(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】基板生産機および基板生産ライン
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20241115BHJP
H05K 13/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H05K13/00 Z
(21)【出願番号】P 2021074590
(22)【出願日】2021-04-27
(62)【分割の表示】P 2020084917の分割
【原出願日】2017-02-14
【審査請求日】2021-05-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩二
(72)【発明者】
【氏名】田島 道彦
【合議体】
【審判長】伏本 正典
【審判官】梶尾 誠哉
【審判官】古川 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-34142(JP,A)
【文献】特開2015-56160(JP,A)
【文献】特開2004-134691(JP,A)
【文献】特開平10-229293(JP,A)
【文献】特開2003-69296(JP,A)
【文献】特開平4-347769(JP,A)
【文献】特開2010-244506(JP,A)
【文献】特開2011-166097(JP,A)
【文献】特開2009-75755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
H05K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の生産を分担する少なくとも1つの部品装着機を含む複数の基板生産機と、ライン管理装置
とを具備し、
前記ライン管理装置は、
前記次以降に生産する次以降基板種を設定する基板種設定部と、
設定された前記次以降基板種が正しいか否かを通信によ
り照会して前記生産順序に基づいて確認する基板種確認部と、
前記次以降基板種の基板の生産を開始できる前記部品装着機を含む機内状態に関する情報を収集して設備条件を判定する生産条件調査部と、
全ての前記基板生産機において前記次以降基板種が正しく、かつ前記設備条件が満たされている場合に、前記次以降基板種の前記基板を生産することを許可する生産許可部と、
を備える基板生産ラインであって、
前記基板種設定部は次以降基板種に対応する部品の装着動作に関する生産ジョブデータを設定し、
前記基板種確認部は設定された前記次以降基板種が正しいか否かを照会された前記生産ジョブデータと
最新の生産計画の生産ジョブデータについて前記生産ジョブデータのデータ名称およびリビジョン数が一致しているか否かにより確認する、基板生産ライン。
【請求項2】
前記生産条件調査部は、通信を用いて前記複数の基板生産機の内少なくとも一つの機内状態に関する情報を収集して前記設備条件を判定する請求項1に記載の基板生産ライン。
【請求項3】
前記基板生産ラインは、前記基板生産機として、印刷検査機、基板外観検査機、およびリフロー機のうち少なくとも一つを含んで構成され、
前記基板生産機の各々は、前記ライン管理装置に通信可能に接続される、
請求項1又は請求項2に記載の基板生産ライン。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の基板生産ラインは、さらに次基板種の基板の生産に必要な部材の在庫管理を行う部材管理部を備える、基板生産ライン。
【請求項5】
請求項1乃至請求項
4のいずれか1項に記載の基板生産ラインは、前記生産条件調査部が、次基板種の基板の生産に必要な部材が足りているか否かという部材条件を、部材管理サーバに照会する、基板生産ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品(以下、「部品」と称する)が実装された基板を生産する基板生産機、および、基板の生産を分担する複数の基板生産機を具備する基板生産ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の部品が実装された基板を生産する基板生産機として、はんだ印刷機、部品装着機、リフロー機、基板検査機などがある。これらの基板生産機を連結して基板生産ラインを構築することが一般的になっている。さらに、生産の進捗を管理するライン管理装置を付設する場合が多い。一般的に、基板生産ラインで生産する基板の種類(基板種)を切り替える際に、各基板生産機では、生産ジョブデータを変更する必要がある。生産ジョブデータは、基板生産機の生産動作の詳細仕様を記述したものである。生産ジョブデータは、基板生産機の種類ごとに異なり、かつ基板種ごとに異なる。基板種を切り替える際の生産ジョブデータの管理方法に関する技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の生産管理装置は、NCプログラム(生産ジョブデータ)を編集する手段と、NCプログラムを部品装着機へ伝送する手段と、NCプログラムに設けられた生産実績フラグを参照して生産実績なしと判定した場合に、作業者に告知して伝送の可否を問い合わせる手段と、を備える。これによれば、NCプログラムのデータ変更により作業者の意図しない不良品が生産されることを未然に防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、生産する基板種の順序は、生産管理者によって立案され、生産計画書の形態で関係部門に配布される。または、生産する基板種の順序は、生産計画データの形態でオンラインにより関係部門に伝達される。作業者は、生産計画書または生産計画データを参照して、次以降に生産する基板の種類(次以降基板種)を設定する。このとき、作業者による手動選択操作が行われ、または自動選択機能が利用される。手動選択操作による場合、作業者は、生産計画書や生産計画データを参照して、複数の生産ジョブデータの中から次以降基板種に対応するデータを選択操作する。
【0006】
ここで、複数の生産ジョブデータの名称は互いに類似している場合が多く、作業者が誤って選択するおそれがある。また、一枚の基板の表面と裏面に別々の生産ジョブが定められている場合に、作業者が表面と裏面を取り違えるおそれが皆無でない。さらに、同じ基板種の生産ジョブデータであっても、変更履歴をもつ複数個が存在している場合がある。この場合に、最新リビジョン以外の生産ジョブデータを誤って選択するおそれがある。また、何らかの理由で最新リビジョンが使用禁止とされている場合に、作業者が使用すべき旧リビジョンの生産ジョブデータを選択できないおそれがある。
【0007】
一方で、生産計画は変更され得るものである。例えば、特急での生産依頼を受けた基板種は、当初の生産計画に割り込んで組み込まれる。また例えば、部品の調達が遅延すると、その部品を実装する基板種の生産順序が後回しになる。このような生産計画の変更は、生産計画書の変更連絡や生産計画データの更新によって作業者に通知される。しかしながら、作業者は、通知の時間遅れなどに起因して生産計画の変更を把握できず、誤った次以降基板種を設定するおそれがある。
【0008】
上記した人為的な設定誤りや生産計画の変更を考慮すると、特許文献1の技術では、次以降基板種の設定が正しいか否かを判定できない。また、設定された次以降基板種が正しくても、生産条件が満たされていなければ、実際の生産は開始されない。この場合、生産計画に変更の余地がある。例えば、或る基板生産ラインに臨時のメンテナンスが必要となった場合、設定されていた次以降基板種を別の基板生産ラインに振り向けることが生じ得る。
【0009】
誤った次以降基板種の設定のままで生産を開始すれば、誤作が生じたり、生産完了時期が遅延したりして大きな損失が発生する。また、生産開始以前に気付いたとしても、誤った基板種に対応して行った段取り替え作業が無駄になる。
【0010】
本明細書は、人為的な設定誤りや生産計画の変更に対処でき、設定された次以降基板種が正しいことを確認してから生産を開始できる基板生産機および基板生産ラインを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書は、現在生産している現基板種の次以降に生産する次以降基板種を設定する基板種設定部と、設定された前記次以降基板種が正しいか否かを確認する基板種確認部と、前記次以降基板種の基板を生産する生産条件が満たされているか否かを調査する生産条件調査部と、前記次以降基板種が正しく、かつ前記生産条件が満たされている場合に、前記次以降基板種の前記基板を生産することを許可する生産許可部と、を備える基板生産機を開示する。
【0012】
なお、本明細書において、「次以降に生産する次以降基板種」は、「次に生産する次基板種」だけの場合、および「次の次に生産する次次基板種」を含む二種類以上の基板種の場合、の両方を意味する。
【0013】
また、本明細書は、基板の生産を分担する複数の基板生産機と、ライン管理装置とを具備し、前記ライン管理装置は、現在生産している現基板種の次以降に生産する次以降基板種を設定する基板種設定部と、設定された前記次以降基板種が正しいか否かを確認する基板種確認部と、前記次以降基板種の前記基板を生産する生産条件が満たされているか否かを調査する生産条件調査部と、全ての前記基板生産機において前記次以降基板種が正しく、かつ前記生産条件が満たされている場合に、前記次以降基板種の前記基板を生産することを許可する生産許可部と、を備える基板生産ラインを開示する。
【発明の効果】
【0014】
本明細書で開示する基板生産機によれば、設定された次以降基板種が正しいか否かを確認し、生産条件が満たされているか否かを調査し、次以降基板種が正しくかつ生産条件が満たされている場合に基板の生産を許可する。したがって、設定された次以降基板種が誤っていれば、基板の生産は許可されない。また、設定された次以降基板種が正しくても生産条件が満たされていない場合には、生産計画の変更の可能性、換言すると次以降基板種の変更の余地があるため、基板の生産は許可されない。したがって、人為的な設定誤りや生産計画の変更に対処でき、設定された次以降基板種が正しいことを確認してから生産を開始できる。
【0015】
本明細書で開示する基板生産ラインでも、上記した基板生産機と同様にして、基板の生産の許可および不許可が決まる。したがって、人為的な設定誤りや生産計画の変更に対処でき、設定された次以降基板種が正しいことを確認してから生産を開始できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の基板生産機を含んだ基板生産ラインの構成を模式的に示した 図である。
【
図2】第1実施形態の基板生産機である部品装着機の制御部の機能構成を説明する 図である。
【
図3】第1実施形態の基板生産機である部品装着機の制御部の動作を説明する処理 フローの図である。
【
図4】第2実施形態の基板生産機を含んだ基板生産ラインの構成を模式的に示した 図である。
【
図5】第2実施形態の基板生産機である半田印刷機の制御部の機能構成を説明する 図である。
【
図6】第2実施形態の基板生産機である半田印刷機の制御部の動作を説明する処理 フローの図である。
【
図7】実施形態の基板生産ラインの構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1.基板生産ライン1および第1実施形態の基板生産機の構成)
第1実施形態の基板生産機について、
図1~
図3を参考にして説明する。
図1は、第1実施形態の基板生産機を含んだ基板生産ライン1の構成を模式的に示した図である。基板生産ライン1は、基板の生産を分担する5台の基板生産機によって構成される。詳細には、基板生産ライン1は、半田印刷機12、印刷検査機13、部品装着機14、基板外観検査機15、およびリフロー機16が列設配置されて構成される。
【0018】
5台の基板生産機は、通信線29を用いて相互に通信接続される。さらに、5台の基板生産機は、通信線29を用いて管理者端末6に通信接続される。基板生産機の相互間、および、基板生産機と管理者端末6との間では、双方向通信が可能になっている。管理者端末6は、生産管理者に使用される。生産管理者は、基板生産ライン1で生産する複数の基板種の生産計画を立案し、および変更する。生産管理者は、さらに、生産計画を関係部門へ通知するとともに、生産計画の実行を推進する。
【0019】
半田印刷機12は、ペースト状の半田を定められたパターン形状で基板に印刷する。半田印刷機12と印刷検査機13の間は、基板搬送装置22で連結される。印刷検査機13は、搬送された基板の半田印刷状態を検査する。印刷検査機13と部品装着機14の間は、基板搬送装置23で連結される。部品装着機14は、搬送された基板の半田の上に部品を装着する。部品装着機14と基板外観検査機15の間は、基板搬送装置24で連結される。
【0020】
基板外観検査機15は、搬送された基板に装着されている部品の外観状態を検査する。基板外観検査機15とリフロー機16の間は、基板搬送装置25で連結される。リフロー機16は、基板外観検査機15で正常と判定された基板の半田を再溶融させた後に固化して、接続状態を安定化する。これにより、基板の生産が終了する。
図1に示される基板生産ラインの構成は一例であって、公知の様々な形態のライン構成、例えば複数の部品装着機を備えるライン構成であってもよい。
【0021】
半田印刷機12、印刷検査機13、部品装着機14、および基板外観検査機15は、どれもが第1実施形態の基板生産機になり得る。以降では、部品装着機14が第1実施形態の基板生産機である場合を例にして説明を進める。部品装着機14は、部品の装着動作を制御する制御部4を備える。制御部4は、生産する基板種を切り替えるときにも動作する。
図2は、第1実施形態の基板生産機である部品装着機14の制御部4の機能構成を説明する図である。
【0022】
図示されるように、制御部4は、表示部48および入力部49を有する。また、制御部4は、四個の機能部として基板種設定部41、基板種確認部42、生産条件調査部43、および生産許可部44を有する。基板種設定部41は、メモリ装置45に複数の生産ジョブデータ(JOB1、JOB2)を保持している。メモリ装置45は、部品装着機14の内部の装置であってもよいし、複数の基板生産機に共用される外部の装置であってもよい。基板種確認部42は、管理者端末6との間で、双方向通信を行う。四個の機能部の詳細な機能ついては、後の動作および作用の説明で詳述する。
【0023】
生産ジョブデータ(JOB1、JOB2)は、部品の装着動作に関する詳細仕様を記述したデータである。生産ジョブデータ(JOB1、JOB2)は、基板種ごとに異なるデータとなっている。生産ジョブデータ(JOB1、JOB2)には、データ名称および更新履歴情報が付与されている。更新履歴情報として、更新回数を意味するリビジョン数や更新日を例示できる。データ名称が同一で更新履歴情報が異なる複数の生産ジョブデータは、互いに異なるデータと解される。
【0024】
例えば、データ名称を「JOB1」とし、リビジョン数を「R0」、「R1」、「R2」、および「X3」とし、両者を「_」で連結することができる。この場合、生産ジョブデータは、「JOB1_R0」、「JOB1_R1」、「JOB1_R2」および「JOB1_X3」の四個となる。ここで、リビジョン数の第一文字の英字Rは使用可を表し、第一文字の英字Xは使用禁止を表す。また、リビジョン数の第二文字の数字は、更新回数を表す。そして、更新回数の多いリビジョン数を優先的に使用するように定められている。したがって、この例では、生産ジョブデータとして「JOB1_R2」のみを使用でき
、他は使用できない。
【0025】
使用できない三つの生産ジョブデータ、すなわち「JOB1_R0」、「JOB1_R1」、および「JOB1_X3」は、更新時の変更箇所を確認する目的や、将来の使用の可能性を考慮してメモリ装置45に保持される。したがって、メモリ装置45には、使用できる生産ジョブデータと、使用禁止の生産ジョブデータとが混在する。このため、作業者が生産ジョブデータを誤って選択するおそれがある。
【0026】
(2.第1実施形態の基板生産機の動作および作用)
次に、部品装着機14の動作および作用について、制御部4の動作を中心にして説明する。
図3は、第1実施形態の基板生産機である部品装着機14の制御部4の動作を説明する処理フローの図である。
図3のステップS1で、制御部4の基板種設定部41が動作して、現在生産している現基板種の次以降に生産する次以降基板種を設定する。
【0027】
詳述すると、基板種設定部41は、複数の生産ジョブデータ(JOB1、JOB2)のデータ名称および更新履歴情報の一覧表を表示部48に表示し、作業者に手動選択操作を依頼する。作業者は、データ名称だけでなく更新履歴情報も確認した上で、次以降基板種に対応する生産ジョブデータを入力部49から選択操作する。基板種設定部41は、選択操作にしたがって生産ジョブデータを選択する。これにより、次以降基板種の設定が終了する。
【0028】
ステップS2で、基板種設定部41に続いて、基板種確認部42が動作する。基板種確認部42は、現基板種の基板の生産が終了した後に、基板種設定部41が設定した次以降基板種を生産管理者に照会して、正しいか否かを確認する。現基板種を生産している途中時点では生産計画が往々にして変更されるため、基板種確認部42は動作しない。
【0029】
具体的に説明すると、基板種確認部42は、次以降基板種に対応する生産ジョブデータのデータ名称および更新履歴情報を、例えば電子メールで管理者端末6に通知する。または、基板種確認部42は、生産ジョブデータのデータ名称および更新履歴情報を表示部48に表示する。生産管理者は、データ名称および更新履歴情報を最新の生産計画と比較し、一文字でも相違していれば誤りと判定し、完全に一致していれば正しいと判定する。生産管理者は、電子メールの返信または入力部49からの入力操作により、照会結果すなわち次以降基板種の正否を回答する。
【0030】
次のステップS3で、基板種確認部42は、照会結果を確認し、次以降基板種が誤っている場合に、処理フローの実行をステップS4に進める。ステップS4で、基板種確認部42は、次以降基板種の変更依頼を表示部48に表示して、処理フローの実行をステップS1に戻す。変更依頼を認識した作業者は、生産計画の変更の有無を調査するとともに、自身の設定誤りについても調査する。そして、2回目のステップS1で、作業者は、調査結果に基づいて、再び生産ジョブデータを選択操作する。
【0031】
なお、生産管理者は、照会された次以降基板種が誤っている場合に、正しい次以降基板種を回答するようにしてもよい。この場合、2回目のステップS1で、基板種設定部41は、生産管理者の回答に基づいて、正しい次以降基板種を設定できる。
【0032】
ステップS3で次以降基板種が正しい場合に、基板種確認部42は、処理フローの実行をステップS5に進める。ステップS5で、基板種確認部42に続いて、生産条件調査部43が動作する。生産条件調査部43は、次以降基板種の基板の生産を開始できるという設備条件が満たされているか否かを調査する。生産条件調査部43は、機内状態を調査して、設備条件に関する情報を収集する。
【0033】
次のステップS6で、生産条件調査部43は、設備条件を判定し、満たされていない場合に、処理フローの実行をステップS7に進める。ステップS7で、生産条件調査部43は、警告表示を表示部48に表示して、処理フローの実行をステップS8に進める。警告表示を認識した作業者は、部品装着機14に復帰処置を施す。そして、設備条件が満たされた後、作業者は、入力部49から再開指令を入力する。
【0034】
ステップS8で、生産条件調査部43は、再開指令の入力を待つ。再開指令が入力されると、生産条件調査部43は、処理フローの実行をステップS1に戻す。作業者の復帰処置が短時間の場合、生産計画が変更されることは稀である。しかしながら、復帰処置が長時間にわたる場合、往々にして生産計画が変更される。したがって、戻ったステップS1で、作業者は、生産計画の変更の有無を調査してから、再び生産ジョブデータを選択操作する。
【0035】
ステップS6で設備条件が満たされている場合に、生産条件調査部43は、処理フローの実行をステップS9に進める。ステップS9で、生産条件調査部43に続いて、生産許可部44が動作する。生産許可部44は、次以降基板種の基板を生産することを許可する。これにより、制御部4の処理フローは終了する。続いて、次以降基板種に対応する段取り替え作業が行われて生産準備が整う。続いて、部品装着機14は、次以降基板種の基板の生産を開始する。
【0036】
(3.第1実施形態の基板生産機の態様および効果)
第1実施形態の基板生産機である部品装着機14は、現在生産している現基板種の次以降に生産する次以降基板種を設定する基板種設定部41と、設定された次以降基板種が正しいか否かを確認する基板種確認部42と、次以降基板種の基板を生産する生産条件が満たされているか否かを調査する生産条件調査部43と、次以降基板種が正しく、かつ生産条件が満たされている場合に、次以降基板種の基板を生産することを許可する生産許可部
44と、を備える。
【0037】
これによれば、設定された次以降基板種が誤っていれば、基板の生産は許可されない。また、設定された次以降基板種が正しくても生産条件が満たされていない場合には、生産計画が変更される可能性、換言すると次以降基板種の変更の余地があるため、基板の生産は許可されない。したがって、人為的な設定誤りや生産計画の変更に対処でき、設定された次以降基板種が正しいことを確認してから生産を開始できる。結果として、誤った次以降基板種に起因する誤作や、生産完了時期の遅延が防止される。また、誤った次以降基板種に起因する無駄な段取り替え作業が発生しない。
【0038】
さらに、基板種設定部41は、次以降基板種の基板を生産するときに用いる複数の生産ジョブデータ(JOB1、JOB2)であって、基板種ごとに異なる複数の生産ジョブデータ(JOB1、JOB2)を保持しており、手動選択操作にしたがって次以降基板種に対応した生産ジョブデータを選択する。これによれば、基板種ごとに異なる生産ジョブデータを用いて、次以降基板種の設定や確認を行える。
【0039】
さらに、基板種確認部42は、生産ジョブデータのデータ名称、および生産ジョブデータに付与された更新履歴情報に基づいて、次以降基板種が正しいか否かを確認するこれによれば、生産ジョブデータのデータ名称や更新履歴情報の僅かな相違点に起因して作業者が設定を誤った場合でも、次以降基板種が誤っていることを確実に検出できる。
【0040】
さらに、基板種確認部42は、設定された次以降基板種を生産管理者に照会して、正しいか否かを確認する。これによれば、生産計画の立案および変更を担当する生産管理者に直接的に照会するので、生産計画の変更に起因する誤りが発生しない。
【0041】
さらに、生産条件調査部43は、次以降基板種の基板の生産を開始できる機内状態である設備条件を調査する。これによれば、設備条件が満たされていない場合に生産が許可されない。したがって、この後に生産計画が変更された場合、次以降基板種を設定し直すことができる。
【0042】
(4.第2実施形態の基板生産機の構成、動作、および作用)
次に、第2実施形態の基板生産機について、
図4~
図6を参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
図4は、第2実施形態の基板生産機を含んだ基板生産ライン1Aの構成を模式的に示した図である。第2実施形態において、基板生産ライン1Aのライン構成自体は、第1実施形態と変わらない。ただし、ライン先頭の半田印刷機12Aが第2実施形態の基板生産機となる。半田印刷機12Aは、基板種読み取り用カメラ27を備える。
【0043】
基板種読み取り用カメラ27は、基板搬入口21に臨んで配置され、基板搬入口21に載置された基板Kの上側の面を撮像する。基板Kの上側の面には、基板種の情報を含むコード情報が付設されている。したがって、基板種読み取り用カメラ27は、撮像画像を画像処理することにより、コード情報を取得できる。なお、半田印刷機12Aは、基板種読み取り用カメラ27に代え、コード情報を読み取り可能であって作業者が操作するコードスキャナを備えてもよい。
【0044】
また、第2実施形態では、管理者端末6は用いられない。代わりに、半田印刷機12Aは、通信線29を用いて、スケジュール管理サーバ71に通信接続される。スケジュール管理サーバ71は、生産順序管理部72および人員計画管理部73を含む。生産順序管理部72は、現在生産中の現基板種、および次以降に生産を予定する次以降基板種の生産順序を管理する。換言すると、生産順序管理部72は、現基板種および次以降基板種の生産ジョブデータの実行順序を保持している。生産管理者は、生産順序管理部72にアクセスして生産ジョブデータの実行順序を書き換えることにより、生産計画を変更する。人員計画管理部73は、基板生産ライン1Aを担当する作業者の人員計画を管理する。
【0045】
さらに、半田印刷機12Aは、通信線29を用いて、部材管理サーバ75に通信接続される。部材管理サーバ75は、基板生産ライン1Aで使用する部材の調達および在庫管理を行う。半田印刷機12Aは、半田の印刷動作を制御する制御部4Aを備える。制御部4Aは、生産する基板種を切り替えるときにも動作する。
図5は、第2実施形態の基板生産機である半田印刷機12Aの制御部4Aの機能構成を説明する図である。
【0046】
図示されるように、制御部4Aは、表示部48および入力部49を有する。また、制御部4Aは、四個の機能部として基板種設定部41A、基板種確認部42A、生産条件調査部43A、および生産許可部44を有する。基板種設定部41Aは、メモリ装置45に複数の生産ジョブデータ(JOB1、JOB2)を保持している。また、基板種設定部41A、は、基板種読み取り用カメラ27を制御する。基板種確認部42Aは、生産順序管理部72と双方向通信を行う。生産条件調査部43Aは、人員計画管理部73および部材管理サーバ75と双方向通信を行う。四個の機能部の詳細な機能ついては、動作および作用の説明で詳述する。
【0047】
次に、半田印刷機12Aの動作および作用について、制御部4Aの動作を中心にして説明する。
図6は、第2実施形態の基板生産機である半田印刷機12Aの制御部4Aの動作を説明する処理フローの図である。
図6のステップS1Aで、基板種設定部41Aが動作して、現在生産している現基板種の次以降に生産する次以降基板種を設定する。
【0048】
詳述すると、基板種設定部41Aは、まず、基板種読み取り用カメラ27に撮像指令を送る。次に生産する基板種の1枚目の基板Kを作業者が基板搬入口21に載置すると、基板種読み取り用カメラ27が動作する。基板種読み取り用カメラ27は、基板Kを撮像し、画像処理を行ってコード情報を取得し、基板種設定部41Aに送る。基板種設定部41Aは、受け取ったコード情報に基づいて、基板Kの基板種を認識できる。さらに、基板種設定部41は、基板Kの基板種に対応する生産ジョブデータを自動で選択できる。これにより、次基板種の設定が終了する。第2実施形態において、基板種設定部41Aは、次基板種の設定を逐次行い、次の次に生産する次次基板種の設定は行わない。
【0049】
ステップS2Aで、基板種設定部41Aに続いて、基板種確認部42Aが動作する。基板種確認部42Aは、現基板種の基板の生産が終了した後に、基板種設定部41Aが設定した次基板種が正しいか否かを確認する。具体的には、基板種確認部42Aは、基板種設定部41Aが自動で選択した生産ジョブデータを、通信により生産順序管理部72に照会して、正しいか否かを確認する。生産順序管理部72は、照会された生産ジョブデータと自身が保持している生産ジョブデータについて、データ名称および更新履歴情報が完全に一致しているか否かにより正否を判定する。生産順序管理部72は、通信により照会結果すなわち次基板種の正否を回答する。なお、生産順序管理部72は、照会された生産ジョブデータが誤っている場合に、正しい生産ジョブデータを回答するようにしてもよい。
【0050】
次のステップS3で、基板種確認部42Aは、照会結果を確認し、次基板種が誤っている場合に、処理フローの実行をステップS4に進める。ステップS4で、基板種確認部42Aは、次基板種の変更依頼を表示部48に表示して、処理フローの実行をステップS1Aに戻す。変更依頼を認識した作業者は、生産計画の変更の有無を調査するとともに、自身の設定誤りについても調査する。そして、2回目のステップS1Aで、作業者は、調査結果に基づいて、前回と異なる基板種の基板を基板搬入口21に載置する。
【0051】
ステップS3で次基板種が正しい場合に、基板種確認部42Aは、処理フローの実行をステップS5に進める。ステップS5で、基板種確認部42Aに続いて、生産条件調査部43Aが動作する。生産条件調査部43は、機内状態を調査して、設備条件に関する情報を収集する。次のステップS6で、生産条件調査部43Aは、設備条件が満たされているか否かを判定する。
【0052】
第2実施形態において、生産条件調査部43Aは、設備条件に加えて、部材条件および人的条件が満たされているか否かを調査する。具体的に説明すると、設備条件が満たされている場合のステップS6Aで、生産条件調査部43Aは、次基板種の基板の生産に必要な部材が足りているか否かという部材条件を、部材管理サーバ75に照会する。部材条件が満たされている場合のステップS6Bで、生産条件調査部43Aは、次基板種の基板の生産に必要な作業者が足りているか否かという人的条件を、人員計画管理部73に照会する。設備条件、部材条件、および人的条件のうち一条件でも満たされない場合に、生産条件調査部43Aは、処理フローの実行をステップS7に進める。
【0053】
ステップS7で、生産条件調査部43Aは、警告表示を表示部48に表示して、処理フローの実行をステップS8に進める。警告表示を認識した作業者は、満たされていない条件を調査し、必要に応じて生産管理者と協議し、前記した三条件を満たす処置を施す。そして、三条件が満たされた後、作業者は、入力部49から再開指令を入力する。
【0054】
ステップS8で、生産条件調査部43Aは、再開指令の入力を待つ。再開指令が入力されると、生産条件調査部43Aは、処理フローの実行をステップS1Aに戻す。作業者の処置が短時間の場合、生産計画が変更されることは稀である。しかしながら、処置が長時間にわたる場合、往々にして生産計画が変更される。したがって、戻ったステップS1Aで、作業者は、生産計画の変更の有無を調査してから、基板Kまたは別の基板を基板搬入口21に載置する。
【0055】
三条件が満たされている場合に、生産条件調査部43Aは、処理フローの実行をステップS9に進める。ステップS9で、生産条件調査部43Aに続いて、生産許可部44が動作する。生産許可部44は、次基板種の基板を生産することを許可する。これにより、制御部4Aの処理フローは終了する。続いて、次基板種に対応する段取り替え作業が行われて生産準備が整う。続いて、半田印刷機12Aは、次基板種の基板の生産を開始する。
【0056】
(5.第2実施形態の基板生産機の態様および効果)
第2実施形態の基板生産機である半田印刷機12Aにおいて、基板種設定部41Aは、次以降基板種の基板を生産するときに用いる複数の生産ジョブデータ(JOB1、JOB2)であって、基板種ごとに異なる複数の生産ジョブデータ(JOB1、JOB2)を保持しており、自動選択機能にしたがって次基板種に対応した生産ジョブデータを選択する。これによれば、基板種ごとに異なる生産ジョブデータを用いて、次以降基板種の設定や確認を行える。また、作業者が次基板種を設定しないので、生産ジョブデータのデータ名称や更新履歴情報の僅かな相違点に起因する作業者の設定誤りが発生しない。
【0057】
さらに、基板種確認部42Aは、設定された次基板種を、複数の基板種の生産順序を管理する生産順序管理部72に照会して、正しいか否かを確認する。これによれば、生産計画の基になる生産順序管理部72に直接的に照会するので、誤りが発生しない。
【0058】
さらに、生産条件調査部43Aは、次以降基板種の基板の生産に必要な部材が足りている部材条件、次以降基板種の基板の生産に必要な作業者が足りている人的条件、および、次以降基板種の基板の生産を開始できる機内状態である設備条件を調査する。これによれば、三条件のいずれかが満たされていない場合に生産が許可されない。したがって、この後に生産計画が変更された場合、次以降基板種を設定し直すことができる。
【0059】
(6.実施形態の基板生産ライン1B)
次に、実施形態の基板生産ライン1Bについて、第1および第2実施形態の基板生産機と異なる点を主に説明する。
図7は、実施形態の基板生産ライン1Bの構成を模式的に示した図である。基板生産ライン1Bは、基板の生産を分担する5台の基板生産機(12、13、14、15、16)と、ライン管理装置3とを具備する。ただし、それぞれの基板生産機(12、13、14、15、16)は、生産ジョブデータを保持しておらず、四個の機能部(41、41A、42、42A、43、43A、44)も有さない。
【0060】
ライン管理装置3は、コンピュータ装置を用いて構成される。ライン管理装置3は、表示部31および入力部32を有する。ライン管理装置3は、通信線29を用いて、各基板生産機(半田印刷機12、印刷検査機13、部品装着機14、基板外観検査機15、およびリフロー機16)に通信接続される。ライン管理装置3は、管理者端末6にも通信接続される。さらに、ライン管理装置3は、通信線29を用いて、生産データベース5にもアクセス可能となっている。
【0061】
生産データベース5には、複数の生産ジョブデータ(JOB3、JOB4)が記憶されている。生産ジョブデータ(JOB3、JOB4)は、生産する基板種ごとに異なるデータとなっている。生産ジョブデータ(JOB3、JOB4)は、基板生産ライン1Bを構成する5台の基板生産機(12、13、14、15、16)の分を含んでいる。
【0062】
ライン管理装置3は、生産する基板種を切り替えるときに動作する四個の機能部として、基板種設定部、基板種確認部、生産条件調査部、および生産許可部を備える。四個の機能部は、第1実施形態と同様に、順番に動作する。基板種設定部は、複数の生産ジョブデータ(JOB3、JOB4)のデータ名称および更新履歴情報を保持している。したがって、基板種設定部は、データ名称および更新履歴情報を選択することで、次以降基板種を設定できる。基板種設定部は、第1実施形態の基板種設定部41と同様に、作業者の選択操作にしたがって次以降基板種を設定する。
【0063】
また、基板種確認部の動作も、第1実施形態の基板種確認部42の動作と略一致する。生産条件調査部は、全ての基板生産機(12、13、14、15、16)において次以降基板種の基板の生産を開始できるライン状態であるという設備条件が満たされているか否かを調査する。生産条件調査部は、通信を用いて各基板生産機(12、13、14、15、16)の機内状態に関する情報を収集して、設備条件を判定する。生産許可部は、次以降基板種に対応した生産ジョブデータを、生産データベース5から各基板生産機(12、13、14、15、16)に伝送することによって、次以降基板種の基板を生産することを許可する。
【0064】
実施形態の基板生産ライン1Bは、基板の生産を分担する複数の基板生産機(12、13、14、15、16)と、ライン管理装置3とを具備し、ライン管理装置3は、現在生産している現基板種の次以降に生産する次以降基板種を設定する基板種設定部と、設定された次以降基板種が正しいか否かを確認する基板種確認部と、次以降基板種の基板を生産する生産条件が満たされているか否かを調査する生産条件調査部と、全ての基板生産機(12、13、14、15、16)において次以降基板種が正しく、かつ生産条件が満たされている場合に、次以降基板種の基板を生産することを許可する生産許可部と、を備える。
【0065】
これによれば、第1実施形態の基板生産機と同様にして、基板の生産の許可および不許可が決まる。したがって、人為的な設定誤りや生産計画の変更に対処でき、設定された次以降基板種が正しいことを確認してから生産を開始できる。さらに、実施形態の基板生産ライン1Bでは、第1実施形態で説明した各効果が同様に発生する。
【0066】
また、実施形態の基板生産ライン1Bにおいて、生産許可部は、次以降基板種に対応した生産ジョブデータを複数の基板生産機(12、13、14、15、16)に伝送することによって、次以降基板種の基板を生産することを許可する。これによれば、生産する基板種の切り替えが全部の基板生産機(12、13、14、15、16)で一斉に行われる。したがって、第1実施形態で基板生産機ごとに切り替えを行う場合と比較して、作業者の手間が軽減される。また、複数の基板生産機(12、13、14、15、16)の相互間で次以降基板種が異なるという不合理は、生じ得ない。
【0067】
(7.実施形態の応用および変形)
なお、第1および第2実施形態の基板生産機において、基板種確認部(42、42A)は、段取り替え作業の開始以前に動作するが、これに限定されない。つまり、段取り替え作業の開始以降であっても、次基板種の生産開始以前に基板種確認部(42、42A)が動作すれば、誤作は防止される。また、実施形態の基板生産ライン1Bにおいて、生産ジョブデータを生産データベース5から各基板生産機に伝送した後に、基板種確認部が動作してもよく、誤作が防止される。さらに、
図3や
図6の処理フローにおいて、照会結果が誤っていた場合および生産条件が満たされていない場合の処理は、様々に変形可能である。実施形態の基板生産機および基板生産ライン1Bは、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1、1A、1B:基板生産ライン 12、12A:半田印刷機 14:部品装着機
27:基板種読み取り用カメラ 3:ライン管理装置 4、4A:制御部 41、41A:基板種設定部 42、42A:基板種確認部 43、43A:生産条件調査部 44:生産許可部 5:生産データベース 72:生産順序管理部 7
3:人員計画管理部 75:部材管理サーバ K:基板 JOB1、JOB2、J
OB3、JOB4:生産ジョブデータ