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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】共同送迎計画作成システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20241115BHJP
   G08G 1/123 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/123 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021086539
(22)【出願日】2021-05-21
(65)【公開番号】P2022179214
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】片山 勇人
(72)【発明者】
【氏名】義田 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】野村 秀政
(72)【発明者】
【氏名】永田 優樹
(72)【発明者】
【氏名】イーグル 亜沙
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-128242(JP,A)
【文献】特開2019-211279(JP,A)
【文献】特開2017-068504(JP,A)
【文献】特開2003-026335(JP,A)
【文献】特開2020-013431(JP,A)
【文献】特開2004-212054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0204633(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の利用者を複数の車両を用いて複数の施設に送迎するための共同送迎計画を作成する共同送迎計画作成システムであって、
前記利用者の送迎位置及び送迎希望時間を含む予約情報を取得する予約情報取得部と、
前記利用者の属性、前記利用者の乗車に要する乗車時間及び前記利用者の降車に要する降車時間を含む利用者情報を取得する利用者情報取得部と、
複数の前記施設の施設位置に係る情報を含む施設情報を取得する施設情報取得部と、
前記車両の利用可能台数及び車両属性を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両の移動時間情報を取得する移動時間情報取得部と、
共同送迎計画を立案する共同送迎計画立案部と、を有し、
前記共同送迎計画立案部は、
前記送迎位置及び前記施設位置である乗降位置と、前記乗降位置のそれぞれに対応する前記利用者情報の前記乗車時間及び前記降車時間と、を送迎単位とすると共に、所定の前記送迎単位をグループ化することにより複数の送迎グループを構成し、
前記車両情報の前記利用可能台数を超えて使用しないことを含む予め準備した所定の制約条件を満たすことを条件として、複数の前記車両の総走行時間、前記送迎希望時間帯、及び前記移動時間情報に基づいて求められる個々の前記利用者の乗車時間を含む複数の目的関数が設定され、複数の前記目的関数は、それぞれ所定の目標値からのずれ量に対して所定の重み付けが付与されるものであり、
前記目的関数の総和を最小化する数理的最適化手法による探索処理を実行することにより最適解を取得し、前記最適解に基づいて共同送迎計画を作成することを特徴とする共同送迎計画作成システム。
【請求項2】
前記探索処理は、
複数の前記送迎グループにおいて、前記予約情報、前記利用者情報、前記施設情報、前記車両情報、及び前記制約条件に基づき、全ての前記送迎グループに対して、利用可能な前記車両を割り当て、前記送迎グループ内の移動順を決定することにより初期解を取得する初期解取得工程と、
前記初期解により前記車両に割り当てた前記送迎グループのうちの一又は複数の前記利用者について、一の車両から他の車両、又は一の車両から他の複数の車両に対して、ランダムに入れ替える利用者入替工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の共同送迎計画作成システム。
【請求項3】
前記目的関数は、前記ずれ量の少なくとも一部を指数乗に変換して集計することを特徴とする請求項1又は2に記載の共同送迎計画作成システム。
【請求項4】
前記探索処理は、ランダムサーチ、シミュレーテッドアニーリング、遺伝的アルゴリズムのいずれか又は複数の組み合わせにより行われることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の共同送迎計画作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を用いて利用者を各種の施設に搬送する際の送迎計画を作成する共同送迎計画作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物流業界においては、物流コストや納期などの制約条件の下で最適な配送計画を実現するために、物流コスト等を目的関数とした数理的探索方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、近年、介護業界においては、人手不足の問題に伴って、利用者の送迎業務を介護事業者自身が担うことも多くなっており、介護事業者自身が全てを担うことが困難となってきている。さらに、今後は利用者の増加も見込まれるため、送迎業務の効率化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願平7-175504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような介護施設における送迎業務は、特に近隣地域に点在する複数の介護事業所における複数の利用者を複数の車両で共同送迎することが、効率化を図る上で有用なものと考えられる。従って、介護施設における送迎業務は、物流における集荷配送計画と比べて、送迎計画に対する制約条件がより複雑なものとなっている。具体的には、送迎業務においては、例えば、車椅子用の座席を準備したり、利用者の車両への乗車時間が長時間とならないようにしたりするなどの配慮が必要となる。しかしながら、特許文献1に係る発明を送迎業務の計画作成に利用しようとした場合、利用者への配慮など、送迎業務に特化した適切な解を得られないという問題があった。また、特許文献1に係る発明を送迎業務の計画作成に利用しようとした場合、制約条件が増大するため、計画作成までの処理時間が長くなりすぎる問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、介護施設における共同送迎業務を効率化でき、複雑な制約条件の下でも、共同送迎計画を効率的に作成することが可能な共同送迎計画作成システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上述した課題を解決すべく提供される共同送迎計画作成システムは、複数の利用者を複数の車両を用いて複数の施設に送迎するための共同送迎計画を作成する共同送迎計画作成システムであって、前記利用者の送迎位置及び送迎希望時間を含む予約情報を取得する予約情報取得部と、前記利用者の属性を含む利用者情報を取得する利用者情報取得部と、複数の前記施設の施設位置に係る情報を含む施設情報を取得する施設情報取得部と、前記車両の利用可能台数及び車両属性を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、前記車両の移動時間情報を取得する移動時間情報取得部と、共同送迎計画を立案する共同送迎計画立案部と、を有し、前記共同送迎計画立案部は、前記送迎位置及び前記施設位置に関する乗降位置と、前記乗降位置のそれぞれに対応する乗車時間及び降車時間と、を送迎単位とすると共に、所定の前記送迎単位をグループ化することにより複数の送迎グループを構成し、予め準備した所定の制約条件を満たすことを条件として、複数の前記車両の総走行時間を含む複数の目的関数が設定され、複数の前記目的関数は、それぞれ所定の目標値からのずれ量に対して所定の重み付けが付与されるものであり、前記目的関数の総和を最小化する数理的最適化手法による探索処理を実行することにより最適解を取得し、前記最適解に基づいて共同送迎計画を作成することを特徴とするものである。
【0008】
上述した共同送迎計画作成システムは、共同送迎計画立案部が、前記送迎位置及び前記施設位置に関する乗降位置と、前記乗降位置のそれぞれに対応する乗車時間及び降車時間と、を送迎単位にするものとされている。また、上述した共同送迎計画作成システムは、共同送迎計画立案部が、所定の前記送迎単位をグループ化することにより複数の送迎グループを構成するものとされている。従って、前記送迎位置及び前記乗降位置と、前記乗車時間及び前記降車時間(乗降時間とも称する)と、に関する情報(データ)を送迎グループ単位で扱うことができる。すなわち、利用者における自宅から施設まで、及び利用者における施設から自宅までなどの「送」及び「迎」に関する情報を一般化してデータとして扱うことができる。これにより、一車両における乗車利用者の各々の「送」及び「迎」に関する情報を一元的に同一のロジックとして扱うことができる。
【0009】
また、上述した共同送迎計画作成システムは、予め準備した所定の制約条件を満たすことを条件として、複数の前記車両の総走行時間を含む複数の目的関数が設定される。また、複数の前記目的関数は、それぞれ所定の目標値からのずれ量に対して所定の重み付けが付与されるものとされている。
【0010】
ここで、制約条件は、例えば、全ての利用者の送迎を完了させること、地点間(区間)の想定移動時間より速い速度で移動しないこと、利用者宅での乗降時間を考慮すること、利用可能な車両数を超えて使用しないこと、車両の一般席数や車椅子席数を超える人数が乗車していないこと、及び利用者宅付近で走行可能な車両(車両の大きさの考慮)で送迎することなどの必然的に守らねばならない各種の事項について設定される条件である。
【0011】
また、目的関数(コスト関数とも称する)は、例えば、総走行時間、個々の利用者の乗車時間、利用者の送迎希望時間、施設への送迎到着時間、及び席配置の考慮などの効率や人件費などの費用に影響を及ぼす各種の事項について設定される関数である。従って、上述した共同送迎計画作成システムは、制約条件を満たした上で、効率やコストに影響を及ぼす事項について、考慮した共同送迎計画作成を行うことができる。
【0012】
また、上述した複数の前記目的関数は、それぞれ所定の目標値からのずれ量に対して所定の重み付けが付与されている。ここで、重み付けは、例えば、効率やコストに及ぼす影響が大きい項目に対して、大きな重みが付くように目的関数に対して付与される。すなわち、目的関数の総和が大きいほど、効率が悪くなったり、コストが増大したりする。そこで、上述した共同送迎計画作成システムは、前記目的関数の総和を最小化する数理的最適化手法による探索処理を実行することにより最適解を取得し、前記最適解に基づいて共同送迎計画を作成している。これにより、効率が良く、コストを低減できる共同送迎計画を作成することができる。ここでの探索処理には、各種の数理的最適化手法を好ましく用いることができる。また、探索処理は、適宜、サンプル数を所定の数量に制限して行うとよい。これにより、処理時間が必要以上に長くなることを抑制する効果が期待できる。
【0013】
(2)上述した本発明の共同送迎計画作成システムは、前記探索処理が、複数の前記送迎グループにおいて、前記予約情報、前記利用者情報、前記施設情報、前記車両情報、及び前記制約条件に基づき、全ての前記送迎グループに対して、利用可能な前記車両を割り当て、前記送迎グループ内の移動順を決定することにより初期解を取得する初期解取得工程と、前記初期解により前記車両に割り当てた前記送迎グループのうちの一又は複数の前記利用者について、一の車両から他の車両、又は一の車両から他の複数の車両に対して、ランダムに入れ替える利用者入替工程と、を含むとよい。
【0014】
上述した共同送迎計画作成システムは、初期解取得工程において、上述の各種情報や制約条件に基づいて、全ての送迎グループに対して、利用可能な車両を割り当て、前記送迎グループ内の移動順を決定することにより、初期解を取得することができる。これにより、制約条件等を満たした、ある程度の解(初期解)を取得することができる。そのため、前記初期解を基準として、さらに最適な解を求める探索処理を行うことができる。
【0015】
また、上述した共同送迎計画作成システムは、取得した前記初期解により車両に割り当てた送迎グループのうちの一又は複数の利用者について、一の車両から他の車両、又は一の車両から他の複数の車両に対して、ランダムに入れ替える利用者入替工程と、を含むものとされている。これにより、初期解を基準とした送迎グループを一単位として、複数の車両に対して、利用者をランダムに入れ替えながら最適な解を求めるための探索処理を行うことができる。従って、複雑な処理を行うことなく、探索処理を簡素化することができる。
【0016】
(3)上述した本発明の共同送迎計画作成システムにおいて、前記目的関数は、前記ずれ量の少なくとも一部が指数乗に変換して集計されるとよい。
【0017】
かかる構成によれば、目的関数における目標値からのずれ量を指数乗に変換することにより誇大化して集計することができる。これにより、効率化やコストに影響を及ぼす事項を誇大化することができるので、最適解を効率的に算出することができる。
【0018】
(4)上述した本発明の共同送迎計画作成システムは、前記探索処理が、ランダムサーチ、シミュレーテッドアニーリング、遺伝的アルゴリズムのいずれか又は複数の組み合わせにより行われるとよい。
【0019】
かかる構成によれば、効率的に探索処理を行うことができるので、最適解を効率的に算出することができる。そのため、探索処理時間の短縮効果が期待できる。ここで、ランダムサーチは、ランダムに各種の解を作成してコスト試算を行い、コストの低い解を見つけ出すものとされている。また、シミュレーテッドアニーリングは、最適化の初期では、コストが悪くなる解でも所定の確率で採用しつつ、最適化が進むにつれてその幅を少なくすることにより、コスト高となる小さい山を越えられるようにするものとされている。また、遺伝的アルゴリズムは、ランダムな各種の解を作成してコスト試算を行い、コストが低い複数の解をエリート(優れた解)として選択する。また、遺伝的アルゴリズムは、良い解同士を模倣して次の解を作成したり、突然変異を起こした解を作成したりすることにより、最適解に近い解を探索していくアルゴリズムとされている。
【0020】
(5)上述した本発明の共同送迎計画作成システムは、前記制約条件が、前記利用者の全員を送迎することと、前記車両における定員を超えないことと、前記車両の前記利用可能台数を超えないことと、を全て満たすとよい。
【0021】
かかる構成によれば、物理的に不可能な共同送迎計画や利用者の要求を満たさない共同送迎計画が作成されることを抑制することができる。なお、制約条件には、利用者の希望送迎時間、及び施設への到着時間を含めることができる。
【0022】
(6)上述した本発明の共同送迎計画作成システムは、前記目的関数が、前記利用者の前記送迎希望時間、前記施設への到着時間、総走行時間及び前記利用者のそれぞれの前記乗車時間の少なくとも1つに対する前記ずれ量に基づいて設定されるとよい。
【0023】
かかる構成によれば、利用者を考慮した目的関数を設定することができるので、利用者の負担を軽減できる。なお、利用者の希望送迎時間、施設への到着時間は上記制約条件とするほか、目的関数として設定することにより、少しのずれを許容した解を得られるようにすることもできる。ここで、例えば、利用者の乗車時間が長くなると、利用者の負担が大きくなるものと考えられる。従って、目的関数として、利用者のそれぞれの乗車時間を設定すれば、利用者の負担を軽減することができる。なお、上述した送迎希望時間、施設への到着時間、及び利用者のそれぞれの乗車時間は、利用状況に合わせて、いずれか1つ又は複数の組み合わせとすればよい。
【0024】
(7)上述した本発明の共同送迎計画作成システムは、前記施設を利用する利用時間を取得可能な利用時間取得部を有しており、前記利用時間は、前記施設への滞在時間を含むものであるとよい。
【0025】
かかる構成によれば、送迎の途中で利用者が、例えば、病院や買い物に立ち寄る場合であっても、これを考慮した共同送迎計画を作成することができる。また、介護施設等における滞在時間も含めることにより、「送」と「迎」の双方を考慮した共同送迎計画も作成することが可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、介護施設における共同送迎業務を効率化でき、複雑な制約条件の下でも、利用者の利便性や負担を考慮した共同送迎計画を効率的に作成することが可能な共同送迎計画作成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る共同送迎計画システムの一実施形態を表す全体構成図である。
図2】本発明に係る共同送迎計画システムにおける取得情報の一実施形態を表すデータテーブルである。
図3】共同送迎計画作成システムにおける処理全体の概略の流れを表すフロー図である。
図4】共同送迎計画作成における最適化の概略フロー図である。
図5】共同送迎計画作成における初期解作成のフロー図である。
図6】(a)は、共同送迎計画作成の初期解作成における送迎グループ作成の説明図であり、(b)は、初期解作成において利用者が降りる施設を追加する場合の説明図である。
図7】共同送迎計画作成の初期解作成におけるスケジュール作成の説明図である。
図8】(a)は、共同送迎計画の最適化における利用者の移動を表す説明図であり、(b)は、共同送迎計画の最適化における利用者の入替を表す説明図である。
図9】(a)は、共同送迎計画作成に係る送迎項目の具体例を表す説明図であり、(b)は、移動時間をマトリックス化した説明図である。
図10】共同送迎計画の最適化の具体例を表す説明図である。
図11】共同送迎計画の最適化の具体例を表す説明図である。
図12図11における車両属性を表す説明図である。
図13】共同送迎計画の最適化における地点間移動時間を示す説明図である。
図14】共同送迎計画の最適化における地点間の重なり時間を示す説明図である。
図15】共同送迎計画の最適化において、出発時間や到着時間を設定した状態を表す説明図である。
図16】共同送迎計画作成における最適化の処理の流れを表すフロー図である。
図17図16におけるステップS50の詳細を表すフロー図である。
図18】本発明に係る共同送迎計画作成システムの利用例を表す概略全体配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る共同送迎計画作成システム1の一実施形態について、図1図18を参照しつつ詳細を説明する。
【0029】
共同送迎計画作成システム1は、複数の利用者M(例えば、要介護者や高齢者等)を複数の車両Cを用いて複数の施設F(例えば、介護施設等)に送迎するための共同送迎計画を作成するものである。図1に示すように、共同送迎計画作成システム1は、予約情報取得部10と、利用者情報取得部20と、施設情報取得部30と、車両情報取得部40と、移動時間情報取得部55と、共同送迎計画立案部60と、を有している。共同送迎計画作成システム1は、前記の他、利用時間取得部50と、記憶部70等を有している。なお、共同送迎計画作成システム1は、例えば、端末装置(図示せず)やサーバ(図示せず)等で使用可能なプログラムとして提供することができる。
【0030】
予約情報取得部10は、利用者Mが送り届けて欲しい施設Fの場所及び利用者Mの自宅等の場所(送迎位置とも称する)と、送迎希望時間とを含む予約情報を取得することができる。具体的には、送迎位置として、送迎位置に関する緯度や経度に関する情報が取得される。また、送迎希望時間としては、施設Fに送り届けて欲しい希望時間、及び自宅に迎えに来て欲しい希望時間に関する情報(データ)が取得される。取得された予約情報は、例えば、後述する記憶部70に保存処理される。
【0031】
利用者情報取得部20は、利用者Mの属性を含む利用者情報を取得することができる。具体的には、利用者情報取得部20は、利用者Mの属性として、利用者Mの名前、性別、年齢、住所(送迎位置)、介護レベル(車椅子が必要か等)、利用する施設名、希望する車のサイズ等の各種の利用者に関する情報を取得することができる。取得された利用者情報は、例えば、記憶部70に保存処理される。
【0032】
ここで、利用者Mは、それぞれに割り当てられた利用者IDで管理される。利用者IDは、上述した名前、性別、年齢、住所等の個人情報と関連付けされている。また、本実施形態では、図2に示すように、利用者IDと関連付けて、利用者Mの送迎位置、乗車時間及び降車時間(乗降時間とも称する)、車椅子の利用の有無、車両サイズが、利用者情報取得部20によって取得される。利用者情報取得部20は、上記の情報の他、曜日・送迎区分ごとの利用有無、利用施設、送又は迎の希望時間等の送迎利用情報を取得することができる。なお、送迎利用情報の取得は、別途、送迎利用情報取得部(図示せず)を設けて、当該送迎利用情報取得部により取得するようにしてもよい。
【0033】
施設情報取得部30は、複数の施設Fの施設位置に係る情報を含む施設情報を取得することができる。具体的には、施設情報取得部30は、施設情報として、施設名や施設位置に関する緯度及び経度等の各種の施設Fに関する情報を取得することができる。取得された施設情報は、例えば、記憶部70に保存処理される。ここで、施設Fは、それぞれに割り当てられた施設IDで管理される。これにより、複数の利用者M及び複数の施設Fのそれぞれに対して、送迎位置が関連付けされる。また、複数の利用者Mのそれぞれに対して、希望時間が関連付けされる。
【0034】
車両情報取得部40は、車両Cの利用可能台数及び車両属性を含む車両情報を取得することができる。具体的には、車両の利用可能台数は、各施設が保有していて、該当する曜日などに送迎に利用することが可能な車両の台数である。また、車両属性として、例えば、車両サイズ(例えば、マイクロバス等の大型車、ワゴン車等の普通車、軽自動車等)、車両の座席数(例えば、一般席数、車椅子席数等)が取得される。取得された車両情報は、例えば、記憶部70に保存処理される。
【0035】
利用時間取得部50は、施設Fを利用する利用時間を取得することができる。前記利用時間は、例えば、施設Fへの滞在時間を含むものとすることができる。ここで、利用時間を取得する施設Fとして、例えば、利用者Mが立ち寄る病院や買い物先(店舗)などを設定することが可能である。取得された利用時間は、例えば、記憶部70に保存処理される。なお、本実施形態では、利用者情報取得部20により、利用者Mの乗降時間を取得しているが、利用時間取得部50が、前記乗降時間を取得するようにしてもよい。
【0036】
上述したように、利用時間取得部50を設けることにより、送迎の途中で利用者Mが、例えば、病院や買い物に立ち寄る場合であっても、これを考慮した共同送迎計画を作成することができる。また、介護施設等における滞在時間も含めることにより、「送」と「迎」の双方を考慮した共同送迎計画も作成することが可能である。なお、利用時間取得部50は、必要により設ければよく、利用時間取得部50を廃することもできる。
【0037】
移動時間情報取得部55は、車両Cが利用者Mの自宅や施設Fの間を移動する際の移動時間情報を取得することができる。移動時間情報は、例えば、移動距離や車両Cの平均速度、あるいは、渋滞情報などを基に算出された時間に基づいて取得される。移動時間情報は、例えば、走行頻度、時間帯等の実際の走行情報に基づいて、フィードバックしながら更新するようにしてもよい。
【0038】
共同送迎計画立案部60は、CPU等の演算装置を使用して、共同送迎計画を立案して作成することができる。共同送迎計画立案部60は、送迎位置及び施設位置に関する乗降位置と、前記乗降位置のそれぞれに対応する乗降時間と、を送迎単位とするものとされている。また、共同送迎計画立案部60は、所定の前記送迎単位をグループ化することにより複数の送迎グループを構成するものとされている。送迎グループの構成についての詳細は、後述する。
【0039】
また、共同送迎計画立案部60は、複数の車両Cの総走行時間を含む複数の目的関数を設定することができる。目的関数は、予め準備した所定の制約条件を満たすことを条件として設定される。
【0040】
ここで、制約条件は、例えば、全ての利用者Mの送迎を完了させること、地点間(区間)の想定移動時間より速い速度で移動しないこと、利用者M宅での乗降時間を考慮すること、利用可能な車両Cの数を超えて使用しないこと、車両Cの一般席数や車椅子席数を超える人数が乗車していないこと、及び利用者M宅付近で走行可能な車両C(車両Cの大きさの考慮)で送迎することなどの必然的に守らねばならない各種の事項について設定される条件である。
【0041】
上述した制約条件は、例えば、利用者Mの全員を送迎することと、車両Cにおける定員を超えないことと、車両Cの利用可能台数を超えないことと、を全て満たすものとすることができる。これにより、物理的に不可能な共同送迎計画や利用者Mの要求を満たさない共同送迎計画が作成されることを抑制することができる。
【0042】
また、目的関数(コスト関数とも称する)は、例えば、総走行時間、個々の利用者Mの乗車時間、利用者Mの送迎希望時間、施設Fへの送迎到着時間、及び席配置の考慮などの効率やコストに影響を及ぼす各種の事項について設定される関数である。そのため、共同送迎計画立案部60は、前記制約条件を満たした上で、効率やコストに影響を及ぼす事項について、考慮した共同送迎計画作成を行うことができる。目的関数の詳細は、後述する。
【0043】
共同送迎計画立案部60は、数理的最適化手法を用いて、前記目的関数の総和を最小化する探索処理を実行することができる。これにより、共同送迎計画立案部60は、目的関数の総和を最小化する最適解を取得することができる。従って、共同送迎計画立案部60は、前記最適解に基づいて共同送迎計画を作成することができる。すなわち、効率が良く、コストを低減できる共同送迎計画を作成することができる。ここでの探索処理には、各種の数理的最適化手法を好ましく用いることができる。また、探索処理は、適宜、サンプル数を所定の数量に制限して行うとよい。これにより、処理時間が必要以上に長くなることを抑制する効果が期待できる。共同送迎計画立案部60における具体的な処理は後述する。
【0044】
記憶部70は、共同送迎計画立案部60で作成された共同送迎計画を記憶することができる。記憶部70は、例えば、ハードディスクやメモリ等により構成されている。記憶部70は、共同送迎計画作成システム1に設けられるものだけではなく、適宜の外部サーバ等に記憶されるものとしてもよい。
【0045】
上述した共同送迎計画作成システム1は、各種の端末装置やサーバ等に設けることができる。また、共同送迎計画作成システム1は、プログラムとして提供されるものや、装置として提供されるものなど、各種の形態で提供することができる。
【0046】
以上が、本発明に係る共同送迎計画作成システム1の構成であり、次に、図3図5を参照しながら、共同送迎計画作成システム1における処理の一実施形態について説明する。
【0047】
図3は、共同送迎計画作成システム1における処理全体の概略の流れを表すフロー図である。まず、共同送迎計画立案部60における共同送迎計画の立案にあたり、共同送迎計画作成のための情報に関するデータが選択処理される(ステップS10)。ステップS10では、共同送迎計画作成に必要な予約情報、利用者情報、施設情報、車両情報等のデータが選択される。
【0048】
次に、選択されたデータが、記憶部70から読み込まれる(ステップS11)。必要なデータの読み込みが終了すると、共同送迎計画の作成処理が行われる(ステップS12)。共同送迎計画の作成が完了すると共同送迎計画が記憶部70に保存処理される(ステップS13)。ステップS13が終了すると、一連の処理を終了させるか、あるいは、再び、ステップS10からの処理が繰り返し行われる。以上が、本発明に係る共同送迎計画作成システム1における処理全体の概略の流れである。
【0049】
次に、共同送迎計画作成処理(ステップS12)におけるにおける共同送迎計画の作成の流れについて、図4に基づいて、以下に説明する。
【0050】
共同送迎計画作成の処理が開始されると、まず、共同送迎計画作成処理(ステップS12)が、必要な情報(データ)を受け取る(ステップS20)。続いて、初期解の作成が行われる(ステップS21)。なお、ステップS21における初期解作成の処理を初期解作成工程とも称する。詳細は後述するが、初期解の作成では、制約条件を満たしたある程度(まあまあ)な解が作成される。
【0051】
ステップS21において、初期解の作成が完了すると、初期解を最適化(コスト低減化)する処理が行われる(ステップS22)。詳細は後述するが、最適化は、所定回数繰り返し行われる。ステップS22が完了すると、作成された共同送迎計画が、ステップS12の処理に戻され、ステップS13で記憶部70に保存処理される。上述したように共同送迎計画作成システム1は、大きく分けて次の3つの処理工程を実行することにより、共同送迎計画を立案し作成する。まず、ステップS21において、制約条件を満たすこと条件とした初期解の作成が行われる。続いて、ステップS22において、初期解の最適化が行われる。続いて、最適化を指定回数繰り返すことによる最適解の取得が行われる。
【0052】
次に、図5に基づいて、初期解の作成についての概要を説明する。初期解の作成は、例えば、レベルA1~A3の3段階で行われる。
【0053】
まず、レベルA1(ステップS30)では、送迎項目(送迎単位とも称する)によるグループ化(送迎グループの形成)が行われる。レベルA1は、利用者Mを迎えて施設Fに送り届けることと、利用者Mを施設Fから自宅に送り届けることと、を別々に1送迎単位とし、一の項目と他の項目をどのようにグループ化すればよいかを決定するレベルである。
【0054】
ここで、送迎グループは、送迎位置及び施設位置に関する乗降位置(共に緯度、経度情報)と、乗降位置のそれぞれに対応する乗車時間及び降車時間と、を送迎単位として形成される。送迎グループは、複数の利用者M及び複数の施設Fに対してそれぞれ形成されている。従って、送迎位置及び乗降位置と、乗降時間と、に関する情報(データ)を送迎グループ単位で扱うことができる。すなわち、利用者Mにおける自宅から施設まで、及び利用者Mにおける施設から自宅までなどの「送」及び「迎」に関する情報を一般化してデータとして扱うことができる。これにより、一車両Cにおける乗車利用者の各々の「送」及び「迎」に関する情報を一元的に同一のロジックとして扱うことができる。なお、乗降位置等の位置情報は、緯度及び経度によるものだけではなく、住所そのものとして扱うものでもよい。
【0055】
ステップS30における送迎単位のグループ化が完了すると、レベルA2(ステップS31)として、それぞれの送迎グループに対して、車両Cの割り当てが行われる。レベルA2は、送迎グループと車両Cとの割り当てを最適化するレベルである。レベルA2では、送迎グループ内の利用者Mの席種指定、車両サイズ指定、人数などから最適な車両Cが決定される。
【0056】
ステップS31が完了すると、レベルA3(ステップS32)として、各送迎位置及び各乗降位置(地点とも称する)を回る順番の計算が行われる。レベルA3では、送迎グループ及び車両Cが決まった段階で、どの順番に地点を回れば効率が良いかが決定される。以上が、初期解作成処理の流れであり、次に、初期解の作成についての詳細を説明する。
【0057】
図6(a)は、初期解の作成における送迎グループの作成例を表したものである。図示において、利用者Mは、個々にM1~Mn(nは任意)、施設Fは、個々にF1~Fn(nは任意)、車両Cは、個々にC1~Cn(nは任意)である。
【0058】
初期解の作成は、上述したレベルA1~A3の各ステップに沿って行われる。具体的には、レベルA1として、利用者Mの送迎位置の緯度及び経度、送迎希望時間、施設Fの緯度及び経度、施設Fの出発及び到着時間の6軸の近いものが大枠でグループ化される。送迎グループ数は、利用可能な車両数(本実施形態では、車両C1~C3の3台)を最大とする。また、グループ化に際し、制約条件(例えば、全員を施設Fに送ること、及び車両Cの席種)を満たすことを条件として、送迎グループに車両Cが割り当てられる。なお、この段階では、車両Cの乗員数までは、考慮していない。
【0059】
図6(b)は、初期解の作成において、どの順番で地点を回ったら良いかを決定していく処理の状態を示したものであり、地点の回り方の一例を示したものである。ここで、利用者M2より利用者M8の方が施設F2に近い場合、利用者M2と利用者M8の順番を入れ替えた方が時間の短縮になる可能性がある。また、車椅子席の席数の都合で、利用者M3と利用者M5を乗せた後、施設F1に行っているが、利用者M3一人を乗せた後に施設F1に行き、そのあと利用者M5と利用者M10を乗せることでも席数の制約条件は満たすことができる。また、その方が時間短縮になる可能性もある。そのため、複数の組み合わせについて演算を行い、後述するスケジュール作成を行ってから、コストが少ない地点の回り方を採用することが行われる。
【0060】
図7(c)は、初期解の作成において、どの順番で地点を回ったら良いかを決定したリストに対して、各地点に寄る時間を付与したものである。到着出発時間は、到着出発の希望や指定の時間範囲がある地点に合わせ、乗降時間と移動時間を考慮したうえで決定するとよい。なお、送迎混合ではなく、「送」に対してスケジュールを作成する場合、到着時間は、最後に寄る施設Fから逆算し、乗降時間を考慮した上で決定すればよい。また、「迎」の場合は、時間軸の後ろ側から時間を決定すればよい。また、利用者Mの希望送迎時間がある場合は、利用者Mに合わせて出発時間又は到着時間全体を移行させればよい。なお、初期解の作成におけるスケジュール作成段階は、可能な範囲(希望送迎時間の範囲内に収まっていないものや途中に待ち時間があるものでもよい)で時間を合わせればよい。これにより、初期解が作成される。
【0061】
前記スケジュール作成が完了すると、作成された初期解についてのコスト試算が行われる。コスト試算は、例えば、次の項目により構成される目的関数に対して行われる。前記目的関数を構成する項目は、例えば、(1)総走行時間(目的関数)、(2)利用者Mの送迎希望時間からのずれ量、(3)施設Fへの到着時間が、希望時間の30分前以前になっているときの30分以前の部分の時間、(4)個々の利用者Mの乗車時間、が挙げられる。これらの項目に基づいて目的関数が設定され、それぞれの目的関数の総和によりコストが算出される。なお、上記(4)における個々の利用者Mの乗車時間は、例えば、60分以上のときの60分以上の部分の時間としてもよい。
【0062】
ここで、本実施形態では、上述した項目(2)~(4)に関するそれぞれの所定の目標値からのずれ量に対して、所定の重み付けが付与されている。これにより、例えば効率やコストに及ぼす影響が大きい項目に対して、大きな重みがつくように目的関数に対して重み付けが付与される。また、ずれ量を指数乗(例えば2乗)することにより、ずれ量が大きくなればなるほど、大きなコストになるようにすることができる。そのため、目的関数の総和が大きいほど、効率が悪くなったり、コストが増大したりする。なお、重み付けは、ずれ量の2乗だけではなく、ずれ量の3乗以上の重み付けが付与されるものでもよい。また、重み付けは、指数乗によるものだけではなく、各種の係数を使用することができる
【0063】
前記目的関数は、上述したように、利用者Mの送迎希望時間、施設Fへの到着時間、及び利用者Mのそれぞれの乗車時間の少なくとも1つに対する目標値からのずれ量に基づいて設定するとよい。これにより、利用者Mを考慮した目的関数を設定することができるので、利用者Mの負担を軽減できる。また、前記目的関数に、利用者Mのそれぞれの乗車時間に対するずれ量を設定することにより、利用者Mの乗車時間が長くなることを抑制でき、利用者Mの負担を軽減することができる。なお、上述した送迎希望時間、施設への到着時間、及び利用者のそれぞれの乗車時間は、利用状況に合わせて、いずれか1つ又は複数の組み合わせとすればよい。
【0064】
上述したように、本発明に係る共同送迎計画作成システム1では、初期解取得工程において、上述の各種情報や制約条件に基づいて、全ての送迎グループに対して、使用可能な車両を割り当てることにより、初期解を取得することができる。これにより、制約条件等を満たした、ある程度の解(初期解)を取得することができる。そのため、前記初期解を基準として、さらに最適な解を求める探索処理に付すことができる。
【0065】
次に、図4のステップS22における最適化の処理の詳細について以下に説明する。初期解の最適化の処理は、数理的最適化手法を用いた探索処理に基づいて行われる。用いる数理的最適化手法は、後述する。前記最適化の処理は、レベルB1~B3の3段階で行われる。
【0066】
まず、レベルB1は、送迎項目の送迎グループを少しずつ変更しながら、最良な組み合わせを探索していくものである。具体的には、一の送迎グループから一の送迎項目を削除し、他の送迎グループに組み入れる、又は一の送迎グループの一の送迎項目と、他の送迎グループの一の送迎項目とを交換することが行われる。
【0067】
図8(a)及び図8(b)は、レベルB1の具体例を示したものである。図8(a)は、利用者Mをランダムに選び、選択した利用者Mを一の送迎グループ(グループ1)から他の送迎グループ(グループ2)に移動させる場合を例示したものである。また、図8(b)は、グループ1の利用者M5とグループ2の利用者M7を交換させる場合を例示したものである。図示では、車両C1の利用者M24が、車両C2の利用者M7と入れ替えられる場合を示している。このように、レベルB1では、初期解を少し変化させた解が作成される。なお、レベルB1においては、初期解により車両Cに割り当てた送迎グループのうちの一又は複数の利用者Mについて、一の車両から他の車両C、又は一の車両Cから他の複数の車両Cに対して、ランダムに入れ替えることが行われる(利用者入替工程とも称する)。
【0068】
作成された解は、この後、後述するレベルB2以降の最適化処理が行われ、コストが下がっていた場合は、新しい解が採用され、コストが下がっていない場合は、元の解が採用される。なお、探索処理にシミュレーテッドアニーリングを用いる場合は、最適化の初期段階でコストが上がっている場合でも新しい解を採用することがある。
【0069】
レベルB2は、各送迎グループに対して、適切な車両Cを割り当てるものである。具体的には、送迎グループ内の利用者Mの席種指定及び車両サイズ指定を考慮した車両Cの割り当てを行い、後述するレベルB3における最適化を呼び出してコスト試算が行われる。また、レベルB2では、全ての可能な車両Cの割り当てを試して、レベルB3における最適化コストの和が一番低い組み合わせをレベルB2の最適解とする。
【0070】
レベルB3は、地点を回る順番及び時刻を最適化するものである。具体的には、指定された複数の送迎項目に対して、指定した車両Cで送迎する場合、どの地点に何時によれば一番効率が良いかをコスト試算する。
【0071】
上述したように、本発明に係る共同送迎計画作成システム1は、初期解を基準とした送迎グループを一単位として、利用者Mをランダムに入れ替えながら最適な解を求めるための探索処理を行うことができる。従って、複雑な処理を行うことなく、探索処理を簡素化することができる。
【0072】
次に、レベルB3の具体例について、図9図15に基づいて、以下に説明する。例えば、図9(a)に示すような利用者M、送迎位置、時間の3つの送迎項目を最適化する場合について説明する。
【0073】
図9(a)に示す場合は、重複も含めて、回らなければならない地点は、地点a1~a6の6地点あるので、これらをどの順番(移動順)に何時行くのが最適であるかを調べるとよい。そこで、効率を考慮しない場合は、図10に示すように地点a1、a2、a3、a4、a5、a6の順に回ることが一例として挙げられる。
【0074】
次に、図11に示すように、地点a2及び地点a3を入れ替えて、地点a1、a3、a2、a4、a5、a6の順に回ることを考える。当該順番で地点を回ることにより、地点a2、a4、a5に対して同時に行くことができる。しかしながら、図12に示すように、車両Cに車椅子席が1席しかない場合において、利用者M1及び利用者M2の2名が車椅子を利用する場合は、上述した順番に地点を回ることができない。そのため、車両Cの属性も考慮した上で、最適な地点の回り方が探索される。
【0075】
ここで、上述した地点を回る順番が決定されれば、どの地点にどの時刻に行くのが最短となるかは、基本的に一通りに決定できる。そのため、例えば、回り方の全部の組み合わせをコスト試算すれば、最適解を導き出すことができる。上述した場合の回り方の組み合わせは、6の順列(6の階乗通り)であるが、地点a1と地点a2が反転する組み合わせや、地点a5から地点a3などのように時間が前後する組み合わせは、不可能な組み合わせであるため、これらを削減していくことにより、コスト試算する時間を低減することができる。コスト試算を行う組み合わせは、全数に対して行うことも可能であるが、組み合わせの数が大きくなる場合は、所定の組み合わせ数のみ試算するようにしてもよい。このように、所定の組み合わせ数について制限した上で、コスト試算を行うようにすれば、コスト試算に要する時間を短縮することができる。
【0076】
上述したように、地点を回る順番を決定した場合は、各地点に何時行くかが基本的に一通りに決定される。そこで、上述した3つの送迎項目においては、図11に示す地点a1、a3、a2、a4、a5、a6の順に回る場合の各地点間の移動時間が考慮される。
【0077】
図13は、各地点間に移動時間(分)を記載したものであり、図9(b)は、各地点間の移動時間(分)をマトリックス化したものである。なお、実際には、往路と復路では移動時間が異なる場合があるが、ここでは、説明を単純化するために往路と復路の移動時間を同一にしている。
【0078】
図13に示すように、地点a2、a4、a5は、同一地点であり、時間帯も重複しているため、1つに集約することができる。なお、集約した地点情報は、地点b2とも称する。従って、集約後の地点を回る順番は、地点a1、a3、b2、a6として表すことができる。これにより、地点b2の時間帯は、図14に示すように、重複した時刻である12:40~13:00となる。
【0079】
ここで、地点a3及び地点b2は、時間指定が行われている。また、地点a3(利用者M2の自宅)と地点b2(施設F1)とは、移動時間が10分である。従って、地点a3及び地点b2に寄る時刻を決定する場合は、これらを考慮し、地点a3は、時間帯の最後である12:30に決定され、地点b2は、時間帯の最初である12:40に決定する。地点a1及び地点a6は、時間指定がないため、前後の地点から移動時間を考慮して計算し、最短の時刻を設定すればよい。このようにして、図15のごとく地点a1は12:20、地点a3は12:30、地点b2(地点a2、a4、a5)は12:40、地点a6は12:45に決定される。なお、実際には、利用者Mの乗降時間があるが、説明の便宜上、乗降時間は、考慮していない(実際のコスト試算においては、乗降時間も含めた計算が行われる)。
【0080】
ここで、上述した最適化を行うにあたり用いられる数理的最適化手法による探索処理について、以下に説明する。
【0081】
本発明に係る共同送迎計画作成システム1においては、前記探索処理が、例えば、ランダムサーチ、シミュレーテッドアニーリング、遺伝的アルゴリズムのいずれか又はこれらの複数の組み合わせにより行うことができる。なお、上記の探索処理は、一例を表したものであり、これら以外の数理的最適化手法を用いたり、これらの数理的最適化手法と他の数理的最適化手法とを組み合わせて用いたりすることもできる。
【0082】
前記ランダムサーチは、ランダムに各種の解を作成してコスト試算を行い、コストの低い解を見つけ出すものとされている。また、シミュレーテッドアニーリングは、最適化の初期では、コストが悪くなる解でも所定の確率で採用しつつ、最適化が進むにつれてその幅を少なくすることにより、コスト高となる小さい山を越えられるようにするものとされている。また、遺伝的アルゴリズムは、ランダムな各種の解を作成してコスト試算を行い、コストが低い複数の解をエリート(優れた解)として選択する。また、遺伝的アルゴリズムは、良い解同士を模倣して次の解を作成したり、突然変異を起こした解を作成したりすることにより、最適解に近い解を探索していくアルゴリズムとされている。従って、これらの数理的最適化手法を用いることにより、コスト高となる山が存在しても、乗り越えながら最適化が進められる。そのため、コスト高となる山が障害となって、最適化が途中で終了することを抑制することができる。
【0083】
上述したように、本発明に係る共同送迎計画作成システム1は、共同送迎計画の最適化を行うにあたり、上述した数理的最適化手法を用いるので、効率的に探索処理を行うことができ、最適解を効率的に算出することができる。そのため、探索処理時間を短縮することができる。
【0084】
以上が、共同送迎計画作成における最適化の詳細であり、次に、前記最適化における処理の流れについて、図16及び図17のフロー図を用いて説明する。
【0085】
図16に示すように、最適化の処理が開始されると、ステップS40として、ステップS40~ステップS43の間における所定回数の繰り返し処理(ループ1、前記レベルB1に相当)が実行される。ループ1では、まず、送迎項目の送迎グループ内の項目が変更される(ステップS50)。
【0086】
ステップS50における処理が開始されると、図17に示すように、ステップS51として、ステップS51~ステップS60の間における所定回数の繰り返し処理(ループ2、前記レベルB2に相当)が実行される。ループ2では、まず、送迎グループへの車両Cの割り当て変更が行われる(ステップS52)。
【0087】
ステップS52が完了すると、ステップS53として、ステップS53~ステップS57の間における所定回数の繰り返し処理(ループ3、前記レベルB3に相当)が実行される。ループ3では、まず、地点を回る順番が変更される(ステップS54)。ステップS54が完了すると、コスト計算(試算)が行われる(ステップS55)。ステップS55において、コスト計算されると変更前の解と変更後の解との比較が行われ、最適解が選択される(ステップS56)。ステップS56が完了すると、ステップS53~ステップS56までの間の処理が所定回数繰り返し行われる(ループ3、前記レベルB3に相当)。
【0088】
ループ3での処理が所定回数行われると、再びループ2におけるコスト計算が行われる(ステップS58)。ステップS58において、コスト計算されると変更前の解と変更後の解との比較が行われ、最適解が選択される(ステップS59)。ステップS59が完了すると、ループ2における処理が所定回数繰り返し行われる。ループ2における処理が、所定回数実行されると、ループ1におけるコスト計算が行われる(ステップS41)。ステップS41において、コスト計算されると変更前の解と変更後の解との比較が行われ、最適解が選択される(ステップS42)。ステップS42が完了すると、ループ1における処理が所定回数繰り返し実行される(ステップS43)。ループ1における処理が完了すると、最適化が終了する。これにより、共同送迎計画の作成が行われ、図3のステップS13における送迎計画保存処理が実行される。
【0089】
なお、本実施形態においては、上述したループ1~ループ3におけるそれぞれの繰り返し処理が所定回数行われるものとしているが、探索処理における組み合わせの数、共同送迎計画の作成精度、及び作成時間等に応じて、それぞれの繰り返し処理の回数は、適宜変更することが可能である。また、探索処理における組み合わせの数の全数について繰り返し処理を行うことも可能である。
【0090】
以上が、本発明に係る共同送迎計画作成システム1の最適化の処理の流れである。次に、共同送迎計画作成システム1の一利用形態について、図18を参照しながら、以下に説明する。
【0091】
図示のように共同送迎計画作成システム1は、各種のネットワークと接続することができる。本実施形態では、共同送迎計画作成システム1は、利用者用Web100と、送迎団体用Web101と、アプリ用API103,106と、問合せ用API104と、施設用Web105と、が接続されている。また、共同送迎計画作成システム1は、記憶部70を有しており、作成された共同送迎計画等のデータが、記憶部70に記憶されている。
【0092】
利用者用Web100は、利用者Mの端末からアクセス可能なものとされている。なお、利用者用Web100を含めて、共同送迎計画作成システム1は、適宜のパスワード等によりアクセス制限が施されている。アプリ用API103は、利用者Mのスマートフォンなどの端末のために提供された利用者用アプリ109を通じて、共同送迎計画作成システム1にアクセス可能となるように提供されるAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)である。
【0093】
送迎団体用Web101は、配車アルゴリズム102と接続されており、送迎団体108からのアクセスが可能なものとされている。配車アルゴリズム102は、共同送迎計画に基づいて、送迎団体用Web101に対して車両Cの最適な配車情報を提供する。これにより、送迎団体は、最適な配車情報を送迎団体用Web101に基づいて入手することができる。
【0094】
アプリ用API106は、ドライバ用アプリ107を通じて、共同送迎計画作成システム1にアクセス可能となるように提供されるAPIである。ドライバ用アプリ107は、車両Cを運転するドライバ(運転手)の端末に提供されるアプリケーションである。これにより、ドライバは、共同送迎計画を閲覧することができる。
【0095】
問合せ用API104は、利用者MがSNS110等(Twilio(登録商標)とも称する)により、共同送迎計画作成システム1にアクセス可能となるように提供されるAPIである。このように、共同送迎計画作成システム1では、利用者Mが共同送迎計画を閲覧したり、共同送迎計画を作成したりするための各種のネットワーク接続手段が提供されている。
【0096】
施設用Web105は、介護施設等の施設Fからアクセス可能なものとされている。これにより、施設Fから共同送迎計画を閲覧したり、共同送迎計画を作成したりすることが可能である。
【0097】
また、共同送迎計画作成システム1は、サーバ等の外部システム111と接続されている。例えば、外部システム111がサーバである場合、共同送迎計画作成の一部又は全部について、外部システム111を用いて演算等することができる。これにより、共同送迎計画作成システム1の負荷を軽減したり、演算の高速化を図ったりすることが可能である。なお、上述した利用形態は、各種の変形を行うことが可能である。例えば、共同送迎計画作成システム1を外部システム111上に配置することができる。
【0098】
以上が、本発明に係る共同送迎計画作成システム1の一実施形態であるが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、各種の変形を行うことができる。
【0099】
本実施形態では、複数の利用者Mを複数の車両Cを用いて複数の施設Fに送迎するための共同送迎計画を作成しているが、利用者M、車両C、施設Fのいずれか又は全部が単数の場合でも使用することが可能である。また、予約情報取得部10、利用者情報取得部20、施設情報取得部30、車両情報取得部40で取得する情報は、実施形態のものに限定されず、適宜変更することができる。
【0100】
また、共同送迎計画立案部60で設定される送迎単位は、送迎位置及び施設位置に関する乗降位置と、乗降位置のそれぞれに対応する乗車時間及び降車時間に限定されるものではなく、作成する計画に応じて適宜変更することができる。また、送迎グループにおいても、グループ化する送迎単位は、適宜変更することができる。また、目的関数は、車両Cの総走行時間を含まないものとすることもできる。かかる場合は、他の優先すべき送迎項目を含む目的関数を設定すればよい。
【0101】
本実施形態では、前記探索処理が、複数の送迎グループにおいて、予約情報、利用者情報、施設情報、車両情報、及び制約条件に基づき、全ての送迎グループに対して、使用可能な車両Cを割り当てることにより初期解を取得する初期解取得工程を設けているが、初期解取得工程における制約条件は、適宜変更することができる。また、初期解取得工程における送迎グループの作成や、車両Cの割り当ては、全ての送迎グループや全ての車両Cについて行うものでなくてもよい。かかる場合は、必要な送迎グループや車両Cを選択すればよい。
【0102】
本実施形態では、目的関数において、目標値からのずれ量が指数乗に変換されることにより集計されるものとしたが、目標値からのずれ量が指数乗への変換以外の手法により集計されてもよい。また、目標値からのずれ量が少ないものに対して優位性を付与するようにしてもよい。かかる場合は、ずれ量が、優位値として集計されるようにすればよい。また、本実施形態では、重み付けが、ずれ量に対して2乗となるように付与されているが、重み付けは、ずれ量の2乗だけではなく、ずれ量の3乗以上の重み付けが付与されるものでもよい。また、重み付けは、指数乗によるものだけではなく、各種の係数を使用することができる。
【0103】
本実施形態では、探索処理が、ランダムサーチ、シミュレーテッドアニーリング、遺伝的アルゴリズムのいずれか又は複数の組み合わせにより行われるものとしたが、探索処理は、上記のものには限定されず、各種の数理的最適化手法を用いて探索処理を行うことができる。また、これら以外の数理的最適化手法を用いたり、これらの数理的最適化手法と他の数理的最適化手法とを組み合わせて用いたりすることもできる。
【0104】
本実施形態では、制約条件が、利用者Mの全員を送迎することと、車両Cにおける定員を超えないことと、車両Cの利用可能台数を超えないことと、を全て満たすものとしたが、制約条件は、上記の条件に限定されるものではなく、各種の項目について設定することができる。
【0105】
本実施形態では、目的関数が、利用者Mの送迎希望時間、施設Fへの到着時間、及び利用者Mのそれぞれの乗車時間の少なくとも1つに対する目標値からのずれ量に基づいて設定されるものとしたが、目的関数は、上記のものに限定されるものではなく、各種の送迎項目について設定することができる。また、目標値や目標値からのずれ量は、適宜、送迎項目に合わせて変更することが可能である。
【0106】
本実施形態では、施設Fを利用する利用時間を取得可能な利用時間取得部50を設けているが、利用時間取得部50を設けない構成とすることもできる。また、利用時間取得部50に代えて、施設情報取得部30において、施設F等の利用時間(滞在時間等)を取得することもできる。本実施形態では、作成された共同送迎計画を記憶部70に保存処理するようにしているが、記憶部70を廃することもできる。かかる場合は、外部システム111等の記憶手段を用いるようにしてもよい。
【0107】
以上が、本発明に係る共同送迎計画作成システム1の各種の実施形態や変形例であるが、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の共同送迎計画作成システムは、介護施設や病院等の各種の施設における利用者の共同送迎に利用することができる。
【符号の説明】
【0109】
1 :共同送迎計画作成システム
10 :予約情報取得部
20 :利用者情報取得部
30 :施設情報取得部
40 :車両情報取得部
50 :利用時間取得部
55 :移動時間情報取得部
60 :共同送迎計画立案部
70 :記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
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図16
図17
図18