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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】車体情報収集システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20241115BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20241115BHJP
   G07C 5/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
E02F9/26 A
H04N7/18 U
H04N7/18 J
G07C5/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021059058
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022155699
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 理沙
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 繁則
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雅嗣
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053537(JP,A)
【文献】特開2021-022179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
H04N 7/18
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機により駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される作動油によって動作するフロント装置とを備えた建設機械の車体操作に関する情報及び前記車体操作を実現するための車体状態に関する情報のうち少なくとも一方を検出する情報検出装置と、
前記建設機械の周囲の映像を撮像するカメラと、
前記情報検出装置で検出した情報及び前記カメラで撮像した映像を記録する記録装置と、
制御装置と、
を備え、
前記情報検出装置は、前記車体操作に関する情報を検出するセンサとして、操作によって生じた前記フロント装置を含む前記建設機械の動作を検出するセンサを有し、前記車体状態に関する情報を検出するセンサとして、前記車体操作を実現するための前記原動機又は前記油圧ポンプの状態を検出するセンサを有し、
前記制御装置は、前記情報検出装置で検出した情報に基づいて車体操作及び車体状態のうち少なくとも一方の変化を検出し、変化を検出した場合に、該変化が検出された時刻前後の所定時間幅における前記情報検出装置で検出した情報及び前記カメラで撮像した映像を抽出し前記記録装置に記録させることを特徴とする車体情報収集システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記情報検出装置で検出した情報を予め設定された閾値と比較することにより、車体操作及び車体状態のうち少なくとも一方の変化を検出し、
前記閾値は、車体操作及び車体状態に関わる部品毎に、起動段階、動作段階及び停止段階に分けてそれぞれ設定されている請求項1に記載の車体情報収集システム。
【請求項3】
前記建設機械と通信可能に構成されたサーバ装置を更に備え、
前記制御装置は、前記車体操作及び前記車体状態のうち少なくとも一方の前記変化が検出された時刻前後の所定時間幅における前記情報検出装置で検出した情報及び前記カメラで撮像した映像を前記サーバ装置に送信する請求項1又は2に記載の車体情報収集システム。
【請求項4】
前記サーバ装置に通信可能に構成された端末装置を更に備え、
前記サーバ装置は、前記車体操作及び前記車体状態のうち少なくとも一方の前記変化が検出された時刻前後の所定時間幅における前記情報検出装置で検出した情報及び前記カメラで撮像した映像を前記端末装置に送信し、前記端末装置に表示させる請求項3に記載の車体情報収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体情報収集システムに関し、特に建設機械の車体情報収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の分野では、事故原因を調査する目的として、車体の前後にそれぞれ取り付けられたカメラで撮像した映像を記録するドライブレコーダが用いられている。事故が発生した場合は、ドライブレコーダに記録された映像を振り返ることで、事故発生時の状況を把握し、発生原因の究明に役立つ。最近では、建設機械の分野においても、事故やヒヤリハットといった危険事象の発生原因を調査するために、ドライブレコーダのような記録装置を搭載するニーズが高まっている。
【0003】
例えば特許文献1には、建設機械の旋回体に取り付けられてそれぞれ異なる方向を撮像する複数のカメラと、カメラが撮像した動画を記録する記録装置と、複数のカメラから建設機械の動作に応じたカメラを選択するカメラ選択装置と、カメラ選択装置で選択されたカメラで撮像した動画を記録装置に記録する制御装置とを備えた技術が開示されている。このような技術によれば、建設機械の動作に応じたカメラが選択されるので、全てのカメラの動画を記録する場合と比べて記録装置容量への圧迫を抑制できるとともに、事故発生時の建設機械の周囲の状況を動画で容易に把握できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-53537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術では、事故が発生した場合、その原因が建設機械の車体操作によるものか、建設機械の車体状態によるものか、又は周囲の状況によるものかを特定し難いため、危険事象の発生原因を正確に把握できない問題があった。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明は、危険事象の発生原因を正確に把握できる車体情報収集システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車体情報収集システムは、建設機械の車体操作に関する情報及び車体状態に関する情報のうち少なくとも一方を検出する情報検出装置と、前記建設機械の周囲の映像を撮像するカメラと、前記情報検出装置で検出した情報及び前記カメラで撮像した映像を記録する記録装置と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記情報検出装置で検出した情報に基づいて車体操作及び車体状態のうち少なくとも一方の変化を検出し、変化を検出した場合に、該変化が検出された時刻前後の所定時間幅における前記情報検出装置で検出した情報及び前記カメラで撮像した映像を抽出し前記記録装置に記録させることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る車体情報収集システムでは、制御装置は、情報検出装置で検出した情報に基づいて車体操作及び車体状態のうち少なくとも一方の変化を検出し、変化を検出した場合に、該変化が検出された時刻前後の所定時間幅における情報検出装置で検出した情報及びカメラで撮像した映像を抽出し前記記録装置に記録させる。このように変化が検出された時刻前後の所定時間幅の映像に加えて、該変化が検出された時刻前後の所定時間幅における車体操作の情報及び車体状態の情報の少なくとも一方も記録されるので、映像及び検出情報の双方を用いて振り返ることにより、従来のように映像だけを用いて振り返る場合と比べて危険事象の発生原因を正確に把握することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、危険事象の発生原因を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る車体情報収集システムを示す概略構成図である。
図2】実施形態に係る車体情報収集システムを示すブロック図である。
図3】旋回操作レバーの操作入力量の変化を示す一例である。
図4】建設機械の姿勢の変化を示す一例である。
図5】建設機械の姿勢変化を説明する図である。
図6】記録装置におけるデータ記録の一例を示す図である。
図7】端末装置に表示される内容を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る車体情報収集システムの実施形態を説明する。図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、重複説明は省略する。
【0012】
図1は実施形態に係る車体情報収集システムを示す概略構成図であり、図2は実施形態に係る車体情報収集システムを示すブロック図である。本実施形態の車体情報収集システム1は、建設機械10と、該建設機械10と通信可能に構成されたサーバ装置20と、サーバ装置20と通信可能に構成された端末装置30とを備えている。
【0013】
建設機械10としては、油圧ショベル、クレーン、ホイールローダ、ブルドーザ、ダンプトラックなどが挙げられるが、ここでは油圧ショベルの例を挙げて説明する。建設機械10は、左右一対のクローラ(履帯)を有する下部走行体11と、下部走行体11の上部に旋回可能に設けられる上部旋回体12と、上部旋回体12に上下方向に回動可能に設けられるフロント装置13とを備えている。
【0014】
下部走行体11、上部旋回体12及びフロント装置13は、図示しないメイン油圧ポンプから送られた作動油によってそれぞれ独立して動作する。メイン油圧ポンプは、原動機としてのエンジン(図示せず)によって駆動される。
【0015】
下部走行体11には、左右一対の走行油圧モータ111が配置されている。これらの走行油圧モータ111を駆動すると、左右のクローラがそれぞれ駆動される。これによって、下部走行体11は前進又は後進することができる。
【0016】
上部旋回体12は、旋回装置121を軸にして下部走行体11と上下に接続されている。旋回装置121の旋回油圧モータ(不図示)を駆動すると、上部旋回体12は下部走行体11に対して旋回する。上部旋回体12は、運転室122及び機械室123を有する。運転室122は、上部旋回体12の左側部に設けられている。機械室123は、運転室122の後方に設けられている。機械室123の内部には、上述のメイン油圧ポンプ及びエンジン等が配置されている。
【0017】
フロント装置13は、上下方向に回動可能に上部旋回体12に取り付けられている。このフロント装置13は、ブーム131、アーム132、バケット133、及びこれらをそれぞれ駆動するシリンダ(ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ)を有する。各シリンダは、油圧アクチュエータからなり、メイン油圧ポンプから送られる作動油によって伸縮する。
【0018】
また、建設機械10は、4つのカメラ(前方カメラ14a、後方カメラ14b、左方カメラ14c、及び右方カメラ14d)と、2つのGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ15a、15bと、通信装置16と、記録装置17と、情報検出装置18と、制御装置19とを更に備えている。
【0019】
前方カメラ14aは、例えば運転室122のフロントガラスの外側に取り付けられ、建設機械10の前方の映像を撮像し、撮像した映像を記録装置17に出力する。後方カメラ14bは、例えば機械室123の後部に取り付けられ、建設機械10の後方の映像を撮像し、撮像した映像を記録装置17に出力する。左方カメラ14cは、例えば上部旋回体12の左側部に取り付けられ、建設機械10の左方の映像を撮像し、撮像した映像を記録装置17に出力する。右方カメラ14dは、例えば上部旋回体12の右側部に取り付けられ、建設機械10の右方の映像を撮像し、撮像した映像を記録装置17に出力する。以下では、これらのカメラをまとめてカメラ14と称する場合がある。
【0020】
GNSSアンテナ15a、15bは、地球上空に位置する複数の測位衛星(図示しない)からの信号(言い換えれば、電波)を受信し、受信した信号に基づいて建設機械10の位置情報(例えば緯度、経度、標高)を取得する。GNSSアンテナ15a、15bにより取得された位置情報は記録装置17及び制御装置19にそれぞれ出力される。
【0021】
通信装置16は、例えば無線基地局21を介してサーバ装置20と通信するための無線機である。
【0022】
情報検出装置18は、建設機械10に取り付けられ、車体操作に関する情報及び車体状態に関する情報を検出するためのセンサ類である。ここで、まず「車体操作」及び「車体状態」を説明する。
【0023】
本実施形態において、下部走行体11、上部旋回体12及びフロント装置13は、建設機械10の車体を構成する。従って、「車体操作」は、オペレータの操作又は遠隔操作によって生じた下部走行体11、上部旋回体12及びフロント装置13の動作である。一方、「車体状態」は、車体操作を実現するためのエンジン、メイン油圧ポンプ及びパイロット油圧ポンプ等の状態、シートベルト着脱状態を含むものである。エンジンの状態としては、例えばエンジンのON/OFFの切り替わりの状態、エンジン回転数の切り替わりの状態等が挙げられる。
【0024】
そして、車体操作に関する情報を検出するセンサ類としては、上述のGNSSアンテナ15a、15bのほかに、上部旋回体12の角速度及び加速度を検出する車体IMU(Inertial Measurement Unit、慣性計測装置)、ブーム131の姿勢を検出するブームIMU、アーム132の姿勢を検出するアームIMU、バケット133の姿勢を検出するバケットIMU、上部旋回体12と下部走行体11との間の旋回角度を検出する旋回角センサ、各操作レバーの操作入力量を検出するセンサ、各シリンダに流れる油量を検出するセンサ、各油圧モータに流れる油量を検出するセンサ等が挙げられる。
【0025】
一方、車体状態に関する情報を検出するセンサ類としては、例えば、エンジン回転数を検出するセンサ、作動油の温度を検出するセンサ、パイロット油の圧力を検出するセンサ、各シリンダの負荷(圧力)を検出するセンサ等が挙げられる。情報検出装置18は、各センサ類で検出した情報を記録装置17及び制御装置19にそれぞれ出力する。
【0026】
記録装置17は、例えば不揮発性メモリからなり、常時記録保管部171及びイベント記録保管部172を有する。常時記録保管部171は、前方カメラ14a、後方カメラ14b、左方カメラ14c及び右方カメラ14dから出力された映像と、情報検出装置18から出力された検出情報とを常時記録する。一方、イベント記録保管部172は、車体操作及び車体状態のうち少なくとも一方の変化が検出された場合に、制御装置19の指示に従い、該変化が検出された時刻前後の所定時間幅におけるカメラ14の映像及び情報検出装置18の検出情報をイベント記録として記録する。
【0027】
常時記録保管部171では、図6(a)に示すようにメモリ容量が最大値に達した場合、所定量の古いデータ(すなわち、検出情報及び映像)を順に消去し、新しいデータを上書きしていく方法、又は図6(b)に示すようにメモリ容量が最大値に達した場合、古いデータを全て消去し、新しいデータを記録していく方法が用いられている。一方、イベント記録保管部172では、後述するサーバ装置20への送信が完了し且つ管理者または監督者等(以下、「管理者等」という)がデータの確認が行えるまで、記録されたイベント記録のデータの消去及び上書きは行わない。
【0028】
制御装置19は、例えば演算を実行するCPU(Central Processing Unit)と、演算のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって建設機械10全体の制御を行う。例えば制御装置19は、常時記録保管部171に記録された映像及び検出情報を通信装置16を介して定期的にサーバ装置20に送信する。
【0029】
図2に示すように、本実施形態の制御装置19は、変化検出部191を有する。変化検出部191は、情報検出装置18で検出した情報に基づいて車体操作及び車体状態のうち少なくとも一方の変化を検出する。より具体的には、変化検出部191は、情報検出装置18で検出した情報を予め設定された閾値と比較することにより、車体操作及び車体状態のうち少なくとも一方の変化を検出する。例えば、所定時間又は単位時間における車体操作又は車体状態に関する変化量が所定の閾値以上になった状態を変化として検出する。
【0030】
ここでの閾値は、車体操作及び車体状態に関わる部品(例えばモデル部品)毎に、起動段階、動作段階及び停止段階に分けてそれぞれ設定されている。例えばエンジンの場合、エンジン起動時、動作時及び停止時の閾値がそれぞれ設定される。
【0031】
下部走行体11の操作に関わるモデル部品としては、例えば走行操作レバー、走行油圧モータ111、クローラ、スプロケット等が挙げられる。上部旋回体12の操作に関わるモデル部品としては、例えば旋回操作レバー、旋回油圧モータ等が挙げられる。フロント装置13の操作に関わるモデル部品としては、例えばブーム131、アーム132及びバケット133を操作する各操作レバー、ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ等が挙げられる。一方、車体状態に関わるモデル部品としては、エンジン、メイン油圧ポンプ、パイロット油圧ポンプ、シートベルト等が挙げられる。
【0032】
以下、図3図5を基に変化検出部191による変化検出の具体例を説明する。
【0033】
図3は旋回操作レバーの操作入力量の変化を示す一例である。図3に示すように、一連の旋回操作は、例えば起動段階、動作段階及び停止段階に分けられている。各段階において、これまでの経験値等に基づいて旋回操作レバーの操作入力量の閾値が設定されている。図3において破線はその設定された閾値を示し、実線は操作レバーの操作入力量を検出するセンサで検出した検出値(すなわち、検出情報)を示す。なお、図3において起動段階、動作段階及び停止段階の一部における破線は、実線で示す検出値と重なるため、見えない状態となっている。
【0034】
図3中破線で示すように、旋回操作レバーの操作入力量の閾値は、起動段階で緩やかに上昇していき、動作段階で一定値に保たれた状態になり、停止段階で緩やかに低下していくように設定されている。そして、実線で示す検出した検出値は、点115において急激に低下する。このとき、変化検出部191は、検出値を設定された閾値と比較し、旋回操作レバーの操作入力量に変化が生じたことを検出する。
【0035】
なお、閾値は、変動幅を持たない固定値であっても良く、平均値に対してある程度の変動幅(例えば±30%の変動幅)を持つものであっても良い。また、閾値は管理者等によって任意に変更されても良い。このようにすれば、施工現場において管理者等がスピードや急な作動を抑制したい場合に有効であり、施工現場の安全規定を現場作業員に遵守させることができる。
【0036】
図4は建設機械の姿勢の変化を示す一例である。建設機械10の姿勢は、例えばGNSSアンテナ15a、15bの検出結果及び車体IMUで検出された角速度に基づき、制御装置19に演算される。
【0037】
通常の作業では、建設機械10の姿勢は時間経過に伴って殆ど変らない。例えば図4に示すように、区間116において建設機械10の姿勢が急激に変化した場合、変化検出部191は、建設機械10の姿勢に変化が生じたことを検出する。建設機械10の姿勢に急激な変化が生じる例としては、例えば図5に示すように、建設機械10が斜面でバランスを崩して転落又は墜落をしてしまった場合、片方の履帯が溝に落ちてしまった場合、或いは吊り荷が振れて転倒した場合等が挙げられる。
【0038】
そして、建設機械10の姿勢に変化が生じたことを検出するための閾値は、例えば1分間のGNSSアンテナ15a、15bで規定した姿勢の位置の平均値に対して±30%の変動幅をもつように設定される。
【0039】
以上のように、変化検出部191が車体操作及び車体状態のうち少なくとも一方の変化を検出した場合に、制御装置19は、該変化が検出された時刻前後の所定時間幅における情報検出装置18で検出した情報及びカメラ14で撮像した映像を抽出し、イベント記録保管部172に記録させる。例えば、上述したように旋回操作レバーの操作入力量の変化が変化検出部191によって検出された場合に、制御装置19は、該変化が検出された時刻前後の30秒間(合計60秒間)における情報検出装置18の検出情報及びカメラ14の映像を常時記録保管部171から抽出し、イベント記録としてイベント記録保管部172に記録させる。
【0040】
また、このとき、制御装置19は該イベント記録も通信装置16を介してサーバ装置20にリアルタイムに送信する。
【0041】
一方、サーバ装置20は、建設機械10を含む複数の建設機械を管理するクラウドサーバであり、例えば無線基地局21を介して建設機械10と通信可能に接続されている。サーバ装置20は、例えば演算を実行するCPUと、演算のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROMと、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAMとを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって建設機械10の車体情報の収集及び管理などを行う。
【0042】
例えば、サーバ装置20は、建設機械10から定期的に送信された検出情報及び映像(すなわち、常時記録保管部171に記録された内容と同じもの)と、変化が検出された場合にリアルタイムに送信されたイベント記録(すなわち、イベント記録保管部172に記録された検出情報及び映像と同じもの)とを記録して保管する。なお、建設機械10から送信されたイベント記録を受信した場合、サーバ装置20はそのイベント記録をリアルタイムに端末装置30に送信し、該イベント記録を端末装置30に表示させる。
【0043】
端末装置30は、サーバ装置20と通信可能に接続され、サーバ装置20から送信された情報を表示する表示画面を有するPC(Personal Computer)、タブレット、スマートフォン等の端末である。端末装置30は、例えば管理者等が持つものである。
【0044】
図7は端末装置に表示される内容を示す一例である。図7に示すように、端末装置30の表示画面31には、イベント記録として記録された映像を表示する映像表示部311と、イベント記録として記録された検出情報を表示する情報表示部312とが設けられている。また、表示画面31の下部では、シークバーと変化検出時刻とが表示されている。なお、シークバーに表示されたピンマーク313は、変化検出時刻の位置を示す。
【0045】
そして、管理者等は、表示画面31に表示された内容を閲覧することで、変化が検出された時刻前後の所定時間幅の検出情報及び映像を確認することができる。また、管理者等はシークバーを操作することで、映像の再生位置を自由に調整することができる。
【0046】
本実施形態に係る車体情報収集システム1では、変化検出部191が情報検出装置18で検出した情報に基づいて車体操作及び車体状態のうち少なくとも一方の変化を検出し、変化が検出された場合に、制御装置19は、該変化が検出された時刻前後の所定時間幅における情報検出装置18の検出情報及びカメラ14の映像を抽出し、イベント記録としてイベント記録保管部172に記録させる。このように変化が検出された時刻前後の所定時間幅の映像に加えて、該変化が検出された時刻前後の所定時間幅における車体操作の情報及び車体状態の情報の少なくとも一方も記録されるので、映像及び検出情報の双方を用いて振り返ることにより、従来のように映像だけを用いて振り返る場合と比べて危険事象の発生原因を正確に把握することができる。
【0047】
すなわち、映像及び検出情報の双方を用いて振り返ることで、危険事象の発生原因が建設機械10の車体操作によるものか、車体状態によるものか、又は周囲の状況によるものかを特定し易いので、危険事象の発生原因を正確に究明することができる。
【0048】
また、このようにイベント記録として記録することで、記録が埋もれてしまうことを防止できるとともに、危険事象の発生原因を究明するためのデータ探し作業を省くことができる。
【0049】
また、変化が検出された場合、管理者等は端末装置30を介して該変化が検出された時刻前後の所定時間幅の検出情報及び映像をリアルタイムに確認することができるので、ヒヤリハットの発生原因を迅速且つ的確に把握し、オペレータへの注意喚起を行うことにより事故の発生を未然に防止できる。例えばあるヒヤリハットが頻発し、管理者等が端末装置30に表示された検出情報及び映像を介しオペレータの疲れ、作業現場での環境変化が生じる可能性があると読み取れた場合は、オペレータに注意喚起したり、作業現場の環境改善を行ったりすることにより、事故の未然防止を図ることができる。
【0050】
更に、情報検出装置18を介して建設機械10を常時ウォッチし、変化検出部191を介して建設機械10の車体操作及び車体状態のうち少なくとも一方の変化を検出することで、オペレータに一定の緊張感を与えることができるので、オペレータの安全意識の向上にも貢献できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0052】
1 車体情報収集システム
10 建設機械
11 下部走行体
12 上部旋回体
13 フロント装置
14a 前方カメラ
14b 後方カメラ
14c 左方カメラ
14d 右方カメラ
15a、15b GNSSアンテナ
16 通信装置
17 記録装置
18 情報検出装置
19 制御装置
20 サーバ装置
30 端末装置
171 常時記録保管部
172 イベント記録保管部
191 変化検出部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7