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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】非接触式眼圧計及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
A61B3/16 300
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021045048
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022048962
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2020154555
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】新田 将
(72)【発明者】
【氏名】丸山 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】雜賀 誠
(72)【発明者】
【氏名】上野 慎悟
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-192209(JP,A)
【文献】特開2009-061062(JP,A)
【文献】特開2009-082514(JP,A)
【文献】特開平02-088035(JP,A)
【文献】特開平11-276440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0030473(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから被検眼の角膜に対して流体を吹き付ける吹付機構と、
前記ノズルから前記角膜に前記流体が吹き付けられている間、前記角膜に対して光束を投影する投影光学系と、
前記角膜に前記流体が吹き付けられている間、前記角膜にて反射された前記光束の反射光を受光して、前記反射光の受光信号を出力する受光光学系と、
前記受光光学系から出力される前記受光信号に基づき、前記受光信号の信号強度が前記受光信号の立ち上がり途中の予め設定された設定値に達した場合に、前記ノズルから前記角膜への前記流体の吹き付けが開始されてから前記信号強度が前記設定値に達するまでの到達時間を測定する到達時間測定部と、
前記到達時間測定部の測定結果に基づき、前記吹付機構の駆動を停止させる停止タイミングを決定するタイミング決定部と、
を備え
前記タイミング決定部が、前記到達時間が予め定めた閾値よりも小さい場合に、前記停止タイミングとして即時停止を決定する非接触式眼圧計。
【請求項2】
予め定められた前記到達時間と前記停止タイミングとの第1相関関係を取得する第1相関関係取得部を備え、
前記タイミング決定部が、前記到達時間測定部の測定結果と、前記第1相関関係取得部が取得した前記第1相関関係とに基づき、前記停止タイミングを決定する請求項1記載の非接触式眼圧計。
【請求項3】
ノズルから被検眼の角膜に対して流体を吹き付ける吹付機構と、
前記ノズルから前記角膜に前記流体が吹き付けられている間、前記角膜に対して光束を投影する投影光学系と、
前記角膜に前記流体が吹き付けられている間、前記角膜にて反射された前記光束の反射光を受光して、前記反射光の受光信号を出力する受光光学系と、
前記受光光学系から出力される前記受光信号に基づき、前記受光信号の信号強度が前記受光信号の立ち上がり途中の予め設定された設定値に達した場合に、前記ノズルから前記角膜への前記流体の吹き付けが開始されてから前記信号強度が前記設定値に達するまでの到達時間を測定する到達時間測定部と、
前記到達時間測定部の測定結果に基づき、前記吹付機構の駆動を停止させる停止タイミングを決定するタイミング決定部と、
予め定められた前記到達時間と前記停止タイミングとの第1相関関係を取得する第1相関関係取得部と、
を備え、
前記タイミング決定部が、前記到達時間測定部の測定結果と、前記第1相関関係取得部が取得した前記第1相関関係とに基づき、前記停止タイミングを決定する非接触式眼圧計。
【請求項4】
前記タイミング決定部が決定する前記停止タイミングが、前記受光信号のピークよりも前のタイミングである請求項1からのいずれか1項に記載の非接触式眼圧計。
【請求項5】
前記吹付機構が、シリンダと、前記シリンダの内部の前記流体を圧縮するピストンと、前記ピストンにより圧縮された前記シリンダの内部の前記流体を前記ノズルへ導く流体経路と、を有し、
前記流体経路に設けられた大気開放部であって且つ前記タイミング決定部が決定した前記停止タイミングに合わせて前記流体経路と大気とを連通させる大気開放部を備える請求項1からのいずれか1項に記載の非接触式眼圧計。
【請求項6】
前記角膜への前記流体の吹き付けが開始されてから予め定めた閾値時間が経過しても前記到達時間測定部が前記到達時間を測定することができない場合に、前記タイミング決定部が、前記停止タイミングとして即時停止を決定する請求項1からのいずれか1項に記載の非接触式眼圧計。
【請求項7】
前記角膜の角膜厚を取得する角膜厚取得部と、
前記角膜厚取得部が取得した前記角膜厚に基づき、前記ノズルから前記角膜に吹き付ける前記流体の量である吐出量を決定する吐出量決定部と、
前記吹付機構を制御して、前記吐出量が決定した前記吐出量の前記流体を前記ノズルから前記角膜に吹き付ける吹付制御部と、
を備える請求項1からのいずれか1項に記載の非接触式眼圧計。
【請求項8】
前記吐出量決定部が、前記角膜厚取得部により取得された前記角膜厚の増減に応じて、決定する前記吐出量を連続的又は段階的に増減させる請求項に記載の非接触式眼圧計。
【請求項9】
予め定められた前記角膜厚と前記吐出量との第2相関関係を取得する第2相関関係取得部を備え、
前記吐出量決定部が、前記角膜厚取得部が取得した前記角膜厚と、前記第2相関関係取得部が取得した前記第2相関関係とに基づき、前記吐出量を決定する請求項又は請求項に記載の非接触式眼圧計。
【請求項10】
ノズルから被検眼の角膜に対して流体を吹き付ける吹付機構と、
前記ノズルから前記角膜に前記流体が吹き付けられている間、前記角膜に対して光束を投影する投影光学系と、
前記角膜に前記流体が吹き付けられている間、前記角膜にて反射された前記光束の反射光を受光して、前記反射光の受光信号を出力する受光光学系と、
前記受光光学系から出力される前記受光信号に基づき、前記受光信号の信号強度が前記受光信号の立ち上がり途中の予め設定された設定値に達した場合に、前記ノズルから前記角膜への前記流体の吹き付けが開始されてから前記信号強度が前記設定値に達するまでの到達時間を測定する到達時間測定部と、
前記到達時間測定部の測定結果に基づき、前記吹付機構の駆動を停止させる停止タイミングを決定するタイミング決定部と、
前記角膜の角膜厚を取得する角膜厚取得部と、
前記角膜厚取得部が取得した前記角膜厚に基づき、前記ノズルから前記角膜に吹き付ける前記流体の量である吐出量を決定する吐出量決定部と、
前記吹付機構を制御して、前記吐出量が決定した前記吐出量の前記流体を前記ノズルから前記角膜に吹き付ける吹付制御部と、
予め定められた前記角膜厚と前記吐出量との第2相関関係を取得する第2相関関係取得部と、
を備え、
前記吐出量決定部が、前記角膜厚取得部が取得した前記角膜厚と、前記第2相関関係取得部が取得した前記第2相関関係とに基づき、前記吐出量を決定する非接触式眼圧計
【請求項11】
前記吹付機構が、シリンダと、前記シリンダの内部の前記流体を圧縮するピストンと、前記ピストンにより圧縮された前記シリンダの内部の前記流体を前記ノズルへ導く流体経路と、を有し、
前記吹付制御部が、前記シリンダ内での前記ピストンの移動距離及び移動速度の少なくともいずれか一方を制御する請求項から0のいずれか1項に記載の非接触式眼圧計。
【請求項12】
前記タイミング決定部が決定した前記停止タイミングで前記吹付機構の駆動を停止させる吹付制御部を備える請求項1から11のいずれか1項に記載の非接触式眼圧計。
【請求項13】
ノズルから被検眼の角膜に対して流体を吹き付ける吹付機構と、
前記ノズルから前記角膜に前記流体が吹き付けられている間、前記角膜に対して光束を投影する投影光学系と、
前記角膜に前記流体が吹き付けられている間、前記角膜にて反射された前記光束の反射光を受光して、前記反射光の受光信号を出力する受光光学系と、
を備える非接触式眼圧計の制御方法において、
前記受光光学系から出力される前記受光信号に基づき、前記受光信号の信号強度が前記受光信号の立ち上がり途中の予め設定された設定値に達した場合に、前記ノズルから前記角膜への前記流体の吹き付けが開始されてから前記信号強度が前記設定値に達するまでの到達時間を測定する到達時間測定ステップと、
前記到達時間測定ステップでの測定結果に基づき、前記吹付機構の駆動を停止させる停止タイミングを決定するタイミング決定ステップと、
を有し、
前記タイミング決定ステップでは、前記到達時間が予め定めた閾値よりも小さい場合に、前記停止タイミングとして即時停止を決定する非接触式眼圧計の制御方法。
【請求項14】
前記角膜の角膜厚を取得する角膜厚取得ステップと、
前記角膜厚取得ステップで取得した前記角膜厚に基づき、前記ノズルから前記角膜に吹き付ける前記流体の量である吐出量を決定する吐出量決定ステップと、
前記吹付機構を制御して、前記吐出量が決定した前記吐出量の前記流体を前記ノズルから前記角膜に吹き付ける吹付制御ステップと、
を有する請求項13に記載の非接触式眼圧計の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから被検眼の角膜に対して流体を吹き付ける非接触式眼圧計及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピストン及びシリンダを有する吹付機構を用いて、ノズルから被検眼の角膜に空気(流体)を吹き付けることで角膜を変形させてその変形状態を検出することで、角膜に接触することなく被検眼の眼圧値を測定する非接触式眼圧計が知られている(特許文献1参照)。この非接触式眼圧計は、ノズルから角膜への空気の吹き付けに合せて角膜に指標光を照射すると共に角膜にて反射された指標光の反射光の光量を検出し、角膜の変形状態が扁平状態(圧平状態)になった場合の反射光の光量と空気の圧力とに基づき被検眼の眼圧値を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-47036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の非接触式眼圧計では、角膜が扁平状態になるまでノズルから角膜に対して空気を吹き付ける必要があるので、角膜に大きな圧力がかかり、被検者に不快感を与えてしまう。このため、ノズルから角膜への空気の吹き付けにより被検者に与える不快感のさらなる軽減が求められており、その結果、吹付機構の駆動時間をより短くすることが可能な非接触式眼圧計が求められている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、吹付機構の駆動時間をより短くすることが可能な非接触式眼圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的を達成するための非接触式眼圧計は、ノズルから被検眼の角膜に対して流体を吹き付ける吹付機構と、ノズルから角膜に流体が吹き付けられている間、角膜に対して光束を投影する投影光学系と、角膜に流体が吹き付けられている間、角膜にて反射された光束の反射光を受光して、反射光の受光信号を出力する受光光学系と、受光光学系から出力される受光信号に基づき、受光信号の信号強度が受光信号の立ち上がり途中の予め設定された設定値に達した場合に、ノズルから角膜への流体の吹き付けが開始されてから信号強度が設定値に達するまでの到達時間を測定する到達時間測定部と、到達時間測定部の測定結果に基づき、吹付機構の駆動を停止させる停止タイミングを決定するタイミング決定部と、を備える。
【0007】
この非接触式眼圧計によれば、吹付機構の駆動時間を短くすることができるので、角膜への流体の吹き付けにより被検者に与える不快感を軽減することができる。
【0008】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、タイミング決定部が、到達時間が予め定めた閾値よりも小さい場合に、停止タイミングとして即時停止を決定する。これにより、到達時間が閾値よりも小さい場合には吹付機構の駆動時間をより短くすることができるので、角膜への流体の吹き付けにより被検者に与える不快感をより軽減することができる。
【0009】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、タイミング決定部が決定した停止タイミングで吹付機構の駆動を停止させる吹付制御部を備える。これにより、角膜への流体の吹き付けにより被検者に与える不快感をより軽減することができる。
【0010】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、予め定められた到達時間と停止タイミングとの第1相関関係を取得する第1相関関係取得部を備え、タイミング決定部が、到達時間測定部の測定結果と、第1相関関係取得部が取得した第1相関関係とに基づき、停止タイミングを決定する。これにより、停止タイミングの決定を簡単且つ迅速に行うことができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、タイミング決定部が決定する停止タイミングが、受光信号のピークよりも前のタイミングである。これにより、吹付機構の駆動時間を短くすることができるので、角膜への流体の吹き付けにより被検者に与える不快感を軽減することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、吹付機構が、シリンダと、シリンダの内部の流体を圧縮するピストンと、ピストンにより圧縮されたシリンダの内部の流体をノズルへ導く流体経路と、を有し、流体経路に設けられた大気開放部であって且つタイミング決定部が決定した停止タイミングに合わせて流体経路と大気とを連通させる大気開放部を備える。これにより、停止タイミングにノズルから角膜に噴射される流体の量を大幅に低減させることができるので、被検者に与える不快感をより軽減することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、角膜への流体の吹き付けが開始されてから予め定めた閾値時間が経過しても到達時間測定部が到達時間を測定することができない場合に、タイミング決定部が、停止タイミングとして即時停止を決定する。これにより、被検者が目を瞑っている或いは睫毛が被検眼にかかっている等のエラーが発生した場合に、ノズルから角膜への流体の吹き付けを即時停止させることができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、角膜の角膜厚を取得する角膜厚取得部と、角膜厚取得部が取得した角膜厚に基づき、ノズルから角膜に吹き付ける流体の量である吐出量を決定する吐出量決定部と、吹付機構を制御して、吐出量が決定した吐出量の流体をノズルから角膜に吹き付ける吹付制御部と、を備える。これにより、被検眼の角膜厚に応じて角膜に吹き付ける空気の吐出量(吐出圧)を適切に調整することができるので、被検者の負担をより減らすことができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、吐出量決定部が、角膜厚取得部により取得された角膜厚の増減に応じて、決定する吐出量を連続的又は段階的に増減させる。これにより、被検眼の角膜厚に応じて角膜に吹き付ける空気の吐出量(吐出圧)を適切に調整することができるので、被検者の負担をより減らすことができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、予め定められた角膜厚と吐出量との第2相関関係を取得する第2相関関係取得部を備え、吐出量決定部が、角膜厚取得部が取得した角膜厚と、第2相関関係取得部が取得した第2相関関係とに基づき、吐出量を決定する。
【0017】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、吹付機構が、シリンダと、シリンダの内部の流体を圧縮するピストンと、ピストンにより圧縮されたシリンダの内部の流体をノズルへ導く流体経路と、を有し、吹付制御部が、シリンダ内でのピストンの移動距離及び移動速度の少なくともいずれか一方を制御する。
【0018】
本発明の目的を達成するための非接触式眼圧計の制御方法は、ノズルから被検眼の角膜に対して流体を吹き付ける吹付機構と、ノズルから角膜に流体が吹き付けられている間、角膜に対して光束を投影する投影光学系と、角膜に流体が吹き付けられている間、角膜にて反射された光束の反射光を受光して、反射光の受光信号を出力する受光光学系と、を備える非接触式眼圧計の制御方法において、受光光学系から出力される受光信号に基づき、受光信号の信号強度が受光信号の立ち上がり途中の予め設定された設定値に達した場合に、ノズルから角膜への流体の吹き付けが開始されてから信号強度が設定値に達するまでの到達時間を測定する到達時間測定ステップと、到達時間測定ステップでの測定結果に基づき、吹付機構の駆動を停止させる停止タイミングを決定するタイミング決定ステップと、を有する。
【0019】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計の制御方法において、タイミング決定ステップでは、到達時間が予め定めた閾値よりも小さい場合に、停止タイミングとして即時停止を決定する。
【0020】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計の制御方法において、角膜の角膜厚を取得する角膜厚取得ステップと、角膜厚取得ステップで取得した角膜厚に基づき、ノズルから角膜に吹き付ける流体の量である吐出量を決定する吐出量決定ステップと、吹付機構を制御して、吐出量が決定した吐出量の流体をノズルから角膜に吹き付ける吹付制御ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、吹付機構の駆動時間をより短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の非接触式眼圧計の側面図である。
図2】測定ヘッド内の複数種類の光学系を上方(Y軸方向)側から見た上面概略図である。
図3】測定ヘッド内の複数種類の光学系を側方(X軸方向)側から見た側面概略図である。
図4】第1実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
図5】到達時間測定部による到達時間の測定を説明するための説明図である。
図6】関数の一例を示した説明図である。
図7】第1実施形態の非接触式眼圧計による被検眼の眼圧値の測定処理の流れを示すフローチャートである。
図8】到達時間に基づいた停止タイミングの決定を行わない比較例の圧平波形、吹付機構の駆動状態、角膜に吹き付けられる空気の圧力波形を示したグラフである。
図9】到達時間に基づいた停止タイミングの決定を行う本実施形態の圧平波形、吹付機構の駆動状態、角膜に吹き付けられる空気の圧力波形を示したグラフである。
図10】第2実施形態の非接触式眼圧計の吹付機構の概略図である。
図11】第2実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
図12】第2実施形態の非接触式眼圧計による被検眼の眼圧値の測定処理の流れ、特に弁開閉制御部による大気開放弁の開閉制御の流れを示すフローチャートである。
図13】第3実施形態の非接触式眼圧計のタイミング決定部による停止タイミングの決定を説明するための説明図である。
図14】第4実施形態の非接触式眼圧計の制御装置の機能ブロック図である。
図15】第4実施形態の関数の一例を示した説明図である。
図16】第4実施形態のデータテーブルの一例を示した説明図である。
図17】第4実施形態の非接触式眼圧計による被検眼の眼圧値の測定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の非接触式眼圧計10の側面図である。図1に示すように、非接触式眼圧計10は、被検眼Eの角膜Ec(図2参照)に向けて空気(本発明の流体に相当)を吹き付けて角膜Ecを変形(圧平)させながら、角膜Ecにて反射された指標光の反射光を受光することで、被検眼Eの眼圧値を測定する。
【0024】
なお、図中のX軸は被検者を基準とした左右方向(被検眼Eの眼幅方向)であり、Y軸方向は上下方向である。また、X軸方向及びY軸方向の双方に直交するZ軸方向は、非接触式眼圧計10の主光軸に平行な方向、すなわち、被検者に近づく前方向と被検者から遠ざかる後方向とに平行な前後方向(作動距離方向)である。
【0025】
非接触式眼圧計10は、ベース11と、顔支持部12と、駆動機構13と、測定ヘッド14(装置本体ともいう)と、表示部15と、制御装置16と、を備えている。
【0026】
ベース11上には、被検者側から検者側に向かって顔支持部12と駆動機構13とが設けられている。
【0027】
顔支持部12は、被検者の顎を受ける顎受け部12aと、被検者の額が当接する額当て部12bとを備え、非接触式眼圧計10による被検眼Eの眼圧測定時に被検者の顔を支持する。
【0028】
駆動機構13は、ベース11に対して測定ヘッド14をXYZ軸方向(左右、上下、前後の各方向)にそれぞれ移動自在に保持する。この駆動機構13は、図示は省略するが、測定ヘッド14をXYZ軸方向にそれぞれ移動させる公知のアクチュエータにより構成されており、測定ヘッド14をX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向にそれぞれ移動させる。これにより、被検眼Eに対して測定ヘッド14をXYZ軸方向に相対移動させることができる。その結果、後述の制御装置16の制御の下、駆動機構13を駆動することにより、被検眼Eに対する測定ヘッド14のXYZ軸方向のアライメント(オートアライメント)が可能になる。
【0029】
測定ヘッド14は、被検眼Eの眼圧測定に係る複数種類の光学系(後述の図2及び図3参照)と、制御装置16と、を備える。なお、制御装置16は、測定ヘッド14の外部(例えばベース11の内部)に設けられていてもよい。
【0030】
また、測定ヘッド14の被検者(被検眼E)に対向する側の前面には、後述のノズル21b(図2参照)及び前眼部窓ガラス21c(図3参照)を保持する凸状のガラス保持部14aが形成されている。
【0031】
表示部15は、測定ヘッド14の検者に対向する背面側に取り付けられている。この表示部15は、例えばタッチパネル式モニタが用いられる。表示部15は、後述の制御装置16の制御の下、被検眼Eの前眼部の観察像を表示する。また、表示部15は、被検眼Eの眼圧測定の結果を表示する。さらに、表示部15は、被検眼Eの眼圧測定に係る各種操作を行うための操作メニュー画面と、測定ヘッド14のXYZ軸方向の位置調整を行うための位置調整画面と、を表示する。
【0032】
制御装置16は、非接触式眼圧計10の動作を統括制御する。この制御装置16は、被検眼Eの観察像の取得及び表示と、被検眼Eに対する測定ヘッド14のXYZ軸方向のオートアライメントと、被検眼Eの角膜Ec(図2参照)への空気の吹き付けと、角膜Ecへの指標光の出射及び角膜Ecからの反射光の受光と、被検眼Eの眼圧値の演算と、を含む各種動作を制御する。
【0033】
[測定ヘッドの構成]
図2は、測定ヘッド14内の複数種類の光学系を上方(Y軸方向)側から見た上面概略図であり、図3は、測定ヘッド14内の複数種類の光学系を側方(X軸方向)側から見た側面概略図である。
【0034】
図2及び図3に示すように、測定ヘッド14は、前眼部観察光学系21と、XYアライメント指標投影光学系22と、固視標投影光学系23と、圧平検出光学系24と、Zアライメント指標投影光学系25と、Zアライメント検出光学系26と、を備える。
【0035】
前眼部観察光学系21は、被検眼Eの前眼部の観察、及び被検眼Eに対する測定ヘッド14のXY軸方向のXYアライメントに用いられる。この前眼部観察光学系21には、前眼部照明光源21a(図2参照)が設けられている。また、前眼部観察光学系21の光軸O1(非接触式眼圧計10の主光軸)上には、空気吹き付け用のノズル21bと、前眼部窓ガラス21c(図3参照)と、チャンバー窓ガラス21dと、ハーフミラー21eと、ハーフミラー21gと、対物レンズ21fと、撮像素子21iと、が設けられている。
【0036】
前眼部照明光源21aは、前眼部窓ガラス21cの周囲位置に複数個設けられており、被検眼Eの前眼部を直接照明する。
【0037】
ノズル21bは、後述する吹付機構34のチャンバー34a(図3参照)に接続しており、被検眼Eの前眼部(角膜Ec)に空気を吹き付ける。
【0038】
被検眼Eの前眼部の像(前眼部からの像光)は、ノズル21bの外側を通り、前眼部窓ガラス21c、後述のガラス板34b、チャンバー窓ガラス21d、ハーフミラー21g、及びハーフミラー21eを通過し、対物レンズ21fにより撮像素子21iの受光面上に結像される。
【0039】
撮像素子21iは、例えばCCD(Charge Coupled Device)型又はCMOS(complementary metal oxide semiconductor)型のイメージセンサが用いられる。この撮像素子21iは、その受光面に入射した前眼部の像を撮像して撮像信号を生成し、生成した撮像信号を制御装置16へ出力する。これにより、制御装置16の制御の下、撮像素子21iから出力された撮像信号に基づく被検眼Eの前眼部の観察像が表示部15に表示される。
【0040】
また、前眼部観察光学系21は、後述のXYアライメント指標投影光学系22により被検眼Eに投影されたXYアライメント指標光の角膜Ecによる反射光を、撮像素子21iの受光面へと導く。この反射光は、ノズル21b、チャンバー窓ガラス21d、ハーフミラー21g、及びハーフミラー21eを通過して、対物レンズ21fにより撮像素子21iの受光面上に結像される。これにより、撮像素子21iの受光面上には、測定ヘッド14と角膜EcとのXY軸方向の位置関係に応じた位置に輝点像が形成される。
【0041】
撮像素子21iは、その受光面上に形成された輝点像を撮像し、この輝点像の撮像信号を制御装置16へと出力する。これにより、制御装置16の制御の下、前眼部の観察像と、XYアライメント指標光の輝点像と、が表示部15に重畳表示される。なお、表示部15には、アライメント補助マークも表示される。
【0042】
XYアライメント指標投影光学系22は、XYアライメント指標光を被検眼Eの角膜Ecに正面から投影する。このXYアライメント指標光は、被検眼Eの前眼部に対する測定ヘッド14のXYアライメントに用いられる。また、XYアライメント指標光は、被検眼Eの眼圧値の測定にも用いられる。従って、XYアライメント指標投影光学系22は本発明の投影光学系に相当し、XYアライメント指標光は本発明の光束に相当し、角膜Ecで反射されたXYアライメント指標光の反射光は本発明の反射光に相当する。以下、角膜EcによるXYアライメント指標光の反射光を単に「XY指標反射光」と略す。
【0043】
XYアライメント指標投影光学系22は、XYアライメント用光源22aと、集光レンズ22bと、開口絞り22cと、ピンホール板22dと、ダイクロイックミラー22eと、コリメータレンズ22fと、を有する(図3参照)。なお、XYアライメント指標投影光学系22は、ハーフミラー21eを前眼部観察光学系21と共用している。
【0044】
XYアライメント用光源22aは赤外光を出射する。コリメータレンズ22fは、その焦点がピンホール板22dに一致するように、XYアライメント指標投影光学系22の光路上に配置されている。このXYアライメント指標投影光学系22では、XYアライメント用光源22aから出射された赤外光が、集光レンズ22bにより集束されつつ開口絞り22cを通過して、ピンホール板22dの穴部へと導かれる。
【0045】
ピンホール板22dの穴部を通過した赤外光は、ダイクロイックミラー22eにより反射されてコリメータレンズ22fへと導かれ、さらにコリメータレンズ22fで平行光とされた後、コリメータレンズ22fからハーフミラー21eへ出射される。この赤外光の平行光は、ハーフミラー21eで反射された後、前眼部観察光学系21の光軸O1に沿って進行する。これにより、赤外光の平行光は、ハーフミラー21g及びチャンバー窓ガラス21dを透過した後、ノズル21bの内部を通過することでXYアライメント指標光として被検眼Eに入射する。
【0046】
被検眼Eに入射したXYアライメント指標光は、図示は省略するが、角膜Ec表面で反射し輝点像を形成する。なお、開口絞り22cは、コリメータレンズ22fに関して角膜Ecの角膜頂点Epと共役な位置に設けられている。
【0047】
固視標投影光学系23は、被検眼Eに固視標を投影する。この固視標投影光学系23は、固視標用光源23aとピンホール板23bとを有する(図3参照)。また、固視標投影光学系23は、ダイクロイックミラー22e及びコリメータレンズ22fをXYアライメント指標投影光学系22と共用し、且つハーフミラー21eを前眼部観察光学系21と共用している。
【0048】
固視標用光源23aは、可視光を固視標光として出射する。この固視標光は、ピンホール板23bの穴部へと導かれ、ピンホール板23bの穴部及びダイクロイックミラー22eを透過した後、コリメータレンズ22fへ出射される。そして、固視標光は、コリメータレンズ22fにより略平行光とされてハーフミラー21eに向けて出射され、ハーフミラー21eで反射されることで前眼部観察光学系21の光軸O1に沿って進行する。これにより、固視標光は、ハーフミラー21g及びチャンバー窓ガラス21dを透過した後、ノズル21bの内部を通過して被検眼Eに至る。この固視標を被検者に固視目標として注視させることにより、被検者の視線を固定することができる。
【0049】
圧平検出光学系24(図3参照)は本発明の受光光学系に相当する。圧平検出光学系24は、XY指標反射光を受光して、このXY指標反射光の光量を示す受光信号(圧平信号、角膜変形信号ともいう)を出力する。圧平検出光学系24は、レンズ24aとピンホール板24bと受光センサ24cとを有すると共に、ハーフミラー21gを前眼部観察光学系21と共用している。
【0050】
レンズ24aは、角膜Ecの表面が平面とされた場合に、XY指標反射光を、ピンホール板24bの開口に集光させる。ピンホール板24bの開口は、レンズ24aの焦点位置に設けられている。
【0051】
受光センサ24cは、例えば受光したXY指標反射光の光量に応じた受光信号を出力するフォトダイオードである。この受光センサ24cは受光信号(圧平波形信号ともいう)を制御装置16へ出力する。
【0052】
XY指標反射光は、ノズル21bの内部を通り、チャンバー窓ガラス21dを透過してハーフミラー21gに至る。そして、XY指標反射光の一部は、ハーフミラー21gで反射された後、レンズ24aを経てピンホール板24bに入射する。
【0053】
圧平検出光学系24は、ノズル21bからの空気の吹き付けにより角膜Ecの表面が平らな扁平状態(圧平状態)になった場合に、圧平検出光学系24に進行してきたXY指標反射光の全体を、ピンホール板24bを通して受光センサ24cに到達させる。また、圧平検出光学系24は、角膜Ecが扁平状態以外の状態ではXY指標反射光をピンホール板24bで部分的に遮りつつ受光センサ24cに到達させる。従って、圧平検出光学系24から出力されるXY指標反射光の受光信号の信号強度は、角膜Ecの表面が凸状態から扁平状態に変化するのに従って次第に増加し、さらに扁平状態から凹状態に変化するのに従って次第に減少する。
【0054】
Zアライメント指標投影光学系25(図2参照)は、角膜Ecに対して斜め方向からZ軸方向のZアライメント用のZアライメント指標光を投影する。このZアライメント指標投影光学系25は、光軸O2上に沿って、Zアライメント用光源25aと、集光レンズ25bと、開口絞り25cと、ピンホール板25dと、コリメータレンズ25eと、を備える。
【0055】
Zアライメント用光源25aは、赤外光(例えば波長860nm)を出射する。開口絞り25cは、コリメータレンズ25eに関して角膜頂点Epと共役な位置に設けられている。コリメータレンズ25eは、ピンホール板25dの穴部に焦点を一致させるように配置されている。
【0056】
Zアライメント用光源25aから出射された赤外光は、集光レンズ25bにより集光されつつ開口絞り25cを通過してピンホール板25dへと進行する。そして、ピンホール板25dの穴部を通過した赤外光は、コリメータレンズ25eで平行光とされた後に、Zアライメント指標光として被検眼Eに入射して、角膜Ecで反射されることにより被検眼Eに輝点像を形成する。
【0057】
Zアライメント検出光学系26は、Zアライメント指標光の角膜Ecによる反射光(以下、Z指標反射光と略す)を受光して、測定ヘッド14と角膜EcとのZ軸方向の位置関係を検出する。このZアライメント検出光学系26は、光軸O3上に沿って、結像レンズ26aと、シリンドリカルレンズ26bと、受光センサ26cと、を有している。
【0058】
シリンドリカルレンズ26bは、Y軸方向にパワーを有するものが用いられる。受光センサ26cは、その受光面におけるZ指標反射光の受光位置を検出可能なセンサであり、例えばラインセンサ又はPSD(Position Sensitive Detector)が用いられる。
【0059】
Z指標反射光は、結像レンズ26aで集束した後にシリンドリカルレンズ26bへと進行し、このシリンドリカルレンズ26bによりY軸方向に集光されることで受光センサ26c上に輝点像を形成する。
【0060】
受光センサ26cは、XZ平面内においては結像レンズ26aに関して、Zアライメント指標投影光学系25により被検眼Eに形成された前述の輝点像と共役な位置関係にある。また、受光センサ26cは、YZ平面内においては結像レンズ26a及びシリンドリカルレンズ26bに関して、角膜頂点Epと共役な位置関係にある。すなわち、受光センサ26cは開口絞り25cと共役関係にあるので、Y軸方向に角膜Ecがずれたとしても角膜Ecの表面におけるZ指標反射光は効率良く受光センサ26cに入射する。そして、受光センサ26cは、シリンドリカルレンズ26bにより集光された輝点像の受光信号を制御装置16へと出力する。
【0061】
吹付機構34(図3参照)は、チャンバー34aと、シリンダ34dと、連通管34eと、ピストン34fと、ソレノイド34gと、を有する。
【0062】
チャンバー34aには、透明なガラス板34bを介してノズル21bが取り付けられている。また、チャンバー34a内には、ノズル21bと対向する位置にチャンバー窓ガラス21dが設けられている。さらに、チャンバー34a内には、圧力センサ34cが設けられている。この圧力センサ34cは、チャンバー34aの内部の圧力(内圧)を示す圧力検出信号を制御装置16へ出力する。
【0063】
シリンダ34dは、連通管34eを介してチャンバー34aに接続している。これにより、シリンダ34dの内部とチャンバー34aの内部とが連通管34eを介して連通する。また、シリンダ34dの内部にはピストン34fが移動自在に設けられている。これらシリンダ34d及びピストン34fにより空気の圧縮室が構成される。
【0064】
ソレノイド34gは、シリンダ34d内でピストン34fを移動させる公知のソレノイドアクチュエータである。このソレノイド34gは、制御装置16の制御下、ピストン34fを移動させてシリンダ34d内の空気を圧縮する。これにより、連通管34e及びチャンバー34aを介して、ノズル21bから被検眼Eの角膜Ecに向けて空気が吹き付けられる。ここで連通管34e及びチャンバー34aは、本発明の流体経路に相当する。
【0065】
なお、吹付機構34では、圧力センサ34cによりチャンバー34aの内圧を検出することにより、ノズル21bから角膜Ecに空気を吹き付けた際の空気の圧力を取得することができる。
【0066】
[第1実施形態の制御装置]
図4は、第1実施形態の制御装置16の機能ブロック図である。図4に示すように、制御装置16は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置16の各種機能は、1つのプロセッサにより実表されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実表されてもよい。
【0067】
制御装置16には、既述の表示部15、駆動機構13、各種光学系21~26、吹付機構34、及び圧力センサ34cの他に、操作部40と記憶部42とが接続されている。
【0068】
操作部40は、非接触式眼圧計10の電源のオンオフ操作、測定ヘッド14のアライメント実行操作、及び眼圧値の測定開始操作を含む非接触式眼圧計10の各種の操作の入力を受け付ける。この操作部40には、既述のタッチパネル式の表示部15の表示面(表示パネル)、及び測定ヘッド14に設けられたハードウェアキー(ボタン及びスイッチ等)が含まれる。
【0069】
記憶部42には、非接触式眼圧計10の制御プログラム及び被検眼Eの眼圧値の測定結果の他に、後述のタイミング決定部62による吹付機構34の駆動を停止させる停止タイミングΔt(図6参照)の決定に用いられる関数44が記憶されている。
【0070】
制御装置16は、記憶部42内の制御プログラムを読み出して実行することにより、観察制御部50、アライメント制御部52、固視制御部54、吹付制御部56、測定制御部58、到達時間測定部60、タイミング決定部62、及び眼圧値演算部64として機能する。なお、制御装置16の「~部」として説明するものは「~回路」、「~装置」、又は「~機器」であってもよい。すなわち、「~部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、及びハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで構成されていてもよい。
【0071】
観察制御部50は、例えば操作部40にて非接触式眼圧計10の電源のオン操作が入力された場合に作動する。この観察制御部50は、前眼部観察光学系21を制御して、前眼部照明光源21aの点灯と、撮像素子21iによる被検眼Eの前眼部の観察像(動画像)の撮像及び撮像信号の出力と、を実行させる。また、観察制御部50は、撮像素子21iから出力される撮像信号に基づき、表示部15に観察像を表示させる。
【0072】
アライメント制御部52は、例えば操作部40にて被検眼Eの眼圧の測定開始操作が入力された場合に作動する。なお、測定開始操作には、被検者(患者)に付されたバーコードの読み取り操作、及び患者情報の入力操作等も含まれる。
【0073】
アライメント制御部52は、前眼部観察光学系21及びXYアライメント指標投影光学系22を制御して、XYアライメント用光源22aの点灯と、撮像素子21iによる被検眼Eの前眼部像及び輝点像の撮像と、撮像素子21iによる撮像信号の出力と、を実行させる。そして、アライメント制御部52は、撮像素子21iから出力される撮像信号に基づき、被検眼Eと測定ヘッド14とのXY軸方向の位置関係を演算する。次いで、アライメント制御部52は、このXY軸方向の位置関係の演算結果に基づき、既述の駆動機構13を駆動して、被検眼Eに対する測定ヘッド14のXYアライメント(オートアライメント)を行う。
【0074】
また、アライメント制御部52は、Zアライメント指標投影光学系25及びZアライメント検出光学系26を制御して、Zアライメント用光源25aの点灯と、受光センサ26cによる輝点像の受光及び受光信号の出力と、を実行させる。そして、アライメント制御部52は、受光センサ26cから出力される受光信号に基づき、被検眼Eと測定ヘッド14とのZ軸方向の位置関係を演算する。次いで、アライメント制御部52は、このZ軸方向の位置関係の演算結果に基づき、既述の駆動機構13を駆動して、被検眼Eに対する測定ヘッド14のZアライメント(オートアライメント)を行う。
【0075】
なお、被検眼Eに対する測定ヘッド14のXYZアライメントとして、検者が操作部40に入力した位置調整操作に基づきアライメント制御部52が駆動機構13を駆動して行う手動のXYZアライメントを実行してもよい。
【0076】
固視制御部54は、例えば測定開始操作に応じて作動する。この固視制御部54は、固視標投影光学系23を制御して固視標用光源23aを点灯させることで、被検眼Eに対して固視標の光束を投影して被検者の視線を固定する。
【0077】
吹付制御部56は、例えば被検眼Eに対する測定ヘッド14のオートアライメントが完了した場合に作動する。この吹付制御部56は、吹付機構34のソレノイド34gを駆動して、シリンダ34d内でピストン34fを移動させる。これにより、ピストン34fによってチャンバー34a内の空気が圧縮されて、ノズル21bから角膜Ecに空気が吹き付けられる。
【0078】
また、吹付制御部56は、後述のタイミング決定部62が決定した停止タイミングΔt(図6参照)に基づき吹付機構34の駆動を停止させる。これにより、ノズル21bから角膜Ecに対する空気の吹き付けが停止される。
【0079】
測定制御部58は、吹付制御部56の作動前或いはその作動に合せて作動する。この測定制御部58は、少なくともノズル21bから角膜Ecに空気が吹き付けられている間、XYアライメント指標投影光学系22及び圧平検出光学系24を制御して、XYアライメント用光源22aの点灯と、受光センサ24cによるXY指標反射光の受光と、を実行させる。これにより、ノズル21bから角膜Ecに空気が吹き付けられている間、XYアライメント指標投影光学系22から角膜Ecに対してXYアライメント指標光が連続的に投影される。また同時に、受光センサ24cがXY指標反射光を連続的に受光して、このXY指標反射光の受光信号を連続的に到達時間測定部60及び眼圧値演算部64へそれぞれ出力する。
【0080】
図5は、到達時間測定部60による到達時間tの測定を説明するための説明図である。なお、図中のグラフの横軸は時間軸であり、縦軸は受光センサ24cから連続的に出力されるXY指標反射光の受光信号の波形である圧平波形Wの信号強度、すなわちXY指標反射光の光量を示す。
【0081】
図5及び既述の図4に示すように、到達時間測定部60は、測定制御部58の作動に合せて作動する。到達時間測定部60は、受光センサ24cから連続的に出力されるXY指標反射光の受光信号を連続的に取得、すなわちXY指標反射光の光量の時間変化を示す信号波形である圧平波形Wの信号強度を取得する。そして、到達時間測定部60は、ノズル21bによる角膜Ecへの空気の吹き付けが開始されてから圧平波形W(受光信号)の信号強度がその立ち上がり途中の予め定められた設定値SVに達するまでの到達時間tを測定する。なお、図中では到達時間tとしてt、t、tを例に挙げて示している。
【0082】
ここで圧平波形Wの信号強度が設定値SVに達するまでの到達時間tは被検眼Eの眼圧値に比例する。このため、到達時間tが短くなるほど、被検眼Eの眼圧値が低くなるため圧平波形WのピークPが早い時間に現れる。また逆に、到達時間tが長くなるほど、被検眼Eの眼圧値が高くなるため圧平波形WのピークPが遅い時間に現れる。従って、到達時間tに応じて、被検眼Eの眼圧値を精度よく測定可能な圧平波形Wが得られる最短の吹付機構34の駆動の停止タイミングΔt(図6参照)が変化する。
【0083】
そこで、到達時間tと吹付機構34の駆動の停止タイミングΔt(図6参照)との相関関係を示す関数44を予め求めておくことで、後述のタイミング決定部62が、到達時間tと関数44とに基づき、吹付機構34の駆動の停止タイミングΔtを決定可能である。
【0084】
図6は、本発明の第1相関関係に相当する関数44の一例を示した説明図である。関数44は、到達時間tと、吹付機構34の駆動の停止タイミングΔt(到達時間tからの吹付機構34の駆動時間)と、の連続的な相関関係を示す。この関数44は、下記の[数1]式に示すように、到達時間tが予め定めた閾値tよりも小さくなるか否かに応じて、2種類が用意されている。
【0085】
【数1】
【0086】
上記[数1]式に示すように、到達時間tが閾値tよりも小さい場合(t<t)には、被検眼Eの眼圧値が低いので、停止タイミングΔtが即時停止、すなわちΔt=0となるように関数44が設定されている。これにより、ノズル21bから角膜Ecへの空気の吹き付けを即時停止させることができる。
【0087】
また、到達時間tが閾値t以上となる場合(t≧t)、停止タイミングΔtを示す関数44は、例えば、上記[数1]式に示した二次多項式で表される。この場合には、到達時間tに応じて停止タイミングΔtが連続的に変化するので、到達時間tごとに適切な停止タイミングΔtを決定することができる。なお、設定値SV、閾値tc、及び二次多項式の係数a、b、cについては、予め実験及びシミュレーションを行うことで決定される。
【0088】
なお、本実施形態では、到達時間tが閾値t以上となる場合の関数44として二次多項式を例に挙げて説明したが、一次多項式或いは三次以上の多項式など各種関数を用いてよい。
【0089】
図6及び既述の図4に示すように、タイミング決定部62は、記憶部42から関数44を取得する。このため、タイミング決定部62は、本発明の第1相関関係取得部としても機能する。このタイミング決定部62は、到達時間測定部60が測定した到達時間tと、関数44とに基づき、吹付機構34の駆動の停止タイミングΔtを決定する。
【0090】
この際に、到達時間tは、圧平波形WがピークPに達するよりも前、すなわちピークPの重心位置或いは最大値に達するよりも前の時間(早い時間)である。このため、タイミング決定部62は、停止タイミングΔtとして、圧平波形Wの信号強度がピークPに達するよりも前のタイミングを決定する。これにより、吹付制御部56は、タイミング決定部62が決定した停止タイミングΔtに基づき、圧平波形Wの信号強度がピークPに達するよりも前に吹付機構34の駆動を停止させることができる(図9参照)。
【0091】
眼圧値演算部68は、受光センサ24cからのXY指標反射光の受光信号の入力に応じて作動し、吹付機構34の駆動停止後に被検眼Eの眼圧値を演算する。例えば、眼圧値演算部68は、XY指標反射光の受光信号に基づき圧平波形Wの信号強度のピークPの重心位置、例えばピークPの幅の中心位置或いはピークPの面積が半分となる位置を演算する。なお、ピークPの重心位置を演算する代わりにピークPの最大値を演算してもよい。そして、眼圧値演算部68は、ピークPの重心位置に対応する圧平波形W(受光信号)の信号強度(光量)及び圧力センサ34cの検出結果(空気の圧力)に基づき、公知の方法で被検眼Eの眼圧値を演算する。
【0092】
眼圧値演算部68は、被検眼Eの眼圧値の演算結果を、眼圧値の測定結果として記憶部42に記憶させると共に表示部15に表示させる。
【0093】
[第1実施形態の非接触式眼圧計の作用]
図7は、本発明の制御方法に係る第1実施形態の非接触式眼圧計10による被検眼Eの眼圧値の測定処理の流れを示すフローチャートである。
【0094】
図7に示すように、顔支持部12による被検者の顔の支持後、検者が測定開始操作を行うと(ステップS1)、固視制御部54が固視標投影光学系23を制御して被検眼Eに対して固視標の光束を投影する。また、アライメント制御部52が、前眼部観察光学系21、XYアライメント指標投影光学系22、Zアライメント指標投影光学系25及びZアライメント検出光学系26を制御して測定ヘッド14と被検眼Eとのアライメント検出を行う。次いで、アライメント制御部52が、このアライメント検出の結果に基づき、駆動機構13を駆動して、被検眼Eに対する測定ヘッド14のオートアライメントを開始する(ステップS2)。
【0095】
被検眼Eに対する測定ヘッド14のアライメントが完了すると、吹付制御部56が、吹付機構34の駆動を開始して、シリンダ34d内でピストン34fを移動させる。これにより、ピストン34fによりシリンダ34d内の空気が圧縮されることで、ノズル21bから角膜Ecへの空気の吹き付けが開始される(ステップS3)。
【0096】
また、ステップS3が実行されている間、測定制御部58が、XYアライメント指標投影光学系22及び圧平検出光学系24を制御して、XYアライメント指標投影光学系22から角膜Ecに対するXYアライメント指標光の投影と、受光センサ24cによるXY指標反射光の受光及び受光信号の出力と、を連続的に実行させる(ステップS4)。
【0097】
さらに、ステップS3,S4が実行されている間、到達時間測定部60が、受光センサ24cから出力される受光信号を繰り返し取得して、この受光信号に基づく圧平波形Wの信号強度が設定値SVに到達した否かを繰り返し判定する(ステップS5)。以下、到達時間測定部60により圧平波形Wの信号強度が設定値SVに到達したと判定されるまで、既述のステップS4からステップS5の処理が繰り返し実行される(ステップS5でNO)。
【0098】
到達時間測定部60は、圧平波形Wの信号強度が設定値SVに到達したと判定すると(ステップS5でYES)、既述の図5に示したように到達時間tの測定を実行し、その測定結果をタイミング決定部62へ出力する(ステップS6、本発明の到達時間測定ステップに相当)。
【0099】
到達時間tの測定結果の入力を受けたタイミング決定部62は、記憶部42内の関数44を参照する(ステップS7)。そして、タイミング決定部62は、到達時間tの測定結果と、関数44とに基づき、吹付機構34の駆動の停止タイミングΔtを決定する(ステップS8、本発明の停止タイミング決定ステップに相当)。
【0100】
この際に、到達時間tが閾値tよりも小さい場合には停止タイミングΔtとして即時停止が決定され、到達時間tが閾値t以上である場合には上記[数1]式の二次多項式に基づき停止タイミングΔtが決定される。そして、タイミング決定部62は、停止タイミングΔtの決定結果を吹付制御部56へ出力する。
【0101】
吹付制御部56は、タイミング決定部62から入力された停止タイミングΔtに基づき、停止タイミングΔtに到達した場合に、吹付機構34の駆動を停止、すなわちピストン34fの移動を停止させる(ステップS9,S10)。これにより、到達時間tが閾値tよりも小さい場合、すなわち被検眼Eの眼圧が低い場合には、停止タイミングΔtが即時停止となるため、圧平波形Wの信号強度が設定値SVに到達するのとほぼ同時に吹付機構34の駆動が停止する。これにより、吹付機構34の駆動時間をより短くすることができるので、被検者に与える不快感を軽減させることができる。
【0102】
一方、到達時間tが閾値t以上である場合には、圧平波形Wの信号強度が設定値SVに到達した後、停止タイミングΔtに相当する時間が経過した後で、吹付機構34の駆動が停止する。この停止タイミングΔtは、既述の通り、圧平波形Wの信号強度がピークPに達するよりも前のタイミングである。この場合にも吹付機構34の駆動時間を短くすることができるので、被検者に与える不快感を軽減させることができる。
【0103】
なお、吹付制御部56は、ピストン34fの移動の停止後、吹付機構34(ソレノイド34g)を駆動して、ピストン34fを初期位置に向けて移動させる。
【0104】
また、吹付機構34の駆動停止後、眼圧値演算部68は、受光センサ24cから出力されるXY指標反射光の受光信号に基づき圧平波形Wの信号強度のピークPの重心位置を演算し、この重心位置に対応する受光信号の信号強度及び圧力センサ34cの検出結果に基づき被検眼Eの眼圧値を演算する(ステップS11)。
【0105】
[第1実施形態の効果]
図8は、到達時間tに基づいた停止タイミングΔtの決定を行わない比較例の圧平波形Wの信号強度、吹付機構34の駆動状態Wd、圧力センサ34cにより検出される内圧の波形Wpを示したグラフである。図9は、到達時間tに基づいた停止タイミングΔtの決定を行う本実施形態の圧平波形Wの信号強度、吹付機構34の駆動状態Wd、圧力センサ34cにより検出される内圧の波形Wpを示したグラフである。
【0106】
図8に示すように比較例では、圧平波形Wの信号強度のピークPの検出後に吹付機構34(ソレノイド34g)の駆動を停止させているので、圧力センサ34cにより検出される内圧(波形Wpのカーブ、波形Wpの面積)が大きくなる。その結果、被検者に不快感を与えていた。
【0107】
これに対して図9に示すように、本実施形態では、圧平波形Wの信号強度が設定値SVに到達した到達時間tに基づき、吹付機構34の駆動の停止タイミングΔtを決定することで、圧平波形Wの信号強度がピークPに達するよりも前に吹付機構34の駆動を停止させられる。すなわち吹付機構34の駆動時間を短くすることができる。その結果、圧力センサ34cにより検出される内圧(波形Wpのカーブ、波形Wpの面積)を小さくすることができるので、被検者に与える不快感を軽減することができる。
【0108】
さらに本実施形態では、到達時間tが閾値t以下である場合には、吹付機構34の駆動を即時停止させるで、この場合には吹付機構34の駆動時間をより短くすることができる。その結果、被検者に与える不快感をより軽減することができる。
【0109】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態の非接触式眼圧計10の吹付機構34の概略図である。上記第1実施形態の非接触式眼圧計10では、タイミング決定部66が決定した停止タイミングΔtに合わせて吹付制御部56により吹付機構34の駆動を停止、すなわちピストン34fの移動を停止させている。この場合には、吹付制御部56が吹付機構34に対して停止指令を出力した後もピストン34fが慣性により移動してしまうため、停止タイミングΔt後も角膜Ecに対する空気(余剰エア)の吹き付けが継続するおそれがある。
【0110】
そこで図10に示すように、第2実施形態の非接触式眼圧計10では、停止タイミングΔtに合わせて本発明の流体経路に相当する連通管34e及びチャンバー34aの大気開放を行う。この第2実施形態の非接触式眼圧計10は、吹付機構34が大気開放弁34h(大気開放バルブともいう)を備えている点を除けば上記第1実施形態の非接触式眼圧計10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0111】
大気開放弁34hは、本発明の大気開放部に相当するものであり、連通管34eに設けられている。この大気開放弁34hは、制御装置16の制御の下、開閉が切り替えられる。大気開放弁34hを開いた場合には連通管34eの内部と大気とが連通する。これにより、大気開放弁34hを介して連通管34e及びチャンバー34aの内部の空気(圧縮空気)が外部に排出される。また、大気開放弁34hを閉じた場合には連通管34eの内部と大気との連通が遮断される。これにより、連通管34e及びチャンバー34aの内部の空気をノズル21bのみから噴出させることができる。
【0112】
図11は、第2実施形態の制御装置16の機能ブロック図である。図11に示すように、第2実施形態の制御装置16は、既述の図4に示した第1実施形態の各部の他に、弁開閉制御部70として機能する点を除けば第1実施形態の制御装置16と基本的に同じ構成である。弁開閉制御部70は、後述の図12に示すように大気開放弁34hの開閉を制御する。
【0113】
図12は、第2実施形態の非接触式眼圧計10による被検眼Eの眼圧値の測定処理の流れ、特に弁開閉制御部70による大気開放弁34hの開閉制御の流れを示すフローチャートである。図12に示すように、ステップS1からステップS9までは、既述の図7に示した第1実施形態と基本的に同じであるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0114】
吹付制御部56は、タイミング決定部66が決定した停止タイミングΔtに到達した場合に、吹付機構34(ソレノイド34g)の駆動を停止させる。既述の通り、ソレノイド34gの駆動停止後もピストン34fは慣性で移動するため、この駆動停止後にピストン34fの移動速度が次第に減速し(ステップS10A)、その後にピストン34fが停止する(ステップS10B)。
【0115】
この際に、弁開閉制御部70は、タイミング決定部66が決定した吹付機構34の駆動の停止タイミングΔtに合わせて大気開放弁34hを開く(ステップS10α)。これにより、吹付機構34の駆動停止と同時に大気開放弁34hを介して連通管34e及びチャンバー34aの内部の空気が外部に排出されて、チャンバー34a内の圧力が急激に減圧される。その結果、吹付機構34の駆動停止後(停止タイミングΔt後)にノズル21bから角膜Ecに噴射される空気の量を大幅に低減させることができる。
【0116】
吹付制御部56は、ピストン34fの停止後にソレノイド34gを駆動してピストン34fを初期位置に向けて移動させる戻り動作を実行し(ステップS10C)、このピストン34fを初期位置で停止させる(ステップS10D)。
【0117】
一方、弁開閉制御部70は、ピストン34fが初期位置に戻るまでの間、例えばソレノイド34gの駆動が継続している間は大気開放弁34hを開いた状態で維持する(ステップS10β)。そして、弁開閉制御部70は、ソレノイド34gの駆動が停止してピストン34fが初期位置で停止した場合には、大気開放弁34hを閉じる(ステップS10γ)。これにより、吹付機構34によるノズル21bからの空気の噴射が可能となる。
【0118】
以下、上記第1実施形態と同様に、眼圧値演算部68による被検眼Eの眼圧値の演算と(ステップS11)、記憶部42による眼圧値の記憶と、表示部15による眼圧値の表示と、が実行される。
【0119】
[第2実施形態の効果]
以上のように第2実施形態では、吹付機構34の駆動の停止タイミングΔtに合わせて大気開放弁34hを開いて、連通管34e及びチャンバー34aの大気開放を実行することで、停止タイミングΔt後にノズル21bから角膜Ecに噴射される空気の量を大幅に低減させることができる。その結果、被検者に与える不快感をより軽減させることができる。
【0120】
[第3実施形態]
図13は、第3実施形態の非接触式眼圧計10のタイミング決定部66による停止タイミングΔtの決定を説明するための説明図である。上記各実施形態の非接触式眼圧計10のタイミング決定部66は、到達時間測定部60が測定した到達時間t、すなわち圧平波形Wの信号強度が設定値SVに達するまでの到達時間tに基づき停止タイミングΔtを決定している。この際に、被検者が目(被検眼E)を瞑っていたり、或いは被検眼Eに睫毛がかかっていたりするようなエラーが発生している場合には、時間が経過しても圧平波形Wの信号強度が設定値SVに到達しないため、タイミング決定部66が停止タイミングΔtを決定できない。その結果、ノズル21bから角膜Ecへの空気の吹き付けが停止されない。そこで、第3実施形態では、上述のエラーが発生している場合には、ノズル21bから角膜Ecへの空気の吹き付けを即時停止させる。
【0121】
なお、第3実施形態の非接触式眼圧計10は、タイミング決定部66による停止タイミングΔtの決定方法が一部異なる点を除けば、上記各実施形態と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0122】
図13に示すように、第3実施形態のタイミング決定部66は、角膜Ecへの空気の吹き付けが開始されてから予め定めた閾値時間tsが経過しても到達時間測定部60が到達時間tを測定できない場合、すなわち圧平波形Wsの信号強度が閾値時間ts内に設定値SVに到達しない場合、停止タイミングΔtとして即時停止を決定する。これにより、エラーが発生している場合には、ノズル21bから角膜Ecへの空気の吹き付けを即時停止させることができる。その結果、被検者に与える不快感をより軽減することができる。
【0123】
[第4実施形態]
図14は、第4実施形態の非接触式眼圧計10の制御装置16の機能ブロック図である。上記各実施形態では圧平波形Wの信号強度に基づき吹付機構34の駆動の停止タイミングΔtを制御しているが、第4実施形態では、被検眼Eの角膜Ecの角膜厚に基づき吹付機構34よってノズル21bから角膜Ecに吹き付けられる空気の量である吐出量を制御する。
【0124】
なお、第4実施形態の非接触式眼圧計10は、制御装置16がさらに角膜厚検出部80及び吐出量決定部82として機能する点と、記憶部42内にさらに関数84及びデータテーブル86が記憶されている点と、吹付制御部56の機能が一部異なる点と、を除けば上記各実施形態の非接触式眼圧計10と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0125】
角膜厚検出部80は、Zアライメント指標投影光学系25及びZアライメント検出光学系26と共に本発明の角膜厚取得部として機能し、ノズル21bから角膜Ecへの空気の吹き付け開始前(例えばアライメント検出時)に作動する。この角膜厚検出部80は、Zアライメント検出光学系26の受光センサ26cによるZ指標反射光の受光結果から角膜Ecの表裏面でそれぞれ反射されたZ指標反射光のピーク位置を検出し、両ピーク位置の検出結果に基づき角膜Ecの角膜厚を検出する。角膜厚の具体的な検出方法は公知技術(例えば特許第4397684号公報参照)であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0126】
なお、第4実施形態では非接触式眼圧計10により被検眼Eの角膜厚を測定(検出)しているが、例えば過去の診察で測定された角膜Ecの角膜厚のデータを、医療用のサーバ或いはデータベースから取得してもよい。また、被検眼Eの角膜Ecの角膜厚の取得を行う代わりに、被検眼Eの角膜厚を示す情報(例えば被検者の年齢等のような角膜厚を推定可能な情報)を取得して、この情報に基づいて被検眼Eの角膜厚を推定してもよい。
【0127】
吐出量決定部82は、角膜厚検出部80による被検眼Eの角膜厚の検出結果に基づき、ノズル21bから角膜Ecに吹き付ける空気の吐出量を決定する。この吐出量決定部82は、被検眼Eの角膜厚が薄くなるほど吐出量が減少し、逆に被検眼Eの角膜厚が厚くなるほど吐出量が増加するように、吐出量の決定を行う。具体的には吐出量決定部82は、記憶部42内の関数84及びデータテーブル86(本発明の第2相関関係に相当)のいずれか一方を取得して参照することで、吐出量の決定を行う。このため、吐出量決定部82は、本発明の第2相関関係取得部としても機能する。
【0128】
図15は、第4実施形態の関数84の一例を示した説明図である。図16は、第4実施形態のデータテーブル86の一例を示した説明図である。図15に示すように、関数84は、角膜厚(例えば400μm~800μm)と吐出量との連続的な相関関係を示す。従って、吐出量決定部82は、関数84を参照した場合には、角膜厚検出部80が検出した角膜厚の増減に応じて、決定する吐出量を連続的に増減させる。
【0129】
一方、図16に示すように、データテーブル86は、角膜厚(例えば400μm~800μm)を100μmごとのグループに区切って、各グループと吐出量との相関関係を示したものである。従って、吐出量決定部82は、データテーブル86を参照した場合には、角膜厚検出部80が検出した角膜厚の増減に応じて、決定する吐出量を段階的に増減させる。
【0130】
これら関数84及びデータテーブル86は、予め実験及びシミュレーションを行うことで決定される。なお、本実施形態では、角膜厚の想定範囲を400μm~800μmとしているが、この想定範囲は適宜変更してもよい。また、データテーブル86では、角膜厚を100μmごとのグループに区切っているが、任意の幅ごとのグループに区切ってもよい。さらに本実施形態では、吐出量決定部82が関数84及びデータテーブル86を参照して吐出量を決定しているが、角膜厚と吐出量との相関関係を示すものであればその形式は特に限定はされない。
【0131】
このように吐出量決定部82は、角膜厚検出部80の検出結果に基づき、関数84又はデータテーブル86を参照して吐出量を決定した後、この吐出量の決定結果を吹付制御部56へ出力する。
【0132】
第4実施形態の吹付制御部56は、吐出量決定部82の決定結果に基づき吹付機構34を制御して、吐出量決定部82が決定した吐出量の空気をノズル21bから角膜Ecに吹き付ける。例えばシリンダ34d内でのピストン34fの移動距離の増減に応じてノズル21bから角膜Ecに吹き付けられる空気の吐出量が増減するので、吹付制御部56は、シリンダ34d内でのピストン34fの移動距離を調整することで、吐出量決定部82が決定した吐出量でノズル21bから角膜Ecへ空気を吹き付ける。
【0133】
なお、ノズル21bから角膜Ecに吹き付けられる空気の吐出量が空気の吐出圧(圧力センサ34cの検出結果)を指す場合、この吐出圧はシリンダ34d内でのピストン34fの移動速度の増減に応じて増減する。このため、吹付制御部56は、圧力センサ34cの検出結果に基づきピストン34fの移動速度を調整することで、吐出量決定部82が決定した吐出量でノズル21bから角膜Ecに空気を吹き付ける。
【0134】
図17は、第4実施形態の非接触式眼圧計10による被検眼Eの眼圧値の測定処理の流れを示すフローチャートである。なお、ステップS1からステップS2までの処理は、図7に示した第1実施形態或いは図12に示した第2実施形態と基本的に同じであるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0135】
ステップS2のオートアライメントの実行中に、角膜厚検出部80が、Zアライメント検出光学系26(受光センサ26c)によるZ指標反射光の受光結果に基づき、被検眼Eの角膜厚を検出する。これにより、ノズル21bからの角膜Ecへの空気の吹き付け前に、被検眼Eの角膜厚が取得される(ステップS2A、本発明の角膜厚取得ステップに相当)。そして、角膜厚検出部80は、被検眼Eの角膜Ecの角膜厚の検出結果を吐出量決定部82へ出力する。
【0136】
角膜厚検出部80からの角膜厚の検出結果の入力を受けた吐出量決定部82は、この角膜厚の検出結果に基づき、記憶部42内から関数84又はデータテーブル86を取得して参照することにより、吐出量の決定を行う共にこの吐出量の決定結果を吹付制御部56へ出力する。(ステップS2B、本発明の吐出量決定ステップに相当)。これにより、被検眼Eの角膜厚に応じて吐出量を連続的又は段階的に増減させることができる。このため、被検眼Eの角膜厚の薄い場合には、ノズル21bから角膜Ecに対して余分な空気が吹き付けられることが防止されるので、被検者の負担をより減らすことができる。また逆に被検眼Eの角膜厚が厚い場合には、眼圧測定に十分にたる吐出量の空気を角膜Ecに吹き付けられるので、測定エラーによる測定回数の増加が抑えられ、その結果として被検者の負担をより減らすことができる。
【0137】
吹付制御部56は、吐出量決定部82から入力された吐出量の決定結果に基づき、吹付機構34の駆動(ピストン34fの移動距離或いは移動速度など)を制御して、この吐出量の空気をノズル21bから角膜Ecに吹き付ける(ステップS3、本発明の吹付制御ステップに相当)。なお、ステップS4以降の処理は、図7に示した第1実施形態或いは図12に示した第2実施形態と基本的に同じであるので具体的な説明は省略する。
【0138】
以上のように第4実施形態では、被検眼Eの角膜厚に応じてノズル21bから角膜Ecに吹き付ける空気の吐出量(吐出圧)を適切に調整することができるので、被検者の負担をより減らすことができる。
【0139】
[その他]
上記各実施形態では、被検眼Eの角膜Ecに向けて空気を吹き付けているが、空気以外の各種流体を吹き付けてもよい。
【0140】
上記第2実施形態では、大気開放弁34hを連通管34eに設けているが、大気開放弁34hをチャンバー34aに設けてもよい。この場合にも大気開放弁34hを開くことで、この大気開放弁34hを介して連通管34e及びチャンバー34aの内部の空気を外部に排出させることができる。
【0141】
上記第2実施形態では、大気開放弁34hにより連通管34e及びチャンバー34aの大気開放を行っているが、大気開放弁34h以外の公知の各種大気開放部を用いて連通管34e及びチャンバー34aの大気開放を行ってもよい。
【0142】
上記各実施形態では、関数44が非接触式眼圧計10内の記憶部42に記憶されているが、この関数44が必ずしも非接触式眼圧計10の内部に記憶されている必要はなく、インターネット上のサーバ或いはメモリカード等の外部記憶部に記憶されていてもよい。この場合には、タイミング決定部62が外部記憶部から関数44を取得する。
【0143】
上記各実施形態では到達時間tと停止タイミングΔtとの相関関係を示す情報として関数44を例に挙げて説明したが、この相関関係(特に連続的な相関関係)を示す情報或いはデータであれば特に限定はされない。
【0144】
上記各実施形態では、シリンダ34d及びピストン34fを有する吹付機構34を用いてノズル21bから角膜Ecに対して空気の吹き付けを行っているが、他の空気圧縮機構を有する吹付機構34を用いる場合にも本発明を適用可能である。
【0145】
非接触式眼圧計10の制御装置16以外の構成については、図1から図3に示したものには特に限定されず、公知の非接触式眼圧計10又はその複合機で採用されている構成を適宜用いてもよい。
【符号の説明】
【0146】
10 非接触式眼圧計
11 ベース
12 顔支持部
12a 顎受け部
12b 額当て部
13 駆動機構
14 測定ヘッド
14a ガラス保持部
15 表示部
16 制御装置
21 前眼部観察光学系
21a 前眼部照明光源
21b ノズル
21c 前眼部窓ガラス
21d チャンバー窓ガラス
21e ハーフミラー
21f 対物レンズ
21g ハーフミラー
21i 撮像素子
22 XYアライメント指標投影光学系
22a XYアライメント用光源
22b 集光レンズ
22c 開口絞り
22d ピンホール板
22e ダイクロイックミラー
22f コリメータレンズ
23 固視標投影光学系
23a 固視標用光源
23b ピンホール板
24 圧平検出光学系
24a レンズ
24b ピンホール板
24c 受光センサ
25 Zアライメント指標投影光学系
25a Zアライメント用光源
25b 集光レンズ
25c 開口絞り
25d ピンホール板
25e コリメータレンズ
26 Zアライメント検出光学系
26a 結像レンズ
26b シリンドリカルレンズ
26c 受光センサ
34 吹付機構
34a チャンバー
34b ガラス板
34c 圧力センサ
34d シリンダ
34e 連通管
34f ピストン
34g ソレノイド
34h 大気開放弁
40 操作部
42 記憶部
44 関数
50 観察制御部
52 アライメント制御部
54 固視制御部
56 吹付制御部
58 測定制御部
60 到達時間測定部
62 タイミング決定部
64 眼圧値演算部
66 タイミング決定部
68 眼圧値演算部
70 弁開閉制御部
80 角膜厚検出部
82 吐出量決定部
84 関数
86 テータテーブル
E 被検眼
Ec 角膜
Ep 角膜頂点
O1 光軸
O2 光軸
O3 光軸
P ピーク
SV 設定値
W 圧平波形
Wd 駆動状態
Wp 圧力波形
t 到達時間
閾値
Δt 停止タイミング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17