(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ポリ乳酸ポリマーとポリ酢酸ビニルポリマーと可塑剤とを含む組成物及びフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20241115BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20241115BHJP
C08L 31/04 20060101ALI20241115BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20241115BHJP
【FI】
C08J5/18 CER
C08J5/18 CFD
C08L67/04 ZBP
C08L31/04
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2022164470
(22)【出願日】2022-10-13
(62)【分割の表示】P 2020180984の分割
【原出願日】2015-12-14
【審査請求日】2022-11-11
(32)【優先日】2014-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ニン
(72)【発明者】
【氏名】クロウ,ロバート エス.
(72)【発明者】
【氏名】デーン,デレク ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】カリシュ,ジェフリー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】メリル,ウィリアム ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】レワンドウスキー,ケビン エム.
(72)【発明者】
【氏名】チャクラヴァーティー,ジャヤント
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-006615(JP,A)
【文献】特開平09-151310(JP,A)
【文献】特表平07-504227(JP,A)
【文献】国際公開第2010/055903(WO,A1)
【文献】特表2012-530724(JP,A)
【文献】特開2011-136428(JP,A)
【文献】特表平04-504731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C08L 67/04
C08L 31/04
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半結晶性ポリ乳酸ポリマーと、
少なくとも25℃のTgを有するポリ酢酸ビニルポリマーと、
多官能性エステル又は多官能性エーテルを含む可塑剤と、
場合により含まれる非結晶性ポリ乳酸ポリマーと、
を含む組成物を含み、
前記ポリ酢酸ビニルポリマーは、ポリ乳酸ポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー及び可塑剤の総量を基準として、10~50wt%の範囲の量で存在し、
前記可塑剤は、ポリ乳酸ポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー及び可塑剤の総量を基準として、5~35wt%の範囲の量で存在し、
前記組成物は、80℃で24時間老化させた場合に可塑剤移行を示さない、
フィルム。
【請求項2】
前記可塑剤が、
アルキル
若しくは脂肪族エステル基又はエーテル基を含み、且つC
2~C
10の炭素鎖長を有する直鎖又は分枝アルキル末端基を更に含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記ポリ酢酸ビニルポリマーは、75,000g/mol~500,000g/molの範囲の分子量を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記ポリ酢酸ビニルポリマーが20℃で10%酢酸エチル溶液中に溶解される場合に、前記ポリ酢酸ビニルポリマーは10~50mPa
*sの範囲の粘度を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記ポリ乳酸ポリマーは、ポリ乳酸ポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー及び可塑剤の総量を基準として、40~80wt%の範囲の量で存在する、請求項1~
4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記ポリ乳酸ポリマーは、210℃で25g/min以下のメルトフローレートを有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記ポリ乳酸ポリマーは、50~65℃の範囲のTgを有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
前記フィルムは、50MPa~700MPaの引張弾性率を有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
前記フィルムは、動的粘弾性測定により決定される引張貯蔵弾性率が、2℃/minの速度で加熱される場合、-40℃~125℃の温度範囲で少なくとも10MPaである、請求項1~
8のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルムは、動的粘弾性測定により決定される引張貯蔵弾性率が、2℃/minの速度で加熱される場合、25℃~80℃の温度範囲で少なくとも5MPaである、請求項1~
9のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
抗酸化剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、又は顔料をさらに含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
50%~600%の引張伸びを有する、請求項1~
11のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
少なくとも150%
の引張伸びを有する、請求項
12に記載のフィルム。
【請求項14】
少なくとも200MPa
の引張弾性率を有する
、請求項1~
13のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか一項に記載のフィルムと、前記フィルム上に配置された感圧性接着剤の層と、を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(概要)
一実施形態では、半結晶性ポリ乳酸ポリマーと、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するポリ酢酸ビニルポリマーと、可塑剤と、場合により含まれる非結晶性ポリ乳酸ポリマーと、を含む組成物が記載される。
【0002】
別の実施形態では、半結晶性ポリ乳酸ポリマーと、少なくとも25℃のTgを有するポリ酢酸ビニルポリマーと、可塑剤と、核剤と、場合により含まれる非結晶性ポリ乳酸ポリマーとを含む組成物が記載される。
【0003】
いくつかの実施形態では、ポリ酢酸ビニルポリマーは、ポリ乳酸ポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー及び可塑剤の総量を基準として、少なくとも15又は20wt%の量で存在する。いくつかの実施形態では、可塑剤は、ポリ乳酸ポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー及び可塑剤の総量を基準として、5~35wt%の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、半結晶性ポリ乳酸ポリマーは、少なくとも90wt%のL-ラクチド重合単位並びに10、9、8、7、6、5、4、3、又は2wt%未満のD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチドを含む。好ましい実施形態では、組成物は、10、11、12、13、14、又は15J/gより大きく、かつ40J/g未満の、2回目の加熱走査での正味の融解吸熱量であるΔHnm2を有する。更に、組成物は、好ましくは30℃、25℃又は20℃未満のTgを有する。
【0004】
別の実施形態では、そのような組成物を含むフィルムが記載される。フィルムは、好ましくは、10、11、12、13、14、又は15J/gより大きく、かつ40J/g未満の、1回目の加熱走査での正味の融解吸熱量であるΔHnm1を有する。更に、フィルムは、好ましくは30℃、25℃又は20℃未満のTgを有する。
【0005】
別の実施形態では、本明細書に記載のフィルムとフィルム上に配置された感圧性接着剤の層とを含む、テープ又はシートなどの物品が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】冷却中にシャープな結晶化ピーク発熱を示す核剤を含む組成物の代表的なDSCプロファイルである。
【
図2】冷却中に結晶化ピーク発熱を示さなかった核剤を含まない組成物の代表的なDSCプロファイルである。
【
図3】実施例12の動的粘弾性測定結果を示す図である。
【
図4】実施例16の動的粘弾性測定結果を示す図である。
【発明の概要】
【0007】
(詳細な説明)
本明細書に記載の組成物は、ポリ乳酸(「PLA」)ポリマーを含む。乳酸は、コーンスターチ又は甘蔗糖の細菌発酵によって得られる再生可能原料であり、よって天然の、又は言い換えれば「バイオマス」材料と考えられる。乳酸は、以下に示す、L-乳酸((S)-乳酸としても知られる)及びD-乳酸((R)-乳酸としても知られる)の2種類の光学異性体を有する:
【化1】
【0008】
乳酸のポリエステル重縮合によりポリ乳酸ポリマーが生成する。
【0009】
より一般的には、乳酸は通常、以下に示すように、環状ラクチドモノマーに変換され、ラクチドは開環重合される:
【化2】
【0010】
結果として得られるポリマー材料は、一般にポリラクチドポリマーと呼ばれる。
【0011】
結晶化度、よって多くの重要な特性は、使用されるL環状ラクチドモノマーに対するD及び/又はメソ-ラクチドの比によって主に調節される。同様に、乳酸の直接ポリエステル重縮合によって調製されたポリマーでは、結晶化度は、L-乳酸から得られる重合単位に対するD-乳酸から得られる重合単位の比によって主に調節される。
【0012】
本明細書に記載の組成物及びフィルムは、通常、単独で又は非結晶性PLAポリマーと組み合わせて、半結晶性PLAポリマーを含む。半結晶性PLAポリマー及び非結晶性PLAポリマーは両方とも、通常、低濃度のD-乳酸から得られる重合単位(例えばD-ラクチド)とともに、高濃度のL-乳酸から得られる重合単位(例えばL-ラクチド)を含む。
【0013】
半結晶性PLAポリマーは典型的には、少なくとも90、91、92、93、94、又は95wt%のL-乳酸から得られる重合単位(例えばL-ラクチド)及び10、9、8、7、6、又は5wt%以下のD-乳酸から得られる重合単位(例えばD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。更にその他の実施形態では、半結晶性PLAポリマーは、少なくとも96wt%のL-乳酸から得られる重合単位(例えばL-ラクチド)及び4、3、又は2wt%未満のD-乳酸から得られる重合単位(例えばD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。同様に、組成物及びフィルムは、組成物又はフィルム中の半結晶性PLAポリマーの濃度に応じて、更に低濃度のD-乳酸から得られる重合単位(例えばD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。例えば、組成物が、約2wt%のD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチドを含む半結晶性PLAを15wt%含む場合、組成物は、約0.3wt%のD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチドを含む。組成物及びフィルムは、通常、9、8、7、6、5、4、3、2、1.5、1.0、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1wt%以下のD-乳酸から得られる重合単位(例えばD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。半結晶性PLAの好適な例としては、Natureworks(商標)Ingeo(商標)4042D及び4032Dが挙げられる。これらのポリマーは、約200,000g/molの分子量Mw、約100,000g/molのMn、及び約2.0の多分散度を有すると文献に記載されている。
【0014】
組成物は、半結晶性PLAとブレンドした非結晶性PLAポリマーを更に含んでもよい。非結晶性PLAは典型的には、90wt%以下のL-乳酸から得られる重合単位、及び10wt%より多いD乳酸から得られる重合単位(例えばD-乳酸ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。いくつかの実施形態では、非結晶性PLAは、少なくとも80又は85wt%のL-乳酸から得られる重合単位(例えばL-ラクチド)を含む。いくつかの実施形態では、非結晶性PLAは、20又は15wt%以下のD-乳酸から得られる重合単位(例えばD-ラクチド及び/又はメソ-ラクチド)を含む。好適な非結晶性PLAとしては、Natureworks(商標)Ingeo(商標)4060Dグレードが挙げられる。このポリマーは、約180,000g/molの分子量Mwを有することが文献に記載されている。
【0015】
PLAポリマーは好ましくは、210℃、質量2.16kgで、25、20、15、又は10g/min以下のメルトフローレート(ASTM D1238に従って測定される)を有する「フィルムグレード」ポリマーである。いくつかの実施形態では、PLAポリマーは、210℃で10又は9g/min未満のメルトフローレートを有する。メルトフローレートは、PLAポリマーの分子量に関連している。PLAポリマーは典型的には、ポリスチレン標準物質を用いてゲル浸透クロマトグラフィによって決定される、少なくとも50,000g/mol、75,000g/mol、100,000g/mol、125,000g/mol、150,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。いくつかの実施形態では、分子量(Mw)は、400,000g/mol、350,000g/mol又は300,000g/mol以下である。
【0016】
PLAポリマーは典型的には、約25~150MPaの範囲の引張強度、約1000~7500MPaの範囲の引張弾性率、及び少なくとも3、4、又は5から約15%までの範囲の引張伸びを有する。いくつかの実施形態では、PLAポリマーの引張強度は少なくとも30、40又は50MPaである。いくつかの実施形態では、PLAポリマーの引張強度は125、100又は75MPa以下である。いくつかの実施形態では、PLAポリマーの引張弾性率は少なくとも1500、2000、又は2500MPaである。いくつかの実施形態では、PLAポリマーの引張弾性率は7000、6500、6000、5500、5000、又は4000MPa以下である。このような引張及び伸び特性は、ASTM D882によって決定することができ、通常は、このようなPLAポリマーの製造業者又は供給業者から報告される。
【0017】
PLAポリマーは一般に、以下の実施例に記載されている通り示差走査熱量測定(DSC)により決定することができる、約50~65℃の範囲のガラス転移温度Tgを有する。
【0018】
半結晶性PLAポリマーは通常、140~175℃の範囲の融点を有する。単独で又は非結晶性PLAポリマーと組み合わせて半結晶性PLAを通常含むPLAポリマーは、180、190、200、210、220又は230℃の温度で溶融加工することができる。
【0019】
組成物は典型的には、半結晶性PLAポリマー又は半結晶性PLAと非結晶性PLAとのブレンドを、PLAポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー、及び可塑剤の総重量に基づいて少なくとも40、45又は50wt%の量で含む。PLAポリマーの総量は典型的には、PLAポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー、及び可塑剤の総重量の90、85、80、75、又は70wt%以下である。
【0020】
組成物が半結晶性PLAと非結晶性PLAとのブレンドを含む場合、半結晶性PLAの量は典型的には、PLAポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー、及び可塑剤の総重量に基づいて少なくとも10、15又は20wt%である。いくつかの実施形態では、非結晶性PLAポリマーの量は、PLAポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー、及び可塑剤の総重量に基づいて、10、15、25又は30wt%から50、55又は60wt%までの範囲である。非結晶性PLAポリマーの量は、結晶性ポリマーの量を超えていてもよい。
【0021】
組成物は、ポリ酢酸ビニルポリマーを更に含む。ポリ酢酸ビニルポリマーは、少なくとも25、30、35又は40℃のTgを有する。ポリ酢酸ビニルのTgは通常、50又は45℃以下である。
【0022】
ポリ酢酸ビニルポリマーは通常、少なくとも50,000g/mol、75,000g/mol、100,000g/mol、125,000g/mol、150,000g/mol、175,000g/mol、200,000g/mol、225,000g/mol又は250,000g/molの重量又は数平均分子量(ポリスチレン標準物質を用いたサイズ排除クロマトグラフィにより決定される)を有する。いくつかの実施形態では、分子量(Mw)は、1,000,000g/mol、750,000g/mol、500,000g/mol、450,000g/mol、400,000g/mol、350,000g/mol又は300,000g/mol以下である。いくつかの実施形態では、ポリ酢酸ビニルポリマーの分子量は、PLAポリマーの分子量を超えている。ポリ酢酸ビニルポリマーは、10~50mPa*sの範囲の、20℃での10wt%の酢酸エチル溶液における粘度を有することを特徴としてもよい。
【0023】
ポリ酢酸ビニルポリマーは典型的にはホモポリマーである。しかしながら、ポリ酢酸ビニルポリマーのTgが前述の範囲内であるという条件で、ポリマーは、他のコモノマーから得られる比較的低濃度の繰り返し単位を含んでもよい。他のコモノマーとしては、例えば、アクリル酸及びメチルアクリレートなどのアクリルモノマー、塩化ビニル及びビニルピロリドンなどのビニルモノマー、並びにエチレンなどのC2~C8アルキレンモノマーが挙げられる。ポリ酢酸ビニルポリマーの、他のコモノマーから得られる繰り返し単位の総濃度は、典型的には、10、9、8、7、6、又は5wt%以下である。いくつかの実施形態では、ポリ酢酸ビニルポリマーの、他のコモノマーから得られる繰り返し単位の総濃度は、典型的には、4、3、2、1又は0.5wt%以下である。ポリ酢酸ビニルポリマーは通常、低レベルに加水分解されている。ビニルアルコール単位に加水分解されているポリ酢酸ビニルポリマーの重合単位は、通常、ポリ酢酸ビニルポリマーの10、9、8、7、6、5、4、3、2、1又は0.5mol%以下である。
【0024】
ポリ酢酸ビニルポリマーは、Wacker社の商品名VINNAPAS(商標)を含め、様々な供給業者から市販されている。PLAと組合せる前、このようなポリ酢酸ビニルポリマーは、(例えば白色の)固体粉末又は無色のビーズ状であることが多い。いくつかの実施形態では、ポリ酢酸ビニルポリマー(PLAポリマーと組合せる前は例えば粉末)は水再分散性ではない。
【0025】
単独のポリ酢酸ビニルポリマー又は2種以上のポリ酢酸ビニルポリマーの組合せを利用することができる。
【0026】
本明細書に記載の組成物中に存在するポリ酢酸ビニルポリマーの総量は、PLAポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー、及び可塑剤の総重量に基づいて、少なくとも約10wt%であり、かつ典型的には約50、45、又は40wt%以下である。いくつかの実施形態では、ポリ酢酸ビニルポリマーの濃度は、少なくとも15又は20wt%の量で存在する。
【0027】
いくつかの実施形態では、組成物は、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、又は20℃未満のTgを有し、80℃で24時間老化させた(実施例に記載されている試験方法に従って)場合に可塑剤移行を呈さない。この特性は、ポリ酢酸ビニルポリマーが含まれることに起因する。
【0028】
組成物は、可塑剤を更に含む。組成物中の可塑剤の総量は、典型的には、PLAポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー、及び可塑剤の総重量に基づいて、約5wt%~約35、40、45又は50wt%の範囲である。
【0029】
PLAを可塑化することができる様々な可塑剤が、当該技術分野において記述されている。可塑剤は一般に25℃で液体であり、通常は約200g/mol~10,000g/molの範囲の分子量を有する。いくつかの実施形態では、可塑剤の分子量は5,000g/mol以下である。他の実施形態では、可塑剤の分子量は、4,000、3,000、2,000又は1,000g/mol以下である。可塑剤の様々な組合せを利用することができる。
【0030】
可塑剤は、好ましくは、1つ以上のアルキルエステル基若しくは脂肪族エステル基又はエーテル基を含む。典型的には多官能性エステル及び/又はエーテルが好ましい。これらとしては、アルキルリン酸エステル、ジアルキルエーテルジエステル、トリカルボン酸エステル、エポキシ化油及びエステル、ポリエステル、ポリグリコールジエステル、アルキルアルキルエーテルジエステル、脂肪族ジエステル、アルキルエーテルモノエステル、クエン酸エステル、ジカルボン酸エステル、植物油及びそれらの誘導体、並びにグリセリンのエステルが挙げられる。そのような可塑剤には一般に、芳香族基及びハロゲン原子がなく、生分解性であることが予期される。そのような可塑剤は通常、C2~C10の炭素鎖長を有する直鎖又は分枝アルキル末端基を更に含む。
【0031】
一実施形態では、可塑剤は、以下の式(I)で表されるバイオ系クエン酸系可塑剤である:
【化3】
(I)
(式中、
Rは独立して、同じであっても又は異なっていてもよいアルキル基であり、
R’はH又は(C
1~C
10)アシル基である)。
【0032】
Rは典型的には、独立して、C1~C10の炭素鎖長を有する直鎖又は分枝アルキル基である。いくつかの実施形態では、RはC2~C8又はC2~C4直鎖アルキル基である。いくつかの実施形態では、R’はアセチルである。他の実施形態では、少なくとも1つのRは、C5又はそれ以上の炭素鎖長を有する分枝アルキル基である。いくつかの実施形態では、分枝アルキル基は8以下の炭素鎖長を有する。
【0033】
代表的なクエン酸系可塑剤としては、例えば、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリヘキシルシトレート、アセチルトリヘキシルシトレート、トリオクチルシトレート、アセチルトリオクチルシトレート、ブチリルトリヘキシルシトレート、アセチルトリス-3-メチルブチルシトレート、アセチルトリス-2-メチルブチルシトレート、アセチルトリス-2-エチルヘキシルシトレート、及びアセチルトリス-2-オクチルシトレートが挙げられる。
【0034】
別の実施形態では、可塑剤は、ポリエチレングリコール骨格及びエステルアルキル末端基を含む。ポリエチレングリコール部分の分子量は、典型的には少なくとも100、150又は200g/mol、かつ1,000g/mol以下である。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール部分は、900、800、700、又は600g/mol以下の分子量を有する。例としては、Hallstar(Chicago、IL)から「TegMeR(商標)809」という商品名で入手可能なポリエチレングリコール(400)ジ-エチルヘキサノエート及びHallstar(Chicago、IL)から「TegMeR(商標)804」という商品名で入手可能なテトラエチレングリコールジ-エチルヘキサノエートが挙げられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、可塑剤コンパウンドは典型的には、水酸基をほとんど又は全く有さない。いくつかの実施形態では、可塑剤コンパウンドの総重量に対する水酸基のwt%パーセントは10、9、6、7、6、5、4、3、2、1wt%以下である。いくつかの実施形態では、可塑剤コンパウンドは水酸基を含有しない。よってこの実施形態では、可塑剤はグリセロールでも水でもない。
【0036】
結晶化速度を促進するために、核剤もまた、PLA組成物中に存在してもよい。好適な核剤としては、例えば無機鉱物、有機化合物、有機酸及びイミドの塩、PLAの加工温度を上回る融点を有する微粒子結晶性ポリマー、並びに前述のものの2つ以上の組合せが挙げられる。好適な核剤は典型的には、少なくとも25ナノメートル、又は少なくとも0.1マイクロメートルの平均粒径を有する。2種以上の異なる核剤の組合せを使用してもよい。
【0037】
有用な核剤の例としては、例えば、タルク(含水ケイ酸マグネシウム-H2Mg3(SiO3)4又はMg3Si4O10(OH)2)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化亜鉛、サッカリンナトリウム塩、ケイ酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、チタン酸カルシウム、芳香族スルホン酸塩誘導体、窒化ホウ素、銅フタロシアニン、フタロシアニン、サッカリンナトリウム塩、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0038】
有機核剤が存在する場合、核剤は典型的には、組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.15又は0.2wt%から、約1、2、3、4又は5wt%までの範囲の濃度である。核剤が、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛及びタルクなどの無機酸化物充填剤である場合、濃度はより高くてもよい。
【0039】
一実施形態では、核剤は、フェニルホスホン酸亜鉛、フェニルホスホン酸マグネシウム、ホスホン酸4-tert-ブチルフェニル二ナトリウム、及びジフェニルホスフィン酸ナトリウムなどのリン含有芳香族有機酸の塩と特徴づけてもよい。
【0040】
好ましい核剤の1つは、以下の化学式を有するフェニルホスホン酸亜鉛:
【化4】
であり、Nissan Chemical Industries,Ltdから「Ecopromote」という商品名で入手可能である。
【0041】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、保管及び輸送中にフィルムの層又はロールがブロッキング又はスティッキングするのを防ぐために使用され得る。無機充填剤としては、表面改質されている又はされていない粘土又は鉱物が挙げられる。例としては、タルク、ケイソウ土、シリカ、マイカ、カオリン、二酸化チタン、パーライト、及びウォラストナイトが挙げられる。
【0042】
有機バイオマテリアル充填剤は、改質されている又はされていない、様々な林産物及び農産物を含む。例としては、セルロース、コムギ、デンプン、加工デンプン、キチン、キトサン、ケラチン、農産物由来のセルロース系材料、グルテン、穀粉及びグアーガムが挙げられる。「穀粉」という用語は、一般に、1種の同じ植物源に由来するタンパク質含有画分及びデンプン含有画分を有する組成物に関し、タンパク質含有画分及びデンプン含有画分は互いに分離されてない。穀粉中に存在する典型的なタンパク質は、グロブリン、アルブミン、グルテニン、セカリン、プロラミン、グルテリンである。典型的な実施形態では、組成物は、穀粉などの有機バイオマテリアル充填剤をほとんど又は全く含まない。よって、有機バイオマテリアル充填剤(例えば、穀粉)の濃度は、典型的には、全組成物の10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1wt%未満である。
【0043】
組成物及びフィルムは任意に、1種以上の従来の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、抗酸化剤、安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、加工助剤、静電気防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、充填剤、艶消し剤、難燃剤(例えば、ホウ酸亜鉛)、顔料などが挙げられる。
【0044】
フィルムがモノリシックフィルムである場合、フィルムの厚さは典型的には、少なくとも10、15、20、又は25マイクロメートル(1mil)~500マイクロメートル(20mil)厚である。いくつかの実施形態では、フィルムの厚さは、400、300、200、150又は50マイクロメートル以下である。フィルムは、特に20milを超える厚さでは、個別のシートの形態であってもよい。(例えばより薄い)フィルムは、ロール品の形態であってもよい。
【0045】
フィルムが多層フィルムのフィルム層である場合、多層フィルムは典型的には前述の厚さを有する。しかしながら、フィルム層の厚さは、10マイクロメートル未満であってもよい。一実施形態では、本明細書に記載の組成物を含むフィルム層は、外面層又は換言すればスキン層である。第2のフィルム層は、スキン層上に配設される。第2のフィルム層は典型的には、スキン層とは異なる組成を有する。
【0046】
本明細書に記載の組成物を調製する際、PLA、PVAc、可塑剤、核剤等は加熱され(例えば、180~250℃)、当業者に既知の任意の好適な手段を使用して十分に混合される。例えば、組成物は、(例えば、Brabender)混合機、押出機、混練機などを使用して混合してもよい。
【0047】
混合の後、組成物は、プロセスのスケール及び利用可能な設備を考慮に入れて、既知のフィルム形成技術を使用して(例えばキャスト)フィルムに形成してもよい。いくつかの実施形態では、PLA組成物をプレス機に送り、次に圧縮し固化して個別のPLAフィルムシートを形成する。他の実施形態では、PLA組成物はダイを通して、好適な冷却温度に維持されたキャスティングロール上に押し出して、連続長のPLAフィルムを形成することができる。いくつかの実施形態では、フィルム押出中、キャスティングロール温度を好ましくは80~120℃に維持して、キャスティングロール上でPLAフィルムを結晶化させる。
【0048】
本明細書に記載のPLA組成物及びフィルムは、様々な製品において使用することができる。いくつかの実施形態では、PLAフィルムは、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムと同様の、又は更に良好な特性を有し、よってPVCフィルムの代わりに使用することができる。
【0049】
フィルム及び組成物は、実施例に記載の試験方法により決定される様々な特性を有することができる。
【0050】
フィルム及び組成物は通常、約-20℃、-15℃、又は-10℃から40℃までの範囲のガラス転移温度を有し、PLAポリマーとポリ酢酸ビニルポリマーの両方のTgを下回る。いくつかの実施形態では、フィルム及び組成物は、少なくとも-5、-4、-3、-2、-1又は0℃のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、フィルム及び組成物は、35℃又は30℃又は25℃未満のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、フィルム及び組成物は、20℃、19℃、又は18℃未満のガラス転移温度を有する。
【0051】
フィルム及び組成物は、典型的には、少なくとも約150℃又は155℃から約165℃又は170℃までの融解温度Tm1又はTm2を有する。更に、組成物は、100℃~120℃の範囲の結晶化ピーク温度Tcを有してもよい。
【0052】
正味の融解吸熱量は、融解吸熱エネルギーから結晶化発熱エネルギーを減じたものである(後述の実施例において更に詳細に記述されている通り)。組成物(すなわち、溶融プレスされてフィルムになっていない小型混練機から採取した)の正味の融解吸熱量は2回目の加熱走査により決定するが、一方、(例えば溶融プレスされた)フィルムの正味の融解吸熱量は、1回目の加熱走査により決定する。米国特許第6,005,068号によれば、PLAフィルムは、約10J/g未満の正味の融解吸熱量を示す場合、非結晶性とみなされる。組成物及びフィルムが核剤を含む場合などの好ましい実施形態では、組成物及びフィルムの正味の融解エンタルピーであるΔHnm2及びΔHnm1はそれぞれ、10、11、12、13、14又は15J/gを超え、かつ40、39、38、37、36又は35J/g未満である。
【0053】
一実施形態では、フィルムは、-10~30℃のTg、及び前述の通りに10J/gを超え、かつ40J/g未満である正味の融解吸熱量ΔH
nm1を有する。このようなフィルムは室温で可撓性であり、
図3の動的粘弾性測定(DMA)結果により示されるように、高温まで加熱する際に比較的高い機械的特性、例えば弾性率などを有する。この実施形態では、フィルムは、引張貯蔵弾性率が、2℃/minの速度で加熱される場合、-40℃~125℃の温度範囲で、少なくとも10MPa、かつ典型的には10,000MPa未満である(すなわち、2℃/minの速度で加熱される場合、-40~125℃に加熱されるときに引張貯蔵弾性率は10MPaより下には低下しない)。いくつかの実施形態では、フィルムは、動的粘弾性測定により決定される引張貯蔵弾性率が、2℃/minの速度で加熱した場合、25℃~80℃の温度範囲で少なくとも5、6、7、8、9又は10MPaである。対照的に、
図4に示すように、フィルムが非常に低い正味の融解吸熱量を有する場合、温度が室温である23℃より高温に上昇したときに、弾性率などの機械的特性は劇的に低下した。
【0054】
フィルムは、後述の実施例に更に記述しているように、標準的な引張試験を利用して評価することができる。フィルムの引張強度は、典型的には少なくとも5又は10MPaであり、かつ典型的には、フィルムを製造するために利用されるPLA及びポリ酢酸ビニルポリマーの引張強度未満である。いくつかの実施形態では、引張強度は34、33、32、31、又は30MPa以下である。フィルムの伸びは、典型的には、フィルムを製造するために利用されるPLA及びポリ酢酸ビニルポリマーの伸びを超える。いくつかの実施形態では、伸びは少なくとも30、40又は50%である。他の実施形態では、伸びは少なくとも100%、150%、200%、250%又は300%である。いくつかの実施形態では、伸びは600%又は500%以下である。フィルムの引張弾性率は、典型的には少なくとも50、100、又は150MPaである。いくつかの実施形態では、引張弾性率は少なくとも200、250又は300MPaである。いくつかの実施形態では、引張弾性率は750MPa又は650MPa以下である。
【0055】
本明細書に記載のPLA系フィルムは、感圧性接着テープ又はシートのバッキングとして使用するのに適している。
【0056】
PLA系フィルムは、隣接する感圧性接着剤層とより良好に接着させるために、通常の表面処理に供してもよい。表面処理としては、例えば、オゾンへの曝露、火炎への曝露、高圧電撃曝露、電離放射線処理、及び他の化学的又は物理的な酸化処理が挙げられる。
【0057】
天然又は合成のゴム系感圧性接着剤、アクリル感圧性接着剤、ビニルアルキルエーテル感圧性接着剤、シリコーン感圧性接着剤、ポリエステル感圧性接着剤、ポリアミド感圧性接着剤、ウレタン感圧性接着剤、及びスチレンブロックコポリマー系感圧性接着剤などの様々な感圧性接着剤を、PLA系フィルムに適用することができる。感圧性接着剤は一般に、室温(25℃)で動的粘弾性測定により測定することができる、1Hzの周波数での3×106ダイン/cm未満の貯蔵弾性率(E’)を有する。
【0058】
感圧性接着剤は、有機溶媒系、水性エマルション、ホットメルト、加熱活性化、並びに化学線(例えば電子ビーム、紫外線)硬化感圧性接着剤であってもよい。
【0059】
アクリル感圧性接着剤は、溶液重合、塊状重合、又は乳化重合などのラジカル重合技術によって製造することができる。アクリル系ポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、又はグラフトポリマーなどの任意のタイプのものであってよい。重合は、一般に使用される重合開始剤及び連鎖移動剤のいずれを用いてもよい。
【0060】
アクリル感圧性接着剤は、1~14個の炭素原子、好ましくは平均4~12個の炭素原子を含有する(例えば非第三級)アルコールから得られる、1つ以上の(メタ)アクリレートエステルモノマーである重合単位を含む。モノマーの例としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール;3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、イソオクチルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、2-プロピルヘプタノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノールなどの非第三級アルコールと、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかとのエステルが挙げられる。
【0061】
アクリル感圧性接着剤は、1つ以上の低Tg(メタ)アクリレートモノマーである重合単位を含み、すなわち、(メタ)アクリレートモノマーは反応してホモポリマーを形成する場合に0℃以下のTgを有する。いくつかの実施形態では、低Tgモノマーは、-5℃以下、又は-10℃以下のTgを有する。これらのホモポリマーのTgはしばしば、-80℃以上、-70℃以上、-60℃以上、又は-50℃以上である。
【0062】
低Tgモノマーは、次の式を有し得る。
【0063】
H2C=CR1C(O)OR8
(式中、R1はH又はメチルであり、R8は、1~22個の炭素を有するアルキル、又は2~20個の炭素及び酸素若しくは硫黄から選択される1~6個のヘテロ原子を有するヘテロアルキルである)。アルキル基又はヘテロアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0064】
代表的な低Tgモノマーとしては、例えば、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソトリデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、及びドデシルアクリレートが挙げられる。
【0065】
低Tgヘテロアルキルアクリレートモノマーとしては、2-メトキシエチルアクリレート及び2-エトキシエチルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
典型的な実施形態では、アクリル感圧性接着剤は、炭素原子6~20個を含むアルキル基を有する少なくとも1つの低Tgモノマーである重合単位を含む。いくつかの実施形態では、低Tgモノマーは、炭素原子7個又は8個を含むアルキル基を有する。代表的なモノマーとしては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、並びに、2-オクチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸と再生可能資源から得られるアルコールとのエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
アクリル感圧性接着剤は典型的には、重合単位の総重量(すなわち、無機充填剤又は他の添加剤を除く)に基づいて、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90wt%以上の、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーである重合単位を含む。
【0068】
アクリル感圧性接着剤は、少なくとも1つの高Tgモノマーを更に含んでもよく、すなわち、(メタ)アクリレートモノマーは反応してホモポリマーを形成する場合に0℃を超えるTgを有する。高Tgモノマーはより典型的には、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、又は40℃を超えるTgを有する。高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、t-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N-オクチルアクリルアミド及びプロピルメタクリレート又は組合せが挙げられる。
【0069】
アクリル感圧性接着剤は、極性モノマーの重合単位を更に含んでもよい。代表的な極性モノマーとしては、例えば、酸官能性モノマー(例えばアクリル酸)、ヒドロキシル官能性(メタ)アクリレート)モノマー、窒素含有モノマー(例えばアクリルアミド)、及びそれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、アクリル感圧性接着剤は、少なくとも0.5、1、2又は3wt%、かつ典型的には10wt%以下の、アクリルアミドなどの極性モノマーの重合単位を含む。
【0070】
感圧性接着剤は、必要に応じて1種以上の好適な添加剤を更に含んでもよい。添加剤の例は、架橋剤(例えば多官能性(メタ)アクリレート架橋剤、エポキシ架橋剤、イソシアネート架橋剤、メラミン架橋剤、アジリジン架橋剤など)、タッキファイヤー(例えば、フェノール変性テルペン並びにロジンのグリセロールエステル及びロジンのペンタエリスリトールエステルなどのロジンエステル、並びにC5及びC9炭化水素タッキファイヤー)、増粘剤、可塑剤、充填剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、静電気防止剤、界面活性剤、均染剤、着色剤、難燃剤、及びシランカップリング剤である。
【0071】
感圧性接着剤層は、様々な一般的なコーティング方法、ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、ダイコーティング、及び印刷によって、フィルム上に配設することができる。
【0072】
接着剤は、本明細書に記載のPLAフィルムに直接適用してもよく、又ははく離ライナーを使用して転写コーティングしてもよい。
【0073】
以下の実施例は、本発明の更なる特徴及び実施形態を説明するために記載される。特に断らない限り、部は全て重量部である。
【0074】
材料
PLAであるIngeo4032D(「4032」)及びIngeo4060D(「4060」)は、Natureworks,LLCから購入した。ポリ酢酸ビニル「PVAc」は、Wackerから「Vinnapas(商標)UW4FS」という商品名で入手した。Ecopromote核剤は、Nissan Chemical Industrials(日本)から入手した。
【0075】
使用される市販の可塑剤は、Citroflex A4(Vertellus Performance Materials)、それぞれ「TegMer809」及び「TegMer804」という商品名でHallstarから入手可能なPEG400ジ-エチルヘキソネート(di-ethylhexonate)及びテトラエチレングリコールジ-エチルヘキソネートエステル可塑剤、Eastmanから「Admex6995」という商品名で入手可能なポリエステル可塑剤(分子量3200の高分子アジペート)を含む。
【0076】
サンプル調製-溶融混練
DSM Xplore(商標)15cm3二軸小型混練機において、100RPM、200℃で10分間、PLA、PVAc、可塑剤及び核剤を混合し、次に混合チャンバーの弁を開けてサンプルを回収することにより、サンプルを調製した。混練したサンプルを80℃での老化試験及びDSC特性評価に供し、引張試験用に溶融プレスしてフィルムにした。
【0077】
老化試験
混練したサンプル(0.2グラム)をシンチレーションバイアルに入れて密閉し、老化試験中に可塑剤が蒸発するのを防ぎ、80℃のオーブン中で24時間老化させた。次いで、80℃で老化させた後、可塑剤移行があるかどうかを確かめるためにサンプル表面を検査した。表面が濡れている又は油っぽいサンプルは不合格とみなし、表面が乾いているサンプルは合格とみなした。
【0078】
DSC-示差走査熱量測定
各サンプルのガラス転移温度、結晶化温度、融解温度などは、特に指定がない限り、TA Instruments Differential Scanning Calorimeterを使用して、ASTM D3418-12に従って測定した。1回目の加熱走査で各サンプル(4~8mg)を10℃/minで-60から200℃まで加熱し、2分間保持して熱履歴を消去し、次いで、1回目の冷却走査で10℃/minで-60℃まで冷却し、2回目の加熱走査で10℃/minで200℃まで加熱した。2回目の加熱走査を使用して、組成物及びフィルムのTgを決定した。様々なパラメータを、以下に定義する通りDSCから得た:
Tg-ASTM D3418-12においてTmgと記載されている、2回目の加熱走査の中間温度を指す。
Tc-ASTM D3418-12においてTpcと記載されている、1回目の冷却走査の結晶化ピーク温度を指す。
Tm1及びTm2-ASTM D3418-12においてそれぞれTpmと記載されている、1回目及び2回目の加熱走査の融解ピーク温度を指す。
【0079】
組成物が結晶化する能力は、2回目の冷却走査中に形成される結晶性材料と関連する、以下の式を用いて算出される正味の融解吸熱量ΔHnm2を算出することによって決定された。
【0080】
ΔHnm2=ΔHm2-ΔHcc2
(式中、ΔHm2は2回目の加熱走査の融解吸熱量を質量で正規化した(mass normalized)エンタルピーであり、ΔHcc2は2回目の加熱走査の結晶化発熱量を質量で正規化したエンタルピーである(ASTM D3418-12の第11節に記載の通り)。)核剤を含む組成物では、ΔHcc2は検出されなかったため、ΔHnm2=ΔHm2であった。
【0081】
正味の融解吸熱量ΔHnm1は、(例えば溶融プレスにより調製された)フィルムにおける結晶化度と関連する。ΔHnm1は、以下の式を用いて算出した。
ΔHnm1=ΔHm1-ΔHcc1
(式中、ΔHm1は1回目の加熱走査の融解吸熱量を質量で正規化したエンタルピーであり、ΔHcc1は1回目の加熱走査の結晶化発熱量を質量で正規化したエンタルピーである(ASTM D3418-12の第11節に記載の通り)。)核剤を含むフィルムでは、ΔHcc1は検出されなかったため、ΔHnm1=ΔHm1であった。
【0082】
発熱量及び吸熱量に関連するエンタルピーの絶対値(すなわち、ΔHm1、ΔHm2、ΔHcc1、及びΔHcc2を計算で使用した。
【0083】
溶融プレス
混練したサンプルを、10mil厚のスペーサーを間に挟んだ2枚のテフロンシート(「テフロン」は登録商標(以下同じ。))の間に入れた。テフロンシートを2枚の金属シートの間に挟んだ。間にサンプルを配設した金属シートを液圧プレス機(Carverから入手可能)の圧盤の間に挟み、圧盤を340°Fまで加熱した。各サンプルを、圧力をかけずに8分間予備加熱し、その後300ポンド/平方インチの圧力で5分間プレスした。次いで、金属プレートをCarverプレス機から取り出し、放冷した。溶融プレスしたフィルムを、DSC特性評価及び引張試験に供した。
【0084】
引張試験
溶融プレスしたサンプルを0.5インチ幅のストリップに切断した。Instron4501引張試験機を使用して室温で引張試験を行った。最初のグリップ距離は1インチであり、引張速度は1インチ/min又は100%ひずみ/minであった。試験結果を、3~5個のサンプル複製の平均として報告した。引張強度(公称)、弾性率及び破断伸びパーセントは、ASTM D882-10の11.3及び11.5に記述されている通り決定される。
【0085】
動的粘弾性測定(DMA)
TA Instrumentsから「DMA Q800」として入手可能なフィルム引張固定治具を用いて動的粘弾性測定(DMA)を行って、温度の関数としてのフィルムの物理的特性を評価した。サンプルを、2℃/minの速度、1ラジアン/secの周波数及び0.1%の引張ひずみで-40℃の温度から140℃まで加熱した。
【0086】
180°はく離強度試験方法
接着剤の幅0.5インチ(約1.3cm)×長さ6インチ(約15cm)のストリップを、ローラーを使用してステンレス鋼製パネル上に積層した。23℃/50%RHの条件のCTH(恒温恒湿)室における滞留時間は10分であった。はく離強度測定は、180°はく離モードを使用して12in/min(約30cm/min)で行った。6回の測定値の平均としてデータを記録した。
【0087】
実施例及び対照例(「C」で示す)の組成物において使用されている構成成分のそれぞれのwt%を表1に示す。例えば、実施例8は、ポリ乳酸ポリマー、ポリ酢酸ビニルポリマー、及び可塑剤の総重量に基づいて、70wt%のPLA4032、15wt%のPVAc、15wt%のCitroflex A4を含有する。実施例8は、組成物の総重量に基づいて0.2wt%のEcopromoteを更に含有していた。組成物のTg及び老化の結果もまた、以下の通り表1において報告する:
【表1】
【0088】
表1に示されるように、比較例C1、C4及びC5は老化試験に合格したが、比較例C2、C3、C6及びC7は老化試験に不合格であった。サンプルのTgは25℃まで低下し得る(比較C5により示されるように)が、それでも25℃以上では老化試験に合格する(比較例C6及びC7により示されるように)。組成物がPLA、可塑剤及びPVAcを含んでいた場合、Tgは25℃より低温まで低下し、かつ老化試験に合格し得る。
【0089】
実施例及び対照例(「C」で示す)の組成物において使用されている構成成分のそれぞれのwt%、DSCの結果を以下の表2に示す:
【表2】
【0090】
実施例12の組成物の代表的なDSCプロファイルを
図1に示す。このDSCプロファイルは、冷却中のシャープな結晶化ピーク発熱を示す。
図2に示すように、実施例16の組成物は、冷却中に結晶化を全く示さない。
【0091】
溶融プレスしたフィルムの実施例及び対照例(「C」で示す)を調製するための組成物に使用されている構成成分のそれぞれのwt%、これらのフィルムのDSC及び引張試験の結果を以下の表3に示す:
【表3】
【0092】
表3のフィルムのTgもまた、DSCにより測定したら、表2の組成物と同じであったであろう。実施例12及び16は、前述の動的粘弾性測定に従って試験した。実施例12の結果は
図3に示し、実施例16の結果は
図4に示す。
【0093】
実施例22(EX-22)
44.8wt%のPLA4032、35wt%のPVAc、20wt%のCitroflex A4及び0.2wt%のEcopromoteを含有する実施例17のフィルム片を、97wt%のイソオクチルアクリレート及び3wt%のアクリルアミドから得られ、重量平均分子量が約1,000,000g/molである、1mil厚のポリアクリレート感圧性接着剤を用いて室温でオーバーラミネートした。続いて、180°はく離強度を測定したところ25oz/inであった。はく離試験中、ポリアクリレート接着剤はPLA系バッキングとよく接着し、ステンレス鋼製パネルから接着剤がきれいにはく離されることが観察された。