(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】エレベーター巻上機のリングギヤ保護装置およびエレベーター巻上機のリングギヤの取替方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20241115BHJP
B66B 11/08 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B11/08 B
(21)【出願番号】P 2021084995
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】吉井 敏史
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-097187(JP,A)
【文献】特開平11-021043(JP,A)
【文献】特開2017-164875(JP,A)
【文献】特開2007-070088(JP,A)
【文献】米国特許第04265458(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00- 5/28
B66B 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングギヤ保護部材と、
前記リングギヤ保護部材に設けられ、リングギヤに取り付けられる取付部材と、
を備え、
前記リングギヤ保護部材は、前記取付部材が前記リングギヤに取り付けられた状態で、リングギヤ収納ケースの底板と前記リングギヤとの間に配置可能となっているエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置。
【請求項2】
前記リングギヤ保護部材は、前記リングギヤが回転することによって、前記リングギヤ収納ケースの底板と前記リングギヤとの間に前記リングギヤ保護部材が配置される保護部材設置位置と、前記リングギヤ保護部材が前記リングギヤ収納ケースの側壁に形成された開口部を通って前記リングギヤ収納ケースの外側に配置される保護部材撤去位置との間で移動する請求項1に記載のエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置。
【請求項3】
前記リングギヤ保護部材および前記取付部材のそれぞれの形状は、前記開口部を通過可能な形状となっている請求項2に記載のエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置。
【請求項4】
前記リングギヤ保護部材は、前記リングギヤの周方向に並べて設けられ互いに連結された複数の突起部を有し、
複数の前記突起部のそれぞれは、前記リングギヤの外周面に形成された複数の溝部に1個ずつ嵌められる請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置。
【請求項5】
前記リングギヤ保護部材は、内側に流体が貯められる保護袋を有し、
前記保護袋の内側に貯められた流体の量が変化することによって、前記リングギヤ保護部材の厚さ方向の寸法が変化する請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置。
【請求項6】
前記取付部材は、
前記リングギヤの軸方向に前記リングギヤを挟む一対の腕部と、
前記一対の腕部が互いに近づく方向の力を前記一対の腕部に作用させる弾性体と、
を含んでいる請求項1から請求項5までの何れか一項に記載のエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置。
【請求項7】
前記取付部材は、
前記リングギヤの軸方向に前記リングギヤを挟む一対の腕部と、
前記一対の腕部のそれぞれに1個ずつ設けられ、磁力を用いて前記リングギヤに固定される一対の磁石部と、
を含んでいる請求項1から請求項5までの何れか一項に記載のエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までの何れか一項に記載のエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置を用いて、既設の前記リングギヤを新設の前記リングギヤに取り替えるエレベーター巻上機のリングギヤの取替方法であって、
前記取付部材を前記リングギヤ収納ケースの内側に入れ、既設の前記リングギヤに前記取付部材を取り付け、前記リングギヤ保護部材を前記リングギヤ収納ケースの内側に入れ、前記リングギヤ収納ケースの底板と既設の前記リングギヤとの間に前記リングギヤ保護部材を配置する第1保護装置設置工程と、
前記第1保護装置設置工程の後、ベアリングカバーを前記リングギヤ収納ケースから取り外すベアリングカバー取外工程と、
前記ベアリングカバー取外工程の後、既設の前記リングギヤを前記リングギヤ収納ケースから搬出するリングギヤ搬出工程と、
を備えているエレベーター巻上機のリングギヤの取替方法。
【請求項9】
前記リングギヤ搬出工程の後、新設の前記リングギヤを前記リングギヤ収納ケースに搬入し、前記リングギヤ収納ケースの底板と前記取付部材が取り付けられた新設の前記リングギヤとの間に前記リングギヤ保護部材を配置する第2保護装置設置工程と、
前記第2保護装置設置工程の後、前記ベアリングカバーを前記リングギヤ収納ケースに取り付けるベアリングカバー取付工程と、
前記ベアリングカバー取付工程の後、前記リングギヤ保護部材を前記リングギヤ収納ケースの外側に配置し、新設の前記リングギヤから前記取付部材を取り外し、前記取付部材を前記リングギヤ収納ケースの外側に配置する保護装置撤去工程と、
をさらに備えている請求項8に記載のエレベーター巻上機のリングギヤの取替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーター巻上機のリングギヤ保護装置およびエレベーター巻上機のリングギヤの取替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リングギヤ収納ケースと、リングギヤ収納ケースの内側に設けられたリングギヤと、を備えているエレベーター巻上機のリングギヤ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リングギヤには、回転軸が設けられている。リングギヤ収納ケースには、ベアリングカバーが着脱可能に設けられている。リングギヤの回転軸とベアリングカバーとの間には、ベアリングが設けられている。リングギヤは、回転軸、ベアリングおよびベアリングカバーを介してリングギヤ収納ケースに支持されている。
【0005】
既設のリングギヤが新設のリングギヤに取り替えられる場合には、既設のリングギヤが回転軸から取り外され、その後、新設のリングギヤが回転軸に取り付けられる。既設のリングギヤが回転軸から取り外される際には、既設のリングギヤが回転軸から取り外される前にベアリングカバーがリングギヤ収納ケースから取り外される。
【0006】
しかしながら、ベアリングカバーがリングギヤ収納ケースから取り外されることによって、既設のリングギヤがリングギヤ収納ケースの底板に当たってしまうという問題点があった。
【0007】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、既設のリングギヤが新設のリングギヤに取り替えられる際に、既設のリングギヤがリングギヤ収納ケースの底板に当たることを防止することができるエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置およびエレベーター巻上機のリングギヤの取替方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置は、リングギヤ保護部材と、リングギヤ保護部材に設けられ、リングギヤに取り付けられる取付部材と、を備え、リングギヤ保護部材は、取付部材がリングギヤに取り付けられた状態で、リングギヤ収納ケースの底板とリングギヤとの間に配置可能となっている。
本開示に係るおよびエレベーター巻上機のリングギヤの取替方法は、エレベーター巻上機のリングギヤ保護装置を用いて、既設のリングギヤを新設のリングギヤに取り替えるエレベーター巻上機のリングギヤの取替方法であって、取付部材をリングギヤ収納ケースの内側に入れ、既設のリングギヤに取付部材を取り付け、リングギヤ保護部材をリングギヤ収納ケースの内側に入れ、リングギヤ収納ケースの底板と既設のリングギヤとの間にリングギヤ保護部材を配置する第1保護装置設置工程と、第1保護装置設置工程の後、ベアリングカバーをリングギヤ収納ケースから取り外すベアリングカバー取外工程と、ベアリングカバー取外工程の後、既設のリングギヤをリングギヤ収納ケースから搬出するリングギヤ搬出工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置およびエレベーター巻上機のリングギヤの取替方法によれば、既設のリングギヤが新設のリングギヤに取り替えられる際に、既設のリングギヤがリングギヤ収納ケースの底板に当たることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係るエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置が用いられるエレベーター巻上機を示す正面図である。
【
図2】
図1のエレベーター巻上機を示す側面図である。
【
図3】
図2のリングギヤ装置を示す縦断面図である。
【
図4】実施の形態1に係るエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置を示す正面図である。
【
図5】
図4のリングギヤ保護装置がリングギヤに取り付けられた状態を示す図である。
【
図6】
図5の取付部材がリングギヤに取り付けられている状態を示す側面図である。
【
図7】実施の形態1に係るエレベーター巻上機のリングギヤの取替方法を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態2に係るエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置がエレベーター巻上機のリングギヤに取り付けられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置が用いられるエレベーター巻上機を示す正面図である。
図2は、
図1のエレベーター巻上機を示す側面図である。エレベーター巻上機1は、モータ101と、リングギヤ装置102と、綱車103と、を備えている。
【0012】
モータ101には、外部から電力が供給される。モータ101に電力が供給されることによって、モータ101が駆動する。モータ101の駆動は、図示しないエレベーター制御盤によって制御される。
【0013】
リングギヤ装置102には、モータ101の駆動によって発生した動力が伝達される。リングギヤ装置102に伝達された動力は、綱車103に伝達される。
【0014】
綱車103には、図示しないエレベーターロープが巻き掛けられる。モータ101からリングギヤ装置102を介して綱車103に動力が伝達されることによって、綱車103が回転する。綱車103が回転することによって、エレベーターロープが移動する。エレベーターロープが移動することによって、エレベーターかごが昇降路を昇降する。
【0015】
図3は、
図2のリングギヤ装置102を示す縦断面図である。リングギヤ装置102は、リングギヤ収納ケース104と、リングギヤ105と、回転軸106と、を備えている。また、リングギヤ装置102は、一対のベアリングカバー107と、一対のベアリング108と、を備えている。
【0016】
リングギヤ収納ケース104は、箱形状に形成されている。リングギヤ収納ケース104において回転軸106の軸方向に互いに対向する一対の側壁109のそれぞれには、貫通孔110が形成されている。
【0017】
リングギヤ105は、リングギヤ収納ケース104の内側に配置されている。リングギヤ105には、回転軸106が固定されている。リングギヤ105の回転の中心線および回転軸106の回転の中心線は、同一直線上に配置されている。リングギヤ105が周方向に回転することによって、回転軸106が回転する。リングギヤ105の周方向とは、リングギヤ105の回転の中心線を中心線とした周方向である。リングギヤ105の軸方向とは、リングギヤ105の回転の中心線に沿った方向である。
【0018】
図2に示すように、回転軸106は、綱車103に固定されている。回転軸106の回転の中心線および綱車103の回転の中心線は、同一直線上に配置されている。回転軸106が回転することによって、綱車103が回転する。したがって、リングギヤ105が周方向に回転することによって、綱車103が回転する。
【0019】
図3に示すように、一対のベアリングカバー107のうちの一方のベアリングカバー107を第1ベアリングカバー107Aとし、他方のベアリングカバー107を第2ベアリングカバー107Bとする。一対のベアリング108のうちの一方のベアリング108を第1ベアリング108Aとし、他方のベアリング108を第2ベアリング108Bとする。
【0020】
第1ベアリングカバー107Aは、第2ベアリングカバー107Bよりも綱車103の近くに配置されている。言い換えれば、第2ベアリングカバー107Bは、第1ベアリングカバー107Aよりも綱車103から離れて配置されている。
【0021】
リングギヤ収納ケース104に形成された一対の貫通孔110のうちの一方の貫通孔110には、第1ベアリングカバー107Aが挿入されており、他方の貫通孔110には、第2ベアリングカバー107Bが挿入されている。第1ベアリングカバー107Aおよび第2ベアリングカバー107Bのそれぞれは、リングギヤ収納ケース104に着脱可能に設けられている。
【0022】
回転軸106と第1ベアリングカバー107Aとの間には、第1ベアリング108Aが設けられている。回転軸106と第2ベアリングカバー107Bとの間には、第2ベアリング108Bが設けられている。回転軸106は、第1ベアリング108Aおよび第1ベアリングカバー107Aと、第2ベアリング108Bおよび第2ベアリングカバー107Bとを介して、リングギヤ収納ケース104に回転可能に支持されている。
【0023】
リングギヤ105が取り替えられる際には、既設のリングギヤ105がリングギヤ収納ケース104の内側から外側に出され、その後、新設のリングギヤ105がリングギヤ収納ケース104の外側から内側に入れられる。
【0024】
既設のリングギヤ105がリングギヤ収納ケース104の内側から外側に出される場合には、まず、第2ベアリングカバー107Bがリングギヤ収納ケース104から取り外される。第2ベアリングカバー107Bがリングギヤ収納ケース104から取り外されることによって、第2ベアリング108Bおよび第2ベアリングカバー107Bを介したリングギヤ収納ケース104による回転軸106の支持が解除される。
【0025】
第2ベアリング108Bおよび第2ベアリングカバー107Bを介したリングギヤ収納ケース104による回転軸106の支持が解除されることによって、リングギヤ105が回転軸106とともに下降する。
【0026】
実施の形態1に係るエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置は、リングギヤ105が回転軸106とともに降下して、リングギヤ105がリングギヤ収納ケース104の底板111に当たることを防止する。
【0027】
図4は、実施の形態1に係るエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置を示す正面図である。以下、エレベーター巻上機のリングギヤ保護装置をリングギヤ保護装置と称する。リングギヤ保護装置2は、リングギヤ保護部材201と、リングギヤ保護部材201に設けられた取付部材202と、を備えている。
【0028】
リングギヤ保護部材201は、並べられた複数の突起部203と、互いに隣り合う突起部203を連結する複数の連結部204と、を有している。
【0029】
図3に示すように、リングギヤ105の外周面には、複数の溝部が形成されている。複数の溝は、リングギヤ105の周方向に沿って並べて配置されている。
【0030】
図4に示すように、連結部204は、互いに隣り合う突起部203のそれぞれが連結部204を中心に回転可能となるように、互いに隣り合う突起部203を連結している。これにより、リングギヤ105の外周面の形状に合わせて、リングギヤ保護部材201の形状が変形することができる。具体的には、リングギヤ保護部材201は、複数の突起部203が直線状に並べられた形状と、複数の突起部203が湾曲状に並べられた形状との間で変形することができる。
【0031】
複数の突起部203のそれぞれは、リングギヤ105の外周面に形成された複数の溝部に1個ずつ嵌められるようになっている。
【0032】
突起部203を構成する材料としては、例えば、プラスチックが挙げられる。
【0033】
取付部材202は、並べられた複数の突起部203のうちの先頭に配置された突起部203に取り付けられている。
【0034】
図5は、
図4のリングギヤ保護装置2がリングギヤ105に取り付けられた状態を示す図である。複数の突起部203は、リングギヤ保護部材201がリングギヤ105に取り付けられた場合に、リングギヤ105の周方向Aに並べて配置される。リングギヤ保護部材201は、取付部材202がリングギヤ105に取り付けられた状態で、リングギヤ収納ケース104の底板111とリングギヤ105との間に配置可能となっている。
【0035】
リングギヤ収納ケース104の側壁112には、開口部113が形成されている。開口部113は、リングギヤ装置102におけるリングギヤ収納ケース104の内側に配置された部材を点検する際に用いられる点検口となっている。開口部113が形成された側壁112は、リングギヤ105の外周面に対向する側壁となっている。したがって、開口部113が形成された側壁112は、貫通孔110が形成された側壁109とは異なる位置に配置されている。
【0036】
リングギヤ収納ケース104の底板111から開口部113までの距離は、リングギヤ収納ケース104の底板111からリングギヤ105の上端部までの距離よりも小さくなっている。したがって、リングギヤ105は、開口部113を介して、リングギヤ収納ケース104の外側から目視可能となっている。また、リングギヤ105に対して、作業者が開口部113を介して取付部材202を取り付けることが可能となっている。
【0037】
開口部113は、リングギヤ収納ケース104にリングギヤ保護部材201および取付部材202を出し入れする際に用いられる。したがって、リングギヤ保護部材201および取付部材202のそれぞれの形状は、開口部113を通過可能な形状となっている。
【0038】
リングギヤ保護部材201は、リングギヤ105が回転することによって、保護部材設置位置と保護部材撤去位置との間で移動する。リングギヤ保護部材201の位置が保護部材設置位置である場合に、リングギヤ収納ケース104の底板111とリングギヤ105との間にリングギヤ保護部材201が配置される。リングギヤ保護部材201の位置が保護部材撤去位置である場合に、リングギヤ保護部材201がリングギヤ収納ケース104の側壁112に形成された開口部113を通ってリングギヤ収納ケース104の外側に配置される。
【0039】
図6は、
図5の取付部材202がリングギヤ105に取り付けられている状態を示す側面図である。取付部材202は、一対の腕部205と、弾性体206と、を有している。
【0040】
一対の腕部205は、リングギヤ105の軸方向Bにリングギヤ105を挟んでいる。弾性体206は、一対の腕部205が互いに近づく方向の力を一対の腕部205に作用させる。一対の腕部205がリングギヤ105を挟み、一対の腕部205が互いに近づく方向の力を弾性体206が一対の腕部205に作用させることによって、取付部材202がリングギヤ105に取り付けられる。作業者が、弾性体206の弾性力に逆らって一対の腕部205が互いに離れる方向に一対の腕部205を移動させることによって、取付部材202がリングギヤ105から取り外される。
【0041】
次に、リングギヤ105を既設のリングギヤ105から新設のリングギヤ105に取り替える手順について説明する。
図7は、実施の形態1に係るエレベーター巻上機のリングギヤの取替方法を示すフローチャートである。まず、ステップS101において、第1保護装置設置工程を行う。第1保護装置設置工程では、開口部113を通して取付部材202をリングギヤ収納ケース104の内側に入れ、既設のリングギヤ105に取付部材202を取り付ける。また、第1保護装置設置工程では、開口部113を通してリングギヤ保護部材201をリングギヤ収納ケース104の内側に入れる。また、第1保護装置設置工程では、既設のリングギヤ105を回転させて、リングギヤ収納ケース104の底板111と既設のリングギヤ105との間にリングギヤ保護部材201を配置する。
【0042】
第1保護装置設置工程の後、ステップS102において、ベアリングカバー取外工程を行う。ベアリングカバー取外工程では、第2ベアリングカバー107Bをリングギヤ収納ケース104から取り外す。これにより、第2ベアリング108Bおよび第2ベアリングカバー107Bを介したリングギヤ収納ケース104による回転軸106の支持が解除される。この時、リングギヤ保護部材201を介して回転軸106がリングギヤ収納ケース104に支持される。したがって、既設のリングギヤ105がリングギヤ収納ケース104の底板111に当たることが防止される。
【0043】
ベアリングカバー取外工程の後、ステップS103において、リングギヤ搬出工程を行う。リングギヤ搬出工程では、既設のリングギヤ105をリングギヤ収納ケース104から搬出する。
【0044】
リングギヤ搬出工程の後、ステップS104において、第2保護装置設置工程を行う。第2保護装置設置工程では、新設のリングギヤ105に取付部材202を取り付け、新設のリングギヤ105をリングギヤ収納ケース104に搬入する。また、第2保護装置設置工程では、リングギヤ収納ケース104の底板111と新設のリングギヤ105との間にリングギヤ保護部材201を配置する。なお、新設のリングギヤ105に取付部材202が取り付けられるタイミングは、新設のリングギヤ105がリングギヤ収納ケース104に搬入される前後の何れであってもよい。また、新設のリングギヤ105に取付部材202が取り付けられるタイミングは、リングギヤ収納ケース104の底板111と新設のリングギヤ105との間にリングギヤ保護部材201が配置される前後の何れであってもよい。
【0045】
第2保護装置設置工程の後、ステップS105において、ベアリングカバー取付工程を行う。ベアリングカバー取付工程では、第2ベアリングカバー107Bをリングギヤ収納ケース104に取り付ける。ベアリングカバー取付工程では、リングギヤ105がリングギヤ保護部材201に支持されているので、第2ベアリングカバー107Bがリングギヤ収納ケース104に容易に取り付けられる。
【0046】
ベアリングカバー取付工程の後、ステップS106において、保護装置撤去工程を行う。保護装置撤去工程では、新設のリングギヤ105を回転させて、開口部113を通してリングギヤ保護部材201をリングギヤ収納ケース104の外側に配置する。また、保護装置撤去工程では、新設のリングギヤ105から取付部材202を取り外し、開口部113を通して取付部材202をリングギヤ収納ケース104の外側に配置する。以上により、リングギヤ105を既設のリングギヤ105から新設のリングギヤ105に取り替える手順が終了する。
【0047】
以上説明したように、実施の形態1に係るリングギヤ保護装置2は、リングギヤ保護部材201と、リングギヤ保護部材201に設けられ、リングギヤ105に取り付けられる取付部材202と、を備えている。リングギヤ保護部材201は、取付部材202がリングギヤ105に取り付けられた状態で、リングギヤ収納ケース104の底板111とリングギヤ105との間に配置可能となっている。この構成によれば、第2ベアリングカバー107Bがリングギヤ収納ケース104から取り外される際に、既設のリングギヤ105がリングギヤ収納ケース104の底板111に当たることが防止される。その結果、既設のリングギヤ105を新設のリングギヤ105に取り替える際に、既設のリングギヤ105がリングギヤ収納ケース104の底板111に当たることを防止することができる。
【0048】
また、リングギヤ保護部材201は、リングギヤ105が回転することによって、保護部材設置位置と保護部材撤去位置との間で移動する。リングギヤ保護部材201の位置が保護部材設置位置である場合に、リングギヤ収納ケース104の底板111とリングギヤ105との間にリングギヤ保護部材201が配置される。リングギヤ保護部材201の位置が保護部材撤去位置である場合に、リングギヤ保護部材201がリングギヤ収納ケース104の側壁112に形成された開口部113を通ってリングギヤ収納ケース104の外側に配置される。この構成によれば、第2ベアリングカバー107Bがリングギヤ収納ケース104から取り外される際に、既設のリングギヤ105がリングギヤ収納ケース104の底板111に当たることが防止される。その結果、既設のリングギヤ105を新設のリングギヤ105に取り替える際に、既設のリングギヤ105がリングギヤ収納ケース104の底板111に当たることを防止することができる。
【0049】
また、リングギヤ保護部材201および取付部材202のそれぞれの形状は、リングギヤ収納ケース104の側壁112に形成された開口部113を通過可能な形状となっている。この構成によれば、開口部113を介して、リングギヤ保護部材201および取付部材202をリングギヤ収納ケース104に出し入れすることができる。
【0050】
また、リングギヤ保護部材201は、リングギヤ105の周方向Aに並べて設けられ互いに連結された複数の突起部203を有している。複数の突起部203のそれぞれは、リングギヤ105の外周面に形成された複数の溝部に1個ずつ嵌められる。この構成によれば、リングギヤ収納ケース104の底板111とリングギヤ105との間にリングギヤ保護部材201が配置された場合に、リングギヤ105の複数の歯部のそれぞれの破損を抑制することができる。
【0051】
また、取付部材202は、リングギヤ105の軸方向Bにリングギヤ105を挟む一対の腕部205と、一対の腕部205が互いに近づく方向の力を一対の腕部205に作用させる弾性体206と、を含んでいる。この構成によれば、取付部材202をリングギヤ105に容易に着脱することができる。
【0052】
また、実施の形態1に係るリングギヤの取替方法は、第1保護装置設置工程と、ベアリングカバー取外工程と、リングギヤ搬出工程と、を備えている。第1保護装置設置工程では、取付部材202をリングギヤ収納ケース104の内側に入れ、既設のリングギヤ105に取付部材202を取り付ける。また、第1保護装置設置工程では、リングギヤ保護部材201をリングギヤ収納ケース104の内側に入れる。また、第1保護装置設置工程では、リングギヤ収納ケース104の底板111と既設のリングギヤ105との間にリングギヤ保護部材201を配置する。ベアリングカバー取外工程は、第1保護装置設置工程の後に行われる。ベアリングカバー取外工程では、第2ベアリングカバー107Bをリングギヤ収納ケース104から取り外す。リングギヤ搬出工程は、ベアリングカバー取外工程の後に行われる。リングギヤ搬出工程では、既設のリングギヤ105をリングギヤ収納ケース104から搬出する。この構成によれば、第2ベアリングカバー107Bがリングギヤ収納ケース104から取り外される際に、既設のリングギヤ105がリングギヤ収納ケース104の底板111に当たることが防止される。その結果、既設のリングギヤ105を新設のリングギヤ105に取り替える際に、既設のリングギヤ105がリングギヤ収納ケース104の底板111に当たることを防止することができる。
【0053】
また、実施の形態1に係るリングギヤの取替方法は、第2保護装置設置工程と、ベアリングカバー取付工程と、保護装置撤去工程と、をさらに備えている。第2保護装置設置工程は、リングギヤ搬出工程の後に行われる。第2保護装置設置工程では、新設のリングギヤ105をリングギヤ収納ケース104に搬入し、リングギヤ収納ケース104の底板111と取付部材202が取り付けられた新設のリングギヤ105との間にリングギヤ保護部材201を配置する。ベアリングカバー取付工程は、第2保護装置設置工程の後に行われる。ベアリングカバー取付工程では、第2ベアリングカバー107Bをリングギヤ収納ケース104に取り付ける。保護装置撤去工程は、ベアリングカバー取付工程の後に行われる。保護装置撤去工程では、リングギヤ保護部材201をリングギヤ収納ケース104の外側に配置する。また、保護装置撤去工程では、新設のリングギヤ105から取付部材202を取り外し、取付部材202をリングギヤ収納ケース104の外側に配置する。この構成によれば、新設のリングギヤ105がリングギヤ収納ケース104の底板111に当たることを防止することができる。
【0054】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2に係るエレベーター巻上機のリングギヤ保護装置がエレベーター巻上機のリングギヤに取り付けられた状態を示す図である。実施の形態2に係るリングギヤ保護装置2は、リングギヤ保護部材207と、リングギヤ保護部材207に設けられた取付部材202と、配管208と、ポンプ209と、を備えている。
【0055】
リングギヤ保護部材207は、内側に流体が貯められる保護袋210を有している。実施の形態2に係るリングギヤ保護装置2では、リングギヤ保護部材207は、保護袋210のみから構成されている。配管208は、保護袋210に接続されている。ポンプ209は、配管208を介して、保護袋210に流体を出し入れする。
【0056】
保護袋210に貯められる流体としては、例えば、空気、水または油が挙げられる。保護袋210に流体が貯められることによって、保護袋210が膨らみ、保護袋210に貯められた流体が保護袋210の外側に排出されることによって、保護袋210が縮む。保護袋210の内側に流体が貯められていない状態では、保護袋210の形状は、開口部113を通過可能な形状となっている。
【0057】
保護袋210の内側に貯められた流体の量が変化することによって、リングギヤ保護部材207の厚さ方向Cの寸法が変化する。リングギヤ保護部材207の厚さ方向Cは、リングギヤ保護部材207の位置が保護部材設置位置である場合に、高さ方向に一致する。保護袋210は、リングギヤ105を支持するジャッキ部材として機能する。保護袋210の厚さ方向Cの寸法は、リングギヤ105とリングギヤ収納ケース104の底板111との間の距離に対応して調節される。
【0058】
実施の形態2に係るリングギヤ保護装置2のその他の構成は、実施の形態1に係るリングギヤ保護装置2の構成と同様である。
【0059】
以上説明したように、実施の形態2に係るリングギヤ保護装置2では、リングギヤ保護部材207は、保護袋210を有している。保護袋210の内側には、流体が貯められる。保護袋210の内側に貯められた流体の量が変化することによって、リングギヤ保護部材207の厚さ方向Cの寸法が変化する。この構成によれば、保護袋210の内側に貯められる流体の量が調節されることによって、リングギヤ105とリングギヤ収納ケース104の底板111との間の距離に対応して、保護袋210の厚さ方向Cの寸法を調節することができる。
【0060】
なお、各実施の形態では、取付部材202が、リングギヤ105の軸方向Bにリングギヤ105を挟む一対の腕部205と、一対の腕部205が互いに近づく方向の力を一対の腕部205に作用させる弾性体206と、を含んでいる構成について説明した。しかしながら、取付部材202は、リングギヤ105の軸方向Bにリングギヤ105を挟む一対の腕部205と、一対の腕部205のそれぞれに1個ずつ設けられ、磁力を用いてリングギヤ105に固定される一対の磁石部と、を含んでいる構成であってもよい。この構成によれば、取付部材202をリングギヤ105に容易に着脱することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 エレベーター巻上機、2 リングギヤ保護装置、101 モータ、102 リングギヤ装置、103 綱車、104 リングギヤ収納ケース、105 リングギヤ、106 回転軸、107 ベアリングカバー、107A 第1ベアリングカバー、107B 第2ベアリングカバー、108 ベアリング、108A 第1ベアリング、108B 第2ベアリング、109 側壁、110 貫通孔、111 底板、112 側壁、113 開口部、201 リングギヤ保護部材、202 取付部材、203 突起部、204 連結部、205 腕部、206 弾性体、207 リングギヤ保護部材、208 配管、209 ポンプ、210 保護袋。