(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】キャンドモータポンプおよびその配管方法
(51)【国際特許分類】
F04D 13/06 20060101AFI20241115BHJP
F04D 29/60 20060101ALI20241115BHJP
F04D 13/14 20060101ALI20241115BHJP
F16L 23/026 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
F04D13/06 J
F04D29/60 E
F04D13/14
F16L23/026
(21)【出願番号】P 2022569954
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045657
(87)【国際公開番号】W WO2022131168
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2020207336
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000176383
【氏名又は名称】三相電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】曹 銀春
(72)【発明者】
【氏名】下山 直毅
(72)【発明者】
【氏名】内海 伸昭
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-025373(JP,A)
【文献】特開昭64-064536(JP,A)
【文献】特開2004-332666(JP,A)
【文献】特表2018-513336(JP,A)
【文献】特開昭48-103957(JP,A)
【文献】実開昭60-107687(JP,U)
【文献】実開昭52-086702(JP,U)
【文献】西独国特許出願公開第02549282(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/00-13/16
F04D 17/00-17/18
F04D 29/40-29/56
F16L 21/00-21/08
F16L 23/00-23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の両端部にそれぞれ設けられた第1インペラおよび第2インペラと、
前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートと、
前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートと、
前記吐出ポートと前記吸入ポートとを連結するL字型の連結配管と、
を備えるキャンドモータポンプであって、
前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートおよび前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートにはポンプフランジが設けられ、
前記連結配管は、L字型の連結パイプと連結パイプ両端のパイプフランジとを有し、
前記連結配管の第1ポンプ側のパイプフランジと第1ポンプの吐出ポートのポンプフランジと連結し、
前記連結配管の第2ポンプ側のパイプフランジと第2ポンプの吸入ポートのポンプフランジと連結し、
前記連結配管が着脱自在であ
り、
前記連結配管は、前記連結パイプと、前記連結パイプの端部に弾性材を介して取り付けられたパイプフランジと、を備え、
前記弾性材は、前記連結パイプの端部と前記パイプフランジの双方に対して溶接接続されており、前記パイプフランジは、前記弾性材が弾性変形することにより、前記ポンプフランジとの接触シール面を前記連結パイプの中心線に対して、傾動させることが可能である
キャンドモータポンプ。
【請求項2】
回転軸と、
前記回転軸の両端部にそれぞれ設けられた第1インペラおよび第2インペラと、
前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートと、
前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートと、
前記吐出ポートと前記吸入ポートとを連結するL字型の連結配管と、
を備え、
前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートおよび前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートにはポンプフランジが設けられ、
前記連結配管は、L字型の連結パイプと連結パイプ両端のパイプフランジとを有し、
前記連結配管の第1ポンプ側のパイプフランジ(以下「第1パイプフランジ」という。)と第1ポンプの吐出ポートのポンプフランジ(以下「第1ポンプフランジ」という。)と連結し、
前記連結配管の第2ポンプ側のパイプフランジ(以下「第2パイプフランジ」という。)と第2ポンプの吸入ポートのポンプフランジ(以下「第2ポンプフランジ」という。)と連結し、
前記連結配管が着脱自在である
キャンドモータポンプにおいて、前記第1ポンプフランジと前記第2ポンプフランジとの間に前記連結配管をフランジ接続するための配管方法であって、
L字型パイプの両端部を、パイプ挿入穴を有する第1のフランジおよび第2のフランジに対してそれぞれ差し込んだ状態で、前記第1のフランジを前記第1ポンプフランジに対してボルトを用いて締結し、前記第2のフランジを前記第2ポンプフランジに対してボルトを用いて締結するボルト締結工程と、
前記ボルト締結工程の後、前記第1のフランジおよび前記第2のフランジに対して、前記L字型パイプの両端を固定溶接することにより、前記第1パイプフランジとしての前記第1のフランジと、前記第2パイプフランジとしての前記第2のフランジと、前記連結パイプとしての前記L字型パイプとを有する前記連結配管を形成する固定溶接工程と、
前記固定溶接工程の後、前記第1ポンプフランジに対する前記第1のフランジのボルトの締結を解除するとともに、前記第2ポンプフランジに対する前記第2のフランジのボルトの締結を解除して、前記連結配管を取り外す締結解除工程と、
前記締結解除工程の後、前記L字型パイプの両端部を前記第1のフランジおよび前記第2のフランジに対してそれぞれ密封溶接する密封溶接工程と、
前記密封溶接工程の後、前記第1のフランジを前記第1ポンプフランジにボルトを用いて締結し、前記第2のフランジを前記第2ポンプフランジにボルトを用いて締結する工程と、
を含み、
前記固定溶接は、前記第1のフランジの前記第1ポンプフランジとの接触シール面と反対側の面の内径側と、前記L字型パイプとの間、および、前記第2のフランジの前記第2ポンプフランジとの接触シール面と反対側の面の内径側と、前記L字型パイプとの間に対して行われ、
前記密封溶接は、前記第1のフランジの内周面と前記L字型パイプの端面部との間、および、前記第2のフランジの内周面と前記L字型パイプの端面部との間に対して行われる
キャンドモータポンプの配管方法。
【請求項3】
回転軸と、
前記回転軸の両端部にそれぞれ設けられた第1インペラおよび第2インペラと、
前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートと、
前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートと、
前記吐出ポートと前記吸入ポートとを連結するL字型の連結配管と、
を備えるキャンドモータポンプであって、
前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートおよび前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートにはポンプフランジが設けられ、
前記連結配管は、L字型の連結パイプと連結パイプ両端のパイプフランジとを有し、
前記連結配管の第1ポンプ側のパイプフランジと第1ポンプの吐出ポートのポンプフランジと連結し、
前記連結配管の第2ポンプ側のパイプフランジと第2ポンプの吸入ポートのポンプフランジと連結し、
前記連結配管が着脱自在であり、
前記連結配管は、前記連結パイプと、前記連結パイプの端部に弾性材を介して取り付けられたパイプフランジと、を備え、
前記連結配管の前記パイプフランジには、接続シール面と反対側の面の内径側に環状かつ断面略L字状の切欠部が形成され、
前記弾性材は、前記連結配管の接続シール面と反対側に開口した断面略コ字状、かつ、環状に形成されており、
前記弾性材の前記連結配管の接続シール面と反対側の端部の内側が前記連結パイプに密封溶接され、
前記弾性材の前記連結配管の接続シール面と反対側の端部の外側が前記パイプフランジに密封溶接されている
キャンドモータポンプ。
【請求項4】
回転軸と、
前記回転軸の両端部にそれぞれ設けられた第1インペラおよび第2インペラと、
前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートと、
前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートと、
前記吐出ポートと前記吸入ポートとを連結するL字型の連結配管と、
を備えるキャンドモータポンプであって、
前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートおよび前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートにはポンプフランジが設けられ、
前記連結配管は、L字型の連結パイプと連結パイプ両端のパイプフランジとを有し、
前記連結配管の第1ポンプ側のパイプフランジと第1ポンプの吐出ポートのポンプフランジと連結し、
前記連結配管の第2ポンプ側のパイプフランジと第2ポンプの吸入ポートのポンプフランジと連結し、
前記連結配管が着脱自在であり、
前記連結配管は、前記連結パイプと、前記連結パイプの端部に弾性材を介して取り付けられたパイプフランジと、を備え、
前記連結配管の前記パイプフランジには、接続シール面と反対側の面の内径側に環状かつ断面略L字状の切欠部が形成され、
前記弾性材は、前記連結パイプの先端外周面に嵌め付けられた嵌付部と、前記嵌付部から前記連結パイプの接続側と反対側に延出しつつ拡径した拡径部と、を有し、
前記嵌付部の端部と前記連結パイプの端部とが密封溶接され、前記拡径部の端部と前記パイプフランジとが密封溶接されている
キャンドモータポンプ。
【請求項5】
回転軸と、
前記回転軸の両端部にそれぞれ設けられた第1インペラおよび第2インペラと、
前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートと、
前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートと、
前記吐出ポートと前記吸入ポートとを連結するL字型の連結配管と、
を備えるキャンドモータポンプであって、
前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートおよび前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートにはポンプフランジが設けられ、
前記連結配管は、L字型の連結パイプと連結パイプ両端のパイプフランジとを有し、
前記連結配管の第1ポンプ側のパイプフランジと第1ポンプの吐出ポートのポンプフランジと連結し、
前記連結配管の第2ポンプ側のパイプフランジと第2ポンプの吸入ポートのポンプフランジと連結し、
前記連結配管が着脱自在であり、
前記連結配管は、前記連結パイプと、前記連結パイプの端部に弾性材を介して取り付けられたパイプフランジと、を備え、
前記連結配管の前記パイプフランジには、接続シール面と反対側の面の内径側に環状かつ断面略L字状の切欠部が形成され、
前記弾性材は、前記連結パイプの先端外周面に嵌め付けられた嵌付部と、前記嵌付部の前記連結パイプの接続側と反対側の端部から径方向外方に延出した延出部と、を有し、
前記嵌付部の端部と前記連結パイプの端部とが密封溶接され、前記延出部の端部と前記パイプフランジの前記切欠部とが密封溶接されている
キャンドモータポンプ。
【請求項6】
回転軸と、
前記回転軸の両端部にそれぞれ設けられた第1インペラおよび第2インペラと、
前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートと、
前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートと、
前記吐出ポートと前記吸入ポートとを連結するL字型の連結配管と、
を備えるキャンドモータポンプであって、
前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートおよび前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートにはポンプフランジが設けられ、
前記連結配管は、L字型の連結パイプと連結パイプ両端のパイプフランジとを有し、
前記連結配管の第1ポンプ側のパイプフランジと第1ポンプの吐出ポートのポンプフランジと連結し、
前記連結配管の第2ポンプ側のパイプフランジと第2ポンプの吸入ポートのポンプフランジと連結し、
前記連結配管が着脱自在であり、
前記連結配管は、前記連結パイプと、前記連結パイプの端部に弾性材を介して取り付けられたパイプフランジと、を備え、
前記連結配管の前記パイプフランジには、接続シール面と反対側の面の内径側に環状かつ断面略L字状の切欠部が形成され、
前記弾性材は、前記連結パイプの先端外周面に嵌め付けられた嵌付部と、前記嵌付部の前記連結パイプの接続側と反対側の端部から径方向外方に延出した径方向延出部と、前記径方向延出部の径方向外方端部から前記連結パイプの接続側と反対側に向かって延出した管方向延出部と、を有し、
前記嵌付部の端部と前記連結パイプの端部とが密封溶接され、前記管方向延出部の端部と前記パイプフランジとが密封溶接されている
キャンドモータポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャンドモータポンプに関し、特にインペラが回転軸の両端に配置される高揚程型キャンドモータポンプに関する。
本願は、2020年12月15日に日本で出願された特願2020-207336号に基づき優先権を主張し、それらの内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、インペラがモータの軸方向両端に1つずつ設けられ、それぞれのポンプケーシングが、一方のポンプケーシングから他方のポンプケーシングに送液される際の流路を形成するL字型の連通管で連通されたキャンドモータポンプが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているようなキャンドモータポンプにおいては、L字型の連通管とポンプケーシングとがねじ込み継手により接続されているが、ポンプ使用時の外的応力(周囲温度、送液温度、配管内圧力など)を受けることによって、ネジ接続部に緩みが生じて液漏れなどが発生しやすい構造である。そのため、ポンプの高圧化や送液温度域の拡大などの要求が高まる中、ねじ込み継手に代えてフランジ接続により連通管を接続することが望まれる。
【0005】
しかしながら、連通管を接続すべき2つのポンプケーシングの間に多数の部品が組み込まれている。そのため、各部品が設計通りに製作されていても、寸法公差の累積により、2つのポンプケーシングにそれぞれフランジを設けた場合、2つのフランジの相対的な位置や直角度について一定以上の寸法精度を確保することは困難である。このため、特許文献1に開示されているようなキャンドモータポンプにおいて、連通管とポンプケーシングとをフランジ接続することは行われてこなかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて創案されたものであり、軸方向両側に互いに離れて設けられた上段ポンプ部の吐出ポートと下段ポンプ部の吸入ポートとの間に、連結パイプ(連結配管)をフランジ接続により好適に配管することができる高揚程型キャンドモータポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係るキャンドモータポンプは、回転軸と、前記回転軸の両端部にそれぞれ設けられた第1インペラおよび第2インペラと、前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートと、前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートと、前記吐出ポートと前記吸入ポートとを連結するL字型の連結配管と、を備えるキャンドモータポンプである。前記第1インペラで構成される第1ポンプの吐出ポートおよび前記第2インペラで構成される第2ポンプの吸入ポートにはポンプフランジが設けられ、前記連結配管は、L字型の連結パイプと連結パイプ両端のパイプフランジとを有し、前記連結配管の第1ポンプ側のパイプフランジと第1ポンプの吐出ポートのポンプフランジと連結し、前記連結配管の第2ポンプ側のパイプフランジと第2ポンプの吸入ポートのポンプフランジと連結し、前記連結配管が着脱自在である。
【0008】
本発明の第2態様に係るキャンドモータポンプは、第1態様に係るキャンドモータポンプにおいて、前記連結配管は、前記L字型の連結パイプと、その一端または両端の前記パイプフランジの前記ポンプフランジとの接続シール面と反対側の面の内径側との間に固定溶接箇所を有し、前記L字型の連結パイプの両端面部と、各前記パイプフランジの内周面との間に密封溶接箇所を有する。
【0009】
本発明の第3態様に係るキャンドモータポンプは、第1態様に係るキャンドモータポンプにおいて、前記連結配管は、前記連結パイプと、前記パイプの端部に弾性材を介して取り付けられたパイプフランジとを備える。
【0010】
本発明の第4態様に係るキャンドモータポンプは、第3態様に係るキャンドモータポンプにおいて、前記連結配管の前記パイプフランジには、接続シール面と反対側の面の内径側に環状かつ断面略L字状の切欠部が形成され、前記弾性材は、前記連結配管の接続シール面と反対側に開口した断面略コ字状、かつ、環状に形成されており、前記弾性材の前記連結配管の接続シール面と反対側の端部の内側が前記連結パイプに密封溶接され、前記弾性材の前記連結配管の接続シール面と反対側の端部の外側が前記パイプフランジに密封溶接されている。
【0011】
本発明の第5態様に係るキャンドモータポンプは、第3態様に係るキャンドモータポンプにおいて、前記連結配管の前記パイプフランジには、接続シール面と反対側の面の内径側に環状かつ断面略L字状の切欠部が形成され、前記弾性材は、前記連結パイプの先端外周面に嵌め付けられた嵌付部と、前記嵌付部から前記連結パイプの接続側と反対側に延出しつつ拡径した拡径部とを有し、前記嵌付部の端部と前記連結パイプの端部とが密封溶接され、前記拡径部の端部と前記パイプフランジとが密封溶接されている。
【0012】
本発明の第6態様に係るキャンドモータポンプは、第3態様に係るキャンドモータポンプにおいて、前記連結配管の前記パイプフランジには、接続シール面と反対側の面の内径側に環状かつ断面略L字状の切欠部が形成され、前記弾性材は、前記連結パイプの先端外周面に嵌め付けられた嵌付部と、前記嵌付部の前記連結パイプの接続側と反対側の端部から径方向外方に延出した延出部と、を有し、前記嵌付部の端部と前記連結パイプの端部とが密封溶接され、前記延出部の端部と前記パイプフランジの前記切欠部とが密封溶接されている
【0013】
本発明の第7態様に係るキャンドモータポンプは、第3態様に係る配管部材において、前記連結配管の前記パイプフランジには、接続シール面と反対側の面の内径側に環状かつ断面略L字状の切欠部が形成され、前記弾性材は、前記連結パイプの先端外周面に嵌め付けられた嵌付部と、前記嵌付部の前記連結パイプの接続側と反対側の端部から径方向外方に延出した延出部と、前記径方向延出部の径方向外方端部から前記パイプの接続側と反対側に向かって延出した管方向延出部と、を有する。前記嵌付部の端部と前記連結パイプの端部とが密封溶接され、前記管方向延出部の端部と前記パイプフランジとが密封溶接されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軸方向両側に互いに離れて設けられた上段ポンプ部の吐出ポートと下段ポンプ部の吸入ポートとの間に、連結パイプ(連結配管)をフランジ接続により好適に配管することができる高揚程型キャンドモータポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係るキャンドモータポンプの部分断面図である。
【
図6】連結パイプにおける位置および角度を示す図である。
【
図7】連結パイプにおける位置および角度を示す図である。
【
図8A】本実施形態に係るキャンドモータポンプの配管方法の工程を説明するための図である。
【
図9A】別実施形態に係るキャンドモータポンプの配管方法の工程を説明するための図である。
【
図10】別実施形態に係る弾性材周辺の拡大断面図である。
【
図11】別実施形態に係る弾性材周辺の拡大断面図である。
【
図12】別実施形態に係る弾性材周辺の拡大断面図である。
【
図13】別実施形態に係る弾性材周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態におけるキャンドモータポンプ8は、配管構造に特徴を有している。先ずポンプ構造1について説明し、その後、配管構造、その配管方法および配管部材Yについて説明する。
【0017】
<ポンプ構造について>
ポンプ構造1は、回転軸2、軸受3、被軸受支持部材4、インペラ6、モータ11、ロータ12、ポンプケーシング16等で構成される。
【0018】
キャンドモータポンプ8は、
図1に示すように、モータ11と、モータ11により駆動されるポンプ部31とからなる。モータ11は、マグネット27を有したロータ12と、ロータ12の外周に設けられたステータ13とからなるキャンドモータであり、ロータ12が固定された回転軸2は、ケーシング側軸受ハウジング32に取り付けられた軸受3にスリーブ25を介して支持されている。ポンプ部31は、回転軸2に固定されたインペラ6と、インペラ6を収容するインペラ収容空間14を有するポンプケーシング16とを備える。
【0019】
モータ11のロータ12はステータキャン9の内側に収容されている。モータ11のステータ13は、ステータキャン9内のロータ12に対応する位置において、ステータキャン9の外周面17とステータキャン9を内包する円筒状のモータフレーム18の内周面19との間に収容されている。ステータキャン9とモータフレーム18の両端に設けられたステータ側板10とは、溶接にて密封接続されている。モータフレーム18とモータフレーム18の両端に設けられたステータ側板10とは、Oリング5でシールした上で部分溶接にて密封接続されている。
【0020】
ステータ側板10とケーシング側軸受ハウジング32とは、ステータ側板10の両端に配設されたOリング15にて内部空間91を封止している。ポンプケーシング16とケーシング側軸受ハウジング32とは、ケーシング側軸受ハウジング32両端に配設されたOリング20にてインペラ収容空間14を封止している。
【0021】
ステータキャン9は、薄い金属の板を円筒状に丸めて形成されたのもので、キャンドモータポンプ8を構成する部品の中でも比較的内圧に対する剛性が低い。ステータキャン9の外周面17のうち、ステータ13のステータコア21に接触している部分はステータコア21により剛性が補助されている。しかし、ステータキャン9の外周面17のうち、ステータコア21に接触していない部分では、ステータキャン9の半径方向の圧力に対する剛性は低い。そのため、ステータキャン9の内部が高圧になるとステータキャン9が膨らみ、変形するおそれがある。そこで、ステータキャン9の外周面17上であって、ステータコア21がない部分は、剛性を補助するためにステータキャン9の外周面17に沿った円筒形状のサポートキャン22により覆われている。
【0022】
従来、ステータ13のステータコア21の軸方向寸法の最小許容寸法と、ステータコア21の軸方向両側のそれぞれに1つずつ設けられたサポートキャン22の軸方向寸法の最小許容寸法との和が、モータフレーム18の軸方向寸法の最大許容寸法より小さく設定されていた。このため、ステータキャン9の外周面17にはステータコア21にもサポートキャン22にも支持されない部分が存在し、当該部分において変形するおそれがあった。
【0023】
しかし、本実施形態では、ステータ13のステータコア21の軸方向寸法の最小許容寸法と、ステータコア21の軸方向両側のそれぞれに1つずつ設けられたサポートキャン22の軸方向寸法の最小許容寸法との和が、モータフレーム18の軸方向寸法の最大許容寸法より大きく設定されている。そのため、ステータキャン9の外周面17は、ステータコア21にもサポートキャン22にも支持されない部分は存在せず、内圧によって部分的に変形することはない。
【0024】
モータ11は、ロータ12と、ステータ13とを備える。ロータ12は、ロータキャン23、ロータ側板24、ロータ本体26、マグネット27、ヨーク28等を含んで構成されている。ロータ12は、回転軸2と一体に回転するように回転軸2に固定されており、回転軸2は、ケーシング側軸受ハウジング32に取り付けられた軸受3にスリーブ25を介して支持されている。ロータ12は、回転軸2に対して固定されたロータ本体26、ロータ本体26に支持されたヨーク28、マグネット27、ロータ側板24、ロータキャン23を備える。ロータキャン23は、ロータ本体26およびロータ側板24と溶接により接合されており、マグネット27とヨーク28とが密封されている。ロータ12は、キャンドモータポンプ8におけるステータキャン9の内側に収容されている。
【0025】
ステータ13はステータキャン9内にあるロータ12に対応する位置に配設されており、ステータキャン9の外周面17とステータキャン9を内包する円筒状のモータフレーム18の内周面19との間に収容されている。ステータ13は、電磁コイル29などで構成されており、ステータ13に駆動電流が供給されると、ロータ12および回転軸2が回転駆動する。
【0026】
回転軸2は、モータ11のロータ12が固定されており、モータ11のロータ12と一体に回転する。
【0027】
軸受3は、
図1又は
図2に示すように、ポンプ部31に設けられたケーシング側軸受ハウジング32に弾性薄板材33を介して嵌め込まれており、回転軸2を軸方向と垂直な方向に回転自在に支持する。軸受3は円筒状であり、軸受3の軸方向端面34と内周壁36とには、送液を流すための溝37が設けられている。軸受3の材質として、例えば、耐熱性、耐久性に優れたSiC(シリコン炭化ケイ素)が用いられる。
【0028】
本実施形態では、軸受3は、回転軸2の一部を構成するスリーブ25の外周に配設されている。スリーブ25の材質としても、軸受3と同様に、耐熱性、耐久性に優れた材質が用いられる。
【0029】
軸受3は、回転軸2の軸方向においてモータ11のロータ12の両側に設けられ、回転軸2を軸方向と垂直な方向に回転自在に支持している。以下、2つの軸受3をそれぞれ「第1軸受41」又は「第2軸受42」という。
【0030】
ケーシング側軸受ハウジング32には、軸受3が嵌め込まれている。ケーシング側軸受ハウジング32はポンプ部31に設けられている。
【0031】
ケーシング側軸受ハウジング32は、回転軸2の軸方向においてモータ11のロータ12の両側に設けられている。以下、2つのケーシング側軸受ハウジング32を、それぞれ「第1ケーシング側軸受ハウジング43」と「第2ケーシング側軸受ハウジング44」という。
【0032】
弾性薄板材33として、本実施形態では、トレランスリングが使用されている。軸受3が弾性薄板材33を介してケーシング側軸受ハウジング32に嵌め込まれているため、軸受3のケーシング側軸受ハウジング32に対するがたつきが防止され、ケーシング側軸受ハウジング32と軸受3との間における熱膨張係数の差が吸収される。
【0033】
回転軸2およびロータ12には、被軸受支持部材4を収容する被軸受支持部材用ハウジング48が設けられている。そして、被軸受支持部材用弾性薄板材35を介して、被軸受支持部材用ハウジング48に被軸受支持部材4が嵌め込まれている。被軸受支持部材用ハウジング48は回転軸2に対して軸方向に相対的に固定され、被軸受支持部材4も被軸受支持部材用ハウジング48を介して回転軸2に対して軸方向に相対的に固定されている。そのため、回転軸2は、被軸受支持部材4および被軸受支持部材用ハウジング48を介して軸受3に軸方向に支持される。
【0034】
被軸受支持部材4も、回転軸2の軸方向においてモータ11のロータ12の両側に設けられている。具体的には、被軸受支持部材4は、モータ11のロータ12と軸受3との間において回転軸2に対して軸方向に固定され、軸受3によって回転自在に軸方向に支持されている。被軸受支持部材4の材質として、例えば、耐熱性、耐久性に優れたSiCが用いられる。
【0035】
以下、第1軸受41に支持される被軸受支持部材4を「第1被軸受支持部材49」といい、第2軸受42に支持された被軸受支持部材4を「第2被軸受支持部材51」という。
【0036】
インペラ6は、回転軸2と一体に回転する。インペラ6は、回転軸2に固定された円筒状のインペラボス部52と、インペラボス部52に接続された円環板状のインペラ翼部53とを備えている。インペラボス部52は、円筒状であってインペラボス部52を回転軸2に固定する回転軸固定部58と、回転軸固定部58の外周面上から回転軸固定部58の半径方向に延出した円環板状であってインペラ翼部53と接続されるインペラ翼接続部61と、を有し、インペラ翼接続部61においてインペラ翼部53の回転中心側端部54と接続されている。インペラボス部52のインペラ翼接続部61には、軸方向に貫通したインペラボス部貫通孔62が設けられている。このインペラボス部貫通孔62には、ステータキャン9側から還流する送液が通過する。またインペラボス部52のインペラ翼接続部61には、送液の逆流を防止する円環状のインペラボス部突起片63が設けられている。このインペラボス部突起片63は、インペラ翼接続部61側からステータキャン9側に延出している。インペラボス部突起片63はポンプケーシング16の内壁面64に形成された円環状の凹部66に挿入されている。
【0037】
本実施形態におけるキャンドモータポンプ8においては、ポンプ部31がステータキャン9の軸方向両端に1つずつ設けられている。以下、一方のポンプ部31を第1インペラ67および第1ポンプケーシング74を備える第1ポンプ1303とし、他方のポンプ部31を第2インペラ71および第2ポンプケーシング77を備える第2ポンプ1304とする。
【0038】
第1インペラ67が収容されている第1ポンプケーシング74の側面には、
図3に示すように、第1流入口76が設けられている。また第1ポンプケーシング74の上面には、第1ポンプケーシング74内に流入した液体を第2ポンプケーシング77に送る送液口78が設けられている。
【0039】
また第1ケーシング側軸受ハウジング43は第1インペラ収容空間84とステータキャン9の内部空間91とを連通する第1連通路92を有する。第1連通路92は、第1インペラ収容空間84のステータキャン9側の壁面86であって、第1インペラボス部突起片87よりも回転軸2に近い位置で第1インペラボス部貫通孔88の近傍に第1連通路開口89が設けられる。
【0040】
第1ケーシング側軸受ハウジング43は、第1インペラ67を収容する第1インペラ収容空間84と、第1インペラ収容空間84におけるステータキャン9側の壁面86に設けられた第1凹部104と、を有する。第1凹部104には、第1インペラボス部68に設けられた第1インペラボス部突起片87が挿入されている。
【0041】
また第1インペラ翼部69には、回転軸2の軸方向で第1流入口76の方向に延出して回転軸2と同軸中心を有する円筒状の第1閉塞板108が設けられている。この第1閉塞板108の外周面は、第1ポンプケーシング74における第1流入口76の内壁107との隙間を小さくする。第1閉塞板108は、第1流入口76における空間と、第1インペラ翼部69における第1閉塞板108側の外壁109と第1ポンプケーシング74の内壁75とで形成される空間と、の間を閉塞する。
【0042】
他方のインペラ6である第2インペラ71は、
図4に示すように、回転軸2に固定された第2インペラボス部72と、第2インペラボス部72に接続された第2インペラ翼部73とを備えている。第2インペラボス部72には、軸方向であってステータキャン9側方向に延出した円環状の第2インペラボス部突起片96が設けられている。
【0043】
第2インペラ71が収容されている第2ポンプケーシング77の側面には、回転軸2と同軸中心軸をもつ円筒状であって、第1インペラ67から送られてきた送液を流入する第2流入口79が設けられている。また第2ポンプケーシング77の上面側には、第2ポンプケーシング77内に流入された送液を第2ポンプケーシング77外に吐出する吐出口81が設けられている。
【0044】
また第2ケーシング側軸受ハウジング44は、第2インペラ収容空間93とステータキャン9の内部空間91とを連通する第2連通路99を有する。第2連通路99には、第2インペラ収容空間93のステータキャン9側の壁面94であって、第2インペラボス部突起片96よりも回転軸2に近い位置で第2インペラボス部貫通孔97の近傍に第2連通路開口98が設けられる。
【0045】
第2ケーシング側軸受ハウジング44は、第2インペラ71を収容する第2インペラ収容空間93と、第2インペラ収容空間93のステータキャン9側の壁面94に設けられ第2インペラボス部72に設けられた第2インペラボス部突起片96が挿入される第2凹部106と、を有する。
【0046】
また第2インペラ翼部73には、回転軸2の軸方向で第2流入口79の方向に延出して回転軸2と同軸中心を有する円筒状の第2閉塞板1102が設けられている。この第2閉塞板1102の外周面は、第2ポンプケーシング77における第2流入口79の内壁1101との隙間を小さくする。第2閉塞板1102は、第2流入口79における空間と、第2インペラ翼部73における第2閉塞板1102側の外壁1103と第2ポンプケーシング77の内壁80とで形成される空間と、の間を閉塞する。
【0047】
第1ポンプケーシング74と第2ポンプケーシング77とは、第1インペラ67から第2インペラ71へ液体を送る際の流路を形成する連結パイプ83により連結されている。連結パイプ83は、モータフレーム18の外側を通り、第1ポンプケーシング74の送液口78から吐出される送液を第2ポンプケーシング77の第2流入口79に送る。
【0048】
本実施形態におけるキャンドモータポンプ8においては、
図3および
図4に示すように、インペラ6の回転により搬送される送液の一部が回転軸2と軸受3との間を矢印で示す方向に沿って流れる。
【0049】
第1流入口76から第1ポンプケーシング74内に流入した送液は、第1インペラ67の回転力によって第1インペラ67の第1インペラ翼内流路101を通り、連結パイプ83内を通過して第2流入口79から第2ポンプケーシング77内に流入する。
【0050】
第2ポンプケーシング77内に流入した液体は、2方向に分岐する。分岐した一方の液体は第2インペラ71の回転力によって第2インペラ71の第2インペラ翼内流路102を通り、吐出口81から第2ポンプケーシング77外に吐出される。分岐した他方の液体は、第2インペラ71の第2インペラボス部貫通孔97を通過してステータキャン9内に送られる。
【0051】
第2ポンプケーシング77からステータキャン9内に送られた液体は、さらに2方向に分岐する。さらに分岐した一方の液体は、第2ポンプケーシング77に設けられた第2連通路99を通過して、ステータキャン9とロータ12との間の空間を第1軸受41の方向に向けて通過する。さらに分岐した他方の液体は、回転軸2のスリーブ25と第2軸受42との間を通過する。
【0052】
回転軸2のスリーブ25と第2軸受42との間を通過した液体は、第2軸受42と第2被軸受支持部材51との間を通過して、ステータキャン9とロータ12との間の空間を第1軸受41の方向に向けて通過する。液体が回転軸2のスリーブ25と第2軸受42との間を通過する場合および液体が第2軸受42と第2被軸受支持部材51との間を通過する場合、当該液体は主として第2軸受42に形成された第2軸受溝103を通過する。液体が回転軸2のスリーブ25と第2軸受42との間および第2軸受42と第2被軸受支持部材51との間を通過する場合、当該液体は、回転軸2のスリーブ25と第2軸受42との間および第2軸受42と第2被軸受支持部材51との間における潤滑剤となる。
【0053】
ステータキャン9とロータ12との間の空間を通過した液体は、2方向に分岐する。分岐した一方の液体は、第1ポンプケーシング74の第1連通路92および第1インペラボス部68の第1インペラボス部貫通孔88を通過して第1インペラ67の第1インペラ翼内流路101に入る。分岐した他方の液体は、第1軸受41と第1被軸受支持部材49との間を通過して、第1軸受41と回転軸2のスリーブ25との間を通過する。液体が第1軸受41と第1被軸受支持部材49との間を通過する場合、および液体が第1軸受41と回転軸2のスリーブ25との間を通過する場合、当該液体は主として第1軸受41に形成された第1軸受溝105を通過する。液体が第1軸受41と第1被軸受支持部材49との間を通過する場合、および第1軸受41と回転軸2のスリーブ25との間を通過する場合、当該液体は、第1軸受41と第1被軸受支持部材49との間、および第1軸受41と回転軸2のスリーブ25との間における潤滑剤となる。第1軸受41と回転軸2のスリーブ25との間を通過した送液は、第1インペラボス部68の第1インペラボス部貫通孔88を通過して第1インペラ67の第1インペラ翼内流路101に入る。
【0054】
第1ポンプケーシング74と連結パイプ83とは、
図5に示すように、第1ポンプケーシング74上面側の送液口78の二次側に設けられた第1吐出流路1104を介して接続されている。第1吐出流路1104と連結パイプ83とは、互いに対向する端部のそれぞれに設けられたフランジ同士がボルトで締結されて接続されている。第1吐出流路1104の連結パイプ83側の端部に設けられたフランジを第1ポンプフランジ1106とし、連結パイプ83の第1吐出流路1104側の端部に設けられたフランジを第1パイプフランジ1107とする。第1吐出流路1104は、1辺が送液口78から垂直上方に延出し、他辺が回転軸2の軸方向で第2ポンプケーシング77の方向に延出したL字型である。第1吐出流路1104は、第1ポンプケーシング74と別部品による接続にて構成されていてもよい。
【0055】
第2ポンプケーシング77と連結パイプ83とは、第2ポンプケーシング77における第2流入口79の一次側に設けられた第2吸入流路1108を介して接続されている。第2吸入流路1108と連結パイプ83とは、互いに対向する端部のそれぞれに設けられたフランジ同士をボルトで締結されて接続されている。第2吸入流路1108の連結パイプ83側の端部に設けられたフランジを第2ポンプフランジ1109とし、連結パイプ83の第2吸入流路1108側の端部に設けられたフランジを第2パイプフランジ1201とする。第2吸入流路1108は、1辺が第2流入口79から回転軸2の軸方向に延出し、そこから他辺が垂直上方に延出したL字型である。第2吸入流路1108も第2ポンプケーシング77と別部品による接続にて構成されていてもよい。
【0056】
<連結配管構造について>
以下、本実施形態に係るキャンドモータポンプの配管構造およびその配管方法について説明する。先ず、本実施形態に係るキャンドモータポンプ8について説明する。キャンドモータポンプ8は、
図1に示すように、回転軸2、第1インペラ67および第2インペラ71、吐出ポート1301、吸入ポート1302、L字型の連結パイプ83等を備えている。
【0057】
第1インペラ67および第2インペラ71は回転軸2の両端部にそれぞれ設けられている。第1インペラ67は回転軸2の一端部に設けられた第1ポンプ1303を構成している。第2インペラ71は回転軸2の他端部に設けられた第2ポンプ1304を構成している。
【0058】
吐出ポート1301は、第1ポンプ1303に設けられている。第1ポンプ1303は、第1インペラ67の回転力によって、液体を吐出ポート1301を介して第2ポンプ1304に送る。
【0059】
吐出ポート1301は、第1ポンプ1303の上面側に形成された送液口78と、送液口78の二次側に設けられた第1吐出流路1104とにより第1ポンプケーシング74と一体化して形成される。吐出ポート1301に付設されたフランジを「第1ポンプフランジ1106」という。
【0060】
吸入ポート1302は、第2ポンプ1304に設けられている。第2ポンプ1304は吸入ポート1302から吸入された液体を第2インペラ71の回転力によって、このキャンドモータポンプ8の吐出口81から吐出する。
【0061】
吸入ポート1302は、第2ポンプ1304の軸方向側面側に形成された第2流入口79と、第2流入口79の一次側に設けられた第2吸入流路1108とにより第2ポンプケーシング77と一体化して形成される。吸入ポート1302に付設されたフランジを「第2ポンプフランジ1109」という。
【0062】
連結パイプ83は、吐出ポート1301と吸入ポート1302とを連結(連通)するL字型のパイプである。第1ポンプフランジ1106にボルト締結される連結パイプ83用のフランジを「第1パイプフランジ1107」といい、第2ポンプフランジ1109に締結される連結パイプ83用のフランジを「第2パイプフランジ1201」という。第1パイプフランジ1107と第1ポンプフランジ1106とがボルト締結されているとともに、第2パイプフランジ1201と第2ポンプフランジ1109とがボルト締結されている。ボルトを締結または解除することにより、連結パイプ83は、キャンドモータポンプ8に対して着脱自在である。
【0063】
ところで、連結パイプ83を接続すべき第1ポンプケーシング74と第2ポンプケーシング77との間には多数の部品が組み込まれている。そのため、各部品が設計通りに製作されていても、寸法公差の累積が生じ得る。寸法公差の累積が生じると、第1ポンプケーシング74と第2ポンプケーシング77とにそれぞれ設けられた第1ポンプフランジ1106と第2ポンプフランジ1109との相対的な位置関係や直角度について十分な寸法精度を確保することが困難となり、第1ポンプフランジ1106と第2ポンプフランジ1109とに連結パイプ83を適切にフランジ接続することが困難となる。
【0064】
図6および
図7に示す第1ポンプフランジ1106と第2ポンプフランジ1109とは、寸法公差の累積がない状態であるが、寸法公差の累積が生じると連結パイプ83における第1パイプフランジ1107および第2パイプフランジ1201とのずれが生じる。具体的には、第1ポンプフランジ1106および第2ポンプフランジ1109におけるそれぞれの接続シール面の中心部において、それぞれが互いに垂直な方向の3つの軸をx軸、y軸、z軸と表し、これら3つの軸のそれぞれの軸周りにおける回転方向をθx、θy、θzと表す座標軸を設定した場合、連結パイプ83はx軸、y軸、z軸のいずれの軸方向においてもずれが生じ得て、また回転方向θx、θy、θzのいずれの回転方向においてもずれが生じ得る。
【0065】
そこで、「キャンドモータポンプの連結配管構造およびその配管方法」について説明する。本実施形態では、「第1ポンプフランジ1106」と「第2ポンプフランジ1109」との相対的な直角度に関して、許容値を超える誤差が生じている場合を例に挙げて説明する。
図8A乃至
図8Dにおいては、第1ポンプフランジ1106と第2ポンプフランジ1109は、若干傾斜した状態で描いている。
【0066】
先ず、「ボルト締結工程」として、
図8Aに示すように、第1パイプフランジ1107および第2パイプフランジ1201に対して、連結パイプ83の両端部をそれぞれ差し込んで、吐出ポート1301に付設されたフランジ1106に対して第1パイプフランジ1107のみをボルト1306を用いて締結する。同様に、吸入ポート1302に付設されたフランジ1109に対して第2パイプフランジ1201をボルト1306を用いて締結する。
【0067】
次に、「固定溶接工程」として、
図8Bに示すように、第1パイプフランジ1107および第2パイプフランジ1201に対して、連結パイプ83の固定溶接を行う。なお、図面において符号1307は固定溶接箇所を示している。固定溶接は接合すべき箇所に対して部分的に行われる溶接である。固定溶接は第1パイプフランジ1107および第2パイプフランジ1201における第1ポンプフランジ1106および第2ポンプフランジ1109との接触シール面と反対側の面の内径側との間に行われる。
【0068】
フランジ同士がボルト締結された状態では、溶接作業に必要なスペースを十分に確保できないため、パイプをフランジに溶接することは容易でない。そこで、溶接作業に必要なスペースが確保できている箇所について固定溶接をしておく。フランジ同士が適切に面接触した状態で、第1パイプフランジ1107および第2パイプフランジ1201を連結パイプ83となるL字型パイプに対して固定溶接で固定し、連結配管85とする。
【0069】
次に、「締結解除工程」として、吐出ポート1301に付設されたフランジたる第1ポンプフランジ1106に対する第1パイプフランジ1107のボルト1306の締結を解除するとともに、吸入ポート1302に付設されたフランジたる第2ポンプフランジ1109に対する第2パイプフランジ1201のボルト1306の締結を解除し、連結配管85を取り外す。
【0070】
次に、「密封溶接工程」として、
図8Cに示すように、連結パイプ83の両端部を第1パイプフランジ1107および第2パイプフランジ1201に対してそれぞれ密封溶接する。なお、図面において符号1308は密封溶接箇所を示している。密封溶接は接合すべき箇所の全てに対して行われる溶接であり、連結パイプ83の両端部と第1パイプフランジ1107および第2パイプフランジ1201との隙間を封止するものである。密封溶接は連結パイプ83の端面部と第1パイプフランジ1107および第2パイプフランジ1201の内周面との間において全周に亘って行われる。
【0071】
最後に、
図8Dに示すように、第1パイプフランジ1107を第1ポンプフランジ1106にボルト1306を用いて締結し、第2パイプフランジ1201を第2ポンプフランジ1109にボルト1306を用いて締結する。
【0072】
以上に説明した配管方法によれば、第1ポンプフランジ1106と第2ポンプフランジ1109との相対的な位置関係や直角度について十分な寸法精度が確保されていなくても、第1ポンプフランジ1106と第2ポンプフランジ1109との間に連結配管85を好適にフランジ接続することができる。
【0073】
なお、「キャンドモータポンプの連結配管構造」は連結配管85の一端のみに用いられてもよい。一端のみに用いられる場合は、両端に用いられる場合と比べて工程数が少ないため、より簡易に第1ポンプフランジ1106と第2ポンプフランジ1109との間に連結配管85を好適にフランジ接続することができる。
【0074】
また以上に説明した配管方法によれば、連結配管85が第1ポンプフランジ1106と第2ポンプフランジ1109とに強固に固定されているため、連結パイプ83をキャンドモータポンプ8を持つ際の取っ手として用いることもできる。
【0075】
以下、別実施形態に係る連結配管構造およびその配管方法について
図9A~
図9Cを参照しながら説明する。
【0076】
この実施形態では、連結配管85Aは、
図9Aに示すように、L字型の連結パイプ83Aに加えて、L字型の連結パイプ83Aの両端部に弾性材1309を介してそれぞれ取り付けられた第1パイプフランジ1107Aおよび第2パイプフランジ1201Aをさらに備える。
【0077】
弾性材1309は、連結パイプ83Aの接続側と反対側に開口した断面コ字状かつ環状に形成されている。第1パイプフランジ1107Aおよび第2パイプフランジ1201Aには、フランジ接続面と反対側の面の内径側に環状かつ断面略L字状の切欠部1401が形成されている。弾性材1309における断面コ字状の一端が連結パイプ83の外周面に溶接接続され、他端が第1パイプフランジ1107および第2パイプフランジ1201Aの断面略L字状の切欠部1401と溶接接続されている。
【0078】
L字型パイプに、第1パイプフランジ1107Aおよび第2パイプフランジ1201Aが弾性材1309を介して取り付けられているため、第1パイプフランジ1107Aおよび第2パイプフランジ1201Aは、L字型パイプに対して変位可能である。
【0079】
次に、この実施形態における「キャンドモータポンプの連結配管構造およびその配管方法」について説明する。
【0080】
先ず、
図9Bに示すように、弾性材1309を弾性変形させながら、第1パイプフランジ1107Aおよび第2パイプフランジ1201Aを各ポンプフランジ1106,1109に対する締結位置に配置する。
【0081】
次に、
図9Cに示すように、第1パイプフランジ1107Aおよび第2パイプフランジ1201Aを吐出ポート1301および吸入ポート1302に付設された各ポンプフランジ1106,1109に対してボルト締結する。
【0082】
以上に説明した配管方法によれば、第1ポンプフランジ1106と第2ポンプフランジ1109との相対的な位置関係や直角度について十分な寸法精度が確保されていなくても、第1ポンプフランジ1106と第2ポンプフランジ1109との間に連結配管85Aを好適にフランジ接続することができる。
【0083】
<配管部材について>
次に、上記キャンドモータポンプ8の配管方法に用いた連結配管85Aに適した配管部材Yについて説明する。配管部材Yは、連結パイプ83B(例えばL字型パイプ)と、連結パイプ83Bの端部に弾性材1309を介して取り付けられたフランジで構成される。
【0084】
配管部材Yとして、
図10~
図13に示す4種類の配管部材Y1~Y4を例示する。
【0085】
図10に示す配管部材Y1は、パイプフランジ1107B,1201Bに、接続シール面と反対側の面の内径側に環状かつ断面略L字状の切欠部1401が形成されている。弾性材1309は、連結配管85Bの接続シール面と反対側に開口した断面略コ字状、かつ、環状に形成されている。弾性材1309の連結配管85Bの接続シール面と反対側の端部の内側が連結パイプ83Bに密封溶接されている。弾性材1309の連結配管85Bの接続シール面と反対側の端部の外側がパイプフランジ1107B,1201Bに溶接されている。
【0086】
図11に示す配管部材Y2は、パイプフランジ1107B,1201Bに、接続シール面と反対側の面の内径側に環状かつ断面略L字状の切欠部1401が形成される。弾性材1309は、連結パイプ83Bの先端外周面に嵌めつけられた嵌付部1403と、嵌付部1403から連結パイプ83Bの接続側と反対側に延出しつつ拡径した拡径部1404とを有する。嵌付部1403の端部と連結パイプ83Bの端部とが密封溶接され、拡径部1404の端部とパイプフランジ1107B,1201Bとが密封溶接されている。
【0087】
図12に示す配管部材Y3は、パイプフランジ1107B,1201Bに、接続シール面と反対側の面の内径側に環状かつ断面略L字状の切欠部1401が形成されている。弾性材1309は、連結パイプ83Bの先端外周面に嵌め付けられた嵌付部1403と、嵌付部1403の連結パイプ83Bの接続側と反対側の端部から径方向外方に延出した延出部1406とを有する。嵌付部1403の端部と連結パイプ83Bの端部とが密封溶接され、延出部1406の端部とパイプフランジ1107B,1201Bの切欠部1401とが密封溶接されている。
【0088】
図13に示す配管部材Y4は、パイプフランジ1107B,1201Bに、接続面と反対側の面の内径側に環状かつ断面略L字状の切欠部1401が形成されている。弾性材1309は、連結パイプ83Bの先端外周面に嵌め付けられた嵌付部1403と、嵌付部1403の連結パイプ83Bの接続側と反対側の端部から径方向外方に延出した径方向延出部1407と、径方向延出部1407の径方向外方端部から連結パイプ83Bの接続側と反対側に向かって延出した管方向延出部1408とを有する。嵌付部1403の端部と連結パイプ83の端部とが密封溶接され、管方向延出部1408の端部とパイプフランジ1107B,1201Bとが密封溶接されている。
【0089】
以上に説明した配管部材Yは、キャンドモータポンプ8の連結パイプに用途が限定されることはなく、他の様々な技術分野の配管部材として用いることもできる。
【0090】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、例えば、高圧用のキャンドモータポンプに適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
2 回転軸
8 キャンドモータポンプ
67 第1インペラ
71 第2インペラ
83,83A,83B 連結パイプ
85,85A,85B 連結配管
1106 第1ポンプフランジ
1107,1107A,1107B 第1パイプフランジ
1109 第2ポンプフランジ
1201,1201A,1201B 第2パイプフランジ
1301 吐出ポート
1302 吸入ポート
1303 第1ポンプ
1304 第2ポンプ
1307 固定溶接箇所
1308 密封溶接箇所
1309 弾性材
1401 切欠部
1403 嵌付部
1404 拡径部
1406 延出部
1407 径方向延出部
1408 管方向延出部
Y 配管部材