(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】走行管理システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241115BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20241115BHJP
【FI】
A01B69/00 303Q
A01B69/00 303Z
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2021214421
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
(72)【発明者】
【氏名】伊原 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆志
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-110783(JP,A)
【文献】特開2020-156326(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0267115(US,A1)
【文献】特開2001-258310(JP,A)
【文献】特開昭59-100915(JP,A)
【文献】特開2021-083387(JP,A)
【文献】特開2011-024427(JP,A)
【文献】特開2018-099042(JP,A)
【文献】特開平02-135005(JP,A)
【文献】特開2000-342013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動操作によって圃場の最外周領域において行われる作業走行である最外周走行を行った際の作業車の軌跡を取得する軌跡取得部と、
前記軌跡に基づいて、前記最外周走行の完了時点での前記圃場における未作業領域を算出する未作業領域算出部と、
前記作業車が旋回しながら前記未作業領域の角部を作業走行するための目標旋回経路を、前記未作業領域に基づいて生成する旋回経路生成部と、を備え
、
前記旋回経路生成部は、一続きに繋がる複数の要素経路により前記目標旋回経路が構成されるように、前記目標旋回経路を生成し、
互いに隣接する二つの前記要素経路である第1要素経路及び第2要素経路のうち前記作業車の走行方向下手側に位置する前記第2要素経路は、前記第1要素経路に対する前記第2要素経路の傾きが大きいほど、前記第2要素経路の長さが長くなるように生成される走行管理システム。
【請求項2】
前記旋回経路生成部は、前記要素経路が前記未作業領域に入り込まないように、前記要素経路を生成する請求項
1に記載の走行管理システム。
【請求項3】
前記作業車の走行を制御する走行制御部を備え、
前記走行制御部は、前記作業車の有する作業装置の旋回外側端部が前記目標旋回経路に沿って移動するように前記作業車の走行を制御する請求項1
または2に記載の走行管理システム。
【請求項4】
手動操作によって圃場の最外周領域において行われる作業走行である最外周走行を行った際の作業車の軌跡を取得する軌跡取得部と、
前記軌跡に基づいて、前記最外周走行の完了時点での前記圃場における未作業領域を算出する未作業領域算出部と、
前記作業車が旋回しながら前記未作業領域の角部を作業走行するための目標旋回経路を、前記未作業領域に基づいて生成する旋回経路生成部と、
前記作業車の走行を制御する走行制御部と、
前記圃場において行われた作業走行に応じて前記未作業領域の算出結果を更新する更新部と、
前記目標旋回経路に沿った前進作業走行が完了した後に前記未作業領域の角部を前記作業車が前進しながら作業走行するための目標前進経路を、前記更新部による更新結果に基づいて生成可能な前進経路生成部と、を備え、
前記目標前進経路が生成された場合、前記走行制御部は、前記作業車が、後進した後で前記目標前進経路に沿って前進作業走行する動作である方位変更動作を行うように前記作業車の走行を制御し、
前記前進経路生成部は、前記方位変更動作によって前記作業車の機体方位が旋回内側へ変化するように、前記目標前進経路を生成す
る走行管理システム。
【請求項5】
前記前進経路生成部は、前記目標前進経路を生成する時点での前記未作業領域に前記目標前進経路が入り込まないように、前記目標前進経路を生成する請求項
4に記載の走行管理システム。
【請求項6】
前記作業車が前記最外周領域よりも内側の領域を作業走行するための複数の目標走行経路を生成する走行経路生成部を備え、
前記走行制御部は、前記作業車が、前記複数の目標走行経路のうちの一つである第1目標経路に沿って前記未作業領域の角部に到達するまで作業走行を行った後、前記目標旋回経路に沿った前進作業走行を含む方向転換走行を行い、且つ、前記方向転換走行の後、前記複数の目標走行経路のうちの一つである第2目標経路に沿って作業走行を行うように、前記作業車を制御可能に構成されており、
前記目標旋回経路または前記目標前進経路に沿った前進作業走行の完了時点での前記作業車の機体方位である完了時方位と、前記第2目標経路の延びる方向と、の角度差が閾値以上である場合、前記前進経路生成部は、前記完了時方位に対して旋回内側に傾く前記目標前進経路を生成し、
前記角度差が前記閾値未満である場合、前記前進経路生成部は前記目標前進経路を生成せず、且つ、前記作業車は前記走行制御部の制御により前記第2目標経路に沿った作業走行を行う請求項
4または
5に記載の走行管理システム。
【請求項7】
前記作業車の走行を制御する走行制御部と、
前記最外周走行の完了後に、前記圃場の隅部における所定の方向転換方法による方向転換を、前記作業車が前記未作業領域に進入することなく行うことが可能であるか否かを判定する判定部と、を備え、
前記判定部が可能であると判定した場合、前記走行制御部は、前記作業車が前記圃場の隅部において前記目標旋回経路に沿った作業走行を行うことなく、前記方向転換方法による方向転換を行うように前記作業車の走行を制御し、
前記判定部が可能でないと判定した場合、前記走行制御部は、前記作業車が前記圃場の隅部において前記目標旋回経路に沿った作業走行を行うように前記作業車の走行を制御する請求項1から
6の何れか一項に記載の走行管理システム。
【請求項8】
前記作業車の走行を制御する走行制御部と、
前記作業車が前記最外周領域よりも内側の領域を作業走行するための複数の目標走行経路を生成する走行経路生成部と、
前記最外周走行の完了時点での前記未作業領域を包含する多角形状の作業対象領域を前記軌跡に基づいて決定する領域決定部と、を備え、
前記走行経路生成部は、前記複数の目標走行経路により前記作業対象領域の全体が網羅されるように、前記作業対象領域に基づいて前記複数の目標走行経路を生成するように構成されており、
前記走行制御部は、前記作業車が、一つの前記目標走行経路に沿った作業走行を行った後、旋回走行を行い、且つ、前記旋回走行の後に前記一つの目標走行経路とは異なる前記目標走行経路に沿った作業走行を行うように前記作業車の走行を制御し、
前記作業車が前記旋回走行を行う際、前記走行制御部は、前記作業車が前記目標旋回経路に沿って走行するように前記作業車の走行を制御可能である請求項1から
7の何れか一項に記載の走行管理システム。
【請求項9】
前記作業対象領域の輪郭は、前記最外周走行の完了時点での前記未作業領域の輪郭に接している請求項
8に記載の走行管理システム。
【請求項10】
前記目標走行経路は、前記作業対象領域の輪郭を構成する各辺のうち少なくとも一つの辺に平行である請求項
8または
9に記載の走行管理システム。
【請求項11】
前記軌跡は、前記作業車の有する作業装置の圃場内側端部の軌跡である請求項1から
10の何れか一項に記載の走行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の走行を管理する走行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような走行管理システムとして、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この走行管理システムを利用した圃場での作業において、作業車(特許文献1では「コンバイン」)は、圃場内の外周部分での周回走行を行う。その後、未作業領域を作業走行するための複数の直線状の目標経路が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の走行管理システムでは、作業車は、一つの目標経路に沿って作業走行を行った後、既作業領域において方向転換を行ってから、別の目標経路に沿った作業走行を行う必要がある。そのため、目標経路に沿った作業走行を開始する前に、作業車が方向転換を行える程度の広さの既作業領域を確保する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、作業車が方向転換を行える程度の広さの既作業領域を確保していなくても、方向転換と、生成された経路に沿った作業走行と、を行いやすい走行管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、手動操作によって圃場の最外周領域において行われる作業走行である最外周走行を行った際の作業車の軌跡を取得する軌跡取得部と、前記軌跡に基づいて、前記最外周走行の完了時点での前記圃場における未作業領域を算出する未作業領域算出部と、前記作業車が旋回しながら前記未作業領域の角部を作業走行するための目標旋回経路を、前記未作業領域に基づいて生成する旋回経路生成部と、を備え、前記旋回経路生成部は、一続きに繋がる複数の要素経路により前記目標旋回経路が構成されるように、前記目標旋回経路を生成し、互いに隣接する二つの前記要素経路である第1要素経路及び第2要素経路のうち前記作業車の走行方向下手側に位置する前記第2要素経路は、前記第1要素経路に対する前記第2要素経路の傾きが大きいほど、前記第2要素経路の長さが長くなるように生成されることにある。
【0007】
本構成によれば、作業車が目標旋回経路に沿って作業走行を行うことにより、旋回しながら未作業領域の角部を作業走行することができる。そして、この作業走行により、作業車の方向転換を行いやすい。即ち、本構成によれば、作業車が方向転換を行える程度の広さの既作業領域を事前に確保していなくても、目標旋回経路に沿う作業走行により、方向転換を行いやすい。
【0008】
従って、本構成によれば、作業車が方向転換を行える程度の広さの既作業領域を確保していなくても、方向転換と、生成された目標旋回経路に沿った作業走行と、を行いやすい走行管理システムを実現できる。
【0009】
【0010】
本構成によれば、比較的短く簡素な要素経路を複数個繋げることにより、未作業領域の角部の形状に沿った目標旋回経路を生成しやすい。ここで、比較的短く簡素な要素経路を複数個繋げることは、比較的簡素なアルゴリズムの繰り返しによって実現しやすい。また、目標旋回経路が未作業領域の角部の形状に沿っていれば、目標旋回経路に沿った作業走行において、無駄(例えば、実質的な作業が行われない状態での走行)が生じにくい。
【0011】
即ち、本構成によれば、比較的複雑なアルゴリズムの利用を回避しながらも、目標旋回経路に沿った作業走行において無駄が生じにくい走行管理システムを実現できる。
【0012】
【0013】
第1要素経路に対する第2要素経路の傾きが比較的大きい場合、作業車が第2要素経路に沿う走行を開始した直後に、作業車は、第2要素経路から大きく逸脱しがちである。この場合、第2要素経路が比較的短いと、第2要素経路に沿う走行の終了までの間に、第2要素経路と作業車との間の位置ずれが解消されにくい。
【0014】
ここで、本構成によれば、第1要素経路に対する第2要素経路の傾きが比較的大きい場合、第2要素経路が比較的長くなる。そのため、作業車が第2要素経路に沿う走行を開始した直後に、作業車が第2要素経路から大きく逸脱した場合であっても、第2要素経路に沿った走行の終了までの間に、第2要素経路と作業車との間の位置ずれが解消されやすい。
【0015】
さらに、本発明において、前記旋回経路生成部は、前記要素経路が前記未作業領域に入り込まないように、前記要素経路を生成すると好適である。
【0016】
本構成によれば、作業車が目標旋回経路に沿って作業走行した場合に、作業車の旋回外側に未作業領域が残ってしまう事態が起こりにくい。そのため、作業車の旋回外側に未作業領域が残ることによって作業走行のやり直しが必要となることを回避しやすい。
【0017】
さらに、本発明において、前記作業車の走行を制御する走行制御部を備え、前記走行制御部は、前記作業車の有する作業装置の旋回外側端部が前記目標旋回経路に沿って移動するように前記作業車の走行を制御すると好適である。
【0018】
作業車のうち、作業装置の旋回外側端部以外の部位が目標旋回経路に沿って移動する場合、目標旋回経路と、作業装置の旋回外側端部と、の間の距離が変動しがちである。例えば、作業車の機体中心が目標旋回経路に沿って移動する場合、目標旋回経路と、作業装置の旋回外側端部と、の間の距離が変動してしまいやすい。その結果、作業車の旋回外側に未作業領域が残ってしまいがちとなる。
【0019】
ここで、本構成によれば、作業車は、作業装置の旋回外側端部が目標旋回経路に沿って移動するように制御される。これにより、目標旋回経路と、作業装置の旋回外側端部と、の間の距離が変動しにくい。その結果、作業車の旋回外側に未作業領域が残ってしまう事態を回避しやすい。
【0020】
本発明の別の特徴は、手動操作によって圃場の最外周領域において行われる作業走行である最外周走行を行った際の作業車の軌跡を取得する軌跡取得部と、前記軌跡に基づいて、前記最外周走行の完了時点での前記圃場における未作業領域を算出する未作業領域算出部と、前記作業車が旋回しながら前記未作業領域の角部を作業走行するための目標旋回経路を、前記未作業領域に基づいて生成する旋回経路生成部と、前記作業車の走行を制御する走行制御部と、前記圃場において行われた作業走行に応じて前記未作業領域の算出結果を更新する更新部と、前記目標旋回経路に沿った前進作業走行が完了した後に前記未作業領域の角部を前記作業車が前進しながら作業走行するための目標前進経路を、前記更新部による更新結果に基づいて生成可能な前進経路生成部と、を備え、前記目標前進経路が生成された場合、前記走行制御部は、前記作業車が、後進した後で前記目標前進経路に沿って前進作業走行する動作である方位変更動作を行うように前記作業車の走行を制御し、前記前進経路生成部は、前記方位変更動作によって前記作業車の機体方位が旋回内側へ変化するように、前記目標前進経路を生成することにある。
【0021】
本構成によれば、作業車は、方位変更動作によって、旋回内側への方向転換を行いながら、作業を行うことができる。これにより、作業車が、圃場の隅部において方向転換を行いながら作業を行いやすい。
【0022】
さらに、本発明において、前記前進経路生成部は、前記目標前進経路を生成する時点での前記未作業領域に前記目標前進経路が入り込まないように、前記目標前進経路を生成すると好適である。
【0023】
本構成によれば、作業車が目標前進経路に沿って作業走行した場合に、作業車の旋回外側に未作業領域が残ってしまう事態が起こりにくい。そのため、作業車の旋回外側に未作業領域が残ることによって作業走行のやり直しが必要となることを回避しやすい。
【0024】
さらに、本発明において、前記作業車が前記最外周領域よりも内側の領域を作業走行するための複数の目標走行経路を生成する走行経路生成部を備え、前記走行制御部は、前記作業車が、前記複数の目標走行経路のうちの一つである第1目標経路に沿って前記未作業領域の角部に到達するまで作業走行を行った後、前記目標旋回経路に沿った前進作業走行を含む方向転換走行を行い、且つ、前記方向転換走行の後、前記複数の目標走行経路のうちの一つである第2目標経路に沿って作業走行を行うように、前記作業車を制御可能に構成されており、前記目標旋回経路または前記目標前進経路に沿った前進作業走行の完了時点での前記作業車の機体方位である完了時方位と、前記第2目標経路の延びる方向と、の角度差が閾値以上である場合、前記前進経路生成部は、前記完了時方位に対して旋回内側に傾く前記目標前進経路を生成し、前記角度差が前記閾値未満である場合、前記前進経路生成部は前記目標前進経路を生成せず、且つ、前記作業車は前記走行制御部の制御により前記第2目標経路に沿った作業走行を行うと好適である。
【0025】
本構成によれば、完了時方位と、第2目標経路の延びる方向と、の角度差が比較的小さくなるまで方位変更動作が繰り返されることとなる。そして、当該角度差が比較的小さくなると、方位変更動作は行われなくなる。
【0026】
従って、本構成によれば、完了時方位と第2目標経路の延びる方向との角度差が比較的小さくなるまで方位変更動作を繰り返すことができると共に、方位変更動作を必要以上に行うことを回避できる走行管理システムを実現できる。
【0027】
さらに、本発明において、前記作業車の走行を制御する走行制御部と、前記最外周走行の完了後に、前記圃場の隅部における所定の方向転換方法による方向転換を、前記作業車が前記未作業領域に進入することなく行うことが可能であるか否かを判定する判定部と、を備え、前記判定部が可能であると判定した場合、前記走行制御部は、前記作業車が前記圃場の隅部において前記目標旋回経路に沿った作業走行を行うことなく、前記方向転換方法による方向転換を行うように前記作業車の走行を制御し、前記判定部が可能でないと判定した場合、前記走行制御部は、前記作業車が前記圃場の隅部において前記目標旋回経路に沿った作業走行を行うように前記作業車の走行を制御すると好適である。
【0028】
本構成によれば、圃場の隅部において、可能であれば、所定の方向転換方法による方向転換が行われることとなる。そのため、所定の方向転換方法による方向転換が、目標旋回経路に沿った作業走行による方向転換よりも短い時間で行われる場合、作業車の方向転換を迅速に行いやすい。
【0029】
さらに、本発明において、前記作業車の走行を制御する走行制御部と、前記作業車が前記最外周領域よりも内側の領域を作業走行するための複数の目標走行経路を生成する走行経路生成部と、前記最外周走行の完了時点での前記未作業領域を包含する多角形状の作業対象領域を前記軌跡に基づいて決定する領域決定部と、を備え、前記走行経路生成部は、前記複数の目標走行経路により前記作業対象領域の全体が網羅されるように、前記作業対象領域に基づいて前記複数の目標走行経路を生成するように構成されており、前記走行制御部は、前記作業車が、一つの前記目標走行経路に沿った作業走行を行った後、旋回走行を行い、且つ、前記旋回走行の後に前記一つの目標走行経路とは異なる前記目標走行経路に沿った作業走行を行うように前記作業車の走行を制御し、前記作業車が前記旋回走行を行う際、前記走行制御部は、前記作業車が前記目標旋回経路に沿って走行するように前記作業車の走行を制御可能であると好適である。
【0030】
本構成によれば、作業車が各目標走行経路に沿った走行を行うことにより、作業対象領域の全体を網羅的に作業することができる。
【0031】
また、作業対象領域は多角形状であるため、目標走行経路の形状をシンプルにしやすい。
【0032】
また、目標旋回経路に沿う走行によって方向転換が可能であるため、作業車が方向転換を行える程度の広さの既作業領域を事前に確保していなくても、作業車は、一つの目標走行経路から別の目標走行経路に移動しながら方向転換を行いやすい。
【0033】
さらに、本発明において、前記作業対象領域の輪郭は、前記最外周走行の完了時点での前記未作業領域の輪郭に接していると好適である。
【0034】
本構成によれば、作業対象領域が未作業領域を包含しながらも、作業対象領域が必要以上に大きくなってしまう事態を回避できる。これにより、目標走行経路に沿った作業走行において、無駄(例えば、実質的な作業が行われない状態での走行)が生じにくい。
【0035】
さらに、本発明において、前記目標走行経路は、前記作業対象領域の輪郭を構成する各辺のうち少なくとも一つの辺に平行であると好適である。
【0036】
本構成によれば、目標走行経路が直線状となる。即ち、目標走行経路の形状が比較的シンプルになる。従って、目標走行経路の形状が比較的複雑である構成に比べて、目標走行経路の生成や管理における演算負荷が小さくなりやすい。
【0037】
さらに、本発明において、前記軌跡は、前記作業車の有する作業装置の圃場内側端部の軌跡であると好適である。
【0038】
本構成によれば、軌跡取得部により取得された軌跡により囲まれた領域が、最外周走行の完了時点での圃場における未作業領域となる。そのため、本構成によれば、未作業領域の算出が容易になりやすい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図3】最外周走行の完了時点での圃場を示す図である。
【
図4】制御部に関する構成を示すブロック図である。
【
図6】圃場の隅部へ向かって刈取走行を行うコンバインを示す図である。
【
図7】目標旋回経路に沿った刈取走行を示す図である。
【
図10】方位変更動作における前進刈取走行を示す図である。
【
図11】次の目標走行経路に沿った刈取走行を示す図である。
【
図13】圃場の隅部における所定の方向転換方法による方向転換を、コンバインが未作業領域に進入することなく行うことが可能である場合の例を示す図である。
【
図14】圃場の隅部における所定の方向転換方法による方向転換を、コンバインが未作業領域に進入することなく行うことが可能でない場合の例を示す図である。
【
図16】走行制御部によるコンバインの走行の制御を示す図である。
【
図17】ハンチング抑制フローのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、図中の矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0041】
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、普通型のコンバイン1(本発明に係る「作業車」に相当)は、収穫部H(本発明に係る「作業装置」に相当)、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0042】
走行装置11は、コンバイン1における下部に備えられている。また、走行装置11は、コンバイン1に搭載されたエンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって走行可能である。
【0043】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11より上側に備えられている。運転部12は運転座席12aを有している。運転部12にはオペレータが搭乗可能である。
【0044】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0045】
収穫部Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後側に設けられている。また、収穫部Hは、左右の分草具10、刈刃15、リール17を含んでいる。
【0046】
左右の分草具10は、収穫部Hの前端部における左端部及び右端部に設けられている。
左右の分草具10は、圃場の植立穀稈を、収穫対象と対象外とに分草する。左の分草具10よりも右側、且つ、右の分草具10よりも左側の植立穀稈は、収穫対象として分草される。左の分草具10よりも左側の植立穀稈、及び、右の分草具10よりも右側の植立穀稈は、対象外として分草される。
【0047】
刈刃15は、左右の分草具10により収穫対象として分草された植立穀稈を刈り取る。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。刈刃15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送部16へ送られる。
【0048】
この構成により、収穫部Hは、圃場の穀物を収穫する。そして、コンバイン1は、刈刃15によって圃場の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。尚、刈取走行は、本発明に係る「作業走行」の具体例である。
【0049】
収穫部Hにより収穫された刈取穀稈は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置13へ搬送される。
【0050】
脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0051】
また、
図1に示すように、運転部12には、通信端末4が配置されている。通信端末4は、種々の情報を表示可能に構成されている。本実施形態において、通信端末4は、運転部12に固定されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、通信端末4は、運転部12に対して着脱可能に構成されていても良いし、通信端末4は、コンバイン1の機外に位置していても良い。
【0052】
ここで、コンバイン1は、圃場における刈取作業を行う場合、
図2及び
図3に示すように最外周走行を行った後、自動走行によって刈取走行を行うように構成されている。尚、最外周走行とは、手動操作によって圃場の最外周領域SAにおいて行われる刈取走行である。
【0053】
コンバイン1の走行は、走行管理システムA(
図4参照)によって管理される。以下では、走行管理システムAについて詳述する。
【0054】
〔未作業領域の算出〕
図4に示すように、走行管理システムAは、制御部20及び衛星測位モジュール80を備えている。制御部20は、位置算出部21及び領域管理部22を有している。尚、制御部20及び衛星測位モジュール80は、コンバイン1に搭載されている。
【0055】
衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星GS(
図1参照)からのGPS信号を受信する。そして、
図4に示すように、衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを位置算出部21へ送る。
【0056】
尚、本発明はこれに限定されない。衛星測位モジュール80は、GPSを利用するものでなくても良い。例えば、衛星測位モジュール80は、GPS以外のGNSS(GLONASS、Galileo、みちびき、BeiDou等)を利用するものであっても良い。
【0057】
位置算出部21は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。これにより、位置算出部21は、コンバイン1の軌跡を算出する。そして、領域管理部22は、位置算出部21により算出されたコンバイン1の軌跡を取得する。
【0058】
より具体的には、領域管理部22は、軌跡取得部23を有している。軌跡取得部23は、位置算出部21により算出されたコンバイン1の軌跡を取得する。特に、軌跡取得部23は、コンバイン1が上述の最外周走行を行った際のコンバイン1の軌跡を取得する。
【0059】
即ち、走行管理システムAは、手動操作によって圃場の最外周領域SAにおいて行われる刈取走行である最外周走行を行った際のコンバイン1の軌跡を取得する軌跡取得部23を備えている。
【0060】
本実施形態において位置算出部21により算出される軌跡は、より具体的には、収穫部Hの圃場内側端部の軌跡である。即ち、位置算出部21により算出される軌跡は、左右の分草具10のうち圃場内側に位置する方の分草具10の軌跡である。そして、軌跡取得部23は、当該軌跡を取得する。
【0061】
このように、本実施形態において、軌跡は、コンバイン1の有する収穫部Hの圃場内側端部の軌跡である。
【0062】
尚、本発明はこれに限定されない。位置算出部21により算出される軌跡、及び、軌跡取得部23により取得される軌跡は、例えば、衛星測位モジュール80の軌跡であっても良い。
【0063】
図2では、最外周走行を行った際の収穫部Hの圃場内側端部の軌跡が、実線の矢印により示されている。また、最外周走行を行った際の衛星測位モジュール80の軌跡が、仮想線の矢印により示されている。尚、実際の最外周走行では、コンバイン1は、圃場の隅部において前進と後進とを繰り返しながら方向転換を行う。
図2では、前進の軌跡のみが示されており、後進の軌跡は省略されている。
【0064】
図4に示すように、領域管理部22は、未作業領域算出部24を有している。未作業領域算出部24は、軌跡取得部23が取得した軌跡に基づいて、最外周走行の完了時点での圃場における未作業領域UA(
図3参照)を算出する。
【0065】
即ち、走行管理システムAは、軌跡に基づいて、最外周走行の完了時点での圃場における未作業領域UAを算出する未作業領域算出部24を備えている。
【0066】
本実施形態において、未作業領域UAは、コンバイン1が植立穀稈の刈取を行っていない領域である。また、未作業領域UAは、コンバイン1が刈取走行を行った領域に囲まれた領域である。未作業領域UAの輪郭は、全周に亘って、収穫部Hの圃場内側端部の軌跡により規定される。未作業領域UAの輪郭は、多角形状になる場合もあるし、多角形状にならない場合もある。
【0067】
尚、制御部20、及び、制御部20に含まれる位置算出部21等の各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。
【0068】
〔目標走行経路の生成〕
図4に示すように、領域管理部22は、領域決定部25を有している。コンバイン1による最外周走行が完了すると、領域決定部25は、軌跡取得部23が取得した軌跡に基づいて、多角形状の作業対象領域CAを決定する。
図5に示すように、本実施形態において、作業対象領域CAは、第1辺C1、第2辺C2、第3辺C3、第4辺C4により規定される四角形状である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、作業対象領域CAは、例えば三角形状であっても良いし、五角形状であっても良い。
【0069】
また、
図5に示すように、作業対象領域CAは、最外周走行の完了時点での未作業領域UAを包含している。即ち、走行管理システムAは、最外周走行の完了時点での未作業領域UAを包含する多角形状の作業対象領域CAを軌跡に基づいて決定する領域決定部25を備えている。
【0070】
また、
図5に示すように、作業対象領域CAの輪郭は、最外周走行の完了時点での未作業領域UAの輪郭に接している。
【0071】
図4に示すように、制御部20は、第1経路管理部26を有している。第1経路管理部26は、走行経路生成部27を有している。
【0072】
領域決定部25により決定された作業対象領域CAを示す情報は、領域管理部22から第1経路管理部26へ送られる。走行経路生成部27は、領域管理部22から送られた作業対象領域CAを示す情報に基づいて、複数の目標走行経路LI(
図5参照)を生成する。
【0073】
複数の目標走行経路LIは、コンバイン1が最外周領域SAよりも内側の領域を刈取走行するための経路である。走行経路生成部27は、複数の目標走行経路LIにより作業対象領域CAの全体が網羅されるように、複数の目標走行経路LIを生成する。
【0074】
即ち、走行管理システムAは、コンバイン1が最外周領域SAよりも内側の領域を刈取走行するための複数の目標走行経路LIを生成する走行経路生成部27を備えている。また、走行経路生成部27は、複数の目標走行経路LIにより作業対象領域CAの全体が網羅されるように、作業対象領域CAに基づいて複数の目標走行経路LIを生成するように構成されている。
【0075】
尚、
図5に示すように、本実施形態においては、複数の目標走行経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線である。
【0076】
また、走行経路生成部27は、作業対象領域CAの輪郭を構成する各辺のうち少なくとも一つの辺に平行であるように、各目標走行経路LIを生成する。例えば、
図5に示す例では、紙面左右方向に延びる各目標走行経路LIは、第1辺C1及び第3辺C3に平行である。また、紙面上下方向に延びる各目標走行経路LIは、第2辺C2及び第4辺C4に平行である。
【0077】
このように、目標走行経路LIは、作業対象領域CAの輪郭を構成する各辺のうち少なくとも一つの辺に平行である。
【0078】
図4に示すように、走行管理システムAは、慣性計測装置81を備えている。また、制御部20は、方位算出部28を有している。尚、慣性計測装置81は、コンバイン1に搭載されている。
【0079】
慣性計測装置81は、コンバイン1の機体のヨー角度の角速度、及び、互いに直交する3軸方向の加速度を経時的に検知する。慣性計測装置81による検知結果は、方位算出部28へ送られる。
【0080】
方位算出部28は、位置算出部21から、コンバイン1の位置座標を受け取る。そして、方位算出部28は、慣性計測装置81による検知結果と、コンバイン1の位置座標と、に基づいて、コンバイン1の機体方位を算出する。
【0081】
より具体的には、まず、コンバイン1の走行中に、現在のコンバイン1の位置座標、及び、直前に走行していた地点におけるコンバイン1の位置座標に基づいて、方位算出部28は、初期機体方位を算出する。次に、初期機体方位が算出されてからコンバイン1が一定時間走行すると、方位算出部28は、その一定時間の走行の間に慣性計測装置81により検知された角速度を積分処理することにより、機体方位の変化量を算出する。
【0082】
そして、このように算出された機体方位の変化量を初期機体方位に足し合わせることによって、方位算出部28は、機体方位の算出結果を更新する。その後、一定時間毎に、機体方位の変化量が同様に算出されると共に、順次、機体方位の算出結果が更新されていく。
【0083】
以上の構成により、方位算出部28は、コンバイン1の機体方位を算出する。
【0084】
図4に示すように、第1経路管理部26は、経路選択部29を有している。また、制御部20は、走行制御部30を有している。走行制御部30は、走行装置11を制御することにより、コンバイン1の走行を制御可能に構成されている。
【0085】
即ち、走行管理システムAは、コンバイン1の走行を制御する走行制御部30を備えている。
【0086】
走行制御部30は、複数の目標走行経路LIのうちまだ走行していない目標走行経路LIに沿った刈取走行をコンバイン1が繰り返すように、コンバイン1の走行を制御する。これにより、圃場における刈取走行が自動走行にて行われることとなる。
【0087】
詳述すると、第1経路管理部26における経路選択部29は、位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、走行経路生成部27により生成された複数の目標走行経路LIと、に基づいて、コンバイン1が次に走行するべき目標走行経路LIを選択する。経路選択部29により選択された目標走行経路LIを示す情報は、走行制御部30へ送られる。
【0088】
また、走行制御部30は、位置算出部21からコンバイン1の位置座標を受け取る。走行制御部30は、方位算出部28からコンバイン1の機体方位を受け取る。そして、走行制御部30は、位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、方位算出部28から受け取ったコンバイン1の機体方位と、経路選択部29により選択された目標走行経路LIを示す情報と、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。より具体的には、走行制御部30は、目標走行経路LIに沿った自動走行によって刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0089】
この自動走行において、走行制御部30は、現在走行している目標走行経路LIの次に、経路選択部29により選択された目標走行経路LIに沿った刈取走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0090】
〔目標旋回経路の生成〕
走行制御部30は、
図6及び
図7に示すように、コンバイン1が旋回しながら未作業領域UAの角部CNを刈取走行するように、コンバイン1を制御可能に構成されている。以下では、コンバイン1が旋回しながら未作業領域UAの角部CNを刈取走行するための目標旋回経路Tの生成について詳述する。
【0091】
図4に示すように、制御部20は、第2経路管理部31を有している。第2経路管理部31は、旋回経路生成部32を有している。また、領域管理部22は、記憶部33を有している。
【0092】
未作業領域算出部24により算出された未作業領域UAは、記憶部33に記憶される。記憶部33に記憶されている未作業領域UAは、領域管理部22から第2経路管理部31へ送られる。第2経路管理部31の旋回経路生成部32は、領域管理部22から受け取った未作業領域UAに基づいて、目標旋回経路Tを生成する。このとき、旋回経路生成部32は、
図6に示すように、目標旋回経路Tが未作業領域UAの角部CNの形状に沿うように、目標旋回経路Tを生成する。
【0093】
即ち、走行管理システムAは、コンバイン1が旋回しながら未作業領域UAの角部CNを刈取走行するための目標旋回経路Tを、未作業領域UAに基づいて生成する旋回経路生成部32を備えている。
【0094】
図6に示す例では、目標旋回経路Tは、第1ラインE1、第2ラインE2、第3ラインE3、第4ラインE4が一続きに繋がったものである。第1ラインE1、第2ラインE2、第3ラインE3、第4ラインE4は、何れも、目標旋回経路Tを構成する要素経路ELである。
【0095】
即ち、旋回経路生成部32は、一続きに繋がる複数の要素経路ELにより目標旋回経路Tが構成されるように、目標旋回経路Tを生成する。言い換えれば、旋回経路生成部32は、直列状に(一列に)繋がる複数の要素経路ELにより目標旋回経路Tが構成されるように、目標旋回経路Tを生成する。
【0096】
尚、目標旋回経路Tを構成する要素経路ELの個数は、特に限定されるものではなく、三つ以下であっても良いし、五つ以上であっても良い。
【0097】
また、旋回経路生成部32は、要素経路ELが未作業領域UAに入り込まないように、要素経路ELを生成する。例えば、
図6に示すように、各要素経路ELの両端点は、未作業領域UAの輪郭上、または、未作業領域UAの外側に位置している。
【0098】
旋回経路生成部32により生成された目標旋回経路Tは、第2経路管理部31から走行制御部30へ送られる。走行制御部30は、位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、方位算出部28から受け取ったコンバイン1の機体方位と、第2経路管理部31から受け取った目標旋回経路Tと、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。より具体的には、走行制御部30は、目標旋回経路Tに沿った自動走行によってコンバイン1が旋回しながら未作業領域UAの角部CNを刈取走行するように、コンバイン1の走行を制御する。
【0099】
図6及び
図7に示す例では、走行制御部30の制御により、コンバイン1は、圃場の隅部において、第1ラインE1に沿って前進刈取走行した後、第2ラインE2に沿って前進刈取走行する。次に、コンバイン1は、第3ラインE3に沿って前進刈取走行する。次に、コンバイン1は、第4ラインE4に沿って前進刈取走行する。これにより、圃場の隅部において、目標旋回経路Tに沿った自動走行での前進刈取走行が行われる。
【0100】
このとき、
図7に示すように、走行制御部30は、コンバイン1の有する収穫部Hの旋回外側端部が目標旋回経路Tに沿って移動するようにコンバイン1の走行を制御する。尚、このとき植立穀稈が刈り取られる領域が、
図7においてハッチングにて示されている。
【0101】
以下では、互いに隣接する二つの要素経路ELのうち、コンバイン1の走行方向上手側に位置する方を「第1要素経路」と呼称し、走行方向下手側に位置する方を「第2要素経路」と呼称する。
【0102】
旋回経路生成部32は、目標旋回経路Tを生成する際、コンバイン1の走行方向上手側から順に、要素経路ELを生成していく。このとき、旋回経路生成部32は、第1要素経路に対する第2要素経路の傾きが大きいほど、第2要素経路の長さが長くなるように、第2要素経路を生成する。
【0103】
例えば、第1ラインE1と第2ラインE2との関係においては、第1ラインE1が第1要素経路であり、第2ラインE2が第2要素経路である。
図6に示す例では、第1ラインE1に対する第2ラインE2の傾きは、角度G1である。また、第2ラインE2の長さは、長さD1である。
【0104】
これに対して、第2ラインE2と第3ラインE3との関係においては、第2ラインE2が第1要素経路であり、第3ラインE3が第2要素経路である。
図6に示す例では、第2ラインE2に対する第3ラインE3の傾きは、角度G2である。また、第3ラインE3の長さは、長さD2である。角度G2は角度G1よりも大きい。また、長さD2は長さD1よりも長い。
【0105】
このように、互いに隣接する二つの要素経路ELである第1要素経路及び第2要素経路のうちコンバイン1の走行方向下手側に位置する第2要素経路は、第1要素経路に対する第2要素経路の傾きが大きいほど、第2要素経路の長さが長くなるように生成される。
【0106】
〔目標前進経路の生成〕
図4に示す位置算出部21は、最外周走行でのコンバイン1の軌跡だけではなく、自動走行中のコンバイン1の軌跡を算出可能に構成されている。自動走行中のコンバイン1の軌跡が算出されると、軌跡取得部23は、当該軌跡を取得する。
【0107】
図4に示すように、領域管理部22は、更新部34を有している。更新部34は、軌跡取得部23により取得された軌跡に基づいて、記憶部33に記憶されている未作業領域UAの算出結果を更新する。記憶部33は、更新後の未作業領域UAを記憶する。
【0108】
この構成により、更新部34は、圃場においてコンバイン1により行われた刈取走行に応じて未作業領域UAの算出結果を更新することができる。即ち、走行管理システムAは、圃場において行われた刈取走行に応じて未作業領域UAの算出結果を更新する更新部34を備えている。
【0109】
例えば、
図7に示すように、目標旋回経路Tに沿った自動走行での刈取走行が行われた場合、更新部34は、当該刈取走行で刈取済みとなった領域を未作業領域UAから除外することにより、未作業領域UAの算出結果を更新する。
【0110】
図4に示すように、第2経路管理部31は、前進経路生成部35を有している。更新部34により更新された未作業領域UAは、領域管理部22から第2経路管理部31へ送られる。第2経路管理部31の前進経路生成部35は、領域管理部22から受け取った更新された未作業領域UAに基づいて、目標前進経路FL(
図8参照)を生成可能である。目標前進経路FLは、目標旋回経路Tに沿った前進刈取走行が完了した後に未作業領域UAの角部CNをコンバイン1が前進しながら刈取走行するための経路である。
【0111】
即ち、走行管理システムAは、目標旋回経路Tに沿った前進刈取走行が完了した後に未作業領域UAの角部CNをコンバイン1が前進しながら刈取走行するための目標前進経路FLを、更新部34による更新結果に基づいて生成可能な前進経路生成部35を備えている。
【0112】
前進経路生成部35により目標前進経路FLが生成された場合、目標前進経路FLは、第2経路管理部31から走行制御部30へ送られる。走行制御部30は、位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、方位算出部28から受け取ったコンバイン1の機体方位と、第2経路管理部31から受け取った目標前進経路FLと、に基づいて、コンバイン1が方位変更動作を行うようにコンバイン1の走行を制御する。方位変更動作とは、後進した後で目標前進経路FLに沿って前進刈取走行する動作である。
【0113】
即ち、目標前進経路FLが生成された場合、走行制御部30は、コンバイン1が、後進した後で目標前進経路FLに沿って前進刈取走行する動作である方位変更動作を行うようにコンバイン1の走行を制御する。
【0114】
図8から
図10に示す例では、
図6及び
図7に示した目標旋回経路Tに沿った前進刈取走行が完了した後に、前進経路生成部35により目標前進経路FLが生成されている。また、
図9及び
図10により、方位変更動作の一例が示されている。この例において、コンバイン1は、走行制御部30の制御により、
図9に示すように、目標前進経路FLの延びる方向に機体方位を合わせるように、旋回しながら後進する。その後、コンバイン1は、走行制御部30の制御により、
図10に示すように、目標前進経路FLに沿って前進刈取走行を行う。
【0115】
尚、本発明はこれに限定されず、方位変更動作において、コンバイン1は、真っ直ぐに後進した後に、目標前進経路FLの延びる方向に機体方位を合わせるように、旋回しながら前進しても良い。
【0116】
コンバイン1が目標前進経路FLに沿って前進刈取走行を行うとき、
図10に示すように、走行制御部30は、コンバイン1の有する収穫部Hの旋回外側端部が目標前進経路FLに沿って移動するようにコンバイン1の走行を制御する。尚、このとき植立穀稈が刈り取られる領域が、
図10においてハッチングにて示されている。
【0117】
前進経路生成部35は、目標前進経路FLが、方位変更動作を行う前のコンバイン1の機体方位に対して旋回内側に傾くように、目標前進経路FLを生成する。例えば、
図8に示す例では、コンバイン1は、
図6及び
図7に示した目標旋回経路Tに沿った前進刈取走行が完了した状態である。
図6及び
図7に示した目標旋回経路Tの旋回方向は、
図6から
図8における反時計回り方向である。そのため、前進経路生成部35は、目標前進経路FLが、
図8に示すコンバイン1の機体方位に対して反時計回り方向に角度G3だけ傾くように、目標前進経路FLを生成する。
【0118】
尚、
図8に示す例では、方位変更動作を行う前のコンバイン1の機体方位は、第4ラインE4の延びる方向に一致している。また、角度G3は、予め決められた固定値であっても良いし、状況に応じて変化しても良い。
【0119】
以上で説明した構成により、コンバイン1が方位変更動作を行うと、コンバイン1の機体方位が旋回内側へ変化することとなる。
【0120】
このように、前進経路生成部35は、方位変更動作によってコンバイン1の機体方位が旋回内側へ変化するように、目標前進経路FLを生成する。
【0121】
また、前進経路生成部35は、目標前進経路FLを生成する時点での未作業領域UAに目標前進経路FLが入り込まないように、目標前進経路FLを生成する。例えば、
図8に示すように、目標前進経路FLの両端点は、未作業領域UAの輪郭上、または、未作業領域UAの外側に位置している。
【0122】
〔圃場の隅部における刈取走行〕
以下では、走行管理システムAにより実現される、圃場の隅部における刈取走行、及び、当該刈取走行の前後に行われる刈取走行について説明する。
【0123】
図4に示す走行制御部30は、コンバイン1が、一つの目標走行経路LIに沿った刈取走行を行った後、旋回走行を行い、且つ、旋回走行の後に当該一つの目標走行経路LIとは異なる目標走行経路LIに沿った刈取走行を行うようにコンバイン1の走行を制御する。そして、コンバイン1が当該旋回走行を行う際、走行制御部30は、コンバイン1が目標旋回経路Tに沿って走行するようにコンバイン1の走行を制御可能である。
【0124】
例えば、
図6から
図11に示す例では、コンバイン1は、走行制御部30の制御により、第1目標経路M1に沿った刈取走行を、第1目標経路M1上の旋回開始地点SP(
図6参照)に到達するまで行った後、目標旋回経路Tに沿った旋回走行を行う。次に、コンバイン1は、
図9及び
図10に示す方位変更動作を行う。その後、コンバイン1は、
図10及び
図11に示すように、後進した後、第2目標経路M2に沿った刈取走行を行う。
【0125】
尚、第1目標経路M1は、複数の目標走行経路LIのうちの一つである。また、第2目標経路M2は、第1目標経路M1とは異なる目標走行経路LIである。
【0126】
また、
図6から
図11に示すように、走行制御部30は、コンバイン1が、複数の目標走行経路LIのうちの一つである第1目標経路M1に沿って未作業領域UAの角部CNに到達するまで刈取走行を行った後、目標旋回経路Tに沿った前進刈取走行を含む方向転換走行を行い、且つ、当該方向転換走行の後、複数の目標走行経路LIのうちの一つである第2目標経路M2に沿って刈取走行を行うように、コンバイン1を制御可能に構成されている。尚、第2目標経路M2に沿った刈取走行により、植立穀稈は、
図11にハッチングで示すように刈り取られていく。
【0127】
制御部20は、
図12に示す走行制御フローに従って、コンバイン1の走行を制御するように構成されている。この走行制御フローは、最外周走行の完了後、コンバイン1の自動走行中に、コンバイン1が、目標走行経路LIに沿って、圃場の隅部へ向かって走行しているときに実行される。
【0128】
この走行制御フローが開始されると、まず、ステップS01の処理が実行される。ステップS01では、コンバイン1が刈取済みの領域に進入した後、圃場の隅部における所定の方向転換方法による方向転換を、コンバイン1が未作業領域UAに進入することなく行うことが可能であるか否かが判定される。尚、本実施形態における「所定の方向転換方法」は、具体的には、αターンである。
【0129】
ステップS01での判定について詳述する。
図4に示すように、領域管理部22は、境界算出部36を有している。また、制御部20は、ターン判定部37(本発明に係る「判定部」に相当)を有している。境界算出部36は、軌跡取得部23が取得した軌跡に基づいて、最外周走行における収穫部Hの圃場外側端部の軌跡を算出する。境界算出部36は、最外周走行における収穫部Hの圃場外側端部の軌跡に基づいて、コンバイン1の進入が許可される領域の境界OB(
図2参照)を算出する。境界OBは、圃場の輪郭に一致していても良いし、一致していなくても良い。
【0130】
境界算出部36により算出された境界OBは、領域管理部22からターン判定部37へ送られる。また、ステップS01の処理において、記憶部33に記憶されている最新の(現在の)未作業領域UAが、領域管理部22からターン判定部37へ送られる。
【0131】
ステップS01の処理において、ターン判定部37は、受け取った境界OB及び未作業領域UAに基づいて、コンバイン1が刈取済みの領域に進入した後、圃場の隅部における所定の方向転換方法による方向転換を、コンバイン1が未作業領域UAに進入することなく行うことが可能であるか否かを判定する。
【0132】
このように、走行管理システムAは、最外周走行の完了後に、圃場の隅部における所定の方向転換方法による方向転換を、コンバイン1が未作業領域UAに進入することなく行うことが可能であるか否かを判定するターン判定部37を備えている。
【0133】
尚、
図4に示すように、ターン判定部37による判定結果は、走行制御部30へ送られる。以下で説明するように、走行制御部30は、
図12に示す走行制御フローに従い、当該判定結果に応じてコンバイン1の走行を制御する。
【0134】
図13には、圃場の隅部における所定の方向転換方法による方向転換を、コンバイン1が未作業領域UAに進入することなく行うことが可能である場合の例が示されている。この例のような場合、ターン判定部37は、可能であると判定する。
【0135】
図14には、圃場の隅部における所定の方向転換方法による方向転換を、コンバイン1が未作業領域UAに進入することなく行うことが可能でない場合の例が示されている。この例のように、コンバイン1が未作業領域UAに進入することなく所定の方向転換方法による方向転換を行うとコンバイン1が境界OBを越えてしまうことが予測される場合、ターン判定部37は、可能でないと判定する。
【0136】
図12に示すように、ターン判定部37が可能であると判定した場合(ステップS01にて「Yes」)、処理はステップS02へ移行する。ステップS02では、コンバイン1が圃場の隅部において目標旋回経路Tに沿った刈取走行を行うことなく、所定の方向転換方法(本実施形態ではαターン)による方向転換を行うように、走行制御部30によってコンバイン1の走行が制御される。
【0137】
即ち、ターン判定部37が可能であると判定した場合、走行制御部30は、コンバイン1が圃場の隅部において目標旋回経路Tに沿った刈取走行を行うことなく、所定の方向転換方法による方向転換を行うようにコンバイン1の走行を制御する。
【0138】
ステップS02の次に、処理はステップS03へ移行する。ステップS03では、コンバイン1が次の目標走行経路LIに沿った刈取走行を行うように、走行制御部30がコンバイン1の走行を制御する。尚、「次の目標走行経路LI」とは、コンバイン1が次に走行する目標走行経路LI、即ち、経路選択部29により選択された目標走行経路LIである。
【0139】
例えば、この走行制御フローが開始された時点で、コンバイン1が、
図6に示す第1目標経路M1に沿って刈取走行していた場合、ステップS03では、コンバイン1が第2目標経路M2に沿った刈取走行を行うように、走行制御部30がコンバイン1の走行を制御する。
【0140】
ステップS03の後、この走行制御フローは一旦終了する。
【0141】
また、
図12に示すように、ターン判定部37が可能でないと判定した場合(ステップS01にて「No」)、処理はステップS04へ移行する。ステップS04では、
図6を参照しながら説明したように、旋回経路生成部32により、目標旋回経路Tが生成される。次に、
図7を参照しながら説明したように、圃場の隅部において目標旋回経路Tに沿った自動走行での前進刈取走行が行われる(ステップS05)。次に、更新部34によって未作業領域UAの算出結果が更新される(ステップS06)。
【0142】
このように、ターン判定部37が可能でないと判定した場合、走行制御部30は、コンバイン1が圃場の隅部において目標旋回経路Tに沿った刈取走行を行うようにコンバイン1の走行を制御する。
【0143】
ステップS06の次に、処理はステップS07へ移行する。ステップS07では、完了時方位と、次の目標走行経路LIの延びる方向と、の角度差が閾値以上であるか否かが判定される。尚、完了時方位とは、目標旋回経路Tまたは目標前進経路FLに沿った前進刈取走行の完了時点でのコンバイン1の機体方位である。また、閾値は、予め決められた固定値であっても良いし、状況に応じて変化しても良い。閾値は、特に限定されないが、例えば20°であっても良いし、30°であっても良いし、40°であっても良い。以下では、ステップS07での判定について詳述する。
【0144】
図4に示すように、制御部20は、角度差判定部38を有している。角度差判定部38は、第1経路管理部26から、次の目標走行経路LIを取得する。
【0145】
また、
図7を参照しながら説明したように、目標旋回経路Tに沿った前進刈取走行が行われる場合、角度差判定部38は、方位算出部28から、当該前進刈取走行の完了時点でのコンバイン1の機体方位を取得する。この場合、
図12のステップS07において、角度差判定部38は、当該前進刈取走行の完了時点でのコンバイン1の機体方位と、次の目標走行経路LIの延びる方向と、の角度差が閾値以上であるか否かを判定する。
【0146】
また、
図10を参照しながら説明したように、目標前進経路FLに沿った前進刈取走行が行われる場合、角度差判定部38は、方位算出部28から、当該前進刈取走行の完了時点でのコンバイン1の機体方位を取得する。この場合、
図12のステップS07において、角度差判定部38は、当該前進刈取走行の完了時点でのコンバイン1の機体方位と、次の目標走行経路LIの延びる方向と、の角度差が閾値以上であるか否かを判定する。
【0147】
処理が初めてステップS07へ移行した時点では、目標旋回経路Tに沿った前進刈取走行が完了した状態(完了直後の状態)である。そのため、目標旋回経路Tに沿った前進刈取走行の完了時点での機体方位と、次の目標走行経路LIの延びる方向と、の角度差が閾値以上であるか否かが判定されることとなる。当該角度差が閾値以上である場合(ステップS07にて「Yes」)、処理はステップS08へ移行する。
【0148】
ステップS08では、
図8を参照しながら説明したように、目標前進経路FLが生成される。ここで、上述の通り、前進経路生成部35は、目標前進経路FLが、方位変更動作を行う前のコンバイン1の機体方位に対して旋回内側に傾くように、目標前進経路FLを生成する。即ち、処理が初めてステップS08へ移行したとき、目標前進経路FLは、目標旋回経路Tに沿った前進刈取走行の完了時点でのコンバイン1の機体方位に対して旋回内側に傾くように生成されることとなる。次に、処理はステップS09へ移行する。
【0149】
ステップS09では、
図9及び
図10を参照しながら説明したように、方位変更動作が行われる。その後、処理はステップS06へ戻る。即ち、処理が初めてステップS06へ移行してから、ステップS07でNoと判定されるまでの間、処理はステップS06からステップS09を繰り返すこととなる。
【0150】
ステップS07への移行が二回目以降である場合、ステップS07に移行した時点では、目標前進経路FLに沿った前進刈取走行が完了した状態(完了直後の状態)である。そのため、目標前進経路FLに沿った前進刈取走行の完了時点での機体方位と、次の目標走行経路LIの延びる方向と、の角度差が閾値以上であるか否かが判定されることとなる。当該角度差が閾値以上である場合(ステップS07にて「Yes」)、処理はステップS08へ移行する。
【0151】
ステップS08への移行が二回目以降である場合は、前回のステップS08にて生成された目標前進経路FLとは異なる新たな目標前進経路FLが生成される。このとき、新たな目標前進経路FLは、前回のステップS08にて生成された目標前進経路FLに沿った前進刈取走行の完了時点でのコンバイン1の機体方位に対して旋回内側に傾くように、前進経路生成部35によって生成される。
【0152】
尚、ステップS06での処理は、一回目の場合と二回目以降の場合とで同じである。また、ステップS09での処理も、一回目の場合と二回目以降の場合とで同じである。
【0153】
また、ステップS07において、完了時方位と、次の目標走行経路LIの延びる方向と、の角度差が閾値以上でないと判定された場合、処理はステップS03へ移行する。ステップS03では、上述の通り、コンバイン1が次の目標走行経路LIに沿った刈取走行を行うように、走行制御部30がコンバイン1の走行を制御する。ステップS03の後、この走行制御フローは一旦終了する。即ち、この場合、ステップS07の後にステップS08は実行されないため、ステップS07の後に目標前進経路FLの生成は行われない。
【0154】
以上の構成により、例えば、
図8に示すように、次の目標走行経路LIが第2目標経路M2であるケースにおいては、完了時方位と、第2目標経路M2の延びる方向と、の角度差が閾値以上である場合(ステップS07にて「Yes」)、前進経路生成部35は、完了時方位に対して旋回内側に傾く目標前進経路FLを生成する(ステップS08)。また、このケースにおいて、完了時方位と、第2目標経路M2の延びる方向と、の角度差が閾値未満である場合(ステップS07にて「No」)、前進経路生成部35は目標前進経路FLを生成せず、且つ、コンバイン1は走行制御部30の制御により第2目標経路M2に沿った刈取走行を行う。
【0155】
即ち、目標旋回経路Tまたは目標前進経路FLに沿った前進刈取走行の完了時点でのコンバイン1の機体方位である完了時方位と、第2目標経路M2の延びる方向と、の角度差が閾値以上である場合、前進経路生成部35は、完了時方位に対して旋回内側に傾く目標前進経路FLを生成する。また、当該角度差が閾値未満である場合、前進経路生成部35は目標前進経路FLを生成せず、且つ、コンバイン1は走行制御部30の制御により第2目標経路M2に沿った刈取走行を行う。
【0156】
〔刈取高さ制御〕
図1に示すように、コンバイン1は、収穫部Hを昇降させるための昇降アクチュエータ82を備えている。本実施形態において、昇降アクチュエータ82は、油圧シリンダにより構成されている。
図4に示す制御部20は、昇降アクチュエータ82を制御することにより、収穫部Hの地上高さを制御可能に構成されている。
【0157】
コンバイン1が目標走行経路LIに沿った前進刈取走行を行う際、制御部20は、
図15に仮想線で示すように、収穫部Hの地上高さを高さJ1に維持する。また、コンバイン1が目標旋回経路Tまたは目標前進経路FLに沿った前進刈取走行を行う際、制御部20は、
図15に実線で示すように、収穫部Hの地上高さを高さJ2に維持する。高さJ2は、高さJ1よりも高い。
【0158】
この構成によれば、コンバイン1が目標旋回経路Tまたは目標前進経路FLに沿った前進刈取走行を行う際、
図15に示すように収穫部Hの左側部または右側部が植立穀稈に接触する場合、接触位置が比較的高くなる。これにより、植立穀稈が倒れてしまうことを回避しやすくなる。
【0159】
〔ハンチング抑制〕
図16に示すように、コンバイン1が目標走行経路LIに沿った自動走行を行っているときに、コンバイン1の位置が目標走行経路LIから離れている場合、
図4に示す走行制御部30は、コンバイン1が目標走行経路LIに近付くように、コンバイン1の走行を制御する。圃場表面の状態等の様々な条件によっては、このような制御の結果、コンバイン1の位置が目標走行経路LI上に収束せず、コンバイン1が目標走行経路LIを中心とした蛇行を続けてしまう事態が想定される。以下では、このような現象を「ハンチング」と呼称する。
【0160】
本実施形態では、走行制御部30は、
図17に示すハンチング抑制フローに従って、コンバイン1の走行を制御するように構成されている。このハンチング抑制フローは、コンバイン1が目標走行経路LIに沿った自動走行を行っているときに、一定時間毎に繰り返し実行される。
【0161】
このハンチング抑制フローが開始されると、まず、ステップS11の処理が実行される。ステップS11では、コンバイン1の走行制御の履歴に基づいて、ハンチングが起こっているか否かが走行制御部30により判定される。より具体的には、所定時間以内に、操舵方向の切り替えが所定回数以上行われたか否かが判定される。
【0162】
ハンチングが起こっていないと判定された場合(ステップS11にて「No」)、このハンチング抑制フローは一旦終了する。ハンチングが起こっていると判定された場合(ステップS11にて「Yes」)、処理はステップS12へ移行する。
【0163】
ステップS12では、走行制御部30により、コンバイン1の車速が下げられる。その後、このハンチング抑制フローは一旦終了する。
【0164】
以上で説明した構成によれば、コンバイン1が目標旋回経路Tに沿って刈取走行を行うことにより、旋回しながら未作業領域UAの角部CNを刈取走行することができる。そして、この刈取走行により、コンバイン1の方向転換を行いやすい。即ち、以上で説明した構成によれば、コンバイン1が方向転換を行える程度の広さの既刈領域を事前に確保していなくても、目標旋回経路Tに沿う刈取走行により、方向転換を行いやすい。
【0165】
従って、以上で説明した構成によれば、コンバイン1が方向転換を行える程度の広さの既刈領域を確保していなくても、方向転換と、生成された目標旋回経路Tに沿った刈取走行と、を行いやすい走行管理システムAを実現できる。
【0166】
〔その他の実施形態〕
(1)走行装置11は、ホイール式であっても良いし、セミクローラ式であっても良い。
【0167】
(2)上記実施形態においては、走行経路生成部27により生成される目標走行経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、走行経路生成部27により生成される目標走行経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線でなくても良い。例えば、走行経路生成部27により生成される目標走行経路LIは、渦巻き状の走行経路であっても良い。また、目標走行経路LIは、別の目標走行経路LIと直交していなくても良い。また、走行経路生成部27により生成される目標走行経路LIは、互いに平行な複数の平行線であっても良い。
【0168】
(3)走行管理システムAは、コンバイン1以外の種類の作業車の走行を管理するように構成されていても良い。例えば、走行管理システムAは、トラクタや田植機の走行を管理しても良い。この場合、トラクタ、田植機は、何れも本発明に係る「作業車」に相当する。また、トラクタが耕耘作業や農用資材散布作業(例えば肥料散布作業)を行う場合、耕耘作業及び農用資材散布作業は、何れも、本発明に係る「作業走行」に相当し、耕耘装置及び散布装置は、何れも、本発明に係る「作業装置」に相当する。また、田植機が苗植付作業を行う場合、苗植付作業は本発明に係る「作業走行」に相当し、苗植付装置は本発明に係る「作業装置」に相当する。
【0169】
(4)コンバイン1は自動走行できないように構成されていても良い。即ち、走行管理システムAは、走行制御部30を備えていなくても良い。この場合、目標走行経路LI、目標旋回経路T、目標前進経路FLは、手動走行のためのガイダンスとして利用されても良い。
【0170】
(5)角度差判定部38による判定において、方位算出部28から取得する機体方位に代えて、目標旋回経路Tの下手側端部(
図6に示す例では第4ラインE4)の延びる方向、または、目標前進経路FLの延びる方向が、完了時方位として取り扱われてもよい。
【0171】
(6)目標旋回経路Tは、複数の要素経路ELにより構成されていなくても良い。例えば、目標旋回経路Tは、目標旋回経路Tの全長に亘って一体的に生成されても良い。
【0172】
(7)要素経路ELは、未作業領域UAに入り込むように生成されても良い。
【0173】
(8)旋回経路生成部32は、第1要素経路に対する第2要素経路の傾きの大きさとは無関係に、第2要素経路の長さを決定しても良い。また、第2要素経路の長さは一定値であっても良い。
【0174】
(9)走行制御部30は、コンバイン1の左右中心位置が目標旋回経路Tに沿って移動するようにコンバイン1の走行を制御しても良い。
【0175】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明は、普通型のコンバインだけではなく、自脱型のコンバイン、トラクタ、田植機、トウモロコシ収穫機、ジャガイモ収穫機、ニンジン収穫機、建設作業機等の種々の作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0177】
1 コンバイン(作業車)
23 軌跡取得部
24 未作業領域算出部
25 領域決定部
27 走行経路生成部
30 走行制御部
32 旋回経路生成部
34 更新部
35 前進経路生成部
37 ターン判定部(判定部)
A 走行管理システム
CA 作業対象領域
CN 角部
EL 要素経路
FL 目標前進経路
H 収穫部(作業装置)
LI 目標走行経路
M1 第1目標経路
M2 第2目標経路
SA 最外周領域
T 目標旋回経路
UA 未作業領域