(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】電鋳ツーリングインサートの加速製造のための方法
(51)【国際特許分類】
C25D 1/10 20060101AFI20241115BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241115BHJP
【FI】
C25D1/10
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2021573405
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(86)【国際出願番号】 US2020037719
(87)【国際公開番号】W WO2020252448
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-16
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517036013
【氏名又は名称】シャークレット テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ストーンバーグ, ライアン ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】バラード, ケビン リー
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-021941(JP,A)
【文献】特開2004-315867(JP,A)
【文献】特開2004-043951(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0329496(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクスチャ加工表面を有するマンドレルを電解槽中に配置することによってシムを成長させることであって、前記シムは、金属の電解堆積によって形成された、前
記テクスチャ加工表面のネガ像を含む、成長させることと、
固定具を使用して、前記シムを作用面を下にして基準面に添着することと、
非作用面の幾何学的形状をリバースエンジニアリングするために前記シムを光学的に走査することであって、前記非作用面の幾何学的形状をリバースエンジニアリングすることは、前記非作用面のプロファイルおよび前記シムの厚さを造成することを含む、走査することと、
前記シムの前記非作用面に材料を、付加製造によって付加して、ツールインサートを形成することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記非作用面を加工することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シムの前記非作用面に材料を付加することは、不良補正
を容易にするために前記シムの厚さを増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シムを光学的に走査する前に、前記シムの応力関連の反りまたは湾曲が低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記光学的な走査は、レーザー走査を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記光学的な走査は、前記シムのデジタルモデルを造成するための非接触3Dレーザーまたは光学走査デバイスを用いて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
基準ターゲットを前記固定具の中心線に対して測定し、その結果、前記シムの真の位置が、前記固定具に対して既知となることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記作用面上の基準ターゲットを基準位置として使用することと、前記シムを、付加製造機の座標系に対してスキュー調整することと、をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記作用面上の基準ターゲットを基準位置として使用することと、付加製造機の座標系を、前記シム上の前記基準ターゲットに対してスキュー調整することと、をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記マンドレルのレプリカを製造するために前記ツールインサートを使用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年6月13日に出願された米国特許出願第62/860,940号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電鋳ツーリングインサートの加速製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
畳み込まれたテクスチャおよび形状を有する表面が、しばしばツーリングインサートとして使用される。電鋳は、複雑な外部形状および内部幾何学的形状を有するツールおよびツーリングインサートを製造するための効率的な方法であることが多い。しかしながら、そのようなプロセスによって製造されたツールおよびツーリングインサートは、電鋳の間の可変堆積速度のために、不均一な厚さを有することが多い。したがって、そのような問題を是正するための迅速な方法を見つけることが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示されるのは、任意選択的なテクスチャ加工表面を有するマンドレルを電解槽中に配置することによってシムを成長させることであって、シムは、金属の電解堆積によって形成された、任意選択的なテクスチャ加工表面のネガ像を含む、成長させることと、固定具を使用して、シムを、作用側を下にして基準面に添着することと、非作用面の幾何学的形状をリバースエンジニアリングするためにシムを光学的に走査することであって、非作用面の幾何学的形状をリバースエンジニアリングすることは、非作用面のプロファイルおよびシムの厚さを造成することを含む、走査することと、シムの非作用面に材料を、付加製造によって付加して、ツールインサートを形成することと、を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】表面のレプリカを大量生成するために使用することができるシムを生成するための例示的なプロセスの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下に説明するプロセスは、高忠実度射出成形、樹脂転写成形、および/またはエンボス加工用途で使用するための電鋳ツールの生成に関連するタイミングおよびコストを実質的に低減する経路を提供する。このプロセスを使用して、熱可塑性および熱硬化性の両方のポリマー生成作業のためのツーリングを作り出すことができる。プロセスは、薄い電鋳体を成長させることと、それを、作用側を下にして基準面に添着することと、任意選択的に、結果として生じる非作用面の幾何学的形状をリバースエンジニアリングするために電鋳面をレーザー走査することと、付加製造に関する問題を解決するために必要であれば表面を加工することと、次いで、プロセスツーリング用途で使用するためにその全体的な厚さを増加させるために、電鋳体の裏面に金属を3D印刷することと、を含む。全体的な厚さを増加させるために、コールドスプレー付加製造、クラッディング、または火炎溶射などの他の付加製造プロセス(または付加製造を含まない製造プロセス)が実施されてもよい。
【0007】
プロセスに3D金属印刷を追加することにより、金型性能を向上させるために、共形、毛管、または従来の冷却チャネルをインサートの本体内に直接印刷し得る。固定具を、他の基板への添着のために、インサートの裏側に3D印刷してもよい。
【0008】
金属シムの電解製造に加えて3D付加印刷を使用すると、付加製造を使用しないプロセスと比較して、電鋳ニッケルインサートを生成するのに使用されるタイミングを最大3日間減らすことができる。現代の3D印刷技術は、最大0.5kg/時(1時間当たりのキログラム)の速度でニッケル合金を堆積させることができる。これは、6インチ×6インチのサイズのインサートを、約5時間で、厚さ0.5インチまで印刷し得ることを意味する。
【0009】
任意選択的なテクスチャ加工表面102を有するマンドレル100を電解槽104中に置いて、表面102上に(本明細書では電鋳体とも称される)金属シム106を生成する図を参照して、方法を本明細書に詳述する。次いで、付加製造を使用して、金属電鋳体106を強化して、強化金属電鋳体108を生成し得る。次いで、強化金属電鋳体108を使用して、大量生成プロセスにおいて他の構成要素を成形し得る。
【0010】
マンドレル100は、1つ以上のテクスチャ加工表面102を有し得るテンプレートである。テクスチャ加工表面102は、任意選択的である。テクスチャ加工表面は、大量生産プロセスで多数の他の表面に再現される必要がある規則的または不規則な特徴部を含み得る。マンドレル102は、電解液中でいかなる寸法変化もなく、電解プロセスで使用することができる任意の導電性材料を含み得る。マンドレルは、金属、導電性セラミック、または導電性ポリマーを含み得る。好適な金属は、銅、鋼、黄銅、青銅、銀、アルミニウムなど、またはこれらの組み合わせである。好適な導電性セラミックとしては、酸化インジウムスズ、酸化アンチモン、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、フッ素ドープ酸化亜鉛RuO2、IrO2、SrRuO3、La0.5Sr0.5CoO3、またはこれらの組み合わせが挙げられる。ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンなどの真性導電性ポリマー、またはそれらの組み合わせもまた、マンドレルに使用することができる。カーボンナノチューブ、カーボンブラック、金属粒子、金属ナノロッドなどの導電性充填剤の添加によって導電性にされる絶縁ポリマーおよび絶縁セラミック、またはそれらの組み合わせも、マンドレルを形成するために使用され得る。
【0011】
次いで、任意選択的なテクスチャ加工表面102を有するマンドレル100は、電解液中に浸漬され、電気めっきを受けて、金属シム106を形成する。金属シム106は、金属シェルとも称される。電気めっき液105は、マンドレル100のテクスチャ加工表面102上に堆積してシムを形成する金属電極103を含む。シムは、一般に電鋳体とも称される。
【0012】
シムを形成するのに好適な金属は、ニッケル、銅、鉄、アルミニウム、亜鉛、金、白金、チタン、ジルコニウム、コバルトなど、またはこれらの組み合わせである。一実施形態では、前述の金属のうちの1つ以上から形成されたシムは、0.015インチ~0.500インチ、好ましくは0.02インチ~0.330インチの公称厚さを有する。好ましい実施形態では、シムは、ニッケルを含み、0.015インチ~0.200インチの厚さを有する。電気めっきプロセスは、1~30日、好ましくは1~10日を要し得る。
【0013】
このシムは、下流プロセスで使用するための空洞の位置への基準を提供する光学的「基準」ターゲットを含む、実際の空洞の周囲の周りの平坦な「サルベージ」領域107を伴って成長する。このサルベージ領域は、本質的に、フランジの最も外側の境界(例えば、最終的に金型分割ラインを形成するマンドレルの平坦な部分)に位置する材料である。それは、シェル上の有効表面を位置決め、クランプ、加工、および保護する目的で使用される。
【0014】
次いで、マンドレルと相補的な表面を有するシムをマンドレルから分離させる。言い換えると、シム106は、任意選択的なテクスチャ加工表面102のネガ像である表面を有する。シムは今、相対的に小さいシムの成長厚の故に、半剛性の形態である。シムは、下流の製造プロセスに耐える強度を欠いているので、テクスチャ加工表面を再現するために、この形態で使用することはできない。
【0015】
シムをいくつかの製造プロセスで使用するのに十分な強さにするために、第2の材料でシムを強化することが望ましい。シムを強化するために、まず、シムを(クランプなどの固定具によって)作用側を下にして平坦な基準面に、真空、固定具、接着剤、または機械的クランプによって添着する。これにより、分析および印刷前に、いかなる応力関連の反りまたは湾曲も部分から引き出される。
【0016】
次いで、固定具およびシムの非作用面を、非接触3Dレーザーを用いてまたは光学走査デバイスを用いて走査して、シムの非作用面上に形成された有機表面のデジタルモデルを造成する。この場合、「有機」という用語は、その幾何学的形状において固有の表面(例えば、雪の結晶など)を記述するために使用される。これらの有機表面はそれぞれ異なり、単純な方法で測定され得、または簡単に定義され得る、信頼性のある幾何学的形状をほとんど有しない。
【0017】
非作用面は、作用面(テクスチャを含み得る表面)に対して反対側に配置されていることに留意されたい。作用面は、マンドレルに接触するシムの表面である。この走査からのデータは、シムの表面幾何学的形状をリバースエンジニアリングするために使用される。このステップの間、光学測定デバイスを使用して可視化される基準ターゲットが、固定具の中心線に対して測定され、その結果、シムの真の位置は、固定具に対して既知となる。言い換えれば、基準ターゲット上の1つ以上の点が、固定具に対するすねの真の位置を決定するための基準点として使用され得る。
【0018】
別の実施形態では、マンドレル上の特定の点に留意することにより、シム上の特定の点をマンドレル上の点に対して測定することによって、シムの真の位置を固定具に対して決定することができる。この方法では、光学デバイスを使用する必要がない場合がある。
【0019】
一実施形態では、シムのレーザー走査は、非作用面の幾何学的形状をリバースエンジニアリングするために行われ、その場合、非作用面の幾何学的形状をリバースエンジニアリングすることは、非作用面のプロファイルおよびシムの厚さを造成することを含む。
【0020】
リバースエンジニアリングされた幾何学的形状は、付加製造技術に問題があり得る領域について分析される。このデータを利用して、コンピュータプログラマは、3D CAD/CAM(コンピュータ支援設計/コンピュータ支援製造)ソフトウェアを使用して、既存のシムの幾何学的形状を、インサートのための所望の最終幾何学的形状と融合させ、最終幾何学的形状を生成するためのCNCプログラムまたは複数のプログラムを出力する。
【0021】
表面の作用側の基準ターゲットは、基準位置として使用され、シム/固定具アセンブリは、付加/除去製造機ツール内に置かれ、機械の座標系に対してスキュー調整される。代替的に、機械の座標系が、部品の場所に一致するようにスキュー調整されてもよい。必要に応じて、不要な材料ストックをシムから取り除くために、加工作業が使用される。要するに、この測定により、電気めっきプロセス中のシム内のいかなる不良も最小化することが容易になる。
【0022】
付加製造ヘッド108を特徴とする同じ工作機械は、次いで、シム上に、(参照番号110によって示されるような)追加材料または任意の他の好適な合金を(最大0.5インチの)実質的な厚さを有する既知の制御された幾何学的形状が達成されるまで3D印刷する。付加製造プロセスによって追加されたこの追加材料110は、支持体と称される。支持体は、シムに均一な厚さを提供する。この増加された厚さは、シムに強度と均一な寸法とを提供し、製造プロセスの間ずっと、特徴部の一貫した再現を可能にする。付加製造プロセスの間、冷却ライン、真空チャネル、および他の表面下ツーリング特徴部(図示せず)などの他の支持構造が、支持体110内に印刷されてもよい。次いで、支持体110を有するシム106は、マンドレル100から分離されて、元のテクスチャ加工表面102のレプリカを大量生成するために使用することができるツーリングインサート112を生成することができる。一実施形態では、マンドレル100は、有機表面のデジタルモデルを造成するために非接触3Dレーザーを用いてまたは光学走査デバイスを用いてシムを走査することを実行する前に、ツーリングインサート112から支持されてもよい。
【0023】
任意選択的に、任意の所望の長さのポストが、シムインサートの裏面から突出するように3D印刷されてもよい。これらは、後で、タップダイまたはねじ切り技術を使用して加工され、正の固定具を形成することができる。これは、電鋳シムの必要な厚さをさらに低減するために利用され得る。シムは、本明細書では電鋳体と称される。
【0024】
インサートの裏側は、ツールベース(すなわち、射出成形機など)内に挿入するために、最終幾何学的形状に仕上げ加工、または研削される。
【0025】
要約すると、本明細書に開示されている方法は、任意選択的なテクスチャ加工表面を有するマンドレルを電解槽中に配置することによってシムを成長させることを含む。シムは、金属の電解堆積によって形成された、(マンドレルの)任意選択的なテクスチャ加工表面のネガ像を含む。次いで、シムは、作用側を下にして基準面上に固定具によって添着され、非作用面は、任意選択的に、非作用面の幾何学的形状をリバースエンジニアリングするために、シムを光学的に走査する。光学走査は、レーザー走査を含み得る。一実施形態では、光学走査は、シムのデジタルモデルを造成するための非接触3Dレーザーまたは光学走査デバイスを用いて実行される。
【0026】
走査は、シム上の基準ターゲットを固定具の中心線に対して測定することをさらに含み、したがって、シムの真の位置は、固定具に対して既知である。
【0027】
非作用面の幾何学的形状をリバースエンジニアリングすることは、非作用面のプロファイルおよびシムの厚さを造成することを含む。次いで、シム内の不良補正を容易にするために、シムの非作用面に材料を追加するための付加製造が行われる。一実施形態では、プロセスツーリング用途で使用するためにその全体的な厚さを増加させるために、金属の3D印刷(付加製造が行われる)が電鋳体の非作用面上に行われる。付加製造プロセスによって追加された材料を有するシムは、インサートと呼ばれる。(付加製造によって追加される)材料は、金属ニッケル、銅、黄銅、鉄、コバルト、アルミニウム、またはこれらの合金であり得る。鋼、炭素鋼、ステンレス鋼などの合金も使用され得る。セラミックおよびポリマーなどの他の材料も、全体的な厚さを増加させるために、またはシムの他の不良を補正するために使用され得る。
【0028】
方法は、付加製造に関するいかなる問題も解決するために、インサートの非作用面を加工することをさらに含む。加工は、ドリル加工、平削り、フライス加工、ラップ研磨、研削、シェービングなど、またはこれらの組み合わせを含み得る。次いで、インサートは、元のマンドレルのレプリカを大量生成するために、他の製造機(例えば、射出成形機、圧縮成形機、ブロー成形機など)で使用され得る。
【0029】
発明は、例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行ってもよいし、等価物が、その要素に置き換えられもよいことが、当業者によって理解されるであろう。さらに、特定の状況または材料を発明の教示に適合させるために、その本質的な範囲から逸脱することなく、多くの改変を行い得る。したがって、発明は、本発明を実施するために企図される最良のモードとして開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、発明は、添付の特許請求の範囲に入るすべての実施形態を含むことが意図される。