならびに、天然ゴムおよび合成ゴム、が含まれる。
【0055】
基材層は、積層体および成形体を補強するための層である。基材層は、成形体の形状を維持する観点から、成形体の用途および形状に応じた機械的強度を有することが好ましい。また、基材層は、積層体の成形性を確保する観点から、熱可塑性樹脂で構成されていることが好ましい。基材層は、透明性を有していてもよいし、有していなくてもよい。基材層を構成する熱可塑性樹脂の例には、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、塩化ビニル樹脂およびABS樹脂が含まれる。
【0056】
図2は、本発明の他の実施形態に係る積層体の層構成を示す断面図である。図2に示されるように、積層体20は、積層体10における第一の接着剤層3に表面樹脂層4が接着している。さらに、積層体10における熱可塑性樹脂層1のアルミニウム層2とは反対側の表面には、第二の接着剤層5および基材層6がこの順で重ねられている。このように、積層体20において、アルミニウム層2は、熱可塑性樹脂層1の表面側に配置される。
【0057】
積層体20の用途は、自動車の外装の用途であってよく、第二の接着剤層5および基材層6は、当該用途に応じて適宜に決められる。この場合、一例として、第二の接着剤層5を構成する接着剤はポリエステル系接着剤であり、基材層6を構成する熱可塑性樹脂はABS樹脂である。第二の接着剤層5を構成する接着剤は、第一の接着剤層3のそれと同じであってもよいし、異なっていてもよい。積層体20は、積層方向における表面樹脂層4側を表側とし、基材層6を装飾すべき部位に接着することにより、アルミニウム層2による金属調の外観による装飾の用途で使用され得る。
【0058】
[積層体の製造方法]
本実施形態の積層体は、前述した層構成を実現可能な方法で製造することが可能であり、このような方法は、積層体の製造における公知の方法を利用して実現することが可能である。
【0059】
たとえば、本実施形態の積層体は、熱可塑性樹脂層1の一表面にアルミニウム層2を、例えば真空蒸着により形成し、アルミニウム層2の表面に第一の接着剤層3を、例えば貼り合わせまたは塗布、乾燥により形成することによって製造することが可能である。
【0060】
表面樹脂層4をさらに有する場合では、本実施形態の積層体は、熱可塑性樹脂層1の一表面にアルミニウム層2を真空蒸着により形成し、表面樹脂層4の一表面に第一の接着剤層3を形成する。そして、アルミニウム層2と第一の接着剤層3とを貼り合わせて互いに圧着させる。こうして上記の積層体を製造することが可能である。
【0061】
あるいは、表面樹脂層4をさらに有する場合では、本実施形態の積層体は、熱可塑性樹脂層1、アルミニウム層2および第一の接着剤層3の積層構造における第一の接着剤層3の表面に、さらに表面樹脂層4を貼り合わせて互いに圧着させる。こうして上記の積層体を製造することが可能である。
【0062】
同様に、第二の接着剤層5および基材層6をさらに有する場合では、本実施形態の積層体は、熱可塑性樹脂層1の他表面に第二の接着剤層5を形成し、第二の接着剤層5に基材層6を貼り合わせて互いに圧着させることによって製造することが可能である。
【0063】
あるいは、第二の接着剤層5および基材層6をさらに有する場合では、本実施形態の積層体は、基材層6の一表面に第二の接着剤層5を形成し、第二の接着剤層5と熱可塑性樹脂層1とを貼り合わせて互いに圧着させることによって製造することが可能である。
【0064】
上記の製造方法において、接着剤層に架橋剤を適用する場合は、公知の方法によって接着剤層を形成することができる。たとえば、上記の場合では、接着剤と架橋剤とを液の状態で配合し、混合する。そして、得られた接着剤を、接着剤層を形成すべき部位に塗布する。このようにして接着剤層を形成することが可能である。接着剤の塗布は、公知の技術によって実現可能であり、例えば、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーターまたは3本リバースコーターを用いて実施することが可能である。接着剤の塗布には、グラビアコーターがより好適に用いられ、なかでもキスグラビアがさらに好適に用いられ得る。
【0065】
〔用途〕
本発明の実施形態における積層体は、自動車およびオートバイなどの移動体の外装の用途に好適に使用される。当該積層体は、このような外装用途の観点から好ましい物性をさらに有することが好ましい。当該好ましい物性の例には、耐候性、耐熱性および強度が含まれる。
【0066】
外装用途では、積層体および後述の成形体は、日光によって劣化しやすい。耐候性は、日光による外観または強度の劣化を抑制し、防止する特性である。積層体の耐候性は、外装用途における表面を、前述した耐候性を有する樹脂材料で構成することによって発現され得る。
【0067】
外装用途では、積層体および後述の成形体は、使用時において日中の高い温度と夜間の低い温度とが繰り返される温度の環境に曝され、特に日中の高い温度の環境において劣化しやすい。耐熱性は、積層体または成形体における使用時の高温環境による外観の劣化または強度の低下を抑制し、防止する特性である。積層体の耐熱性は、外装用途における高温環境における十分な安定性を有する樹脂材料を使用すること、あるいは、積層方向において隣接する層の材料には、熱膨脹または熱収縮の差が十分に小さい材料を用いること、によって発現され得る。なお、積層体の耐熱性は、積層体および成形体の用途に応じて適宜に決めることが可能である。
【0068】
外装用途では、積層体および後述の成形体は、外環境からの力を受けやすく、自身の形状を維持するのに十分な強度に加えて、使用時に印加され得る外力に対しても十分な強度を有することが好ましい。成形体の強度は、積層体の引張弾性率と厚さとの積から求めることが可能であり、積層体の引張弾性率は、積層体および成形体の用途および積層体の厚みに応じて適宜に決めることが可能である。よって、積層体の引張弾性率によって、積層体および成形体の用途に応じた強度を規定することが可能である。
【0069】
〔金属調成形体〕
本発明の一実施形態に係る金属調成形体(以下、単に「成形体」とも言う)は、前述した本実施形態の金属調積層体が成形されてなる。図3は、本発明の一実施形態に係る成形体の層構成を示す断面図である。図3に示されるように、成形体100は、凸部101とその両側に位置する縁部102とを含む。凸部101は、紙面に対して上方に上辺、下方に上辺よりも長い下辺を有する台形の断面形状を有する部分である。縁部102は、上記台形の下辺からさらに側方へ延在する部分である。
【0070】
成形体100は、基材層6、第二の接着剤層5、熱可塑性樹脂層1、アルミニウム層2、第一の接着剤層3および表面樹脂層4をこの順で重ねた層構造を有している。成形体100において、いずれの層も、積層方向において隣り合う層と密着しており、縁部102の縁で露出している。また、図3中のLbは、縁部102の凸部101からの距離(幅)を表している。縁部102の幅Lbは、成形体100の仕様に応じて決められており、成形体100が自動車の外装用の装飾具である場合では、一例として0.8mm未満、例えば0.7mmに設定することができる。
【0071】
本実施形態の成形体は、本実施形態の積層体を材料に用いる以外は、金属層を有する熱可塑性樹脂製のシート状の材料を成形する公知の方法によって製造することが可能である。本実施形態の成形体を製造可能な方法の例には、真空成形、圧空成形、真空圧空成形およびプレス成形が含まれる。
【0072】
成形体100は、自動車の外装用途で公知の方法により、使用部位に接着される。たとえば、使用時における天面およびそれに連なる両側面の三方を基材層6で囲まれる凸部101の裏側の窪みに充填剤が充填され、そして、当該充填剤を覆うとともに成形体100の底面を構成するように設置用の接着剤層が形成される。当該充填剤は、成形加工に通常用いられ得る樹脂材料であればよく、例えば二液硬化型ウレタン樹脂材料であってよい。
【0073】
そして、成形体100は、当該接着層を介して、所望の設置個所、例えば自動車の外表面における装飾すべき箇所、に接着される。成形体100は、例えば、自動車などの車両の外装品または屋外に設置される物体の表面に貼り付けるための、当該表面の形状に追従するように変形可能なエンブレム、徽章、ワッペン、ステッカー、シール、ラベル、銘板またはリボンとして好適に使用される。成形体100は、特に上記エンブレムなどの三次元構造を有する成形体として有用である。
【0074】
〔作用効果〕
本発明の実施形態に係る積層体は、熱可塑性樹脂層、アルミニウム層および第一の接着剤層がこの順で重なって構成されている。本実施形態の積層体では、アルミニウム層をポリエステル系接着剤で構成されている上記第一の接着剤層と熱可塑性樹脂層とで挟む構成を有する。そのため、第一の接着剤層は、アルミニウム層に対して十分に強い密着性を発現し、その結果、アルミニウム層を含む強固な積層構造が形成される。よって、外部からアルミニウム層へのアルカリ液の浸透が抑制され、その結果、アルミニウム層の当該アルカリ液による溶解が抑制される。
【0075】
また、ポリエステル系接着剤で構成される第一の接着剤層は、ポリエステル系接着剤が十分な硬化指数を示す酸価および水酸基価を有する。そのため、上記のような十分な密着性が発現され、積層体において十分な接着強度が発現され、また積層体および成形体における溶解距離が十分に小さくなる。その結果、アルミニウム層のアルカリによる腐食が十分に抑制される。なお、「溶解距離」とは、アルカリ液が積層体または成形体の縁から内部に浸透したときに、積層体または成形体のアルカリ液が侵入した縁からアルミニウム層が溶解した部分の先端、例えば最深部、までの距離である。
【0076】
当該積層体は、成形用のシート材料として成形することにより成形体を形成し得る。本発明の実施形態に係る積層体は、上記の溶解距離を従来に比べてより短く、例えば0.7mm以下にすることが可能である。一方で、当該積層体を成形してなる成形体では、通常、アルカリ腐食による金属調の外観を実質的に損なわないために、その周縁に上記溶解距離に対応するマージン(例えば前述の縁部102)が設定される。本発明の実施形態の成形体では、上記積層体の溶解距離がより短いことから、従来の成形体に比べて当該マージンをより短く、例えば0.7mm以下と十分に小さくすることが可能となる。よって、本発明の実施形態は、装飾の用途において、アルカリ腐食による金属調の外観の低下が防止され、かつ当該腐食防止のための周縁のマージンがより小さい、装飾性に優れた成形体を実現するのに有利である。
【0077】
また、本発明の実施形態の積層体は、アクリル樹脂系の表面樹脂層、第一の接着剤層、アルミニウム層、ベンゼン環およびシクロヘキサン環を主鎖に有するポリエステルで構成される透明な熱可塑性樹脂層、第二の接着剤層および熱可塑性樹脂で構成された基材層、で構成することが可能である。このような構造の積層体は、表面樹脂層で保護されつつアルミニウム層の金属調の外観が明瞭に発現されるとともに、基材層によって機械的強度が高められることから、装飾用途の成形体を成形するための材料シートとしてさらに有利である。
【0078】
〔変形例〕
本発明は、上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
たとえば、積層体10、20において、アルミニウム層2は、他の層を介して熱可塑性樹脂層1と重ねられていてもよい。たとえば、熱可塑性樹脂層1とアルミニウム層2との間には、両層に対する密着性に優れる層を介して重なっていてよく、このような層の例には、接着剤層、および、有機または無機の中間層、が含まれる。
【0080】
また、本発明の成形体は、積層体10から成形されてもよい。たとえば、第一の接着剤層3に離型層を重ね、成形することによって成形体が形成されてもよい。このような成形体は、設置場所に、第一の接着剤層3の接着力によって設置されてもよいし、前述した成形体100と同様に、充填剤およびそれを覆う設置用の接着剤層の一方によって設置されてもよいし、その両方によって設置されてもよい。この場合、熱可塑性樹脂層1の熱可塑性樹脂には、PETGのような十分な透明性を発現する樹脂が用いられることにより、熱可塑性樹脂層1を介してアルミニウム層2による金属調の外観を十分に呈する積層体および成形体が得られる。
【0081】
あるいは、本発明の積層体は、積層体10、表面樹脂層4および第二の接着剤層5から構成されてもよい。この場合は、本発明の積層体は、外装用のシート状の加飾体にもなり得るし、また、成形体100と同様に成形することにより、立体形状を有する外装用の加飾体(成形体)にもなり得る。
【0082】
〔まとめ〕
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態の金属調積層体(積層体10)は、熱可塑性樹脂層(1)、アルミニウム層(2)および接着剤層(第一の接着剤層3)がこの順で重なっており、当該接着剤層は、ポリエステル系接着剤で構成され、当該接着剤層の硬化指数は、15以上である。また、本発明の実施形態の金属調成形体(成形体100)は、上記のような金属調積層体(積層体20)が成形されてなる。よって、周縁からのアルカリ液の侵入によるアルミニウム層の腐食が十分に抑制されるため、本発明の実施形態の積層体および成形体は、アルミニウム層のアルカリに対する十分な耐食性を発現することができる。
【0083】
本発明の実施形態において、接着剤層の硬化指数は30以上であってもよい。この構成は、積層体および成形体のアルカリ耐性を高める観点からより一層効果的である。
【0084】
本発明の実施形態において、熱可塑性樹脂層は、ベンゼン環およびシクロヘキサン環を主鎖に有するポリエステルで構成されていてもよい。この構成は、積層体の成形性を高める観点からより一層効果的である。
【0085】
本発明の実施形態において、積層体(20)は、接着剤層に接着する表面樹脂層(4)をさらに有し、当該表面樹脂層は、透明性および耐候性を有し、熱可塑性樹脂で構成されていてもよい。この構成は、アルミニウム層による金属調の外観を明瞭にする観点、および、耐候性を高める観点からより一層効果的である。
【0086】
本発明の実施形態において、積層体は、熱可塑性樹脂層のアルミニウム層とは反対側に、さらなる接着剤層(第二の接着剤層5)および基材層(6)がこの順でさらに重なっており、当該基材層は、熱可塑性樹脂で構成されていてもよい。この構成は、積層体の成形性の観点、および、成形後の強度を高める観点からより一層効果的である。
【実施例
【0087】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0088】
〔接着剤の準備〕
接着剤層用の接着剤として下記接着剤1~8を用意した。接着剤1は、東洋紡株式会社製の「バイロンGK-680」(「バイロン」は同社の登録商標)である。接着剤2は、東洋紡株式会社製の「バイロンGK-590」である。接着剤3は、東洋モートン株式会社製の「TM-K76」である。接着剤4は、東洋モートン株式会社製の「TM-K51」である。接着剤5は、東洋紡株式会社製の「バイロンGK-570」である。接着剤1~5は、いずれもポリエステル(PES)系接着剤である。
【0089】
接着剤6は、株式会社ADEKA製の「ボンタイターHUX-386」(「ボンタイター」は同社の登録商標)である。接着剤7は、大日精化工業株式会社製の「レザミン UD-8336」(「レザミン」は同社の登録商標)である。接着剤6、7はいずれもポリウレタン(PU)系の接着剤である。接着剤6は、水系のポリウレタン系接着剤であり、接着剤7は、架橋剤が添加されている溶剤系のポリウレタン系接着剤である。
【0090】
接着剤8は、日本カーバイド工業株式会社製の「ニッセツ SM412」(「ニッセツ」は同社の登録商標)である。接着剤8は、アクリル樹脂(AR)系の接着剤であり、溶剤系のアクリル樹脂系接着剤である。
【0091】
接着剤1~8について、樹脂の種類、数重合平均分子量Mn、ガラス転移温度Tg、酸価および水酸基価を表1に示す。表1に記載の物性値は、カタログ値である。接着剤7のMnは、カタログ値が見つからなかったため、表1には記載されていない。
【0092】
【表1】
【0093】
〔実施例1〕
透明な熱可塑性樹脂であるPETGのシート(エチレングリコールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸との縮重合物、外観:透明、厚さ19μm)の片面にアルミニウムを蒸着してアルミニウム層を形成した。アルミニウム層の厚さは50nmである。
【0094】
次いで、接着剤1にポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネート組成物、濃度75%、イソシアネート量(NCO%)14%)を混合し、これをバーコーターにて、PETG上のアルミニウム層の表面に、乾燥後の厚みが7μmとなるように塗布して第一の接着剤層を形成した。こうして、PETG、アルミニウム層および第一の接着剤層を有する積層シートを作製した。第一の接着剤層の厚さは7μmである。第一の接着剤層における「水酸基価当量の架橋度」は1であり、第一の接着剤層の硬化指数は42である。
【0095】
次いで、透明なアクリル樹脂シート(厚さ75μm、全光線透過率93%、破断強度53MPa)のコロナ処理面に、上記の第一の接着剤層の表面を圧着させて、表面樹脂層となる上記アクリル樹脂シートと上記積層シートとを貼り合わせた。「コロナ処理面」とは、第一の接着剤層との密着を高めるために、コロナ放電処理を施した透明アクリル樹脂シートの片面である。
【0096】
こうして、熱可塑性樹脂層、アルミニウム層、第一の接着剤層および表面樹脂層がこの順で重なっている積層体1を製造した。積層体1は、表面樹脂層側から見たときに、アルミニウム層による金属光沢のある金属調の外観を呈する。
【0097】
〔実施例2~4〕
接着剤1に代えて接着剤2~4のそれぞれを用いる以外は積層体1と同様にして、積層体2~4のそれぞれを製造した。積層体2~4における第一の接着剤層の厚さは、いずれも7μmである。
【0098】
〔実施例5、6〕
接着剤1へのポリイソシアネートの添加量をそれぞれ0.75倍および0.5倍として、第一の接着剤層における「水酸基価当量の架橋度」をそれぞれ0.75および0.5とする以外は積層体1と同様にして、積層体5、6のそれぞれを製造した。積層体5における第一の接着剤層の硬化指数は31.5であり、積層体6における第一の接着剤層の硬化指数は21.0である。
【0099】
〔実施例7、8〕
接着剤2へのポリイソシアネートの添加量をそれぞれ0.75倍および0.5倍として、第一の接着剤層における「水酸基価当量の架橋度」をそれぞれ0.75および0.5とする以外は積層体2と同様にして、積層体7、8のそれぞれを製造した。積層体7における第一の接着剤層の硬化指数は25.5であり、積層体8における第一の接着剤層の硬化指数は17.0である。
【0100】
〔実施例9、10〕
接着剤4へのポリイソシアネートの添加量をそれぞれ0.75倍および0.5倍として、第一の接着剤層における「水酸基価当量の架橋度」をそれぞれ0.75および0.5とする以外は積層体4と同様にして、積層体9、10のそれぞれを製造した。積層体9における第一の接着剤層の硬化指数は26.3であり、積層体10における第一の接着剤層の硬化指数は17.5である。
【0101】
〔比較例1~4〕
接着剤1に代えて接着剤5を用いる以外は積層体1と同様にして、積層体C1を製造した。また、接着剤1に代えて接着剤6~8のそれぞれを、ポリイソシアネートと混合せずに用いる以外は積層体1と同様にして、積層体C2~C4のそれぞれを製造した。積層体C1~C4における第一の接着剤層の厚さは、いずれも7μmである。
【0102】
〔耐アルカリ性の評価〕
積層体1~10およびC1~C4のそれぞれについて、積層体を10mm×10mmの寸法に切断して試験片を作製した。次いで、作製した試験片を、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液に常温(25℃)にて8時間浸漬した。次いで、試験片を水酸化ナトリウム水溶液から取り出し、アルミニウム層の溶解状況を目視にて確認し、また溶解距離を測定した。「溶解距離」とは、水酸化ナトリウム水溶液浸漬時に水酸化ナトリウム水溶液が侵入した試験片の縁からアルミニウム層が溶解した部分の先端までの距離である。本実施例では、積層体の水酸化ナトリウム水溶液が侵入した縁からアルミニウム層が最も内側まで溶解した部分の先端(最深部)までの距離を溶解距離としている。
【0103】
〔耐候性〕
積層体1~10およびC1~C4のそれぞれについて、日本産業規格(JIS)A1415-2013で規定されている促進曝露試験を3000時間行った。そして、試験後の積層体の外観を、複数の熟練技術者によって表面樹脂層側から目視で観察し、当該試験による外観の変化を確認した。その結果、静置後の積層体1~10およびC1~C4のいずれの外観も、上記試験によって実質的に変化することはなく、自動車などの外装の用途において十分な耐候性を有することが確認された。
【0104】
〔耐熱性〕
積層体1~10およびC1~C4のそれぞれについて、PETGシートのアルミニウム層とは反対側の面に白色塗装板を貼り付け、80℃で168時間静置し、積層体の外観を表面樹脂層側から目視で観察した。その結果、静置後の積層体1~10およびC1~C4のいずれも、白化、クラックおよびしわのいずれも観察されなかった。このように、積層体1~10およびC1~C4の外観は、いずれも、上記の静置前後において実質的に変化せず、自動車などの外装の用途において十分な耐熱性を有することが確認された。
【0105】
〔強度〕
積層体1~10およびC1~C4の引張弾性率は、JIS K7127:1999(ISO 527-3:1995)に規定の試験方法に準じて測定される。いずれの積層体の厚みも設計値で101μmであり、その内訳は、熱可塑性樹脂(PETG)層が19μmであり、第一の接着剤層が7μmであり、表面樹脂(アクリル樹脂)層が75μmである。各積層体の引張弾性率は、1700MPa前後であり、上記積層体は、いずれも、自動車などの外装の用途において十分な強度を有することが確認される。
【0106】
各積層体の構成、接着剤層の樹脂種および硬化指数、ならびに積層体における溶解距離を表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
表2に示されるように、積層体1~3でのアルミニウム層の溶解は、いずれも、目視で確認することが困難な、わずかな溶解であった。また、積層体4でのアルミニウム層の溶解は、目視で確認可能であるが小さな溶解であった。
【0109】
これらの結果から、アルミニウム層をポリエステル系の接着剤とPETGのシートとで挟み込むことで、積層体の耐アルカリ性が向上することがわかる。その結果、上記の耐アルカリ性の評価試験において、溶解距離を0.8mm未満に抑えることができる。
【0110】
一方で、積層体C1~C3でのアルミニウム層の溶解は、いずれも、目視が容易な溶解であった。積層体C1については、第一の接着剤層の樹脂がポリエステルであるがその硬化指数が低いため、と考えられる。積層体C2、C3については、第一の接着剤層の樹脂がポリウレタンであるため、その硬化指数が小さく、また接着剤層の密着力が小さいため、と考えられる。
【0111】
積層体C4でのアルミニウム層の溶解は、他の積層体に比べて顕著であった。これは、接着剤の硬化指数は十分に大きいが、第一の接着剤層の密着力が小さいため、と考えられる。
【0112】
以上の結果から明らかなように、接着剤の材料がポリエステルであり、かつ接着剤の硬化指数が30以上であれば、当該接着剤の酸価および水酸基価の数値によらず、アルカリ水溶液の浸漬によるアルミニウム層の溶解距離を0.8mm未満に抑制することができる。上記の耐アルカリ性の評価における試験の条件は、自動車の洗車によるアルカリ浸食に対応する条件である。
【0113】
よって、自動車の外装用途であれば、積層体に0.7mm幅の縁部を設ければ、アルミニウム層のアルカリによる溶解の発生を実用上抑制することができる。その結果、アルカリ浸食によってアルミニウム層による金属調の外観が損なわれることを防止することができる。また、当該縁部の幅は、溶解試験の評価結果に応じて設定することが可能であり、上記の溶解距離を下回らない範囲で、例えば0.7mmよりも小さくすることも可能である。
【0114】
一方で、積層体の第一の接着剤層の接着剤が、硬化指数が30よりも大きくてもアクリル樹脂系の接着剤である場合、または硬化指数の小さいポリウレタン系の接着剤である場合には、第一の接着剤層の密着力が小さいことがわかる。このため、上記の場合では、アルミニウム層と第一の接着剤層との界面にアルカリ液が侵入し、アルミニウム層を溶解するため、アルカリによるアルミニウム浸食を抑制する効果も小さい。
【0115】
〔実施例11〕
積層体1における表面樹脂層とは反対側の面(PETGシートにおけるアルミニウム層とは反対側の面)に接着剤1を、乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布した。こうして、第二の接着剤層を形成した、次いで、基材層となるABSシート(外観:黒色、厚さ200μm)を第二の接着剤層に圧着し、積層体1とABSシートとを第二の接着剤層を介して貼り合わせた。こうして、表面樹脂層、第一の接着剤層、アルミニウム層、熱可塑性樹脂層、第二の接着剤層および基材層がこの順で重なっている積層体11を製造した。
【0116】
台形の断面形状を有する凸部を有する一方の金型と、これに対応する凹部を有する他方の金型とを含む一対の組金型に積層体11を配置し、加熱し、真空成形することによって、図3に示されるような、台形の断面形状と縁部とを有する形状に積層体11を成形した。次いで、縁部の幅Lbが0.1mm超0.8mm未満の所望の幅(例えば0.7mm)となるように縁部の先端部を切断した。こうして、金属調の外観を呈する成形体を製造した。
【0117】
当該成形体は、上記のように非常に狭いが積層体1の溶解距離よりも大きい幅の縁部を有する。よって当該成形体では、外観の縁部による影響がほとんどなく、また縁部よりも内側の部分におけるアルミニウム層のアルカリ腐食が生じない。したがって、当該成形体では、自動車の外装用途で使用しても、使用中における当該アルカリ腐食によって外観が損なわれることが防止される。
【0118】
また、当該成形体では、第一の接着剤層および第二の接着剤層を、いずれも接着剤1の塗布によって形成している。このように両接着剤層を構成する接着剤が同じ組成の接着剤であることから、塗工工程で生じる材料のロス(塗工機における樹脂溜まり、あるいは、樹脂パン内における接着剤の残留など)を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、アルミニウム層による金属調の外観を呈する成形体であって、内装および外装を問わず、アルミニウム層を有するにもかかわらずアルカリ腐食防止のためのマージンが小さい、耐アルカリ性および装飾性に優れる成形体に利用することができる。特に、本発明は、自動車などの移動体の外装用の加飾体に好適である。
【符号の説明】
【0120】
1 熱可塑性樹脂層
2 アルミニウム層
3 第一の接着剤層(接着剤層)
4 表面樹脂層
5 第二の接着剤層(さらなる接着剤層)
6 基材層
10、20 積層体
100 成形体
101 凸部
102 縁部
図1
図2
図3