(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】消費電力推定装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/46 20180101AFI20241115BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20241115BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
F24F11/46
H02J3/00 130
H02J13/00 311T
(21)【出願番号】P 2022575038
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2021001474
(87)【国際公開番号】W WO2022153534
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】妻鹿 利宏
(72)【発明者】
【氏名】成井 智祐
(72)【発明者】
【氏名】村山 修一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】大谷 晋一郎
(72)【発明者】
【氏名】川野 裕希
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-154580(JP,A)
【文献】特開2017-103846(JP,A)
【文献】特開2008-082641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/46
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
省エネ制御対象期間において、複数の設備により構成される組の中で省エネ運転制御を実際に施す設備をローテーションさせるローテーション制御により省エネを制御する場合、前記複数の設備の組を特定する設備構成情報を取得する手段と、
前記複数の設備それぞれに対し、実際に省エネ運転制御を施す全体時間長が設定されている制御設定情報を取得する手段と、
前記複数の設備の稼働実績に基づき生成された前記複数の設備それぞれの消費電力の
前記省エネ制御対象期間全体における時系列変化を表す消費電力モデルを取得する手段と、
前記ローテーション制御を行う場合、前記設備構成情報及び前記制御設定情報を参照して前記各設備における省エネ運転制御の実施期間を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された省エネ運転制御の実施期間に対応する当該設備の前記消費電力モデルを参照して、省エネ運転制御の実施期間において削減可能な消費電力を前記設備毎に推定する削減電力推定手段と、
前記各設備の前記省エネ運転制御の実施期間において削減可能な消費電力を提示する提示手段と、
を有することを特徴とする消費電力推定装置。
【請求項2】
前記各設備の前記省エネ運転制御の実施期間における負荷状態を示す負荷情報を取得する手段を有し、
前記提示手段は、前記各設備の前記省エネ運転制御の実施期間において削減可能な消費電力に当該設備の負荷情報を対応付けして提示することを特徴とする請求項1に記載の消費電力推定装置。
【請求項3】
前記複数の設備の今後の運用に関するスケジュール情報及び前記削減電力推定手段により推定された削減可能な消費電力を参照して、削減可能な消費電力量を前記設備毎に推定する消費電力量推定手段を有することを特徴とする請求項1に記載の消費電力推定装置。
【請求項4】
前記削減可能な消費電力が所定の削減電力目標値に達していない設備が存在する場合、前記制御設定情報に設定されている当該設備の実際に省エネ運転制御を施す全体時間長の見直しを指示する指示手段を有することを特徴とする請求項1に記載の消費電力推定装置。
【請求項5】
コンピュータを、
省エネ制御対象期間において、複数の設備により構成される組の中で省エネ運転制御を実際に施す設備をローテーションさせるローテーション制御により省エネを制御する場合、前記複数の設備の組を特定する設備構成情報を取得する手段、
前記複数の設備それぞれに対し、実際に省エネ運転制御を施す全体時間長が設定されている制御設定情報を取得する手段、
前記複数の設備の稼働実績に基づき生成された前記複数の設備それぞれの消費電力の
前記省エネ制御対象期間全体における時系列変化を表す消費電力モデルを取得する手段、
前記ローテーション制御を行う場合、前記設備構成情報及び前記制御設定情報を参照して前記各設備における省エネ運転制御の実施期間を決定する決定手段、
前記決定手段により決定された省エネ運転制御の実施期間に対応する当該設備の前記消費電力モデルを参照して、省エネ運転制御の実施期間において削減可能な消費電力を前記設備毎に推定する削減電力推定手段、
前記各設備の前記省エネ運転制御の実施期間において削減可能な消費電力を提示する提示手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費電力推定装置及びプログラム、特に過去の実績を参照して行う消費電力の推定に関する。
【背景技術】
【0002】
空調設備の省エネ制御では、建物の電力消費が大きくなった際に、制御対象の空調機に対して運転モードや設定温度の変更、運転停止等の省エネ運転を実施することで消費電力を削減する。ただ、全ての空調機を同時に省エネ運転させると、室内環境の悪化等を招くことも考えられる。
【0003】
そこで、従来においては、省エネ制御対象となる複数の空調機の中から、実際に省エネ運転を施す空調機を所定の優先順位に従って順番に切り替えていくローテーション制御を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、オフィスビル等の建物では、自物件の過去の実績、例えば過去1年間の消費電力や設備稼働履歴等を参考にして、今後1年間の消費電力を予測し、省エネ制御計画を立案する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4552119号明細書
【文献】特開2015-154580号公報
【文献】特開2018-014856号公報
【文献】特開2017-041941号公報
【文献】特開2019-054579号公報
【文献】特許第6587166号明細書
【文献】特開2006-047195号公報
【文献】特開2019-213251号公報
【文献】特開2019-110698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のローテーション制御では、実際に省エネ制御の対象とする設備を切り替えていくが、実際に省エネ運転の対象となる設備が省エネ運転の対象となる前から運転が停止されていたり、運転能力を定格電力からすでに20%ダウンして運転しているところに20%ダウンするよう指示するような場合には、期待通りの消費電力の削減効果を得ることができない。つまり、従来においては、将来において同じローテーション制御を行ったときの消費電力の削減効果を正確に見積もることができない場合がある。
【0007】
本発明は、ローテーション制御が行われたときの消費電力の削減効果を高精度に推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る消費電力推定装置は、省エネ制御対象期間において、複数の設備により構成される組の中で省エネ運転制御を実際に施す設備をローテーションさせるローテーション制御により省エネを制御する場合、前記複数の設備の組を特定する設備構成情報を取得する手段と、前記複数の設備それぞれに対し、実際に省エネ運転制御を施す全体時間長が設定されている制御設定情報を取得する手段と、前記複数の設備の稼働実績に基づき生成された前記複数の設備それぞれの消費電力の前記省エネ制御対象期間全体における時系列変化を表す消費電力モデルを取得する手段と、前記ローテーション制御を行う場合、前記設備構成情報及び前記制御設定情報を参照して前記各設備における省エネ運転制御の実施期間を決定する決定手段と、前記決定手段により決定された省エネ運転制御の実施期間に対応する当該設備の前記消費電力モデルを参照して、省エネ運転制御の実施期間において削減可能な消費電力を前記設備毎に推定する削減電力推定手段と、前記各設備の前記省エネ運転制御の実施期間において削減可能な消費電力を提示する提示手段と、を有するものである。
【0009】
また、前記各設備の前記省エネ運転制御の実施期間における負荷状態を示す負荷情報を取得する手段を有し、前記提示手段は、前記各設備の前記省エネ運転制御の実施期間において削減可能な消費電力に当該設備の負荷情報を対応付けして提示するものである。
【0010】
また、前記複数の設備の今後の運用に関するスケジュール情報及び前記削減電力推定手段により推定された削減可能な消費電力を参照して、削減可能な消費電力量を前記設備毎に推定する消費電力量推定手段を有するものである。
【0011】
また、前記削減可能な消費電力が所定の削減電力目標値に達していない設備が存在する場合、前記制御設定情報に設定されている当該設備の実際に省エネ運転制御を施す全体時間長の見直しを指示する指示手段を有するものである。
【0012】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、省エネ制御対象期間において、複数の設備により構成される組の中で省エネ運転制御を実際に施す設備をローテーションさせるローテーション制御により省エネを制御する場合、前記複数の設備の組を特定する設備構成情報を取得する手段、前記複数の設備それぞれに対し、実際に省エネ運転制御を施す全体時間長が設定されている制御設定情報を取得する手段、前記複数の設備の稼働実績に基づき生成された前記複数の設備それぞれの前記省エネ制御対象期間全体における消費電力の時系列変化を表す消費電力モデルを取得する手段、前記ローテーション制御を行う場合、前記設備構成情報及び前記制御設定情報を参照して前記各設備における省エネ運転制御の実施期間を決定する決定手段、前記決定手段により決定された省エネ運転制御の実施期間に対応する当該設備の前記消費電力モデルを参照して、省エネ運転制御の実施期間において削減可能な消費電力を前記設備毎に推定する削減電力推定手段、前記各設備の前記省エネ運転制御の実施期間において削減可能な消費電力を提示する提示手段、として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ローテーション制御が行われたときの消費電力の削減効果を高精度に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1における消費電力推定装置を示すブロック構成図である。
【
図2】実施の形態1における消費電力推定装置を形成するコンピュータのハードウェア構成図である。
【
図3】ローテーション制御を説明するために用いる図である。
【
図4】実施の形態1における削減電力推定処理を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態1における制御計画決定部が決定する省エネ運転制御の実施期間をグラフ形式にて示す図である。
【
図6】実施の形態1における消費電力モデル生成部が生成する消費電力モデルの一部分をグラフ形式にて示す図である。
【
図7】本実施の形態において、削減可能な消費電力を推定する方法を説明するために用いる図である。
【
図8】実施の形態2における消費電力推定装置を示すブロック構成図である。
【
図9】実施の形態2における削減電力推定処理を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態3における消費電力推定装置を示すブロック構成図である。
【
図11】実施の形態3における削減電力推定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る消費電力推定装置10の一実施の形態を示すブロック構成図である。本実施の形態における消費電力推定装置10は、ビル等の施設における消費電力を推定する。より具体的には、過去の実績、例えば1年間の設備の稼働実績等を参照して、今後1年間の削減可能な消費電力を推定する。施設には、空調、照明等の各種設備が設置されている。本実施の形態では、説明の便宜上、各種設備の中から空調機を代表させて説明する。従って、以降の説明では、設備と空調機を同義に用いる場合がある。本実施の形態における消費電力推定装置10は、パーソナルコンピュータ(PC)等の従前から存在する汎用的なハードウェア構成で実現できる。
【0017】
図2は、本実施の形態における消費電力推定装置10を形成するコンピュータのハードウェア構成図である。消費電力推定装置10は、
図2に示すようにCPU1、ROM2、RAM3、記憶手段としてのハードディスクドライブ(HDD)4、通信手段として設けられたネットワークインタフェース(IF)5、マウスやキーボード等の入力手段及びディスプレイ等の表示手段を含むユーザインタフェース6を内部バス7に接続して構成される。
【0018】
本実施の形態における消費電力推定装置10は、省エネ対策のために空調機をローテーション制御させることによって省エネ対策を講じている施設への適用に適している。「省エネ」とは、「省エネルギー」の略称で、省電力と同義である。本実施の形態において省エネは、設備が消費する電力を削減することによって実現する。ここで、本実施の形態において省エネ制御として実施するローテーション制御について
図3を用いて説明する。
【0019】
ローテーション制御では、まず、ローテーションを行う複数の空調機により構成される組を予め設定する。
図3では、空調機Aと空調機Bがローテーションされる組と設定されている場合を示している。そして、
図3には、その空調機A,Bの組に対し、ローテーション制御が省エネ制御として実施される対象となる期間(以下、「省エネ制御対象期間」)として30分が割り当てられる例が示されており、空調機A,Bは、この30分の中で実際に省エネのための運転制御(以下、「省エネ運転制御」ともいう)が実施されることになる。ここでは、便宜的に、省エネ運転制御として空調機の運転が停止される場合を例にして説明する。
【0020】
例えば、消費電力削減のために空調機A,Bそれぞれに対して6分間の省エネのための運転制御が実施されるよう設定されている場合、空調機A,Bを制御する空調コントローラは、
図3に例示するように、各空調機A,Bに対して連続した6分間ではなく間欠的に運転させる。より具体的にいうと、空調コントローラは、空調機Aに対して省エネ制御対象期間の開始時点から3分間と開始後15~18分の3分間の計6分間、運転を停止するよう制御する。また、空調コントローラは、空調機Bに対して省エネ制御対象期間の開始後8~11分の3分間と23~26分の3分間の計6分間、運転を停止するよう制御する。なお、本実施の形態では、説明の便宜のために、省エネ制御対象期間の始期(
図3における「制御開始」)の時刻を0分とし、それ以降の時刻を制御開始時点からの経過時間にて表すことにする。空調機Aと空調機Bは、室内環境の悪化を防止するために、上記のように間欠的に運転され、また同じタイミングで運転停止しないようにローテーションされる。
【0021】
なお、ここで例示した、ローテーション制御に必要な省エネ制御対象期間の30分、空調機それぞれに対して実際に省エネ運転制御させる全体時間長の6分間、実際に省エネ運転制御される開始時刻及び時間長(各3分)は、単なる一例である。
【0022】
図1に戻り、本実施の形態における消費電力推定装置10は、制御計画決定部11、消費電力モデル生成部12、削減電力推定部13、情報提供部14、空調構成情報記憶部21、制御設定情報記憶部22及び稼働実績情報記憶部23を有している。なお、本実施の形態の説明に用いない構成要素については、図から省略している。
【0023】
空調構成情報記憶部21には、上記ローテーション制御において説明した、複数の空調機により構成される組(上記例では、空調機Aと空調機Bとの組)を特定する空調構成情報が記憶される。通常、同じエリア、例えば居室に設置されている空調機(室内機)や、同じ室外機に接続されている室内機等を組にする。
【0024】
制御設定情報記憶部22には、上記ローテーション制御において説明した、複数の空調機(上記例では、空調機A,B)それぞれに対し、実際に省エネ運転制御を施す全体時間長(上記例では、各6分間)が設定されている制御設定情報が記憶される。具体的には、制御設定情報は、省エネ運転制御の対象とする設備を特定する情報及び制御の内容を示す情報を含む。省エネ運転制御の対象とする設備を特定する情報は、例えば各空調機の識別情報や各空調機が設置されているエリアの識別情報(以下、「空調機の識別情報」という)としてもよい。制御の内容を示す情報は、例えば、送風、設定温度をX℃とする運転などのように設備の動作内容と、当該動作での継続時間長(上記「省エネ運転制御を施す全体時間長」に相当)とを含む。
【0025】
稼働実績情報記憶部23には、施設に設置されている各設備の稼働実績に関する情報が稼働実績情報として記憶される。前述したように、過去1年間の稼働実績に基づき今後1年間の削減可能な消費電力を推定するのであれば、稼働実績情報記憶部23には、少なくとも直近1年間の稼働実績が記憶されていればよい。稼働実績情報には、後述する消費電力モデルの生成に必要な情報が含まれていればよい。例えば、設備が空調機の場合、空調機の運転履歴(電源がオン/オフされた日時)、運転モード、設定温度が変更されたときの日時及び変更前後の設定温度若しくは設定温度の変更幅、吸込温度等が稼働実績情報として蓄積される。また、稼働実績情報には、設備が稼働しているときの負荷状態を示す負荷情報が含まれている。例えば、設備が定格電力の70%で稼働しているなどの負荷の状態が含まれる。
【0026】
制御計画決定部11は、空調構成情報記憶部21に記憶されている空調構成情報及び制御設定情報記憶部22に記憶されている制御設定情報を参照して、各空調機における省エネ運転制御の実施期間を決定する。省エネ運転制御の実施期間は、省エネ制御対象期間において、空調機が実際に省エネ運転制御を行っている期間であり、省エネ運転制御の開始時刻及び時間長にて表される。例えば、
図3に示した空調機Aの開始時刻は0分と15分であり、時間長は共に3分である。
【0027】
消費電力モデル生成部12は、稼働実績情報記憶部23に記憶されている稼働実績情報から、複数の空調機それぞれの消費電力の時系列変化を表す消費電力モデルを設備毎に生成する。消費電力モデルは、基準となる期間、例えば1日における消費電力の時系列変化を表している。消費電力モデルは、過去の実績、つまり稼働実績情報から得られる将来における典型的な1日の消費電力の予測モデルである。消費電力モデルは、設備毎に生成されるが、時節によって消費電力の消費傾向が異なることを考慮して設備毎時節毎に生成してもよい。また、ビルを利用する企業の就業日と非就業日では、消費する電力量が異なるので、就業日用と非就業日用とで別個に消費電力モデルを生成してもよい。このように、消費電力モデルは、設備毎に生成されるが、電力の消費傾向を参照に時節毎や日別に生成するようにしてもよい。
【0028】
削減電力推定部13は、制御計画決定部11により決定された省エネ運転制御の実施期間及び消費電力モデルを参照して、省エネ運転制御の実施期間において削減可能な消費電力(以下、「削減電力」ともいう)を設備毎に推定する。
【0029】
情報提供部14は、削減電力推定部13による推定結果をディスプレイに表示するなどして、削減電力に関する情報をユーザに提供する。
【0030】
消費電力推定装置10における各構成要素11~13は、消費電力推定装置10を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU1で動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、各記憶部21~23は、消費電力推定装置10に搭載されたHDD4にて実現される。あるいは、RAM3又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。
【0031】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD-ROMやUSBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUがプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0032】
本実施の形態においては、過去の実績を参照にして、各設備において将来的にどれだけ消費電力を削減できるのか、つまり削減電力を推定することを特徴としている。以下、本実施の形態における削減電力推定処理について、
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0033】
まず、ステップ110において、制御計画決定部11は、省エネ運転制御の実施期間を設備毎に決定する。省エネ運転制御の実施期間は、前述したように、省エネ制御対象期間において、設備が実際に省エネ運転制御される開始時刻及び時間長にて示される。制御計画決定部11は、空調構成情報記憶部21からローテーション制御の組となる空調機を読み出す。続いて、制御計画決定部11は、読み出した組それぞれの制御設定情報を制御設定情報記憶部22から読み出す。制御計画決定部11は、各記憶部21,22から取得した情報を参照し、組を構成する空調機それぞれに対して、実際に省エネ運転制御される開始時刻及び時間長を決定する。
【0034】
図5は、制御計画決定部11が決定するある設備(例えば、空調機A)の省エネ運転制御の実施期間をグラフ形式にて示す図である。
図5において、横軸は時間であり、省エネ制御対象期間全体を表している。縦軸は省エネ制御の対象となっているかどうかを示している。省エネ制御の対象となっている間がONで、なっていない間がOFFである。そして
図5では、省エネ運転制御の各実施期間T1,T2,T3における開始時刻TS1,TS2,TS3と時間長TC1,TC2,TC3が示されている。なお、時間長TC1,TC2,TC3は同じとする必要はない。
【0035】
ところで、空調機を実際に運転制御する空調コントローラは、空調構成情報記憶部21から読み出した空調構成情報と、制御設定情報記憶部22から読み出した制御設定情報とを参照して、所定のアプリケーションを使用して省エネ制御対象期間において省エネ制御対象の設備が実際に省エネ運転制御される開始時刻及び時間長を決定する。制御計画決定部11は、空調コントローラと同じアプリケーションを利用して実際に省エネ運転制御される開始時刻及び時間長を決定する。従って、本実施の形態では、過去と同じローテーション制御が実施される条件の下に将来における削減電力が推定されることになる。
【0036】
次に、ステップ120において、消費電力モデル生成部12は、稼働実績情報記憶部23に蓄積されている稼働実績情報を参照して、消費電力モデルを設備毎に生成する。
【0037】
図6は、消費電力モデル生成部12が生成する消費電力モデルをグラフ形式にて示す図である。
図6に示す消費電力モデルは、
図5に示す設備(例えば、空調機A)と同じ設備の消費電力モデルである。
図5において、横軸は時間であり、省エネ制御対象期間全体を表している。縦軸は消費電力である。
図6に示す消費電力モデルの形状は、一例であって、必ずしも実績に即しているものではない。
図5~7では、1日全体が省エネ制御対象期間とした場合を示している。
【0038】
なお、上記ステップ110とステップ120は、どちらを先に実施してもよいし、同時並行して処理してもよい。
【0039】
続いて、ステップ130において、削減電力推定部13は、制御計画決定部11が決定した省エネ運転制御の実施期間及び消費電力モデル生成部12が生成する消費電力モデルを参照して、削減可能な消費電力(削減電力)を推定する。削減電力推定部13における削減電力の推定方法を
図5~
図7を用いて説明する。
【0040】
図5及び
図6は、すでに説明したとおりである。
図7において、横軸は、
図5,6と同様に時間であり、省エネ制御対象期間全体を表している。縦軸は消費電力である。
図7には、
図5に示した省エネ運転制御の各実施期間T1,T2,T3と、
図6に示した消費電力モデル(破線)が示されている。なお、ここでは、説明の便宜上、省エネ運転制御として、特に断らない限り設備の運転が停止されるものとして説明する。
【0041】
図7において、省エネ運転制御の各実施期間T1,T2,T3においては、仮に省エネ運転制御が実施されていなければ、各実施期間T1,T2,T3に対応する消費電力モデル上の実線で示されている消費電力m1,m2,m3で示すように電力は消費されることになる。ただ、ローテーション制御が実施されることによって設備の運転が停止されるので、各実施期間T1,T2,T3における消費電力は、実線z1,z2,z3で示すように0Kwとなる。すなわち、m1,m2,m3とz1,z2,z3の差分が1日(省エネ制御対象期間)において削減可能な消費電力となる。
【0042】
従来において、将来において削減可能な消費電力を見積もる場合、設備の定格電力を参照にしていた。例えば、定格電力が100Kwの場合、運転を停止させれば、100Kwの電力消費を削減できると計算していた。しかしながら、設備は、常に定格電力で運転しているとは限らず、過去の運用実績を参照すると、
図6に例示するように、設備の消費電力は変動する場合が少なくない。従来では、この消費電力の変動を考慮していなかったため、削減可能な消費電力を精度良く推定することができなかった。
【0043】
そこで、本実施の形態においては、制御設定情報に基づくローテーションの制御計画に加えて、過去の実績から得られる消費電力の時系列変化(消費電力モデル)を参照するようにしたので、将来において削減可能な消費電力を高精度に推定することができる。
【0044】
ステップ140において、情報提供部14は、削減電力推定部13による削減電力の推定結果をディスプレイに表示するなどして情報提供する。なお、情報の出力先は、ディスプレイに限らず、ファイルに保存したり、ネットワークを介して他のコンピュータや外部に送信したりしてもよい。
【0045】
ところで、消費電力の削減効果を高めるために、過去に対して70%ダウンで運転させることを計画したとする。この場合、従来であれば、定格電力の70%で運転させるよう制御する。ただ、設備は、実際には定格電力の100%ではなく、定格電力の70%で運転している場合も想定しうる。あるいは、時間帯によって、通常時から定格電力の60%で運転している場合もあり得るが、この時間帯に定格電力の70%で省エネ運転を計画しても、実際には過去に対して10%アップということになってしまう。
【0046】
そこで、本実施の形態においては、消費電力に加えて負荷情報を合わせて提示するようにした。すなわち、情報提供部14は、各空調機に対する省エネ運転制御の実施期間、詳細には、どの空調機をいつからどの時間長で省エネ運転制御させるかという制御計画に対応させて、省エネ運転制御の実施期間において削減可能な消費電力及び負荷情報を対応付けして提示するようにしてもよい。負荷情報は、各設備の省エネ運転制御の実施期間における負荷状態を示す情報である。例えば、省エネ運転制御の実施期間において、送風モードで運転していた、あるいは定格電力の70%で運転していたなど、負荷情報を参照することによって、省エネ運転制御の実施期間において各設備にかかっていた負荷が把握可能となる。省エネ計画の立案者は、負荷情報を参照することで、省エネ運転制御の実施期間において削減可能な消費電力のうち、実際にはどの程度まで消費電力を削減できるのかということを判断することが可能となる。これにより、消費電力の削減効果を高精度に推定することができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、制御計画決定部11が決定した制御計画に加えて、電力の消費実績を表す消費電力モデルを参照することによって将来の削減可能な消費電力(削減電力)を推定することを特徴としている。従って、本実施の形態においては、削減電力の推定に用いる制御計画及び消費電力モデルをそれぞれ生成する制御計画決定部11及び消費電力モデル生成部12を消費電力推定装置10に持たせるよう構成したが、外部にて生成された制御計画及び消費電力モデルをネットワーク経由で取得するよう消費電力推定装置10を構成してもよい。
【0048】
実施の形態2.
図8は、本実施の形態における消費電力推定装置10を示すブロック構成図である。実施の形態1に示す消費電力推定装置10(
図1)と同じ構成要素には、同じ符号を付け、説明を省略する。本実施の形態における消費電力推定装置10は、実施の形態1に示す構成に削減電力量推定部15及びスケジュール情報記憶部24を追加した構成を有している。
【0049】
スケジュール情報記憶部24には、削減電力量の推定対象とする今後1年間、例えば翌年度の空調機の運用に関するスケジュール情報が記憶される。スケジュール情報は、制御対象とする空調機の識別情報、当該設備を動作させる日時(開始時刻、動作期間等)、稼働日/非稼働日の別等の情報を含む。空調機のコントローラは、スケジュール情報記憶部24に記憶されているスケジュール情報、又はこのスケジュール情報と同じ内容であってスケジュール情報記憶部24とは異なる記憶手段に記憶されているスケジュール情報に従って空調機の動作を制御する。スケジュール情報記憶部24は、消費電力推定装置10に搭載されたHDD4にて実現される。あるいは、RAM3又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。
【0050】
削減電力量推定部15は、削減電力推定部13による削減電力の推定結果を所定の期間で集計することによって、削減可能な消費電力量を設備毎に推定する。削減電力量推定部15は、消費電力推定装置10を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU1で動作するプログラムとの協調動作により実現される。
【0051】
以下、本実施の形態における削減電力推定処理について、
図9に示すフローチャートを用いて説明する。本実施の形態において、実施の形態1と同じ処理には、同じステップ番号を付けて説明を省略する。
【0052】
図9に示すように、削減電力推定部13が削減電力を設備毎に推定するまでの処理(ステップ110~130)は、実施の形態1と同じでよい。続いて、削減電力量推定部15は、削減電力推定部13による削減電力の推定結果を参照して、翌年の削減可能な消費電力量を推定する(ステップ210)。
【0053】
ところで、消費電力モデルは、将来における典型的な1日の消費電力の予測モデルであるが、消費電力モデル生成部12は、空調機に対してただ1つのみ生成するのではなく、就業日/非就業日毎あるいは曜日毎等一の空調機に対して複数の消費電力モデルを生成してもよい。本実施の形態においては、消費電力モデルは、稼働日(「就業日」と同義)用と非稼働日(「非就業日」と同義)用とに分けて2種類の消費電力モデルが生成されているものとして説明する。
【0054】
削減電力量推定部15は、スケジュール情報を参照することによって、翌年度の稼働日及び非稼働日の日数を取得する。そして、削減電力量推定部15は、稼働日用の消費電力モデルから得られる削減電力に稼働日の日数を乗算することによって稼働日における消費電力量を算出する。また、削減電力量推定部15は、非稼働日用の消費電力モデルから得られる削減電力に非稼働日の日数を乗算することによって非稼働日における消費電力量を算出する。このようにして、削減電力量推定部15は、算出した稼働日における消費電力量と非稼働日における消費電力量を合算することで、翌年度の消費電力量を推定する。
【0055】
消費電力モデル生成部12によって稼働日用と非稼働日用の消費電力モデルが曜日毎に生成されている場合、削減電力量推定部15は、翌年度の稼働日及び非稼働日の日数を曜日毎に取得する。そして、削減電力量推定部15は、上記と同様に、各曜日の稼働日/非稼働日の日数と、当該曜日に対応する稼働日用/非稼働日用の消費電力モデルから得られる削減電力を乗算し、その乗算した結果を合算することで、翌年度の消費電力量を推定する。
【0056】
続いて、情報提供部14は、削減電力量推定部15による翌年度の削減電力量の推定結果をディスプレイに表示するなどして情報提供する(ステップ220)。提供する情報には、各設備の翌年度の推定削減電力量に加えて、削減電力推定部13による削減電力の推定結果を含めてもよい。
【0057】
本実施の形態によれば、前年度の稼働実績から省エネ制御を行うことによって削減可能な消費電力量を推定することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、翌年度の稼働日の日数等を消費電力モデルから得られる削減電力を乗算することによって翌年度の削減電力量を推定するようにしたが、計算方法はこれに限る必要はない。例えば、月単位に削減電力量を算出し、12ヶ月分の消費電力量を合算することで翌年度の消費電力量を推定するようにしてもよい。月単位に削減電力量を算出する場合、月毎の削減電力量を情報提供の対象としてもよい。
【0059】
実施の形態3.
図10は、本実施の形態における消費電力推定装置10を示すブロック構成図である。実施の形態1に示す消費電力推定装置10(
図1)と同じ構成要素には、同じ符号を付け、説明を省略する。本実施の形態における消費電力推定装置10は、実施の形態1に示す構成に目標達成確認部16、制御設定更新部17及び削減目標情報記憶部25を追加した構成を有している。
【0060】
削減目標情報記憶部25には、省エネ制御によって削減する電力の目標値(以下、「削減電力目標値」という)が削減目標情報として設備毎に記憶される。目標値は、設備毎に設定されるが、同じ種別の設備や同じエリアに設置されている設備などをグループ化し、グループ毎に共通の目標値を設定するようにしてもよい。削減目標情報記憶部25は、消費電力推定装置10に搭載されたHDD4にて実現される。あるいは、RAM3又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。
【0061】
目標達成確認部16は、削減電力推定部13により推定された削減電力が、当該設備の削減電力目標値に達しているかどうかを確認する。削減電力が削減電力目標値に達していない設備が存在する場合、目標達成確認部16は、制御設定情報に設定されている当該設備の実際に省エネ運転制御を施す全体時間長の見直しを指示する。
【0062】
制御設定更新部17は、目標達成確認部16からの指示に応じて、制御設定情報記憶部22に設定されている当該設備に関連する制御設定の内容を見直し、再設定する。目標達成確認部16及び制御設定更新部17は、消費電力推定装置10を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU1で動作するプログラムとの協調動作により実現される。
【0063】
以下、本実施の形態における削減電力推定処理について、
図11に示すフローチャートを用いて説明する。本実施の形態において、実施の形態1と同じ処理には、同じステップ番号を付けて説明を省略する。
【0064】
図11に示すように、削減電力推定部13が削減電力を設備毎に推定するまでの処理(ステップ110~130)は、実施の形態1と同じでよい。続いて、目標達成確認部16は、確認対象の設備に対応する削減電力目標値を削減目標情報記憶部25から取り出し、削減電力推定部13により推定された当該設備の削減電力と比較する。削減電力が削減電力目標値に達していない場合(ステップ310でN)、目標達成確認部16は、現在の制御設定の内容では、削減目標を達成できないと判断して当該設備の実際に省エネ運転制御を施す全体時間長の見直しを制御設定更新部17に指示する。
【0065】
制御設定更新部17は、目標達成確認部16からの指示に応じて、削減目標を達成できるよう当該設備の制御設定の内容を見直し、制御設定情報記憶部22に記憶されている当該設備の制御設定情報を再設定する(ステップ320)。
【0066】
続いて、情報提供部14は、削減電力推定部13による削減電力の推定結果をディスプレイに表示するなどして情報提供する(ステップ140)。このとき、削減目標に達成できない設備の場合、その旨、未達成率、再設定された制御設定情報の内容等を合わせて情報提供するようにしてもよい。
【0067】
一方、削減電力が削減電力目標値以上となる場合(ステップ310でY)、現在の制御設定では、削減目標を達成できると判断する。この場合、情報提供部14は、削減電力推定部13による削減電力の推定結果をディスプレイに表示するなどして情報提供する(ステップ140)。このとき、削減目標に達成できる設備の場合、その旨、達成率等を合わせて情報提供するようにしてもよい。
【0068】
本実施の形態によれば、推定した削減電力では削減目標に達成しないことが予測できる場合、制御設定情報の設定内容を自動的に修正できるようにしたので、翌年度の削減目標を達成することができるようになる。
【0069】
なお、本実施の形態においては、制御設定更新部17を消費電力推定装置10に設けることによって、消費電力推定装置10が制御設定情報記憶部22に設定されている制御設定情報を更新できるようにした。ただ、制御設定更新部17を消費電力推定装置10に設けずに、外部にある制御設定情報を設定するアプリケーションに対して制御設定情報の再設定を目標達成確認部16に指示させるようにしてもよい。
【0070】
ところで、例えば、
図3に示す空調機Aの削減電力が削減電力目標値まで10Kw満たないことで削減目標に達していない場合、空調機Aのみの制御設定を見直すようにしてもよいし、空調機Bの制御設定を合わせて調整するようにしてもよい。例えば、空調機A,Bが同機種の場合において、空調機Aの削減電力が10Kw以上増えるように省エネ運転制御の実施期間を見直した場合、空調機A,Bの組において必要以上に消費電力を減らす必要はないため、空調機Bの削減電力を10Kw程度減らすように調整してもよい。これにより。空調機A,Bが設置されているエリアの環境悪化を抑えることが可能となる。
【0071】
上記各実施の形態では、それぞれの特徴事項について説明したが、適宜組み合わせて実施するようにしてもよい。また、各実施形態においては、各記憶部21~25を消費電力推定装置10に持たせるように構成したが、例えばビル管理システム等で管理しているデータベース等を、ネットワークを介して取得するよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 CPU、2 ROM、3 RAM、4 ハードディスクドライブ(HDD)、5 ネットワークインタフェース(IF)、6 ユーザインタフェース(UI)、7 内部バス、10 消費電力推定装置、11 制御計画決定部、12 消費電力モデル生成部、13 削減電力推定部、14 情報提供部、15 削減電力量推定部、16 目標達成確認部、17 制御設定更新部、21 空調構成情報記憶部、22 制御設定情報記憶部、23 稼働実績情報記憶部、24 スケジュール情報記憶部、25 削減目標情報記憶部。