(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】六フッ化マンガン酸カリウム、六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法及びマンガン賦活複フッ化物蛍光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 45/00 20060101AFI20241115BHJP
C01B 33/00 20060101ALI20241115BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20241115BHJP
C09K 11/61 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
C01G45/00
C01B33/00
C09K11/08 A
C09K11/61
(21)【出願番号】P 2021539228
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2020029900
(87)【国際公開番号】W WO2021029289
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2019147537
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】市川 真義
(72)【発明者】
【氏名】田中 基
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和弘
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-044017(JP,A)
【文献】特開2019-044018(JP,A)
【文献】特開2018-123017(JP,A)
【文献】特開2018-058722(JP,A)
【文献】特開2018-039920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00-47/00,49/10-99/00
C01B 33/00-33/193
C09K 11/00-11/89
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:K
2MnF
6で表され、
波長550nmの光に対する拡散反射率が60%以上である、六フッ化マンガン酸カリウム。
【請求項2】
波長850nmの光に対する拡散反射率が90%以上である、請求項1に記載の六フッ化マンガン酸カリウム。
【請求項3】
フッ化水素酸の濃度が58質量%以上である水溶液に、フッ化水素カリウム、及び過マンガン酸カリウムを溶解させたフッ化水素酸水溶液を調製する工程と、
前記フッ化水素酸水溶液に過酸化水素水を加えて、六フッ化マンガン酸カリウムを析出させる工程と、を有
し、
前記六フッ化マンガン酸カリウムは、請求項1又は2に記載の六フッ化マンガン酸カリウムである、六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法。
【請求項4】
フッ化水素酸の濃度が58質量%以上である水溶液に、六フッ化マンガン酸カリウムを溶解させたフッ化水素酸水溶液を調製する工程と、
前記フッ化水素酸水溶液にフッ化水素カリウムを加えて、六フッ化マンガン酸カリウムを再析出させる工程と、を有
し、
前記六フッ化マンガン酸カリウムは、請求項1又は2に記載の六フッ化マンガン酸カリウムである、六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の六フッ化マンガン酸カリウムをフッ化水素酸水溶液に溶解させる工程を有する、マンガン賦活複フッ化物蛍光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、六フッ化マンガン酸カリウム、六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法、及びマンガン賦活複フッ化物蛍光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、画像表示装置、ディスプレイのバックライト、照明等に広く用いられている。LEDを用いた画像表示装置では、一般に青色発光ダイオードと、黄色蛍光体と、を有するLEDが使用されている。近年、画像表示装置に対する高演色化の要請から、黄色蛍光体に代えて、緑色蛍光体及び赤色蛍光体が併用して用いられるようになってきている。
【0003】
蛍光体は一般に、母体結晶中に発光中心となる元素を固溶させた構造を有する。赤色蛍光体としては、例えば、複フッ化物からなる母体結晶中に、発光中心としてMn4+を固溶させた複フッ化物蛍光体等が挙げられる。複フッ化物蛍光体としては、例えば、複フッ化物を含む母体結晶中にMn4+を固溶させ賦活した一般式K2SiF6:Mn4+で表されるマンガン賦活複フッ化物蛍光体(以下、KSF蛍光体ともいう)などが挙げられる。KSF蛍光体は、青色光で効率よく励起され、半値幅が狭い発光スペクトルを有することから着目されている。
【0004】
KSF蛍光体の製造方法としては、例えば、蛍光体の構成元素を有する原料をフッ化水素酸水溶液中に溶解させた複数種のフッ化水素酸水溶液を調製し、これを混合して反応させること、若しくは、上記フッ化水素酸水溶液と固体原料とを反応させること、によって蛍光体を製造する方法(例えば、特許文献1)、又は、蛍光体の構成元素を有する原料をフッ化水素酸水溶液に溶解させた複数種のフッ化水素酸水溶液を調製し、これを混合した反応させ、蛍光体の貧溶媒となる溶媒を更に加え蛍光体を析出させることによって、蛍光体を製造する方法(例えば、特許文献2)などが知られている。
【0005】
上述のKSF蛍光体の製造方法に使用する原料として、一般式K2MnF6で表される六フッ化マンガン酸カリウムが用いられている。六フッ化マンガン酸カリウムは、一般的には、KSF蛍光体の製造過程における一工程で調製される。六フッ化マンガン酸カリウムの調製方法としては、例えば、Bode法(非特許文献1)、及び電解析出法などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-209331号公報
【文献】米国特許第3576756号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】H.Bode,H.Jenssen,andF.Bandte,Angew.Chem.,1953,304
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、内部量子効率に優れる蛍光体を製造可能な六フッ化マンガン酸カリウムを提供すること、及び六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法を提供することを目的とする。本開示はまた、内部量子効率に優れるマンガン賦活複フッ化物蛍光体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面は、一般式:K2MnF6で表され、波長550nmの光に対する拡散反射率が60%以上である、六フッ化マンガン酸カリウムを提供する。
【0010】
上記六フッ化マンガン酸カリウムは、内部量子効率に優れる蛍光体を与えることができる。波長550nmの光に対する拡散反射率が60%以上である六フッ化マンガン酸カリウムを原料とする場合に、得られる蛍光体が内部量子効率に優れたものとなる理由は必ずしも定かではない。しかし、本発明者らは以下のように推測する。波長550nm付近の領域は、蛍光発光に寄与しないMn3+等の元素が蛍光体中に含まれる場合に吸収がみられる領域である。そして、当該領域の拡散反射率が高いことは、六フッ化マンガン酸カリウムを構成するマンガン中に占めるMn3+等の元素の割合が少ないことを意味し、当該マンガンに占める発光中心となる元素(ここではMn4+)の割合が高いことを示す。すなわち、波長550nmの光に対する拡散反射率が60%以上である六フッ化マンガン酸カリウムを原料とする場合、Mn4+の割合が高いマンガン賦活複フッ化物蛍光体を製造することができ、当該蛍光体は内部量子効率にも優れると考えられる。
【0011】
上記六フッ化マンガン酸カリウムは、波長850nmの光に対する拡散反射率が90%以上であってもよい。六フッ化マンガン酸カリウムの波長850nmの光に対する拡散反射率が上記範囲内である場合、これを原料として用いることで、不要な吸収がより低減された蛍光体を得ることができる。
【0012】
本開示の一側面は、フッ化水素酸の濃度が58質量%以上である水溶液に、フッ化水素カリウム、及び過マンガン酸カリウムを溶解させたフッ化水素酸水溶液を調製する工程と、上記フッ化水素酸水溶液に過酸化水素水を加えて、六フッ化マンガン酸カリウムを析出させる工程と、を有する、六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法を提供する。
【0013】
上記六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法は、58質量%以上の濃度のフッ化水素酸水溶液を用いることから、水溶液中でMn4+を安定化させることができ、蛍光発光に寄与しないMn3+等の他の価数のMnが生じることを抑制することができる。このため、過酸化水素水を加えて、六フッ化マンガン酸カリウムを析出させる過程において、六フッ化マンガン酸カリウム中へのMn3+等の他の価数のMnの取り込みを低減することができる。このような作用によって、内部量子効率に優れる蛍光体を製造するための原料となり得る六フッ化マンガン酸カリウムを製造することができる。
【0014】
本開示の一側面は、フッ化水素酸の濃度が58質量%以上である水溶液に、六フッ化マンガン酸カリウムを溶解させたフッ化水素酸水溶液を調製する工程と、上記フッ化水素酸水溶液にフッ化水素カリウムを加えて、六フッ化マンガン酸カリウムを再析出させる工程と、を有する、六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法を提供する。
【0015】
上記六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法は、58質量%以上の濃度のフッ化水素酸水溶液に六フッ化マンガン酸カリウムを溶解させ、その後、過酸化水素水を加えて、六フッ化マンガン酸カリウムを析出させる過程において、上記六フッ化マンガン酸カリウムを構成していたマンガンの組成をMn4+の割合が高くなるように、調整することができる。このような作用によって、内部量子効率に優れる蛍光体を製造するための原料となり得る六フッ化マンガン酸カリウムを製造することができる。
【0016】
本開示の一側面は、上述の六フッ化マンガン酸カリウムをフッ化水素酸水溶液に溶解させる工程を有する、マンガン賦活複フッ化物蛍光体の製造方法を提供する。
【0017】
上記マンガン賦活複フッ化物蛍光体の製造方法は、上述の六フッ化マンガン酸カリウムを原料として用いていることから、内部量子効率に優れる複フッ化物蛍光体を製造できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、内部量子効率に優れる蛍光体を製造可能な六フッ化マンガン酸カリウムを提供すること、及び六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法を提供することができる。本開示によればまた、内部量子効率に優れるマンガン賦活複フッ化物蛍光体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施例1で調製した六フッ化マンガン酸カリウムの拡散反射スペクトルを示す図である。
【
図2】
図2は、実施例2で調製した六フッ化マンガン酸カリウムの拡散反射スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。
【0021】
本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0022】
六フッ化マンガン酸カリウムの一実施形態は、一般式:K2MnF6で表され、波長550nmの光に対する拡散反射率が60%以上である。六フッ化マンガン酸カリウムは、これを原料として製造される蛍光体における不要な励起光の吸収を低減することができる。すなわち、六フッ化マンガン酸カリウムは、マンガン賦活複フッ化物蛍光体の原料として有用である。マンガン賦活複フッ化物蛍光体としては、例えば、マンガン賦活六フッ化ケイ酸カリウム(K2SiF6:Mn4+)、K2GeF6:Mn4+、及びK2TiF6:Mn4+等が挙げられる。
【0023】
六フッ化マンガン酸カリウムの構成元素における組成において、カリウム及びマンガンについては、ICP-MS法によって定量的に分析することができる。また六フッ化マンガン酸カリウムの構成元素における組成において、フッ素については、イオンクロマトグラフ法によって分析することができる。すなわち、上述のような測定によって、六フッ化マンガン酸カリウムを同定することができ、その組成がK2MnF6で表されることを確認することができる。
【0024】
六フッ化マンガン酸カリウムにおいて、波長550nmの光に対する拡散反射率が60%以上であるが、上記拡散反射率は、例えば、65%以上、70%以上、又は75%以上であってもよい。波長550nmの光に対する拡散反射率が上述の範囲内であると、六フッ化マンガン酸カリウムを原料として用いて製造される複フッ化物蛍光体の内部量子効率をより向上させることができる。上記拡散反射率の上限値は特に制限されるものではなく、100%であってもよい。上記拡散反射率は上述の範囲内で調整してよく、例えば、60~100%、70~100%、又は75~100%等であってよい。
【0025】
六フッ化マンガン酸カリウムにおいて、波長850nmの光に対する拡散反射率は、例えば、90%以上、92%以上、95%以上、又は98%以上であってもよい。波長850nmの光に対する拡散反射率が上述の範囲内であると、六フッ化マンガン酸カリウムを原料として用いて製造される複フッ化物蛍光体の内部量子効率をより向上させることができる。上記拡散反射率の上限値は特に制限されるものではなく、100%であってもよい。上記拡散反射率は上述の範囲内で調整してよく、例えば、90~100%、92~100%、95~100%、又は98~100%等であってよい。
【0026】
六フッ化マンガン酸カリウムにおいて、波長310nmの光に対する拡散反射率は、例えば、14%以上、16%以上、20%以上、25%以上、30%以上、又は35%以上であってもよい。波長310nmの光に対する拡散反射率が上述の範囲内であると、六フッ化マンガン酸カリウムを原料として用いて製造される複フッ化物蛍光体の内部量子効率をより向上させることができる。上記拡散反射率の上限値は、例えば、80%以下、70%以下、60%以下、又は55%以下であってよい。上記拡散反射率は上述の範囲内で調整してよく、例えば、14~80%、16~80%、又は25~80%等であってよい。
【0027】
本明細書において拡散反射率は、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:V-550)を用い測定される六フッ化マンガン酸カリウムの拡散反射スペクトルから決定される値を意味する。拡散反射率は、具体的には本明細書に記載の実施例に記載の操作によって測定して求める。
【0028】
上述の六フッ化マンガン酸カリウムは、例えば、以下のような方法で製造することができる。六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法の第一実施形態は、フッ化水素酸の濃度が60質量%以上である水溶液に、フッ化水素カリウム、及び過マンガン酸カリウムを溶解させたフッ化水素酸水溶液を調製する工程と、上記フッ化水素酸水溶液に過酸化水素水を加えて、六フッ化マンガン酸カリウムを析出させる工程と、を有する。
【0029】
本実施形態に係る製造方法においては、フッ化水素酸の濃度が58質量%以上である水溶液を用いる。フッ化水素酸水溶液におけるフッ化水素酸の濃度の下限値は、例えば、59質量%以上、又は60質量%以上であってよい。フッ化水素酸水溶液の濃度の下限値が上述の範囲内であることによって、六フッ化マンガン酸カリウムの構成元素となるマンガンの価数を調整することができる。より具体的には、水溶液中におけるMn4+を安定化させ、蛍光発光に寄与しないMn3+等の他の価数のMnが生じることを抑制することで、六フッ化マンガン酸カリウムに取り込まれるMn4+の割合を増加させることができる。Mn3+は波長550nmの光を吸収できることから、Mn3+の割合を低減することによって、得られる六フッ化マンガン酸カリウムの波長550nmの光に対する拡散反射率をより向上させることができる。フッ化水素酸水溶液におけるフッ化水素酸の濃度の上限値は、特に制限されるものではないが、例えば、70質量%以下、又は65質量%以下であってよい。フッ化水素酸水溶液の濃度の上限値が上述の範囲内であることによって、操業性にぐれる。フッ化水素酸水溶液におけるフッ化水素酸の濃度は上述の範囲内で調整することができ、例えば、58~70質量%であってよく、60~65質量%であってよい。
【0030】
フッ化水素カリウム、及び過マンガン酸カリウムを溶解させたフッ化水素酸水溶液を調製する工程において、フッ化水素酸水溶液中において、フッ化水素カリウム及び過マンガン酸カリウムの含有量は、六フッ化マンガン酸カリウムの元素組成に合わせて適宜調整することができる。
【0031】
フッ化水素酸水溶液は、フッ化水素カリウム及び過マンガン酸カリウムに加えて、他の化合物を含んでもよい。他の化合物としては、例えば、フッ化カリウム等が挙げられる。
【0032】
フッ化水素酸水溶液中において、フッ化水素カリウム、過マンガン酸カリウム、及び上記他の化合物は、例えば、溶液中に一部又は全部が分散した状態であってもよく、完全に溶解及び電離等した状態であってもよい。
【0033】
上記フッ化水素酸水溶液に過酸化水素水を加えて、六フッ化マンガン酸カリウムを析出させる工程は、上記水溶液を撹拌しながら、一定時間かけて行うことが好ましい。撹拌時間は、溶液の容量、溶液のpH、フッ化水素カリウム、過マンガン酸カリウム、及び上記他の化合物の配合量等に応じて調整してもよい。撹拌時間は、反応性及び生産性の観点から、10分間~12時間程度であってよく、好ましくは1~3時間である。撹拌は、例えば、磁力撹拌及び機械撹拌等であってよい。撹拌速度は、溶液の容量、フッ化水素カリウム、過マンガン酸カリウム、及び上記他の化合物の配合量等に応じて調整してもよい。撹拌速度は特に制限されるものではないが、例えば、200~500rpmであってよい。
【0034】
上記フッ化水素酸水溶液に過酸化水素水を加えて、六フッ化マンガン酸カリウムを析出させる工程において、フッ化水素酸水溶液の温度は室温付近に設定することもできる。上記工程におけるフッ化水素酸水溶液の温度の下限値は、生産性を向上させる観点から、例えば、5℃超、10℃以上、15℃以上、20℃以上、又は25℃以上であってよい。上記工程におけるフッ化水素酸水溶液の温度の上限値は、六フッ化マンガン酸カリウムの製造における溶液の取り扱い性を向上させる観点から、例えば、40℃以下、又は30℃以下であってよい。上記工程におけるフッ化水素酸水溶液の温度は上述の範囲内で調整することができ、例えば、10~30℃であってよく、25~30℃であってよい。
【0035】
上記フッ化水素酸水溶液に加える過酸化水素水の濃度は、例えば、25質量%以上、又は30質量%以上であってよい。過酸化水素の配合量の下限値は、歩留まりの観点から、過マンガン酸カリウム100質量部を基準として、例えば、15質量部以上、17質量部以上、20質量部以上、23質量部以上であってよい。過酸化水素の配合量の下限値を上記範囲内とすることによって、効率よく反応させることができ、収率を向上させることができる。過酸化水素の配合量の上限値は、過マンガン酸カリウム100質量部を基準として、例えば、35質量部以下、又は33質量部以下であってよい。過酸化水素の配合量の上限値を上記範囲内とすることによって、過剰な反応を抑制でき、収率を向上させることができる。過酸化水素の配合量は上述の範囲内で調整することができ、過マンガン酸カリウム100質量部を基準として、例えば、15~35質量部、又は25~33質量部であってよい。
【0036】
六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法の第二実施形態は、フッ化水素酸の濃度が58質量%以上である水溶液に、六フッ化マンガン酸カリウムを溶解させたフッ化水素酸水溶液を調製する工程と、上記フッ化水素酸水溶液にフッ化水素カリウムを加えて、六フッ化マンガン酸カリウムを再析出させる工程と、を有する。
【0037】
従来、六フッ化マンガン酸カリウムは、複フッ化物蛍光体の製造過程における一工程で調製されることが一般的であり、六フッ化マンガン酸カリウムを単離し、そのうえで更に再結晶精製を行うことは行われていない。つまり、従来の六フッ化マンガン酸カリウムには、種々の価数のマンガンが含まれたものとして形成されており、そのまま蛍光体原料として消費されることになるから、得られる蛍光体中のMn4+の割合は必ずしも高くない。これに対して、本実施形態に係る六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法では、六フッ化マンガン酸カリウムを、特定の濃度以上のフッ化水素酸水溶液に溶解させ、そこ水溶液から再結晶精製させることによって、六フッ化マンガン酸カリウムを構成していたマンガンの組成をMn4+の割合が高くなるように調製することができる。これによって、得られる六フッ化マンガン酸カリウムを構成していたマンガンに占める蛍光発光に寄与しないMn3+等の他の価数のMnの割合が低減され、波長550nmの光に対する拡散反射率を向上させた六フッ化マンガン酸カリウムを得ることができる。
【0038】
上述の六フッ化マンガン酸カリウムは、複フッ化物蛍光体の製造に用いる原料として有用である。複フッ化物蛍光体としては、例えば、マンガン賦活複フッ化物蛍光体等が挙げられる。マンガン賦活複フッ化物蛍光体としては、例えば、マンガン賦活六フッ化ケイ酸カリウム(K2SiF6:Mn4+)、K2GeF6:Mn4+、及びK2TiF6:Mn4+等が挙げられる。
【0039】
本実施形態に係る製造方法において、濃度が60質量%以上であるフッ化水素酸水溶液に溶解させる六フッ化マンガン酸カリウムは、例えば、Bode法及び電解析出法等の従来法によって調製可能な六フッ化マンガン酸カリウムを用いることができる。
【0040】
本実施形態に係る製造方法においては、フッ化水素酸の濃度が58質量%以上である水溶液を用いる。フッ化水素酸水溶液におけるフッ化水素酸の濃度の下限値は、例えば、59質量%以上、又は60質量%以上であってよい。フッ化水素酸水溶液の濃度の下限値を上記範囲内とすることによって、六フッ化マンガン酸カリウムの構成元素となるマンガンの価数を調整することができる。より具体的には、水溶液中におけるMn4+を安定化させ、蛍光発光に寄与しないMn3+等の他の価数のMnが生じることを抑制することで、六フッ化マンガン酸カリウムに取り込まれるMn4+の割合を増加させることができる。Mn3+は、波長550nmの光を吸収できることから、Mn3+の割合を低減することによって、得られる六フッ化マンガン酸カリウムの波長550nmの光に対する拡散反射率をより向上させることができる。フッ化水素酸水溶液におけるフッ化水素酸の濃度の上限値は、特に制限されるものではないが、例えば、70質量%以下、又は65質量%以下であってよい。フッ化水素酸水溶液の濃度の上限値が上述の範囲内であることによって、操業性にぐれる。フッ化水素酸水溶液におけるフッ化水素酸の濃度は上述の範囲内で調整することができ、例えば、58~70質量%であってよく、60~65質量%であってよい。
【0041】
本実施形態において、フッ化水素カリウムの配合量の下限値は、歩留まりを向上させる観点から、六フッ化マンガン酸カリウム100質量部を基準として、200質量部以上、300質量部以上、又は450質量部以上であってよい。フッ化水素カリウムの配合量の上限値は、精製する六フッ化マンガン酸カリウムの取扱いやすさを向上させる観点から、六フッ化マンガン酸カリウム100質量部を基準として、1000質量部以下、800質量部以下、又は500質量部以下であってよい。フッ化水素カリウムの配合量は上述の範囲内で調整することができ、六フッ化マンガン酸カリウム100質量部を基準として、例えば、200~800質量部、又は200~500質量部であってよい。
【0042】
マンガン賦活複フッ化物蛍光体の製造方法の一実施形態は、上述の六フッ化マンガン酸カリウムをフッ化水素酸水溶液に溶解させる工程を有する。
【0043】
当該製造方法のより具体的な一態様としては、例えば、フッ化水素酸若しくはケイフッ化水素酸水溶液に、上述の六フッ化マンガン酸カリウムを溶解させ、更に、カリウム源となる化合物、ケイ素源となる化合物、及びフッ素源となる化合物を溶解させた溶液を調製し、当該溶液を加熱し蒸発乾固させてマンガン賦活複フッ化物蛍光体を得る工程を有する製造方法が挙げられる。また、当該製造方法のより具体的な別の一態様としては、例えば、フッ化水素酸若しくはケイフッ化水素酸水溶液に、上述の六フッ化マンガン酸カリウムを溶解させ、更に、カリウム源となる化合物、ケイ素源となる化合物、及びフッ素源となる化合物を溶解させた溶液を調製し、上記溶液を冷却してマンガン賦活複フッ化物蛍光体を得る工程を有する製造方法が挙げられる。また、当該製造方法のより具体的な別の一態様としては、例えば、フッ化水素酸若しくはケイフッ化水素酸水溶液に、上述の六フッ化マンガン酸カリウムを溶解させ、更に、カリウム源となる化合物、ケイ素源となる化合物、及びフッ素源となる化合物を溶解させた溶液を調製し、上記溶液に上記マンガン賦活複フッ化物蛍光体の貧溶媒を添加しマンガン賦活複フッ化物蛍光体の溶解度を低下させて、マンガン賦活複フッ化物蛍光体を析出させることで蛍光体を得る工程を有する製造方法であってもよい。
【0044】
上述のマンガン賦活複フッ化物蛍光体の製造方法においては、波長550nmの光に対する拡散反射率が60%以上である六フッ化マンガン酸カリウム、例えば、Mn3+等の他の価数のMnの割合が低減された六フッ化マンガン酸カリウムを用いていることから、従来の六フッ化マンガン酸カリウムに比べて、Mn4+をマンガン賦活複フッ化物蛍光体により効率的に供給することができる。このため、得られるマンガン賦活複フッ化物蛍光体は、発光強度に優れると共に、550nmの光の吸収が抑制されることから、内部量子効率にもより優れる。
【0045】
上述のマンガン賦活複フッ化物蛍光体の製造方法によって、例えば、K2SiF6:Mn4+を含む蛍光体等を製造することができる。K2SiF6:Mn4+を含む蛍光体は、K2SiF6で表されるフッ化物であって、4価の元素のサイトの一部がマンガンで置換されたものであってよい。フッ化物蛍光体は、その構成元素であるカリウム(K)、ケイ素(Si)、フッ素(F)、及びマンガン(Mn)の一部がその他の元素に置換されていてもよく、価数の異なる元素によって置換されることによって結晶中の元素が一部欠落していてもよい。その他の元素は、例えば、ナトリウム(Na)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、及び酸素(O)からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0046】
上述のようにして製造されるマンガン賦活複フッ化物蛍光体は内部量子効率に優れる。マンガン賦活複フッ化物蛍光体の内部量子効率は、86%超、87%以上、88%以上、89%以上、又は90%以上とすることができる。上述のマンガン賦活複フッ化物蛍光体は、従来のマンガン賦活複フッ化物蛍光体よりも内部量子効率に優れたものとなり得ることから、例えば、LEDに用いる赤色蛍光体として有用である。
【0047】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、共通する構成については互いの説明を適用することができる。また本開示は、上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
[KMF(K2MnF6)の調製]
容量が2000mLのフッ素樹脂製ビーカーに、1600mLのフッ化水素酸(濃度:60質量%)を測り取り、ここに619.12gのフッ化水素カリウム粉末(関東化学株式会社製)及び21.0gの過マンガン酸カリウム粉末(関東化学株式会社製)を溶解させることでフッ化水素酸水溶液を調製した。得られたフッ化水素酸水溶液をマグネチックスターラーによって350rpmの撹拌速度で撹拌しながら、11.96gの過酸化水素水(濃度:30質量%、関東化学株式会社製)を少しずつ滴下して加えた。過酸化水素水の滴下量が一定量を超えたところで黄緑色粉末が析出しはじめ、ビーカー内の溶液の色が紫色から変化したことを確認した。
【0050】
溶液が変色してからしばらく溶液を撹拌した後、撹拌を停止し析出粉末を沈殿させた。析出粉末が沈殿したところで、上澄みを除去してから、ビーカーにメタノール(関東化学株式会社製)を加えて、溶液を撹拌した。その後、溶液の撹拌を停止し析出粉末を再び沈殿させ、上澄みを除去し、再度メタノールを加えて撹拌した。ビーカー内の溶液が中性になるまで、上述の操作を繰り返した。ビーカー内の溶液が中性になったところで、再度析出粉末を沈殿させ、濾過によって析出粉末を回収した。回収された析出粉末を乾燥させることで、メタノールを除去した。析出粉末を、ICP-MS法及びイオンクロマトグラフ法によって元素組成を分析することで、実施例1のK2MnF6粉末が得られていることを確認した。K2MnF6粉末の調製は常温(25℃)で行った。
【0051】
(実施例2)
[KMF(K2MnF6)の調製]
容量が2000mLのフッ素樹脂製ビーカーに、1600mLのフッ化水素酸(濃度:48質量%)を測り取り、ここに516gのフッ化水素カリウム粉末(関東化学株式会社製)及び24.0gの過マンガン酸カリウム粉末(関東化学株式会社製)を溶解させることでフッ化水素酸水溶液を調製した。得られたフッ化水素酸水溶液をマグネチックスターラーによって350rpmの撹拌速度で撹拌しながら、18.25gの過酸化水素水(濃度:30質量%、関東化学株式会社製)を少しずつ滴下して加えた。過酸化水素水の滴下量が一定量を超えたところで黄色粉末が析出しはじめ、ビーカー内の溶液の色が紫色から変化したことを確認した。
【0052】
溶液が変色してからしばらく溶液を撹拌した後、撹拌を停止し析出粉末を沈殿させた。析出粉末が沈殿したところで、上澄みを除去してから、ビーカーにメタノール(関東化学株式会社製)を加えて、溶液を撹拌した。その後、溶液の撹拌を停止し析出粉末を再び沈殿させ、上澄みを除去し、再度メタノールを加えて撹拌した。ビーカー内の溶液が中性になるまで、上述の操作を繰り返した。ビーカー内の溶液が中性になったところで、再度析出粉末を沈殿させ、濾過によって析出粉末を回収した。回収された析出粉末を乾燥させることで、メタノールを除去した。析出粉末を、ICP-MS法及びイオンクロマトグラフ法によって元素組成を分析することで、K2MnF6粉末が形成されていることを確認した。K2MnF6粉末の調製は常温(25℃)で行った。
【0053】
上述のようにして得られたK2MnF6粉末を用いて、更に次の操作を行った。すなわち、容量が500mLのフッ素樹脂製ビーカーに、100mLのフッ化水素酸(濃度:60質量%)を測り取り、ここに14.57gの上述のとおり調製したK2MnF6粉末を溶解させることでフッ化水素酸水溶液を調製した。得られたフッ化水素酸水溶液をマグネチックスターラーによって350rpmの撹拌速度で撹拌しながら、46.9gのフッ化水素カリウム粉末(関東化学株式会社製)を溶解させたフッ化水素酸水溶液を少しずつ滴下して加えた。フッ化水素カリウムの配合量が一定量を超えたところで黄緑色粉末が析出しはじめたことを確認した。
【0054】
溶液中に沈殿が発生してからしばらく溶液を撹拌した後、撹拌を停止し析出粉末を沈殿させた。析出粉末が沈殿したところで、上澄みを除去してから、ビーカーにメタノール(関東化学株式会社製)を加えて、溶液を撹拌した。その後、溶液の撹拌を停止し析出粉末を再び沈殿させ、上澄みを除去し、再度メタノールを加えて撹拌した。ビーカー内の溶液が中性になるまで、上述の操作を繰り返した。ビーカー内の溶液が中性になったところで、再度析出粉末を沈殿させ、濾過によって析出粉末を回収した。回収された析出粉末を乾燥させることで、メタノールを除去した。析出粉末を、ICP-MS法及びイオンクロマトグラフ法によって元素組成を分析することで、実施例2のK2MnF6粉末を得られていることを確認した。K2MnF6粉末の調製は常温(25℃)で行った。
【0055】
(比較例1)
実施例2において、フッ化水素酸(濃度:48質量%)を用いて一旦調製したK2MnF6粉末(フッ化水素酸(濃度:60質量%)を用いた操作を行う前の粉末)を比較例1のK2MnF6粉末とした。
【0056】
<K
2MnF
6粉末の拡散反射率の測定>
実施例1,2及び比較例1のそれぞれのK
2MnF
6粉末の拡散反射率を測定し、波長550nm、850nm及び310nmの光に対する拡散反射率を決定した。拡散反射率は、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:V-550)を用いて測定した。標準反射板(スペクトラロン)でベースライン補正を行い、測定対象となるK
2MnF
6粉末を充填した固体試料ホルダーを取り付けて、250~850nmの波長範囲で拡散反射率の測定を行った。結果を表1に示す。また、実施例1及び実施例2の拡散反射スペクトルをそれぞれ
図1及び
図2に示す。
図1及び
図2には比較のため、比較例1の拡散反射スペクトルを併記する。
【0057】
<マンガン賦活複フッ化物蛍光体の製造用原料としてのK2MnF6粉末の評価>
実施例1,2及び比較例1のそれぞれのK2MnF6粉末を用いて、後述するようにしてマンガン賦活複フッ化物蛍光体を製造した。得られたマンガン賦活複フッ化物蛍光体の内部量子効率を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
[マンガン賦活複フッ化物蛍光体の製造]
まず、容量が500mLのフッ素樹脂製ビーカーに、200mLのフッ化水素酸(濃度:55質量%、ステラケミファ社製)を測り取り、ここに25.6gのフッ化水素カリウム粉末(富士フイルム和光純薬株式会社製)を溶解させることでフッ化水素酸水溶液を調製した。得られたフッ化水素酸水溶液を撹拌しながら、6.9gの二酸化ケイ素粉末(デンカ株式会社製、商品名:FB-50R)と、1.2gの上記K2MnF6粉末を加えた。二酸化ケイ素粉末を溶液に加えるとすぐに黄色粉末(K2SiF6:Mn4+で表される化合物)が生成し始めることを目視にて確認した。なお、二酸化ケイ素粉末を溶液に加えると溶解熱の発生によって溶液温度が上昇したが、二酸化ケイ素粉末を加え始めてから約3分後に最高温度に到達し、その後、溶液温度は常温まで降下した。これは、二酸化ケイ素粉末の溶解が終了に伴うものと考えられる。
【0059】
二酸化ケイ素粉末が完全に溶解した後、しばらく溶液の撹拌を続けて黄色粉末の析出を完了させた。撹拌を終了し溶液を静置することによって黄色粉末を沈殿させた。その後、上澄みを除去し、フッ化水素酸(濃度:24質量%、ステラケミファ社製)及びメタノール(関東化学株式会社製)を用いて、黄色粉末を洗浄した。洗浄後、濾過によって黄色粉末を回収した。回収された黄色粉末を乾燥させた後、目開きが75μmのナイロン製篩を用いて分級し、篩を通過した粉末として20.3gの黄色粉末状のKSF(マンガン賦活複フッ化物蛍光体)を得た。上記KSFの体積メジアン径(D50)は、28μmであった。
【0060】
[マンガン賦活複フッ化物蛍光体の内部量子効率測定]
分光器(大塚電子株式会社製、商品名:MCPD-7000)を用いて、実施例1、2及び比較例1のそれぞれのK2MnF6粉末を用いて調製したマンガン賦活複フッ化物蛍光体の内部量子効率を測定した。なお、内部量子効率は、波長が455nmの近紫外光を用いて蛍光体を励起した場合の内部量子効率である。
【0061】
まず、積分球(φ60mm)の側面開口部(φ10mm)に反射率が99%の標準反射板(Labsphere社製、商品名:スペクトラロン)をセットした。この積分球に、発光光源(Xeランプ)から455nmの波長に分光した単色光を光ファイバーにより導入し、分光器によって反射光のスペクトルを測定した。その際、450~465nmの波長範囲のスペクトルから励起光フォトン数(Qex)を算出した。
【0062】
次に、凹型のセルに表面が平滑になるように蛍光体を充填したものを積分球の開口部にセットし、波長455nmの上記単色光を照射し、励起の反射光及び蛍光のスペクトルを上記分光器によって測定した。得られたスペクトルデータから励起反射光フォトン数(Qref)及び蛍光フォトン数(Qem)を算出した。励起反射光フォトン数は、励起光フォトン数と同じ波長範囲で、蛍光フォトン数は、465~800nmの範囲で算出した。
【0063】
得られた三種類のフォトン数Qex、Qref、及びQemから、内部量子効率(=Qem/(Qex-Qref)×100)を算出した。
【0064】
【0065】
表1に示されるとおり、波長550nmの光に対する拡散反射率が60%以上である実施例1,2の六フッ化マンガン酸カリウム粉末を原料として用いて製造されたマンガン賦活複フッ化物蛍光体は内部量子効率に優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示によれば、内部量子効率に優れる蛍光体を製造可能な六フッ化マンガン酸カリウムを提供すること、及び六フッ化マンガン酸カリウムの製造方法を提供することができる。本開示によればまた、内部量子効率に優れるマンガン賦活複フッ化物蛍光体の製造方法を提供することができる。