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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】保護されたDO3Aの製造
(51)【国際特許分類】
   C07D 257/02 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
C07D257/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022535505
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2020085265
(87)【国際公開番号】W WO2021116165
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】19215900.2
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504448162
【氏名又は名称】ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】フェリガート,アウレリア
(72)【発明者】
【氏名】ガッツェット,ソニア
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-534299(JP,A)
【文献】特表2008-538371(JP,A)
【文献】国際公開第2016/022987(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/084504(WO,A1)
【文献】Tetrahedron Letters,2011年,Vol.52(17),p.2058-2061
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 257/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、
Xは塩素、ヨウ素または臭素アニオンであり;
yは1~3の整数であり;
RはC-Cアルキルまたはアリール基
である]
で示される保護されたDO3A塩の製造のためのワンステップ製造法であって、
1)サイクレンを、有機溶媒中、補助塩基の存在下で、式XCH C(O)ORで示される活性化された酢酸エステルと反応させて混合物を得;
2)ステップ1)の混合物に水を添加して、式(I)で示される保護されたDO3Aを固体の塩として含んでなる懸濁液を得;および
3)保護されたDO3A塩を回収し洗浄する
ことを含んでなる製造法。
【請求項2】
ステップ1)の混合物がさらに水を含んでなる、請求項1記載の製造法。
【請求項3】
ステップ1)の混合物中の水の量が、サイクレンの量の0.1倍~2倍(w/w)の量である、請求項2に記載の製造法。
【請求項4】
式(I)において、Xが臭素であり、Rがtert-ブチルである、請求項1~3のいずれかに記載の製造法。
【請求項5】
ステップ1)において、有機溶媒がDMACであり、補助塩基がNaOAcである、請求項1~4のいずれかに記載の製造法。
【請求項6】
ステップ1)の反応を、1:3~1:4(mol/mol)のサイクレン:ブロモ酢酸tert-ブチル比およびサイクレン:NaOAc比で実施する、請求項5に記載の製造法。
【請求項7】
サイクレン:ブロモ酢酸tert-ブチル比およびサイクレン:NaOAc比が、1:3~1:3.3である、請求項6記載の製造法。
【請求項8】
ステップ1)が
i)DMAC中のブロモ酢酸tert-ブチルの溶液を得ること;
ii)得られたその溶液を、DMAC中のサイクレンおよびNaOAcの懸濁液に添加すること
を含んでなる、請求項5~7のいずれかに記載の製造法。
【請求項9】
溶液中のブロモ酢酸tert-ブチルの濃度が3~5mol/Lであり、懸濁液中のサイクレンの濃度が0.5~1.0mol/Lである、請求項8記載の製造法。
【請求項10】
ブロモ酢酸tert-ブチル溶液を、0~25℃の温度にて撹拌したサイクレンおよびNaOAcの懸濁液に添加する、請求項8~9のいずれかに記載の製造法。
【請求項11】
DMAC中のサイクレンおよびNaOAcの懸濁液を0~15℃の温度にて撹拌する、請求項10に記載の製造法。
【請求項12】
ステップ2)で添加する水が、ステップ1)におけるサイクレンの量に対して2.5~10倍(w/w)の量である、請求項1~11のいずれかに記載の製造法。
【請求項13】
ステップ3)が、ステップ2)で得られた式(I)の保護されたDO3A塩を回収し、回収した塩を水で洗浄することを含む、請求項1~12のいずれかに記載の製造法。
【請求項14】
保護されたDO3A塩を、濾過または遠心分離によって回収する、請求項13に記載の製造法。
【請求項15】
洗浄水の量が、ステップ1)のサイクレンの量の4~20倍(w/w)である、請求項13または14に記載の製造法。
【請求項16】
回収した保護されたDO3A塩がDO3A-トリ-tert-ブチルエステルモノ臭化水素酸塩である、請求項1~15のいずれかに記載の製造法。
【請求項17】
DO3A-トリ-tert-ブチルエステルモノ臭化水素酸塩が少なくとも95%の純度を有する、請求項16に記載の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、有機化学に関し、特に保護されたDO3Aの製造に関する。より詳細には、本発明は、DO3A-トリ-tert-ブチルエステル(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸トリ-tert-ブチルエステル)などの保護されたDO3Aを塩としてワンステップで製造し単離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
磁気共鳴画像法(MRI)は、臨床診断において多くの疾患に使用されているよく知られている画像診断技術である。
【0003】
医療用MRIのめざましい発展は、それらが分布する組織/臓器/流体中の近傍の水のプロトン緩和率を劇的に変化させることにより作用し、非造影MRI画像で得られる印象深い解剖学的分解能に関連する生理学的情報を付加する、MRI造影剤と呼ばれる一群の化合物の発展からさらに恩恵を受けている。
【0004】
市販のMRI造影剤の例としては、MAGNEVIST(登録商標)として販売されている、DTPAリガンドなどの直鎖状キラントとGd3+イオンの錯体化合物;OMNISCAN(登録商標)として販売されているDTPA-BMAリガンドのGd3+錯体;ガドベン酸ジメグルミンとして知られておりMultiHance(登録商標)として販売されているBOPTAのGd3+錯体;並びに、DOTAREM(登録商標)として販売されている、DOTAリガンドなどの環状キラントとのGd3+錯体化合物;ProHance(登録商標)として長年販売されHPDO3Aとして知られる水酸化テトラアザ大環状リガンドのGd3+錯体、ガドブトロールとして知られGadavist(登録商標)として販売されている対応するブチルトリオール誘導体のGd3+錯体が挙げられる。
【0005】
これらの大環状キレートリガンドの多くの製造における重要な中間体は、DO3A(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸)およびその保護された誘導体、たとえば次式で示されるトリtert-ブチルエステルなどである。
【化1】
【0006】
DO3A-トリ-tert-ブチルエステルの製造は、一般的に以下の2つの主要な合成ルートに従って行われており、生成物は遊離塩基として、あるいはアルキル化剤のアニオンとの塩として単離される。
【0007】
生成物を臭化水素酸塩として単離することは、生成物を安定な形態で回収でき、分解することなく長期間にわたって便利に保存することができるため、大規模な製造において好ましいことが分かっている。必要であれば、後の反応に使用する前に、臭化水素酸塩を対応する遊離塩基に変換することができる。
【0008】
臭化水素酸塩としてDO3A-トリ-tert-ブチルエステルの合成と単離を最適化するために、長い間多くの努力が費やされてきた。
【0009】
WO93/02045は、NaOAcの存在下、ジメチルアセトアミド中でブロモ酢酸tert-ブチルを用いてサイクレンをトリスアルキル化する方法を開示しており、これは全体の収率56%で目的の臭化水素酸塩を得るのに19日の反応時間を要する。
【0010】
反応時間を60時間まで短縮できる手順が、MooreによりOrg. Synth. 2008, 85, 10-14に開示されており、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンとNaOAcをDMAC中でブロモ酢酸tert-ブチルと反応させ、粗反応物をジエチルエーテルで希釈し冷却して、トリtert-ブチルエステルの臭化水素塩を沈澱させることが記載されている。その後、溶解、洗浄、再沈殿を何度も繰り返す複雑で時間のかかる作業工程を経て、65~80%の収率で最終生成物を得ている。
【0011】
Jagadishら(Tetrahedron Lett., 2011, 52(17), 2058-2061)は、DMAC(ジメチルアセトアミド)中、NaOAcの存在下、室温にて、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンをブロモ酢酸tert-ブチルで24時間トリスアルキル化し、反応混合物を水に投入して透明な溶液とし、KHCOを添加することによりブロミド酸塩を沈澱させる方法を開示している。次に、得られた固体を回収し、CHClに溶解し、水で洗浄し、濃縮し、エーテルを加えて再結晶させると、約80%の収率で目的の生成物が得られる。
【0012】
US8,138,332は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンをDMAC(ジメチルアセトアミド)中、NaOAcの存在下、室温にて5日間、ブロモ酢酸tert-ブチルと反応させる製造方法を開示し、反応スラリーを大過剰の水(DMACに対して3.9:1(w/w))に投入して透明な水溶液を得、固体NaHCOで溶液のpHを9に調整し、溶液にKBrなどの塩を加えてDO3A-トリ-tert-ブチルエステルの臭化水素酸塩を沈殿させている。臭化水素酸塩は濾過により回収し、収率はおよそ73%である。
【0013】
上記の方法は、反応に数日を要し、さらに粗製物の精製に費用と時間がかかるため、大量生産には不向きであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ProHanceやGadobutrolのような大環状Gdベースの造影剤、より一般的にはDO3A誘導体への関心は高まっており、上記の欠点を克服し、この重要な出発物質をより大規模な、例えば工業規模で便利に製造できる最適な製造方法が強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本出願人は、予想外にも、有機溶媒中塩基の存在下で1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(または本明細書で互換的に用いられるサイクレン)をブロモ酢酸tert-ブチルなどの活性化された酢酸エステルと反応させて得られる原料の、水による希釈によって、粗反応物からそのDO3Aトリエステルを直接固体の塩として単離することが可能であることを見い出した。
【0016】
本発明は、一般に、DO3A-トリ-tert-ブチルエステルなどの、保護されたDO3Aの製造のための改良された方法に関するものであり、本化合物は水で希釈した有機粗反応物から直接固体の塩として回収される。
【0017】
より詳細には、本発明は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンを、有機溶媒中、補助塩基の存在下で、活性化された酢酸エステル、例えばtert-ブチルエステルと反応させて得られた粗混合物を、水で希釈した後、希釈した混合物から直接、固体の塩としてトリエステル生成物を回収することを本質的に含んでなる、エステルで保護されたカルボニル基を有するDO3Aの最適化された製造方法に関する。
【0018】
所望により、この製造方法は、試薬が混和している有機溶媒に補足的に水を添加することを含んでなる。
【0019】
本発明の一態様は、式(I)
【化2】
[式中、Xは塩素、ヨウ素または好ましくは臭素アニオンであり;yは1~3の整数、例えば1、2または3であり、RはC-Cアルキル基またはアリール基である]
で示される保護されたDO3A塩をワンステップで製造する製造法に関し、該製造法は、本質的に、以下を含んでなる:
1)サイクレンを、有機溶媒中、補助塩基の存在下で、式XCH C(O)ORで示される活性化された酢酸エステルと反応させ、粗反応混合物を得;
2)ステップ1)の粗混合物に水を加え、式(I)で示される固体の塩の形態の保護されたDO3Aを含む懸濁液を得;および
3)保護されたDO3A塩を回収し、洗浄する。
【0020】
ステップ1)の反応に用いる有機溶媒としては、好ましくはDMF、DMSO、MeCN、DMACなどの双極性非プロトン性溶媒を挙げることができる。より好ましくは、有機溶媒はDMACである。補助塩基は、好ましくは、NaOAc、NaHCO、NaCO、KHCO、KCO、DIPEA、トリエチルアミンなどの弱塩基から選択され、より好ましくはNaOAcである。
【0021】
好ましくは、上記式(I)において、Xは臭素であり、yは1または2であり、より好ましくは、yは1である。一実施形態では、上記式(I)において、Rはベンジルであり、より好ましくは、RはC-Cアルキルである。
【0022】
本発明におけるC-Cアルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの、1~6個の炭素原子からなる直鎖又は分枝鎖が挙げられる。最も好ましくは、式(I)において、Rはtert-ブチルである。
【0023】
ある実施形態において、ステップ1の反応混合物は、さらに水を含む。
【0024】
好ましい実施形態では、本製造法のステップ1)は、トリ-tert-ブチルエステルとして保護されたDO3A、例えばDO3A-トリ-tert-ブチルエステルモノ臭化水素塩の製造のために、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンとブロモ酢酸tert-ブチルとを反応させることを含んでなる。
【0025】
有利なことに、本発明の製造方法は、粗反応混合物から直接、良好な収率と最適な純度でDO3A-トリ-tert-ブチルエステルを臭化水素塩として回収することができ、したがって、さらなる複雑で時間のかかる精製または再結晶を必要とせずに、そのまま使用(または便利に保存)することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
一実施形態において、本発明は、式(IA)
【化3】

[式中、yは1~3の整数であり、好ましくは1~2であり、より好ましくは1である]
で示されるDO3A-トリ-tert-ブチルエステルの塩の製造のためのワンステップ製造法に関し、該製造法は、
1)サイクレンを、有機溶媒中、補助塩基の存在下で、ブロモ酢酸tert-ブチルと反応させて混合物を得;
2)ステップ1)の混合物に水を加えて、式(IA)で示されるDO3A-トリ-tert-ブチルエステルを固体の塩として含む懸濁液を得;および
3)DO3A-トリ-tert-ブチルエステルの塩を回収し、洗浄する
ことを含んでなる。
【0027】
ステップ1
本製造法のステップ1)は、以下の合成スキーム1に示されるように、サイクレンとブロモ酢酸tert-ブチルを反応させることを含んでなる。
【化4】
【0028】
このステップは、一般に、有機溶媒中、補助塩基の存在下で、ブロモ酢酸tert-ブチルをサイクレンに加え、DO3A-トリ-tert-ブチルエステルを固体の塩として含む混合物を得ることを含んでなる。
【0029】
例えば、サイクレンと補助塩基をまず有機溶媒中で混合して混合物とし、次いでブロモ酢酸tert-ブチルを加える。
【0030】
一実施形態では、ブロモ酢酸tert-ブチルは、事前に希釈することなく、そのまま混合物中に添加される。
【0031】
好ましい実施形態において、本発明の製造法のステップ1)は、
i)有機溶媒中のブロモ酢酸tert-ブチルの溶液を得ること、およびii)得られた溶液を、同じ有機溶媒中のサイクレンおよび補助塩基の混合物に加えること
を含む。好適な有機溶媒としては、上記したような双極性非プロトン性溶媒が挙げられ;好ましい実施形態では、本発明の製造法で使用するための有機溶媒は、DMACである。
【0032】
例えば、ブロモ酢酸tert-ブチルをまず、例えば室温で、DMACで希釈し、好ましくは3~7mol/L(ここでLはDMACを指す)、より好ましくは3~5mol/L、最も好ましくは約4~5mol/Lの濃度のブロモ酢酸tert-ブチル溶液とする。
【0033】
次いで、得られた溶液を、DMAC中のサイクレンと補助塩基の混合物に添加する。好ましくは、混合物中の補助塩基は弱塩基であり;好ましい実施形態では、NaOAcである。より典型的には、混合物は懸濁液である。
【0034】
いくつかの実施形態では、ステップ1)のDMAC中のサイクレンと補助塩基の混合物は、ある特定の量の水(または希釈水)をさらに含んでいてもよい。
【0035】
存在する場合、希釈水の量は、(重量で)混合物中のサイクレンの量の0.1~2倍、より好ましくは0.5~1.5倍である。より好ましくは、サイクレンの重量と実質的に等しい量である。
【0036】
本製造法は、好ましくは、DMAC(および所望により水)中のサイクレンおよびNaOAcの懸濁液を調製することを含んでなり、サイクレンの最終濃度は、0.5~1.0、好ましくは0.6~1.0、最も好ましくは0.6~0.85mol/Lである。次いで懸濁液中に加えるブロモ酢酸tert-ブチルの量は、サイクレンの所望のトリアルキル化をもたらすのに十分な量であり、望ましくないさらなるアルキル化を回避する量である。
【0037】
一実施形態では、ステップ1)のアルキル化反応は、1:3(mol/mol)の実質的に化学量論的な比率のサイクレン:ブロモ酢酸tert-ブチルを使用して実施される。別の実施形態では、1:3~1:4(mol/mol)のサイクレン:ブロモ酢酸tert-ブチル比に対応する、例えば約1~30%、好ましくは1~10%過剰のブロモ酢酸tert-ブチルを使用してもよい。同様に、一実施形態では、1:3のサイクレンと弱塩基NaOAcの実質的に化学量論的な比率が使用され、別の実施形態では、化学量論量に対して1~30%、好ましくは1~10%の範囲で過剰の塩基が使用されてもよい。
【0038】
得られたサイクレン及びNaOAcの懸濁液を、攪拌下、0~25℃の温度に維持した状態で、適量のブロモ酢酸tert-ブチル溶液を加えることが好ましい。
【0039】
この添加は、好都合には、1~4時間、好ましくは2~3時間の間に行う。
【0040】
添加後、反応混合物は、アルキル化反応が完了するまで、例えば約16~48時間、撹拌下で維持する。
【0041】
一実施形態では、ブロモ酢酸tert-ブチルの添加および反応の完了は、同じ温度、例えば0~25℃、好ましくは5~15℃、より好ましくは10~15℃、例えば約12℃にて行い、その後、得られた反応混合物を25℃に昇温(または維持)し、この温度で約2~4時間撹拌する。
【0042】
別の実施形態では、ブロモ酢酸tert-ブチルの添加は、より低い温度、好ましくは0~15℃の温度で行い、アルキル化反応の完了は、より高い温度、好ましくは20~35℃にて実施する。
【0043】
例えば、一実施形態では、本製造法のステップ1)は、DMAC中のブロモ酢酸tert-ブチルの溶液を、約10℃の温度にて、同じ溶媒(および所望により水)中のサイクレンおよびNaOAcの懸濁液に加えることを含んでなり、これは約2.5時間の間に実施し、その間は反応混合物の温度を10~15℃に維持する。次いで、得られた反応混合物をこの温度にて攪拌しながらアルキル化が完了するまで、例えば20~48時間、好ましくは20~30時間、より好ましくは20~25時間維持する。完了後、反応混合物の温度を好ましくは室温(例えば約25℃)に上昇させ、この混合物をこの温度でさらに2~4時間攪拌しながら維持する。
【0044】
別の実施形態では、ブロモ酢酸tert-ブチル溶液の添加後、得られた反応混合物の温度を、例えば23~35℃に上げ、混合物をこの温度でアルキル化が完了するまで攪拌しながら維持する。好ましくは、反応混合物を25~30℃の温度で20~30時間、好ましくは20~25時間、攪拌下に放置する。
【0045】
上記の条件下で、サイクレンの選択的トリアルキル化が得られ、懸濁液中にDO3A-トリ-tert-ブチルエステルが固体の塩として、例えば臭化水素酸塩の混合物として、より典型的にはモノ臭化水素酸塩として、形成する。
【0046】
こうして粗混合物、典型的には懸濁液またはスラリー、が得られ、固体の懸濁相中に、DO3A-トリ-tert-ブチル塩(例えば臭化水素酸塩として)、副生成物の塩(例えばNaBr)、および場合により微量の未反応の塩基および/または有機不純物を含んでなる。
【0047】
ステップ2
ステップ2)は、ステップ1)で得られた原料スラリーに、水(本明細書では「ワークアップ水」とも称する)を添加することによって都合よく実施される。
【0048】
出願人は、意外にも、本製造法のステップ1)で回収されたスラリーに水を適切に添加することにより、実際に、副生成物および未反応成分を可溶化するとともに、得られた粗懸濁液中の本質的に唯一の固体としてDO3A-トリ-tert-ブチルエステルの塩(臭化水素酸塩)を残存させ、回収することができることを見い出した。
【0049】
ステップ1)から回収した粗混合物に添加する水の量(重量)は、例えば、アルキル化反応に供されるサイクレンの量(重量)に対して、適切に決定することができる。
【0050】
ワークアップ水の適切な量(重量)は、アルキル化反応に供される出発物質のサイクレンの量に対して、例えば10倍以下であってよい。このようなワークアップ水の量は、一般に、DMAC中のサイクレンおよび補助塩基を含んでなる最初の反応混合物中の任意の量の水の存在(但しこの任意の量はサイクレンの量の2倍を超えない)には依存しない。
【0051】
好ましい実施形態では、本製造法のステップ2)は、ステップ1)で得られた原料スラリーを、アルキル化反応を受けるサイクレンの量(w/w)の好ましくは2倍を超える(例えば約2.5倍)量のワークアップ水で希釈することによって実施される。好ましくは、この水の量は、重量で、反応中のサイクレンの量(w/w)の3~10倍、より好ましくは3~8倍、最も好ましくは3~6倍、特に好ましくは4~6倍、例えば約4倍、約5倍又は約6倍である。
【0052】
実際に、実験結果によって確認されるように、ステップ1)で得られた粗懸濁液を、2倍を超える量の水(例えば、出発物質のサイクレン(トリアルキル化を受けた)の量(重量)の2.5~8倍、好ましくは3~8倍に相当する量)で希釈すると、目的の生成物の損失を回避しつつ、懸濁液中の望ましくない塩/不純物のほとんどを可溶化することができ、したがって目的の生成物が良好な収率と純度で得られる。
【0053】
希釈は、典型的には、15~20℃の精製水(例えば、Milli-Q又は逆浸透膜によって精製された水)を用いて行われる。
【0054】
好ましくは、希釈は、20~25℃、より好ましくは約20℃の温度で、約0.5~1時間、より好ましくは約0.5時間の間に実施される。
【0055】
特に好ましい実施形態では、本製造法のステップ2)は、ステップ1)で回収した懸濁液を、ある量の上記の精製水(好ましくは、出発物質のサイクレンの量(重量)の3~8倍、より好ましくは3~6倍、最も好ましくは4~6倍)で、20~25℃の温度にて約30分間の間に希釈した後、粗混合物を約20℃にて撹拌しながら0.5~3時間、好ましくは約2時間維持することを含む。
【0056】
こうして懸濁液が得られ、ここで固相は、DO3A-トリ-tert-ブチルエステルの臭化水素酸塩、および場合により、微量の残留する不要な反応塩から本質的になる。懸濁液中の水の総量(すなわち、ステップ2)で添加した水と所望によりステップ1)の水を含む)は、ステップ1)で添加したサイクレンの量(w/w)の少なくとも2.5倍、より好ましくは少なくとも3倍、さらに好ましくは少なくとも4倍であり、最大でサイクレンの量の10倍、好ましくは最大で8倍である。
【0057】
ステップ3
本製造法のステップ3)は、ステップ2)で得られた懸濁液中に存在する固体の生成物を回収し、洗浄することを含む。固体は、当業者に公知の手順を用いて都合よく回収できる。
【0058】
一実施形態では、固体は粗懸濁液の濾過によって回収する。
【0059】
工業規模で実施する場合に特に好ましい別の実施形態では、本製造法のステップ2)で得られた懸濁液を遠心分離にかけ、液相中の残留量のDMAC、水、可溶化した反応塩および場合により液体の不純物を除去し、粗製物を固体の塩として含む湿潤固体を得た後、固体の塩を回収する。
【0060】
遠心分離は、通常、高速(例えば、1800~2500rpm)で行う。
【0061】
次いで、粗製物を含む回収したケーキを洗浄する。
【0062】
好ましくは、回収した粗製物を水(即ち「洗浄水」)で洗浄する。
【0063】
1つの好ましい実施形態では、粗製物を含む回収された湿潤固体は、反応に供されたサイクレンの重量の4~20倍の量の水で洗浄する。
【0064】
この場合において、残留した塩/不純物を溶解し除去することが可能な水の適切な量は、好ましくは、本製造法のステップ2)において原料スラリーに添加される水の量に対して決定される。
【0065】
実際、ステップ2)における原料混合物のより少ない希釈は、より大量の水を用いたステップ3)からの粗製物の洗浄と好ましく関連することは、当業者には明らかである。逆に、原料混合物のより大量の水を用いた希釈は、より少量の洗浄水を使用することを可能にする。
【0066】
例えば、実験結果によって確認されるように、本製造法のステップ1)で得られた原料スラリーを、出発物質のサイクレンの量(重量)の約8倍の量(w/w)のワークアップ水で希釈すると、ステップ3)で回収された粗製物は、サイクレンの重量の2~8倍、より好ましくは2~4倍に相当する量の洗浄水で適切に2回洗浄でき、依然として生成物を最適な純度で得ることができる。
【0067】
その代わり、原料スラリーが、例えばサイクレンの重量に対して約3~4倍の低い量のワークアップ水で希釈される場合、回収された粗製物は、好ましくは、例えば出発物質のサイクレンの重量に対して4~10倍、より好ましくは4~8倍の高い量の水で2回洗浄される。
【0068】
好ましい実施形態では、本製造法のステップ1)で得られた原料スラリーは、サイクレンの量(重量)の約4倍の量の水で希釈して粗製物を得た後、サイクレンの量(重量)の約4倍の量の水でそれぞれ2回洗浄され、この場合、有機溶媒:水の総量の比率は約1:1~1:1.1(w/w)に相当する。
【0069】
洗浄後、生成物を、例えば固体の濾過または遠心分離によって回収し、次いで湿潤生成物を、例えば室温(r.t.)以上の温度および/または減圧下で乾燥させる。
【0070】
1つの好ましい実施形態では、生成物は、35~40℃の温度および減圧下(例えば、5~25mbar)で20~25時間乾燥し、73~83%の収率でDO3A-トリ-tert-ブチルエステルがモノ臭化水素酸塩として得られる。
【0071】
上記の説明は、DO3A-トリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩、すなわちXが臭素アニオンでありRがtert-ブチルである式(I)の化合物の製造について具体的に言及するものであるが、当業者は、開示された本製造法が、式(I)の化合物[ここで、Xは塩素、フッ素またはヨウ素アニオンであり、yは2または3であり、Rはベンジルまたは、好ましくはtert-ブチル以外のC-Cアルキルである]の製造についても同様に実施できることを認識する。
【化5】
【0072】
本発明の製造法の使用によって、有利なことに、反応時間およびワークアップ時間の両方を大幅に短縮することが可能である。
【0073】
例えば、本発明の製造法は、既知の方法で必要とする反応時間よりも十分に短い、約24時間の反応時間で、約83%、または工業規模で実施する場合にはさらに高い収率で、目的の生成物を得ることが可能である。
【0074】
より具体的には、提示した製造法は、粗反応混合物(DMACなどの有機溶媒中、NaOAcなどの弱塩基の存在下で、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンをブロモ酢酸tert-ブチルと反応させて得られる)から、単純にこの粗反応混合物を水で希釈し、固体の臭化水素酸塩を回収して水で洗浄するだけで、上記の収率および少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%、例えば最大99.5%の純度で、DO3A-トリ-tert-ブチルエステルを臭化水素塩として直接得ることが可能である、したがって、回収された生成物は、有利なことに、高価でかつ/または時間のかかる更なる精製または再沈殿または再結晶の工程を必要とせずに、そのまま使用することができ、本製造法は、大規模な生産、例えば工業生産、にとって特に有利である。
【0075】
回収された臭化水素酸塩の純度は、例えば、回収された化合物の構造を確認し分析する対標準のNMR、純度を測定するための、及び滴定により残留NaBrの存在を決定するためのHPLC、などの種々の分析方法によって決定することができる。
【0076】
別の態様において、本発明は、式(II)
【化6】

[式中、RおよびRは共に-CHOHであるか、またはRがHであり、Rが-CHである]
で示される大環状キレートリガンド、またはFe2+、Fe3+、Cu2+、Cr3+、Gd3+、Eu3+、Dy3+、La3+、Yb3+もしくはMn2+、またはアルカリ土類金属イオンからなる群から選択される常磁性金属イオンとのそのキレート錯体、あるいはその塩を製造するための新規な製造方法に関し、該製造法は以下を含んでなる:
a)上記の合成法に従って、DO3A-トリ-tert-ブチルエステルの臭化水素酸塩を調製すること;
b)得られた臭化水素酸塩を式(II)の所望のリガンドに変換すること;および
c)場合により、得られたリガンドを金属イオンと錯体形成させ、その錯体を単離すること。
【0077】
好ましくは、常磁性金属イオンはGd3+であり、アルカリ土類金属イオンはCa2+であり、調製されるキレート錯体はガドブトロール、ガドテリドールまたはカルテリドールである。
【0078】
より好ましくは、金属イオンはGd3+であり、調製されるキレート錯体は、次式で示されるガドテリドールまたはガドブトロールである。
【化7】
【0079】
より詳細には、さらなる態様において、本発明は、以下を含むガドテリドールまたはガドブトロールの合成のための新規製造法に関する:
a)本発明の製造法に従って、DO3A-トリ-tert-ブチルエステルを臭化水素酸塩として調製すること;
b)得られた臭化水素酸塩を式(II)の所望のリガンドに変換すること;および
c)得られたリガンドをGd3+金属イオンと錯体形成させ、それぞれガドテリドールまたはガドブトロール錯体を単離すること。
【0080】
上記製造法において、DO3A-トリ-tert-ブチルエステルを臭化水素酸塩として調製することを含んでなるステップa)は、上記で詳細に記載しているように、本発明の製造法によって行い、ステップb)およびc)は、実験条件およびその任意の変形を含め当該分野で周知の手順で行う。
【0081】
例えば、ステップb)は、i)回収した臭化水素酸塩の中和とその脱保護により、カルボキシル基が脱保護された酸の形態のDO3Aリガンドを得ること;およびii)DO3Aをアルキル化して酸の形態の目的のリガンドを達成すること、を含んでいてもよい。
【0082】
ステップa)から回収した臭化水素酸塩の中和および保護基の脱離は、公知の技術(例えば、塩基の存在下での加水分解、またはトリフルオロ酢酸による処理)に従って実施することができる。次いで、得られたDO3Aのアルキル化を、例えば、以下のように実施することができる。例えばEP0988294に開示されているような適当なエポキシドを使用して、所望の10-(2-ヒドロキシプロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(HPDO3A)または[10-[2,3-ジヒドロキシ-1-(ヒドロキシメチル)プロピル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-三酢酸(DO3Aのブチルトリオール)リガンドを得ることができる。
【0083】
あるいは、式(II)のリガンドは、ステップa)から回収した臭化水素酸塩、または別のステップで実施した塩の中和後に回収したDO3A-トリ-tert-ブチルエステルを、塩基の存在下でアルキル化することにより調製することができる。アルキル化反応は、例えば、以下のスキーム1で概略的に示されるように、エステルと任意で保護されたアルキル化基との反応、またはエポキシドとの反応などの、慣用の手順に従って行うことができる。
【化8】
【0084】
得られたアルキル化エステルは、次に、例えばトリフルオロ酢酸の使用により、慣用の技術に従って脱保護することにより、脱保護されたリガンドが得られる。
【0085】
ステップb)で得られたリガンドのガドリニウムとの錯体形成を含む本製造法のステップc)は、例えば、リガンドの溶液に、適当なGd(III)誘導体、特にGd(III)の塩または酸化物を、例えばEP230893に記載されている周知の実験方法に従って、化学量論的に添加することにより実施することができる。
【0086】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明の方法に従って得られたDO3A-トリ-tert-ブチルエステルの臭化水素酸塩が、WO2017/098038、WO2017/098044またはWO2018/108780に開示される化合物の調製のための出発物質として使用される、新規製造法に関するものである。
【0087】
本発明の製造法で使用される、溶媒を含むすべての出発物質、およびNaOAcまたは他の塩基などの補助的な反応物質は、商業的に入手可能である。
【0088】
本発明の製造法に関するさらなる詳細は、本発明の製造法に用いられる操作条件の一般的な参考として、以下の実験セクションに記載する。
【0089】
実験パート
用語の略称および定義
【0090】
DO3A-トリ-tert-ブチル-HBrのアッセイのHPLC
一般的手順
回収したDO3A-トリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩のHPLC特性評価
本発明の製造法で得られたDO3A-トリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩のHPLC特性評価を、液体クロマトグラフAgilent 1100システムを用いて実施した。HPLC測定の実験設定を以下に要約する。

分析条件
【0091】
DO3A-トリ-tert-ブチル-HBrの臭化物アッセイの測定
一般的手順
回収したDO3A-トリ-t-ブチル HBr中の臭化物イオン含有量の定量を、公知の手順に従い、Ag/AgCl複合電極と0.1N硝酸銀溶液を用いた電位差滴定により行う。
【実施例
【0092】
実施例1:DO3A-トリ-tert-ブチルエステルモノ臭化水素酸塩の合成:
出発物質のサイクレンに対し、ワークアップ水4xおよび洗浄水2(4x)(w/w)
以下の合成スキームに従って合成を実施する。
【化9】
DMAC(99kg;105.3L)中の市販の1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(15.1kg;87.65mol;濃度=0.83mol/L(DMAC))と酢酸ナトリウム(22.65kg;276.11mol)の懸濁液に、DMAC(53.23kg;56.63L)中のブロモ酢酸tert-ブチル(53.87kg;276.11mol;濃度=4.88mol/L(DMAC))を10℃で2時間半かけて添加した。次いで、温度を25℃に上げ、混合物を24時間攪拌した。次に、水(60.0kg;出発物質のサイクレンに対する比率4:1w/w)を0.5時間の間に添加した。2時間後、混合物を遠心分離し、回収したケーキを水で洗浄(2x 60.0Kg=2x 出発物質のサイクレンに対する比率4:1w/w)した。湿った固体を真空下で乾燥させ、38,43kgの所望の臭化水素酸塩を白色粉末として得た。
収率:73.5%
標題のHPLC:(標準に対して)100%である
標題のNMR:(標準に対して)99.86%である
臭素アッセイ:100.7%
【0093】
実施例2:DO3A-トリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩の合成
出発物質のサイクレンに対し、ワークアップ水4xおよび洗浄水5.3x+4x(w/w)
DMAC(59.3kg;63.1L)中のサイクレン(9kg;52.24mol;0.83mol/L)および酢酸ナトリウム(13.5kg;164.57mol)を反応器に入れた。得られた懸濁液を、25℃にて30分間撹拌しながら維持する。次に、懸濁液を10℃に冷却し、DMAC(31.9kg;33.9L)中のブロモ酢酸tert-ブチル(32.1kg;164.57mol;4.85mol/L)の溶液を3時間の間に加えた。次いで、パイプラインをDMAC(2.15kg;2.29L)で洗浄した後、反応混合物に加えた。その後、温度を25℃に上げ、混合物を24時間攪拌した。次に、水(36.1kg;出発物質のサイクレンに対する比率4:1w/w)を0.5時間の間に加え、2時間後に混合物を遠心分離し、ケーキを水で洗浄した(47.4kg+36.5kg)。湿った固体を真空下で乾燥させ、22.70kgの臭化水素酸塩を得た。
収率:72.8%。
標題のHPLC:(標準に対して)100%である
標題のNMR:(標準に対して)99.86%である
臭素アッセイ:100.6%
【0094】
実施例3:DO3A-トリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩の合成
出発物質のサイクレンに対し、ワークアップ水4xおよび洗浄水2(4x)(w/w)
DMAC(59.15kg;62.93L)中のサイクレン(9kg;52.24mol;0.83mol/L)および酢酸ナトリウム(13.5kg;164.57mol)を反応器に入れた。得られた懸濁液を、25℃で30分間撹拌しながら維持する。次に、懸濁液を10℃に冷却し、DMAC(31.85kg;33.88L)中のブロモ酢酸tert-ブチル(32.14kg;164.74mol;4.86mol/L)の溶液を3時間の間に加えた。パイプラインをDMAC(2.15kg;2.29L)で洗浄した後、反応混合物に加えた。その後、温度を25℃に上げ、混合物を24時間攪拌した。その後、水(36kg)を0.5時間の間に加え、2時間後に混合物を遠心分離し、ケーキを水(36.7kg+36.8kg)で洗浄した。湿った固体を真空下で乾燥させ、24.16kgの臭化水素酸塩を得た。
収量:76.7%。
標題のHPLC:(標準に対して)100%である
標題のNMR:(標準に対して)98.84%である
臭素アッセイ:99.9%
【0095】
実施例4:DO3A-トリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩の合成
出発物質のサイクレンに対し、ワークアップ水4x(w/w)および洗浄水2(4x)(w/w)
DMAC(72.5mL)中のサイクレン(10.0g;58.05mmol)および酢酸ナトリウム(17.9g;217.68mmol)を反応器に入れた。得られた懸濁液を攪拌下(250rpm)、25℃にて30分間維持した。次に、この懸濁液を12℃にて冷却し、DMAC(37.5mL)中のブロモ酢酸tert-ブチル(42.5g;217.68mmol)の溶液を12℃にて1時間半かけて加えた。混合物をこの温度で24時間撹拌した後、25℃に加熱し、この温度で2時間撹拌した。約18~20℃にて冷却した後、水(40mL)を0.25時間の間に加え、1時間後に混合物を多孔質セプタムP3で濾過し、水(40mL+40mL)で洗浄した。湿った固体を真空下で乾燥させた。
収率:82.9%
HPLC面積%:99.2%
標題のNMR(標準に対して):97.6%
臭素アッセイ:102.0%
【0096】
実施例5:DO3A-トリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩の合成
出発物質のサイクレンに対し、希釈水1x、ワークアップ水8xおよび洗浄水2(2x)(w/w)
DMAC(72.5mL)中のサイクレン(10.0g;58.05mmol)および酢酸ナトリウム(17.9g;217.68mmol)を反応器に入れた。得られた懸濁液を攪拌下(250rpm)、25℃にて30分間維持した。次に、この懸濁液を12℃にて冷却し、水(10mL)を加えた。温度を12℃に維持しながら、DMAC(37.5mL)中のブロモ酢酸tert-ブチル(42.5g;217.68mmol)の溶液を2.25時間かけて添加した。混合物をこの温度で24時間撹拌した後、25℃に加熱し、この温度で2時間撹拌した。約18~20℃にて冷却した後、水(80mL)を0.5時間の間に加え、1時間後に混合物を多孔質セプタムP3で濾過し、水(20mL+20mL)で洗浄した。湿った固体を真空下で乾燥させた。
収率:80.4%
HPLC面積%:98.1%
標題のNMR(標準に対して):97.7%
臭素アッセイ:103.6%
【0097】
実施例6:DO3A-トリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩の合成
出発物質のサイクレンに対し、希釈水1x、ワークアップ水8xおよび洗浄水2(2x)(w/w)
DMAC(72.5mL)中のサイクレン(10.0g;58.05mmol)および酢酸ナトリウム(16.7g;203.17mmol)を反応器に入れた。得られた懸濁液を攪拌下(250rpm)、25℃にて30分間維持した。次に、この懸濁液を0℃にて冷却し、水(10mL)を加えた。温度を0℃に維持しながら、DMAC(37.5mL)中のブロモ酢酸tert-ブチル(39.6g;203.17mmol)の溶液を2.25時間かけて添加した。混合物をこの温度で24時間撹拌した後、25℃に加熱し、この温度で2時間撹拌した。約18~20℃にて冷却した後、水(80mL)を0.5時間の間に加え、1時間後に混合物を多孔質セプタムP3で濾過し、水(20mL+20mL)で洗浄した。湿った固体を真空下で乾燥させた。
収率:77.3%
HPLC面積%:98.3%
標題のNMR(標準に対して):97.5%
臭素アッセイ:106.9%
【0098】
実施例7:DO3A-トリ-tert-ブチルエステル臭化水素酸塩の合成
出発物質のサイクレンに対し、ワークアップ水2xおよび洗浄水2(2x)(w/w)
DMAC(72.5mL)中のサイクレン(10.0g;58.05mmol)および酢酸ナトリウム(15.0g;182.85mmol)を反応器に入れた。得られた懸濁液を攪拌下(250rpm)、25℃にて30分間維持した。次に、この懸濁液を10℃にて冷却し、DMAC(38.0mL)中のブロモ酢酸tert-ブチル(35.7g;182.85mmol)の溶液を11℃にて2.5時間かけて加えた。次に、温度を1時間の間に25℃まで上げ、混合物をこの温度で24時間攪拌した。約18~20℃にて冷却した後、水(20mL)を0.5時間の間に加え、2時間後に混合物を多孔質セプタムP3で濾過し、水(20mL+20mL)で洗浄した。湿った固体を真空下で乾燥させた。
収率:72.6%
HPLC面積%:99.0%
標題のNMR(標準に対して):95.9%
臭素アッセイ:104.3%
【0099】
実施例8:水の量の影響の評価
1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンと、DMAC中のブロモ酢酸tert-ブチルおよびNaOAcとの反応によって得られる粗スラリーに添加する適切な水の量を決定するため、出発物質のサイクレン10g、同じ量のDMAC(総量110ml)およびブロモ酢酸tert-ブチルを用い、ブロモ酢酸tert-ブチル:サイクレンの比を固定し、ワークアップ/洗浄水の量を変えて試験を実施した。
【0100】
DMAC(72.5mL)中のサイクレン(10.0g;58.05mmol)および酢酸ナトリウム(15.0g;182.85mmol)を反応器に入れた。得られた懸濁液を攪拌下(250rpm)、25℃にて30分間維持する。次に、この懸濁液を10℃にて冷却し、DMAC(37.5mL)中のブロモ酢酸tert-ブチル(35.7g;182.85mmol)の溶液を10℃にて2.5時間かけて添加する。次いで、温度を1時間の間に25℃に昇温し、混合物をこの温度で24時間攪拌した。約18~20℃にて冷却した後、0.5時間の間に所定量の水(以下の表参照)を加え、2時間後に混合物を多孔質セプタムP3で濾過し、水で洗浄した。湿った固体を真空下で乾燥させた。種々の量のワークアップ水及び洗浄水(水の量は、出発物質のサイクレンの量に対する重量部として示す)を用いて実施した種々の試験結果を、以下のTable 1に示す(回収した生成物の純度は、HPLC(面積%)及び標題のNMR(対標準)として示す)。
【表1】
【0101】
結果
これらは実験室スケールで実施した試験で得られたものであるが(結果として、パイロットプラントまたは工業プラントと比べて洗浄と濾過の効率は落ちる)、上記の表に示した結果は、特定された実施条件により、目的の生成物を、良好な収率と、95%を超える最適な純度で単離することができ、更なるワークアップまたは精製を必要とせずにそのままで使用できることが確認された。