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特許7588531振動子用パッケージ、圧電振動子及び発振器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】振動子用パッケージ、圧電振動子及び発振器
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20241115BHJP
   H03B 5/32 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H03H9/02 K
H03B5/32 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021044076
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143524
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】宮田 秀光
(72)【発明者】
【氏名】滝川 進
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-142700(JP,A)
【文献】特開2013-038672(JP,A)
【文献】特開2013-115510(JP,A)
【文献】特開2013-251674(JP,A)
【文献】特開2015-126534(JP,A)
【文献】特開2012-120081(JP,A)
【文献】特開2005-167792(JP,A)
【文献】国際公開第2022/137624(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/02
H03B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路チップが実装される側のチップ実装側面と前記チップ実装側面と反対側に配置されると共に圧電振動片が実装される側の振動片実装側面と、を有するパッケージ本体を備える振動子用パッケージであって、
前記チップ実装側面に設けられると共に前記集積回路チップの端子が接続される複数のチップ用電極と、
前記チップ実装側面に設けられると共に外部電源と接続される外部電源用端子と、
前記チップ実装側面に設けられると共に外部に信号を出力する信号出力用端子と、
前記チップ実装側面に設けられると共に前記チップ用電極と前記外部電源用端子とを接続する外部電源用配線と、
前記チップ実装側面に設けられると共に前記チップ用電極と前記信号出力用端子とを接続する信号出力用配線と、
前記振動片実装側面に設けられると共に前記圧電振動片が接続される振動片搭載パッドと、
前記チップ実装側面の法線方向から見て、前記外部電源用配線及び信号出力用配線と重なることなくかつ前記圧電振動片が配置される領域を跨いで配設されると共に、前記振動片搭載パッドと前記チップ用電極とを接続する圧電振動片用配線と
前記圧電振動片用配線の少なくとも一部が前記振動片実装側面上に設けられ、
前記圧電振動片用配線の前記振動片実装側面上に設けられた部分を覆う絶縁コートを有する
動子用パッケージ。
【請求項2】
前記圧電振動片用配線は、前記チップ実装側面の法線方向から見て、前記圧電振動片の振動腕部の先端部と重なることなく配設されている請求項1に記載の振動子用パッケージ。
【請求項3】
前記パッケージ本体は、前記チップ実装側面の法線方向から見て、一対の長辺と一対の短辺とを有する矩形状に形成されており、
前記外部電源用端子と前記信号出力用端子とは、前記短辺に沿った方向にて、一方の前記長辺側に配置され、
前記圧電振動片用配線が接続されるチップ用電極は、前記短辺に沿った方向にて、他方の前記長辺側に配置されている
請求項1または2に記載の振動子用パッケージ。
【請求項4】
請求項1~いずれか一項に記載の振動子用パッケージと、
前記振動子用パッケージの前記振動片実装側面に実装された圧電振動片と
を備える圧電振動子。
【請求項5】
請求項に記載の圧電振動子と、
前記振動子用パッケージの前記チップ実装側面に実装された集積回路チップと
を備える発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子用パッケージ、圧電振動子及び発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、水晶振動片を備える圧電振動デバイスで用いられる圧電振動デバイス用容器が開示されている。特許文献1に開示された圧電振動デバイス用容器は、圧電振動子と外部とを電気的に接続するための内部配線を有しており、露出された面には外部接続端子が設けられている。外部接続端子と内部配線とは接続されており、外部接続端子を介して水晶振動片が外部と導通可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-188340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された圧電振動デバイス用容器等の振動子用パッケージに対して直接的に集積回路チップを実装することで、発振器としてユニット化する場合がある。このような場合には、振動子用パッケージに対して、圧電振動片と集積回路チップとを接続する配線と、集積回路チップと外部接続端子とを接続する配線とを設ける必要がある。
【0005】
上述の外部接続端子としては、外部電源が接続される端子である外部電源接続端子や、集積回路チップの信号が出力される信号出力用端子が設けられる。ここで、集積回路チップが実装される面の法線方向から見て、外部電源接続端子と集積回路チップとを接続する配線と、圧電振動片と集積回路チップとを接続する配線とが交差すると、圧電振動片と集積回路チップとを接続する配線を流れる信号にノイズ成分が乗り、信号出力用端子から出力される信号が示す周波数に影響を与える場合がある。また、信号出力用端子と集積回路チップとを接続する配線と、圧電振動片と集積回路チップとを接続する配線とが交差する場合にも、同様に信号出力用端子から出力される信号が示す周波数に影響を与える場合がある。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、信号出力用端子から出力される信号が示す周波数をより正確にすることが可能な振動子用パッケージ、圧電振動子及び発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
本発明の第1の態様は、振動子用パッケージであって、集積回路チップが実装される側のチップ実装側面と上記チップ実装側面と反対側に配置されると共に圧電振動片が実装される側の振動片実装側面とを有するパッケージ本体を備える振動子用パッケージであって、上記チップ実装側面に設けられると共に上記集積回路チップの端子が接続される複数のチップ用電極と、上記チップ実装側面に設けられると共に外部電源と接続される外部電源用端子と、上記チップ実装側面に設けられると共に外部に信号を出力する信号出力用端子と、上記チップ実装側面に設けられると共に上記チップ用電極と上記外部電源用端子とを接続する外部電源用配線と、上記チップ実装側面に設けられると共に上記チップ用電極と上記信号出力用端子とを接続する信号出力用配線と、上記振動片実装側面に設けられると共に上記圧電振動片が接続される振動片搭載パッドと、上記チップ実装側面の法線方向から見て、上記外部電源用配線及び信号出力用配線と重なることなくかつ上記圧電振動片が配置される領域を跨いで配設されると共に、上記振動片搭載パッドと上記チップ用電極とを接続する圧電振動片用配線とを備える。さらに上記圧電振動片用配線の少なくとも一部が上記振動片実装側面上に設けられ、上記圧電振動片用配線の上記振動片実装側面上に設けられた部分を覆う絶縁コートを有するという構成を採用する。
【0009】
本発明によれば、圧電振動片用配線が、チップ実装側面の法線方向から見て圧電振動片が配置される領域を跨ぐように配設されており、さらには同方向から見て外部電源用配線及び信号出力用配線と重なることがない。このため、圧電振動片用配線や信号出力用配線を流れる信号にノイズ成分が重畳することを抑制し、信号出力用端子から出力される信号が示す周波数をより正確にすることが可能となる。さらに、圧電振動片用配線の振動片実装側面上に設けられた部分が絶縁コートによって覆われている。このため、圧電振動片用配線の振動片実装側面上に設けられた部分に異物が接触することを防止することができる。例えば、製造時に圧電振動片の周波数を調整するために圧電振動片の一部を削ると金属の切削紛が発生する。このような切削紛が圧電振動片用配線の振動片実装側面上に設けられた部分に接触することを防止することができる。
【0012】
本発明の第の態様は、上記第1の態様において、上記圧電振動片用配線は、上記チップ実装側面の法線方向から見て、上記圧電振動片の振動腕部の先端部と重なることなく配設されているという構成を採用する。
【0013】
製造時には、圧電振動片の周波数を調整するために圧電振動片の振動腕部の先端部を削る。本発明によれば、振動腕部の先端部を避けるように圧電振動片用配線が配設されているため、先端部を削ることによって発生した切削紛が圧電振動片用配線に付着することを抑止することが可能となる。
【0014】
本発明の態様は、上記第1の態様において、上記パッケージ本体が複数の層体が積層されてなる多層体からなり、上記圧電振動片用配線が、2つの上記層の界面に配設されているという構成を採用する。
【0015】
本発明によれば、圧電振動片配線が、積層される2つの層の界面に配設されている。このため、製造時に圧電振動片の周波数を調整するために圧電振動片の一部を削ることで発生した切削紛が圧電振動片用配線に接触することを防止することができる。
【0016】
本発明の第の態様は、上記第1またはいずれかの態様において、上記パッケージ本体が、上記チップ実装側面の法線方向から見て、一対の長辺と一対の短辺とを有する矩形状に形成されており、上記外部電源用端子と上記信号出力用端子とは、上記短辺に沿った方向にて、一方の上記長辺側に配置され、上記圧電振動片用配線が接続されるチップ用電極は、上記短辺に沿った方向にて、他方の上記長辺側に配置されているという構成を採用する。
【0017】
本発明によれば、圧電振動片用配線が接続されるチップ用電極を一方の長辺側に配置する場合と比較して、圧電振動片用配線が接続されるチップ用電極を外部電源用端子と信号出力用端子とから離して配置することができる。このため、圧電振動片用配線が接続されるチップ用電極を流れる信号が、外部電源用端子に印加される電圧の影響を受けることを抑止し、また信号出力用端子を流れる出力信号と干渉することを抑止することができる。
【0018】
本発明の第の態様は、圧電振動子であって、上記第1~第の態様の振動子用パッケージと、上記振動子用パッケージの上記振動片実装側面に実装された圧電振動片とを備えるという構成を採用する。
【0019】
本発明によれば、本発明の振動子用パッケージを備えているため、信号出力用端子から出力される信号が示す周波数をより正確にすることが可能となる。
【0020】
本発明の第の態様は、発振器であって、上記第の態様の圧電振動子と、上記振動子用パッケージの上記チップ実装側面に実装された集積回路チップとを備えるという構成を採用する。
【0021】
本発明によれば、信号出力用端子から出力される信号が示す周波数をより正確にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、信号出力用端子から出力される信号が示す周波数をより正確にすることが可能な振動子用パッケージ、圧電振動子及び発振器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態における発振器の外観斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態における発振器の封口板を取り外した状態を示す平面図である。
図3図2のI-I線に相当する断面図である。
図4】本発明の第1実施形態における発振器の分解斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態におけるパッケージ本体及び導電部の下面図である。
図6】本発明の第1実施形態におけるパッケージ本体及び導電部の上面図である。
図7】本発明の第1実施形態における圧電振動片の平面図である。
図8】本発明の第2実施形態におけるパッケージ本体及び導電部の上面図である。
図9】本発明の第3実施形態におけるパッケージ本体及び導電部の上面図である。
図10】本発明の第4実施形態におけるパッケージ本体及び導電部の上面図である。
図11】本発明の第5実施形態におけるパッケージ本体及び導電部の上面図である。
図12】本発明の第6実施形態におけるパッケージ本体及び導電部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に係る振動子用パッケージ、圧電振動子及び発振器の一実施形態について説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る発振器の外観斜視図である。図2は、封口板を取り外した状態を示す発振器の平面図である。図3は、図2のI-I線に相当する断面図である。図4は、本実施形態に係る発振器の分解斜視図である。図1図4に示すように、発振器100は、圧電振動子10と、集積回路チップ20とを備えている。
【0026】
圧電振動子10は、いわゆるセラミックパッケージタイプの表面実装型振動子である。圧電振動子10は、内部に気密封止されたキャビティCを有するパッケージ2(振動子用パッケージ)と、キャビティC内に収容された圧電振動片3と、を備えている。なお、圧電振動子10は、直方体状を呈している。本実施形態では、平面視において圧電振動子10の長手方向を長手方向Lといい、短手方向を幅方向Wといい、これら長手方向Lおよび幅方向Wに対して直交する方向を厚さ方向Tという。
【0027】
パッケージ2は、パッケージ本体4と、パッケージ本体4に接合されるとともに、パッケージ本体4との間にキャビティCを形成する封口板5と、電流が流れる導電部6とを備えている。パッケージ本体4は、互いに重ね合わされた状態で接合された第1ベース基板2a(層体)、第2ベース基板2b(層体)及び第3ベース基板2c(層体)と、第3ベース基板2c上に接合されたシールリング2dと、を備えている。
【0028】
第1ベース基板2aは、平面視外形が第2ベース基板2bと同形状を呈するセラミックス製の基板であって、第2ベース基板2bの下に当接された状態で焼結等によって一体的に接合されている。図2図4に示すように、第1ベース基板2aには、第1ベース基板2aを厚さ方向Tに貫通する第1貫通部2eが形成されている。第1貫通部2eは、平面視で角丸長方形状を呈している。第1貫通部2eには、集積回路チップ20が収容されている。つまり、第1貫通部2eは、集積回路チップ20を長手方向L及び幅方向Wを含む平面内において囲っている。このような第1ベース基板2aの厚さ方向Tにおける第2ベース基板2bと反対側の面(以下、下面2a1と称する)は、導電部6の一部である後述する外部接続端子(外部電源用端子30、信号出力用端子31、グランド接続用端子32、及びスイッチ用端子33)の形成面である。
【0029】
第2ベース基板2bは、厚さ方向Tから見た平面視で長方形状を呈するセラミックス製の基板とされている。第2ベース基板2bの上面2b1は、キャビティCの底部を構成する。第2ベース基板2bの下面2b2は、導電部6の一部である後述するチップ用電極(外部電源用電極40、信号出力用電極41、第1振動片電極42、第2振動片電極43、グランド接続用電極44、及びスイッチ用電極45)の形成面である。これらのチップ用電極は、集積回路チップ20の端子が接合される部位である。つまり、このようなチップ用電極が設けられた第2ベース基板2bの下面2b2は、集積回路チップ20の実装面である。
【0030】
第3ベース基板2cは、平面視外形が第2ベース基板2bと同形状を呈するセラミックス製の基板であって、第2ベース基板2b上に重ねられた状態で焼結等によって一体的に接合されている。図3及び図4に示すように、第3ベース基板2cには、第3ベース基板2cを厚さ方向Tに貫通する第2貫通部2fが形成されている。第2貫通部2fは、平面視で角丸長方形状を呈している。第2貫通部2fの内側面において、幅方向Wの両側に位置する部分には、幅方向Wの内側に向けて突出する実装部(実装部2g及び実装部2h)が各別に形成されている。なお、実装部2g及び実装部2hは、第3ベース基板2cにおける長手方向Lの中央部分に位置している。
【0031】
実装部2g及び実装部2h上には、導電部6の一部である後述する第1電極パッド51及び第2電極パッド52が形成されている。実装部2g上には第1電極パッド51が形成され、実装部2h上には第2電極パッド52が形成されている。これらの第1電極パッド51及び第2電極パッド52は、圧電振動片3が接合される部位である。つまり、このような第1電極パッド51及び第2電極パッド52が設けられた実装部2g及び実装部2hの上面(すなわち第3ベース基板2cの上面2c1)は圧電振動片3の実装面である。
【0032】
なお、第1ベース基板2a、第2ベース基板2b及び第3ベース基板2cに用いられるセラミックス材料としては、例えばアルミナ製のHTCC(High Temperature Co-Fired Ceramic)や、ガラスセラミックス製のLTCC(Low Temperature Co-Fired Ceramic)等を用いることが可能である。
【0033】
第1ベース基板2a、第2ベース基板2b及び第3ベース基板2cの四隅には、平面視1/4円弧状の切欠部2iが、第1ベース基板2a、第2ベース基板2b及び第3ベース基板2cの厚さ方向Tの全体に亘って形成されている。第1ベース基板2a、第2ベース基板2b及び第3ベース基板2cは、例えばウエハ状のセラミックス基板を3枚重ねて接合した後、両セラミックス基板を貫通する複数のスルーホールを行列状に形成し、各スルーホールを基準としながら両セラミックス基板を格子状に切断することで作製される。その際、スルーホールが4分割されることで、上述した切欠部2iが構成される。
【0034】
なお、本実施形態では、図3等に示すように、第2ベース基板2bの第1ベース基板2a側に集積回路チップ20が配置され、第2ベース基板2bの第3ベース基板2c側に圧電振動片3が配置されている。つまり、本実施形態では、第1ベース基板2aの下面2a1と、第2ベース基板2bの下面2b2とは、パッケージ本体4の集積回路チップ実装側面を形成している。また、第2ベース基板2bの上面2b1と、第3ベース基板2cの上面2c1とは、振動片実装側面を形成している。なお、下面2a1、上面2b1、下面2b2及び上面2c1の名称に付された「上下」は、説明の便宜上の方向を示し、実際の発振器100の鉛直方向に対する設置姿勢を限定するものではない。
【0035】
シールリング2dは、第1ベース基板2a、第2ベース基板2b及び第3ベース基板2cの外形よりも一回り小さい導電性の枠状部材であって、第3ベース基板2cの上面に接合されている。具体的に、シールリング2dは、銀ロウ等のロウ材やはんだ材等による焼付けによって第3ベース基板2c上に接合、または第3ベース基板2c上に形成された金属接合層に対する溶着等によって接合されている。シールリング2dは、第3ベース基板2c(第2貫通部2f)の内側面とともにキャビティCの側壁を構成する。なお、図示の例において、シールリング2dの内側面は、第3ベース基板2cの内側面と面一に配置されている。
【0036】
シールリング2dの材料としては、例えばニッケル基合金等が挙げられ、具体的にはコバール、エリンバー、インバー、42-アロイ等から選択すれば良い。特に、シールリング2dの材料としては、セラミックス製とされている第2ベース基板2b及び第3ベース基板2cに対して熱膨張係数が近いものを選択することが好ましい。例えば、第2ベース基板2b及び第3ベース基板2cとして熱膨張係数6.8×10-6/℃のアルミナを用いる場合には、シールリング2dとして熱膨張係数5.2×10-6/℃のコバールや、熱膨張係数4.5~6.5×10-6/℃の42-アロイを用いることが好ましい。
【0037】
封口板5は、導電性基板からなり、シールリング2d上に接合されてパッケージ本体4内を気密に封止している。そして、シールリング2d、封口板5、第2ベース基板2b、及び第3ベース基板2cにより画成された空間は、気密封止されたキャビティCを構成する。
【0038】
導電部6は、パッケージ2において電源電力や信号の導通路となる部位である。この導電部6は、例えば蒸着やスパッタリング等で形成された単一金属による単層膜、または異なる金属が積層された積層膜により構成されている。
【0039】
図5は、パッケージ本体4及び導電部6の下面図である。また、図6は、パッケージ本体4及び導電部6の上面図である。なお、図6においては、シールリング2dは省略して図示している。図5に示すように、本実施形態においては、導電部6は、第1ベース基板2aの下面2a1に形成される外部接続端子として、外部電源用端子30と、信号出力用端子31と、グランド接続用端子32と、スイッチ用端子33とを有している。また、導電部6は、第2ベース基板2bの下面2b2に形成されるチップ用電極として、外部電源用電極40と、信号出力用電極41と、第1振動片電極42と、第2振動片電極43とを有している。また、導電部6は、第2ベース基板2bの下面2b2に形成される外部電源用配線46と、信号出力用配線47と、グランド接続用配線48と、スイッチ用配線49とを有している。これらの外部電源用端子30、信号出力用端子31、グランド接続用端子32、スイッチ用端子33、外部電源用電極40、信号出力用電極41、第1振動片電極42、第2振動片電極43、グランド接続用電極44、及びスイッチ用電極45、外部電源用配線46、信号出力用配線47、グランド接続用配線48、及びスイッチ用配線49は、第1ベース基板2aの下面2a1あるいは第2ベース基板2bの下面2b2すなわちパッケージ本体4の集積回路チップ実装側面に形成されている。
【0040】
また、図6に示すように、導電部6は、第3ベース基板2cの上面2c1に形成される第1電極パッド51及び第2電極パッド52を有している。また、導電部6は、第2ベース基板2bの上面2b1に形成される圧電振動片用配線60を有している。これらの第1電極パッド51、第2電極パッド52、及び圧電振動片用配線60は、第2ベース基板2bの上面2b1あるいは第3ベース基板2cの上面2c1すなわちパッケージ本体4の振動片実装側面に形成されている。この他、導電部6は、厚さ方向Tにおいて異なる位置に設けられた部位同士を厚さ方向Tにて接続する複数のビア70を有している。
【0041】
外部接続端子(外部電源用端子30、信号出力用端子31、グランド接続用端子32、スイッチ用端子33)は、発振器100を外部と接続するための端子であり、図5に示すように、第1ベース基板2aの下面2a1であって、第1ベース基板2aの四隅に設けられている。図5及び図6に示すように、パッケージ本体4は、チップ実装側面の法線方向(厚さ方向T)から見て、一対の長辺(長辺4a及び長辺4b)と一対の短辺(短辺4c及び短辺4d)とを有する矩形状に形成されている。図5に示すように、外部電源用端子30と信号出力用端子31とは、短辺に沿った方向にて、一方の長辺4a側に配置されている。また、グランド接続用端子32とスイッチ用端子33とは、短辺に沿った方向にて、他方の長辺4b側に配置されている。
【0042】
外部電源用端子30は、発振器100を外部電源Dと接続する端子であり、長辺4aと短辺4cとが交差する位置に配置されている。信号出力用端子31は、発振器100から外部に信号(出力信号S)を出力するための端子であり、長辺4aと短辺4dとが交差する位置に配置されている。この出力信号Sには、圧電振動子10から出力される周波数成分が含まれている。グランド接続用端子32は、発振器100を不図示のグランドと接続する端子であり、長辺4bと短辺4cとが交差する位置に配置されている。スイッチ用端子33は、集積回路チップ20に出力信号Sを出力させる指令信号を入力するための端子であり、長辺4bと短辺4dとが交差する位置に配置されている。
【0043】
チップ用電極(外部電源用電極40、信号出力用電極41、第1振動片電極42、第2振動片電極43、グランド接続用電極44、及びスイッチ用電極45)は、集積回路チップ20を接合するための電極であり、図5に示すように、第2ベース基板2bの下面2b2であって、第2ベース基板2bの中央部に設けられている。
【0044】
外部電源用電極40は、集積回路チップ20の電源入力端子が接合される電極である。この外部電源用電極40は、短辺に沿った方向(幅方向W)において、中央部よりも長辺4a側に配置されている。信号出力用電極41は、集積回路チップ20の信号出力端子が接合される電極である。この信号出力用電極41は、短辺に沿った方向(幅方向W)において、中央部よりも長辺4a側に配置されている。
【0045】
第1振動片電極42は、第1電極パッド51を介して圧電振動片3と電気的に接続される集積回路チップ20の端子が接合される電極である。この第1振動片電極42は、短辺に沿った方向(幅方向W)において、中央部よりも長辺4b側に配置されている。第2振動片電極43は、第2電極パッド52を介して圧電振動片3と電気的に接続される集積回路チップ20の端子が接合される電極である。この第2振動片電極43は、短辺に沿った方向(幅方向W)において、中央部よりも長辺4b側に配置されている。
【0046】
このように、本実施形態においては、図5に示すように、外部電源用端子30及び信号出力用端子31と、第1振動片電極42及び第2振動片電極43とは、短辺に沿った方向(幅方向W)において、第2ベース基板2bの中央部を挟んで配置されている。つまり、外部電源用端子30と信号出力用端子31とは、短辺に沿った方向にて、一方の長辺4a側に配置され、第1振動片電極42(圧電振動片用配線60が接続されるチップ用電極)及び第2振動片電極43は、短辺に沿った方向にて、他方の長辺4b側に配置されている。
【0047】
グランド接続用電極44は、集積回路チップ20のグランド端子が接合される電極である。このグランド接続用電極44は、短辺に沿った方向(幅方向W)において、第2ベース基板2bの中央部に配置されている。スイッチ用電極45は、集積回路チップ20のスイッチ信号入力端子が接合される電極である。このスイッチ用電極45は、短辺に沿った方向(幅方向W)において、第2ベース基板2bの中央部に配置されている。
【0048】
外部電源用配線46は、第1ベース基板2aを貫通するビア70を介して一端が外部電源用端子30と接続され、他端が外部電源用電極40と接続されている。つまり、外部電源用配線46は、外部電源用端子30と外部電源用電極40とを通電可能に接続する。図5に示すように、外部電源用配線46は、一方の長辺4a側に配置されており、長手方向Lに沿って直線状に延伸して形成されている。
【0049】
信号出力用配線47は、第1ベース基板2aを貫通するビア70を介して一端が信号出力用端子31と接続され、他端が信号出力用電極41と接続されている。つまり、信号出力用配線47は、信号出力用端子31と信号出力用電極41とを通電可能に接続する。図5に示すように、信号出力用配線47は、一方の長辺4a側に配置されており、長手方向Lに沿って直線状に延伸して形成されている。
【0050】
グランド接続用配線48は、第1ベース基板2aを貫通するビア70を介して一端がグランド接続用端子32と接続され、他端がグランド接続用電極44と接続されている。つまり、グランド接続用配線48は、グランド接続用端子32とグランド接続用電極44とを通電可能に接続する。図5に示すように、グランド接続用配線48は、グランド接続用端子32からグランド接続用電極44まで長手方向L及び幅方向Wに対して傾斜するように延伸されている。
【0051】
スイッチ用配線49は、第1ベース基板2aを貫通するビア70を介して一端がスイッチ用端子33と接続され、他端がスイッチ用電極45と接続されている。つまり、スイッチ用配線49は、スイッチ用端子33とスイッチ用電極45とを導通可能に接続する。図5に示すように、スイッチ用配線49は、スイッチ用端子33からスイッチ用電極45まで長手方向L及び幅方向Wに対して傾斜するように延伸されている。
【0052】
第1電極パッド51及び第2電極パッド52は、圧電振動片3に設けられた不図示の電極膜と接合されるパッドである。図6に示すように、第1電極パッド51は、長辺4a側に設けられた実装部2gの上面(第3ベース基板2cの上面2c1)に形成されている。第2電極パッド52は、長辺4b側に設けられた実装部2hの上面(第3ベース基板2cの上面2c1)に形成されている。
【0053】
圧電振動片用配線60は、第2ベース基板2bの上面2b1上に配設されている。また、圧電振動片用配線60は、第3ベース基板2cを貫通するビア70を介して一端が第1電極パッド51と接続されている。また、圧電振動片用配線60は、第2ベース基板2bを貫通するビア70を介して他端が第1振動片電極42と接続されている。つまり、圧電振動片用配線60は、第1電極パッド51と第1振動片電極42とを通電可能に接続する。
【0054】
図6に示すように、厚さ方向T(チップ実装側面の法線方向)から見て、圧電振動片用配線60は、実装部2gから実装部2hに向かって幅方向Wに沿って延出してから屈曲し、第1振動片電極42と重なる位置まで直線状に延伸して設けられている。図5及び図6に示すように、本実施形態において圧電振動片用配線60は、厚さ方向Tから見て、外部電源用配線46及び信号出力用配線47と重なることなくかつ圧電振動片3が配置される領域を跨いで配設されている。
【0055】
なお、厚さ方向Tから見て、圧電振動片用配線60が外部電源用配線46及び信号出力用配線47と重ならないとは、圧電振動片用配線60のみを残して厚さ方向Tから視認した場合に圧電振動片用配線60が存在する領域と、外部電源用配線46及び信号出力用配線47のみを残して同方向から視認した場合に外部電源用配線46及び信号出力用配線47が存在する領域とを、同一座標空間に配置して同方向から視認した場合に重ならないことを意味する。
【0056】
このような本実施形態においては、厚さ方向Tにて圧電振動片用配線60と、外部電源用配線46及び信号出力用配線47とが異なる位置に設けられている。さらに、圧電振動片用配線60と、外部電源用配線46及び信号出力用配線47とは、厚さ方向Tから視認した場合に交差せずに配設されている。
【0057】
また、本実施形態においては、圧電振動片用配線60は、同様に厚さ方向Tから見て、外部電源用端子30及び信号出力用端子31とも重なることなく配設されている。さらに、圧電振動片用配線60は、同様に厚さ方向Tから見て、グランド接続用配線48と、スイッチ用配線49とも重なることなく配設されている。
【0058】
なお、本実施形態において第2電極パッド52と第2振動片電極43とは厚さ方向Tから見て重なる位置に配置されている。これらの第2電極パッド52と第2振動片電極43とは、第3ベース基板2cを貫通するビア70によって接続されて導通されている。
【0059】
圧電振動片3は、気密封止されたパッケージ2のキャビティC内に収容されている。本実施形態において圧電振動片3は、水晶によって形成された圧電板3aを備える。圧電板3aは、一対の振動腕部(第1振動腕部3b及び第2振動腕部3c)と、一対の支持腕部(第1支持腕部3d及び第2支持腕部3e)を有する。圧電振動片3は、キャビティC内において、導電性接着剤により第1支持腕部3dが実装部2gに支持され、第2支持腕部3eが実装部2hに支持されることで、パッケージ2に実装されている。これにより、圧電振動片3は、キャビティC内において第1振動腕部3bと第2振動腕部3cが第2ベース基板2bから浮いた状態で支持される。第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cの外表面には、所定の電圧が印加されたときに一対の第1振動腕部3bと第2振動腕部3cとを振動させる2系統の不図示の励振電極が配置されている。
【0060】
図7は、圧電振動片の平面図である。圧電振動片3は、圧電板3aと、圧電板3aの表裏面を含む外表面に配置された不図示の電極膜と、を備える。なお、本実施形態では、圧電振動子10の長手方向L、幅方向Wおよび厚さ方向Tは、圧電振動片3の長手方向、幅方向および厚さ方向それぞれと一致している。したがって、以下の圧電振動片3に係る説明では、圧電振動子10の長手方向L、幅方向Wおよび厚さ方向Tを用いる。
【0061】
圧電板3aは、上述の一対の振動腕部(第1振動腕部3b及び第2振動腕部3c)と、一対の支持腕部(第1支持腕部3d及び第2支持腕部3e)と、基部3fと、を備えている。第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cは基部3fから長手方向Lに延びて形成されている。第1支持腕部3d及び第2支持腕部3eは、基部3fに対して幅方向Wの両側に位置する。圧電板3aは、長手方向Lに沿う中心軸Oに対して、厚さ方向Tから見た平面視形状が略対称となるように形成されている。なお、本実施形態では、圧電板3aを形成する圧電材料は水晶である。なお、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料を用いて圧電板3aを形成することも可能である。
【0062】
第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cは、幅方向Wに並んで平行に配置されており、各々が基部3fに接続されている。第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cは、基部3f側の基端を固定端とし、先端を自由端として互いに接近・離間する方向(幅方向W)に振動する。第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cは、第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cの基端から先端に向けて延びる本体部3gと、第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cの先端に位置する錘部3hと、を有している。
【0063】
本体部3gには、溝部3iが形成されている。溝部3iは、本体部3gの両主面上において、厚さ方向Tに窪むとともに、長手方向Lに沿って延在している。溝部3iは、第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cの基端近傍から、本体部3gの先端近傍に亘って形成されている。
【0064】
錘部3hは、それぞれ本体部3gの先端部から長手方向Lに延びている。錘部3hは、平面視矩形状であって、本体部3gよりも幅方向Wに幅広に形成されている。これにより、第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cの先端部の質量および振動時の慣性モーメントを増大させることができ、錘部3hを有しない圧電振動片3と比較して第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cの長さを短縮できる。
【0065】
また、錘部3hの表面には、金属膜3jが設けられている。金属膜3jは、第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cの先端部の質量及び振動時の慣性モーメントを増大させる。この金属膜3jは、圧電振動子10の製造時に、パルスレーザー(例えばピコ秒レーザーまたはフェムト秒レーザー)を用いて、必要に応じてトリミングされる。金属膜3jがトリミングされることによって、第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cの先端部の質量を調整することが可能である。金属膜3jは、例えば金(Au)や銀(Ag)等からなり、厚さが1~10μm程度になっている。
【0066】
第1支持腕部3d及び第2支持腕部3eは、平面視でL字状を呈し、基部3f、第1振動腕部3b(本体部3g)及び第2振動腕部3c(本体部3g)を幅方向Wの外側から囲んでいる。第1支持腕部3dは、中心軸Oに対して第1振動腕部3bと同じ側に配置されている。第2支持腕部3eは、中心軸Oに対して第2振動腕部3cと同じ側に配置されている。
【0067】
電極膜は、例えば、クロム(Cr)と金(Au)との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロム膜を下地として成膜した後に、クロム膜上に金の薄膜を積層したものである。ただし、電極膜の膜構成はこれに限定されず、例えば、クロム(Cr)とニクロム(NiCr)との積層膜上にさらに金の薄膜を積層しても構わないし、クロム(Cr)やニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)等の単層膜でも構わない。
【0068】
電極膜は、第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cに各々設けられる励振電極と、第1支持腕部3d及び第2支持腕部3eをパッケージ2に実装する際のマウント部となるマウント電極と、励振電極やマウント電極を接続する接続配線と、を備える。
【0069】
図3及び図4に示すように、集積回路チップ20は、第2ベース基板2bの下面2b2と第1ベース基板2aの内側面で囲まれた空間(第1貫通部2e)に収容されており、第2ベース基板2bの下面2b2に実装されている。集積回路チップ20の端子は、第2ベース基板2bの下面2b2に設けられたチップ用電極(外部電源用電極40、信号出力用電極41、第1振動片電極42、第2振動片電極43、グランド接続用電極44、及びスイッチ用電極45)に導通可能に接合されている。集積回路チップ20は、圧電振動子10から入力される電気信号に各種演算処理を実行することで周波数成分を含む出力信号Sを生成して出力する。
【0070】
このような発振器100を作動させる場合には、外部電源用電極40に外部電源を供給する。すると、圧電振動片3に電力が供給され、励振電極に電流が流れて電界が発生する。第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cは、上記電界による逆圧電効果によって例えば互いに接近・離間する方向(幅方向W)に所定の共振周波数で振動する。そして、第1振動腕部3b及び第2振動腕部3cの振動は、圧電振動片3が有する圧電特性により、電気信号へ変換される。この電気信号が集積回路チップ20に入力される。集積回路チップ20は、スイッチ用電極45を介して上位制御系から指令信号が入力されると、上記電気信号に各種演算処理を行うことで生成した出力信号Sを出力する。この出力信号Sは、信号出力用配線47を介して信号出力用電極41から外部に出力される。
【0071】
以上のような本実施形態の発振器100が備えるパッケージ2は、パッケージ本体4を備えている。また、パッケージ2は、集積回路チップ20が実装される側のチップ実装側面とチップ実装側面と反対側に配置されると共に圧電振動片3が実装される側の振動片実装側面とを有している。また、パッケージ2は、チップ実装側面に設けられると共に集積回路チップ20の端子が接続される複数のチップ用電極(外部電源用電極40、信号出力用電極41、第1振動片電極42、第2振動片電極43、グランド接続用電極44、及びスイッチ用電極45)を備える。
【0072】
また、パッケージ2は、チップ実装側面に設けられると共に外部電源Dと接続される外部電源用端子30と、チップ実装側面に設けられると共に外部に信号(出力信号S)を出力する信号出力用端子31とを備えている。また、パッケージ2は、チップ実装側面に設けられると共にチップ用電極と外部電源用端子30とを接続する外部電源用配線46と、チップ実装側面に設けられると共にチップ用電極と信号出力用端子31とを接続する信号出力用配線47とを備えている。
【0073】
また、パッケージ2は、振動片実装側面に設けられると共に圧電振動片3が接続される第1電極パッド51を備えている。さらに、パッケージ2は、圧電振動片用配線60を備えている。圧電振動片用配線60は、チップ実装側面の法線方向から見て、外部電源用配線46及び信号出力用配線47と重なることなくかつ圧電振動片3が配置される領域を跨いで配設されると共に、第1電極パッド51とチップ用電極とを接続する。
【0074】
本実施形態のパッケージ2によれば、圧電振動片用配線60が、チップ実装側面の法線方向から見て圧電振動片3が配置される領域を跨ぐように配設されており、さらには同方向から見て外部電源用配線46及び信号出力用配線47と重なることがない。このため、圧電振動片用配線60や信号出力用配線47を流れる信号にノイズ成分が重畳することを抑制し、信号出力用端子31から出力される信号が示す周波数をより正確にすることが可能となる。
【0075】
また、本実施形態のパッケージ2においては、パッケージ本体4が、チップ実装側面の法線方向から見て、一対の長辺と一対の短辺とを有する矩形状に形成されている。また、外部電源用端子30と信号出力用端子31とは、短辺に沿った方向にて、一方の長辺4a側に配置され、圧電振動片用配線60が接続されるチップ用電極(第1振動片電極42、第2振動片電極43)は、短辺に沿った方向にて、他方の長辺4b側に配置されている。
【0076】
このような本実施形態のパッケージ本発明によれば、圧電振動片用配線60が接続されるチップ用電極(第1振動片電極42、第2振動片電極43)を一方の長辺4a側に配置する場合と比較して、圧電振動片用配線60が接続されるチップ用電極を外部電源用端子30と信号出力用端子31とから離して配置することができる。このため、圧電振動片用配線60が接続されるチップ用電極(第1振動片電極42、第2振動片電極43)を流れる信号が、外部電源用端子30に印加される電圧の影響を受けることを抑止し、また信号出力用端子31を流れる出力信号と干渉することを抑止することができる。
【0077】
また、本実施形態において圧電振動子10は、パッケージ2と、パッケージ2の振動片実装側面に実装された圧電振動片3とを備えている。このため、信号出力用端子31から出力される信号が示す周波数がより正確にすることが可能となる。
【0078】
また、本実施形態において発振器100は、圧電振動子10と、パッケージ2のチップ実装側面に実装された集積回路チップ20とを備えている。このため、信号出力用端子31から出力される信号が示す周波数がより正確にすることが可能となる。
【0079】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図8を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0080】
上記第1実施形態においては、圧電振動片用配線60がキャビティCの内部にて露出されていた。これに対して、本実施形態のパッケージ2Aにおいては、圧電振動片用配線60のキャビティCにおいて露出された部分を覆う絶縁コート61を備えている。
【0081】
図8は、パッケージ本体4及び導電部6の上面図である。この図に示すように、本実施形態においては圧電振動片用配線60を覆うように絶縁コート61が設けられている。この絶縁コート61は、例えばアルミナ(酸化アルミニウム)によって形成されたコート材である。なお、絶縁コート61は、他の材料によって形成されていても良く、例えば樹脂によって形成されていても良い。
【0082】
このような絶縁コート61は、例えば、絶縁コートの形成材料を含む塗布材を圧電振動片用配線60上に局所的に塗布し、塗布材を乾燥させることで形成することができる。なお、キャビティCに露出された第2ベース基板2bの上面2b1の全体あるいは一部にも絶縁コート61を形成しても良い。
【0083】
このように本実施形態のパッケージ2Aは、圧電振動片用配線60が振動片実装側面上に設けられ、圧電振動片用配線60の振動片実装側面上に設けられた部分を覆う絶縁コート61を有している。
【0084】
本実施形態のパッケージ2Aによれば、圧電振動片用配線60の振動片実装側面上に設けられた部分が絶縁コート61によって覆われている。このため、圧電振動片用配線60の振動片実装側面上に設けられた部分に異物が接触することを防止することができる。例えば、製造時に圧電振動片3の周波数を調整するために圧電振動片3の一部である金属膜3jを削ると金属の切削紛が発生する。このような切削紛が圧電振動片用配線60の振動片実装側面上に設けられた部分に接触することを防止することができる。
【0085】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、図9を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0086】
上記第1実施形態においては、第1振動片電極42は、長手方向Lにおいて、第2ベース基板2bの中央部よりも圧電振動片3の先端部側に配置されていた。これに対して、本実施形態のパッケージ2Bにおいては、第1振動片電極42が、長手方向Lにおいて、第2ベース基板2bの中央部よりも圧電振動片3の先端部と反対側に配置されている。
【0087】
図9は、パッケージ本体4及び導電部6の上面図である。この図に示すように、本実施形態においては、上記第1実施形態の圧電振動片用配線60に代えて、圧電振動片用配線62が設けられている。この圧電振動片用配線62は、第2ベース基板2bの上面2b1上に配設されている。また、圧電振動片用配線62は、第3ベース基板2cを貫通するビア70を介して一端が第1電極パッド51と接続されている。また、圧電振動片用配線62は、第2ベース基板2bを貫通するビア70を介して他端が第1振動片電極42と接続されている。つまり、圧電振動片用配線62は、第1電極パッド51と第1振動片電極42とを通電可能に接続する。
【0088】
厚さ方向T(チップ実装側面の法線方向)から見て、圧電振動片用配線62は、実装部2gから実装部2hに向かって幅方向Wに沿って延出してから屈曲し、圧電振動片3の第1振動腕部3b及び第2振動腕部3c(図2等参照)の先端部から離間するように延伸され、第1振動片電極42と重なる位置まで直線状に延伸して設けられている。このような、本実施形態において圧電振動片用配線62は、厚さ方向Tから見て、外部電源用配線46及び信号出力用配線47と重なることなくかつ圧電振動片3が配置される領域を跨いで配設されている。
【0089】
さらに、本実施形態において圧電振動片用配線62は、実装部2gから第1振動片電極42に向かうに連れて圧電振動片3の第1振動腕部3b及び第2振動腕部3c(図2等参照)の先端部から離間するように延伸されている。このため、本実施形態において圧電振動片用配線62は、チップ実装側面の法線方向から見て、圧電振動片3の先端部と重なることなく配設されている。このため、圧電振動片3の先端部を削ることによって発生した切削紛が圧電振動片用配線62に付着することを抑止することが可能となる。
【0090】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、図10を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0091】
上記第1実施形態においては、第2ベース基板2bが一層の部材であった。これに対して、本実施形態のパッケージ2Cにおいては、第2ベース基板2bが下層部2b3と上層部2b4とに分割形成されている。
【0092】
図10は、パッケージ2Cの断面図である。この図に示すように、本実施形態のパッケージ2Cにおいては、第2ベース基板2bが下層部2b3と上層部2b4とに分割形成されている。つまり、本実施形態においてパッケージ2Cは、第1ベース基板2a、第2ベース基板2bの下層部2b3、第2ベース基板2bの上層部2b4、及び第3ベース基板2cの複数の層体が下側から順に積層された多層体からなる。
【0093】
さらに、本実施形態においては、圧電振動片用配線60は、第2ベース基板2bの下層部2b3と、第2ベース基板2bの上層部2b4との界面に配設されている。このため、圧電振動片用配線60は、第2ベース基板2bの上層部2b4によって覆われており、キャビティCの内部に露出されていない。このため、圧電振動片3の先端部を削ることによって発生した切削紛が圧電振動片用配線60に付着することを抑止することが可能となる。
【0094】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、図11を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0095】
上記第1実施形態においては、いわゆるサイドアーム型の圧電振動片3が設置されるパッケージ2であった。これに対して、本実施形態のパッケージ2Dは、いわゆる片持ち型の圧電振動片3Aが設置される。
【0096】
図11は、本実施形態のパッケージ本体4及び導電部6の上面図である。この図に示すように、パッケージ2Dに実装される圧電振動片3Aは、基部3kから平行に第1振動腕部3mと第2振動腕部3nとが長手方向Lに沿って延伸された片持ち型に形成されている。
【0097】
本実施形態のパッケージ2Dにおいては、実装部2g及び実装部2hが、キャビティCの長手方向Lにおける一方側に配置されている。第1電極パッド51と第1振動片電極42とを接続する圧電振動片用配線63が設けられている。なお、本実施形態においては第2電極パッド52と第2振動片電極43とは、ビア70を介して接続されている。
【0098】
本実施形態においては、図11に示すように、圧電振動片用配線63が、チップ実装側面の法線方向から見て圧電振動片3Aが配置される領域を跨ぐように配設されており、さらには同方向から見て外部電源用配線46及び信号出力用配線47と重なることがない。このため、圧電振動片用配線63及び信号出力用配線47を流れる信号にノイズ成分が重畳することを抑制し、信号出力用端子31から出力される信号が示す周波数をより正確にすることが可能となる。
【0099】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について、図12を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0100】
上記第1実施形態においては、いわゆるサイドアーム型の圧電振動片3が設置されるパッケージ2であった。これに対して、本実施形態のパッケージ2Eは、センターアーム型の圧電振動片3Bが設置される。
【0101】
図12は、本実施形態のパッケージ本体4及び導電部6の上面図である。この図に示すように、パッケージ2Eに実装される圧電振動片3Bは、基部3pから長手方向Lに沿って延伸する単一の支持腕部3qと、幅方向Wにて支持腕部3qを間に挟むように配置された一対の第1振動腕部3rと第2振動腕部3sとを備えるセンターアーム型に形成されている。
【0102】
本実施形態のパッケージ2Eにおいては、実装部2g及び実装部2hに代えて、キャビティCの長手方向Lにおける中央部に単一の実装部2jが設けられている。この実装部2j上に第1電極パッド51及び第2電極パッド52が設けられている。
【0103】
また、パッケージ2Eは、第1電極パッド51と第1振動片電極42とを接続する圧電振動片用配線64が設けられている。
【0104】
本実施形態においては、図12に示すように、圧電振動片用配線64が、チップ実装側面の法線方向から見て圧電振動片3Bが配置される領域を跨ぐように配設されており、さらには同方向から見て外部電源用配線46及び信号出力用配線47と重なることがない。このため、圧電振動片用配線64及び信号出力用配線47を流れる信号にノイズ成分が重畳することを抑制し、信号出力用端子31から出力される信号が示す周波数をより正確にすることが可能となる。
【0105】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0106】
10……圧電振動子、20……集積回路チップ、100……発振器、2……パッケージ(振動子用パッケージ)、2A……パッケージ(振動子用パッケージ)、2B……パッケージ(振動子用パッケージ)、2C……パッケージ(振動子用パッケージ)、2D……パッケージ(振動子用パッケージ)、2E……パッケージ(振動子用パッケージ)、2a……第1ベース基板(層体)、2a1……下面、2b……第2ベース基板(層体)、2b1……上面、2b2……下面、2b3……下層部(層体)、2b4……上層部(層体)、2c……第3ベース基板(層体)、2c1……上面、3……圧電振動片、3a……圧電板、3A……圧電振動片、4……パッケージ本体、4a……長辺、4b……長辺、4c……短辺、4d……短辺、6……導電部、30……外部電源用端子、31……信号出力用端子、40……外部電源用電極(チップ用電極)、41……信号出力用電極(チップ用電極)、42……第1振動片電極(チップ用電極)、43……第2振動片電極(チップ用電極)、44……グランド接続用電極(チップ用電極)、45……スイッチ用電極(チップ用電極)、46……外部電源用配線、60……圧電振動片用配線、61……絶縁コート、62……圧電振動片用配線、63……圧電振動片用配線、64……圧電振動片用配線、D……外部電源、S……出力信号
図1
図2
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図5
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図10
図11
図12