(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】飲料ポッド
(51)【国際特許分類】
B65D 85/804 20060101AFI20241115BHJP
A47J 31/06 20060101ALI20241115BHJP
B65D 85/72 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B65D85/804 200
A47J31/06 101
B65D85/72 200
(21)【出願番号】P 2021531753
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2019083379
(87)【国際公開番号】W WO2020114995
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-12-01
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100168734
【氏名又は名称】石塚 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】グレス, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ヘイデル, クリストフ, セバスチャン, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ジラルディン, パスカル
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0314955(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02100727(EP,A1)
【文献】特表2015-512736(JP,A)
【文献】特表2017-537693(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008694(US,A1)
【文献】特表2017-508570(JP,A)
【文献】特表2017-522931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/72
A47J 31/06
B65D 85/804
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容積部を有するポッ
ドであって、
前記内容積部には、飲料原材料が収容されており、
前記内容積部に水が導入されると前記内容積部で飲料が生成され、前記ポッ
ドは、
本体で
あって、前記本体を通して前記水が導入される本
体と、
閉鎖蓋であって、前記閉鎖蓋を通
して前記飲料が抽出される閉鎖
蓋とを備え、
前記閉鎖蓋は、少なくとも
第1の紙層
と封止層とを備える
第1の多層材料から作製されており、前記本
体に封止されており、かつ前記本体との間に前記内容積部を画定しており、前記ポッ
ドは生分解性材料から作製されており、前記本
体は三次元形状を有し、前記閉鎖
蓋は平坦であ
り、
前記本体は、第2の多層材料から作製されており、前記第2の多層材料は、伸長可能な
材料であり、前記ポッドは、前記閉鎖蓋と平行な平面に関して非対称であり、
前記
第1の多層材料は、
前記ポッドと共に使用される飲料マシンによる穴開け時の裂け
を許容するが伸びを許容しない、1.5mm~3mmの伸びに対して3N/15mm~10N/15mmの破壊抵抗の値を有する材料から作製されており
、
前記
第2の多層材料は、
第2の紙層とプラスチック封止層とを備え、
前記プラスチック
封止層は、2つの堆肥化可能ポリマーの間に挟まれたバリアポリマーを含み、前記バリア
ポリマーはポリビニルアルコール(PVOH)であり、前記堆肥化可能ポリマーは、ポリ
乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート
(PHA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、デンプン、及びこれ
らの組み合わせから選択され、前記第2の多層材料の破断伸びは少なくとも2%に等し
い
、ポッド。
【請求項2】
前記閉鎖
蓋の前記
第1の多層材料は、プラスチック層と、前記
第1の紙層と、前
記封止層とを備える、請求項1に記載のポッ
ド。
【請求項3】
前記本
体及び前記閉鎖
蓋の各々
の外側表面
が、堆肥化可能なポリマー材料の保護層
を備
える、請求項
1に記載のポッ
ド。
【請求項4】
前記ポッ
ドは、
閉鎖されており、液体不透過性材料から作製されている、請求項
1に記載のポッ
ド。
【請求項5】
前記第2の多層材料の前記破断伸びは、2%~20%である、請求項1に記載のポッド
。
【請求項6】
前記ポッドは、ガスに対して不透過性である、請求項1に記載のポッド。
【請求項7】
前記閉鎖蓋と前記本体との間の前記封止は、150ミリバールの膨張圧下で30秒間、
2ml/分未満の漏れ流量を有する、請求項1に記載のポッド。
【請求項8】
前記ポッドは、堆肥化可能な材料から作製されている、請求項1に記載のポッド。
【請求項9】
前記第2の紙層は、前記本体の外側表面を形成し、前記第2の多層材料の前記プラスチ
ック封止層は、前記本体の内側表面を形成する、請求項1に記載のポッド。
【請求項10】
前記飲料原材料は、
焙煎されて挽かれ、圧縮されたコーヒー
豆である、請求項1に記載のポッド。
【請求項11】
前記第2の多層材料の前記プラスチック封止層の厚さは、35μm~50μmである、
請求項1に記載のポッド。
【請求項12】
前記第1の紙層は、前記閉鎖蓋の外側面を形成し、前記第1の多層材料の前記封止層は
、前記閉鎖蓋の内側面を形成する、請求項1に記載のポッド。
【請求項13】
前記第1の多層材料の前記プラスチック層は、前記閉鎖蓋の外側面を形成し、前記第1
の紙層は、前記閉鎖蓋の中間層を形成し、前記第1の多層材料の前記封止層は、前記閉鎖
蓋の内側面を形成する、請求項2に記載のポッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を調製するための飲料原材料を
含むポッドに関する。特に、本発明は、コーヒーを調製するためのポッドに関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーを含むポッドを抽出マシンで使用することによって、コーヒー飲料を調製することが知られている。ポッドは、コーヒーが収容された内容積部を有し、内部に水が導入されると、飲料又は飲み物が生産される。
【0003】
環境に配慮した取り組みのなかで、既存のポッドの一部は、堆肥化可能材料又は生分解性材料から作製されている。例えば、国際公開第2016/139554(A1)号には、堆肥化可能なコーヒーポッドが開示されている。
【0004】
国際公開第2016/139554(A1)号に説明されているように、「堆肥化可能」と定義することができるよう、材料が有していなければならない特性は、欧州規格EN 13432「Requirements for packaging recoverable through composting and biodegradation - Test scheme and evaluation criteria for the final acceptance of packaging」によって確立されている。この基準に従って、堆肥化可能材料が有していなければならない特性を以下に列挙する。
【0005】
-生分解度、つまり、二酸化炭素への堆肥化可能材料の代謝変換。この性質は、標準試験方法、つまり、prEN14046(ISO14855:biodegradability under controlled composting conditionsとしても公開されている)を用いて評価される。許容レベルは、6ヶ月未満で達成される90%の生分解度(セルロースに関する)である。
【0006】
-崩壊度、つまり、最終的な堆肥において識別できない欠片(目に見える汚染はない)。パイロットスケール(prEN14045)での堆肥化試験を用いて評価される。試験材料サンプルは、3ヶ月間、有機廃棄物と共に堆肥化される。最後に、堆肥は2mmのふるいでふるい分けされる。2mmよりも大きいサイズの残された試験材料の量が、当初の量の10%未満でなければならない。
【0007】
-堆肥化方法に悪影響がないこと(パイロットスケールでの堆肥化試験で検証される)。
【0008】
-重金属の含有量が少なく、堆肥の品質に悪影響(例えば、農学的な価値の低下及び植物成長に対する生態毒性影響の存在)がないこと。植物成長試験(試験OECD208、改変)は、試験材料の劣化が生じた堆肥サンプルで実施される。対照堆肥と比較して、差異が観察されてはならない。
【0009】
-研究対象材料の劣化後に変化してはならない他の化学物理パラメータ:pH;塩分;揮発性固形物;N;P;Mg;K。
【0010】
生分解性材料は、堆肥化サイクル中に崩壊もしなければならないので、必ずしも堆肥化可能ではないことが理解されよう。一方、堆肥化サイクル中に分解するものの、その後、完全には生分解しない微細な破片になる材料は、堆肥化可能ではない。
【0011】
国際公開第2016/139554(A1)号には、例えばコーヒーなどの液体製品を調製するために使用することができる、1回分の少なくとも1種の物質を含むカートリッジ又はポッドが開示されている。ポッドは、前述した液体をカートリッジから流出させることができる底壁と、この底壁とは反対側の端部でカートリッジを閉鎖するための閉鎖蓋又は閉鎖壁とを有する本体を備える。底壁は、12N以上の穿孔性(ASTM F 1306 90に準拠、貫通速度:300mm/分)を有する堆肥化可能なプラスチック材料を備え、20μm~2mmの範囲の厚さを有する。先行技術、特に同号では、好ましい使用形態として、カートリッジ底部の最初の穿孔(つまり、コーヒー製品抽出側の穿孔)が、抽出側でのコーヒーマシンの穿孔先端部との干渉によると想定され得ることが説明されている。つまり、穿孔先端部によるカートリッジ底部への穿孔の動作に続いて、場合によっては、その後、液体の水及び/又は蒸気がカートリッジへと流入し始める。言い換えると、カートリッジの抽出側は、同カートリッジの水/蒸気入口側にある閉鎖蓋の穿孔前に又は穿孔と同時に穿孔されることが好ましい。
【0012】
しかしながら、品質上の理由から、特にカートリッジ内に適切な水圧をかけ、それにより、水圧でコーヒーグラウンドから大部分の風味を抽出するために、カートリッジの水入口側の穴開け後にカートリッジの抽出側を開放することが好ましい場合がある。これにより、良好な割合のコーヒー固形分の抽出と良好な口当たりとでコーヒーを適切に抽出することが可能になる。
【0013】
本発明の目的は、生分解性、好ましくは堆肥化可能であって、機能的な構造において、適切な抽出のための特定の開放特性を関連付けることができる、1回分のコーヒー、好ましくは圧縮された1回分のコーヒー用のパッケージを提供することである。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、飲料原材料が収容されており、内部に水が導入されると飲料が生成される内容積部を有するポッドであって、このポッドは、水が導入される本体と、飲料が抽出される閉鎖蓋とを備え、この閉鎖蓋は、上記本体に封止されており、かつ上記内容積部を画定している、ポッドに関する。
【0015】
ポッドは生分解性材料から作製されており、上記本体は三次元形状を有し、上記閉鎖蓋は平坦であり、この閉鎖蓋は、1.5mm~3mmの伸びに対して3N/15mm~10N/15mmの破壊抵抗(puncture resistance)の値を有する材料から作製されている。
【0016】
抽出側、つまり、閉鎖蓋の平坦な形状及び破壊抵抗によって、閉鎖蓋を、マシン内で穴開けされたときに、即座に開放することができる。さらに、穴開けの際の閉鎖蓋の伸びが制御される。閉鎖蓋は伸びすぎない。少ない伸びを伴うこの瞬時の又はスナップ式の破断により、ポッドを適切に開放して、コーヒーを良好に抽出することができる。
【0017】
閉鎖蓋は多層材料から作製されており、この多層材料は、少なくとも紙層とプラスチックラミネート層(又は「封止層」)とを備える。
【0018】
一実施形態では、上記閉鎖蓋の上記多層材料は、プラスチック層と、紙層と、プラスチックラミネート封止層(又は「封止層」)とを備える。
【0019】
紙及びプラスチックラミネートは、穿孔性に関して所望の特性を有することができる。さらに、様々な材料のなかから選択することが可能であり、特にプラスチックラミネート層については、生分解性材料又は堆肥化可能材料を選択することが可能である。
【0020】
一実施形態では、上記本体は伸長可能材料から作製されている。
【0021】
本体に伸長可能材料を使用することにより、所望の正確な形状及び寸法を有する三次元形状の形成が容易になる。さらに、伸長可能材料を使用することにより、本体の成形中にしわが形成されることが防止される。
【0022】
本発明によれば、上記本体は、紙層とプラスチックラミネート層とを備える多層材料から作製することができる、又は、プラスチックから構成された単層材料から作製することができる。ラミネートとは、共にラミネート加工された(つまり、ラミネーション方法によって貼り合わされた)少なくとも2つの層を備える材料を意味している。
【0023】
紙とプラスチックラミネートとは、伸長性に関して所望の特性を有することができる。
【0024】
本体が多層材料から作製されている場合には、この多層材料は、少なくとも2%に等しい破断伸び(tensile value at break)、好ましくは2%~20%の破断伸びを有する。
【0025】
本体が単層材料から作製されている場合には、この単層材料はプラスチックから構成されていて、2%~1000%の範囲の破断伸びを有する。
【0026】
一実施形態では、ポッドは、閉鎖蓋に対して平行な平面に関して非対称である。
【0027】
一実施形態では、本体及び閉鎖蓋の各々は、外側表面を有し、本体及び閉鎖蓋の各々の外側表面は、堆肥化可能なポリマー材料の保護層によってコーティングされている。
【0028】
保護層は、閉鎖蓋が飲料マシンに固着することを回避する。特に、保護層は撥水性である。
【0029】
一実施形態では、上記ポッドは密閉されていて、液体不透過性材料から作製されている。
【0030】
これにより、ポッドの抽出側の穴開け前のコーヒーの漏れが回避される。
【0031】
本発明の更なる特徴及び利点は、図面を参照して以下に記載された好ましい実施形態の説明に記載されていて、この実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図3】ポッドを構成する材料の破壊抵抗試験の結果概要のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1及び
図2は、本発明の一実施形態によるポッド1を示している。
【0034】
ポッド1は、本体10と閉鎖蓋11とを備える。閉鎖蓋11は、ポッド1が完全に閉鎖されているように本体10を覆っている。本体10と閉鎖蓋11とは、飲料原材料、特にコーヒーが収容されている内容積部を形成している。
【0035】
本体10は、三次元形状である。三次元形状とは、本体が「成形されて」いること、又は、言い換えると、本体が平坦でないことを意味するものとする。本体10は、回転軸線を中心として延在している円錐台形状である。本体10は、底壁101と側壁102とを有する。側壁102は、鉛直な回転軸線Aに対して角度αで傾斜している。角度αは、45°未満、好ましくは30°未満である。角度αは、0°に等しくてもよい。言い換えると、側壁102は、底壁101に対して実質的に垂直に延在していてよい。本体10は、側壁102を取り囲んでいる周縁部103を備える。
【0036】
本体10は、外側表面と内側表面とを有する。内側表面は、コーヒーと接する表面である。特に、底壁101は、内面101aと外面101bとを有する。
【0037】
閉鎖蓋11は、平坦である。「平坦」という用語は、閉鎖蓋11が実質的に一平面内に延在していることを意味するものとする。言い換えると、閉鎖蓋11は、一平面内に延在していてよい、又は、実質的に凸状若しくは凹状であってよい。
【0038】
閉鎖蓋11は、内側面11aと外側面11bとを有する。閉鎖蓋11の内側面11aは、底壁101の内面101aに対向している。
【0039】
閉鎖蓋11は、本体10に封止されている。説明した実施形態では、閉鎖蓋11は、周縁部103に封止されている。閉鎖蓋11は、ポッド1の完全な封止を保証するように、本体10に密着して取り付けられている。ポッド1は、液体及び蒸気に対して不透過性である。好ましくは、ポッド1は、ガスに対しても不透過性である。
【0040】
本体10と閉鎖蓋11との結合は、熱封止又は超音波封止によって達成することができる。
【0041】
閉鎖蓋11と本体10と間の封止は気密であり、漏れ流量値は低い。漏れ流量値は、好ましくは、150ミリバールの膨張圧下で30秒間、2ml/分未満である。また、閉鎖蓋11と本体10と間の封止は、好ましくは、600ミリバールの減圧下で30~40秒の間、密でもある。
【0042】
ポッド1は、閉鎖蓋11に対して平行な平面に関して非対称である。
【0043】
ポッド1は、生分解性材料から作製されている。好ましくは、ポッド1は、堆肥化可能材料から作製されている。ポッド1は、「工業的に」堆肥化可能又は「家庭で」堆肥化可能であるように意図されている。
【0044】
本体10は、伸長可能材料から作製されている。本体10は、ブランクから出発して、このブランクを伸長させて賦形することによって形成されている。本体10に伸長可能材料を使用することによって、本体の成形中に破断又は裂開及び周縁部103へのしわの形成なしに、必要な伸張が可能となる。さらに、伸長可能材料によって、本体10に所望の形状及び寸法を付与することができる。例えば、材料が伸長可能であるほど、本体を伸ばして、本体の寸法を拡大することができる。
【0045】
本体10は、少なくとも2%に等しい破断伸びを有する。破断伸びとは、材料が伸び方向の負荷に耐える能力を定義付けており、本明細書では、伸長性を特徴付けている。破断伸びが大きいほど、その材料は伸長可能である。本明細書では、破断伸びは、ISO1924-2に従って、20mm/分の速度で考慮されている。
【0046】
マシン内でのコーヒー製造中には、水が本体10を通して導入される。水は底壁101を通して注入される。良質なコーヒーの抽出のためには、針によるポッド1の開放が円滑かつ容易でなければならないことが判った。
【0047】
したがって、本体10は、注入ニードル又はブレードによって適切に開放しなければならず、同時に形成中に必要な伸張が可能でなければならない。本体は、そのような特性を付与する材料から作製されている。
【0048】
一実施形態では、本体10は、多層材料から作製されている。例えば、本体10は、紙層とプラスチック封止層とから作製されている。好ましくは、紙層は本体の外側表面を形成しており、プラスチック封止層は内側表面を形成している。
【0049】
紙は成形可能であり、つまり、三次元に賦形することができる。紙は、例えば、80~150gsm(グラム/平方メートル)の坪量を有してよい。
【0050】
プラスチックラミネートは、2つの堆肥化可能ポリマーの間に挟まれたバリアポリマーを含むことができる。バリアポリマーは、例えば、ポリビニルアルコール(PVOH)であってよい。堆肥化可能ポリマーは、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)及びデンプンから選択することができる。また、堆肥化可能ポリマーは、PLA、PBAT、PLA及びPBBSにより形成されたポリマーブレンドから構成されていてもよい。
【0051】
例えば、プラスチックラミネートは、ポリ乳酸(PLA)の2つの層の間に挟まれたポリビニルアルコール(PVOH)から形成することができる。
【0052】
プラスチックラミネートは、20~100μm、好ましくは35~50μmの厚さを有してよい。プラスチックラミネートの内部に使用されている成形可能な紙基質は、等方性又は異方性の紙特性に加えて、5%超の破断伸びを有するMD/CD(縦方向及び横方向)の伸張特性を有してよい。
【0053】
下表に、紙層とプラスチック封止層とを含む多層材料を有する本体の幾つかの可能な組成を列挙する。
【表1】
【0054】
また、本体10は、紙層とカゼインフィルムとから作製することもできるカゼインフィルムは、35~150μmの厚さを有してよい。
【0055】
一実施形態では、本体10の外側表面を保護層によってコーティングすることができる。保護層は、ポリマー堆肥化可能材料から作製されている。例えば、本体10の保護層は、PLAベース、PBSベース、ミルクカゼインベース、PHAベース、PBAT又はデンプンから作製することができる。また、本体10の保護層は、これらの材料の混合物から作製されていてもよい。保護層は、PVOH層などのバリア層を含んでよい。
【0056】
多層材料本体については、破断伸びが2%~20%で構成されている。好ましくは、紙ベースの本体については、破断伸びが15%に等しい。
【0057】
別の実施形態では、本体10は、単層材料から作製されている。例えば、本体10は、堆肥化可能プラスチックから作製されている。
【0058】
単層材料については、破断伸びが2%~1000%で構成されている。1000%の破断伸びは、例えば「超伸長可能」プラスチックの場合に達成される。
【0059】
マシン内でのコーヒー製造中には、コーヒーが閉鎖蓋11を通って抽出される。閉鎖蓋は、角錐台形のプレートによって穴開けされる。ポッドの適切な開放及び良好なコーヒー抽出のためには、抽出側(ここでは閉鎖蓋)の開放が、スナップ式の破断によって即座に実現されるべきであることが判った。閉鎖蓋は、裂けるべきではあるものの、穴開け時に伸びるべきではない。
【0060】
大きな伸びを伴わないスナップ式の破断を確保するためには、閉鎖蓋11が、好ましくは、破断時の1.5mm~3mmの伸びに対して3N/15mm~10N/15mmの破壊抵抗を有するべきであることが判った。例えば、閉鎖蓋11は、穴開けの際、3N/15mmに等しい破壊抵抗と1.5mmの伸びとを有してよい。また、閉鎖蓋11は、穴開けの際、6.5N/15mmの破壊抵抗と1.5mmの伸びとを有してもよい。また、閉鎖蓋11は、穴開けの際、10N/15mmの破壊抵抗と1.5mmの伸びとを有してもよい。
【0061】
図3は、試験で得られた破壊抵抗及び伸びの結果の例を示している。小さな伸びを伴うスナップ式の破断を可能にする値の例は、丸で囲まれており、これらの例はすべて、以降に詳細に列挙される可能な構造、特に下表に提供された例に従った組成を有する閉鎖蓋のサンプルに対して実施されたものである。
図3に示された破壊抵抗の変動は、このように試験された閉鎖蓋の層の一方又は他方における厚さの変動に起因する。概して、
図3は、以下に開示された材料及び厚さに従って製造された閉鎖蓋構造が、破断時の1.5mm~3mmの伸びに対して3N/15mm~10N/15mmの破壊抵抗を示すことを表しており、これは、小さな伸びに対する必要なスナップ式の破断を提供する。
【0062】
本明細書では、破壊抵抗値は、標準法ASTM3420-91に従って考慮されている。
【0063】
閉鎖蓋11は、そのような特性を付与する材料から作製されている。閉鎖蓋11は、多層材料から作製されている。
【0064】
一実施形態では、閉鎖蓋11の多層材料は、紙層とプラスチックラミネート層(又は「プラスチックラミネート封止層」若しくは「封止層」)とから構成されている。好ましくは、紙層が、閉鎖蓋11の外側面11bを形成しており、プラスチックラミネート層(又は「封止層」)が、内側面11aを形成している。
【0065】
別の実施形態では、閉鎖蓋11の多層材料が、プラスチック層、紙層及びプラスチックラミネート層(又は「封止層」)から構成されていてよい。好ましくは、プラスチック層が、閉鎖蓋11の外側面を形成しており、紙層が、中間層を形成しており、プラスチックラミネート層が、閉鎖11の内側層(つまり、ポッドの内部部分に向けられた内側層を形成している。
【0066】
閉鎖蓋11の紙層は、この紙層上に印刷されたコードを有してよい。コードは、ポッドの識別、より正確には、ポッド内に含まれている原材料の種類の識別、及び/又はポッドの特性(容積、形状及び/又はサイズなど)の識別、又はポッドの壁の組成の識別として機能する。このコードは、ポッドが機能的に挿入されている飲料調製マシンによって直接的又は間接的に読み取られ、又は、感知され、それによって、当該マシンは、内部で処理される原材料及びポッドの種類の関数として、正しい調製パラメータを設定することができる。
【0067】
紙層は、20gsm~120gsmの坪量を有してよい。
【0068】
閉鎖蓋の穴開けの際にマシンの角錐プレートとの相互作用が可能となるように、プラスチックラミネートは、幾つかの特定の特性を有してよい。
【0069】
プラスチックラミネート層は、10μm~100μmの厚さを有してよい。プラスチック封止ラミネート層は、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリ乳酸(BOPLA)及びセロファンから選択することができる。好ましい一実施形態では、プラスチックラミネート層は、堆肥化可能な双配向フィルムを含み、より好ましくは、穴開けの際にマシンで十分な性能を得るために、キャストステンタフィルム方法で製造されている。堆肥化可能な双配向フィルムは、20μm~60μmの厚さを有する。
【0070】
一実施形態では、閉鎖蓋11の外側面11aが、保護層によってコーティング(コーティングとは、厚さが10μm未満であることを意味する)されていてよい、又は、閉鎖蓋11の表面が、保護表面処理によって処理されていてよい。保護層は、ポリマー堆肥化可能材料から作製されている。例えば、閉鎖蓋11の保護層は、PLA(ポリ乳酸)フィルム、セルロース系フィルム(セロファン)、PBS(ポリブチレンサクシネート)フィルム、マイクロフィブリル化セルロースフィルムであってよい。保護層は、バリア層(例えば、変性PVOH(ポリビニルアルコール)層)を含んでよい。保護層は、閉鎖蓋11が飲料マシンに固着することを回避する。特に、保護層は撥水性である。好ましくは、紙層にコードが印刷されている場合、閉鎖蓋11の外側の保護層を介してコードを読み取ることができる。
【0071】
下表に、閉鎖蓋11の幾つかの可能な組成を列挙する(表の左列には、閉鎖蓋の外側層が列挙されており、中央列には、閉鎖蓋の中間層が表されており、表の右列には、閉鎖蓋の内側層が列挙されている)。
【表2】
【0072】
本体10及び閉鎖蓋11の両方の紙の仕様は、高温抽出最終用途に関するEU、FDA、中国の紙の規制に適合するように再度明確に述べられている。
【0073】
ポッドの特性を説明してきたが、ここで、飲料マシン内でのポッド1の挙動を説明する。
【0074】
一実施形態による飲料マシンは、2種類の液体導入流路を備える。マシンの入口側には、鋭利な針状の水注入器が存在している。また、マシンは、相互間に排気流路を有する隆起した一組の要素で設計された抽出構造を備える。隆起した要素は、好ましくは角錐台形体である。
【0075】
水注入器は、ポッド1が淹出用キャビティに導入され、キャビティが閉鎖されたときに、本体10の底壁101を穴開けする。底壁101は、穴開けしやすくなくてはならない。底壁101のこのような円滑かつ容易な穴開けは、例えば、上述した本体10に用いられている材料によって可能となる。
【0076】
その後、コーヒーポッド内への水の注入が始まり、ポッド内に水圧がかかり、コーヒー量の増加及びポッドの内部容積の拡大が生じる。したがって、ポッド1の抽出側(つまり閉鎖蓋11)がマシンの抽出構造に押し付けられる。角錐体の先端部は、鋭利ではなく、切頭されているので、先端部は、淹出用キャビティを閉鎖しても即座には閉鎖蓋11を穴開けせず、コーヒーポッド1の内部の圧力が、閉鎖蓋11を先端部に十分に押し付けるのに十分な圧力に達したときにしか穴開けしない。通常、この条件は、ポッド内圧が4バールを超えたときに得られる。コーヒー抽出に最適な条件では、コーヒーポッドの内部の開放圧が少なくとも8バールであるべきである。
【0077】
閉鎖蓋11は、圧力が十分に高くなると、即座に穴開けされる。
【0078】
したがって、本発明は、特に閉鎖蓋に対して好ましい特性を有しかつ良好なコーヒー抽出を可能にするポッドを提案している。このコーヒーポッドは、実際にコーヒー固形分の極めて良好な抽出割合で最高品質のコーヒーをカップに提供する。これは、コーヒーが「抽出不足」(つまり、コーヒーの風味が十分に得られず、ひいては、カップ内でフラットノートにならない)にならないばかりか、焦げた風味又は苦味などのオフノートを防ぐために「抽出過剰」にならないことを意味している。さらに、適切な抽出によって、液体のコーヒーの上部に、きめ細かい泡と明るい茶色の豊かで長続きするクレマが提供される。
【0079】
本明細書で説明されている現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び改変が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。そのような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、かつその付随する利点を減じることなく、実施することができる。それゆえ、そのような変更及び改変は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。