IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7588633吸収性物品用不織布及びこれを備える吸収性物品
<>
  • -吸収性物品用不織布及びこれを備える吸収性物品 図1
  • -吸収性物品用不織布及びこれを備える吸収性物品 図2
  • -吸収性物品用不織布及びこれを備える吸収性物品 図3
  • -吸収性物品用不織布及びこれを備える吸収性物品 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】吸収性物品用不織布及びこれを備える吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/514 20060101AFI20241115BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20241115BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20241115BHJP
   D04H 1/542 20120101ALI20241115BHJP
   D04H 1/541 20120101ALI20241115BHJP
   D04H 1/544 20120101ALI20241115BHJP
【FI】
A61F13/514 100
A61F13/514 200
A61F13/514 321
A61F13/511 300
A61F13/51
D04H1/542
D04H1/541
D04H1/544
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022503725
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2021007205
(87)【国際公開番号】W WO2021172475
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/008198
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 由彦
(72)【発明者】
【氏名】菅原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】湊崎 真行
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-265528(JP,A)
【文献】国際公開第2006/135011(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性繊維を含み、該繊維どうしの交点が熱融着した熱融着部を複数有するエアスルー不織布からなる、吸収性物品用不織布を構成部材として備える吸収性物品であって、
前記吸収性物品用不織布は、
前記熱可塑性繊維の溶融固化により繊維形態を喪失した溶融痕跡部を有する溶融繊維を含んでおり、
前記溶融繊維において前記溶融痕跡部は、前記熱融着部以外の部分に形成されており、
前記吸収性物品用不織布の両面である第1面及び第2面それぞれについて、200倍の倍率で500μm×400μmの5箇所の観察領域を観察し、各観察領域内に存する前記溶融痕跡部を有する前記溶融繊維を観察溶融繊維としたときに、第1面及び第2面それぞれに前記観察溶融繊維が存在しており、
第1面は、前記観察溶融繊維の合計本数が、5本以上であり、第2面の1.5倍以上10倍以下であり、
第1面が、他の構成部材との接着面となるように配されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記溶融痕跡部は、前記溶融繊維が延びる方向に直交する断面の輪郭が直線部分及び曲線部分を有している、請求項1に記載の吸収性物
【請求項3】
前記直線部分が前記吸収性物品用不織布の厚み方向の外方側を向いており、前記曲線部分が該厚み方向の内方側を向いている、請求項2に記載の吸収性物
【請求項4】
構成繊維の平均繊維径が5μm以上20μm以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の吸収性物
【請求項5】
前記熱可塑性繊維として、芯部と鞘部とからなる芯鞘構造を備える芯鞘型複合繊維を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の吸収性物
【請求項6】
前記芯部の樹脂成分がポリエチレンテレフタレートであり、前記鞘部の樹脂成分がポリエチレンである、請求項5に記載の吸収性物
【請求項7】
前記熱可塑性繊維以外の他の繊維を含んでおり、該他の繊維がセルロース系繊維又は天然繊維である、請求項1~6の何れか1項に記載の吸収性物
【請求項8】
前記他の繊維及び前記熱可塑性繊維の合計含有量に対する、前記他の繊維の含有量の割合が0.1%以上20%以下である、請求項7に記載の吸収性物
【請求項9】
第1面は、接着強度が0.13N以上5N以下である、請求項1~8の何れか1項に記載の吸収性物
【請求項10】
第1面は、第2面よりも毛羽立ちが少ない、請求項1~9の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収性物品用不織布を、吸収性物品の外面を形成する外装体として備え、第1面が非肌対向面側を向くように配されている、請求項1~10の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
表面シートと、裏面シートと、該表面シート及び該裏面シート間に配された吸収体とを具備しており、
前記吸収性物品用不織布を、前記表面シート及び前記裏面シートの何れか一方又は双方として備えた、請求項1~11の何れか1項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収性物品用不織布を、前記裏面シートとして備えた、請求項12に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記裏面シートが、液難透過性シートと前記吸収性物品用不織布との積層シートからなる、請求項13に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品用不織布及びこれを備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品を構成するシート部材に不織布が用いられている。柔らかさや風合い等の肌触りや保液性等の観点から、吸収性物品に用いられる不織布の構成について種々の検討が行われている。例えば本出願人は、先に、第1層と、該第1層よりも密度の低い第2層とを有するエアスルー不織布であって、第1層に含まれる繊維の横断面が扁平であり、該横断面の長軸方向が不織布の平面方向に概ね配向している、不織布を提案している(特許文献1)。斯かる不織布は、第1層側の表面における表面粗さの平均偏差及び摩擦係数の平均偏差、並びに圧縮特性の線形性LC及び曲げ剛性が所定範囲内に規定されている。
【0003】
また、吸収性物品以外の不織布製品に用いられる不織布として、特許文献2には、ポリエチレン繊維とセルロース系繊維とを含み、KES圧縮試験によるWC値が0.50gf・cm/cm以上であるものが記載されている。斯かる不織布は、構成繊維に含まれる繊維同士が接触する部位において非固定部分のみを有することが記載されている。
【0004】
また、肌に触れる面の繊維先端が毛羽立たないように加工された不織布として、特許文献3には、エアスルー方式などの公知の方法を適宜用い、肌と接触する面に、ローラーで圧力をかける方法で製造される不織布が記載されている。当該ローラーは、120~130℃に過熱されることが好ましいとされる一方、130℃以上とすると、熱溶融効果が大きく、繊維同士の接着範囲が広くなり、水分の透過性効果が損なわれることが記載されている。
さらに、外面バックシートに対するファスニングテープの係合力を向上させるため、ドラム搬送過程で加熱空気を送り繊維同士を130.5~135℃で熱融着させるエアスルー法により製造され、且つ係合領域を起毛処理した不織布を外面バックシートに用いることが、特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-233364号公報
【文献】特開2019-90141号公報
【文献】特開2003-265528号公報
【文献】国際公開第2006/135011号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、熱可塑性繊維を含み、該繊維どうしの交点が熱融着した熱融着部を複数有するエアスルー不織布を有する。
本発明の不織布は、好ましくは、吸収性物品用不織布である。
本発明の不織布は、前記熱可塑性繊維の溶融固化により繊維形態を喪失した溶融痕跡部を有する溶融繊維を含んでいることが好ましい。
前記溶融痕跡部は、好ましくは、前記熱融着部以外の部分に形成されている。
本発明の吸収性物品用不織布の少なくとも一方の面について、200倍の倍率で500μm×400μmの5箇所の観察領域を観察し、各観察領域内に存する前記溶融痕跡部を有する前記溶融繊維を観察溶融繊維としたときに、該観察溶融繊維の合計本数が5本以上であることが好ましい。
本発明の他の特徴は、請求の範囲及び以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の吸収性物品用不織布における一方の面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した観察画像の一例である。
図2図2は、本発明に係る溶融痕跡部の一実施形態を示す断面図である。
図3図3は、図1に相当する前記観察画像の他の例である。
図4図4(a)~(c)は、単位面積当たりの起毛した繊維の測定方法を説明するための模式図である。
【発明の詳細な説明】
【0008】
一般的なエアスルー不織布は、繊維ウエブに対して気体や水蒸気を吹き付けることで形成されるので、該不織布における表面が毛羽立つ傾向がある。表面が毛羽立った部分を有する不織布を吸収性物品のシート部材に用いた場合、その毛羽立ちによって良好な手触りが奏される反面、該毛羽立ちによって吸収性物品の他の構成部材との接着性が低下する傾向がある。この接着性が不十分であると、吸収性物品の成形性又は強度が低下する虞がある。特許文献1~4は、エアスルー不織布について十分な接着性を確保するための技術を開示するものではない。
【0009】
本発明は、接着性に優れるエアスルー不織布である吸収性物品用不織布及びこれを備える吸収性物品に関する。
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本実施形態の吸収性物品用不織布(以下、単に「不織布」ともいう)は、エアスルー不織布である。「エアスルー不織布」とは、所定温度以上の流体、例えば、空気などの熱風や水蒸気を、不織布の前駆体である繊維ウエブ又は不織布に吹き付ける工程(エアスルー工程)を経て製造された不織布をいう。斯かる流体の吹き付けは、熱風等の流体が繊維ウエブ又は不織布を貫通する、いわゆるエアスルー方式(貫通方式)で行われる。本発明のエアスルー不織布には、斯かるエアスルー方式による熱処理工程のみで製造される不織布のみならず、他の方法で作製された不織布に該熱処理工程を付加して製造した不織布、あるいはエアスルー工程の後に何らかの工程を行って製造した不織布が包含される。
【0011】
図1には、後述する<観察溶融繊維の本数の測定方法>に準じて撮影された本実施形態の不織布における一方の面の電子顕微鏡画像(観察倍率200倍)が示されている。
本実施形態の不織布は、通常のエアスルー不織布と同様に、その製造方法に起因して、構成繊維として含まれる熱可塑性繊維どうしの交点が熱融着した熱融着部Pを複数有する。図1中の符号Pを付けた部分が熱融着部である。
【0012】
本実施形態の不織布は、熱可塑性繊維の溶融固化により繊維形態を喪失した溶融痕跡部Tを有する溶融繊維F1を含んでいる。溶融痕跡部Tは、図1に示すように、熱融着部P以外の部分に形成された溶融固化部分である。即ち、溶融繊維F1は、熱融着部P以外において、溶融固化した部分と、溶融固化していない部分とを有している。溶融痕跡部Tは、溶融固化によって繊維本来の形状が変形した部分である。繊維本来の形状とは、通常熱可塑性繊維の製造の際には円形のノズルにより樹脂を押し出すことにより生産されるため、断面形状は真円に近く、少なくとも断面形状は曲率を持っている形状となる。
本実施形態の不織布は、溶融繊維F1とともに、溶融痕跡部Tを有していない繊維を有していてもよい。
【0013】
本実施形態の不織布は、該不織布の厚み方向と直交する方向に沿い、該厚み方向に離間した2つの面を有している。本実施形態の不織布が吸収性物品の構成部材として使用された場合、該不織布の表面は通常、吸収性物品の着用者の肌に向けられる面(肌対向面)となるか、又は着用者の肌とは反対側に向けられる面(非肌対向面)若しくはショーツ等の着衣に向けられる面(着衣対向面)となる。
【0014】
本実施形態の不織布は、上述した2つの面のうち少なくとも一方の面について、200倍の倍率で500μm×400μmの観察領域を5か所観察する。各観察領域内に存する溶融痕跡部Tを有する溶融繊維F1(以下、「観察溶融繊維F1」ともいう)の本数を数える。そして5か所の前記観察領域において観察された、観察溶融繊維の合計本数が5本以上である。以下、「5か所の前記観察領域において観察された、観察溶融繊維の合計本数」を単に「観察溶融繊維の合計本数」という。斯かる観察溶融繊維F1の本数は、以下の方法により測定される。
【0015】
<観察溶融繊維の本数の測定方法>
測定対象の不織布について、鋭利なかみそりを用いて、平面視10mm×30mmの領域を厚み方向の全体に亘って切り出し、これを測定サンプルとする。この大きさのサンプルが取り出せない場合は、可能な限り大きいサンプルを切り出す。測定サンプルは3枚用意する。測定サンプルの何れか一方の面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM、JCM-6000 商品名、日本電子株式会社製、本明細書中のSEMは全てこれである。)を用いて倍率200倍で500μm×400μmの領域を撮影する。このSEMによる撮影では、測定サンプルの被撮影面において最表に位置する繊維に焦点を合わせる。1枚の測定サンプルにつき、互いに位置が異なる5箇所を撮影し、計5枚のSEM画像を得る。次いで、各SEM画像において、焦点が合った繊維を選択し、これらの繊維の中から溶融痕跡部を有する溶融繊維をカウントする。「焦点が合った繊維」は、前記観察領域内で輪郭がぼやけていない繊維である。溶融痕跡部が判別不能である繊維は、カウントに含まないものとする。1本の繊維に複数の溶融痕跡部Tが形成されている場合、溶融繊維F1は1本としてカウントする。この溶融繊維のカウントを各SEM画像で行い、これらの合計を、観察溶融繊維の合計本数、即ち、前記5箇所の観察領域内において溶融痕跡部Tを有する溶融繊維の合計本数とする。
なお、測定対象の不織布が吸収性物品を構成している場合は、ホットメルト接着剤をコールドスプレーや液体窒素で固化させ、不織布を丁寧にはがすことで不織布を得る。この手段は本明細書の他の測定においても共通である。
【0016】
観察溶融繊維の合計本数について、各SEM画像における観察溶融繊維のカウント方法を、図1を参照しながら具体的に説明する。先ず、SEM画像において焦点を合わせた最表に位置する繊維と、該画像において焦点が合った繊維とを選択する。図1では、繊維a1が最表に位置する繊維であり、該繊維a1とともに、焦点が合った繊維とを選択する。次いで、焦点が合った繊維の中から、溶融痕跡部Tを有する繊維a1~a6を選択する。図1では、1個の溶融痕跡部Tを有する繊維a1,a3,a4,a6が4本、2個の溶融痕跡部Tを有する繊維a2,a5が2本存在している。具体的には、繊維a2は溶融痕跡部T1,T2を有しており、繊維a5は溶融痕跡部T3,T4を有している。同様の選択と判断を、同一SEM画像中で前記「焦点が合った繊維」全てに対して行う。したがって、図1における観察溶融繊維の合計本数は6本である。
【0017】
本実施形態の不織布は、前述したように、その何れか一方の面において溶融繊維F1を有している。当該面に存する溶融繊維F1は、溶融痕跡部Tが平面方向に延在している。そのため、この面に吸収性物品の他の構成部材を隣接させた場合に、該溶融痕跡部Tを有しない繊維に比して平面方向における他の構成部材との接触面積が大きい。これにより、溶融繊維Fが存する面では、溶融痕跡部Tによる繊維と他の構成部材との接触面積の増大によって接着性が向上する。特に、観察溶融繊維の合計本数が5本以上であると、不織布の当該面における接着面積を十分に確保することができるので、当該面は接着性に優れる。斯かる不織布を吸収性物品の構成部材に用いた場合、観察溶融繊維の合計本数が5本以上である面を、該吸収性物品の他の構成部材との接触面にすることで、前記不織布と他の構成部材とが良好に接着されて、吸収性物品の成形性又は強度を確保することできる。
【0018】
不織布の接着面における接着性をより向上させる観点から、観察溶融繊維の合計本数は、好ましくは5本以上、より好ましくは10本以上である。
また、観察溶融繊維の合計本数は、不織布を構成する繊維の本数を考慮すると現実的には100本以下、又は50本以下である。
また、観察溶融繊維の合計本数は、好ましくは5本以上100本以下、より好ましくは10本以上50本以下である。
【0019】
溶融痕跡部Tは、溶融固化した部分が平坦となり、溶融固化していない部分に比して扁平な形状となる傾向にある。斯かる溶融痕跡部Tは、溶融繊維が延びる方向に直交する断面の輪郭が、例えば図2に示すように、直線部分a及び曲線部分bを有している。この直線部分aが、平面方向に延在する部分となり得る。即ち、溶融痕跡部Tは、その断面の輪郭に直線部分を有している。
不織布の接着面における繊維の接触面積を向上させる観点から、溶融痕跡部Tの断面の輪郭において、直線部分aが不織布の厚み方向の外方側を向いており、曲線部分bが該厚み方向の内方側を向いていることが好ましい。
【0020】
図3には、本発明の不織布の別の例であって、該不織布の図1に相当する観察領域の画像(SEM画像)が示されている。図3に示すSEM画像では、溶融繊維F1における溶融痕跡部Tが、溶融固化していない部分に比して、幅広の平坦な部分となって形成されている。例えば、図3における溶融痕跡部T10は、その輪郭が不定形であり、且つ溶融固化していない部分における繊維の輪郭よりも該繊維の外方側に延出している。斯かる溶融痕跡部T10では、溶融繊維が延びる方向に直交する断面の輪郭において、前述した直線部分a及び曲線部分bを有している(図示せず)。
【0021】
不織布は、何れか一方の面における観察溶融繊維の合計本数が5本以上であればよい。例えば、不織布の両面それぞれについて、上述した観察溶融繊維の合計本数を測定した場合、何れか一方の面が5本以上であればよい。
不織布の他方の面は風合いの観点から、20本以内であることが好ましい。
【0022】
本実施形態の不織布は、該不織布の両面それぞれに溶融繊維F1が存在しており、該両面はそれぞれ、観察溶融繊維の合計本数が互いに異なっている。以下、観察溶融繊維の合計本数が多い方の面を第1面、及び少ない方の面を第2面という。
不織布において一方の面を接着面に、他方の面を毛羽立ちにより柔らかくする観点から、第2面に対する第1面における観察溶融繊維の合計本数の割合(第1面/第2面)は、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上である。
また、前記割合の上限は特に制限されないが、第2面における観察溶融繊維の合計本数が1本以上である場合、好ましくは10倍以下、より好ましくは5倍以下である。
また、前記割合は、好ましくは1.5倍以上10倍以下、より好ましくは2倍以上5以下である。
【0023】
第2面における柔らかさをより向上させる観点から、第2面は、観察溶融繊維の合計本数が、好ましくは50本以下、より好ましくは20本以下であり、0本であることが最も好ましい。すなわち、第2面の観察溶融繊維の合計本数は0本以上である。
【0024】
本実施形態の不織布において第1面は、観察溶融繊維の合計本数が第2面よりも多く、これにより第1面は第2面よりも毛羽立ちが少ない。毛羽立ちの程度は、以下の単位面積当たりの起毛した繊維の本数によって評価することができる。単位面積当たりの起毛した繊維の本数が少ないほど、毛羽立ちが少ないと評価し得る。手触りと風合いとをより両立させる観点から、単位面積当たりの起毛した繊維の本数は、20本以下であることが好ましい。斯かる起毛した繊維の本数が10本以下であると、外観上、毛羽立ちが目立ち難くなる。また、前記接着性をより向上させる観点から単位面積当たりの起毛した繊維の本数は、5本以下であることが好ましい。
【0025】
<単位面積当たりの起毛した繊維の測定方法>
図4は、22℃65%RH環境下にて、不織布を構成する繊維の中で起毛した繊維の本数を測定する方法を示した模式図である。先ず、不織布から、鋭利なかみそりで、10cm×10cmの測定片104を切り出す。不織布から10cm×10cmの測定片が切り出せない場合、7cm×7cmとする。次いで、図4(a)に示すように、測定片104を山折りにし、これをA4サイズの黒い台紙(不図示)の上に載せる。次いで、図4(b)に示すように、台紙上の測定片104に、縦1cm×横1cmの穴107をあけたA4サイズの黒い台紙101を載せる。このとき、測定片104の折り目105が、上側の黒い台紙の穴107から見えるように配置する。測定片104の上下に配する台紙には、例えば、富士共和製紙株式会社の「ケンラン(黒)連量265g」を用いることができる。図4では、説明の便宜上、台紙101を白色で示す。次いで、測定片104の上に配された台紙101上に50gの錘102を2個載せる。このとき、測定片104の折り目105上であって、測定片104の上に配された台紙101の穴107の両側縁それぞれから該折り目105に沿う方向の外方に5cm離れた位置に前記錘102を載せる。これにより、測定片104を完全に折り畳んだ状態にする。次いで、図4(c)に示すように、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX-900」)を用いて、30倍の倍率で、台紙の穴107内を観察する。斯かる観察により、測定片104の折り目105から1mm上方に平行移動した仮想線108よりも上方に先端が位置する繊維の本数を、起毛した繊維の本数としてカウントする。図4(c)に示すように、仮想線108を2回横切る繊維106aがある場合、その繊維は2本と数える。図4(c)に示す例では、仮想線108を1回横切る繊維が4本、仮想線108を2回横切る繊維106aが1本存在するが、2回横切る繊維106aは2本と数えるので、起毛した繊維の本数は6本となる。この起毛した繊維の本数のカウントを、不織布から切り出した9枚の測定片について行い、これらの平均(少数第二位を四捨五入)を、単位面積(1cm×1cm)当たりの起毛した繊維の本数として求める。
【0026】
第1面における接着性をより確実に確保する観点から、第1面における単位面積当たりの起毛した繊維の本数は、好ましくは10本以下、より好ましくは5本以下であり、0本であることが最も好ましい。すなわち、第1面における単位面積当たりの起毛した繊維の本数は0本以上である。
【0027】
第2面における外観上の毛羽立ちを抑え、吸収性物品用不織布の風合いをより向上させる観点から、第2面における単位面積当たりの起毛した繊維の本数は、第1面よりも多いことを条件として、好ましくは20本以下、より好ましくは10本以下である。また、第2面における単位面積当たりの起毛した繊維の本数は0本超である。
【0028】
第1面における接着性をより確実に確保する観点から、第1面の接着強度は、好ましくは0.13N以上、より好ましくは0.15N以上である。
また、第1面の接着強度は、現実的には5N以下又は3N以下であり、そして、好ましくは0.13N以上5N以下、より好ましくは0.15N以上3N以下である。接着強度は以下の方法により測定される。
【0029】
<接着強度の測定方法>
測定対象の不織布について、鋭利なかみそりを用いて、平面視10cm×5cmの領域を厚み方向の全体に亘って2枚切り出し、2枚の試験片を得る。次いで、1枚の試験片における一方の面に対し、該試験片の長手方向の一端側における5cm×5cmの領域に坪量6g/mのホットメルト接着剤(ヘンケル社製、ゴム系ホットメルト)を塗布し、もう1枚の試験片に貼り付け、その上から2kgの錘を載せて5分間静置して、これを測定サンプルとする。2枚の試験片を貼り合わせるときの面どうしは、不織布において同一の面となるようにする。次いで、測定サンプルにおいて2枚の試験片が貼り合わされていない方の端部それぞれを、テンシロン万能試験機(エー・アンド・デイ株式会社製 「RTG1310」)のチャック間に固定する。チャック間の距離は50mmとする。次いで、チャックを、180°方向に沿って300mm/minの速度で移動させて、2枚の試験片を剥離させる。このとき観察される引張強度の最大値を求める。斯かる測定を3回繰り返し、それらの平均値を接着強度とする。
【0030】
不織布の強度を担保する観点から、不織布の坪量は、好ましくは8g/m以上、より好ましくは12g/m以上である。
また、不織布の坪量は、現実的には好ましくは50g/m以下、より好ましくは30g/m以下である。
また、不織布の坪量は、好ましくは8g/m以上50g/m以下、より好ましくは12g/m以上30g/m以下である。
【0031】
不織布の柔軟性をより向上させる観点から、不織布の構成繊維の平均繊維径は、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。
また、不織布の構成繊維の平均繊維径は、現実的には5μm以上、好ましくは8μm以上である。
また、不織布の構成繊維の平均繊維径は、好ましくは5μm以上20μm以下、より好ましくは8μm以上15μm以下である。
不織布は、繊維径が互いに異なる複数種類の繊維から構成されてもよいが、上記と同様の観点から、繊維径が20μm以下の構成繊維からなることが好ましい。不織布が、繊維径が互いに異なる複数種類の繊維を含んでいる場合、前記「平均繊維径」は、不織布全体における構成繊維の繊維径の平均である。
【0032】
不織布の構成繊維の繊維径は、以下の方法により求められる。
上述した<観察溶融繊維の本数の測定方法>において得られる不織布のSEM画像を用いる。このSEM画像における前述した「焦点の合った繊維」を任意に10本選択する。次いで、これら10本の繊維それぞれについて、溶融痕跡部T及び熱融着部P以外の任意の部分を選択し、その選択した部分における繊維の長手方向と直交する線を引く。この直交する線に沿う前記繊維の差し渡し長さを繊維径として測定する。斯かる測定は、前記焦点の合った繊維において、前記差し渡し長さを示す差し渡し線、即ち繊維の長手方向と直交する線と、繊維の輪郭を示す線とが互いに直交する位置で測定する。次いで、測定サンプルから取得した計5枚のSEM画像ごとに、前記10本の繊維について、繊維径の算術平均値を求める。斯かる算術平均値を、不織布の両面それぞれについて求め、これらの平均を平均繊維径とする。異なる繊維径を有する繊維が含まれている場合でも、上述のとおり測定を行う。
【0033】
本実施形態の不織布は、典型的には、熱可塑性繊維を主体とする。本実施形態の不織布の全構成繊維に占める熱可塑性繊維の割合は、少なくとも50質量%以上であり、好ましくは90質量%以上であり、100質量%でもよい。
【0034】
熱可塑性繊維の構成樹脂(熱可塑性樹脂)としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本実施形態の不織布に用いられる熱可塑性繊維をはじめとする合成繊維は、1種類の合成樹脂又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の合成樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯部と鞘部とからなる芯鞘構造を備える芯鞘型や、サイドバイサイド型等が挙げられる。
【0036】
不織布の柔軟性をより向上させる観点から、熱可塑性繊維は、構成樹脂としてポリエチレンを含むことが好ましく、少なくとも表面にポリエチレンを含むことがより好ましく、ポリエチレンからなることがさらに好ましい。
例えば、熱可塑性繊維として芯鞘構造を備える繊維を含む場合、熱可塑性繊維の好ましい一例として、芯部の樹脂成分がPE及びPPからなる群から選択される1種以上であり、鞘部の樹脂成分がPEであるものが挙げられる。特に、芯部の樹脂成分がPETであり、前記鞘部の樹脂成分がPEであることが好ましい。
【0037】
本実施形態の不織布は、熱可塑性繊維に加えて、該熱可塑性繊維以外の他の繊維を含有していてもよい。斯かる他の繊維としては、例えば、パルプやコットン等の天然繊維、レーヨンやリヨセル、テンセル等のセルロース系繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
不織布の柔軟性をより向上させる観点から、不織布は、天然繊維としてコットンを含むことが好ましい。
上記と同様の観点から、不織布は、セルロース系繊維として、レーヨン及びテンセルからなる群から選択される1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0038】
不織布の柔軟性及び強度をより向上させる観点から、不織布における他の繊維及び熱可塑性繊維の各含有量は以下の範囲内であることが好ましい。
不織布における他の繊維及び熱可塑性繊維の合計含有量に対する、該他の繊維の含有量の割合は、好ましくは0.1%以上、より好ましくは1%以上である。
また、前記割合は、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。
また、前記割合は、好ましくは0.1%以上20%以下、より好ましくは1%以上10%以下である。
斯かる割合は、不織布の全構成繊維に占める他の繊維の質量を、不織布の全構成繊維に占める他の繊維及び熱可塑性繊維の合計質量で除した値(質量%)である。
【0039】
本実施形態の不織布は吸収性物品用であり、吸収性物品の構成部材として使用される。ここでいう「吸収性物品」には、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品が広く包含され、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、生理用ショーツ、失禁パッド等が包含される。
【0040】
吸収性物品は、典型的には、着用者の肌から相対的に近い位置に配された液透過性の表面シートと、着用者の肌から相対的に遠い位置に配された液不透過性又は液難透過性若しくは撥水性の裏面シートと、両シート間に介在配置された液保持性の吸収体とを具備する。吸収性物品は、その外面を形成する外装体を具備するものであってもよい。
本実施形態の不織布は、構成部材として吸収性物品に好適に備えられる。吸収性物品の成形性又は強度をより確実に確保する観点から、当該不織布は、観察溶融繊維の合計本数が5本以上である面が、他の構成部材との接着面となるように配されていることが好ましい。
【0041】
本実施形態の不織布は、第1面よりも第2面が毛羽立っているので着用者の肌と直接接触し得る構成部材としても好適である。例えば、吸収性物品の外面を形成する裏面シート又は外装体として好適である。この場合、不織布は、吸収性物品において、好ましくは観察溶融繊維の合計本数が5本以上である面が、より好ましくは第1面が、非肌対向面側を向くように配されている。
【0042】
また、本実施形態の不織布が用いられた吸収性物品は、該不織布を表面シート及び前記裏面シートの何れか一方又は双方として備えてもよい。吸収性物品の成形性又は強度をより確実に確保する観点から、吸収性物品は、本実施形態の不織布を、裏面シートとして備えていることが好ましい。この場合、防漏性をより確実に確保する観点から、裏面シートは、液難透過性シートと前記不織布との積層シートからなることが好ましい。
【0043】
本実施形態の不織布は、基本的には、エアスルー法で得られた不織布単層からなるものであるが、吸収性物品の構成部材として用いられる場合、他の不織布やフィルム等をはじめとする他のシート材料と積層された状態になっていてもよい。
【0044】
次に、上述した実施形態の不織布の製造方法について説明する。本製造方法は、熱可塑性繊維を含む繊維ウエブにエアスルー方式で熱風を吹き付ける熱処理工程を有する。前記熱処理工程は、繊維ウエブの構成繊維どうしの交点を融着させて熱融着部を形成することで不織布化する工程である。
【0045】
繊維ウエブは、典型的には、熱可塑性繊維等の原料繊維を開繊機で開繊し、開繊された原料繊維をカード機でウエブ化することで製造される。原料繊維すなわち繊維ウエブの構成繊維としては、前述した不織布の構成繊維と同じものを用いることが好ましい。また、繊維ウエブの坪量は、上述した不織布の坪量の範囲に合わせることが好ましい。
繊維ウエブは、繊維径が互いに異なった複数種類の繊維を積層又は混合してなるものであってもよい。
【0046】
得られた繊維ウエブは、例えば樹脂製のメッシュベルトや、ワイヤーメッシュからなる金属製の無端縁ネット、通気孔が開いた金属製プレート、又は通気孔が開いていない金属製プレート等の上に載置して、該繊維ウエブ側から熱風又は水蒸気を吹き付けることで、繊維どうしの交点を熱融着させる。これにより、得られる不織布には、プレート又はネットと対向する面(以下、非吹き付け面ともいう)と、熱風の吹き付け面(以下、吹き付け面ともいう)との2つの面が形成される。斯かる不織布におけるこれら2つの面のうち、一方の面に溶融繊維F1が多く形成されて、当該面が第1面となり、他方の面が第2面となる。典型的には、吹き付け面が第1面となり、非吹き付け面が第2面となる。
【0047】
通常のエアスルー処理における熱風の温度は、繊維ウエブにおける構成繊維の融点のうち最も低い最低融点(例えば芯鞘型複合繊維の鞘部における融点)よりも10℃程度高い範囲に設定されるが、溶融痕跡部Tをより容易に形成する観点から、熱風の温度と構成繊維の最低融点との温度差は、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上である。
また、熱風の温度と構成繊維の最低融点との温度差は、現実的には好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃以下である。
また、熱風の温度と構成繊維の最低融点との温度差は、好ましくは5℃以上70℃以下、より好ましくは10℃以上50℃以下である。
なお、構成繊維の最低融点とは、芯鞘型複合繊維のように複数種類の樹脂を繊維が有する場合、それらの樹脂の中で最も融点が低いものの融点を指す。明確な融点が存在しない樹脂の場合は軟化点を指す。
【0048】
溶融繊維F1を有する不織布をより容易に形成する観点から、熱処理工程において繊維ウエブに吹き付けられる熱風の風速は、以下の範囲内であることが好ましい。
熱処理工程において繊維ウエブに吹き付けられる熱風の風速は、好ましくは0.3m/秒以上、より好ましくは0.5m/秒以上、さらに好ましくは0.8m/秒以上である。
熱風の風速は、好ましくは10m/秒以下、より好ましくは5m/秒以下、さらに好ましくは3m/秒以下である。
【0049】
熱処理工程において、繊維ウエブに熱風を吹き付ける時間(熱処理時間)は、従来のエアスルー不織布の製造方法と同程度であってもよいが、上記と同様の観点から、熱処理時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは3秒以上である。
また、製造スピードをできるだけ早くし製造コストを下げる観点から、熱処理時間は、好ましくは60秒以下、より好ましくは30秒以下である。
また、熱処理時間は、好ましくは1秒以上60秒以下、より好ましくは3秒以上30秒以下である。
【0050】
熱処理工程では、繊維ウエブに熱風を吹き付ける処理に代えて、繊維ウエブの片面のみを高温にし、もう片面から加圧する処理を行ってもよい。斯かる処理方法としては、例えば、ホットプレート上に繊維ウエブを載置して、該ホットプレートとは反対側の面から該繊維ウエブを加圧する方法が挙げられる。斯かる処理方法は、後述する高温加圧工程と同様の構成を採用することができる。
【0051】
熱処理工程により得られた不織布は、さらに、加熱されながらその厚み方向に加圧される高温加圧工程が施されてもよい。斯かる構成により、溶融痕跡部Tを容易に形成することができる。高温加圧工程は、例えば、加熱した金属製の2枚のプレート間で不織布を加圧することにより行うことができる。この場合、不織布は、2枚のプレートの両方から加圧荷重を加えられてもよく、何れか一方のプレートから加圧荷重を加えられてもよい。
【0052】
上記と同様の観点から、高温加圧工程は以下の条件で行うことが好ましい。
高温加圧工程における不織布の加熱温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上、よりさらに好ましくは136℃以上、よりさらに好ましくは140℃以上である。
また、前記不織布の加熱温度は、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下である。
また、不織布の加熱温度は、好ましくは120℃以上180℃以下、より好ましくは130℃以上160℃以下、さらに好ましくは135℃以上160℃以下、よりさらに好ましくは136℃以上160℃以下、よりさらに好ましくは140℃以上160℃以下である。
斯かる加熱温度は、例えば金属製の2枚のプレートのうち、不織布に加圧荷重を加える方のプレートの温度とする。
【0053】
高温加圧工程において不織布に加えられる加圧荷重は、好ましくは15N/cm以上、より好ましくは30N/cm以上である。
また、前記加圧荷重は、好ましくは200N/cm以下、より好ましくは100N/cm以下である。
また、前記加圧荷重は、好ましくは15N/cm以上200N/cm以下、より好ましくは30N/cm以上100N/cm以下である。
高温加圧工程において不織布を加熱しながら加圧する処理時間は、好ましくは2秒以上、より好ましくは3秒以上である。
また、前記処理時間は、好ましくは10秒以下、より好ましくは8秒以下である。
また、前記処理時間は、好ましくは2秒以上10秒以下、より好ましくは3秒以上8秒以下である。
【0054】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず適宜変更可能である。また上述した実施形態を組み合わせてもよい。
例えば、上述した実施形態における不織布は、その両面それぞれに溶融繊維F1が存在していたが、何れか一方の面のみに溶融繊維F1が存在していてもよい。
【0055】
本明細書において数値の上限値若しくは下限値又は上下限値が規定されている場合、上限値及び下限値そのものの値も含まれる。また、特に明示がなくても数値の上限値以下若しくは下限値以上又は上下限値の範囲内におけるすべての数値又は数値範囲が記載されているものと解釈される。
本明細書において、”a”及び”an”等は、一又はそれ以上の意味に解釈される。
本明細書における上述の開示に照らせば、本発明の様々な変更形態や改変形態が可能であることが理解される。したがって、特許請求の範囲の記載に基づく技術的範囲内において、本明細書に明記されていない実施形態についても本発明の実施が可能であると理解すべきである。
上述した特許文献の記載内容は、それらのすべてが本明細書の内容の一部として本明細書に組み入れられる。
【実施例
【0056】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0057】
〔実施例1〕
原料繊維として、芯成分がPET、鞘成分がPEからなる同心の芯鞘型複合繊維(芯鞘比50質量%:50質量%)からなる2.0dtexの熱可塑性繊維を用いた。斯かる原料繊維は、最低融点が120℃であった。この原料繊維を用いて、公知のカード機を用い常法に従って繊維ウエブを製造し、該繊維ウエブを事前に136℃に熱した金属製のプレート上に載置した状態で、エアスルー方式により熱風を吹き付ける熱処理工程を行って、エアスルー不織布を製造した。熱処理工程(エアスルー処理)における熱処理条件は表1に示すとおりであった。
【0058】
〔実施例2〕
実施例1と同様の繊維を用いて樹脂製メッシュベルト上でエアスルー不織布を製造した。そのあと高温加圧工程を行った。高温加圧工程の処理条件は表1に示すとおりとした。高温加圧工程は、150℃に熱した金属製のプレート上に、吹き付け面を下にした状態で不織布を載置した後、該不織布の上から金属製の錘を載せ、30cN/cmで5秒間加圧を行った。
【0059】
〔実施例3〕
繊度が異なる原料繊維を用いた点以外は、実施例2と同様の方法により、熱処理工程後に高温加圧工程を行って、エアスルー不織布を製造した。
【0060】
〔実施例4〕
熱風の風速及び熱風の温度を異ならせた点以外は、実施例2と同様の方法により熱処理工程後に高温加圧工程を行って、エアスルー不織布を製造した。
【0061】
〔実施例5〕
芯成分がPET、鞘成分がPEであって、同心の芯鞘型複合繊維(芯鞘比50質量%:50質量%)からなる1.2dtexの熱可塑性繊維で形成した繊維ウエブ(以下、「1.2dtex繊維ウエブ」という)と、芯成分がPET、鞘成分がPEであって、同心の芯鞘型複合繊維(芯鞘比50質量%:50質量%)からなる2.0dtexの熱可塑性繊維で形成した繊維ウエブ(以下、「2.0dtex繊維ウエブ」という)とを用意し、質量比が、1.2dtex繊維ウエブ:2.0dtex繊維ウエブ=2:3の比率で積層した積層ウエブを作製した。1.2dtex繊維ウエブの原料繊維の繊維径は、11.9μmであり、2.0dtex繊維ウエブの原料繊維の繊維径は、15.2μmであった。この積層ウエブを用いた点以外は、実施例4と同様の方法により熱処理工程後に高温加圧工程を行って、エアスルー不織布を製造した。熱処理工程では、積層ウエブにおける2.0dtex繊維ウエブ側が吹き付け面となるように熱処理を行った。
【0062】
〔実施例6〕
繊度が異なる原料繊維を用いた点以外は、実施例4と同様の方法によりエアスルー不織布を製造した。
【0063】
〔実施例7〕
実施例3と同様の繊維を用いて、さらに丸三産業株式会社製コットンを芯鞘型複合繊維の質量に対して1/12混綿させて繊維ウエブを作製した。その後実施例4と同様の方法により、熱処理工程後に高温加圧工程を行って、エアスルー不織布を製造した。
【0064】
〔実施例8〕
実施例1と同様の繊維を用いて、さらに丸三産業製コットンを芯鞘型複合繊維の質量に対して1/12混綿させて繊維ウエブを作製した。その後実施例4と同様の方法により、熱処理工程後に高温加圧工程を行って、エアスルー不織布を製造した。
【0065】
〔比較例1〕
比較例1では、繊度が異なる原料繊維を用いた点以外は、実施例1と同様の方法によりエアスルー不織布を製造した。比較例1の原料繊維の繊維径は15.5μmであった。
【0066】
〔比較例2及び3〕
高温加圧工程を行わなかった点以外は、比較例2では実施例4と同様の方法によりエアスルー不織布を製造し、比較例3では実施例6と同様の方法によりエアスルー不織布を製造した。
【0067】
〔比較例4〕
実施例5と同じ積層ウエブを用いた点以外は、比較例2と同様の方法によりエアスルー不織布を製造した。
【0068】
〔比較例5及び6〕
高温加圧工程を行わなかった点以外は、比較例5では実施例6と同様の方法によりエアスルー不織布を製造し、比較例6では坪量を少なくし実施例4と同様の方法によりエアスルー不織布を製造した。
【0069】
実施例及び比較例の不織布について上述した方法に従って測定した繊維径を表1に示す。同じ原料繊維を用いている実施例(例えば、実施例1及び2)や比較例について、表1では繊維径がわずかに異なっている場合があるが、これは、測定の実測値に若干のずれが生じたことによる。
実施例及び比較例のエアスルー不織布の両面、即ち非吹き付け面及び吹き付け面それぞれについて、前述した方法により、観察溶融繊維の合計本数を測定した。また、実施例1、比較例2、比較例5、及び比較例6の観察溶融繊維の合計本数について、非吹き付け面が吹き付け面の何倍であるかを、溶融繊維の本数の割合として求めた。実施例2~8、比較例1、比較例3、及び比較例4の観察溶融繊維の合計本数について、吹き付け面が非吹き付け面の何倍であるかを、溶融繊維の本数の割合として求めた。さらに、実施例1は非吹き付け面、それ以外は吹き付け面を接着面にして、接着強度を前述した方法により測定した。これら測定結果を表1に示す。
【0070】
実施例及び比較例のエアスルー不織布における吹き付け面及び非吹き付け面それぞれについて、前述した方法により、単位面積当たりの起毛した繊維の本数を計測した。その計測結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すとおり、各実施例のエアスルー不織布は、吹き付け面及び非吹き付け面の何れか一方の面における観察溶融繊維の合計本数が5本以上であり、吹き付け面において単位面積当たりの起毛した繊維の本数が少ないという結果となった。一方、各比較例のエアスルー不織布は、吹き付け面及び非吹き付け面の何れの面においても、観察溶融繊維の合計本数が5本未満であるという結果となった。また、観察溶融繊維の合計本数が5本以上の面を有する実施例では、比較例に比して、接着面の接着強度が何れも高い結果となった。これらの結果から、実施例における不織布は、接着性に優れた面を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、接着性に優れるエアスルー不織布である吸収性物品用不織布及びこれを備える吸収性物品を提供することができる。
図1
図2
図3
図4