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特許7588542シミュレーション装置、シミュレーション方法、シミュレーションシステム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】シミュレーション装置、シミュレーション方法、シミュレーションシステム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20241115BHJP
   G06F 30/367 20200101ALI20241115BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G01R31/00
G06F30/367
H02J7/00 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021064752
(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公開番号】P2022160170
(43)【公開日】2022-10-19
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 文靖
(72)【発明者】
【氏名】武内 勇介
(72)【発明者】
【氏名】宮原 康之
(72)【発明者】
【氏名】新井 健
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-144729(JP,A)
【文献】特開2021-033878(JP,A)
【文献】特開2013-134619(JP,A)
【文献】特開2019-122151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0051209(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
G06F 30/367
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な発電素子から電力が入力されると共に、入力された電力を昇圧した昇圧電力を負荷回路に出力する昇圧回路と、(2)前記発電素子と前記昇圧回路との間に設けられ、前記発電素子からの入力電力に基づく電荷を蓄積し、蓄積された電荷により前記昇圧回路を一定時間動作させることが可能なコンデンサと、(3)前記発電素子及び前記負荷回路と、を含む試験回路のうち、前記発電素子と、前記昇圧回路と、前記コンデンサと、を含む回路のシミュレーション用モデルを作成するモデル作成部と、
前記発電素子の電気的特性を示す発電素子特性データを取得するデータ取得部と、
前記シミュレーション用モデルに基づいて、前記試験回路における(A)前記コンデンサに対する充電動作又は(B)前記コンデンサからの放電動作の少なくとも一方をシミュレーション可能なシミュレーション部と、
を有し、
前記モデル作成部は、複数の前記発電素子の複数の電気的特性と複数の発電素子モデル候補とが関連付けられたデータベースを参照し、前記複数の発電素子モデル候補から、前記データ取得部が取得した前記発電素子特性データが示す電気的特性に対応する発電素子モデル候補を選択することにより、前記発電素子のモデルを作成する、
シミュレーション装置。
【請求項2】
前記コンデンサに蓄積可能な電力が、前記負荷回路を前記一定時間動作させるために必要な駆動電力よりも大きい前記試験回路の前記シミュレーション用モデルを作成する、
請求項に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記モデル作成部は、前記昇圧回路と前記負荷回路との間に第2コンデンサを含む前記試験回路のシミュレーション用モデルであって、前記コンデンサに蓄積可能な電力が、前記負荷回路を前記一定時間動作させるために必要な駆動電力よりも小さく、前記第2コンデンサが、前記負荷回路を前記一定時間動作させるために必要な電力を蓄積可能な前記試験回路の前記シミュレーション用モデルを作成する、
請求項1又は2に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記モデル作成部は、前記第2コンデンサと前記負荷回路との間に第2昇圧回路が接続された前記試験回路の前記シミュレーション用モデルを作成する、
請求項に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記データ取得部は、前記発電素子の出力電圧と出力電流との関係を示す前記発電素子特性データを取得する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
前記データ取得部は、ネットワークと前記発電素子とに接続された素子測定回路において測定された前記発電素子特性データを、前記ネットワークを介して取得する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項7】
前記シミュレーション部は、前記コンデンサの出力電力が閾値以上である場合に前記昇圧回路が前記出力電力を昇圧した後の電力を電子デバイスに出力する動作をシミュレーションする、
請求項1からのいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項8】
前記シミュレーション部は、前記シミュレーション用モデルに対応する電子回路に接続されて使用される前記負荷回路の電気的特性に基づいて定められた容量を有する前記コンデンサを含む前記試験回路の前記シミュレーション用モデルに基づいてシミュレーションする、
請求項1からのいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
(1)負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な発電素子から電力が入力されると共に、入力された電力を昇圧した昇圧電力を負荷回路に出力する昇圧回路と、(2)前記発電素子と前記昇圧回路との間に設けられ、前記発電素子からの入力電力に基づく電荷を蓄積し、蓄積された電荷により前記昇圧回路を一定時間動作させることが可能なコンデンサと、(3)前記発電素子及び前記負荷回路と、を含む試験回路のうち、前記昇圧回路と、前記コンデンサと、前記負荷回路と、を含む回路のシミュレーション用モデルを作成するモデル作成部と、
ネットワークと電子デバイスとに接続されたデバイス測定回路において測定された前記電子デバイスの電気的特性を示す特性データとして、所定の時間における前記電子デバイスの動作時間と、時間と入力電流との関係を示す電流プロファイルと、を前記ネットワークを介して取得するデータ取得部と、
前記シミュレーション用モデルに対応する電子回路に接続されて使用される前記コンデンサを含む前記試験回路における前記シミュレーション用モデルに基づいて、前記ネットワークを介して取得された前記特性データが示す前記電気的特性に基づいて決定された容量の前記コンデンサを充電する動作をシミュレーションするシミュレーション部と、
を有するシミュレーション装置。
【請求項10】
前記データ取得部は、前記電子デバイスの動作時間と前記電流プロファイルに基づき、前記電子デバイスの動作中における平均消費電流を算出し、
前記モデル作成部は、前記電子デバイスを、当該電子デバイスの平均消費電流に対応する抵抗値を有する抵抗素子に置き換えることで、前記負荷回路のシミュレーション用モデルを作成する、
請求項に記載のシミュレーション装置。
【請求項11】
前記モデル作成部は、前記発電素子のモデルと、前記電子デバイスの電気的特性に対応する電子デバイスモデルと、をさらに含む回路の前記シミュレーション用モデルを作成し、
前記シミュレーション部は、前記発電素子のモデルと、前記コンデンサのモデルと、前記電子デバイスモデルと、を接続した前記シミュレーション用モデルに基づいて、前記発電素子が発生する電力により前記コンデンサを充電している間に、前記コンデンサに充電された電力の一部を前記電子デバイスに供給する動作をシミュレーションする、
請求項9又は10に記載のシミュレーション装置。
【請求項12】
コンピュータが実行する、
(1)負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な発電素子から電力が入力されると共に、入力された電力を昇圧した昇圧電力を負荷回路に出力する昇圧回路と、(2)前記発電素子と前記昇圧回路との間に設けられ、前記発電素子からの入力電力に基づく電荷を蓄積し、蓄積された電荷により前記昇圧回路を一定時間動作させることが可能なコンデンサと、(3)前記発電素子及び前記負荷回路と、を含む試験回路のうち、前記発電素子と、前記昇圧回路と、前記コンデンサと、を含む回路のシミュレーション用モデルを作成するステップと、
前記発電素子の電気的特性を示す発電素子特性データを取得するステップと、
前記シミュレーション用モデルに基づいて、前記試験回路における(A)前記コンデンサに対する充電動作又は(B)前記コンデンサからの放電動作の少なくとも一方をシミュレーションするステップと、
複数の前記発電素子の複数の電気的特性と複数の発電素子モデル候補とが関連付けられたデータベースを参照し、前記複数の発電素子モデル候補から、取得した前記発電素子特性データが示す電気的特性に対応する発電素子モデル候補を選択することにより、前記発電素子のモデルを作成するステップと、
を有するシミュレーション方法。
【請求項13】
コンピュータが実行する、
(1)負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な発電素子から電力が入力されると共に、入力された電力を昇圧した昇圧電力を負荷回路に出力する昇圧回路と、(2)前記発電素子と前記昇圧回路との間に設けられ、前記発電素子からの入力電力に基づく電荷を蓄積し、蓄積された電荷により前記昇圧回路を一定時間動作させることが可能なコンデンサと、(3)前記発電素子及び前記負荷回路と、を含む試験回路のうち、前記昇圧回路と、前記コンデンサと、前記負荷回路と、を含む回路のシミュレーション用モデルを作成するステップと、
ネットワークと電子デバイスとに接続されたデバイス測定回路において測定された前記電子デバイスの電気的特性を示す特性データとして、所定の時間における前記電子デバイスの動作時間と、時間と入力電流との関係を示す電流プロファイルと、を前記ネットワークを介して取得するステップと、
前記シミュレーション用モデルに対応する電子回路に接続されて使用される前記コンデンサを含む前記試験回路における前記シミュレーション用モデルに基づいて、前記ネットワークを介して取得した前記特性データが示す前記電気的特性に基づいて決定された容量の前記コンデンサを充電する動作をシミュレーションするステップと、
を有するシミュレーション方法。
【請求項14】
情報端末と、請求項1から11のいずれか一項に記載のシミュレーション装置と、を備え、
前記情報端末は、
負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な発電素子の電気的特性を示す発電素子特性データを前記シミュレーション装置に送信するデータ送信部と、
前記シミュレーション装置がシミュレーションした結果を表示する表示部と、
を有するシミュレーションシステム。
【請求項15】
コンピュータに、
(1)負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な発電素子から電力が入力されると共に、入力された電力を昇圧した昇圧電力を負荷回路に出力する昇圧回路と、(2)前記発電素子と前記昇圧回路との間に設けられ、前記発電素子からの入力電力に基づく電荷を蓄積し、蓄積された電荷により前記昇圧回路を一定時間動作させることが可能なコンデンサと、(3)前記発電素子及び前記負荷回路と、を含む試験回路のうち、前記発電素子と、前記昇圧回路と、前記コンデンサと、を含む回路のシミュレーション用モデルを作成するステップと、
前記発電素子の電気的特性を示す発電素子特性データを取得するステップと、
前記シミュレーション用モデルに基づいて、前記試験回路における(A)前記コンデンサに対する充電動作または(B)前記コンデンサからの放電動作の少なくとも一方をシミュレーションするステップと、
複数の前記発電素子の複数の電気的特性と複数の発電素子モデル候補とが関連付けられたデータベースを参照し、前記複数の発電素子モデル候補から、取得した前記発電素子特性データが示す電気的特性に対応する発電素子モデル候補を選択することにより、前記発電素子のモデルを作成するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項16】
コンピュータに、
(1)負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な発電素子から電力が入力されると共に、入力された電力を昇圧した昇圧電力を負荷回路に出力する昇圧回路と、(2)前記発電素子と前記昇圧回路との間に設けられ、前記発電素子からの入力電力に基づく電荷を蓄積し、蓄積された電荷により前記昇圧回路を一定時間動作させることが可能なコンデンサと、(3)前記発電素子及び前記負荷回路と、を含む試験回路のうち、前記昇圧回路と、前記コンデンサと、前記負荷回路と、を含む回路のシミュレーション用モデルを作成するステップと、
ネットワークと電子デバイスとに接続されたデバイス測定回路において測定された前記電子デバイスの電気的特性を示す特性データとして、所定の時間における前記電子デバイスの動作時間と、時間と入力電流との関係を示す電流プロファイルと、を前記ネットワークを介して取得するステップと、
前記シミュレーション用モデルに対応する電子回路に接続されて使用される前記コンデンサを含む前記試験回路における前記シミュレーション用モデルに基づいて、前記ネットワークを介して取得した前記特性データが示す前記電気的特性に基づいて決定された容量の前記コンデンサを充電する動作をシミュレーションするステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション装置、シミュレーション方法、シミュレーションシステム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気回路のシミュレーションをするための装置が知られている。特許文献1には、発電素子、昇圧回路及び負荷回路のモデルに基づいて、発電素子昇圧回路及び負荷回路が含まれるセンサシステムのシミュレーションを行う電力シミュレーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-122151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、発電素子が小型化しており、従来よりも出力電力が小さい発電素子も利用されている。発電素子が出力可能な電力が負荷回路の消費電力よりも小さい場合、従来のモデルでは適切なシミュレーションをすることができなかった。
【0005】
そこで、本発明は発電素子が出力可能な電力が負荷回路の消費電力よりも小さい場合にも適切なシミュレーションをできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のシミュレーション装置は、
(1)負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な発電素子から電力が入力されると共に、入力された電力を昇圧した昇圧電力を負荷回路に出力する昇圧回路と、(2)前記発電素子と前記昇圧回路との間に設けられ、前記発電素子からの入力電力に基づく電荷を蓄積し、蓄積された電荷により前記昇圧回路を一定時間動作させることが可能なコンデンサと、(3)前記発電素子または前記負荷回路の少なくとも一方と、を含む試験回路のシミュレーション用モデルを作成するモデル作成部と、前記シミュレーション用モデルに基づいて、前記試験回路における(A)前記コンデンサに対する充電動作又は(B)前記コンデンサからの放電動作の少なくとも一方をシミュレーション可能なシミュレーション部と、を有する。
【0007】
本発明の第2の態様のシミュレーション方法は、コンピュータが実行する、(1)負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な発電素子から電力が入力されると共に、入力された電力を昇圧した昇圧電力を負荷回路に出力する昇圧回路と、(2)前記発電素子と前記昇圧回路との間に設けられ、前記発電素子からの入力電力に基づく電荷を蓄積し、蓄積された電荷により前記昇圧回路を一定時間動作させることが可能なコンデンサと、(3)前記発電素子または前記負荷回路の少なくとも一方と、を含む試験回路のシミュレーション用モデルを作成するステップと、前記シミュレーション用モデルに基づいて、前記試験回路における(A)前記コンデンサに対する充電動作又は(B)前記コンデンサからの放電動作の少なくとも一方をシミュレーションするステップと、を有する。
【0008】
本発明の第3の態様のシミュレーションシステムは、情報端末と、シミュレーション装置と、を備え、前記情報端末は、負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な発電素子の電気的特性を示す発電素子特性データを前記シミュレーション装置に送信するデータ送信部と、前記シミュレーション装置がシミュレーションした結果を表示する表示部と、を有し、前記シミュレーション装置は、前記発電素子特性データを取得するデータ取得部と、(1)負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な前記発電素子から電力が入力されると共に、入力された電力を昇圧した昇圧電力を負荷回路に出力する昇圧回路と、(2)前記発電素子と前記昇圧回路との間に設けられ、前記発電素子からの入力電力に基づく電荷を蓄積し、蓄積された電荷により前記昇圧回路を一定時間動作させることが可能なコンデンサと、(3)前記発電素子または前記負荷回路の少なくとも一方と、を含む試験回路のシミュレーション用モデルを作成するモデル作成部と、前記シミュレーション用モデルに基づいて、前記試験回路における(A)前記コンデンサに対する充電動作又は(B)前記コンデンサからの放電動作の少なくとも一方をシミュレーション可能なシミュレーション部と、前記シミュレーション部がシミュレーションした結果を前記情報端末に送信する通信部と、を有する。
【0009】
本発明の第4の態様のプログラムは、コンピュータに、(1)負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な発電素子から電力が入力されると共に、入力された電力を昇圧した昇圧電力を負荷回路に出力する昇圧回路と、(2)前記発電素子と前記昇圧回路との間に設けられ、前記発電素子からの入力電力に基づく電荷を蓄積し、蓄積された電荷により前記昇圧回路を一定時間動作させることが可能なコンデンサと、(3)前記発電素子又は前記負荷回路の少なくとも一方と、を含む試験回路のシミュレーション用モデルを作成するステップと、前記シミュレーション用モデルに基づいて、前記試験回路における(A)前記コンデンサに対する充電動作または(B)前記コンデンサからの放電動作の少なくとも一方をシミュレーションするステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発電素子が出力可能な電力が負荷回路の消費電力よりも小さい場合にも適切なシミュレーションをすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るシミュレーション装置がシミュレーションをする対象となる電気システムの概要図である。
図2】シミュレーション装置を含むシミュレーションシステムの概要図である。
図3】シミュレーション装置の構成を示す図である。
図4】モデル作成部が作成するシミュレーション用モデルの模式図である。
図5】シミュレーション部がシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図6】シミュレーション装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図7】第1変形例に係るシミュレーション用モデルの模式図である。
図8】第2変形例に係るシミュレーション用モデルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[シミュレーション装置1の概要]
図1は、本実施形態に係るシミュレーション装置1がシミュレーションをする対象となる電気システムSの概要図である。図3は、シミュレーション装置1を含むシミュレーションシステムTの概要図である。
【0013】
電気システムSは、発電素子100と、変換回路200と、電子デバイス300と、を有する。電気システムSにおいては、発電素子100が発生した電力の電圧を変換回路200において変換し、変換後の電圧の電力を電子デバイス300に供給する。シミュレーション装置1は、発電素子100が発生した電力を変換回路200において変換し、変換後の電圧の電力を電子デバイス300に供給する電気システムSの動作をシミュレーションする。
【0014】
シミュレーション装置1は、例えばシミュレーション用プログラムを実行するコンピュータである。シミュレーション装置1は、発電素子100及び変換回路200の少なくともいずれかを含む試験回路の動作に対応する入力側シミュレーション、変換回路200及び電子デバイス300の少なくともいずれかを含む試験回路の動作に対応する出力側シミュレーション、及び発電素子100、変換回路200及び電子デバイス300の少なくともいずれかを含む試験回路の動作に対応するシステムシミュレーションの少なくともいずれかを実行する。
【0015】
発電素子100は、微弱な電力を発生する素子である。発電素子100は、電子デバイス300が有する負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な素子である。発電素子100は、例えば、紫外線センサ、太陽光センサ、温度センサ、糖センサ、土壌センサ、汗センサ、漏水センサ、油センサ、ガスセンサ、尿センサ、植物センサ、触媒センサ、振動センサ又は電磁波センサのような環境発電素子である。
【0016】
電子デバイス300は、変換回路200から供給される電力に基づいて動作する負荷回路を含む。電子デバイス300は、間欠的に動作をすることが可能なデバイスである。電子デバイス300は、例えば、マイクロコンピュータ、通信コントローラ、発光ダイオード、ブザー又はモーターであり、供給された電力に基づいて信号を出力したり、機構を動作させたりする。電子デバイス300は、複数の負荷回路を有する電子機器であってもよい。
【0017】
発電素子100が発生する電力は、例えば1mW以下である。電子デバイス300が有する負荷回路の消費電力は、例えば10mW以上である。電気システムSにおいては、変換回路200が、発電素子100が発生する電力をコンデンサに蓄積してから昇圧する。コンデンサは、変換回路200が昇圧可能な入力電圧未満の発電素子100が発生する電力を蓄積することにより、変換回路200が昇圧可能な入力電圧以上になるまで変換回路200に入力する電力の電圧を上昇させる。
【0018】
そして、変換回路200は、昇圧された電力を電子デバイス300に供給する。電子デバイス300は、昇圧された電力に基づいて、間欠的に電波を送信したり、アクチュエータを動作させたりする。電気システムSがこのように構成されていることで、発電素子100が発生する電力が、電子デバイス300が有する負荷回路の消費電力よりも小さいにもかかわらず、発電素子100が発生する電力によって、電子デバイス300が間欠的に動作することができる。
【0019】
ところが、従来、発電素子を含む電気回路のシミュレーションにおいては、このように、発電素子100が発生する電力をコンデンサに蓄積してから昇圧する場合の動作が考慮されていなかった。したがって、従来、発電素子が出力可能な電力が負荷回路の消費電力よりも小さい場合に適切にシミュレーションをすることができなかった。本実施形態に係るシミュレーション装置は、発電素子100と変換回路200との間に設けられたコンデンサと、発電素子が出力可能な電力が負荷回路の消費電力よりも小さい場合に適切にシミュレーションをすることを可能にする。
【0020】
シミュレーション装置1が電気システムSの動作をシミュレーションするためには、発電素子100、変換回路200及び電子デバイス300のシミュレーション用モデルが必要である。シミュレーション装置1は、例えば、図2に示すように、ネットワークNを介して接続された情報端末2を介して発電素子100の電気的特性を示す発電素子特性データを取得し、ネットワークNを介して接続された情報端末3を介して電子デバイス300の電気的特性を示すデバイス特性データを取得する。情報端末2及び情報端末3は、例えばスマートフォン、タブレット又はパーソナルコンピュータである。
【0021】
情報端末2は、例えば、発電素子100の発電素子特性データをシミュレーション装置1に送信するデータ送信部と、シミュレーション装置1がシミュレーションした結果を表示する表示部と、を有する。情報端末3が、電子デバイス300のデバイス特性データをシミュレーション装置1に送信するデータ送信部と、シミュレーション装置1がシミュレーションした結果を表示する表示部と、を有してもよい。
【0022】
シミュレーション装置1は、取得した発電素子特性データ及びデバイス特性データの少なくとも一部を用いてシミュレーション用モデルを作成し、シミュレーションを実行する。シミュレーション装置は、シミュレーションした結果をディスプレイに表示したり、情報端末2又は情報端末3等のコンピュータに表示させたりする。
以下、シミュレーション装置の構成及び動作を詳細に説明する。
【0023】
[シミュレーション装置の構成]
図3は、シミュレーション装置1の構成を示す図である。シミュレーション装置1は、操作部11と、表示部12と、通信部13と、記憶部14と、制御部15と、を有する。制御部15は、データ取得部151と、モデル作成部152と、シミュレーション部153と、出力部154と、を有する。
【0024】
操作部11は、シミュレーション装置1を使用するユーザがシミュレーションをするための操作を行うためのデバイスであり、例えば、キーボード、マウス又はタッチパネルの少なくともいずれかを含む。操作部11は、ユーザが行った操作の内容をデータ取得部151に通知する。
【0025】
表示部12は、ユーザが各種の操作をするための画面、及びシミュレーション結果を表示するデバイスであり、例えばディスプレイである。表示部12は、出力部154から出力されたシミュレーション結果を表示する。
【0026】
通信部13は、インターネット又はイントラネット等のネットワークを介して外部装置との間でデータを送受信するための通信インターフェースを含む。通信部13は、例えば、発電素子100のユーザ、販売者又は製造者等が使用する情報端末2から、発電素子100の電気的特性を示す発電素子特性データを受信する。通信部13は、ネットワークと発電素子100とに接続された素子測定回路において測定された発電素子特性データを素子測定回路から受信してもよい。素子測定回路は、シミュレーションをする対象の発電素子100を動作させた状態で発電素子100の電気的特性を測定するための回路である。素子測定回路は、発電素子特性データを送信する通信回路を含んでもよい。情報端末2が素子測定回路として機能してもよい。
【0027】
また、通信部13は、電子デバイス300のユーザ、販売者又は製造者等が使用する情報端末3から、電子デバイス300の電気的特性を示すデバイス特性データを受信してもよい。通信部13は、ネットワークと電子デバイス300とに接続されたデバイス測定回路において測定された電子デバイス300の電気的特性を示すデバイス特性データをデバイス測定回路から受信してもよい。デバイス測定回路は、シミュレーションをする対象の電子デバイス300を動作させた状態で電子デバイス300の電気的特性を測定するための回路である。デバイス測定回路は、デバイス特性データを送信する通信回路を含んでもよい。情報端末3がデバイス測定回路として機能してもよい。通信部13は、受信したデバイス特性データをデータ取得部151に入力する。
【0028】
また、通信部13は、出力部154が出力するシミュレーション結果を外部装置に送信する。通信部13は、例えば、発電素子100の電気特性を示す発電素子特性データを送信したコンピュータ、電子デバイス300の電気的特性を示すデバイス特性データを送信したコンピュータにシミュレーション結果を送信する。
【0029】
記憶部14は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)又はハードディスク等の記憶媒体を含む。記憶部14は、制御部15が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部14は、制御部15がシミュレーションを実行する際に用いるシミュレーション用モデルを記憶する。
【0030】
また、記憶部14は、複数の発電素子100の複数の電気的特性と複数の発電素子100のモデル候補とが関連付けられたモデルデータベースを記憶する。発電素子100のモデル候補は、発電素子100の等価回路と等価回路に含まれる複数の素子の定数とにより構成されている。モデルデータベースにおいては、発電素子100の型名及び電気的特性の少なくともいずれかとモデル候補とが関連付けられている。発電素子100の電気的特性は、シミュレーションを実行する際に必要になる発電素子100の電気的特性であり、例えば、発電素子100の出力抵抗、出力電流又は出力電圧を含む。
【0031】
モデルデータベースにおいては、複数の電子デバイス300の複数の電気的特性と複数の電子デバイスモデル候補とがさらに関連付けられていてもよい。電子デバイスモデル候補は、電子デバイス300の等価回路と等価回路に含まれる複数の素子の定数とにより構成されている。電子デバイス300の電気的特性は、シミュレーションを実行する際に必要になる電子デバイス300の電気的特性であり、例えば、電子デバイス300の入力抵抗、消費電流又は所要入力電圧を含む。
【0032】
制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む。制御部15は、記憶部14に記憶されたプログラムを実行することにより、データ取得部151、モデル作成部152、シミュレーション部153及び出力部154として機能する。
【0033】
データ取得部151は、通信部13を介して、発電素子100の電気的特性を示す発電素子特性データを取得する。データ取得部151は、取得した発電素子特性データをモデル作成部152に通知する。データ取得部151は、発電素子特性データを記憶部14に記憶させることにより、発電素子特性データをモデル作成部152に通知してもよい。
【0034】
一例として、データ取得部151は、ネットワークと発電素子100とに接続された素子測定回路において測定された発電素子特性データを、ネットワークを介して取得する。データ取得部151は、例えば、発電素子100の出力電圧と出力電流との関係を示す発電素子特性データを取得する。データ取得部151が、素子測定回路において測定された発電素子特性データを取得することで、シミュレーション装置1は、実際に使用される環境における発電素子100の電気的特性に基づくシミュレーションをすることができるので、シミュレーションの精度が向上する。特に、発電素子100の出力電圧と出力電流との関係を示す発電素子特性データを含む発電素子100のモデルを作成することで、発電素子100と変換回路200との間に設けられたコンデンサの各充電電圧に対する、発電素子100からの充電電流値が正確に再現できる。このため、発電素子100と変換回路200との間に設けられたコンデンサの充電を発電素子の発電電力で行うシミュレーションに関し、その精度を大きく向上させることができる。
【0035】
データ取得部151は、ネットワークと電子デバイス300とに接続されたデバイス測定回路において測定された電子デバイス300の電気的特性を示すデバイス特性データを、ネットワークを介して取得してもよい。データ取得部151は、所定の時間における電子デバイスの動作時間と、時間と入力電流との関係を示す電流プロファイルと、をデバイス特性データとして取得する。データ取得部151が、デバイス測定回路を用いて得られたデバイス特性データを取得することで、シミュレーション装置1は、実際に使用される環境における電子デバイス300の電気的特性に基づくシミュレーションをすることができるので、シミュレーションの精度が向上する。
【0036】
ここで、電子デバイス300のモデル化にあたっては、電子デバイス300の動作中における平均消費電流を算出し、この平均消費電流に対応する抵抗値を有する抵抗素子モデルを用いてもよい。すなわち、モデル作成部152は、電子デバイス300を、当該電子デバイスの平均消費電流に対応する抵抗値を有する抵抗素子に置き換えることで、電子デバイス300部分のシミュレーション用モデルを作成する。これにより、電子デバイス300の電気的特性に基づくシミュレーションが複雑にならず、シミュレーション時間の短縮やシミュレーション精度の向上が期待できる。なお、通常動作(OPE)/スタンバイ(STANDBY)による間欠動作を行う電子デバイス300において、その平均消費電流(IAVE)は、IOPE=通常動作時消費電流、ISTANDBY=スタンバイ動作時消費電流、TOPE=通常動作時間、TSTANDBY=スタンバイ動作時間、として、以下の式により算出することができる。
【数1】
【0037】
モデル作成部152は、発電素子100と変換回路200とが接続された状態の試験回路の動作をシミュレーションするためのシミュレーション用モデルを作成する。モデル作成部152は、発電素子100と、発電素子100が出力する電力を昇圧して生成した昇圧電力を負荷回路に出力する昇圧回路と、発電素子100と昇圧回路との間に設けられたコンデンサと、を含む試験回路のシミュレーション用モデルを作成する。モデル作成部152は、電子デバイス300がさらに接続された状態での動作をシミュレーションするためのシミュレーション用モデルを作成してもよい。
【0038】
すなわち、モデル作成部152は、(1)負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な発電素子から電力が入力されると共に、入力された電力を昇圧した昇圧電力を負荷回路に出力する昇圧回路と、(2)発電素子100と昇圧回路との間に設けられ、発電素子からの入力電力に基づく電荷を蓄積し、蓄積された電荷により昇圧回路を一定時間動作させることが可能なコンデンサと、(3)発電素子100または負荷回路の少なくとも一方と、を含む試験回路のシミュレーション用モデルを作成する。モデル作成部152は、間欠的に複数回にわたって昇圧回路を動作させる場合のシミュレーション用モデルを作成してもよく、1回だけ昇圧回路を動作させる場合のシミュレーション用モデルを作成してもよい。モデル作成部152は、予め記憶部14に記憶されたシミュレーション用モデルに、データ取得部151が操作部11又は通信部13を介して取得した数値を設定することによりシミュレーション用モデルを作成してもよい。
【0039】
モデル作成部152は、作成したシミュレーション用モデルをシミュレーション部153に入力する。モデル作成部152は、作成したシミュレーション用モデルを記憶部14に記憶させてもよい。
【0040】
図4は、モデル作成部152が作成するシミュレーション用モデルの模式図である。モデル作成部152は、発電素子100のシミュレーション用モデルとして、電流源Ioと出力抵抗Roを含むモデルを作成する。モデル作成部152は、例えば、データ取得部151が取得した発電素子100の発電素子特性データに基づいて発電素子100のシミュレーション用モデルを作成する。具体的には、モデル作成部152は、記憶部14に記憶されたモデルデータベースを参照し、複数の発電素子100のモデル候補から、データ取得部151が取得した発電素子特性データが示す電気的特性に対応する発電素子100のモデル候補を選択することにより、発電素子100のシミュレーション用モデルを作成する。
【0041】
また、モデル作成部152は、例えば図4に示すように、コンデンサCoと、昇圧回路201とを含む変換回路200のシミュレーション用モデルを作成する。モデル作成部152は、例えば、発電素子100の電気的特性に基づいて、発電素子100から入力された電圧G(Vo)の電力を昇圧回路201において所定の電圧H(Vo)まで昇圧可能にするためのコンデンサCoの定数を決定することにより、変換回路200のシミュレーション用モデルを作成する。モデル作成部152は、昇圧回路201の複数のモデル候補から選択したモデル候補を用いて変換回路200のシミュレーション用モデルを作成してもよい。
【0042】
モデル作成部152は、発電素子100の発電電力が昇圧回路201の駆動電力よりも小さく、コンデンサCoに蓄積可能な電力が昇圧回路201を一定時間動作させるために必要な駆動電力から当該一定時間における発電素子100の発電電力よりも大きい試験回路のシミュレーション用モデルを作成してもよい。また、モデル作成部152は、コンデンサCoに蓄積可能な電力が、負荷回路を一定時間動作させるために必要な駆動電力よりも大きい試験回路のシミュレーション用モデルを作成してもよい。
【0043】
モデル作成部152は、電子デバイス300の電気的特性にさらに基づいて変換回路200のシミュレーション用モデルを作成してもよい。モデル作成部152は、例えば、電子デバイス300の消費電流及び所要入力電圧を満たす電圧を出力可能な変換回路200のシミュレーション用モデルを作成する。具体的には、モデル作成部152は、電子デバイス300の消費電流を昇圧回路201が出力可能にするためのコンデンサCoの定数を決定することにより、変換回路200のシミュレーション用モデルを作成してもよい。
【0044】
モデル作成部152は、所定の第1閾値電圧以上の電圧がコンデンサCoから入力されると動作を開始し、その後、第1閾値電圧よりも低い第2閾値電圧までコンデンサCoの出力電圧が低下すると動作を停止する昇圧回路201を含むシミュレーション用モデルを作成してもよい。昇圧回路201は、動作を開始していない状態において、コンデンサCoの出力電圧が第1閾値以上になると、電子デバイス300に出力する電力を発生させ、発生させた電力により昇圧動作を行う。昇圧回路201がこのように構成されていることで、コンデンサCoの電圧が第1閾値電圧未満になっても、第2閾値未満になるまでの間は昇圧回路201が動作を継続することができる。
【0045】
コンデンサCoの容量は任意であるが、一例として、電子デバイス300がBLE(Bluetooth Low Energy、登録商標)の回路を有しており、当該回路を0.5秒にわたって動作させる必要がある場合、コンデンサCoの容量は例えば5mFである。この容量は、ノイズを除去することを目的とするバイパスコンデンサとして使用される場合のμFオーダーの容量に比べて遥かに大きい。
【0046】
また、モデル作成部152は、電子デバイス300のシミュレーション用モデルを作成してもよい。モデル作成部152は、例えば図4に示すように、入力抵抗Ra及び制御回路301を含む電子デバイス300のシミュレーション用モデルを作成する。制御回路301は、例えば電子デバイス300を動作させるタイミングを示すパルス信号を発生し、パルス信号を発生した期間に電圧Vaの信号を出力する。電子デバイス300は、制御回路301が電圧Vaを出力する期間において、電圧Vaに基づいて定まる電流Iaを消費する。
【0047】
シミュレーション部153は、モデル作成部152が作成したシミュレーション用モデルに基づいて、発電素子100が発生する電力による昇圧回路201及びコンデンサCoの動作をシミュレーションする。シミュレーション部153は、例えば、変換回路200の出力電圧又は出力電流の少なくともいずれかを示す波形の画像データを作成する。シミュレーション部153は、昇圧回路201の入力電圧又は入力電流の少なくともいずれかと、昇圧回路201の出力電圧又は出力電流の少なくともいずれかとの関係を示す画像データを作成してもよい。シミュレーション部153は、作成した画像データを出力部154に入力する。出力部154は、入力された画像データを表示部12に表示させたり、通信部13を介して外部装置に送信したりする。
【0048】
シミュレーション部153は、発電素子100のモデルと、コンデンサCoのモデルと、電子デバイス300の電気的特性に対応する電子デバイスモデルと、を接続したシミュレーション用モデルに基づいて、発電素子100が発生する電力によりコンデンサCoを充電している間に、コンデンサCoに充電された電力の一部を電子デバイス300に供給する動作をシミュレーションする。
【0049】
シミュレーション部153は、例えば、データ取得部151が取得した発電素子特性データが示す電気的特性に基づいて決定された容量のコンデンサCoを充電する動作をシミュレーションする。シミュレーション部153は、シミュレーション用モデルに対応する電子回路である変換回路200に接続されて使用される電子デバイス300の電気的特性に基づいて定められた容量を有するコンデンサCoを含むシミュレーション用モデルに基づいてシミュレーションしてもよい。シミュレーション部153が、このようにして決定された容量のコンデンサCoを充電する動作をシミュレーションすることで、発電素子100及び電子デバイス300を使用するユーザが、決定されたコンデンサCoの容量が適切であるか否かを判断することができる。
【0050】
図5は、シミュレーション部153がシミュレーションした結果の一例を示す図である。図5においては、変換回路200の動作状態を示す第1波形と、コンデンサCoに蓄積された電力量を示す第2波形と、電子デバイス300の負荷回路の動作電流を示す第3波形とが示されている。
【0051】
第1波形がロウレベルになっている期間(時刻T1から時刻T2までの期間)は、発電素子100が出力する電力を蓄積する蓄電期間であり、第2波形が示す蓄積電力量が時間の経過に伴って増加している。第1波形がハイレベルになっている期間(時刻T2から時刻T3までの期間)は、変換回路200が有するコンデンサCoに蓄積された電力を放電する放電期間である。
【0052】
蓄電期間においては、発電素子100が発生した電力をコンデンサCoに蓄積し、昇圧回路201は蓄積された電力を消費しない。放電期間においては、昇圧回路201が、コンデンサCoに蓄積された電力を消費する。放電期間においては、第3波形が示すように負荷回路が動作して負荷電流が流れることによって、第2波形が示す蓄積電力量が時間の経過に伴って減少している。ユーザは、図5に示す波形を確認することにより、シミュレーションを行った発電素子100及び変換回路200を用いて電子デバイス300を動作させることができるか否かを判断することができる。出力部154は、シミュレーションを行った発電素子100及び変換回路200を用いて電子デバイス300を動作させることができるか否かを示す情報を出力してもよい。
【0053】
シミュレーション部153は、コンデンサCoの出力電圧が第1閾値以上になり、昇圧回路201がコンデンサCoの出力電力を昇圧する動作を開始した後に電力を電子デバイス300に出力する動作をシミュレーションしてもよい。この場合、シミュレーション部153は、コンデンサCoの出力電力が第1閾値未満である場合に、シミュレーションを中止してエラーが生じたことを出力部154に通知してもよい。シミュレーション部153は、例えば、シミュレーションをした結果、電子デバイス300が間欠的に動作する場合の非動作期間にわたって発電素子100が出力する電力をコンデンサCoに蓄積した時点におけるコンデンサCoの両端間の電圧が第1閾値未満である場合に、シミュレーションを中止する。
【0054】
上述したように、第1閾値は、例えば昇圧回路201が昇圧するために必要な最小入力電圧である。第1閾値は、電子デバイス300を動作させるための必要な電圧まで昇圧回路201が昇圧するために必要な最小入力電圧であってもよい。出力部154は、電子デバイス300を動作させるために必要な電圧に昇圧することができないことを示すエラー情報を出力する。シミュレーション部153及び出力部154がこのように動作することで、変換回路200を用いて、電子デバイス300の動作に必要な電圧を発生させることができないということをユーザが認識することができる。
【0055】
シミュレーション部153は、シミュレーションをした結果、コンデンサCoの出力電圧が第1閾値未満である場合に、シミュレーション用モデルにおけるコンデンサCoの容量を変更するようにモデル作成部152に指示してもよい。シミュレーション部153は、例えばコンデンサCoの容量を大きくしたシミュレーション用モデルをモデル作成部152に作成させ、作成させたシミュレーション用モデルを用いて再度シミュレーションを実行する。
【0056】
シミュレーション部153は、シミュレーションをした結果、コンデンサCoの出力電圧が第1閾値未満である場合に、シミュレーション用モデルにおいて発電素子100が出力する電力を蓄積する期間を変更するようにモデル作成部152に指示してもよい。すなわち、シミュレーション部153は、例えばコンデンサCoの容量を大きくして発電素子100が出力する電力を蓄積する期間を長くしたシミュレーション用モデルをモデル作成部152に作成させ、作成させたシミュレーション用モデルを用いて再度シミュレーションを実行する。
【0057】
シミュレーション部153は、コンデンサCoの出力電圧が第1閾値以上になるまで、このように変更したシミュレーション用モデルを用いて複数回のシミュレーションを実行してもよい。シミュレーション部153がこのようなシミュレーションを繰り返すことで、ユーザが、発電素子100を用いて電子デバイス300を動作させる場合に適した変換回路200のパラメータを決定することができる。
【0058】
シミュレーション部153は、シミュレーションをした結果、変換回路200が出力することができる電流が、電子デバイス300を動作させるために必要な電流よりも小さい場合に、シミュレーションを中止して、エラーが生じたことを出力部154に通知してもよい。出力部154は、電子デバイス300を動作させるために必要な電流を変換回路200が出力できないことを示すエラー情報を出力する。シミュレーション部153及び出力部154がこのように動作することで、電子デバイス300の動作に必要な電流を変換回路200が出力できないということをユーザが認識することができる。
【0059】
シミュレーション部153は、昇圧回路201がコンデンサCoの出力電力を昇圧する動作を開始した後に、コンデンサCoに蓄積された電力が減少し、コンデンサCoの出力電圧が第2閾値未満になった時点で昇圧回路201の昇圧動作が停止する動作をシミュレーションしてもよい。シミュレーション部153は、電子デバイス300の動作に必要な期間が経過する前に昇圧回路201が昇圧動作を停止するというシミュレーション結果が得られた場合に、コンデンサCoの容量が不足していることを示すエラー情報を出力してもよい。
【0060】
シミュレーション部153は、電子デバイス300の動作に必要な期間が経過する前に昇圧回路201が昇圧動作を停止するというシミュレーション結果が得られた場合に、コンデンサCoの容量を大きくしたシミュレーション用モデルをモデル作成部152に作成させ、作成させたシミュレーション用モデルを用いて再度シミュレーションを実行してもよい。この場合、シミュレーション部153は、電子デバイス300の動作に必要な期間が経過するまでの間、コンデンサCoの出力電圧が第2閾値以上に維持されるようになるまで、シミュレーションを繰り返してもよい。シミュレーション部153がこのようなシミュレーションを繰り返すことで、ユーザが、発電素子100を用いて電子デバイス300を動作させるために必要な時間にわたって変換回路200が電力を出力できるように、コンデンサCoの容量を決定することができる。
【0061】
図6は、シミュレーション装置1の動作の流れを示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、データ取得部151が、操作部11又は通信部13を介して、シミュレーションを実行する指示を取得した時点から開始している。
【0062】
データ取得部151は、発電素子100の発電素子特性データを取得する。データ取得部151は、例えば通信部13を介して、発電素子100の電気的特性が実測された結果を示す発電素子特性データを取得する(S11)。モデル作成部152は、データ取得部151が取得した発電素子特性データに基づいて、発電素子100のモデルを作成する(S12)。
【0063】
モデル作成部152は、データ取得部151を介して、電子デバイス300のデバイス特性データを取得した場合(S13においてYES)、発電素子特定データ及びデバイス特性データに基づいて、コンデンサCoの容量値を決定する(S14)。モデル作成部152は、例えば、発電素子100が出力する電力の電圧を電子デバイス300が必要とする電圧に昇圧回路201が昇圧するために適した容量値にコンデンサCoの容量値を決定する。モデル作成部152は、電子デバイス300のデバイス特性データを取得していない場合(S13においてNO)、発電素子特性データに基づいてコンデンサCoの容量値を決定する(S15)。
【0064】
モデル作成部152は、決定した容量値に基づいて、シミュレーション用モデルを作成する(S16)。モデル作成部152は、例えば電子デバイス300のデバイス特性データに基づいて、コンデンサCoに蓄電する期間の長さと、コンデンサCoに放電させる期間の長さとを決定することにより、シミュレーション用モデルを作成する。シミュレーション部153は、モデル作成部152が作成したシミュレーション用モデルを用いてシミュレーションを実行する(S17)。
【0065】
[入力側シミュレーションと出力側シミュレーション]
以上の説明においては、シミュレーション装置1が、発電素子100、変換回路200及び電子デバイス300から構成されるシステム全体のシミュレーションを実行する場合を例示したが、シミュレーション装置1は、発電素子100及び変換回路200の動作のシミュレーション(入力側シミュレーション)、並びに変換回路200及び電子デバイス300の動作のシミュレーション(出力側シミュレーション)を実行してもよい。
【0066】
入力側シミュレーションを実行する指示をデータ取得部151が受けた場合、モデル作成部152は、発電素子100の電気的特性を示す発電素子特性データに基づいて、発電素子100及び変換回路200のシミュレーション用モデルを作成する。シミュレーション部153は、例えば、発電素子100の出力電圧と、発電素子100が発電した場合のコンデンサCoの両端間の電圧波形と、変換回路200が出力する電圧波形とを出力するシミュレーションを実行する。シミュレーション装置1が、このような入力側シミュレーションを実行することで、発電素子100が発生する電力に基づいて、変換回路200がどのような電圧を出力するかをユーザが確認することができる。
【0067】
出力側シミュレーションを実行する指示をデータ取得部151が受けた場合、モデル作成部152は、電子デバイス300のデバイス特性データに基づいて、変換回路200及び電子デバイス300のシミュレーション用モデルを作成する。シミュレーション部153は、変換回路200が出力する電力に基づいて電子デバイス300を動作させる動作のシミュレーションを実行する。シミュレーション部153は、例えば、コンデンサCoの両端間の電圧波形と、昇圧回路201の出力電圧波形と、電子デバイス300を流れる電流の波形とを出力するシミュレーションを実行する。シミュレーション装置1が、このような出力側シミュレーションを実行することで、変換回路200から供給される電力に基づいて電子デバイス300が動作するか否かをユーザが確認することができる。
【0068】
[第1変形例]
図7は、第1変形例に係るシミュレーション用モデルの模式図である。図7に示すシミュレーション用モデルに対応する試験回路においては、図4に示した変換回路200の代わりに変換回路200aが含まれている。変換回路200aにおいては、昇圧回路201と負荷回路として機能する電子デバイス300との間に第2コンデンサCが設けられているという点で、図4に示したシミュレーション用モデルの模式図と異なり、他の点で同じである。当該シミュレーション用モデルにおいては、コンデンサCoに蓄積可能な電力が、電子デバイス300を一定時間動作させるために必要な駆動電力よりも小さく、第2コンデンサCが、電子デバイス300を一定時間動作させるために必要な電力を蓄積可能である。本構成によれば、電子デバイス300の駆動電力(消費電力)が比較的大きい場合であっても、シミュレーションを適切に行うことができる。
【0069】
[第2変形例]
図8は、第2変形例に係るシミュレーション用モデルの模式図である。図8に示すシミュレーション用モデルに対応する試験回路においては、図7に示した変換回路200aの代わりに変換回路200bが含まれている。変換回路200bは、第2コンデンサCと電子デバイス300との間に第2昇圧回路202が接続されている。試験回路に第2コンデンサCが設けられている場合、第2昇圧回路202を駆動する電圧が昇圧回路201を駆動する電圧よりも高いので、第1コンデンサCoの容量よりも第2コンデンサCの容量は小さくてよい。第1コンデンサCoが5mFである場合、第2コンデンサCは例えば680μFである。本構成によれば、電子デバイス300の駆動電力(消費電力)が比較的大きい場合であっても、シミュレーションを適切に行うことができる。
【0070】
[シミュレーション装置1による効果]
以上説明したように、モデル作成部152は、負荷回路の消費電力よりも小さい電力を出力可能な発電素子100と、発電素子100が出力する電力を昇圧して生成した昇圧電力を電子デバイス300に出力する昇圧回路201と、発電素子100と昇圧回路201との間に設けられたコンデンサCoと、を含む回路のシミュレーション用モデルを作成する。そして、シミュレーション部153は、モデル作成部152が作成したシミュレーション用モデルに基づいて、発電素子100が発生する電力による昇圧回路201の動作をシミュレーションする。シミュレーション装置1がこのように構成されていることで、シミュレーション装置1は、発電素子100が出力可能な電力が電子デバイス300の消費電力よりも小さい場合であっても、発電素子100が出力する電力を変換回路200によって昇圧する場合の動作をシミュレーションすることができる。
【0071】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0072】
1 シミュレーション装置
2 情報端末
11 操作部
12 表示部
13 通信部
14 記憶部
15 制御部
100 発電素子
151 データ取得部
152 モデル作成部
153 シミュレーション部
154 出力部
200 変換回路
201 昇圧回路
202 第2昇圧回路
300 電子デバイス
301 制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8