(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】複合体の製造法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/28 20060101AFI20241115BHJP
B32B 37/16 20060101ALI20241115BHJP
B32B 37/06 20060101ALI20241115BHJP
B29C 70/02 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B32B5/28 A
B32B37/16
B32B37/06
B29C70/02
(21)【出願番号】P 2021534208
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019065128
(87)【国際公開番号】W WO2020123326
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-10-04
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521257466
【氏名又は名称】ナノコンプ テクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガジザデ,マディ
(72)【発明者】
【氏名】ゼイラ,エイタン
(72)【発明者】
【氏名】キンケイド,デレク
(72)【発明者】
【氏名】ハトリック,デービッド
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-524825(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159665(WO,A1)
【文献】特表2017-507809(JP,A)
【文献】特開昭54-101873(JP,A)
【文献】特開2010-120347(JP,A)
【文献】特表2018-512717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0277897(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0087278(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0008269(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0111338(US,A1)
【文献】特開2015-181102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0173895(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0129207(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02345528(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08-15/14
B29C33/00-33/76
39/00-43/58
45/26-45/44
45/64-45/68
45/73
49/48-49/56
49/70
51/30-51/40
51/44
70/00-70/88
B32B1/00-43/00
C08J5/04-5/10
5/24
H01L23/29
23/34-23/36
23/373-23/427
23/44
23/467-23/473
H05B3/02-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合積層体の製造法であって:
(i)-2以上のプリプレグのスタック;および
-1もしくは複数のカーボンナノチューブシート、ここで前記カーボンナノチューブシートの少なくとも1つが2以上のプリプレグの間に配置され、そしてここで前記カーボンナノチューブシートは、実質的に非整列のカーボンナノチューブの自己支持型不織シートである;
を含んでなる硬化系を準備し;そして
(ii)前記プリプレグの少なくとも一部が硬化されるように電流を前記1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに流すこと、および硬化系を交流電磁場に供することの両方により硬化系を少なくとも部分的に硬化する、
ことを含んでなり、
各プリプレグが繊維強化材および硬化性樹脂の混合物を含んでなり、かつ前記繊維強化材が、実質的にカーボンナノチューブを含まない、前記方法。
【請求項2】
前記繊維強化材が導電性繊維、非導電性繊維およびそれらの組み合わせから選択される繊維からなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊維強化材が導電性繊維を含んでなる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
非導電シートがそれぞれの1もしくは複数のカーボンナノチューブシートとプリプレグの間に配置される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブシートがそれらの中に包含された硬化性樹脂をさらに含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
2以上のプリプレグの前記スタックが0.1mmから160mmの範囲の厚さを有する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
2以上のプリプレグの前記スタックが50mmから約80mmの範囲の厚さを有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブシートが前記プリプレグ間の異なる場所に離れて配置されることができる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記プリプレグの厚さが、前記1もしくは複数のカーボンナノチューブシートの両側で実質的に同じになるように、前記1もしくは複数のカーボンナノチューブシートが2以上のプリプレグの前記スタックの中央に配置される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記硬化系を少なくとも部分的に硬化する工程が、前記プリプレグの少なくとも一部が硬化されるように電流を前記1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに流すことを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記硬化系を少なくとも部分的に硬化する工程が、前記プリプレグの少なくとも一部が硬化されるように硬化系を交流電磁場に供することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記硬化系が実質的に均一に硬化される請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
液体硬化性組成物の硬化法であって:
-カーボンナノチューブシートを液体硬化性組成物と接触させることを含んでなり、ここで(i)前記カーボンナノチューブシートと接触する硬化性組成物の量は、前記カーボンナノチューブシート上に1mmから160mmの厚さを有する層を形成するために十分であり、そして(ii)前記カーボンナノチューブシートは実質的に非整列のカーボンナノチューブの自己支持型不織シートである;および
-前記液体硬化性組成物の少なくとも一部が硬化されるように電流を前記1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに流すこと、および硬化系を交流電磁場に供することの両方により、硬化系を少なくとも部分的に硬化することを含んでなり、
各プリプレグが繊維強化材および硬化性樹脂の混合物を含んでなり、かつ前記繊維強化材が、実質的にカーボンナノチューブを含まない、
前記方法。
【請求項14】
前記カーボンナノチューブシートが、型に最初に配置される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記カーボンナノチューブシートが、その中に少なくとも部分的に包含された硬化性樹脂をさらに含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記カーボンナノチューブシートが、シリコン基材および/またはポリオレフィン、ナイロン、フッ化ポリマー、エチレン-ビニルアセテート、またはそれらの組み合わせの積層体により少なくとも部分的に覆われている請求項13に記載の方法。
【請求項17】
複合積層体の製造法であって:
(i)-プリプレグ、および
-1もしくは複数
のカーボンナノチューブシート、ここで前記カーボンナノチューブシートの少なくとも1つはプリプレグの上および/または下に配置され、そしてここで前記カーボンナノチューブシートは、実質的に非整列のカーボンナノチューブの自己支持型不織シートである;
を含んでなる硬化系を準備し;そして
(ii)前記プリプレグの少なくとも一部が硬化されるように電流を前記1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに流すこと、および硬化系を交流電磁場に供することの両方により硬化系を少なくとも部分的に硬化する、
ことを含んでなり、
各プリプレグが繊維強化材および硬化性樹脂の混合物を含んでなり、かつ前記繊維強化材が、実質的にカーボンナノチューブを含まない、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は、2018年12月12日に出願された米国特許仮出願第62/778,737号明細書の利益および優先権を主張し、その内容は全部、引用により本明細書に編入する。
【0002】
連邦政府により資金提供された研究開発に関する表明
なし
【0003】
本開示は一般に、例えば航空宇宙および自動車産業で使用されることができる複合体の製造法に関する。特に本開示は、実質的に非整列(non-aligned)のカーボンナノチューブからなる1もしくは複数の自己支持型(self-supporting)不織カーボンナノチューブシートを使用して、プリプレグおよび/または液体硬化性組成物を硬化する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
複合体を形成するための現在の方法は、プリプレグおよび液体樹脂のような硬化系を加熱するために外部から適用する高温の使用に依存している。しかし硬化は一般に発熱反応であり、これは追加の熱を生じ、硬化系内の過剰な加熱を防止するために制御される必要がある。硬化系の過熱は、硬化系およびそれらから製造される複合体の両方、ならびに硬化プロセス中に複合体を形成するために使用される任意の型も損傷する恐れがある。
【0005】
硬化系が厚くなるほど(例えばスタックまたはプレフォーム中のプリプレグの数)、硬化系が過熱する傾向は高くなる。したがってより厚い硬化系の硬化プロセスでは、特に硬化系で過剰な温度が生じるリスクを下げること、および過剰な加熱および硬化の暴走(runaway)を制御することが必要である。過剰な加熱(およびそれに続く過熱)は、一般に外部から適用する高温を使用する場合に、硬化系に適用される熱の量を効果的に制御できないことによるものである。過熱を回避する1つの方法は、硬化サイクルを十分長くして硬化系内に過剰な熱の生成を回避することを確実にすることである。しかしそのようなプロセスには時間および経費がかかる。
【0006】
したがって外部から高温を適用する現在の方法に比べて、複合体を形成するためにより効率的かつ/または制御された様式で硬化性組成物を硬化する方法を提供することが有利である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】不織カーボンナノチューブシートの代表的な具体的説明である。
【
図2】不織カーボンナノチューブシートの具体的説明である。
【
図3】コネクター部分および結合機構(coupling mechanism)を有する不織カーボンナノチューブシートの具体的説明である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本開示はその応用が以下の記載で説明される構成要素または工程または方法論の構成および配置の詳細に限定されないと理解される。本開示は他の態様が可能であり、すなわち様々な方法で実施または行われることができる。また本明細書で使用される語法および用語法は説明を目的とし、そして限定するものと見なすべきではないと理解される。
【0009】
本明細書で別段の定めがない限り、本開示と関連して使用される技術用語は当業者により一般的に理解されている意味を有するものである。さらに文脈により別の解釈を必要とするものでない限り、単数形は複数形を含み、そして複数形は単数形を含む。
【0010】
本明細書で言及する全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、本開示が関係する技術分野の当業者の技術水準を示す。本出願の任意の部分で引用される全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、各個別の特許または刊行物が個別具体的に引用により編入されているように、そしてそれらが本開示と矛盾しない程度と同じ程度までそれら全部を引用により明白に本明細書に編入する。
【0011】
本明細書に開示するすべての組成物および/または方法は、本開示に照らして必要以上の実験を行わずに作成でき、そして実施できる。本開示の組成物および方法は態様または好適な態様という意味で記載したが、当業者には本開示の概念、精神、および範囲から逸脱せずに本明細書に記載する組成物および/または方法に、そして方法の工程または工程の順序に変更を適用できることが明白である。そのような当業者には明白なすべての類似する置き換えおよび修飾は、本開示の精神、範囲および概念の中にあると見なされる。
【0012】
カーボンナノチューブに関する本明細書の任意の態様は、本開示の精神および範囲内で、例えば無機またはミネラルナノチューブを含む他の管状ナノ構造に置き換えるために修飾することもできる。無機またはミネラルナノチューブには、例えばシリコンナノチューブ、ホウ素ナノチューブおよびナノチューブ構造内にヘテロ原子置換を有するカーボンナノチューブを含む。
【0013】
本開示に従い使用されるように、以下の用語は別段の定めがない限り、以下の意味を有すると理解すべきである。
【0014】
用語“a”または”an”の使用は、用語「含んでなる(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」または「含む(containing)」(またはそのような用語の派生形)と関連して使用する場合、「1つ」を意味するものだが、これはまた「1もしくは複数」、「少なくとも1つ」および「1または1より多く」という意味とも合致する。
【0015】
用語「または」の使用は、もっぱら代替物を明らかに示し、そして代替物が相互に排他的である場合のみを除き、「および/または」を意味するために使用する。
【0016】
本開示を通して用語「約」は、値が定量する装置、メカニズムまたは方法の誤差の固有の変動、あるいは測定される対象(1もしくは複数)間に存在する固有の変動を含むことを示す。例えば限定するわけではないが、用語「約」を使用する場合、それが指す表示した値は、プラスまたはマイナス10パーセント、または9パーセント、または8パーセント、または7パーセント、または6パーセント、または5パーセント、または4パーセント、または3パーセント、または2パーセントまたは1パーセントまで、あるいはそれらの間の1もしくは複数の画分で変動してよい。
【0017】
「少なくとも1つ」の使用は、1ならびに限定するわけではないが1,2,3,4,5,10,15,20,30,40,50,100等を含む1より多くの任意の量を含むと理解されるものである。用語「少なくとも1つ」は、それが指す用語に依存して最高100または1000またはそれより多くに拡張することができる。さらに100/1000の量は、より低い、またはより高い限界も満足な結果を生じる可能性があるので、限定と考えるものではない。
【0018】
加えて「X、YおよびZの少なくとも1つ」という句は、X単独、Y単独、およびZ単独、ならびにX,YおよびZの任意の組み合わせを含むと理解されるものである。同様に「XおよびYの少なくとも1つ」とは、X単独、Y単独、ならびにXおよびYの任意の組み合わせを含むと理解されるものである。さらに「少なくとも1つ」という句は、任意の数の構成要素を用いて使用でき、そして前記と同様の意味を有することができる。
【0019】
序数の用語法(すなわち第1,第2、第3、第4等)の使用は、単に2以上の項目(item)間を区別する目的であり、そして他に言及しない場合には別の項目または追加の順序に対して1つの項目の配列、順番または重要性を付加することを意味していない。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「含んでなる(comprising)」(およびその任意の形、例えば“comprise”および“comprises”)、「有する(having)」(およびその任意の形、例えば“have”および“has”)、「含む(including)」(およびその任意の形、例えば“includes”および“include”)または「含む(containing)」(およびその任意の形、例えば“contains”および“contain”)は、包括的、すなわち制限がなく(open-ended)、そして追加の非言及要素または方法工程を排除しない。
【0021】
本明細書で使用する句「またはそれらの組み合わせ」および「およびそれらの組み合わせ」は、用語に先行する列挙した項目の全ての並べ替えおよび組み合わせを指す。例えば「A,B,Cまたはそれらの組み合わせ」は:A,B,C,AB,AC,BC,またはABCの少なくとも1つを含むことを意図し、そして特定の文脈で順序が重要ならばBA,CA,CB,CBA,BCA,ACB,BACまたはCABの少なくとも1つを含むことを意図する。この例に続いて明確に含まれるのは、1もしくは複数の項目または用語の反復を含む組み合わせ、例えばBB,AAA,CC,AABB,AACC,ABCCCC,CBBAAA,CABBB等である。当業者は文脈から明らかにそうでない場合を除き、一般に任意の組み合わせの中の項目および用語の数に制限はないと理解するだろう。同じ考え方で、用語「またはそれらの組み合わせ」および「およびそれらの組み合わせ」は、句「から選択される」または「からなる群から選択される」と一緒に使用される場合、その句に先行する列挙した項目の全ての並び替えおよび組み合わせを指す。
【0022】
「1つの態様において」、「態様では」、「1つの態様によれば」等の句は、一般にその句に続く特定の機能、構造または特徴が本開示の少なくとも1つの態様に含まれることを意味し、そして本開示の1より多くの態様に含まれ得ることを意味する。重要なことは、そのような句は非限定的であり、そして同じ態様を必ずしも指していないが、もちろん1もしくは複数の先行する、および/または後述する態様を指すことができる。例えば添付の請求の範囲では、任意の請求する態様を任意の組み合わせで使用することができる。
【0023】
本明細書で使用するように、用語「重量%」、「wt%」、「重量パーセント」または「重量による割合」は、互換的に使用する。
【0024】
本明細書で使用する句「実質的に含まない」とは、言及する組成物の総重量に基づき1重量パーセント未満、または0.1重量パーセント未満、または0.01重量パーセント未満、または0.001重量パーセント未満の量で存在することを意味する。
【0025】
本明細書で使用するように、用語「周囲温度」とは周辺の作業環境の温度(例えば硬化性組成物が使用される領域、ビル、部屋の温度)を指し、硬化を促進させるために硬化性組成物に熱を直接適用する結果、生じる温度変化を含まない。周囲温度は一般に約10℃から約30℃の間、より具体的には約15℃から約25℃の間である。用語「周囲温度」
は本明細書では「室温保存」と互換的に使用される。
【0026】
本明細書で使用する用語「複合体」は、異なる物理的または化学的特性を有し、合わせた時に個々の成分とは異なる特性を持つ物質を生成する2以上の個別成分から作られる物質を指す。
【0027】
用語「複合積層体(composite laminate)」は、複合体材料の2以上の層(これは同じか、または異なることができる)から作られる物品を指す。例えば複合積層体は、2以上のプリプレグの層を含んでなることができる。
【0028】
用語「複合体」、「複合積層体」および「積層体」は、本明細書では互換的に使用され得る。
【0029】
用語「プリプレグ」は、硬化性樹脂が未硬化または部分的に硬化した状態で含浸され、そして硬化の準備ができている繊維状材料を記載するために使用する。本明細書で使用するように、用語「プリプレグ」はプリプレグプライを指し、両方は互換的に使用され得る。複数の「プリプレグ(prepregs)」は、多数のプリプレグプライを指す。
【0030】
カーボンナノチューブ
本開示と関連して使用されるカーボンナノチューブは、様々な取り組みを使用して作製することができる。現在、ナノチューブを成長させるための多くのプロセスおよびそれらの変更法が存在し、それらには以下を含む:(1)化学蒸着(CVD)、大気圧付近または高圧、および約400℃より高い温度で行うことができる一般的プロセス、(2)Arc放電、高度な完全性(perfection)を有するチューブに行うことができる高温プロセス、および(3)レーザーアブレーション。
【0031】
単層(SWNT),二層(DWNT)および多層(MWNT)を含むカーボンナノチューブは、幾つかの態様では試薬である炭素含有ガス(すなわち高温でのガス状炭素源)の存在下で、ナノスケールの触媒粒子を暴露することにより成長させることができる。特にナノスケールの触媒粒子は試薬の炭素含有ガスと一緒に、存在する粒子の添加により、または金属-有機前駆体からの、さらに非金属触媒からの粒子のその場での合成により、高熱環境に導入され得る。
【0032】
幾つかの態様ではカーボンナノチューブ(“CNT”)は、約1マイクロメートル、または約10マイクロメートル、または約50マイクロメートル、または約100マイクロメートルより長い長さを有することができる。他の態様では、CNTは約150マイクロメートルより長い、または約200マイクロメートルより長い、または約250マイクロメートルより長い、または約300マイクロメートルより長い、または約350マイクロメートルより長い、または約400マイクロメートルより長い、または約450マイクロメートルより長い、または約500マイクロメートルより長い長さを有することができる。
【0033】
本開示と関連して使用される個々のナノチューブの強度は、約30GPa以上であることができる。留意されるべきであるように、強度は一般に欠損(defect)に対して敏感である。しかし以前記載されたCVDプロセスに従い作製された個々のカーボンナノチューブの弾性率は、欠損し対して敏感とはならない可能性があり、そして約1TPaとなる可能性がある。さらに一般に構造感受性パラメーターとなり得る破壊に対する歪は、本開示と関連して使用されるカーボンナノチューブに関して約10%から約25%の範囲となり得る。
【0034】
さらに本開示のカーボンナノチューブは、比較的小さい直径で提供され得る。本開示の幾つかの態様では、約1ナノメートルから約数十ナノメートルの範囲の直径を持つナノチューブが提供され得る。
【0035】
そのようなカーボンナノチューブは、複雑さが増す階層的形態を有する構造に作成することができる。形成される一般構造は、限定するわけではないがCNTシート、糸、および粉末(例えば束、繊維または他の実体)である。そのようなナノファイバー状マクロ構造物は伸長可能である。
【0036】
そのようなカーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブシートを含むそれらの構造物を形成するシステムおよび方法は、米国特許第7,993,620号明細書にさらに詳述されており、これは引用により全部、本明細書に編入する。
【0037】
カーボンナノチューブシート
本明細書で使用するように用語「カーボンナノチューブシート」は、シートの一般的外観、およびシートとして取り扱うことになる十分な構造的一体性(integrity)を有するカーボンナノチューブ(本明細書にすでに記載したものを含む)の不織物品を一般的に対象としている。すなわち1つの態様では、カーボンナノチューブシートは、実質的に非整列のカーボンナノチューブの自己支持型不織シートである。そのようなシートは例えば限定するわけではないが、圧縮された実質的に非整列のマトリックスから、および混ざったカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブの束、または絡み合ったカーボンナノチューブから、シートとして取り扱われる十分な構造的一体性を持って生成され得る。
【0038】
1つの特定の態様では、カーボンナノチューブシートは、単層をシートとして取り扱えるようにできる十分な接触が存在するような、相互に関連して方向づけられた(oriented)複数の不織カーボンナノチューブの単層を含んでなる。
図1はカーボンナノチューブシート10の非限定的例の具体的説明を表す。カーボンナノチューブシートは、その長さに沿って、すなわちその平面内で電気伝導が可能になるように設計されることができる。1つの態様ではカーボンナノチューブシート10は、重ねて置かれた複数の不織カーボンナノチューブ12の単層であることができる。
図2はカーボンナノチューブシート14の別の非限定的例を、それに関連するx、yおよびz軸の視点と一緒に表す。
【0039】
別の態様では、カーボンナノチューブシートは実質的に非整列のカーボンナノチューブの多層を含んでなり、ここで各層は複数の不織カーボンナノチューブを含んでなり、そしてここでカーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブの層は、カーボンナノチューブシートがシートとして取り扱われることになる層間で十分な接触を有するように方向づけられる。
【0040】
例えば1つの非限定的態様では、カーボンナノチューブシートはカーボンナノチューブの複数の識別可能な層を含んでなり、ここで不織カーボンナノチューブシートの各層は複数の混ざり合ったカーボンナノチューブを含み、そしてここで各層のカーボンナノチューブは、層が不織シート内でも互いに識別可能であるように圧縮され、そしてここでシートのように取り扱うことができる連続構造を形成するために必要な結合強度を持つ不織カーボンナノチューブシートを提供するように、ナノチューブ間には十分な数の接触部位が存在する。
【0041】
本明細書で使用するように、「実質的に非整列」とはカーボンナノチューブの整列の程度がカーボンナノチューブの総数に基づき30%未満、または20%未満、または15%未満、または10%未満、または5%未満、または1%未満の整列でよいことを意味する
。いずれの場合でも「実質的に非整列」とはカーボンナノチューブが実質的に垂直に整列していないことを明らかに意味している。
【0042】
別の態様では、カーボンナノチューブシートのカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブがカーボンナノチューブの総数に基づき20%未満、または15%未満、または10%未満、または5%未満の“y”方向の整列度を有するような“y”方向にのみ伸ばされることができる。
【0043】
本明細書に記載する不織カーボンナノチューブシートは、約0.1mg/cm2から約5mg/cm2(またはそれ以上)の密度を有することができる。
【0044】
また本明細書に記載する不織カーボンナノチューブシートは、約10,000から約20,000psiの範囲の呼び強度、および/または約30Mpaから約300Mpaの引張強度を有することができる。
【0045】
1つの態様では、カーボンナノチューブシートは電流をカーボンナノチューブシートに通すことができるように、それに付ける電極を有することができるシートの各両端に、コネクター部分(例えば電気バス:bussing)を有するように改良されている。
【0046】
コネクター部分は、導電部材の各端に直接電気メッキするようにコーティングを付着させることができる。カーボンナノチューブシート上のコネクター部分の付着または電気メッキは、当該技術分野で周知な方法を使用して行うことができる。電気メッキされるコネクター部分の例には、金、銀、ニッケル、アルミニウム、銅、ビスマス、錫、亜鉛、カドミウム、錫-ニッケル合金、銅合金、錫-亜鉛合金、ビスマス-銅合金、銅-ニッケル合金、カドミウム-ニッケル合金、他の導電性金属およびそれらの合金、またはそれらの組み合わせを含む。態様では、1もしくは複数のコネクター部分がカーボンナノチューブシート上の任意の場所に位置することができる。1つの態様では、コネクター部分は電流がカーボンナノチューブシートを通過できるようにカーボンナノチューブシートの各向かい合う端に機械的または化学的に付けられた一片の導電性材料であることができる。
【0047】
態様では、コネクター部分はコネクター部分上の接触面領域をわたる伝導において、ナノチューブの実質的に均一な接触を可能にするように、カーボンナノチューブシートの向かい合う端上に実質的に均一に付着または電気メッキされることができる。ゆえにコネクター部分は、電気および熱の輸送効率を強化し、そして接触抵抗を下げるために伝導性に能動的に(actively)関与することができるカーボンナノチューブシート内の伝導性ナノ構造物の数を実質的に最大化するように作用することができる。そのために、源(source)からの且つカーボンナノチューブシートにより運ばれる比較的高い電流は、実質的な低下無しに外部回路へ向けることができる。
【0048】
態様では、カーボンナノチューブシートに結合された(coupled)場合に、コネクター部分はカーボンナノチューブシートにより運ばれ得る源からの比較的高い電流を、実質的な低下無しに外部回路へ向けることを可能にする。そのようにするために、カーボンナノチューブシートはカーボンナノチューブシートの両端とコネクター部分との間の接触を強化するための結合機構をさらに含むことができる。1つの態様では、結合機構は実質的に低い抵抗の結合を提供できるガラス炭素材料から作ることができる。一般にガラス炭素は、カーボンナノチューブに関連するカーボンの状態であることができ、そして非晶質炭素のマトリックスを含んでなる有意な量のグラフェン様リボンを含むことができる。これらのリボンはsp2結合ナノチューブと実質的に同様であり得るsp2結合リボンを含む。結果としてそれらは比較的良好な熱および電気伝導性を有することができる。ガラス炭素を作成することができる前駆体材料の例は、フルフリルアルコール、RESOL樹脂
(すなわち触媒処理アルキル-フェニルホルムアルデヒド)、ポリビニルアルコール(“PVA”)、または液体樹脂、または加熱処理するとガラス炭素を形成することが知られている任意の材料を含む。もちろん他の市販されているガラス炭素材料または前駆体材料を使用することができる。
【0049】
さらに結合機構はまた、コネクター部分上の接触面領域をわたりコネクター部分に対して実質的に均一な接触を有するカーボンナノチューブシートを提供することができる。このために結合機構は、電気および熱の輸送効率を強化するために伝導性に能動的に関与することができるカーボンナノチューブシート内の伝導性ナノ構造物の数を実質的に最大化するように作用することができる。例えば、源からの且つカーボンナノチューブシートにより運ばれる比較的高い電流は、実質的な低下無しに外部回路へ向けることができる。本開示のカーボンナノチューブシートは、このように従来の熱および/または電気回路系で使用するために、標準的なコネクターへ効率的伝導を可能にするために使用することができる。
【0050】
1つの態様では、カーボンナノチューブシートのコネクター部分は、エポキシ、高分子樹脂、または他の種類の結合剤に含浸されて、構造的一体性を上げることができる。
【0051】
本明細書に記載するコネクター部分および結合機構の追加の例は、米国特許第9,198,232号明細書に見出すことができ、これは引用により全部、本明細書に編入する。
【0052】
図3はコネクター部分21および結合機構22を持つカーボンナノチューブシート20の非限定的態様を具体的に説明する。
【0053】
硬化系
1つの観点によれば、本開示はプリプレグおよびプリプレグの上および/または下に配置される1もしくは複数のカーボンナノチューブシートを含んでなる硬化系を対象とする。
【0054】
別の観点では、本開示は(i)2以上のプリプレグのスタック、および(ii)1もしくは複数のカーボンナノチューブシートを含んでなる硬化系を対象とし、ここで少なくとも1つのカーボンナノチューブシートは2以上のプリプレグの間に配置されている。
【0055】
1もしくは複数のカーボンナノチューブシートは、スタック中の各プリプレグの間に配置される必要はない。しかし1つの態様では、カーボンナノチューブシートは各プリプレグの間に配置されることができ、そして場合によりプリプレグスタックの上および/または下に配置されることができると構想する。別の態様では、カーボンナノチューブシートはプリプレグのスタック全体の異なる場所に配置されることができる。
【0056】
1つの特定の態様では、1もしくは複数のカーボンナノチューブシートはプリプレグの厚さが1もしくは複数のカーボンナノチューブシートの両側上で実質的に同じとなるように、プリプレグのスタックの中央、または実質的に中央付近に配置される。
【0057】
本開示の各プリプレグは、繊維強化材および硬化性樹脂の混合物を含んでなる。繊維強化材はもちろん繊維を含んでなる。1つの態様では、繊維強化材は例えば繊維の束または層の形態である。繊維強化材は一方向繊維、織り繊維、短(chopped)繊維、不織繊維または長い不連続繊維から構築することができる。
【0058】
1つの態様では、繊維は導電性繊維、非導電性繊維およびそれらの組み合わせから選択される。
【0059】
特に繊維は、ガラス、例えばSガラス、S2ガラス、Eガラス、Rガラス、Aガラス、ARガラス、Cガラス、Dガラス、ECRガラス、ガラスフィラメント、ステープルガラス、Tガラス、およびジルコニウムガラス、カーボンポリアクリロニトリル、カーボンファイバー、アクリル系、ポリ-パラフェニレンテレフタルアミド、シリカ、アラミド、ホウ素、ポリアルキレン、石英、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリp-フェニレンベンゾビスオキサゾール、シリコンカーバイド、フェノールホルムアルデヒド、フタレート、ナフテノエート、およびそれらの組み合わせから選択されることができる。
【0060】
1つの態様では、繊維強化材は実質的にカーボンナノチューブを含まない。
【0061】
別の態様では、繊維強化材が導電性繊維を含む場合、硬化系はさらに(i)カーボンナノチューブシート(1もしくは複数)とプリプレグ(1もしくは複数)との間に配置されることになる非導電セパレーター、または(ii)カーボンナノチューブシート(1もしくは複数)に少なくとも部分的に硬化性樹脂を含浸させることが必要になる。カーボンナノチューブシート(1もしくは複数)内の硬化性樹脂は、プリプレグ(1もしくは複数)中の硬化性樹脂と同じか、または異なってよい。
【0062】
理論に結び付けられることを意図しないが、カーボンナノチューブシートを、導電性繊維を含むプリプレグと直接接触させることは、電流をカーボンナノチューブシート(本明細書により詳細に記載するように)に通してプリプレグ(1もしくは複数)を硬化するならば短絡を生じる可能性があると考える。
【0063】
さらに別の態様では、1もしくは複数のカーボンナノチューブシートは硬化性樹脂を実質的に含まず、そしてプレプリグと1もしくは複数のカーボンナノチューブシートとの間に配置された非導電セパレーターにより実質的に硬化系を含まないままである。
【0064】
硬化性樹脂は例えば限定するわけではないが、ポリイミド、ポリビニリデンフルオリド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、フッ化エチレンプロピレン、ポリビニルアルコール、およびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0065】
硬化性樹脂の追加の非限定的例には限定するわけではないが、エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルプタレート樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾキサジン樹脂(例えば多-官能性n-フェニルベンゾキサジン樹脂、例えばフェノールフタレイン系、チオジフェニル系、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ジシクロペンタジエン系ベンゾキサジン樹脂)、ポリウレタンおよびそれらの混合物を含む。適切な混合物の例は、エポキシ樹脂とベンゾキサジン樹脂の混合物になる。
【0066】
エポキシ樹脂は二官能性またはより高いエポキシ樹脂であることができる。そのようなエポキシ樹脂は前駆体、例えばアミン類(例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノールおよびトリグリシジルアミノクレゾールおよびそれらの異性体)、フェノール類(例えばビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールSエポキシ樹脂、フェノール-ノボラックエポキシ樹脂、クレゾール-ノボラックエポキシ樹脂、およびレゾルシノールエポキシ樹脂)、および炭素-炭素二重結合を有する化合物(例えば脂環式エポキシ樹脂)から調製される。エポキシ樹脂は上の例に限定されないことに
留意されたい。これらのエポキシ樹脂をハロゲン化することにより調製されるハロゲン化エポキシ樹脂も使用できる。さらに2以上のこれらエポキシ樹脂の混合物、およびモノエポキシ化合物を硬化性樹脂に使用できる。
【0067】
1つの態様では、硬化性樹脂は例えば限定するわけではないが、触媒または硬化剤、酸化防止剤、強化剤、UV安定化剤および難燃剤を含む1もしくは複数の添加剤と合わせることができる。
【0068】
1つの態様では、カーボンナノチューブシートは電流がカーボンナノチューブシートを通過できるようにカーボンナノチューブシートに付いた電極を有することができるシートの両端に、(前述したような)コネクター部分を有する。
【0069】
コネクター部分は、本明細書に記載する硬化系の集成前または後のいずれかにカーボンナノチューブシートの各端に付けることができる。
【0070】
プリプレグまたはプリプレグのスタックは、約0.1mmから約160mm、または約1mmから約160mm、または約5mmから約155mm、または約10mmから約140mm、または約20mmから約130mm、または約50mmから約100mm、または約50mmから約80mmの範囲の厚さを有することができる。
【0071】
別の観点では、本開示は硬化系を製造する方法を対象とし、これは(i)本明細書に記載する2以上のプリプレグ、および1もしくは複数のカーボンナノチューブシートを準備し、(ii)場合によりプリプレグを含んだ(prepregged)カーボンナノチューブシートを形成するように硬化性樹脂をカーボンナノチューブシートに射出し、そして(iii)少なくとも2つのプリプレグ間に1もしくは複数のカーボンナノチューブシートを配置することを含んでなる。
【0072】
1つの態様では、プリプレグを含んだカーボンナノチューブシート(1もしくは複数)を形成するように、1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに1もしくは複数の硬化性樹脂がすでに射出されている。
【0073】
別の態様では、硬化系を製造する方法は、電流がカーボンナノチューブシートを通ることができるように、カーボンナノチューブシートに付いた電極を有することができる1もしくは複数のカーボンナノチューブシートの各向かい合う端上に、コネクター部分を付けることをさらに含んでなる。
【0074】
代替的態様では、1もしくは複数のカーボンナノチューブシートの各向かい合う端上のコネクター部分は、1もしくは複数のカーボンナノチューブシートを少なくとも2つのプリプレグの間に配置する前にすでにそれらに付けられている。
【0075】
さらに別の態様では、硬化系を製造する方法はまた、非導電セパレーターがカーボンナノチューブシートとプリプレグ(1もしくは複数)のそれぞれの間に配置される工程を含んでなる。
【0076】
単一プリプレグまたはプリプレグのスタックの硬化
本開示の1つの特定の観点は、複合積層体を形成するために単一プリプレグをカーボンナノチューブシートで硬化する方法を対象とする。この方法は、(i)プリプレグ、および1もしくは複数ノカーボンナノチューブシートを準備し、ここで少なくとも1つのカーボンナノチューブシートはプリプレグの上および/または下に配置され;そして(ii)(a)プリプレグの少なくとも一部が硬化されるように電流を1もしくは複数のカーボン
ナノチューブシートに流すか、(b)プリプレグの少なくとも一部が硬化されるように硬化系を交流電磁場(EMFs)に供するか、または(c)プリプレグの少なくとも一部が硬化されるように電流を1もしくは複数のカーボンナノチューブシート流し、かつプリプレグの少なくとも一部が硬化されるように交流電磁場に硬化系を供する両方のいずれかにより、硬化系を少なくとも部分的に硬化することを含む。
【0077】
別の観点では、本開示は複合積層体を形成するためにプリプレグのスタックを1もしくは複数のカーボンナノチューブシートで硬化する方法を対象とする。この方法は(i)2以上のプリプレグのスタック、および1もしくは複数ノカーボンナノチューブシートを含んでなる硬化系を準備し、ここで少なくとも1つのカーボンナノチューブシートは2以上のプリプレグの間に配置され;そして(ii)(a)プリプレグの少なくとも一部が硬化されるように電流を1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに流すか、(b)硬化系を交流電磁場(EMFs)に供するか、または(c)プリプレグの少なくとも一部が硬化されるように電流を1もしくは複数のカーボンナノチューブシート流し、かつ硬化系を交流電磁場に供する両方のいずれかにより、硬化系を少なくとも部分的に硬化することを含む。
【0078】
1つの態様では、カーボンナノチューブシートは、実質的に非整列のカーボンナノチューブを含んでなる自己支持型不織シートである。いかなる1つの特定理論にも結び付けられることを意図しないが、実質的に非整列のカーボンナノチューブを含んでなるカーボンナノチューブシートは、電流をカーボンナノチューブシートに流した時および/または硬化系を交流電磁場に供した時、発生する熱の改善された無作為化を有し、これは熱をカーボンナノチューブシートから全ての方向により均一に放射/分布するために役立ち、これによりプリプレグのより均一な硬化をもたらすと考えられる。
【0079】
別の態様では、電流をカーボンナノチューブシート(1もしくは複数)に流す、および/または硬化系を交流電磁場に供することにより、硬化系は単に部分的に硬化されるだけでなく、実質的に、または完全に硬化される。
【0080】
あるいは硬化系は、例えば硬化系を外部から適用される高温に暴露することを含む典型的な硬化技術と組み合わせて使用する前記方法により硬化することができる。外部から適用される高温は、例えば限定するわけではないが、70℃から110℃の範囲であることができ、そして場合により加圧される。たとえそのように外部から適用される高温が使用されても、必要なエネルギーは、1もしくは複数のカーボンナノチューブシートからの制御された均一に分布される熱の内部分布から、熱の制御された効率的分布により有意に下げられることになると考えられる。
【0081】
電流を1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに流す工程は、電極をカーボンナノチューブシートの2つの側(例えば2つの向かい合う端)に接続して回路(1もしくは複数)を形成し、そしてカーボンナノチューブシートによる抵抗の赤外線加熱を生じるために、約0.5W/in2から50W/in2の範囲の量の電力を供給することを含む。1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに流すことができる電流の電圧は、約1から10Vの範囲となり得る。1つの態様では、電極は1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに付いたコネクターに接続される。
【0082】
当業者には想定されるように、カーボンナノチューブシートにより生成する赤外線熱の量は、1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに供給される電力量に依存して制御することができる。このように単一プリプレグまたはプレプリグのスタックの硬化条件は能動的に制御されて、過剰な加熱および硬化の暴走を回避し、そして同様にプレプリグのスタックを保持している型またはプレプリグ自体の損傷を引き起こすことを回避すること
ができる。プリプレグまたはプリプレグのスタックの硬化条件を能動的に制御するためのそのような能力は、生じる複合体に実質的に均一な硬化を導く。
【0083】
1もしくは複数のカーボンナノチューブシートを含むプリプレグのスタックを硬化する場合では、各カーボンナノチューブシートに提供される電力は、硬化系への制御された加熱および硬化を有するように、各カーボンナノチューブシートで同じか、または異なってよい。例えば先細る厚さを有するプリプレグスタックは、最も厚い区分が、プリプレグスタックのより薄い区分と同じかまたは同様の速度で均一に硬化し、これにより実質的に均一に硬化した複合体が生じるように、変動する電力の入力を受ける多数のカーボンナノチューブシートを中に包含して有することができる。
【0084】
硬化系を交流電磁場に供する工程は、放射線源を使用して電磁場を放出し、カーボンナノチューブシート内に渦電流を生じ、そして誘導加熱を生成することを含むことができる。
【0085】
液体硬化性樹脂の硬化
本開示の別の観点は、液体硬化性組成物の硬化法を対象とする。この方法は(i)
カーボンナノチューブシートを硬化性組成物と接触させ、ここでカーボンナノチューブシートと接触する硬化性組成物の量は、カーボンナノチューブシート上に約1mmから160mm、または約5mmから約155mm、または約10mmから約140mm、または約20mmから約130mm、または約50mmから約100mm、または約50mmから約80mmの厚さを有する層を形成するために十分であり;そして(ii)(a)液体硬化性組成物の少なくとも一部が硬化されるように電流を1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに流すか、(b)液体硬化性組成物の少なくとも一部が硬化されるように硬化系を交流電磁場(EMFs)に供するか、または(c)液体硬化性組成物の少なくとも一部が硬化されるように電流を1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに流し、かつ硬化系を交流電磁場に供する両方のいずれかにより、液体硬化性組成物を少なくとも部分的に硬化する(すなわち液体硬化性組成物を、液体硬化性組成物が少なくとも部分的に硬化される程度まで硬化する)ことを含む。
【0086】
1つの態様では、カーボンナノチューブシートは実質的に非整列のカーボンナノチューブの自己支持型不織シートである。
【0087】
1つの特定の態様では、1もしくは複数のカーボンナノチューブシートは、特定の形を有する型の中にある。
【0088】
別の態様では、カーボンナノチューブシートはシリコン基材および/またはポリオレフィン、ナイロン、フッ化ポリマー、エチレン-ビニルアセテート、またはそれらの組み合わせの積層体に少なくとも部分的に覆われている。フッ化ポリマーの非限定的例は、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(すなわち1,1-ジフルオロエチレン)、およびテトラフルオロエチレンを含む。
【0089】
液体硬化性組成物は、電流をカーボンナノチューブシート(1もしくは複数)に流し、および/または硬化系を交流電磁場に供することによるだけで部分的に、実質的に、または全体的に硬化することができる。あるいは液体硬化性組成物は、例えば硬化系を外部から適用される高温に暴露することを含む典型的な硬化技術と組み合わせて使用するような方法により硬化することができる。外部から適用される高温は、例えば限定するわけではないが、70℃から110℃の範囲であることができ、そして場合により加圧される。
【0090】
液体硬化性組成物は、本明細書に記載する1もしくは複数の硬化性樹脂、および場合に
より限定するわけではないが、触媒または硬化剤、酸化防止剤、強化剤、UV安定化剤および難燃剤を含む1もしくは複数の添加剤を含んでなる。
【0091】
前述したように、電流を1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに流す工程は、電極をカーボンナノチューブシートの2つの側(例えば2つの向かい合う端)に接続して回路(1もしくは複数)を形成し、そしてカーボンナノチューブシートによる抵抗の赤外線加熱を生じるために、約0.5W/in2から50W/in2の範囲の量の電力を供給することを含む。1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに流すことができる電流の電圧は、約1から10Vの範囲となり得る。1つの態様では、電極は1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに付いたコネクターに接続される。
【0092】
ここでも当業者には想定されるように、カーボンナノチューブにより生成される赤外線熱の量は、1もしくは複数のカーボンナノチューブシートに供給される電力量に依存して制御することができる。このように液体硬化性組成物の硬化条件は能動的に制御されて、液体硬化性組成物の過剰な加熱および硬化の暴走を回避し、そして同様に液体硬化性組成物を保持している型の損傷を引き起こすことを回避することができる。硬化性組成物の硬化条件を能動的に制御するためのそのような能力は、生じる複合体に実質的に均一な硬化を導く。
【0093】
1つの態様では、液体硬化性組成物は、一方向繊維、織り繊維、短繊維、不織繊維または長い不連続繊維を含む強化要素をさらに含んでなることができる。そのような繊維は、導電性繊維、非導電性繊維およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0094】
特に繊維は、導電性繊維、非導電性繊維、およびそれらの組み合わせから選択することができる。特に繊維はガラス、例えばSガラス、S2ガラス、Eガラス、Rガラス、Aガラス、ARガラス、Cガラス、Dガラス、ECRガラス、ガラスフィラメント、ステープルガラス、Tガラス、およびジルコニウムガラス、カーボンポリアクリロニトリル、カーボンファイバー、アクリル系、ポリ-パラフェニレンテレフタルアミド、シリカ、アラミド、ホウ素、ポリアルキレン、石英、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリp-フェニレンベンゾビスオキサゾール、シリコンカーバイド、フェノールホルムアルデヒド、フタレート、ナフテノエート、およびそれらの組み合わせから選択されることができる。
【0095】
1つの態様では、強化要素は実質的にカーボンナノチューブを含まない。
【0096】
別の態様では、繊維強化材が導電性繊維を含む場合、(i)カーボンナノチューブシートと液体硬化性組成物との間に配置される非導電セパレーターがなければならないか、または(ii)カーボンナノチューブシートは少なくとも部分的に硬化性樹脂が含浸されなければならないかのいずれかとなる。カーボンナノチューブシート(1もしくは複数)に少なくとも部分的に含浸される硬化性樹脂は、プリプレグ(1もしくは複数)中の硬化性樹脂と同じか、または異なってよい。
【0097】
本明細書に記載する複合体(およびその作成法)は、様々な材料の製造に使用でき、そして航空宇宙および自動車での応用に製造および複合体部品の集成体に特に有用となり得る。さらに本開示の複合体およびその作成法は、風力タービン翼の製造に応用を有することができ、これは一般に大変厚い区分と大変薄い区分を有し、過剰な加熱および/または硬化の暴走を導く高い発熱を回避するために、硬化について高レベルの制御が必要となる。