(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】サイトカイン放出を治療、予防、阻害、又は低減する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/54 20060101AFI20241115BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241115BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241115BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
A61K31/54
A61P29/00
A61P37/06
A61P43/00 105
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021568994
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 IB2020054854
(87)【国際公開番号】W WO2020234830
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-04-06
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517215814
【氏名又は名称】ガイストリッヒ・ファルマ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】GEISTLICH PHARMA AG
【住所又は居所原語表記】Bahnhofstrasse 40, CH-6110 Wolhusen, Swizerland
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】コスティン、ジェイムズ・シー
(72)【発明者】
【氏名】メーラー、ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、トーマス
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/190355(WO,A1)
【文献】特表2019-508476(JP,A)
【文献】特表2018-502909(JP,A)
【文献】BMC Cancer,2017年,Vol.17,Article No.216
【文献】Pharma Res Per,2016年,Vol.4, No.1,e00204
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストーム
を特徴とする疾患を
、治療
を必要とする被験体において治療するための医薬品であって、前記医薬品が、化合物
2250、
その薬学的に許容可能な塩、水和物
、若しくは溶媒和
物を含む
、医薬品。
【化1】
【請求項2】
前記被験体が、T細胞誘導療法を受けたことがある、受けている、又は受ける予定である、請求項
1に記載の
医薬品。
【請求項3】
前記被験体が、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞
)療法、抗体療法、又は二重特異性抗体療法を受けたことがある、受けている、又は受ける予定である、請求項
1に記載の
医薬品。
【請求項4】
前記
医薬品が、CAR T細胞療法、抗体療法、又は二重特異性抗体療法の前に、それと同時に、又はその後に
投与される、請求項
1に記載の
医薬品。
【請求項5】
前記
医薬品が、CAR T細胞療法又は二重特異性抗体療法の開始の12時間~96時間前に投与される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の
医薬品。
【請求項6】
前記医薬品が、T細胞誘導療法を受けている
被験体における切迫型のCRS又はサイトカインストームの臨床的兆候として、発熱の発症の24時間以内に、
投与される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
医薬品。
【請求項7】
前記医薬品が、T細胞誘導療法を受けている
被験体における切迫型のCRS又はサイトカインストームの指標となる1つ以上のバイオマーカーの検出の24時間以内に、
投与される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の
医薬品。
【請求項8】
切迫型のCRSの指標となる前記1つ以上のバイオマーカーが、IL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IP-10、IFN-α、IFN-γ、G-CSF、及びTNF-αのうちの1つ以上の血清レベル、血中レベル、又は組織レベルの増加である、請求項
7に記載の
医薬品。
【請求項9】
前記
医薬品が、4週間~8週間にわたって少なくとも隔週で投与される、請求項1~
8のいずれか一項に記載の
医薬品。
【請求項10】
前記
医薬品の投与が、CAR T細胞療法、抗体療法、又は二重特異性抗体療法の効力を低下させない、請求項1~
9のいずれか一項に記載の
医薬品。
【請求項11】
CAR T細胞療
法、抗体療
法、又は二重特異性抗体療
法を必要とする被験体における神経毒性の低減の
ための、請求項1~
10のいずれか一項に記載の
医薬品。
【請求項12】
前記サイトカイン放出症候群、若しくはサイトカインストームの原因が、感染性刺激、感染性病態、若しくは感染性症候群を含む、又は前記サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームの原因は、非感染性刺激、非感染性病態、若しくは非感染性症候群を含む、又はそれらの任意の組合せである、請求項1~
11のいずれか一項に記載の
医薬品。
【請求項13】
前記感染性刺激、感染性病態、若しくは感染性症候群が、インフルエンザ、鳥インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、エプスタインバーウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、敗血症、グラム陰性敗血症、マラリア、エボラウイルス感染症、痘瘡ウイルス感染症、全身性グラム陰性細菌感染症、若しくはヤーリッシュ・ヘルクスハイマー症候群を含む、又は前記非感染性刺激、非感染性病態、若しくは非感染性症候群が、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、散発性HLH、マクロファージ活性化症候群(MAS)、慢性関節炎、全身性若年性特発性関節炎(sJIA)、スティル病、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、家族性寒冷自己炎症症候群(FCAS)、家族性寒冷蕁麻疹(FCU)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節炎(CINCA)症候群、NLRP3遺伝子における遺伝性若しくはde novoの機能獲得突然変異を含むクリオピリン症、遺伝性自己炎症性障害、急性膵炎、重度の熱傷、外傷、急性呼吸窮迫症候群、免疫療法、モノクローナル抗体療法、薬物使用に続発するもの、毒素、リポ多糖(LPS)、グラム陽性毒素、真菌毒素の吸入に続発するもの、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)、RIG-1遺伝子発現の調節、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎、及び虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ホイップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再灌流障害、臓器壊死、花粉症、敗血症、毒血症、内毒素ショック、悪液質、超高熱、好酸球肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血症性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、間質性肺炎、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、寄生虫感染症、細菌感染症、ウイルス感染症、自己免疫疾患、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染症、ヘルペス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日焼け、蕁麻疹、疣贅、膨疹、血管炎、脈管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、血栓静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、セリアック病、鬱血性心不全、成人型呼吸窮迫症候群、コロナウイルス、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群(MERS)、多系統炎症性症候群、コロナウイルス誘発性炎症性症候群、川崎病、髄膜炎、脳炎、脳梗塞、脳塞栓症、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMSOD)、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種異系移植片拒絶反応、移植片対宿主病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、ライター症候群、若しくはホジキン病を含む、請求項1
2に記載の
医薬品。
【請求項14】
サイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストーム
を特徴とする疾患を、治療
を必要とする被験体において治療するための医薬品の製造における化合物
2250、その薬学的に許容される塩、水和物
、若しくは溶媒和物
の使用。
【化2】
【請求項15】
前記被験体が、T細胞誘導療法を受けたことがある、受けている、又は受ける予定である、請求項
14に記載の
使用。
【請求項16】
前記被験体が、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞
)療法、抗体療法、又は二重特異性抗体療法を受けたことがある、受けている、又は受ける予定である、請求項
14に記載の
使用。
【請求項17】
前記
医薬品が、CAR T細胞療法、抗体療法、又は二重特異性抗体療法の前に、それと同時に、又はその後に
投与される、請求項
14に記載の使用。
【請求項18】
前記
医薬品が、CAR T細胞療法又は二重特異性抗体療法の開始の12時間~96時間前に投与される、請求項
14~
17のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項19】
前記医薬品が、T細胞誘導療法を受けている
被験体における切迫型のCRS又はサイトカインストームの臨床的兆候として、発熱の発症の24時間以内に、
投与される、請求項14~18のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項20】
前記医薬品が、T細胞誘導療法を受けている
被験体における切迫型のCRS又はサイトカインストームの指標となる1つ以上のバイオマーカーの検出の24時間以内に、
投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項21】
切迫型のCRSの指標となる前記1つ以上のバイオマーカーが、IL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IP-10、IFN-α、IFN-γ、G-CSF、及びTNF-αのうちの1つ以上の血清レベル、血中レベル、又は組織レベルの増加である、請求項20に記載の
使用。
【請求項22】
前記
医薬品が、4週間~8週間にわたって少なくとも隔週で投与される、請求項
14~
21のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項23】
前記
医薬品の投与が、CAR T細胞療法、抗体療法、又は二重特異性抗体療法の効力を低下させない、請求項
14~
22のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項24】
前記医薬品が、CAR T細胞療
法、抗体療
法、又は二重特異性抗体療
法を必要とする被験体における神経毒性の低減の
ためのものである、請求項14~23のいずれか一項に記載の
使用。
【請求項25】
前
記サイトカイン放出症候群、若しくはサイトカインストームの原因が、感染性刺激、感染性病態、若しくは感染性症候群を含む、又は前記サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームの原因は、非感染性刺激、非感染性病態、若しくは非感染性症候群を含む、又はそれらの任意の組合せである、請求項
14~
24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
前記感染性刺激、感染性病態、若しくは感染性症候群が、インフルエンザ、鳥インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、エプスタインバーウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、敗血症、グラム陰性敗血症、マラリア、エボラウイルス感染症、痘瘡ウイルス感染症、全身性グラム陰性細菌感染症、若しくはヤーリッシュ・ヘルクスハイマー症候群を含む、又は前記非感染性刺激、非感染性病態、若しくは非感染性症候群が、血球貪食性リンパ組織球症(HLH)、散発性HLH、マクロファージ活性化症候群(MAS)、慢性関節炎、全身性若年性特発性関節炎(sJIA)、スティル病、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、家族性寒冷自己炎症症候群(FCAS)、家族性寒冷蕁麻疹(FCU)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節炎(CINCA)症候群、NLRP3遺伝子における遺伝性若しくはde novoの機能獲得突然変異を含むクリオピリン症、遺伝性自己炎症性障害、急性膵炎、重度の熱傷、外傷、急性呼吸窮迫症候群、免疫療法、モノクローナル抗体療法、薬物使用に続発するもの、毒素、リポ多糖(LPS)、グラム陽性毒素、真菌毒素の吸入に続発するもの、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)、RIG-1遺伝子発現の調節、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎、及び虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ホイップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再灌流障害、臓器壊死、花粉症、敗血症、毒血症、内毒素ショック、悪液質、超高熱、好酸球肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血症性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、間質性肺炎、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、寄生虫感染症、細菌感染症、ウイルス感染症、自己免疫疾患、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染症、ヘルペス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日焼け、蕁麻疹、疣贅、膨疹、血管炎、脈管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、血栓静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、セリアック病、鬱血性心不全、成人型呼吸窮迫症候群、コロナウイルス、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群(MERS)、多系統炎症性症候群、コロナウイルス誘発性炎症性症候群、川崎病、髄膜炎、脳炎、脳梗塞、脳塞栓症、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMSOD)、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種異系移植片拒絶反応、移植片対宿主病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、ライター症候群、若しくはホジキン病を含む、請求項
25に記載の
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被験体におけるサイトカイン放出、サイトカイン放出症候群(CRS)、又はサイトカインストームを治療、阻害、予防、又は低減する組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカインは、免疫細胞のシグナル伝達、活性化、及び他の炎症細胞の動員に必要とされる小さな分泌タンパク質である。サイトカインは、様々な病態、疾患、障害、治療、及び作用物質に応答して様々な種類の細胞により分泌され得る。サイトカインは、細胞により放出される小さな分泌タンパク質であり、細胞間の相互作用及びコミュニケーションに特定の効果を有する。サイトカインは総称であり、その他の名称としては、リンホカイン(リンパ球によって作られるサイトカイン)、モノカイン(単球によって作られるサイトカイン)、ケモカイン(走化活性を備えたサイトカイン)、及びインターロイキン(或る白血球によって作られ、その他の白血球に作用するサイトカイン)が挙げられる。サイトカインは、これらを分泌する細胞に作用し得(自己分泌作用)、近傍の細胞に作用し得、(傍分泌作用)、又は場合によっては遠隔の細胞に作用し得る(内分泌作用)。炎症誘発性サイトカイン及び抗炎症性サイトカインの両方が存在する。或る特定のサイトカイン/ケモカインは、様々な疾患、障害、及び病態に関与している。
【0003】
サイトカイン放出症候群(CRS)は、感染症及び或る特定の薬物等の様々な要因によって惹起され得る全身性炎症応答である。癌免疫療法としては、癌細胞(例えば、B細胞白血病における抗原CD19を有するB細胞)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を有するT細胞の養子移入、癌細胞を標的とする二重特異性抗体(例えば、B細胞白血病の治療用の、T細胞のCD3とB細胞のCD19とを連結するBlinCyto)、又は高用量のIL2(例えば、黒色腫の治療用)が挙げられ得る。これらの免疫療法は、短期毒性又は生命に関わる恐れのあるCRSだけでなく神経毒性を伴うことも多い。CRSは、活性化T細胞による骨髄系細胞の活性化に起因する。CRSは、抗T細胞抗体のムロモナブ-CD3(OKT3)が実質臓器移植用の免疫抑制治療薬として臨床に導入されたときに見られた。その後、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、CD28スーパーアゴニストTGN1412、リツキシマブ、オビヌツズマブ、アレムツズマブ、ブレンツキシマブ、ダセツズマブ、及びニボルマブ等の幾つかの抗体ベースの療法薬の注入後にCRSが報告されている。CRSはまた、オキサリプラチン及びレナリドミド等の非タンパク質ベースの抗癌薬の投与後にも見られている。さらに、CRSは、ハプロ一致ドナー幹細胞移植、及び移植片対宿主病の状況で報告された。
【0004】
癌の標準的な治療は外科手術、化学療法、及び放射線療法であるが、標的免疫療法等の改善された方法が現在では開発され、試験されている。有望な技術の1つには、免疫細胞が腫瘍を認識して攻撃するように改変される養子細胞移入(ACT)が使用される。ACTの一例は、患者自身のT細胞又はドナーのT細胞が、腫瘍細胞の表面上に発現される腫瘍特異的抗原を標的とするキメラ抗原受容体を発現するように遺伝子操作される(例えば、CAR T細胞)場合である。その際、これらのCAR T細胞は、腫瘍特異的抗原を発現する細胞に対してのみ細胞傷害性を示す。より新しいT細胞誘導免疫療法剤の成功とともに、CRSへの関心が高まっている。それというのも、CRSはこれらの療法薬の最も頻度の高い重篤な有害効果の1つであるからである。T細胞誘導免疫療法薬としては、二重特異性抗体コンストラクト及びキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬が挙げられる。最近、これらの免疫療法戦略は両者とも臨床応用へと進展し、急性リンパ芽球性B細胞白血病(B-ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)等の幾つかの血液悪性腫瘍において印象的な治療活性を示した。
【0005】
最近、チサゲンレクロイセル及びアキシカブタゲン・シロロイセルという2つの初のCAR T細胞療法薬が、難治性のCD19陽性B-ALL及び再燃性又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫についてFDAの承認を受けた。様々な抗原を標的とする多数の他の二重特異性抗体及びCAR T細胞コンストラクトが現在臨床開発中である。さらに、初期の臨床開発においては、幾つかの関連するT細胞誘導免疫療法アプローチ及びその他の免疫細胞の免疫療法アプローチがある。これらの免疫療法アプローチとしては、二重親和性再標的化抗体(dual-affinity re-targeting antibodies)(DART)、癌に対する免疫動員モノクローナルT細胞受容体(TCR)(ImmTAC)、及びその他のTCRベースの戦略が挙げられる。
【0006】
初のT細胞誘導療法薬、すなわちブリナツモマブ及びCD19標的化CAR T細胞の研究により、CRSがこれらの療法薬の重篤な有害事象であることが明らかになった。このように、現在のCRSデータの殆どは、血液悪性腫瘍におけるCAR T細胞及びブリナツモマブの研究から得られたものであり、そこでは、CD19標的化CAR T細胞試験で最大100%の頻度でCRSが報告されており、時として致死的転帰を伴う。CRSでは、注入された活性化T細胞により全身性炎症応答が引き起こされ、サイトカインの血流への急速かつ大量の放出が見られ、危険なほど低い血圧、高熱、及び震えが引き起こされる。
【0007】
CRSの重症例では、患者は「サイトカインストーム」(別名サイトカインカスケード又は高サイトカイン血症)を起こし、そこでは、サイトカインと白血球との間に正のフィードバックループが見られることで、サイトカインレベルが大幅に高められる。これは、心機能不全、成人型呼吸窮迫症候群、神経毒性、腎不全及び/又は肝不全、肺水腫、並びに播種性血管内凝固を含む生命に関わる恐れのある合併症を引き起こし得る。
【0008】
サイトカインストームはまた、他の感染性刺激及び非感染性刺激の後の問題である。
【0009】
CRS又はサイトカインストームでは、インターロイキン-1(IL-1)、IL-6、ガンマインターフェロン(g-IFN、IFN-g、又はIFN-γ)、及び腫瘍壊死因子α(TNFα)等の多数の炎症誘発性サイトカインが放出されることから、低血圧、出血、そして最終的には多臓器不全が引き起こされる。サイトカインストームによって引き起こされる症状は、発疹又は発熱から神経毒性まで様々である。この症候群は、重症急性呼吸器症候群(SARS)、エプスタインバーウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症、グラム陰性敗血症、インフルエンザ、マラリア、及びエボラ感染症を含む他の多くの感染性疾患の進行症例又は末期症例において発生することも知られている。サイトカイン放出、サイトカインストーム、又はCRSはまた、急性膵炎、重度の熱傷若しくは外傷、又は急性呼吸窮迫症候群等の非感染性の原因から起こる場合もある。
【0010】
これまで、CAR T細胞療法薬等の免疫療法薬が投与された患者におけるサイトカイン放出症候群及びサイトカインストームを抑制するのに、コルチコステロイド、抗IL6療法薬等の生物療法薬、及び抗炎症薬が評価されている。しかしながら、そのような作用物質は典型的には、T細胞誘導療法薬に対する奏効率に悪影響を及ぼし、最終的には再燃につながることが分かっている。ステロイドは、CAR T細胞の活性及び/又は増殖に影響を及ぼし、患者を敗血症及び日和見感染症の危険にさらす可能性がある。抗炎症薬はサイトカイン放出症候群又はサイトカインストームを抑制するのに有効でない可能性がある。それというのも、サイトカインストームは非常に多数のサイトカインを含むのに対して、患者に抗炎症薬を注入する能力は限られているからである。
【0011】
FDAは、トシリズマブ(ACTEMRA(商標))の適応を、当初の関節リウマチ(RA)治療の指定から、CAR T治療を受けている患者におけるCRSの治療を含むように拡張した。トシリズマブは、炎症性サイトカインであるインターロイキン-6(IL-6)受容体を遮断することによって機能するが、サイトカインの放出を阻害しない。したがって、トシリズマブは一部の被験体における一部の症状の緩和をもたらすが、多くの改善の余地がある。成人及び2歳以上の小児患者における重度の又は生命に関わるCAR T細胞誘発性のCRSの治療についてのトシリズマブの承認は、53%~69%の奏効率を示す2つのコホートにおける後ろ向きデータ分析に基づいていた。トシリズマブについてのFDA承認は、文献レビューによってのみ裏付けられた。さらに、トシリズマブは、単一のサイトカイン受容体IL6に対するモノクローナル抗体であるが、CRS及びサイトカインストームには、IL-6に加えて、限定されるものではないが、例えばTNF-α、インターフェロンガンマ、インターロイキン、例えばIL-1β、IL-2、IL-8、及びIL-10を含む多数のサイトカインが関与している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、サイトカイン放出症候群及びサイトカインストーム等の病態を含むサイトカイン放出を治療、阻害、抑制、低減、及び予防する新たな組成物及び方法に対する長い間の切実な満たされていない要求が存在する。広範囲のサイトカイン放出阻害剤、特に抗癌療法薬の標的腫瘍細胞への細胞傷害性を低減させないサイトカイン放出阻害剤に対する長い間の切実な満たされていない要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様においては、本開示は、治療、予防、阻害、又は低減を必要とする被験体における1つ以上のサイトカインの血中レベルの増加を、本開示の組成物を被験体に投与することによって治療、予防、阻害、又は低減する方法を提供する。
【0014】
一態様においては、本開示は、被験体におけるサイトカイン放出症候群(CRS)又はサイトカインストームの発生を、本開示の組成物を被験体に投与することによって治療、予防、阻害、又は低減する方法を提供する。
【0015】
一態様においては、本開示は、被験体におけるCAR T細胞療法薬、抗体療法薬、又は二重特異性抗体療法薬の神経毒性を、本開示の組成物を被験体に投与することによって治療、予防、阻害、又は低減する方法を提供する。
【0016】
一態様においては、本開示は、サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームを起こしている被験体、又はサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームに罹りやすい被験体におけるサイトカイン産生を、本開示の組成物を被験体に投与することによって治療、予防、低減、又は阻害する方法を提供する。
【0017】
一態様においては、本開示は、被験体における感染性疾患又はサイトカインの広範な放出を惹起する病状によって惹起される1つ以上の症状又は有害反応を、本開示の組成物を被験体に投与することによって治療する方法を提供する。
【0018】
一態様においては、本開示は、被験体に投与されるT細胞誘導免疫療法薬の最大許容用量を、本開示の組成物を被験体に投与することによって増加させる方法を提供する。
【0019】
一態様においては、本開示は、治療、阻害、予防、又は治療を必要とする被験体における血管漏出を、本開示の組成物を被験体に投与することによって治療、阻害、予防、又は治療する方法を提供する。
【0020】
一態様においては、本開示は、サイトカイン放出、サイトカイン放出症候群、又はサイトカインストームに起因する心筋症及び/又は心筋機能不全のリスクがある被験体における心筋症及び/又は心筋機能不全を、本開示の組成物を被験体に投与することによって治療する方法を提供する。
【0021】
幾つかの態様においては、サイトカイン放出、サイトカイン放出症候群、又はサイトカインストームの原因としては、感染性刺激、感染性病態、又は感染性症候群を挙げることができる。幾つかの態様においては、サイトカイン放出、サイトカイン放出症候群、又はサイトカインストームの原因としては、非感染性刺激、非感染性病態、又は非感染性症候群を挙げることができる。幾つかの態様においては、サイトカイン放出、サイトカイン放出症候群、又はサイトカインストームの原因としては、感染性刺激、感染性病態、又は感染性症候群と、非感染性刺激、非感染性病態、又は非感染性症候群との組合せを挙げることができる。
【0022】
幾つかの態様においては、サイトカイン放出、サイトカイン放出症候群、又はサイトカインストームの原因としては、ウイルス性因子、細菌性因子、真菌性因子、寄生虫性因子、原生動物因子、又は感染性因子のうちの少なくとも1つを挙げることができる。
【0023】
幾つかの態様においては、IL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IP-10、IFN-α、IFN-γ、G-CSF、及びTNF-αのうちの少なくとも1種が被験体において低減される。
【0024】
本開示の主題の他の特徴及び特性、並びに操作方法、構造物の関連要素及び部材の組合せの機能、並びに製造の経済性は、本明細書の一部をなし、同様の参照符号が様々な図中の対応する部分を示す付随する図面を参照して、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を考慮すればより明らかになるであろう。
【0025】
本明細書に含まれ、本明細書の一部をなす付随する図面は、本開示の主題の様々な例示的かつ非限定的な態様を示している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】48時間でのLPS刺激されたヒトPBMCのIL-1βを示す図である。
【
図1B】48時間でのLPS刺激されたヒトPBMCのIL-6を示す図である。
【
図1C】48時間でのLPS刺激されたヒトPBMCのTNF-αを示す図である。
【
図2A】6時間でのCD-19腫瘍細胞(Raji)とのCD19 CAR-T共培養アッセイの結果を示す図であり、漸増濃度のC-2250の存在下でのCAR-Tに媒介される腫瘍標的細胞が示されている(5:1のE:T比)。
【
図2B】6時間でのCD-19腫瘍細胞(Raji)とのCD19 CAR-T共培養アッセイの結果を示す図であり、漸増濃度のC-2250の存在下でのCAR-Tに媒介される腫瘍標的細胞が示されている(10:1のE:T比)。
【
図2C】6時間でのCD-19腫瘍細胞(Raji)とのCD19 CAR-T共培養アッセイの結果を示す図であり、漸増濃度のC-2250の存在下でのCAR-Tに媒介される腫瘍標的細胞が示されている(20:1のE:T比)。
【
図3A】24時間でのCD-19腫瘍細胞(Raji)とのCD19 CAR-T共培養アッセイの結果を示す図であり、漸増濃度のC-2250の存在下でのCAR-Tに媒介される腫瘍標的細胞が示されている(5:1のE:T比)。
【
図3B】24時間でのCD-19腫瘍細胞(Raji)とのCD19 CAR-T共培養アッセイの結果を示す図であり、漸増濃度のC-2250の存在下でのCAR-Tに媒介される腫瘍標的細胞が示されている(10:1のE:T比)。
【
図3C】24時間でのCD-19腫瘍細胞(Raji)とのCD19 CAR-T共培養アッセイの結果を示す図であり、漸増濃度のC-2250の存在下でのCAR-Tに媒介される腫瘍標的細胞が示されている(20:1のE:T比)。
【
図4】種々のエフェクター対標的比にわたるCD19 CAR-T細胞に媒介されるIL-2サイトカイン放出に対するC-2250の効果を示す図である。
【
図5】種々のエフェクター対標的比にわたるCD19 CAR-T細胞に媒介されるTNF-αサイトカイン放出に対するC-2250の効果を示す図である。
【
図6】種々のエフェクター対標的比にわたるCD19 CAR-T細胞に媒介されるIFN-γサイトカイン放出に対するC-2250の効果を示す図である。
【
図7】試験されたドナーのRamos細胞におけるBLINCYTO(商標)の標的細胞への細胞傷害性を示す図である。
【
図8】BLINCYTO(商標)に媒介されるCD19
+腫瘍標的細胞への細胞傷害性に対するC-2250の効果を示す図である。
【
図9A】試験されたドナーにおけるIL-1βサイトカイン放出に対するBLINCYTO(商標)の効果を示す図である。
【
図9B】試験されたドナーにおけるBLINCYTO(商標)T細胞に媒介されるIL-1βサイトカイン放出に対するC-2250の効果を示す図である。
【
図10A】試験されたドナーにおけるIL-2サイトカイン放出に対するBLINCYTO(商標)の効果を示す図である。
【
図10B】試験されたドナーにおけるBLINCYTO(商標)T細胞に媒介されるIL-2サイトカイン放出に対するC-2250の効果を示す図である。
【
図11A】試験されたドナーにおけるIL-6サイトカイン放出に対するBLINCYTO(商標)の効果を示す図である。
【
図11B】試験されたドナーにおけるBLINCYTO(商標)T細胞に媒介されるIL-6サイトカイン放出に対するC-2250の効果を示す図である。
【
図12A】試験されたドナーにおけるTNF-αサイトカイン放出に対するBLINCYTO(商標)の効果を示す図である。
【
図12B】試験されたドナーにおけるBLINCYTO(商標)T細胞に媒介されるTNF-αサイトカイン放出に対するC-2250の効果を示す図である。
【
図13A】試験されたドナーにおけるIFN-γサイトカイン放出に対するBLINCYTO(商標)の効果を示す図である。
【
図13B】試験されたドナーにおけるBLINCYTO(商標)T細胞に媒介されるIFN-γサイトカイン放出に対するC-2250の効果を示す図である。
【
図14】BLINCYTO(商標)の不存在下での腫瘍標的細胞傷害性に対するC-2250の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の主題の態様は様々な形態で具現化され得るが、以下の記載及び付随する図面は単に、これらの形態の幾つかを本開示に包含される主題の具体例として開示することを意図している。したがって、本開示の主題は、そのように記載及び説明される形態又は態様に限定されることを意図したものではない。
【0028】
本発明の理解を容易にするために、多数の用語を以下に定義する。本明細書で定義される用語は、本発明に関連する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。数量を特定しない用語(Terms such as "a", "an" and "the")は、単数の実体のみを指すことを意図したものではなく、具体例を説明に用いることができる一般的な分類を含む。本明細書の専門用語は、本発明の具体的な態様を説明するために使用されるが、それらの使用は、特許請求の範囲において概説される場合を除き、本発明を画定するものではない。
【0029】
サイトカインは、免疫細胞のシグナル伝達、活性化、及び他の炎症細胞の動員に必要とされる小さな分泌タンパク質である。サイトカインの一部の例としては、IL-1β、IL-1RA、IL-2Rα、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-17、IL-18、IP-10、IFN-α、IFN-γ、MCP-3、MCP-1、M-CSF、G-CSF、MIP-1a、及びTNF-αが挙げられる。ケモカインの一部の例としては、CCL5、CXCL8、CXCL1、CXCL2、CXCL10、CCL2、CCL7、CXCL6、CXCL11、CCL2、CCL3、CCL4、CCL7、CCL8、及びCCL20が挙げられる。或る特定のサイトカイン/ケモカインは、様々な疾患、障害、及び病態に関与している。
【0030】
サイトカイン放出症候群は、一部の疾患又は感染症の合併症として起こる全身性炎症応答症候群の1つの形態であり、一部のモノクローナル抗体薬、及び養子T細胞療法薬等の免疫療法薬の有害効果でもある。サイトカイン放出症候群は、モノクローナル抗体及びCAR-T細胞等の幾つかの種類の免疫療法薬による治療後に発生し得る病態である。サイトカイン放出症候群は、免疫療法薬に影響された免疫細胞から血中へのサイトカインの大量の急速な放出によって引き起こされる。サイトカインは、体内で多くの種々の作用を有する免疫物質である。サイトカイン放出症候群の兆候及び症状としては、発熱、吐き気、頭痛、発疹、頻拍、低血圧、及び呼吸困難が挙げられる。殆どの患者は軽度の反応を示すが、時には、重度又は生命に関わる反応となる場合がある。
【0031】
CRSについての有害事象分類の共通用語規準は以下の通りである:グレード1:軽度の反応、注入の中断は適応とならず、介入は適応とならない;グレード2:療法又は注入の中断が適応となるが、対症療法(例えば、抗ヒスタミン薬、NSAID類、麻酔薬、静脈内輸液(IV fluids))に対して即座に奏効し、24時間以下にわたり予防的に投薬される;グレード3:長期的(例えば、対症投薬及び/又は短時間の注入の中断に迅速に奏効しない)、初期の改善後の症状の再発、臨床的続発症(例えば、腎機能障害、肺浸潤)について入院が適応となる;グレード4:生命に関わる帰結、昇圧薬又は換気サポートが適応となる;グレード5:死亡。
【0032】
アメリカ国立癌研究所は、CRSの重症度についてのグレード分けスキームを開発した:グレード1には、発熱及び全身症状が含まれ、グレード2には、体液/低用量昇圧剤に奏効する低血圧及びグレード2の臓器毒性が含まれ、グレード3には、高用量/多数の昇圧剤を必要とするショック、40%以上の吸入酸素濃度(FiO2)の低酸素症、及びグレード3の臓器毒性が含まれ、グレード4には、機械的人工呼吸の必要性及びグレード4の臓器毒性が含まれる。
【0033】
本明細書で使用される場合に、「サイトカインストーム」という用語は、有害事象、毒性、及び疾患につながる炎症誘発性サイトカインの調節不全を指し、「サイトカインストーム」、「サイトカイン放出症候群」、又は「炎症カスケード」と呼ばれている。しばしば、サイトカインストーム又はサイトカインカスケードはシーケンスの一部として言及される。それというのも、典型的には、1つのサイトカインが、免疫応答を強化及び増幅し得る他の複数のサイトカインの産生につながるからである。一般に、これらの炎症誘発性メディエーターは、初期メディエーター及び後期メディエーターの2つのサブグループに分けられている。例えば、腫瘍壊死因子、インターロイキン-1、インターロイキン-6等の初期メディエーターは、恒常性バランスを再確立するのに十分な治療標的ではない。それというのも、これらは、患者が診療所に移動して医療的処置を受ける時間枠内に消散するからである。これに対して、いわゆる「後期メディエーター」は、この後の「炎症カスケード」の間に患者自身が罹患したことに気付くため、標的化されてきた。
【0034】
「サイトカインストーム」に一般的に関連する感染性疾患としては、限定されるものではないが、マラリア、鳥インフルエンザ、天然痘、パンデミックインフルエンザ、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)が挙げられる。或る特定の具体的な感染性因子としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:感染性疾患は、エボラウイルス、マールブルグウイルス、クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)ウイルス、南米出血熱ウイルス、デングウイルス、黄熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、キャサヌル森林病ウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、サビアウイルス、ガナリトウイルス、ガリッサ(Garissa)ウイルス、イレシャウイルス、又はラッサ熱ウイルスのうちの少なくとも1つから選択される。
【0035】
「サイトカインストーム」に一般的に関連する病状としては、限定されるものではないが、敗血症、全身性炎症応答症候群(SIRS)、悪液質、敗血症性ショック症候群、外傷性脳損傷(例えば、脳サイトカインストーム)、移植片対宿主病(GVHD)、又は免疫療法薬、例えば、活性化免疫細胞、IL-2活性化T細胞、抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞で活性化されたT細胞による治療の結果が挙げられる。
【0036】
一般に、サイトカインストームは、活発な免疫系の健康的な全身性の発現である。本発明は、とりわけ、例えば、急速に増殖し、高度に活性化されたT細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞によって引き起こされる、150種を超える炎症性メディエーター(サイトカイン、酸素フリーラジカル、及び凝固因子)を含み得る「サイトカインストーム」の放出をもたらす激化した免疫応答の一部又は大部分を治療、予防、阻害、低減、又は排除するのに使用され得る。サイトカインストームの前又はその間には、炎症誘発性サイトカイン(腫瘍壊死因子-α、インターロイキン-1、及びインターロイキン-6等)及び抗炎症性サイトカイン(インターロイキン-10、及びインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)等)の両方が、例えば血清中で大幅に上昇する。炎症性メディエーターのこの過剰放出が「サイトカインストーム」を惹起する。
【0037】
本発明により示されるような迅速な介入がないと、サイトカインストームは、永続的な肺障害をもたらし、多くの場合に、死を招く可能性がある。サイトカインストームの末期症状としては、限定されるものではないが、低血圧、頻脈、呼吸窮迫、発熱、虚血又は不十分な組織灌流、制御不能な出血、重度の代謝調節不全、及び多臓器不全が挙げられる。エボラウイルス感染症等の感染性疾患による死亡は、ウイルス自体が原因ではなく、むしろサイトカインストームにより、制御不能な出血、重度の代謝調節不全、低血圧、頻脈、呼吸窮迫、発熱、虚血、又は不十分な組織灌流、及び多臓器不全が引き起こされることが原因である。
【0038】
本明細書で使用される場合に、「不所望なサイトカイン放出、サイトカイン放出症候群、又はサイトカインストームに罹りやすい」という文言は、被験体において不所望なサイトカイン放出、サイトカイン放出症候群、又はサイトカインストームを誘発する1つ以上の環境因子、汚染物質、化学物質、薬物、食品、疾患、治療レジメン、障害、及び病態と接触したことがある、接触している、又は接触する予定である被験体について言及するものである。
【0039】
本明細書で使用される場合、「実質的に」及び「実質的な」という用語は、相当な程度又は範囲を指す。例えば事象、状況、特性又は性質とともに使用される場合、この用語は事象、状況、特性又は性質が正確に発生する場合だけでなく、本明細書に記載される例の典型的な許容レベル又は変動性を説明するような事象、状況、特性又は性質が極めて近似して起こる場合を指すこともある。
【0040】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、与えられた値が端点の「少し上」又は「少し下」であってもよいと規定することによって数値範囲の端点に自由度を与えるために使用される。この用語の自由度は、特定の変数によって決まる場合があり、経験及び本明細書の関連する記載に基づく決定は当業者の知識の範囲内である。例えば、一態様においては、自由度は数値の約±10%以内であり得る。別の態様においては、自由度は数値の約±5%以内であり得る。更なる態様においては、自由度は数値の約±2%、±1%又は±0.05%以内であり得る。
【0041】
概して、本明細書において、「又は」という用語は、「及び」及び「及び/又は」を含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、複数の化合物又は工程が便宜上、共通のリストに提示されることがある。しかしながら、これらのリストは、リストの各メンバーが別々の固有のメンバーとして個別に特定されるかのように解釈する必要がある。このため、反対の指示がない限り、かかるリストの個々のメンバーは、共通のグループに提示されていることのみに基づいて、同じリストの任意の他のメンバーと事実上同等であると解釈すべきではない。
【0043】
幾つかの態様においては、本発明の化合物は遊離酸形態、遊離塩基形態、薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能な水和物、薬学的に許容可能なエステル、薬学的に許容可能な溶媒和物、薬学的に許容可能なプロドラッグ、薬学的に許容可能な代謝産物の形態、及び薬学的に許容可能な立体異性体の形態で有用であり得る。これらの形態は全て本発明の範囲内である。実際には、これらの形態の使用は、中性化合物の使用に相当する。
【0044】
「薬学的に許容可能な塩」、「水和物」、「エステル」又は「溶媒和物」は、所望の薬理活性を有し、生物学的にも他の点でも望ましくないものではない、本発明の化合物の塩、水和物、エステル又は溶媒和物を指す。有機酸を用いて、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、重硫酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、ナフチル酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩等の塩、水和物、エステル又は溶媒和物を生成することができる。無機酸を用いて、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩及びチオシアン酸塩等の塩、水和物、エステル又は溶媒和物を生成することができる。他の薬学的に許容可能な塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩及びトシル酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
塩、水和物、エステル又は溶媒和物は、有機塩基と形成することもできる。酸性化合物の薬学的に許容可能な塩基付加塩は、従来の方法によって有機及び無機塩基と形成することができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩及び重炭酸塩、アンモニア、第一級、第二級及び第三級アミン等が挙げられる。また、本化合物のアルミニウム塩は、対応するナトリウム塩を適切なアルミニウム錯体、例えば塩化アルミニウム六水和物等で処理することによって得ることができる。非毒性の有機塩基としては、トリエチルアミン、ブチルアミン、ピペラジン及びトリ(ヒドロキシメチル)-メチルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。好適な塩基の塩、水和物、エステル又は溶媒和物の例としては、アンモニアの水酸化物、炭酸塩及び重炭酸塩、ナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、並びに亜鉛塩が挙げられる。本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩基付加塩、水和物、エステル又は溶媒和物の形成に適した有機塩基には、非毒性であり、かかる塩、水和物、エステル又は溶媒和物を形成するのに十分に強力な有機塩基が含まれる。説明のために、かかる有機塩基類として、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン及びジシクロヘキシルアミン等のモノアルキルアミン、ジアルキルアミン及びトリアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等のモノヒドロキシアルキルアミン、ジヒドロキシアルキルアミン又はトリヒドロキシアルキルアミン;アルギニン及びリジン等のアミノ酸;グアニジン;N-メチル-グルコサミン;N-メチル-グルカミン;L-グルタミン;N-メチル-ピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N-ベンジル-フェネチルアミン;(トリヒドロキシ-メチル)アミノエタン等を挙げることができる。例えば、"Pharmaceutical Salts," J. Pharm. Sci., 66:1, 1-19 (1977)を参照されたい。したがって、塩基性窒素含有基はメチル、エチル、プロピル及びブチルの塩化物、臭化物及びヨウ化物等の低級アルキルハロゲン化物;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル及び硫酸ジアミル等の硫酸ジアルキル;デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルの塩化物、臭化物及びヨウ化物等の長鎖ハロゲン化物;並びにベンジル及びフェニルエチルの臭化物等のアラルキルハロゲン化物を含む作用物質で四級化することができる。
【0046】
塩基性化合物の塩、水和物、エステル又は溶媒和物は、オキサチアジン様化合物の遊離塩基を、適切な酸又は塩基を含有する水溶液又は水性アルコール溶液又は他の好適な溶媒に溶解し、溶液を蒸発させることで塩を単離することによって調製することができる。代替的には、オキサチアジン様化合物の遊離塩基を酸と反応させ、酸性基を有するオキサチアジン様化合物を塩基と反応させてもよく、反応は有機溶媒中で行われ、この場合、塩は直接分離するか、又は溶液を濃縮することによって得ることができる。
【0047】
「薬学的に許容可能なプロドラッグ」は、生体内変化を受けた後にその薬理効果(複数の場合もある)を示す本発明の化合物の誘導体を指す。プロドラッグは、化学安定性の改善、患者の承諾及びコンプライアンスの改善、バイオアベイラビリティの改善、作用時間の延長、臓器選択性の改善、製剤化の改善(例えば水溶性(hydrosolubility)の増大)、及び/又は副作用(例えば毒性)の減少を目的として製剤化される。プロドラッグは、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Chemistry, Fifth Ed., Vol. 1, pp. 172-178, 949-982 (1995)に記載されているような当該技術分野で既知の方法を用いて本発明の化合物から容易に調製することができる。例えば、本発明の化合物は、ヒドロキシ基又はカルボキシ基の1つ以上をエステルに変換することによってプロドラッグへと変化させることができる。さらに、N-保護型の本発明の化合物も本発明の化合物の薬学的に許容可能なプロドラッグの非限定的な例として含まれる。
【0048】
「薬学的に許容可能な代謝産物」は、代謝的変換を受けた薬物を指す。殆どの薬物は、体内に入った後、それらの物理的特性及び生物学的効果を変化させ得る化学反応の基質となる。これらの代謝変換は、通常は化合物の極性に影響を与え、薬物が体内に分布し、体内から排出される方法を変化させる。また、場合によっては、薬物の代謝が治療効果に必要とされる。例えば、代謝拮抗物質群の抗癌薬は、癌細胞に輸送された後に活性型へと変換される必要がある。殆どの薬物は何らかの代謝的変換を受けるため、薬物代謝に関与する生化学反応は多種多様であり得る。薬物代謝の主な部位は肝臓であるが、他の組織が関与する場合もある。
【0049】
さらに、或る特定の組成物、濃度、投与レジメン、投与量、症候群又は病態、工程等が特定の一態様との関連で論考され得る。これは単に便宜上のことであり、かかる開示が本明細書に見られる他の態様にも同様に当てはまることが理解される。例えば、CRS又はサイトカインストームを治療する方法に関して記載される方法工程、活性作用物質、キット、又は組成物が列挙されることにより、例えば、以下の、神経毒性の阻害若しくは低減、サイトカイン産生の減少若しくは阻害、感染性疾患若しくはサイトカインの広範な放出を惹起する病状によって惹起される1つ以上の症状若しくは有害反応の治療、血管漏出、播種性血管内凝固症候群(DIC)を誘発する補体カスケード及び凝固カスケードの活性化、心筋症、及び/又は心筋機能不全のリスクがある被験体における血管漏出、播種性血管内凝固症候群(DIC)を誘発する補体カスケード及び凝固カスケードの活性化、心筋症、及び/又は心筋機能不全の阻害、予防、若しくは治療、及び/又はT細胞誘導免疫療法薬の最大許容用量の増加の方法工程、活性作用物質、キット、又は組成物が本明細書中のその態様の文脈で再列挙されなくても、それらの方法工程、活性作用物質、キット、若しくは組成物に関連する態様についての直接的な裏付けが見出されるはずである。
【0050】
本明細書で使用され、当該技術分野で十分に理解されている「治療する」又は「治療」という用語は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るためのアプローチを意味する。有益な又は所望の臨床結果としては、検出可能又は検出不能を問わず、1つ以上の症状又は病態の緩和又は改善、疾患の範囲の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち悪化させないこと)、疾患の進行の遅延又は減速、疾患の状態の改善又は緩和、疾患の再発の減少、及び寛解(部分又は完全を問わない)を挙げることができるが、これらに限定されない。「治療する」及び「治療」は、治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して生存期間を延長することを意味する場合もある。本明細書に記載される方法は、治療方法として有用であることに加えて、疾患の予防又は予防法に有用であり得る。本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、本発明の化合物の任意の投与を指し、(i)疾患の病状若しくは総体的症状を経験若しくは発現している哺乳動物、例えばヒトにおける疾患を予防若しくは抑制すること(すなわち、病状及び/又は総体的症状の更なる進行を止めること)、又は(ii)疾患の病状若しくは総体的症状を経験若しくは発現している哺乳動物、例えばヒトにおける疾患を改善すること(すなわち、病状及び/又は総体的症状を逆転させること)を含む。「制御する」という用語は、制御される病態を予防、治療、根絶、改善するか、又は別の形でその重症度を低下させることを含む。
【0051】
濃度、量及び他の数値データは、本明細書において範囲形式で表現又は提示され得る。かかる範囲形式は、単に便宜上、簡潔にするために使用され、範囲の限界として明示的に列挙されている数値だけでなく、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲の全てを、各々の数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように含むと柔軟に解釈する必要があることを理解されたい。例として、「約0.01~2.0」の数値範囲は、約0.01~約2.0の明示的に列挙される値だけでなく、指定の範囲内の個々の値及び部分範囲を含むと解釈する必要がある。このため、0.5、0.7及び1.5等の個々の値、並びに0.5~1.7、0.7~1.5及び1.0~1.5等の部分範囲がこの数値範囲に含まれる。さらに、かかる解釈は、範囲の広さ又は記載されている特性に関わらず適用されるべきである。加えて、他に指定のない限り、全てのパーセンテージが重量パーセンテージであることに留意されたい。
【0052】
本開示の範囲を理解する上で、「含む("including" or "comprising")」という用語及びその派生語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の存在を特定するが、他の記載されていない特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の存在を除外するものではないオープンエンドな用語であることが意図される。上記の内容は、「含む」、「有する」という用語及びそれらの派生語等の同様の意味を有する語にも当てはまる。「なる(consisting)」という用語及びその派生語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の存在を特定するが、他の記載されていない特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の存在を除外するクローズドな(closed)用語であることが意図される。「から本質的になる」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程、並びに特徴、要素、成分、群、整数及び/又は工程の基本的な新規の特性(複数の場合もある)に実質的に影響を与えないものの存在を特定することが意図される。これらの移行語(すなわち「含む」、「なる」又は「本質的になる」)のいずれか1つへの言及が、具体的に使用されない他の移行語のいずれかへの置換えを直接支持することが理解される。例えば、「含む」から「から本質的になる」への用語の修正は、この定義により直接の支持が得られる。
【0053】
幾つかのオキサチアジン様化合物が、2015年12月17日に出願された国際出願PCT/IB2015/059741号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されている。或る特定の態様においては、式Iによるオキサチアジン様化合物を本発明に従って用いるが、RはH、in vivoで切断可能なリンカー若しくは基、又は水溶液中で脱離する基であり、R1及びR2は独立して、H、アルキル、アリール、置換アルキル、置換フェニル、置換アリール又はそれらの組合せである。幾つかの態様においては、Rはin vivoで切断可能なリンカー若しくは基である。幾つかの態様においては、置換アルキル、置換フェニル又は置換アリールは、例えば1つ以上のハロゲン又はハロゲン含有分子、1つ以上のヒドロキシル基、1つ以上のアシル基、1つ以上のアシルオキシ基、1つ以上のアルコキシ基、1つ以上のアリール基、1つ以上のカルボキシ基、1つ以上のカルボニル基、1つ以上のアルキルカルボキシ基、1つ以上のアルキルスルホノキシ基、1つ以上のアルキルカルボニル基、1つ以上のニトロ基、1つ以上のシアノ基、1つ以上のアシルアミド基、1つ以上のフェニル基、1つ以上のトリル基、1つ以上のクロロフェニル基、1つ以上のアルコキシフェニル基、1つ以上のハロフェニル基、1つ以上のベンゾオキサゾール基、1つ以上のチアゾリン基、1つ以上のベンズイミダゾール基、1つ以上のオキサゾール基、1つ以上のチアゾール基、1つ以上のインドール基等、又はそれらの組合せを含む任意の適切な分子で置換されていてもよい。幾つかの態様においては、アルキル又は置換アルキルは、C1~C30アルキルであり得る。幾つかの態様においては、アルキルは分岐又は非分岐であり得る。幾つかの態様においては、アリールは複素環式、多環式又は単環式であり得る。
【0054】
【0055】
例示的なオキサチアジン様化合物としては、以下のもの:
【化2】
及びイセチオン酸ヒドロキシメチルアミドが挙げられる。
【0056】
或る特定の好ましい態様においては、2250(テトラヒドロ1,4,5-オキサチアジン-4-ジオキシド、又は1,4,5-オキサチアザン-4-ジオキシド)は、本明細書の開示に従って、サイトカイン放出、CRS、又はサイトカインストームを治療、予防、阻害、低減するのに使用される。
【0057】
或る特定の態様においては、本発明はまた、本明細書に記載される化合物の薬学的に許容可能な溶液を含む、上記化合物を含む組成物、例えば、医薬組成物、並びに上記組成物を含むカプセル剤及び錠剤等の経口投与可能な組成物に関する。
【0058】
本明細書に記載される「有効量」又は「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医が求める組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を引き出す対象化合物の量を意味する。一例においては、治療有効量は約0.0001mg/kg~約10000mg/kg、約0.001mg/kg~約5000mg/kg、約0.01mg/kg~約1000mg/kg、約0.05mg/kg~約750mg/kg、約0.1mg/kg~約600mg/kg、約1mg/kg~約500mg/kg、約10mg/kg~約400mg/kg、約20mg/kg~約300mg/kg、約200mg/kg~約500mg/kg、約300mg/kg~約400mg/kg、約250mg/kg、300mg/kg、400mg/kg、420mg/kg、450mg/kg、約500mg/kg、又は被験体の体重のいずれかの開示範囲内の投与量若しくは範囲を含む。
【0059】
化合物「の投与」又は「を投与する」という用語は、本明細書で使用される場合、治療を必要とする個体に、本発明の化合物を、例えば静脈内に、皮下に、筋肉内に、局所的に、経口的に、腹腔内に、髄腔内に、鼻腔内に、肺内に、経皮的に、眼内に、吸入によって、経気管的に、硝子体内に、又はそれらの組合せで個体の身体に導入することができる形態で与えることを意味すると理解すべきである。幾つかの態様においては、本発明の化合物は、錠剤、カプセル、シロップ、懸濁液等の経口剤形;静脈内(IV)、筋肉内(IM)又は腹腔内(IP)、鼻腔内等の注射剤形;クリーム、ゼリー、粉末又はパッチを含む経腸又は非経口、経皮剤形;口腔内剤形;吸入粉末、スプレー、懸濁液等;及び肛門坐剤を含むが、これらに限定されない治療上有用な形態及び治療上有用な量で投与することができる。
【0060】
所望される特定の投与経路に応じて、当該技術分野で既知の様々な薬学的に許容可能な担体を使用することができる。これらには固体又は液体の充填剤、希釈剤、ヒドロトロープ、界面活性剤及び封入物質が含まれる。1つ以上のオキサチアジン様化合物の活性を実質的に妨げない任意の薬学的に活性な材料が含まれていてもよい。
【0061】
本明細書で使用される場合、「静脈内投与」という用語は注射、注入及び他の静脈内投与方法を含む。
【0062】
「薬学的に許容可能な」という用語は、本明細書で使用される場合、担体、希釈剤又は賦形剤が製剤の他の成分に適合し、そのレシピエントに有害でない必要があることを表す。
【0063】
一態様においては、本開示は、1つ以上のオキサチアジン様化合物又はそれらの組合せを投与することにより、被験体におけるサイトカイン放出、サイトカイン放出症候群(CRS)、又はサイトカインストームの発生を予防、阻害、又は低減することを含む。幾つかの態様においては、被験体は、不所望なサイトカイン放出のリスクがある。幾つかの態様においては、被験体は、サイトカイン放出を抑制又は下方調節する必要がある。幾つかの態様においては、被験体は、抑制を必要とするサイトカイン放出をもたらすと予想される作用物質又はレジメンによる療法を受けたことがある、受けている可能性がある、又は受ける予定である。幾つかの態様においては、被験体は、免疫療法、T細胞誘導療法、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)療法、及び/又は二重特異性抗体療法を受けたことがある、受けている可能性がある、又は受ける予定である。幾つかの態様においては、本開示は、米国特許第8,715,658号(Tracey)(引用することにより、その全体が本明細書の一部をなす)に開示される炎症性サイトカインカスケードによって媒介される病態を治療する方法及び組成物を提供する。
【0064】
幾つかの態様においては、サイトカイン放出によって媒介される病態としては、限定されるものではないが、虫垂炎、消化性潰瘍、胃潰瘍、及び十二指腸潰瘍、腹膜炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、偽膜性大腸炎、急性大腸炎、及び虚血性大腸炎、憩室炎、喉頭蓋炎、アカラシア、胆管炎、胆嚢炎、肝炎、クローン病、腸炎、ホイップル病、喘息、アレルギー、アナフィラキシーショック、免疫複合体病、臓器虚血、再灌流障害、臓器壊死、花粉症、敗血症、毒血症、内毒素ショック、悪液質、超高熱、好酸球肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、敗血症性流産、精巣上体炎、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、間質性肺炎、肺胞炎、細気管支炎、咽頭炎、胸膜炎、副鼻腔炎、寄生虫感染症、細菌感染症、ウイルス感染症、自己免疫疾患、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス感染症、ヘルペス感染症、HIV感染症、B型肝炎ウイルス感染症、C型肝炎ウイルス感染症、播種性菌血症、デング熱、カンジダ症、マラリア、フィラリア症、アメーバ症、包虫嚢胞、熱傷、皮膚炎、皮膚筋炎、日焼け、蕁麻疹、疣贅、膨疹、血管炎、脈管炎、心内膜炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、血栓静脈炎、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、セリアック病、鬱血性心不全、成人型呼吸窮迫症候群、コロナウイルス、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群(MERS)、多系統炎症性症候群、コロナウイルス誘発性炎症性症候群、川崎病、髄膜炎、脳炎、脳梗塞、脳塞栓症、ギラン・バレー症候群、神経炎、神経痛、脊髄損傷、麻痺、ブドウ膜炎、関節炎、関節痛、骨髄炎、筋膜炎、パジェット病、痛風、歯周病、関節リウマチ、滑膜炎、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、ベーチェット症候群、同種異系移植片拒絶反応、移植片対宿主病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、ライター症候群、及びホジキン病からなる群から選択される病態が更に挙げられる。
【0065】
一態様においては、本開示は、中枢神経系の稀な再燃性の自己免疫疾患である視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMSOD)を治療する方法を提供する。IL-6シグナル伝達は、NMSODで発生する炎症、特に再燃の惹起に重要な役割を果たすことに関係している。本開示の化合物は、IL-6を含む炎症性サイトカインの産生を阻害して、NMSODに罹患している患者、又はそれを発症するリスクがある患者を治療する。
【0066】
幾つかの態様においては、本開示は、不所望なサイトカイン放出のリスクがある又はサイトカイン放出を抑制若しくは下方調節する必要がある患者における切迫型のサイトカイン放出、CRS、又はサイトカインストームの臨床的兆候としての発熱について被験体をモニタリングし、発熱の発症の約24時間以内、例えば、約1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、8時間以内、10時間以内、又は12時間以内に、本開示の1つ以上のオキサチアジン様化合物を投与することを含む。例えば、患者は、免疫療法又は1つ以上のT細胞誘導療法を受けている場合がある。
【0067】
幾つかの態様においては、本開示は、T細胞誘導療法を受けている患者における切迫型のサイトカイン放出、CRS、又はサイトカインストームの指標となる1つ以上のバイオマーカーについて被験体をモニタリングし、1つ以上のバイオマーカーの検出の約24時間以内、例えば、約1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、8時間以内、10時間以内、又は12時間以内に、本開示の1つ以上のオキサチアジン様化合物を投与することを含む。幾つかの態様においては、T細胞誘導療法を受けている被験体のIL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IP-10、IFN-α、IFN-γ、G-CSF、及びTNF-αのうちの1つ以上の血清レベル、血中レベル、又は組織レベルをモニタリングし、閾値レベルを上回るIL-1β、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IP-10、IFN-α、IFN-γ、G-CSF、及びTNF-αのうちの1つ以上の血清レベル、血中レベル、若しくは組織レベルの増加、又はベースラインを上回るパーセンテージを検出した約6時間以内、例えば、約0.5時間以内、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内に、本開示の1つ以上のオキサチアジン様化合物を投与する。幾つかの態様においては、被験体のCD4+T細胞及びCD8+T細胞のレベル及び比率をモニタリングし、閾値レベルを上回るCD4+又はCD4/CD8比のうちの1つ以上の血清レベル、血中レベル、若しくは組織レベルの増加、又はベースラインを上回るパーセンテージを検出した約6時間以内、例えば、約0.5時間以内、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内に、本開示の1つ以上のオキサチアジン様化合物を投与する。
【0068】
幾つかの態様においては、本開示は、PBMCアッセイを使用して被験体をモニタリングすることを含む。幾つかの態様においては、本開示は、全血(WB)アッセイを使用して被験体をモニタリングすることを含む。
【0069】
一態様において、本開示は、サイトカイン放出の発症の前に、その間に、又はその後に、例えば、治療、例えば免疫療法薬、例えば、T細胞誘導療法薬での治療の前に、その間に、又はその後に、被験体における、限定されるものではないが、IL-1β、IL-1RA、IL-2Rα、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-17、IL-18、IP-10、IFN-α、IFN-γ、MCP-3、MCP-1、M-CSF、G-CSF、MIP-1a、TNF-α、CCL5、CXCL8、CXCL1、CXCL2、CXCL10、CCL2、CCL7、CXCL6、CXCL11、CCL2、CCL3、CCL4、CCL7、CCL8、及びCCL20の放出を含むサイトカイン放出を予防、阻害、又は低減することを含む。
【0070】
別の態様においては、本開示の方法及び組成物は、驚くべきことに、そのような免疫療法薬による標的とされる癌細胞の死滅を減少させない。本開示の前に、サイトカインをシャットダウンするのに使用される既知の作用物質は、標的とされる癌細胞への細胞傷害性の低減を犠牲にしてサイトカインをシャットダウンしていた。それに対して、実施例3に例示されるように、本開示の組成物及び方法は、驚くべきことに、そのような免疫療法薬による標的とされる癌細胞の死滅を減少させないことが判明した。
【0071】
一態様においては、本開示は、IFN-γの放出を阻害、低減、又は予防することを含む。分泌されたIFN-γは、他の免疫細胞、最も重要にはマクロファージの活性化を誘導する。活性化されたマクロファージは、IL-6、TNF-α、及びIL-10等の追加のサイトカインを過剰量で産生する。TNF-αは、発熱、全身倦怠感、及び倦怠感を伴うIFN-γと同様のインフルエンザ様症状を誘発するが、さらに水様下痢、血管漏出、心筋症、肺損傷、及び急性期タンパク質の合成の原因となる。当該技術分野において、抗癌療法薬及びインターフェロン薬を含む様々な治療薬が、患者においてインフルエンザ様症状を誘発することが知られている。本開示は、1つ以上のオキサチアジン様化合物を被験体に投与することによって、薬物誘発性のインフルエンザ様症状のリスクがある被験体における薬物誘発性のインフルエンザ様症状を治療、阻害、低減、又は予防することを含む。
【0072】
IL-6は、CRS及びサイトカインストームの主要な症状の多くの原因となる。トランスシグナル伝達を介して、IL-6は、重度のCRS及びサイトカインストームの特徴的な症状、すなわち血管漏出、並びに播種性血管内凝固症候群(DIC)を誘発する補体カスケード及び凝固カスケードの活性化を引き起こす。さらに、IL-6は、心筋機能不全を促すことにより、CRS及びサイトカインストームを伴う患者にしばしば見られる心筋症の原因となる可能性がある。本開示は、血管漏出、播種性血管内凝固症候群(DIC)を誘発する補体カスケード及び凝固カスケードの活性化、心筋症、及び/又は心筋機能不全のリスクがある被験体における血管漏出、播種性血管内凝固症候群(DIC)を誘発する補体カスケード及び凝固カスケードの活性化、心筋症、及び/又は心筋機能不全を、それを必要とする被験体に1つ以上のオキサチアジン様化合物を投与することにより阻害、予防、低減、又は治療することを含む。LPS等の炎症性シグナルは、転写因子NFkB(NFκB)を活性化することにより、炎症性サイトカインの放出を惹起する。活性化されると、NFkBは細胞質から核に移動し、ケモカイン及びIL-1、IL-6、TNFα、INFγ等の炎症性サイトカインを産生する遺伝子を含む一連の幅広い遺伝子の発現を活性化する。本開示のオキサチアジン様化合物によるケモカイン及び炎症性サイトカインの産生及び放出の阻害は、本開示のオキサチアジン様化合物がNFkB経路の阻害剤であることを示している。幾つかの態様においては、本開示のオキサチアジン様化合物は、NFkBを直接的に又は間接的に阻害し得る。
【0073】
一態様においては、静脈内に、経口的に又はそれらの組合せで投与される1つ以上のオキサチアジン様化合物又はその組合せで患者を治療する。一態様においては、静脈内に、経口的に又はそれらの組合せで投与される2250(「化合物2250」又は「C-2250」とも称される)で患者を治療する。一態様においては、組成物の投与は、療法、例えば、免疫療法、T細胞誘導療法、CAR T細胞療法及び抗体療法、例えば、モノクローナル抗体療法及び/又は二重特異性抗体療法の前に、それと同時に、又はその後に行われる。
【0074】
一態様においては、患者には、1つ以上のオキサチアジン様化合物又はそれらの組合せが、ヌクレオシド類似体、葉酸代謝拮抗剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼI阻害剤、アントラサイクリン、ポドフィロトキシン、タキサン、ビンカアルカロイド、アルキル化剤、白金化合物、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、レチノイド、免疫調節剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、植物アルカロイド、及び抗腫瘍抗生物質等の1つ以上の抗腫瘍薬との併用療法で投与される。例えば、患者には、1つ以上のオキサチアジン様化合物又はそれらの組合せが、オキサリプラチン及びレナリドミド等の非タンパク質ベースの抗癌薬との組合せにおいて投与され得る。一態様においては、患者には、1つ以上のオキサチアジン様化合物又はそれらの組合せが、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、CD28スーパーアゴニストTGN1412、リツキシマブ、オビヌツズマブ、アレムツズマブ、ブレンツキシマブ、ダセツズマブ、及びニボルマブ等の抗体ベースの療法薬との組合せにおいて投与される。一態様においては、患者には、1つ以上のオキサチアジン様化合物又はそれらの組合せが、T細胞誘導療法薬及び抗体等の免疫療法薬との組合せにおいて投与される。
【0075】
一態様においては、患者には、1つ以上のオキサチアジン様化合物又はそれらの組合せが、ドナー幹細胞移植との組合せにおいて投与される。
【0076】
一態様においては、患者には、1つ以上のオキサチアジン様化合物又はそれらの組合せが、インターフェロン含有医薬品、例えばインターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、若しくはインターフェロンガンマ、又はインターロイキン含有医薬品との組合せにおいて投与される。
【0077】
一態様においては、患者には、1つ以上のオキサチアジン様化合物又はそれらの組合せが、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、又は骨形成タンパク質との組合せにおいて投与される。
【0078】
幾つかの態様においては、本開示は、1つ以上のオキサチアジン様化合物を、トシリズマブ、抗ヒスタミン剤、解熱剤、抗炎症性化合物、コルチコステロイド、グルココルチコイド、TNF阻害剤(例えばエタネルセプト)、シルツキシマブ、T細胞枯渇抗体療法薬、例えばアレムツズマブ及び抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、IL-1R系阻害剤(アナキンラ)、イブルチニブ、並びにシクロフォスファミドの1つ以上と組み合わせて投与することを含む。
【0079】
本開示の化合物、特に化合物2250は、水中に非常に可溶性であることが判明した。或る特定の態様においては、溶解性を高めるのにポリビニルピロリドン(PVP)は必要とされない。例えば、3.2%溶液の2250は等張性である。
【0080】
本発明による化合物は、任意の好適な方法によって投与することができる。経口投与用の固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸薬、粉末、及び顆粒が挙げられる。かかる固体剤形においては、与える組成物を少なくとも1つの不活性の薬学的に許容可能な賦形剤及び/又は充填剤若しくは増量剤(例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸)、結合剤(例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース及びアラビアゴム)、保湿剤(例えばグリセロール)、崩壊剤(例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、アルギン酸、或る特定のケイ酸塩及び炭酸ナトリウム)、溶解遅延剤(例えばパラフィン)、吸収促進剤(例えば第四級アンモニウム化合物)、湿潤剤(例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール)、吸収剤(例えば、カオリン及びベントナイトクレイ)及び滑沢剤(例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、並びにそれらの混合物と混合する。カプセル、錠剤及び丸薬の場合、剤形は緩衝剤を含み得る。
【0081】
同様のタイプの固体組成物を、ラクトース又は乳糖等の賦形剤、及び高分子量ポリエチレングリコール等を用いる軟及び/又は硬ゼラチンカプセル中の充填剤として採用することができる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬及び顆粒の固体剤形は、腸溶コーティング及び医薬製剤分野で既知の他のコーティング等のコーティング及びシェルを用いて調製することができる。これらは任意に乳白剤を含んでいてもよく、与えられた組成物(複数の場合もある)を腸管の或る特定の部分でのみ又はそれを標的として、任意に遅延して放出するような組成であってもよい。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。同様のタイプの固体組成物を、ラクトース又は乳糖等の賦形剤、及び高分子量ポリエチレングリコール等を用いる軟及び硬ゼラチンカプセル中の充填剤として採用することができる。
【0082】
或る特定の態様においては、カプセルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ゼラチン、及びフィッシュゼラチンの1つ以上を含有する賦形剤配合物を含有し得る。或る特定の態様においては、カプセルは、化合物2250をタウロリジン及び/又はタウルルタムと組み合わせて含有し得る。カプセルは任意に、リコペン、エラグ酸(ポリフェノール)、クルクミン、ピペリン、デルフィニジン、レスベラトロール、スルフォラファン等のイソチオシアネート、カプサイシン及びピペルロングミンの1つ以上を更に含有していてもよい。
【0083】
請求項に係る発明の化合物は、マイクロ粒子又はナノ粒子の形態で使用する場合、より高い血中レベルを達成することができる。本発明は、錠剤形態の又はカプセルに封入された本開示の化合物のマイクロ粒子及び/又はナノ粒子を含む。
【0084】
或る特定の態様においては、本開示は、オキサチアジン様化合物を患者に経口投与することに関する。幾つかの態様においては、オキサチアジン様化合物は、カプセル又は錠剤に製剤化される。或る特定の態様においては、経口剤形は、約50mg~1000mgのオキサチアジン様化合物を含有する。或る特定の態様においては、経口剤形は、約100mg~500mgのオキサチアジン様化合物を含有する。或る特定の態様においては、経口剤形は、約200mg~400mgのオキサチアジン様化合物を含有する。或る特定の態様においては、経口剤形は、約250mg~350mgのオキサチアジン様化合物を含有する。或る特定の態様においては、オキサチアジン様化合物はC-2250である。
【0085】
幾つかの態様においては、オキサチアジン様化合物は、約0.01μg/ml~約500μg/mlの濃度にて組成物中で与えられる。幾つかの態様においては、オキサチアジン様化合物は、約0.1μg/ml~約100μg/mlの濃度にて組成物中で与えられる。幾つかの態様においては、オキサチアジン様化合物は、約10μg/ml~約50μg/mlの濃度にて組成物中で与えられる。
【0086】
幾つかの態様においては、オキサチアジン様化合物は、約0.001wt%~約5wt%、約0.01wt%~約3.5wt%、約0.1wt%~約3wt%、約0.5wt%~約2.5wt%又は約1wt%~約2wt%の濃度にて組成物中で与えられる。幾つかの態様においては、オキサチアジン様化合物は、約0.01%~約1.5%の濃度にて組成物中で与えられる。幾つかの態様においては、オキサチアジン様化合物は、約0.1%~約1%の濃度にて組成物中で与えられる。幾つかの態様においては、オキサチアジン様化合物は、約100μM~約5000μM、約250μM~約2500μM、約500μM~約2000μM、約750μM~約1500μM、約1000μM~約1250μMの濃度、又は列挙される範囲内の任意の他の濃度にて組成物中で与えられる。
【0087】
幾つかの態様においては、オキサチアジン様化合物は、単位剤形の組成物中で与えられる。本明細書で使用される場合、「単位剤形」は、適正な医療行為に従う単回投与での哺乳動物等の動物、例えばヒト被験体への投与に好適な量のオキサチアジン様化合物を含有する組成物である。これらの組成物は、約0.1mg(ミリグラム)~約500mg、例えば約5mg~約350mgのオキサチアジン様化合物を含有し得る。本発明の組成物による治療の頻度は、所望の標的血漿レベルが達成及び維持されるように変更することができる。このため、治療スケジュールの非限定的な例としては、毎日、1日2回、1日3回、毎週、隔週、毎月及びそれらの組合せが挙げられる。代替的には、本発明の組成物は、持続注入として投与することもできる。
【0088】
或る特定の態様においては、本開示の1つ以上のオキサチアジン様化合物は、被験体におけるサイトカイン放出をもたらすと予想される療法薬の投与の前に被験体に投与される。例えば、一態様においては、本開示の1つ以上のオキサチアジン様化合物は、被験体におけるサイトカイン放出をもたらすと予想される療法薬の投与の約12時間~96時間前、例えば、24時間前、48時間前、又は72時間前に投与される。一態様においては、本開示の1つ以上のオキサチアジン様化合物は、被験体におけるサイトカイン放出をもたらすと予想される療法薬の投与の前に単回用量又は多回用量で投与される。或る特定の態様においては、本開示の1つ以上のオキサチアジン様化合物は、被験体におけるサイトカイン放出をもたらすと予想される療法薬と同時に被験体に投与される。或る特定の態様においては、オキサチアジン様化合物は、被験体におけるサイトカイン放出をもたらすと予想される療法薬を被験体に投与した後に、約1時間~約24時間以内、約2時間~約18時間以内、約6時間~約15時間以内、約4時間~約12時間以内、又は開示された範囲内のあらゆる時間範囲以内に被験体に投与される。
【0089】
或る特定の態様においては、本開示の1つ以上のオキサチアジン様化合物は、CRS又はサイトカインストームが発生すると予想される期間の間にレジメンに従って投与される。例えば、一態様においては、本開示の1つ以上のオキサチアジン様化合物は、被験体におけるサイトカイン放出をもたらすと予想される療法薬、例えば、T細胞誘導療法薬の投与の前に、その間に、及び/又はその後に、3週間~10週間、4週間~8週間、又は4週間~6週間の期間にわたって毎日、隔日、隔週、又は毎週投与される。
【0090】
或る特定の態様においては、治療の開始前に、本開示の1つ以上のオキサチアジン様化合物を予防的に投与することが有利である。例えば、二重特異性抗体療法に起因するCRS又はサイトカインストームは、二重特異性抗体の投与の数分~数時間以内に見られることが多いため、二重特異性抗体療法薬の投与前に本開示のサイトカイン放出阻害化合物を投与することが特に有利である。
【0091】
一態様においては、オキサチアジン様化合物は、組成物中で与えられ、それを必要とする被験体に約0.001g~約1000g、例えば約0.01g~約500g、0.1g~300g、0.5g~200g、1g~100g、又は列挙される範囲内の任意の量であり得る総1日投与量で投与される。1日投与量は、経口投与可能な組成物の形態で投与され得る。1日投与量はカプセル、錠剤又は薬学的に許容可能な溶液の形態で投与してもよい。1日投与量は、本開示の化合物、例えば2250を約0.01%~約3%(w/v)の濃度で含有する形態で投与してもよい。
【0092】
1日投与量は、化合物2250を約0.01μg/ml~約1000μg/mlの濃度で含有する形態で投与してもよい。1日投与量は、1つ以上の可溶化剤、例えばポリオールを含有する形態で投与してもよい。
【0093】
オキサチアジン様化合物の有効投与量は、組成物中で与えられ、1日当たり約0.01mg/kg~500mg/kg、約1mg/kg~100mg/kg、又は1日当たり約5mg/kg~50mg/kgのオキサチアジン様化合物を含有する投与単位を含み得る。幾つかの態様においては、投与単位は隔日、隔週又は毎週投与される。
【0094】
任意の特定の患者についての具体的な有効用量は、サイトカイン放出、サイトカイン放出症候群(CRS)、又はサイトカインストームの重症度又は可能性、使用される特定の化合物の活性、患者の年齢、体重、全身健康状態、性別、及び食生活、特定の化合物の調製、投与の時間及び経路、投与期間、使用される特定の化合物と組み合わせて又はそれと同時に使用される療法剤、並びに医療技術分野で知られる同様の要因を含む様々な要因に依存することとなる。サイトカイン放出症候群又はサイトカインストームが悪化又は改善するにつれて、有効用量を時間とともに変化させることもできる。慢性の病態の場合は、数日、数週間、又は数ヶ月間にわたって有効用量が被験体に投与され得る。投与又は同時投与の回数及び頻度は、サイトカイン放出、CRS、及びサイトカインストームの可能性又は重症度、並びに投与される特定の化合物及び/又は投与される第2の治療活性作用物質に対する患者特異的な応答に応じて変動し得る。
【実施例】
【0095】
本開示の態様を、以下の実施例を参照して更に説明するが、これらの実施例は、例示の目的で提供されるにすぎず、本発明の範囲を限定する又は本発明を解釈するのに使用されるべきではない。
【0096】
実施例1
初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのin vitroでのサイトカイン放出を抑制するC-2250の能力を評定した。C-2250によるリポ多糖(LPS)阻害を測定した。5人の個々の正常な健康なヒトボランティアからのPBMCをC-2250とともにインキュベートした後に、LPSで48時間刺激した。抗体捕捉ビーズベースのキット及びフローサイトメトリー分析を使用して、3つの異なるサイトカインの検出を行った。
【0097】
5人の健康なヒトドナーからの凍結保存PBMC(IQ Biosciences、カタログ番号IQB-PBMC103)を解凍し、10%のFCS、2mMのL-グルタミン、100IU/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、1mMのピルビン酸ナトリウム(全てThermoFisher製)を補充したRPMI 1640培地(Gibco RPMI-1640培地(ATCC、カタログ番号30-2001)中で培養したところ、実験前に自動セルカウンター(Countess II FL自動セルカウンター、ThermoFisher、カタログ番号AMQAF1000)で測定して85%を超える生存率を有した。C-2250については、アッセイ開始前の2時間以内に、10mLの乳酸リンゲル溶液中に100mgのC-2250を添加することによって滅菌乳酸リンゲル溶液中で73mMのストックを調製した。アッセイで使用する前に、溶液のpHを7.3に調整した。1.0×107個の細胞/mLの100μlのPBMCを洗浄し、固定濃度(1ng/ml)の血清型O111:B4の大腸菌由来のLPSを含有する組織培養培地中に再懸濁した。LPS刺激を37℃にて5%のCO2で48時間行った後に、サイトカイン分析のために組織培養上清を採取した。500μM、1000μM、及び1500μMの濃度でC-2250を使用した。
【0098】
ドナーの人口統計は以下の通りであった:
【0099】
【0100】
IL-1β、IL-6、及びTNF-αについての結果は、
図1A、
図1B、及び
図1Cにまとめられている。
図1Aは、48時間でのLPS刺激されたヒトPBMCのIL-1βを示す(検出下限0.62pg/ml;検出上限15228pg/ml)。
図1Bは、48時間でのLPS刺激されたヒトPBMCのIL-6を示す(検出下限1.0pg/ml;検出上限19360pg/ml)。
図1Cは、48時間でのLPS刺激されたヒトPBMCのTNF-αを示す(検出下限0.39pg/ml;検出上限10000pg/ml)。各記号は、単独のドナーの3連の分析の平均値を表す。治療群ごとの各バーは、各ドナーの3連の値を平均した全てのドナーの平均値を表す。
【0101】
全ての個々のドナーはLPS刺激に応答し、個々のドナー全体にわたってかなりのレベルのIL-1β、IL-6、及びTNF-αを産生した。C-2250は、IL-1β、IL-6、及びTNF-αのサイトカインの用量依存的な阻害をもたらした。
【0102】
実施例2
ドナーからのヒトCD19特異的CAR-Tエフェクター細胞を、C-2250の存在下で5:1、10:1、及び20:1の種々のエフェクター対標的細胞比にて、ヒトCD19を発現する標的B細胞株であるRajiとともに共培養した。共培養を37℃にて5%のCO2で6時間又は24時間行った後に、CAR-Tに媒介される標的細胞溶解のために細胞を採取し、又はサイトカイン分析のために組織培養上清を採取した。500μM、1000μM、及び1500μMの濃度でC-2250を使用し、CAR-T細胞とプレインキュベートさせた後に、腫瘍標的細胞を添加した。
【0103】
図2A~
図2Cは、6時間でのCD-19腫瘍細胞(Raji)とのCD19 CAR-T共培養アッセイの結果を示し、漸増濃度のC-2250の存在下でのCAR-Tに媒介される腫瘍標的細胞が示されている(それぞれ
図2A、
図2B、及び
図2Cには、5:1、10:1、及び20:1のE:T比が示されている)。
図3A~
図3Cは、24時間でのCD-19腫瘍細胞(Raji)とのCD19 CAR-T共培養アッセイの結果を示し、漸増濃度のC-2250の存在下でのCAR-Tに媒介される腫瘍標的細胞が示されている(それぞれ
図3A、
図3B、及び
図3Cには、5:1、10:1、及び20:1のE:T比が示されている)。
【0104】
図4は、種々のエフェクター対標的比にわたって、C-2250が、CD19 CAR-T細胞に媒介されるIL-2サイトカイン放出を低減することを示している。
図5は、種々のエフェクター対標的比にわたって、C-2250が、CD19 CAR-T細胞に媒介されるTNF-αサイトカイン放出を低減することを示している。
図6は、種々のエフェクター対標的比にわたって、C-2250が、CD19 CAR-T細胞に媒介されるIFN-γサイトカイン放出を低減することを示している。
【0105】
C-2250は、6時間又は24時間で、種々のエフェクター対標的細胞比でCD19 CAR-Tに媒介されるCD19+腫瘍標的細胞への細胞傷害性を抑止しない。C-2250は、サイトカイン放出(IL-1β、IL-6、TNF-α、及びIFN-γのサイトカインを含む)をシャットダウンする。
【0106】
実施例3
二重特異性CD19 T細胞誘導剤の存在下でのC-2250によるサイトカイン放出の阻害を評定した。10人のドナーからのヒトPBMCを、T細胞二重特異性療法薬であるブリナツモマブ(BLINCYTO(商標))の存在下でRamos細胞(ヒトCD19を発現するB細胞株)とともに共培養し、C-2250を添加した。BLINCYTO(商標)を、この共培養系において機能的に活性であることが分かっている100ng/mlの固定濃度で使用して、T細胞に媒介されるCD19+標的細胞(Ramos)への細胞傷害性及びサイトカイン放出応答を誘導した。
【0107】
共培養を37℃にて5%のCO2で24時間行った後に、分析のために細胞培養上清又は組織培養上清を採取した。500μM、1000μM、及び1500μMの濃度でC-2250を使用し、T細胞とともにプレインキュベートさせた後に、BLINCYTO(商標)を添加した。
【0108】
図7は、BLINCYTO(商標)が、全ての試験されたドナーのRamos細胞において標的細胞への細胞傷害性を高めたことを示す。
【0109】
図8は、C-2250が、BLINCYTO(商標)に媒介されるCD19
+腫瘍標的細胞への細胞傷害性を低下させなかったことを示す。
【0110】
図9Aは、試験されたドナーにおけるIL-1βサイトカイン放出に対するBLINCYTO(商標)の効果を示す。
図9Bは、C-2250が、試験されたドナーにおいてBLINCYTO(商標)T細胞に媒介されるIL-1βサイトカイン放出を低減したことを示す。
【0111】
図10Aは、試験されたドナーにおけるIL-2サイトカイン放出に対するBLINCYTO(商標)の効果を示す。
図10Bは、C-2250が、試験されたドナーにおいてBLINCYTO(商標)T細胞に媒介されるIL-2サイトカイン放出を低減したことを示す。
【0112】
図11Aは、試験されたドナーにおけるIL-6サイトカイン放出に対するBLINCYTO(商標)の効果を示す。
図11Bは、C-2250が、試験されたドナーにおいてBLINCYTO(商標)T細胞に媒介されるIL-6サイトカイン放出を低減したことを示す。
【0113】
図12Aは、試験されたドナーにおけるTNF-αサイトカイン放出に対するBLINCYTO(商標)の効果を示す。
図12Bは、C-2250が、試験されたドナーにおいてBLINCYTO(商標)T細胞に媒介されるTNF-αサイトカイン放出を低減したことを示す。
【0114】
図13Aは、試験されたドナーにおけるIFN-γサイトカイン放出に対するBLINCYTO(商標)の効果を示す。
図13Bは、C-2250が、試験されたドナーにおいてBLINCYTO(商標)T細胞に媒介されるIFN-γサイトカイン放出を低減したことを示す。
【0115】
これらの結果により、C-2250が、驚くべきことにBLINCYTO(商標)に媒介されるCD19+腫瘍標的細胞への細胞傷害性の程度を低下させなかったが、試験された全てのサイトカインの放出を低減したことが裏付けられた。
【0116】
図14は、C-2250が、BLINCYTO(商標)の不存在下で腫瘍標的細胞傷害性を高めたことを示す。
【0117】
本開示の主題について、特徴の様々な組合せ及び部分的組合せを含む幾つかの例示的な例を参照してかなり詳細に記載し示したが、当業者は、他の態様並びにその変形形態及び変更形態を、本開示の範囲内に包含されるものとして容易に理解するであろう。さらに、こうした態様、組合せ及び部分的組合せの記載は、請求項に係る主題が、請求項に明示的に列挙されているもの以外の特徴又は特徴の組合せを必要とするということを意味するようには意図されていない。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に包含される全ての変更形態及び変形形態を含むように意図されている。