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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】電池保護部材、および車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20241115BHJP
   B60R 19/18 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60R19/18 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021175830
(22)【出願日】2021-10-27
(65)【公開番号】P2022070848
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】202011164713.3
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲澤▼明
(72)【発明者】
【氏名】松岡 聖彦
(72)【発明者】
【氏名】梁 春朗
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-032930(JP,A)
【文献】特開2018-042314(JP,A)
【文献】特開2020-185936(JP,A)
【文献】特開2019-188924(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102019122171(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00 - 6/12
B60K 7/00 - 8/00
B60K 16/00
B60R 16/04
B60R 19/16 -19/22
B62D 17/00 -25/08
B62D 25/14 -29/04
H01M 50/20 -50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と固定部とを備える電池保護部材であって、
前記電池保護部材は、前記固定部によって車両底部に連結され、電池パックの前方に位置して電池パックと間隔を開けて設けられ、
前記電池パックの先端は、前記電池保護部材の少なくとも一部が前記固定部を中心とする回転半径範囲内に位置し、
前記本体部の前側には、上から下に向かって後方に延びる傾斜面が形成され、
前記傾斜面が衝突を受けたときに、前記傾斜面と水平方向との間の角度が小さくなり、
前記電池保護部材が前記車両底部に取り付けられたときに、前記傾斜面の最高点は、車両のサブホルダーの最低点よりも高くなることを特徴とする、電池保護部材。
【請求項2】
前記電池保護部材は、前記傾斜面が衝突を受けたときに、前記傾斜面と水平方向との間の角度が小さくなるように、前記固定部と前記車両底部との連結部を基点として後方に偏向することを特徴とする、請求項1に記載の電池保護部材。
【請求項3】
前記傾斜面の最低点は、前記電池パックの先端の最低点よりも低くなることを特徴とする、請求項1に記載の電池保護部材。
【請求項4】
前記本体部の内部には、バッファチャンバが形成され、前記傾斜面の一部は、前記バッファチャンバの構造面であることを特徴とする、請求項1に記載の電池保護部材。
【請求項5】
前記固定部および前記車両底部の連結部と、前記バッファチャンバの上腔壁との間には、予め設定された距離を有することを特徴とする、請求項に記載の電池保護部材。
【請求項6】
前記本体部の後側縁は、下方に延びて第1の弧状フランジが形成され、及び/又は、前記傾斜面の上端縁は、前方に延びて第2の弧状フランジが形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電池保護部材。
【請求項7】
前記電池保護部材は、上板と下板とを備え、前記上板が前記下板と固定されて接続され、バッファチャンバが囲まれて形成され、前記傾斜面が前記下板の前側面によって形成され、前記上板の前側面が前記傾斜面の上部に密着され、前記傾斜面の下部が前記バッファチャンバの構造面であり、前記固定部が前記上板及び/又は前記下板に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電池保護部材。
【請求項8】
前記上板の前側面は前記下板の前側面に密着し固定され、前記上板の前側面の上端縁の高さは前記下板の前側面の上端縁よりも低く、前記上板の前側面には間隔を開けて分布した複数の第1の補強構造が設けられ、前記下板の前側面には間隔を開けて分布した複数の第2の補強構造が設けられていることを特徴とする、請求項に記載の電池保護部材。
【請求項9】
本体部と固定部とを備える電池保護部材であって、
前記電池保護部材は、前記固定部によって車両底部に連結され、電池パックの前方に位置して電池パックと間隔を開けて設けられ、
前記電池パックの先端は、前記電池保護部材の少なくとも一部が前記固定部を中心とする回転半径範囲内に位置し、
前記本体部の前側には、上から下に向かって後方に延びる傾斜面が形成され、
前記傾斜面が衝突を受けたときに、前記傾斜面と水平方向との間の角度が小さくなり、
前記電池保護部材は、前記電池パックの先端に当接するためのストッパ部をさらに備え、前記ストッパ部は、前記本体部の後側縁から後方に延びて形成されていることを特徴とする電池保護部材。
【請求項10】
本体部と固定部とを備える電池保護部材であって、
前記電池保護部材は、前記固定部によって車両底部に連結され、電池パックの前方に位置して電池パックと間隔を開けて設けられ、
前記電池パックの先端は、前記電池保護部材の少なくとも一部が前記固定部を中心とする回転半径範囲内に位置し、
前記本体部の前側には、上から下に向かって後方に延びる傾斜面が形成され、
前記傾斜面が衝突を受けたときに、前記傾斜面と水平方向との間の角度が小さくなり、
前記傾斜面と水平方向との間の角度が35度以下であることを特徴とする電池保護部材。
【請求項11】
車両底部を備え、前記車両底部に電池パックが取り付けられた車両において、前記電池パックの前方には、請求項1~10の何れか一項に記載の電池保護部材が設けられていることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の技術領域、より具体的に、電池保護部材および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、車載の電池を動力として、モーターを用いて車輪を駆動し、道路交通安全の法律の各要求を満たす車両である。このために、電気自動車に取り付ける電池の安定や安全などを確保することは非常に重要である。
【0003】
現存の電気自動車の電池パックでは、電池を収容する機能のみを備え、電池パックのコネクターに対する保護もない。また、車両シャーシのレイアウトは、複雑であり、美粧性に欠けている。電池パックの先端を遮蔽して保護することがないため、障害物が電池パックの先端を擦ることで容易に電池パックの先端にダメージをもたらし、電池の安全を脅す恐れがある。現存の電池保護構造は、低速運転時(例えば、5km/hより低い速度)の障害物の衝突しか対応できないため、より高い時速(例えば、5km/h、6km/hなど)で運転する場合電池パックに対する保護を満足できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、電池パックの先端が車両底部に露出し、容易に障害物によるかき傷で損傷することを回避することができる電池保護部材および車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するために、本発明の一つの実施形態は、本体部と固定部を備える電池保護部材を提供する。前記電池保護部材は、前記固定部によって車両底部に接続され、電池パックの前方に位置して電池パックと離間して設けられ、前記電池パックの先端は、前記電池保護部材が前記固定部を中心とする回転半径範囲内に少なくとも部分的に位置し、前記本体部の前側には、上から下に向かって後方に延びる傾斜面が形成され、前記傾斜面が衝突を受けたときに、前記傾斜面と水平方向との間の角度が小さくなる。
【0006】
電池保護部材は、電池パックの前方に位置して電池パックと離間して設けられることで、電池保護部材が十分な衝突変形空間を確保できる。障害物による衝突を受ける際、電池保護部材は、偏向変形することにより障害物の衝突で発生したエネルギーを吸収する。電池保護部材が偏向してから、傾斜面の傾斜角が小さくなることにより傾斜面で障害物を支点として車両全体を持ち上げることにより、障害物がスムーズに電池パックの先端を通過する。電池パックの先端の少なくとも一部が電池保護部材の固定部を中心とする回転半径の範囲内に位置することは、電池パックの先端に対する保護効果を確保するためである。電池保護部材と電池パックとの間隔が過大になることを防止することは、障害物が電池保護部材を通過しても電池パックの先端に衝突できる状況を回避すると同時に、電池保護部材がある程度偏向変形しても電池パックの先端に当接することできることにより、電池保護部材が過度に偏向することを防止するためである。上述の構成は、電池パックの先端を全面的に保護し、より高い運転速度の際にも電池パックの先端を保護することができる。
【0007】
さらに、前記電池保護部材は、前記傾斜面が衝突を受けたときに、前記傾斜面と水平方向との間の角度が小さくなるように、前記固定部と前記車両底部との接続箇所を基点として後方に偏向してもよい。
【0008】
電池保護部材は、後方に偏向することによって衝突力を吸収し、傾斜面の傾斜角が小さくなることにより、傾斜面の箇所で障害物を支点として車両全体を持ち上げる。このため、障害物がスムーズに電池パックの先端を通過することができ、電池パックの先端に対する衝撃を緩和し、保護することができる。
【0009】
さらに、前記傾斜面の最低点は、前記電池パックの先端の最低点よりも低くなってもよい。
傾斜面の位置が電池パックの先端に対して低くなることは、傾斜面を通過できる障害物が電池保護部材の保護により電池パックの先端に対して衝突しないことで、電池保護部材の下方を直接通過する障害物が電池パックの先端に衝突することを防止できる。
【0010】
さらに、前記電池保護部材が前記車両底部に取り付けられたときに、前記傾斜面の最上点は、車両のサブホルダーの最低点よりも高くなってもよい。
車両のサブホルダーの最低点は、ほぼ車両の先端底部の最低点であるため、車両底部に進入できる任意の高さを有する障害物が先に電池保護部材に衝突することにより、車両底部に進入できる障害物が電池パックの先端に衝突することを有効的に阻止できる。
【0011】
さらに、前記本体部の内部には、バッファチャンバが形成され、前記傾斜面の一部は、前記バッファチャンバの構造面であってもよい。
電池保護部材は、自身の偏向変形およびバッファチャンバによって、障害物の衝突によって発生したエネルギーを吸収し、衝突力に対する二重吸収により、障害物の衝突力が電池パックの先端に作用することを防止し、より好適に電池パックの先端を保護する。同時に、衝突力に対して二重吸収することにより、本構成がより強い衝突力に対応することができるため、より高い運転時速で電池パックの先端に対する保護が比較的に弱いという課題を解決することができる。
【0012】
さらに、前記固定部と前記車両底部との連結部と、前記バッファチャンバの上腔壁との間には、予め設定された距離を有してもよい。
電池保護部材が偏向変形する際、この予め設定された距離を有することにより、電池保護部材の偏向可能な範囲が大きくなり、車両底部のワイヤハーネスおよび電池パックの先端に容易に衝突することはない。電池保護部材は、偏向距離が大きくなる場合のみワイヤハーネスおよび電池パックの先端に衝突するため、高い運転速度で障害物との衝突が発生する際、衝突力が比較的に大きくても、電池保護部材が依然として電池パックの先端に対して保護することができる。
【0013】
さらに、前記電池保護部材は、前記電池パックの先端に当接するためのストッパ部をさらに備え、前記ストッパ部は、前記本体部の後側縁から後方に延びて形成されていてもよい。
電池保護部材がある程度偏向変形すると、ストッパ部が電池パックの先端に当接することにより、電池保護部材がさらに偏向変形することで電池パックの先端にダメージを与えることを有効的に防止できる。
【0014】
さらに、前記本体部の後側縁は、下方に延びて第1の弧状フランジが形成され、及び/又は、前記傾斜面の上端縁は、前方に延びて第2の弧状フランジが形成されていてもよい。
電池保護部材が偏向変形すると、第1の弧状フランジ及び/又は第2の弧状フランジが付近のワイヤハーネスに接触しても、直接ワイヤハーネスを切断することがなく、ワイヤハーネスをある程度保護できる。
【0015】
さらに、前記電池保護部材は、上板と下板とを備え、前記上板が前記下板と固定接続され、バッファチャンバが囲まれて形成され、前記傾斜面が前記下板の前側面によって形成され、前記上板の前側面が前記傾斜面の上部に密着され、前記傾斜面の下部が前記バッファチャンバの構造面であり、前記固定部が前記上板及び/又は前記下板に形成されていてもよい。
上記の前側面が傾斜面の上部の表面に密着することにより、傾斜面の上部は、上板と下板とが密着して一緒に上方に向かって延びて形成されるため、より高い剛性を有する。障害物の衝突を受ける際、傾斜面の上部は衝突によるより大きな衝撃を受け止めて、衝突によって容易に変形することがない。上板と下板とが囲んでバッファチャンバを形成することで、バッファチャンバも一部の衝突力を吸収することができるため、全体的に電池保護部材による衝撃防止の性能をさらに向上できる。
【0016】
さらに、前記上板の前側面は前記下板の前側面に密着固定され、前記上板の前側面の上端縁の高さは前記下板の前側面の上端縁よりも低く、前記上板の前側面には離間して分布した複数の第1の補強構造が設けられ、前記下板の前側面には離間して分布した複数の第2の補強構造が設けられていてもよい。
周辺のワイヤハーネスへのダメージを防ぐために下板の前側面の上端縁に第2の弧状フランジが設けられている。上板の前側面の上端縁が周辺のワイヤハーネスに対するダメージを防ぐために、上板の前側面の上端縁の高さが下板の前側面の上端縁の高さよりも低くなる必要がある。この構成により、上板の前側面の上端縁も同様に周辺のワイヤハーネスに対するダメージがないことを保証できる。この二つの構成が高度差を有することで、傾斜面の上部の剛性を確保するために、上板と下板で複数の第1の補強構造と第2の補強構造とを設けることで、さらに傾斜面の構造強度を向上させ、傾斜面の剛性を向上させることができる。
【0017】
さらに、前記傾斜面と水平方向との間の角度が35度以下であってもよい。
傾斜面が衝突力を受けると、この衝突力を分解することができる。このような構造により、傾斜面が受ける後方への衝突力の成分が比較的に小さくなり、電池保護部材が後方へ偏向する幅が大きくなりすぎることがない。このため、電池パックの先端に衝突する確率が比較的に小さくなり、より好適に電池パックの先端の安全を保護することができ、かつ、より高い運転速度時の障害物衝突問題に対応できる。
【0018】
本発明は、車両底部を備え、前記車両底部に電池パックが取り付けられ、前記電池パックの前方には、上述の電池保護部材が設けられている車両を提供している。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上述の各形態に係る電池保護部材によれば、傾斜面およびバッファチャンバを備え、傾斜面で障害物の衝突を受けることで電池保護部材が後方へ偏向変形すると同時に、バッファチャンバも衝突を吸収することで障害物との衝突で発生したエネルギーを二重吸収することにより、電池パックの先端が車両底部に露出し、容易に障害物に引っ掛けられることにより損傷する技術課題を解決できる。このため、電池パックの先端が障害物に引っ掛けるリスクを有効的に減らし、より高い運転速度の場合でも電池パックの先端の安全を保護できる。さらに、ストッパ部を設けることにより、電池保護部材の過大偏向で電池パックの先端へのダメージを防ぐことができる。フランジの構造も周辺のワイヤハーネスに対して保護する作用を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電池保護部材の立体模式図である。
図2】本実施形態に係る電池保護部材の他の角度からの立体模式図である。
図3】本実施形態に係る電池保護部材の左側の模式図である。
図4】本実施形態に係る電池保護部材の動作状態を示す一つ目の模式図である。
図5】本実施形態に係る電池保護部材の動作状態を示す二つ目の模式図である。
図6図4の断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る電池保護部材の立体模式図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る電池保護部材の左側の模式図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る電池保護部材の動作状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の技術課題、技術構成および効果をより明確に説明するために、以下、図面および実施形態を参照し、本発明をより詳細に説明する。ここで、具体的な実施形態は、本発明の構成を説明するために記載しており、本発明を限定する目的ではない。
以下の説明に用いる図面は、本発明のいくつかの実施形態であり、本技術領域の当業者にとって、これらの図面を参照して、その他の関連する図面を取得できる。
【0022】
以下の説明において、部品が別の部品に「固定される」、「設置される」、あるいは「連結される」ことは、この部品が直接または間接的に別の部品の上に位置することができる。用語「前」、「後」、「上」、「下」、「左」、および「右」などが示す方位や位置関係は、添付の図面に基づいた方位や位置関係であり、説明を簡易にするために用いられる。これらの用語は、装置や部品などが必ず特定の方位や位置関係を有して、特定の操作を有することを示すあるいは暗示する目的で使用されることはない。このため、これらの用語は、本発明に対する限定ではなく、本技術領域の当業者にとって、具体的な状況に基づいて上述の用語の意味を理解することができる。用語「第一」および「第二」は、説明を簡易にするために用いられ、構成の重要性や、技術構成の数量を示すあるいは暗示する目的で使用されることはない。用語「複数」の意味は、その他の特別な限定がない限り、二個または二個以上を意味する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1から図4を参照すると、本実施形態に係る電池保護部材1は、本体部11と固定部12とを備える。電池保護部材1は、固定部12を介して車両底部2に連結され、かつ、電池保護部材1は、電池パック3の前方に位置し、電池パック3から間隔を開けて配置される。この構成により、電池保護部材1が十分な衝突変形空間を有する。電池パック3の先端は、少なくとも一部が電池保護部材1における、固定部12を中心とする回転半径の範囲内にある。この構成により、電池パック3の先端を保護できながら、電池保護部材1と電池パック3との間隔距離が過大になることを防ぐことで、障害物が通過した後依然として電池パック3の先端に衝突することを避ける。同時に、電池保護部材1は、ある程度偏向変形しても、電池パック3の先端に当接することができ、電池保護部材1の過大な偏向を阻止することができる。本体部11の前側には、上方から下方および後方へ延びる傾斜面111が形成されることで、電池保護部材1が傾斜面111を介して衝突を受ける。
【0024】
より具体的に、固定部12は、本体部11から車両底部2に向かう方向に延びて形成される。固定部12は、ボルトを介して車両底部2に固定され連結されることにより、電池保護部材1の全体を車両底部2に取り付けることができる。固定部12は、ボルトを介する方式以外の固定方式を採用してもよい。電池保護部材1の取付が完成すると、本体部11は、水平に配置され、かつ、車両底部2に露出している電池パック3から間隔を開けて設置される。電池パック3の先端は、少なくとも一部が電池保護部材1における、固定部12を中心とする回転半径範囲内に位置する。本体部11の傾斜面111は、電池パック3の前方において、電池パック3を遮蔽する。傾斜面111が障害物の衝突を受けて、かつ、障害物による反力が電池保護部材1が偏向する閾値を超える際、電池保護部材1は、固定部12と車両底部2との連結部120を基点として後方へ偏向する。図4から図6を参照し、この過程において、電池保護部材1は、自身の偏向変形により、障害物の衝突で発生するエネルギーを吸収し、傾斜面111と水平方向との角度αが徐々に小さくなる。このため、傾斜面111で障害物を支点として車両全体を持ち上げて、障害物がスムーズに電池パック3の先端を通過させることができる。その結果、障害物が直接電池パック3の先端に衝突し、電池パック3の先端にインパクトを与えることを防止し、電池パック3の先端に対して全面的に保護することを実現できる。
【0025】
さらに、図4を参照すると、本実施形態において、傾斜面111の最低点は、電池パック3の先端の最低点よりも低い。すなわち、傾斜面111の位置は、電池パック3の先端に対して低い。この構成により、電池保護部材1により、傾斜面111を通過できる障害物が電池パック3の先端に衝撃を与えることを防止できる。このため、電池保護部材1の下方を直接通過する障害物が電池パック3の先端に衝突することが防止でき、電池パック3の先端に対して有効に保護できる。
【0026】
さらに、図4を参照すると、本実施形態において、電池保護部材1が車両底部2に取り付けられる際、傾斜面111の最高点は、車両のサブホルダー(未図示)の最低点よりも高い。車両のサブホルダーの最低点は、ほぼ車両先端底部の最低点であるため、言い換えれば、車両の地面との隙間に進入できる障害物は、全て傾斜面111にブロックされて、電池パック3の先端に衝突することがない。すなわち、車両底部2に進入できる任意の高さを有する障害物は、全て先に電池保護部材1に衝突するため、電池パック3の先端に対する衝撃を有効に阻止できる。
【0027】
さらに、図1図3および図6を参照すると、本実施形態において、本体部11の内部には、バッファチャンバ110が形成される。傾斜面111の一部は、バッファチャンバ110の構造面である。より具体的に、バッファチャンバ110は、本体部11の複数の構造面に囲まれて形成されたキャビティである。傾斜面111は、本体部11の前構造面であり、傾斜面111の一部と本体部の上構造面、下構造面、左構造面、右構造面、および後構造面とが囲んでバッファチャンバ110を形成する。電池保護部材1は、自身の偏向変形とともにバッファチャンバ110を介して障害物衝突で発生したエネルギーを吸収する。衝突力に対する二重吸収により、障害物の衝突力が電池パック3の先端に作用することを防止し、より好適に電池パック3の先端を保護できる。さらに、衝突力を二重吸収できるため、電池保護部材1は、より強い衝突力に対応することができ、より高い運転時速で電池パック3の先端に対する保護が比較的に弱い課題を解決できる。
【0028】
さらに、図1図3図4、および図6を参照すると、本実施形態において、固定部12および車両底部2を連結する連結部120と、バッファチャンバ110の上腔壁との間は、予め設定された距離を有する。電池保護部材1の取付が完成すると、本体部11の上端面と車両底部2の間に十分の隙間がある。電池保護部材1が偏向変形すると、この予め設定された距離により、電池保護部材1の偏向変形可能な範囲が増大し、かつ、偏向変形する過程において、電池保護部材1が容易に車両底部2におけるワイヤハーネスと電池パック3の先端に衝突することがない。電池保護部材1は、偏向する距離が比較的に大きい場合のみ、ワイヤハーネスおよび電池パック3の先端に衝突することが可能である。このため、より高い運転時速で障害物による衝突が発生する場合において、衝突力が比較的に大きくても、電池保護部材1が依然として電池パック3の先端を保護することができる。
【0029】
さらに、図1および図3から図6を参照すると、本実施形態において、電池保護部材1は、電池パック3の先端に当接するためのストッパ部13を含む。ストッパ部13は、本体部11の後側縁から後方へ延びて形成され、すなわち、ストッパ部13が本体部11の後側へ突出する。電池保護部材1と障害物と衝突し、傾斜面111と水平方向との角度αがある程度減少すると、ストッパ部13が電池パック3の先端に当接し、電池保護部材1がさらに後方へ偏向することを阻止する。このため、電池保護部材1がさらに偏向変形し、電池パック3の先端にダメージを与えることを防止できる。
【0030】
さらに、図1および図3を参照すると、本実施形態において、第1の弧状フランジ131は、本体部11の後側縁から下方へ向かって延びて形成される。すなわち、第1の弧状フランジ131は、ストッパ部13において、本体部11から遠く離間する縁から下方へ向かって延びることによって形成される。この構成により、ストッパ部13において、本体部11から遠く離間する縁に鋭利な断面が形成することを避ける。電池保護部材1が偏向変形し、ストッパ部13が車両底部2のワイヤハーネスに衝突する際、第1の弧状フランジ131は、周辺のワイヤハーネスに接触しても、直接ワイヤハーネスを切断することがないため、ワイヤハーネスを保護できる。
【0031】
さらに、図1および図3を参照すると、本実施形態において、第2の弧状フランジ112は、傾斜面111の上端縁から前方および下方へ延びて形成される。すなわち、本体部11の前側の上端縁が折り畳まれて処理されている。これにより、傾斜面111の上端縁に鋭利な断面が形成することを避ける。この構成により、電池保護部材1が偏向変形し、車両底部2のワイヤハーネスに衝突する際、第2の弧状フランジ112は、周辺のワイヤハーネスに接触しても、直接ワイヤハーネスを切断することがないため、ワイヤハーネスを保護できる。
【0032】
さらに、図1図3、および図6を参照すると、本実施形態において、電池保護部材1は、上板14および下板15を備える。上板14と下板15とは、互いに固定されて連結され、かつ、バッファチャンバ110を囲んで形成する。本体部11は、上板14と下板15とを繋げて形成される。固定部12は、同様に上板14と下板15とを繋げて形成され、かつ、車両底部2に向かって延びている。傾斜面111は、下板15の前側面により形成される。上板14の前端部が傾斜面111の上部の表面上に密着し、傾斜面111の下部は、バッファチャンバ110の構造面である。具体的に、下板15の前端部が上方および前方に向かって傾斜して伸びて傾斜面111を形成する。上板14の前端部が上方および前方に向かって傾斜して伸びて前側面を形成する。上板14の前側面は、傾斜面111の上部において、上板14側に近い表面上に溶接されているため、傾斜面111の剛性を向上させる。障害物の衝突を受ける際、傾斜面111の上部がより大きい衝突による衝撃を受け止めることができ、衝突によって容易に変形することがない。バッファチャンバ110は、上板14の中間部と、下板15の中間部と、下板の左右端部の下部とに囲まれて形成されている。バッファチャンバ110は、電池保護部材1の偏向変形とともに障害物の衝突で発生するエネルギーを吸収することができるため、さらに電池保護部材1の衝突防止性能を向上できる。
【0033】
さらに、図1図2、および図6を参照すると、本実施形態において、上板14の前側面と下板15の前側面とが密着して固定されている。上板14の前側面の上端縁の高さは、下板15の前側面の上端縁の高さよりも低い。上板14の前側面上に、間隔を開けて複数の第1の補強構造141が分布されている。下板15の前側面上に、間隔を開けて複数の第2の補強構造151が分布されている。具体的に、第1の補強構造141および第2の補強構造151は、それぞれ補強溝あるいは補強槽として形成できる。複数の第1の補強構造141は、上板14の長さ方向に沿って、等間隔で上板14の前側面に分布されている。複数の第2の補強構造151は、下板15の長さ方向に沿って、等間隔で下板15の前側面に分布されている。傾斜面111において、第1の補強構造141と第2の補強構造151とは、一対一で重なって形成されている。また、第1の補強構造141と第2の補強構造151とは、重なって形成される構成に限定されない。下板15の前側面の上端縁に第2の弧状フランジ112が形成されて、周辺のワイヤハーネスへのダメージを防止する。上板14の前側面の上端縁が周辺のワイヤハーネスに対するダメージを防ぐために、上板14の前側面の上端縁の高さが下板15の前側面の上端縁の高さよりも低いことが必要である。これにより、上板14の前側面の上端縁も周辺のワイヤハーネスに対するダメージがないことを確保できる。上板14と下板15との間に高度差が有することで、傾斜面111の上部の剛性を確保するために、上板14および下板15にそれぞれ複数の第1の補強構造141および第2の補強構造151を設置することにより、傾斜面111の構造強度を向上させ、さらに傾斜面111の剛性を向上できる。上板14および下板15のその他の部分、例えば中間部などにおいて、補強構造を設置することにより、電池保護部材1の剛性を向上させることができる。
【0034】
その他、本実施形態において、ストッパ部13は、上板14の後端部と下板15の後端部とを繋げて形成される。上板14の後端部に、長さ方向に沿って、間隔を開けて複数の第3の補強構造142が分布されている。下板15の後端部に、長さ方向に沿って、間隔を開けて複数の第4の補強構造152が分布されている。複数の第3の補強構造142と複数の第4の補強構造152とは、互いに重なって設置できる。上板14の後端部が後方へ突出する長さは、下板15の後端部が後方へ突出する長さよりも大きいため、上板14の後端縁と下板15の後端縁とが一致していない。上板14の後端縁に第1の弧状フランジ131が設けられて周辺のワイヤハーネスに対するダメージを防ぐ。下板15の後端縁が周辺のワイヤハーネスに対するダメージを防ぐために、下板15の後端部が後方へ突出する長さが上板14の後端部が後方へ突出する長さよりも小さくなる必要がある。この構成により、下板15の後端縁も周辺のワイヤハーネスに対するダメージを防ぐことを保証できる。二つの構成について、長さの差が有することで、ストッパ部13の剛性を確保するために、上板14および下板15にそれぞれ複数の第3の補強構造142および第4の補強構造152を設けることにより、ストッパ部13の構造強度を向上させ、さらにストッパ部13の剛性を向上させることができる。
【0035】
さらに、図3および図4を参照すると、本実施形態において、傾斜面111と水平方向との角度αが35度に等しい、あるいは35度よりも小さい。すなわち、傾斜面111と水平方向との角度αが35度を超えないことが好ましい。傾斜面111は、衝突力を受けると、この衝突力を分割する。傾斜面111と水平方向との角度αが35度に等しい、あるいは35度よりも小さいと、傾斜面111が受ける衝突力の後方への分量fが比較的に小さい。このため、電池保護部材1は、後方への偏向の幅が大きくなりすぎることがなく、電池パック3の先端に衝突する確率が比較的に小さい。その結果、より好適に電池パック3の先端の安全を確保し、より高い運転時速で障害物による衝突に対応できる。
【0036】
本実施形態に係る電池保護部材1は、上板14と下板15とを備える。上板14と下板15とは、互いに連結されて固定され、かつ、バッファチャンバ110を囲んで形成する。上板14の中間部および先端部と下板15の中間部および先端部とが繋げて本体部11を形成する。下板の先端部は、上方および前方へ向かって傾斜して伸びて傾斜面111を形成する。傾斜面111の下部は、バッファチャンバ110の構造面である。上板14の先端部は、上方および前方へ傾斜して伸びて前側面を形成する。上板14の前側面は、傾斜面の上部において、上板14に近い側の表面に溶接されている。傾斜面111の上端縁は、前方および下方へ向かって延びて第2の弧状フランジ112を形成し、かつ、上板14の前側面の上端縁が傾斜面111の上端縁よりも低い。上板14の前側面上に、長さ方向に沿って、間隔を開けて複数の第1の補強構造141が分布されている。傾斜面111に、長さ方向に沿って、間隔を開けて複数の第2の補強構造151が分布されている。複数の第1の補強構造141と複数の第2の補強構造151とは、互いに重なって設置されている。上板14の左右両端部と下板15の左右両端部とは、それぞれ繋げて車両底部2に向けて延びる二つの固定部12を形成する。電池保護部材1は、二つの固定部を介して車両底部2に連結し、かつ、電池パック3の先端より間隔を開けて設置されている。固定部12および車両底部2を連結する連結部120とバッファチャンバ110の上腔壁1100との間に、予め設定された距離を有する。上板14の後端部と下板15の後端部とが繋げてストッパ部13を形成する。上板14の後端部に、長さ方向に沿って、間隔を開けて複数の第3の補強構造142が分布されている。下板15の後端部に、長さ方向に沿って、間隔を開けて複数の第4の補強構造152が分布されている。複数の第3の補強構造142と複数の第4の補強構造152とが互いに重なって設置されている。上板14の後端部が後方へ突出する長さは、下板15の後端部が後方へ突出する長さよりも大きい。上板14の後端縁は、下方へ向けて延びて第1の弧状フランジ131を形成する。
【0037】
電池保護部材1が車両底部2に取り付けられる際、本体部11が水平に配置され、かつ、車両底部2に露出する電池パック3から間隔を開けて設置される。電池パック3の先端は、少なくとも一部が電池保護部材において、固定部12を中心とする回転半径範囲内に位置する。二つの固定部12は、本体部11の左右両側に位置し、それぞれボルトを介して車両の左右縦ビームに固定されて連結されている。傾斜面111は、電池パック3の前方に位置し、電池パック3を遮蔽する。傾斜面111の最低点は、電池パック3の最低点よりも低い。傾斜面111の最高点は、車両のサブホルダーの最低点よりも高い。傾斜面111と水平方向との角度αは、35度に等しい、あるいは35度よりも小さい。傾斜面111が障害物によって衝突されると、電池保護部材1は、二つの固定部12と車両底部2との二つの連結部120を基点として後方へ偏向し、傾斜面111と水平方向との角度αが小さくなる。これにより、障害物がスムーズに電池パック3の先端を通過できるように、傾斜面111で障害物を支点として車両全体を持ち上げることができる。衝突力が比較的に大きい場合、ストッパ部13が電池パック3の先端に当接するまで電池保護部材1の偏向変形の幅が比較的に大きくなり、電池保護部材1がさらに後方へ偏向することを阻止する。
【0038】
本実施形態に係る電池保護部材1は、傾斜面111とバッファチャンバ110とを備える。電池保護部材1は、傾斜面111を介して障害物の衝突を受けて、自身の全体が固定部12と車両底部2との連結部120で後方へ偏向変形する。同時に、バッファチャンバ110も衝突を吸収することにより、障害物との衝突により発生するエネルギーを二重吸収する。これにより、電池パック3の先端が車両底部に露出し、容易に障害物に引っ掛けられることでダメージを受ける技術課題を解決し、電池パック3の先端が障害物による引っ掛けられるリスクを有効に軽減できる。より高い運転時速の場合でも、電池パック3の先端の安全を確保できる。さらに、ストッパ部13を設けることにより、電池保護部材1の過大な偏向変形による電池パック3の先端へのダメージを防止できる。折り畳まれたフランジの設計も、周辺のワイヤハーネスに対して保護する効果を奏する。
【0039】
(第2の実施形態)
図7から図9を参照すると、本実施形態に係る電池保護部材1は、上板14と下板15とを備える。上板14と下板15とは、互いに連結されて固定され、かつ、バッファチャンバを囲んで形成する。上板14の中間部および先端部と下板15の中間部および先端部とが繋げて本体部11を形成する。下板の先端部は、上方および前方へ向かって傾斜して伸びて傾斜面111を形成する。傾斜面111の下部は、バッファチャンバの構造面である。上板14の先端部は、上方および前方へ傾斜して伸びて前側面を形成する。上板14の前側面は、傾斜面の上部において、上板14に近い側の表面に溶接されている。傾斜面111の上端縁は、前方および下方へ向かって延びて第2の弧状フランジ112を形成する。上板14の前側面上に、長さ方向に沿って、間隔を開けて複数の第1の補強構造141が分布され、かつ、傾斜面111に、長さ方向に沿って、間隔を開けて複数の第2の補強構造151が分布されている。複数の第1の補強構造141と複数の第2の補強構造151とは、互いに重なって設置されている。上板の前側面の上端縁は、傾斜面111の上端縁よりも低い。
【0040】
上板14の左右両端部と下板15の左右両端部とは、それぞれ繋げて車両底部2に向けて延びる二つの固定部12を形成する。電池保護部材1は、二つの固定部を介して車両底部2に連結し、かつ、電池パック3の先端より間隔を開けて設置されている。電池パック3の先端の形状に適合するために、固定部12と車両底部2の連結部120は、傾斜面111の上端縁の直上に近い。ここで、本体部11の左側の固定部12の上端縁より左側へ延びて第3の弧状フランジ121が形成され、本体部11の右側の固定部12の上端縁より右側へ延びて第3の弧状フランジ121が形成される。電池保護部材1の後部の安定性を確保するために、上板14の左右両端部に、車両底部2に向けて延びる二つの固定板16が設置されている。二つの固定板16は、それぞれ二つの第3の弧状フランジ121の後部に連結され、車両底部2との連結のために用いられる。車両底部2の設置が異なるため、固定板16と車両底部2との連結点は、固定部12よりも高い。固定部12および車両底部2を連結する連結部120とバッファチャンバの上腔壁との間に、予め設定された距離を有する。同時に、第3の弧状フランジ121に、複数の第5の補強構造122が設置される。複数の第5の補強構造122は、固定板16に密接して設置され、前方へ向けて順次配列される。上板14の後端部に、ストッパ部13を形成する。上板14の後端部に、長さ方向に沿って、間隔を開けて複数の第3の補強構造142が分布されている。上板14の後端縁は、下方へ向けて延びて第1の弧状フランジ131を形成する。
【0041】
電池保護部材1が車両底部2に取り付けられる際、本体部11が水平に配置され、かつ、車両底部2に露出する電池パック3から間隔を開けて設置される。電池パック3の先端は、少なくとも一部が電池保護部材において、固定部12を中心とする回転半径範囲内に位置する。二つの固定部12は、本体部11の左右両側に位置し、それぞれボルトを介して車両の左右縦ビームに固定されて連結されている。傾斜面111は、電池パック3の前方に位置し、電池パック3を遮蔽する。傾斜面111の最低点は、電池パック3の最低点よりも低い。傾斜面111の最高点は、車両のサブホルダーの最低点よりも高い。傾斜面111と水平方向との角度αは、35度に等しい、あるいは35度よりも小さい。傾斜面111が障害物によって衝突されると、電池保護部材1は、二つの固定部12と車両底部2との二つの連結部120を基点として後方へ偏向し、傾斜面111と水平方向との角度αが小さくなる。これにより、障害物がスムーズに電池パック3の先端を通過できるように、傾斜面111で障害物を支点として車両全体を持ち上げることができる。衝突力が比較的に大きい場合、ストッパ部13が電池パック3の先端に当接するまで電池保護部材1の偏向変形の幅が比較的に大きくなり、電池保護部材1がさらに後方へ偏向することを阻止する。
【0042】
本実施形態に係る電池保護部材1は、傾斜面111とバッファチャンバとを備える。電池保護部材1は、傾斜面111を介して障害物の衝突を受けて、自身の全体が固定部12と車両底部2との連結部120で後方へ偏向変形する。同時に、バッファチャンバも衝突を吸収することにより、障害物との衝突により発生するエネルギーを二重吸収する。これにより、電池パック3の先端が車両底部に露出し、容易に障害物に引っ掛けられることでダメージを受ける技術課題を解決し、電池パック3の先端が障害物により引っ掛けられるリスクを有効に軽減できる。より高い運転時速の場合でも、電池パック3の先端の安全を確保できる。さらに、ストッパ部13を設けることにより、電池保護部材1の過大な偏向変形による電池パック3の先端へのダメージを防止できる。折り畳まれたフランジの設計も、周辺のワイヤハーネスに対して保護する効果を奏する。
【0043】
(第3の実施形態)
本実施形態に係る電池保護部材は、ほぼ第2の実施形態に係る構成と同等である。異なる点は、二つの固定板16は、下板15の左右両端部に設置されている。固定板16は、固定部12の上端縁から上方へ向けて延びて形成され、あるいは、第3の弧状フランジ121の後部に連結され、上板14を貫通して上方へ向けて延びる。この構成は、電池保護部材1を異なる加工方法に適用することに有利である。
【0044】
(第4の実施形態)
図4から図6を参照すると、本実施形態に係る車両は、車両底部2を備える、車両底部2には、電池パック3が取り付けられ、かつ、電池パック3の前方において、電池保護部材1が設置されている。ここで、電池保護部材1は、前述の第1の実施形態から第3の実施形態のいずれいか一つの実施形態に述べた電池保護部材であるため、その構成に対する説明を省略する。
【0045】
本実施形態に係る車両は、電池パック3の前方に設置された電池保護部材1により、電池保護部材1の傾斜面111が障害物の衝突を受けることで、電池保護部材1の偏向変形を利用して障害物との衝突で発生したエネルギーを吸収する。これにより、障害物が電池パック3の先端に衝突することを回避し、電池パック3の先端が車両の底部に露出することで容易に障害物に引っ掛けられてダメージを受ける課題を解決できる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 電池保護部材1
2 車両底部
3 電池パック
11 本体部
12 固定部
13 ストッパ部
14 上板
15 下板
16 固定板
110 バッファチャンバ
111 傾斜面
112 第2の弧状フランジ
120 固定部および車両底部の連結部
121 第3の弧状フランジ
122 第5の補強構造
131 第1の弧状フランジ
141 第1の補強構造
142 第3の補強構造
151 第2の補強構造
152 第4の補強構造
1100 上腔壁
α 傾斜面と水平方向との角度α
f 衝突力の後方への分量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9