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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/54 20100101AFI20241115BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20241115BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/58
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021070004
(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2022164486
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 真擁
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-036692(JP,A)
【文献】特開2011-204397(JP,A)
【文献】特開2008-231199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板面が平坦な平面基板と、
前記基板面上に実装された半導体発光素子と、
前記半導体発光素子を埋設し、前記半導体発光素子の出射光を集光する樹脂からなるレンズと、を有し、
前記基板面上には、前記半導体発光素子を囲む金属環体と、前記金属環体の中心に関して回転対称の位置で前記金属環体の内側に配された複数の規制孔とが設けられ、
前記レンズの底部は前記金属環体と前記複数の規制孔によって画定され、
前記レンズの胴部は前記複数の規制孔の位置から前記レンズの頂部の方向に延在する複数の谷部を有し、
前記レンズの前記頂部は、前記基板面に垂直で金属環体の中心を通る軸を長軸とする回転楕円面の表面を有する、半導体発光装置。
【請求項2】
前記金属環体は、円環状の本体部と、前記本体部の中心に関して回転対称の位置において前記本体部から外側に突き出るように前記本体部に接続された複数の突出部とを有し、
前記複数の規制孔は前記複数の突出部の内側に設けられている、請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記複数の規制孔は円柱形状を有する、請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記平面基板は、低温焼成積層セラミックス基板である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記レンズは、ナノシリカを含有したシリコーン樹脂である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置に関し、特に樹脂レンズを備えた半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体発光素子にレンズが設けられた半導体発光装置が広く実用化されている。例えば、センサ用の赤外光源、オートフォーカスなどに用いられるカメラ用光源、車両用のエクステリア光源、又は前照灯用の光源などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基板の凹部に形成された反射面と、発光素子及び基板の上方を封止する凸状レンズによって照射対象を明るく均等に照らす平行光を多く出射させる発光装置について開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ドーム型の樹脂レンズ体と樹脂レンズ体の周囲を覆う保護壁を設けた光学装置について開示されている。特許文献3には、光半導体素子を封止する凸レンズ形状の封止樹脂が設けられた光半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-81063号公報
【文献】特開2006-269778号公報
【文献】特開2001-196644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、樹脂の注入によりレンズを成形する場合では、狭配光特性で前方放射光強度の大きな半導体発光装置を提供することは困難であった。また、成形時のずれにより、発光素子に対するレンズの位置ずれが発生し、所望の配光が得られないという問題があった。
【0007】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で指向特性に優れ、かつ前方放射光の強度が大きな半導体発光装置を提供することを目的としている。また、発光素子と光学要素との位置ずれ及び光軸ずれが抑制され、高精度の配光特性を有する半導体発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1実施形態による半導体発光装置は、
基板面が平坦な平面基板と、
前記基板面上に実装された半導体発光素子と、
前記半導体発光素子を埋設し、前記半導体発光素子の出射光を集光する樹脂からなるレンズと、を有し、
前記基板面上には、前記半導体発光素子を囲む金属環体と、前記金属環体の中心に関して回転対称の位置で前記金属環体の内側に配された複数の規制孔とが設けられ、
前記レンズの底部は前記金属環体と前記複数の規制孔によって画定され、
前記レンズの胴部は前記複数の規制孔の位置から前記レンズの頂部の方向に延在する複数の谷部を有し、
前記レンズの前記頂部は、前記基板面に垂直で金属環体の中心を通る軸を長軸とする回転楕円面の表面を有している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態による半導体発光装置の斜視図であり、内部構造を透視した透視図である。
図2A】第1の実施形態による半導体発光装置10の内部構造を模式的に示す上面図である。
図2B図2AのA-A線に沿った半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。
図2C】半導体発光装置10の裏面を模式的に示す平面図である。
図2D】金属環体12の本体部12A及び突出部12B、及びホール11Hの部分を拡大して示す上面図である。
図3A】半導体発光装置10、特にレンズ20の外観を模式的に示す斜視図である。
図3B】半導体発光装置10を基板11に垂直な方向から撮影した写真である。
図4A】金属環体12の本体部12Aの内側縁部12A1とレンズ胴部20Aとの接触部を拡大して示す断面図である。
図4B】ホール11Hの内側縁部11H1とレンズ20の谷部20Bとの接触部を拡大して示す断面図である。
図5A】第1の実施形態の方法により製造されたレンズ20の断面を示す写真である。
図5B】半導体発光素子15の中心Oから出射される光線の軌跡及び出射角を示す図である。
図5C】出射面(レンズ面20S)を基準とした入射角(θin)及び出射角(θout)を示す表である。
図5D】比較例である球面レンズの光線の軌跡及び指向特性を示す図である。
図6A】半導体発光素子15の端部から出射される光線軌跡及び出射角を示す図である。
図6B】レンズ胴部20A及び半導体発光素子15の配置関係を示す上面図である。
図7A】試料1の指向特性を示すグラフである。
図7B】試料2の指向特性を示すグラフである。
図7C】試料3の指向特性を示すグラフである。
図7D】試料4の指向特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下においては、本発明の好適な実施例について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による半導体発光装置10の斜視図であり、内部構造を透視した透視図である。また、図2Aは、半導体発光装置10の内部構造を模式的に示す上面図である。図2Bは、図2AのA-A線に沿った半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。図2Cは、半導体発光装置10の裏面を模式的に示す平面図である。
【0013】
図1に示すように、半導体発光装置10は、基板11と、基板11の基板面11S上に設けられた金属環体12と、金属環体12の内側縁部上に設けられたレンズ20を有している。基板面11S(発光素子載置面)上には半導体発光素子15が実装されている。半導体発光素子15は、レンズ20の内部に埋設されている。
【0014】
(基板及び電極)
図2Aは、基板11に垂直方向から見たとき(上面視)、半導体発光装置10の内部構造を示している。なお、レンズ20は示されていない。基板11の基板面11S(上面)がxy平面に平行であり、基板11の側面がx方向及びy方向に平行であるとして示している。
【0015】
図1及び図2Aに示すように、基板11は基板面11Sが平坦な平板状の基板である。本実施形態では、基板11は平行平板状の基板として構成されている。また、図2A及び図2Bに示すように、基板11上には、基板面11Sに固着された枠縁金属層である金属環体12が設けられている。
【0016】
基板11は、例えば、窒化アルミ(AlN)又はアルミナ(Al)からなる低温焼成積層セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)基板であり、上層基板11A及び下層基板11Bが積層されて形成されている。なお、基板11は、セラミックス基板に限らない。ガラスエポキシ基板などのプリント配線基板が用いられてもよい。
【0017】
また、基板11上には、半導体発光装置10内の配線電極である第1配線電極(例えば、アノード電極)14A及び第2配線電極(例えば、カソード電極)14Bが備えられている(以下、特に区別しない場合には、配線電極14と称する。)が設けられている。
【0018】
図2B及び図2Cに示すように、基板11の裏面には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bにそれぞれ接続された第1実装電極17A及び第2実装電極17B(以下、特に区別しない場合には、実装電極17と称する。)が設けられている。
【0019】
具体的には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bの各々は、金属ビア18A、18B(以下、特に区別しない場合には、金属ビア18と称する。)及び上層基板11Aと下層11Bの間に設けられた内部配線(図示せず)を介してそれぞれ第1実装電極17A及び第2実装電極17Bに接続されている。
【0020】
配線電極14、実装電極17は、例えば、銅/ニッケル/金(Cu/Ni/Au)である。また、金属ビア18は、銅(Cu)である。実装電極14、17及び金属ビア18の銅部分は、銅合金、タングステン(W)、タングステン合金、銀(Ag)、銀合金とすることもできる。なお、基板11の基材に応じて適宜選択すればよい。
【0021】
半導体発光素子15は、配線電極14に接続され、実装電極17に通電することによって出射光LEが外部に放射される。
【0022】
(半導体発光素子)
本実施形態において、半導体発光素子15は、発光波長が935~955nm程度の赤外光を放射するアルミニウムガリウム燐(AlGaP)系のLED(発光ダイオード)である。しかしながら、これに限定されず、可視光、紫外光を放射する半導体発光素子であってもよい。
【0023】
また、半導体発光素子15上に蛍光体プレートが載置されていてもよい。この場合においても、半導体発光素子15からの放射光と同様に蛍光体プレートからの放射光はランバーシアン配光を有する。
【0024】
(金属環体12及びホール11H)
金属環体12は、基板11に垂直方向から見たとき(上面視)、円環形状を有している。より詳細には、金属環体12は円環形状の本体部12Aと、本体部12Aの中心Oに関して45°回転対称の位置(すなわち正八角形の頂点位置)において本体部12Aから外側に突き出るように本体部12Aに接続された半円環状の金属層である突出部12Bとを有している。金属環体12の本体部12A及び突出部12Bは、連続的に接続されている。
【0025】
突出部12Bの内側には、基板11の凹部である円形状のホール11Hが設けられている。ホール11Hは、45°回転対称の位置に設けられている場合に限らず、正n角形(nは整数)の頂点位置に配されていればよい。なお、頂点の数n(ホール11Hの数n)はレンズ20の高さを高くできる5~18角形が好ましい。好適には8~12角形がよい。角数が5より小さいとレンズ20の形状が歪になり、レンズ上面視における配向が乱れる。また、角数が18より多いとレンズが上面視において略円形になり、レンズ20の高さを高くできなくなるからである。
【0026】
図2Dは、金属環体12の本体部12A及び突出部12B、及び基板11のホール11Hの部分を拡大して示す上面図である。
【0027】
ホール11Hは、円柱形状の凹部として基板11に設けられ、また金属環体12の突出部12Bの内側に設けられている。また、複数の突出部12Bに設けられたホール11Hは、同一形状及びサイズを有する。
【0028】
より詳細には、ホール11Hは、円環状の突出部12Bの基板内側縁部(以下、単に内側縁部という。)12B1よりも小さな直径を有し、内側縁部12B1から離間して設けられている。ホール11Hの表面は滑らかであることが好ましい。
【0029】
ホール11Hは、後述するように、レンズ形成時におけるレンズ樹脂の規制孔として機能し、レンズ20の形状を画定するように機能する。ホール11Hの位置及び大きさはレンズ20の形状、すなわち所望の配光特性に応じて適宜定めることができる。
【0030】
なお、金属環体12の本体部12Aの内側縁部12A1は円形状を有し、当該円をCI(図中、破線)とすると、少なくともホール11Hの中心11Cが円CI上または半径外側方向に位置するように配されていることが好ましい。ホール11Hの中心11Cが円CIの半径内側方向に位置すると、突出部12Bの内側縁12B1とホール11Hの外側縁部11H2の間にレンズ樹脂が流入してホール11Hでレンズ20を規制できなくなることがある。
【0031】
また、複数のホール11Hの内側縁11H1に接するホール内接円CJ(図中、一点鎖線)の半径が、円CIの半径の0.9倍以上、1.0倍未満であることが好ましい。本実施形態においては0.94倍としている。なお、ホール内接円CJの半径が小さ過ぎるとレンズ樹脂がホール11Hに流入し、ホール11Hでレンズ樹脂を規制できなくなるからである。
【0032】
なお、金属環体12の円環状の本体部12Aはその内側縁部12A1が円形状を有していればよい。また、ホール11Hの内側縁部11H1は円形状に限定されないが、円形状又は楕円形状を有していることが好ましい。また、金属環体12の突出部12Bの形状は円環状に限定されないが、円形状又は楕円形状を有していることが好ましい。
【0033】
なお、基板11にLTCCなどの積層基板が用いられる場合、最上層(本実施形態の場合、上層基板11A)に貫通孔を開けてホール11Hとし、下層の基板層と積層されていても良い。
【0034】
(レンズ20)
図3Aは、半導体発光装置10、特にレンズ20の外観を模式的に示す斜視図であり、図3Bは、半導体発光装置10を上方(基板11に垂直な方向)から撮影した写真である。
【0035】
レンズ20は、レンズ20の本体部であるレンズ胴部20Aを有し、レンズ胴部20Aは規制孔であるホール11Hの位置からレンズ20の先端に向けて延在する谷部20Bを有している。谷部20Bは、レンズ20の先端に向けてレンズ表面からの深さ及び幅が減じ、レンズ胴部20Aの途中で消滅している。
【0036】
より詳細には、レンズ20は、樹脂のポッティングにより形成されるが、金属環体12の本体部12Aの内側縁部12A1によってレンズ樹脂が規制されてレンズ胴部20Aが形成されている。また、ホール11Hの内側縁部11H1によってレンズ樹脂が規制されて谷部20Bが形成されている。
【0037】
レンズ胴部20Aは、基板面11Sに垂直で中心Oを通る軸CX(図2A図2Bを参照)を中心軸とする回転楕円体形状を有し、レンズ20は回転楕円面レンズとして機能する。
【0038】
図4Aは、金属環体12の本体部12Aの内側縁部12A1とレンズ胴部20Aとの接触部を拡大して示す断面図である。当該接触部においてレンズ樹脂が金属環体12の本体部12Aの内側縁部12A1によって規制されるとともに金属環体12の本体部12Aに覆い被さるように膨らみ、レンズ胴部20Aは接触部において基板11の表面に対して鋭角θ(0<θ<90°)をなすように形成されている。
【0039】
また、図4Bは、ホール11Hの内側縁部11H1とレンズ20の谷部20Bとの接触部を拡大して示す断面図である。当該接触部においてレンズ樹脂がホール11Hの内側縁部11H1によって規制され、レンズの谷部20Bは接触部において基板11の表面に対して鋭角θ(0<θ<90°)をなすように膨らんで形成されている。
【0040】
また、レンズ樹脂の容積(Vlens)は、金属環体12の本体部12Aの内側縁部12A1で画定される円CIを底面とする半球の容積(Vci)より大きく、Vciの1.9倍以下が好ましい。本実施形態では、VlensをVciの1.34倍としている。なお、VlensがVci以下では、レンズ20のレンズ面20Sが回転楕円面(非球面)とならず、またVlensがVciの1.9以上ではホール11Hがレンズ樹脂で埋設されるからである。なお、高い指向特性を得るにはVlensをVciの1.3倍以上とすることが好適である。
【0041】
ホール11Hを設けることによって、レンズ樹脂が湾曲(褶曲)することにより、レンズ20に谷部20Bが形成され、レンズ20の高さを高く保つことができ、またレンズ胴部を円柱状に近い形状にすることができる。従って、半導体発光素子15からの高さが高く前方部が楕円体形状のレンズを形成することができるので、狭角配光特性を有し、前方光強度が大きな半導体発光装置10を形成することができる。
【0042】
(レンズ20の製造方法)
まず、半導体発光素子15が実装された基板11を準備した。基板11の基板面11S上に、半導体発光素子15を囲む金属環体12及び円形状のホール11Hを形成した。
【0043】
次に、基板11上から金属環体12の内側に封止レンズ20となる樹脂(レンズ樹脂)をポッティングする。レンズ樹脂として、ナノシリカを0.2wt%含有した粘度が63Pa・sのメチル系シリコーン樹脂を用いた。レンズ樹脂はメチル系以外にフェニル系でもよく、また混合して用いるもともできる。なお、紫外光に暴露される環境、また紫外光および青色光を放射する発光素子15を用いる場合はメチル系シリコーン樹脂などの飽和アルキル系のシリコーン樹脂が好ましい。
【0044】
ポッティングは、樹脂供給ノズルからゆっくりとレンズ樹脂を供給しつつ、同時にノズルを上昇した。例えば、樹脂の供給量は0.012ml/secであり、ノズルの上昇速度は1.1mm/secであった。
【0045】
ポッティング後、静置して基板に樹脂をなじませた。次に、例えば、150℃で15分ないし30分加熱して、レンズ樹脂を硬化した。以上によって、回転楕円面を備えたレンズ20が完成した。
【0046】
本発明においては、金属環体12と基板11に設けたホール11Hによって、ポッティング後からレンズ樹脂は湾曲(褶曲)するので、ポッティング後の静置また樹脂硬化の工程においてもレンズ20の高さを高く保つことができ、半導体発光素子15からの高さが高く前方部(レンズ面20S)が回転楕円面(非球面)のレンズ20を形成することができる。
【0047】
特に、ホール11Hの内側面が基板面11Sに対して略90°となっていることで、ホール内側縁部11H1においてレンズ樹脂がホール11Hに流入することを防止でき、レンズ20に谷部20Bを形成することができる。
【0048】
また、静置また樹脂硬化中にセルフアライメントされてレンズ20が形成されるので、半導体発光素子15とレンズ20との位置ずれ及び光軸ずれが極めて小さく抑制され、高精度の配光特性の半導体発光装置10が得られる。
【0049】
また、レンズ樹脂に、所定値以上の粘度(又はチクソ性)を有する樹脂を用いることにより、ポッティング後、硬化までの間の形状維持が容易になる。しかしながら、樹脂の粘度を上げ過ぎると半導体発光素子15及び基板11の上面との密着性、及びセルフアライメント性が損なわれる場合があるので、過剰な増粘は好ましくない。言い換えれば、レンズ樹種を過剰に増粘することなく、光軸ズレのない、また半導体発光素子15からの高さが高く前方部が回転楕円面のレンズ20の形成を可能にする。また同時に、半導体発光素子15をレンズ樹脂で封止することができる優れたレンズ形成方法である。
【0050】
(出射光の光線軌跡)
図5Aは、本実施形態の方法により製造されたレンズ20の断面を示す写真である。回転楕円面であるレンズ胴部20Aの表面(レンズ面20S)及びレンズ面20Sにフィッティングされたフィッティング楕円面20Fが示されている。また、楕円フィッティング境界線FBを示しているが、楕円フィッティング境界線FBはレンズ20の全高の約70%である。
【0051】
楕円フィッティング境界線FBよりも上方のレンズ20の頂部部分(以下、頂部20Tと称する)は回転楕円面に極めて良くフィッティングしている。なお、当該楕円の扁平率は約0.35であった。すなわち、レンズ20の頂部20Tは、基板面11Sに垂直で金属環体12の中心Oを通る軸CXを長軸とする回転楕円面の表面を有する。詳細は後述するが、楕円フィッティング境界線FBは50%以上、且つ扁平率が0.4以上において央部の光強度が比較的フラットでトップハット状の指向特性が得られる。
【0052】
図5Bは、半導体発光素子15の中心Oから出射される光線の軌跡及び出射角を示している。図5Bには、出射面(レンズ面20S)を基準とした入射角(θin)及び出射角(θout)と、極座標θr(レンズ20の光軸が0°)を基準とした出射角が示されている。なお、図中において、入射角(θin)及び出射角(θout)については括弧内の数値として示す。また、図5Cは、出射面(レンズ面20S)を基準とした入射角(θin)及び出射角(θout)を示す表である。
【0053】
図5B及び図5Cを参照すると、例えば、半導体発光素子15の中心Oから極座標基準でそれぞれ15°,30°,45°で出射した光(図中、実線)について、レンズ面20Sへの入射角(θin)はそれぞれ15°,19°,14°であり、出射角(θout)はそれぞれ22°,28°,20°である。そして、これらの出射光の極座標基準でのレンズ面20からの出射角はそれぞれ10°,21°,29°である。
【0054】
従って、半導体発光素子15の中心Oからの出射光は、回転楕円面であるレンズ20の頂部20Tによってレンズ20の光軸CXの方向に集光されることが分かる。具体的には、半導体発光素子15の中心Oから-30°~+30°の角度で出射された光は±21°以内の角度(極座標基準)で集光されることが理解される。
【0055】
なお、図5Dは、球面レンズの場合を示す比較例であり、光線の軌跡及び指向特性を示す図である。本実施形態の場合では、レンズから放出される光束は光軸方向に集光され、レンズ前方方向に強く、横方向に弱い、後述するトップハット状の指向特性が得られる。一方、球面レンズSLの場合では、レンズ面がLEDの放射光束に対して略直角なので、LEDの指向特性が反映される。
【0056】
図6Aは、半導体発光素子15の端部から出射される光線軌跡及び出射角を示している。図6Bは、レンズ胴部20A及び半導体発光素子15の配置関係を示す上面図である。
【0057】
半導体発光素子15は、上面視において正方形状を有し、その中心はレンズ胴部20Aの中心Oに一致している。図6Aは、半導体発光素子15の対角線上の端部EP(中心からRLの位置)から出射される光線の軌跡を示している。なお、半導体発光素子15の対角線の長さ(2×RL)はレンズ胴部20Aの直径(2×RC)の約1/3である。
【0058】
具体的には、半導体発光素子15の端部EPからそれぞれ-45°,-30°,-15°,0°,15°,30°,45°で出射される光線の軌跡を示している。半導体発光素子15の端部EPからの出射光は、回転楕円面であるレンズ20の頂部20Tによってレンズ20の光軸CXの方向に集光されることが分かる。具体的には、半導体発光素子15の端部EPから-15°~+30°の角度で出射された光は±20°以内の角度で集光されることが理解される。
【0059】
従って、レンズ20に対して実体サイズのある光源に対しても十分良好な指向特性を持たせられる。素子サイズが大きすぎると、出射光の一部がレンズ内に閉じ込められ、出力低下を招くので、素子の対角線の長さを素子サイズとしたとき、素子サイズはレンズ20の基部(底部)の直径の1/3以内が好ましい。
【0060】
(指向特性)
図7A~7Dは、上記したポッティングにおけるレンズ樹脂(シリコーン樹脂等)の粘度及び樹脂を供給するノズルの上昇速度を変化させたときの半導体発光装置の指向特性を示すグラフである。
【0061】
図7Aは、前述の製造方法で示した樹脂粘度を63Pa・s、ノズル上昇速度を1.1mm/secで作成した試料1の指向特性である。図7B図7C図7Dは、試料1の樹脂粘度とノズル上昇速度を基準に[基準粘度、高速]とした試料2、[低粘度、基準速度]とした試料3、[低粘度、高速]とした試料4の各指向特性を示している。なお、横軸は角度(Scanning Angle(deg)),縦軸はノーマライズした光強度で示している。また、試料1~試料4のポッティング樹脂容積(Vlens)は同じとしている。
【0062】
図7A及び図7Bに示す場合では、±30°以内で光強度が急峻に立ち上がり、中央部では光強度が比較的フラットな、いわゆるトップハット状の指向特性が得られている。図7C及び図7Dに示す場合では、光強度の立ち上がりは緩く、また中央部で光強度がピークを有する放物線形状の指向特性となっている。従って、基準粘度の樹脂を用いれば、ノズルの上昇速度に若干の差異があっても良好な回転楕円体形状のレンズでトップハット状の指向特性を得ることができる。また、樹脂粘度を基準値より低粘度とすれば、指向特性を弱めることができる。
【0063】
また、試料1と試料2の楕円フィッティング境界線FBはレンズ20の全高の約70%前後と高く、フィッティングする楕円の扁平率は大きい(非球面)。対して、試料3と試料4の楕円フィッティング境界線FBはレンズ20の全高の40%~50%と低く、フィッティングする楕円の扁平率も小さい(球面に近い)。すなわち、本実施形態の方法によれば、レンズ樹脂の粘度を所定値とすることでレンズ面20Sの形状を回転楕円面(非球面)化でき、指向特性における中央部の光強度が強くトップハット状の指向特性とすることができる。
【0064】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の半導体発光装置及びその製造方法によれば、簡単な構造で指向特性に優れ、かつ前方放射光の強度が大きな半導体発光装置及びその製造方法を提供することができる。また、発光素子と光学要素との位置ずれ及び光軸ずれが抑制され、高精度の配光特性を有する半導体発光装置及びその製造方法を提供することができる
【符号の説明】
【0065】
10:半導体発光装置、11:基板、11A:上層基板、11B:下層基板、11H:規制孔、11S:基板面、12:金属環体、12A:金属環体の本体部、12B:金属環体の突出部、14:配線電極、15:半導体発光素子、17:実装電極、20:レンズ、20A:レンズ胴部、20B:谷部
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D