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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】計画装置、計画方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/083 20240101AFI20241115BHJP
   B65G 67/60 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G06Q10/083
B65G67/60 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022141219
(22)【出願日】2022-09-06
(65)【公開番号】P2024036764
(43)【公開日】2024-03-18
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伍 偉恒
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祐一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼根 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 栄治
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-305929(JP,A)
【文献】特開2021-169369(JP,A)
【文献】特開2019-131361(JP,A)
【文献】特開2017-030589(JP,A)
【文献】特開平05-002573(JP,A)
【文献】特開昭60-077035(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0145501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B65G 67/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の重心位置と、前記船舶に積載する貨物の輸送先別の数および重量と、前記船舶における貨物を積載可能な空スペースの位置情報と、を取得するデータ取得部と、
前記船舶の重心位置と所望の重心位置との距離が所定の範囲内となることを制約する制約式と、前記貨物の全てを積載することを条件付ける制約式と、所定範囲の前記空スペースに積載する前記貨物の数および重量をそれらの上限値以下に制限する制約式と、を制約条件として設定する制約条件定義部と、
前記所定の範囲に関し、前記船舶の前後方向の前記所定の範囲 を示す前記船舶の重心位置と前記所望の重心位置との前記前後方向の距離を算出する第1の計算式と、前記船舶の左右方向の前記所定の範囲 を示す前記船舶の重心位置と前記所望の重心位置との前記左右方向の距離を算出する第2の計算式と、の加重和を目的関数として設定する目的関数定義部と、
前記制約条件を満たしつつ、前記目的関数を最小化するような前記貨物を積載する前記空スペースの範囲を前記輸送先別に計算する最適化計算部と、
を備える計画装置。
【請求項2】
前記目的関数定義部は、前記輸送先別の前記貨物を積載する前記空スペースが占める前記船舶における前後方向の範囲を算出する第3の計算式と、前記第1の計算式と、前記第2の計算式との加重和を前記目的関数として設定する、
請求項1に記載の計画装置。
【請求項3】
前記制約条件定義部は、1つの前記輸送先の前記貨物を積載する前記空スペースが占める前記船舶における前後方向の範囲を制限する制約式と、1つの前記輸送先の前記貨物を積載する前記空スペースが占める前記船舶における左右方向の範囲を制限する制約式と、所定範囲の前記空スペースに積載可能な前記輸送先の数を制限する制約式と、をさらに前記制約条件として設定する、
請求項1又は請求項2に記載の計画装置。
【請求項4】
前記空スペースは、前記船舶の前後方向の位置、左右方向の位置、上下方向の位置によって定義され、
前記最適化計算部は、前記船舶の前後方向の位置および左右方向の位置によって定義される前記空スペースの範囲に積載する前記貨物の数を計算する、
請求項1又は請求項2に記載の計画装置。
【請求項5】
前記船舶の重心位置と前記所望の重心位置との距離が所定の範囲内となることを制約する制約式は、前記船舶の重心位置が前記所望の重心位置から前方向にずれる距離が所定の第1範囲内となることを制約する制約式と、前記船舶の重心位置が前記所望の重心位置から後ろ方向にずれる距離が所定の第2範囲内となることを制約する制約式と、前記船舶の重心位置が前記所望の重心位置から左方向にずれる距離が所定の第3範囲内となることを制約する制約式と、前記船舶の重心位置が前記所望の重心位置から右方向にずれる距離が所定の第4範囲内となることを制約する制約式と、を含み、
前記第1の計算式は、前記第1範囲と、前記第2範囲と、に基づいて前記船舶の前後方向の前記所定の範囲 を算出し、前記第2の計算式は、前記第3範囲と、前記第4範囲とに基づいて前記船舶の左右方向の前記所定の範囲を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の計画装置。
【請求項6】
コンピュータによって実行される計画方法であって、
前記コンピュータが、船舶の重心位置と、前記船舶に積載する貨物の輸送先別の数および重量と、前記船舶における貨物を積載可能な空スペースの位置情報と、を取得するステップと、
前記コンピュータが、前記船舶の重心位置と所望の重心位置との距離が所定の範囲内となることを制約する制約式と、前記貨物の全てを積載することを条件付ける制約式と、所定範囲の前記空スペースに積載する前記貨物の数および重量をそれらの上限値以下に制限する制約式と、を制約条件として設定するステップと、
前記コンピュータが、前記所定の範囲に関し、前記船舶の前後方向の前記所定の範囲を示す前記船舶の重心位置と前記所望の重心位置との前記前後方向の距離を算出する第1の計算式と、前記船舶の左右方向の前記所定の範囲を示す前記船舶の重心位置と前記所望の重心位置との前記左右方向の距離を算出する第2の計算式と、の加重和を目的関数として設定するステップと、
前記コンピュータが、前記制約条件を満たしつつ、前記目的関数を最小化するような前記貨物を積載する前記空スペースの範囲を前記輸送先別に計算するステップと、
を有する計画方法。
【請求項7】
コンピュータに、
船舶の重心位置と、前記船舶に積載する貨物の輸送先別の数および重量と、前記船舶における貨物を積載可能な空スペースの位置情報と、を取得するステップと、
前記船舶の重心位置と所望の重心位置との距離が所定の範囲内となることを制約する制約式と、前記輸送先別の前記貨物の全てを積載することを条件付ける制約式と、所定範囲の前記空スペースに積載する前記貨物の数および重量をそれらの上限値以下に制限する制約式と、を制約条件として設定するステップと、
前記所定の範囲に関し、前記船舶の前後方向の前記所定の範囲を示す前記船舶の重心位置と前記所望の重心位置との前記前後方向の距離を算出する第1の計算式と、前記船舶の左右方向の前記所定の範囲を示す前記船舶の重心位置と前記所望の重心位置との前記左右方向の距離を算出する第2の計算式と、の加重和を目的関数として設定するステップと、
前記制約条件を満たしつつ、前記目的関数を最小化するような前記貨物を積載する前記空スペースの範囲を前記輸送先別に計算するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計画装置、計画方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
港湾では、ガントリークレーンでコンテナ等の貨物を船舶に積載する作業が行われる。船舶の限られたスペースに効率よく貨物を配置するためには、様々な条件を考慮して、どの貨物を船体のどのエリアに格納するかを定めた船積み計画を作成する必要があり、従来から様々な手法が提案されている。例えば、特許文献1には、数理計画法によって船積み計画を作成する方法が開示されている。また、特許文献2には、船舶の貨物収納部の構造をノードとアークのグラフ構造によってモデル化し、このモデルを使って、貨物の積み方の初期解を作成し、全ての貨物を積むことができる、必要時に対象貨物を搬出することができるといった観点から初期解の改善を繰り返すことにより、望ましい船積み計画を作成する方法が開示されている。
【0003】
ところで、積載する貨物の分布により船舶の重心位置は変化する。船舶の重心位置を適切に管理しなければ、安全面や効率面に影響が及ぶ。従って、船舶に貨物を積み込んだときの船体の重心バランスを考慮して船積み計画を作成する必要がある。特許文献1、2には、この点についての言及がない。
【0004】
また、実際の船積み計画の作成にあたっては、具体的にどの貨物をどのエリアに積むかを厳密に計画する前に、貨物の行先ごとに、同じ行先の貨物を積載する大まかな範囲を計画する、いわゆる“積み枠取り”が実施される。具体的な貨物の配置を決定する船積み計画は、積み枠取り計画の結果を利用して行われる為、積み枠取りを計画する段階で、船体の重心バランスを考慮した計画の作成が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-247219号公報
【文献】特開2003-173366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
船体の重心バランスを考慮した積み枠取り計画を作成する方法が必要とされている。
【0007】
本開示は、上記課題を解決することができる計画装置、計画方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の計画装置は、船舶の重心位置と、前記船舶に積載する貨物の輸送先別の数および重量と、前記船舶における貨物を積載可能な空スペースの位置情報と、を取得するデータ取得部と、前記船舶の重心位置と所望の重心位置との距離が所定の範囲内となることを制約する制約式と、前記貨物の全てを積載することを条件付ける制約式と、所定範囲の前記空スペースに積載する前記貨物の数および重量をそれらの上限値以下に制限する制約式と、を制約条件として設定する制約条件定義部と、前記所定の範囲に関し、前記船舶の前後方向の前記所定の範囲 を示す前記船舶の重心位置と前記所望の重心位置との前記前後方向の距離を算出する第1の計算式と、前記船舶の左右方向の前記所定の範囲 を示す前記船舶の重心位置と前記所望の重心位置との前記左右方向の距離を算出する第2の計算式と、の加重和を目的関数として設定する目的関数定義部と、前記制約条件を満たしつつ、前記目的関数を最小化するような前記貨物を積載する前記空スペースの範囲を前記輸送先別に計算する最適化計算部と、を備える。
【0009】
本開示の計画方法は、コンピュータによって実行される計画方法であって、前記コンピュータが、船舶の重心位置と、前記船舶に積載する貨物の輸送先別の数および重量と、前記船舶における貨物を積載可能な空スペースの位置情報と、を取得するステップと、前記コンピュータが、前記船舶の重心位置と所望の重心位置との距離が所定の範囲内となることを制約する制約式と、前記貨物の全てを積載することを条件付ける制約式と、所定範囲の前記空スペースに積載する前記貨物の数および重量をそれらの上限値以下に制限する制約式と、を制約条件として設定するステップと、前記コンピュータが、前記所定の範囲に関し、前記船舶の前後方向の前記所定の範囲を示す前記船舶の重心位置と前記所望の重心位置との前記前後方向の距離を算出する第1の計算式と、前記船舶の左右方向の前記所定の範囲を示す前記船舶の重心位置と前記所望の重心位置との前記左右方向の距離を算出する第2の計算式と、の加重和を目的関数として設定するステップと、前記コンピュータが、前記制約条件を満たしつつ、前記目的関数を最小化するような前記貨物を積載する前記空スペースの範囲を前記輸送先別に計算するステップと、を有する。
【0010】
また、本開示のプログラムは、船舶の重心位置と、前記船舶に積載する貨物の輸送先別の数および重量と、前記船舶における貨物を積載可能な空スペースの位置情報と、を取得するステップと、前記船舶の重心位置と所望の重心位置との距離が所定の範囲内となることを制約する制約式と、前記貨物の全てを積載することを条件付ける制約式と、所定範囲の前記空スペースに積載する前記貨物の数および重量をそれらの上限値以下に制限する制約式と、を制約条件として設定するステップと、前記所定の範囲に関し、前記船舶の前後方向の前記所定の範囲を示す前記船舶の重心位置と前記所望の重心位置との前記前後方向の距離を算出する第1の計算式と、前記船舶の左右方向の前記所定の範囲を示す前記船舶の重心位置と前記所望の重心位置との前記左右方向の距離を算出する第2の計算式と、の加重和を目的関数として設定するステップと、前記制約条件を満たしつつ、前記目的関数を最小化するような前記貨物を積載する前記空スペースの範囲を前記輸送先別に計算するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上述の計画装置、計画方法及びプログラムによれば、船体の重心バランスを考慮した積み枠取りの計画(貨物の輸送先別の積載範囲を計画)を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る計画装置の一例を示すブロック図である。
図2A】船体における貨物の積載領域について説明する第1の図である。
図2B】船体における貨物の積載領域について説明する第2の図である。
図3】実施形態に係る計画作成処理の入力情報の一例を示す図である。
図4】実施形態に係る計画作成処理の変数の一例を示す図である。
図5A】実施形態に係る計画作成処理の制約条件の一例を示す第1の図である。
図5B】実施形態に係る計画作成処理の制約条件の一例を示す第2の図である。
図6】実施形態に係る計画作成処理の目的関数の一例を示す図である。
図7】実施形態に係る計画作成処理の一例を示すフローチャートである。
図8】実施形態に係る計画装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、本開示の積み枠取りの計画方法について図面を参照して説明する。
(概要)
図1は、実施形態に係る計画装置の一例を示すブロック図である。図2A図2Bは、それぞれ、船体における貨物の積載領域について説明する第1の図、第2の図である。
計画装置10は、コンピュータによって構成され、貨物の行先に応じて、貨物を船舶1のどの範囲に積載するかを算出する。例えば、船舶1が、港Aで貨物を積んで、港B、港C、港Dの順に航行し、港B~Dの各々にて港Aで積んだ貨物の一部ずつを降ろしつつ、港B~Dでも別の貨物を積んで他の港まで輸送するような輸送計画がある場合、一般に、港B行きの貨物をある範囲(例えば、図2A図2Bに示す範囲H1)にまとめて積載し、港C行きの貨物は他の範囲(例えば、図2A図2Bに示す範囲H2)にまとめて積載するといったことが行われる。計画装置10は、行先別の貨物の積載範囲を算出する。
【0014】
図2Aに船舶1の平面図を示す。図2Aに示す矩形の各セルは、貨物を積載するための単位空間である。コンテナに収容できない大きさ、形状、性質を有する等の特殊なものを除いて、一般に貨物は、コンテナに入れて船積みされるため、以下、コンテナを各セルに積載するものとして説明を行う。各セルには、1つのコンテナを積載することができる。船舶1の前後方向をBayと呼び、船舶1の左右方向をRowと呼ぶ。Bay方向、Row方向をそれぞれセルの大きさ毎に区切り、あるセルを基準とすると、各セルの水平方向の位置は、基準としたセルから何番目に位置するかで表すことができる。例えば、図2Aの左上端のセルを基準とし、各セルを(Row番号,Bay番号)のように表すと(Row番号とは、基準のセルからRow方向に何個目のセルかを表す。Bayについても同様であり、後述するTierについても同様とする。)、基準となる左上端のセルは(1、1)となり、右上のセルは(7、1)と表すことができる。また、左上端のセルの1つ下(後ろ)のセルは(1、2)と表すことができる。
【0015】
図2Bに船舶1の断面図を示す。図2Bに示す矩形の領域は、図2Aで説明したセルである。船舶1の上下方向をTierと呼ぶ。貨物の積載領域をTier方向にセルの大きさ毎に区切り、あるセルを基準とすると、各セルの上下方向の位置は、基準としたセルから何番目に位置するか(Tier番号)で表すことができる。上記のBay番号、Row番号とTier番号により各セルの位置(ロケーション)を表すことができる。例えば、図2Bが1番目のBayの断面図であるとし、一番下側のセルをTier方向の基準(Tier番号=1)とすると、図2Bの左上端のセルのロケーションは(1、1、6)、右上端のセルのロケーションは(7、1、6)と表すことができる。
【0016】
計画装置10は、例えば、港Aで貨物を積む貨物の積載範囲について、Row番号とBay番号で規定される貨物の積載範囲について、その範囲に貨物を積むか積まないか、積む場合には(上下方向に)何個の貨物を積むかを、どのように荷物を配置すれば、船体の重心バランスを適切な範囲に保つことができるかを考慮しながら、行先別に算出する。
【0017】
(構成)
図1に示すように、計画装置10は、データ取得部11と、入力受付部12と、制御部13と、出力部14と、記憶部15とを備える。
データ取得部11は、船舶1の構造、既に積載済みの貨物、貨物の輸送先、貨物の重量、など積み枠取り計画作成に必要な情報を取得し、取得した情報を記憶部15に保存するとともに、取得した情報を後述する最適化計算で扱えるように整形する機能を備える。
入力受付部12は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置を用いて入力された、処理の実行を指示する指示情報などを受け付ける。入力受付部12は、受け付けた指示情報等を制御部13へ出力する。
【0018】
制御部13は、船舶1へ積載する貨物の輸送先別の積み枠取りを計画する処理の実行制御を行う。制御部13は、制約条件定義部131と、目的関数定義部132と、最適化計算部133と、を備える。
制約条件定義部131は、データ取得部11が取得した情報に基づいて、貨物の積載が可能なセル(空スペース)、セル毎の積載可能重量、船舶1の重心が適切な範囲に収まること、など制約条件を定義する機能を備える。
目的関数定義部132は、データ取得部11が取得した情報に基づいて、貨物を船舶1へ積載するために用いるガントリークレーンなど荷役機器の作業効率の最大化、船舶1のバランス最良化、などの事項を含む目的関数を定義する機能を備える。
最適化計算部133は、制約条件定義部131で定義した制約条件を遵守し、目的関数定義部132で定義した目的関数を最適化する機能を備える。最適化計算部133は、例えば、数理最適化ソルバーである。
【0019】
出力部14は、各種の情報、例えば、作成した積み枠取り計画等を表示装置や電子ファイルへ出力する。
記憶部15は、データ取得部が取得した情報、処理中のデータなどを記憶する。
【0020】
(積み枠取り計画の作成に必要な入力情報)
図3に実施形態に係る計画作成処理の入力情報の一例を示す。データ取得部11は、図3に例示する情報を積み枠取り計画の作成に必要な入力情報として取得する。例えば、データ取得部11は、船舶1の前後方向の中心に位置するBayの番号(CBC)、Bay番号bのRow番号rが有するTier方向の空きセル数(CTbr)、寄港地dを行先とする積載するコンテナの数(CL)、Bay番号bのRow番号rに積載可能なコンテナ重量の上限値(CWMbr)、積載予定コンテナのうち、寄港地dを行先とするものの平均重量(CWA)、Bay番号bのRow番号rのTier番号tに既に積載されているコンテナの重量(CWSbrt)、Bay番号bが有するRowのうち、寄港地dを行先とするコンテナのために使うRow数の上限値(CRLbd)、Bay番号bのRow番号rに積まれるコンテナの行き先寄港地数の上限値(CDLbd)、寄港地dを行先とするコンテナを積むBay数の上限値(CBL)、視界を確保するために船舶1の重心を中心よりどれ程前に置くかを示す値(CBbias)などを取得する。データ取得部11は、これらの情報を入力情報として記憶部15に保存する。
【0021】
(変数)
図4に、実施形態に係る計画作成処理の変数の一例を示す。最適化計算部133は、後述する積み枠取り計画の最適化計算を行って、図4に例示する変数VXbrd、VYbrd、VYdbの最適値を算出する。変数VXbrdは、Bay番号bのRow番号rに積載する、寄港地dを行先とするコンテナの本数を表す。変数VYbrdは、Bay番号bのRow番号rに、寄港地dを行先とするコンテナを積むか、又は、積まないかを示す変数である。変数VYdbは、Bay番号bに寄港地dを行先とするコンテナを積むか、又は、積まないかを示す変数である。
【0022】
また、図示を省略するが、船舶1の重心バランスに関する変数OB1~OB4を用意する。OB1は、理想とする船舶1の重心位置から前方向へ重心がずれた場合の重心位置までの距離を表す変数である。OB2は、理想とする船舶1の重心位置から後ろ方向へ重心がずれた場合の重心位置までの距離を表す変数である。OB3は、理想とする船舶1の重心位置から左方向へ重心がずれた場合の重心位置までの距離を表す変数である。OB4は、理想とする船舶1の重心位置から右方向へ重心がずれた場合の重心位置までの距離を表す変数である。
【0023】
(制約条件)
図5A図5Bに、実施形態に係る計画作成処理の制約条件の一例を示す。制約条件定義部131は、最適化計算部133による積み枠取り計画の最適化計算に先立って、図5A~5Bに例示する制約条件を設定する。
【0024】
例えば、船舶1の構造に関する制約条件として、以下の(1)~(4)の制約条件が設定される。
(1)各Bayに、Row数の上限を設ける。この制約条件は、図5Aの制約式(a1)で表すことができる。制約式(a1)によって、変数VYbrdと変数VYbdの関係を定める。
(2)各Bay各Rowに、Tier数の上限を設ける。この制約条件は、図5Aの制約式(a2)で表すことができる。制約式(a2)によって、変数VXbrdと変数VYbrdの関係を定める。
(3)各Bay各Rowに、ある1箇所の寄港地行きのコンテナを空きTier数を超えて積むことができない。この制約条件は、図5Aの制約式(a3)で表すことができる。
(4)各Bay各Rowに、所定の重量制限を越えてコンテナを積むことができない。この制約条件は、図5Aの制約式(a4)で表すことができる。
【0025】
例えば、積み枠取り計画の計画者(プランナー)の経験に基づいて、以下の(5)~(7)の制約条件が設定される。
(5)1箇所の寄港地行きのコンテナは、多くても一定数以内のBayに積む。この制約条件は、図5Aの制約式(a5)で表すことができる。
(6)1箇所の寄港地行きのコンテナは、1Bay内には多くても一定数以内のRowにのみ積む。この制約条件は、図5Aの制約式(a6)で表すことができる。
(7)各Bay各Rowには、多くても一定数以内の寄港地行きのコンテナのみを積む。この制約条件は、図5Aの制約式(a7)で表すことができる。
【0026】
例えば、船舶1に積載するコンテナに関する要求として、以下の(8)の制約条件が設定される。
(8)全ての寄港地dについて、積載予定の全てのコンテナを船舶1に積む。この制約条件は、図5Bの制約式(a8)で表すことができる。
【0027】
例えば、船舶1の重心バランスに関して、以下の(9)~(12)の制約条件が設定される。
(9)重心が前後方向の中心から前へずれる距離(コンテナ本数)が変数OB1を超えない。この制約条件は、図5Bの制約式(a9)で表すことができる。
(10)重心が前後方向の中心から後ろへずれる距離(コンテナ本数)が変数OB2を超えない。この制約条件は、図5Bの制約式(a10)で表すことができる。
(11)重心が左右方向の中心から左へずれる距離(コンテナ本数)が変数OB3を超えない。この制約条件は、図5Bの制約式(a11)で表すことができる。
(12)重心が左右方向の中心から右へずれる距離(コンテナ本数)が変数OB4を超えない。この制約条件は、図5Bの制約式(a12)で表すことができる。
なお、変数OB1~OB4については、後述する目的関数で最適化される。
【0028】
(目的関数)
図6に、実施形態に係る計画作成処理の目的関数の一例を示す。目的関数定義部132は、最適化計算部133による積み枠取り計画の最適化計算に先立って、図6に例示する式(b1)~(b3)によって構成される目的関数を設定する。目的関数は、例えば以下の式(c1)によって設定される。
目的関数:式(b1)+式(b2)+式(b3)・・・(c1)
【0029】
式(b1)は、ガントリークレーン(物流機械)の効率化のための式である。船舶1は、船体側面を陸に接舷して停泊し、ガントリークレーンは船舶1の前後方向(Bay方向)に移動しながら船舶1へコンテナを積む。ここで、ガントリークレーンのBay方向の移動は、動力エネルギーおよび移動時間の観点からなるべく最小化することが望ましい。実際のガントリークレーンの移動量と利用するBayの数の関係は、何台のガントリークレーンを利用して積み揚げの作業を行うかにも依るが、利用するBayの数を少なくすれば、ガントリークレーンの移動量の低減に寄与すると考えられる。式(b1)は、重みWと利用Bay数(変数VYbd)の積である。目的関数を最小化するような最適化計算により、利用Bay数を極力少なくすることを目指す。
【0030】
式(b2)は、前後方向の重心をなるべく理想の重心位置に近づけるための式である。式(b3)は、左右方向の重心をなるべく理想の重心位置に近づけるための式である。但し、重みWb1、Wb2、Wb3を適切に設定することにより、重心位置を所望の位置に調整することができる。
【0031】
最適化計算部133は、式(c1)で表される目的関数の値を最小化するような変数VXbrd、VYbrd、VYbdを算出する。
【0032】
(動作)
次に本実施形態の積み枠取り計画の作成処理の流れを説明する。
図7は、実施形態に係る計画作成処理の一例を示すフローチャートである。
最初にデータ取得部11が、図3にて例示した各種データや目的関数の重み係数Wb、Wb1、Wb2、Wb3の値などの入力データを取得する(ステップS1)。Wb1、Wb2、Wb3の各値は、船舶1の重心バランス維持、視界確保、加速容易の観点から適切に設定される。データ取得部11は、取得した各種のデータを記憶部15に書き込んで保存する。
【0033】
次にユーザが、計画装置10に対して、積み枠取り計画の作成を指示する操作を行う。入力受付部12は、この指示操作を受け付け、積み枠取り計画作成処理の実行を制御部13に指示する。すると、制御部13が、制約条件定義部131、目的関数定義部132、最適化計算部133を用いて以下の処理を実行する。
まず、制約条件定義部131が、制約条件を設定する(ステップS2)。制約条件定義部131は、図5A図5Bにて例示した制約式を制約条件として設定する。
次に、目的関数定義部132が、目的関数を設定する(ステップS3)。目的関数定義部132は、ステップS1にて記憶部15に保存された重み係数W、Wb1、Wb2、Wb3を記憶部15から読み出して、目的関数を設定する。
【0034】
次に、最適化計算部133が、積み枠取り計画を最適化する計算を行う(ステップS4)。ここで、最適化計算部133は、最適化問題を解くソルバーである。最適化計算部133は、ステップS2で設定された制約条件と、ステップS3で設定された目的関数によって定式化される最適化問題を解いて、ステップS2で設定された制約条件を満たしつつ、ステップS3で設定された目的関数の値を最小化する変数VXbrd、変数VYbrd、変数VYdbを算出する。例えば、重み係数Wが0の場合であれば、重心が、図6の式(b2)+式(b3)が最小となるような変数VXbrd、変数VYbrd、変数VYdbを算出する。
【0035】
次に出力部14が作成した計画を出力する(ステップS5)。例えば、出力部14は、図2A図2Bに例示した船体のイメージ上に、コンテナを積載すべき範囲(BayとRowの範囲)を表示する。
【0036】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、船体の重心バランスを考慮した積み枠取り計画を作成することができる。さらに、船体の重心バランスを最適化することに加え、ガントリークレーンの稼働を効率化するような積み枠取り計画を作成することができる。
【0037】
図8は、実施形態に係る計画装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の計画装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0038】
なお、計画装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0039】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0040】
<付記>
各実施形態に記載の計画装置、計画方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0041】
(1)第1の態様に係る計画装置10は、船舶の重心位置と、前記船舶に積載する貨物の輸送先別の数および重量と、前記船舶における貨物を積載可能な空スペースの位置情報と、を取得するデータ取得部と、前記船舶の重心位置と所望の重心位置との距離が所定の範囲内となることを制約する制約式と、前記貨物の全てを積載することを条件付ける制約式と、所定範囲の前記空スペースに積載する前記貨物の数および重量をそれらの上限値以下に制限する制約式と、を制約条件として設定する制約条件定義部と、前記所定の範囲の大きさを目的関数として設定する目的関数定義部と、前記制約条件を満たしつつ、前記目的関数を最小化するような前記貨物を積載する前記空スペースの範囲を前記輸送先別に計算する最適化計算部と、を備える。
これにより、船体の重心バランスを考慮した積み枠取りの計画を作成することができる。
【0042】
(2)第2の態様に係る計画装置10は、(1)の計画装置であって、前記目的関数定義部は、さらに、前記輸送先別の前記貨物を積載する前記空スペースが占める前記船舶における前後方向の範囲の大きさを目的関数として設定する。
これにより、貨物を積載する空スペースの範囲を狭めることができる。積載対象の空スペースの範囲を狭めることにより、ガントリークレーンの走行範囲を狭め、荷役作業を効率化することができる。
【0043】
(3)第3の態様に係る計画装置10は、(1)~(2)の計画装置であって、前記制約条件定義部は、1つの前記輸送先の前記貨物を積載する前記空スペースが占める前記船舶における前後方向の範囲を制限する制約式と、1つの前記輸送先の前記貨物を積載する前記空スペースが占める前記船舶における左右方向の範囲を制限する制約式と、所定範囲の前記空スペースに積載可能な前記輸送先の数を制限する制約式と、をさらに前記制約条件として設定する。
積み枠取り計画の経験者から得られた知見を制約条件に組み入れることで、最適な計画を作成することができる。
【0044】
(4)第4の態様に係る計画装置10は、(1)~(3)の計画装置であって、前記空スペースは、前記船舶の前後方向の位置、左右方向の位置、上下方向の位置によって定義され、前記最適化計算部は、前記船舶の前後方向の位置および左右方向の位置によって定義される前記空スペースの範囲に積載する前記貨物の数を計算する。
これにより、Bay、Row、Tierで規定される各セルに具体的にどの貨物を積むかではなく、BayとRowによって規定される領域に何個の貨物を積むかを算出できる。
【0045】
(5)第5の態様に係る計画装置10は、(1)~(4)の計画装置であって、前記船舶の重心位置と所望の重心位置との距離が所定の範囲内となることを制約する制約式は、前記船舶の重心位置が前記所望の重心位置から前方向にずれた距離が所定の第1範囲内となることを制約する制約式と、前記船舶の重心位置が前記所望の重心位置から後ろ方向にずれた距離が所定の第2範囲内となることを制約する制約式と、前記船舶の重心位置が前記所望の重心位置から左方向にずれた距離が所定の第3範囲内となることを制約する制約式と、前記船舶の重心位置が前記所望の重心位置から右方向にずれた距離が所定の第4範囲内となることを制約する制約式とを含み、前記目的関数は、前記第1範囲と、前記第2範囲と、前記第3範囲と、前記第4範囲とに基づいて前記所定の範囲の大きさを算出する。
これにより、重心バランスの前方向のずれ、後ろ方向のずれ、左右方向のずれを調整した積み枠取り計画を作成することができる。
【0046】
(6)第6の態様に係る計画方法は、船舶の重心位置と、前記船舶に積載する貨物の輸送先別の数および重量と、前記船舶における貨物を積載可能な空スペースの位置情報と、を取得するステップと、前記船舶の重心位置と所望の重心位置との距離が所定の範囲内となることを制約する制約式と、前記貨物の全てを積載することを条件付ける制約式と、所定範囲の前記空スペースに積載する前記貨物の数および重量をそれらの上限値以下に制限する制約式と、を制約条件として設定するステップと、前記所定の範囲の大きさを目的関数として設定するステップと、前記制約条件を満たしつつ、前記目的関数を最小化するような前記貨物を積載する前記空スペースの範囲を前記輸送先別に計算するステップと、を有する。
【0047】
(7)第7の態様に係るプログラムは、コンピュータ900に、船舶の重心位置と、前記船舶に積載する貨物の輸送先別の数および重量と、前記船舶における貨物を積載可能な空スペースの位置情報と、を取得するステップと、前記船舶の重心位置と所望の重心位置との距離が所定の範囲内となることを制約する制約式と、前記貨物の全てを積載することを条件付ける制約式と、所定範囲の前記空スペースに積載する前記貨物の数および重量をそれらの上限値以下に制限する制約式と、を制約条件として設定するステップと、前記所定の範囲の大きさを目的関数として設定するステップと、前記制約条件を満たしつつ、前記目的関数を最小化するような前記貨物を積載する前記空スペースの範囲を前記輸送先別に計算するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・船舶
10・・・計画装置
11・・・データ取得部
12・・・入力受付部
13・・・制御部
131・・・制約条件定義部
132・・・目的関数定義部
133・・・最適化計算部
14・・・出力部
15・・・記憶部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8