(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ロストモーション可変バルブ駆動システム及び方法
(51)【国際特許分類】
F01L 13/00 20060101AFI20241115BHJP
F01L 9/14 20210101ALI20241115BHJP
【FI】
F01L13/00 302C
F01L9/14
(21)【出願番号】P 2023034212
(22)【出願日】2023-03-07
(62)【分割の表示】P 2021512523の分割
【原出願日】2019-09-10
【審査請求日】2023-04-03
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413266
【氏名又は名称】ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュウォーラー、ジョン、エイ.
(72)【発明者】
【氏名】グロン、ジー.、マイケル、ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ムーア、ジェイコブ、エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル、トーマス ピー.
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-053615(JP,A)
【文献】特表2005-522622(JP,A)
【文献】特表2007-500314(JP,A)
【文献】特表2013-501870(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0023801(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104265393(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第04202542(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 13/00
F01L 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの少なくとも1つのエンジンバルブの動作を制御するためのエンジンバルブ駆動アセンブリであって、
動作源と、
前記動作源から前記少なくとも1つのエンジンバルブへ動作を伝達するためのエンジンバルブトレインであり、ハウジングを含むエンジンバルブトレインと、
前記ハウジングに形成されたマスタピストン穴と、
前記マスタピストン穴と協働することによりマスタピストンチャンバを形成するマスタピストンであり、前記動作源から動作を受領するための動作受領界面を有したマスタピストンと、
前記ハウジングに形成されたスレーブピストン穴と、
前記スレーブピストン穴と協働することによりスレーブピストンチャンバを形成するスレーブピストンであり、前記
エンジンバルブトレインの動作受領構成要素と前記少なくとも1つのエンジンバルブに対して動作を伝達するための動作伝達界面を有したスレーブピストンであり
、前記スレーブピストンチャンバが前記マスタピストンチャンバに流体連通する、スレーブピストン
と、
前記スレーブピストンに形成された制御ピストン穴と、
前記制御ピストン穴と協働することによりオートラッシュチャンバを形成する制御ピストンと、
前記制御ピストンと動作上接続される制御ピンであって、前記スレーブピストンチャンバから前記マスタピストンチャンバへの流れを可能にするように配置される
複数の制御ピンポートを有する制御ピン
と、
前記制御ピンと協働するチェックディスク
であって、それにより、エンジンバルブ閉鎖中に前記スレーブピストン
の動作に応答して、前記
複数の制御ピンポート
の少なくとも1つを通る流れを徐々に閉塞する
チェックディスクと、
前記制御ピンと前記チェックディスクのための共通の着座面を有する
、バルブキャッチ座であって、前記共通の着座面は、前記制御ピンに対する前記チェックディスクの正確な位置決め容易にするバルブキャッチ座と、
、を含
み、前記
少なくとも1つのエンジンバルブが着座位置にあるときに、前記制御ピンの前記
複数の制御ピンポートの少なくとも1つは、前記チェックディスクにより閉塞されない、エンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項2】
前記
少なくとも1つのエンジンバルブのリフトがしきい値より下の時に、前記チェックディスクが前記バルブキャッチ座に接触するようにされる、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項3】
前記
少なくとも1つのエンジンバルブの着座の直前に前記制御ピンが前記バルブキャッチ座に接触するようにされる、請求項
2に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項4】
前記
複数の制御ピンポートの少なくとも1つは円形穴である、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項5】
前記制御ピン上のチェックディスク係止部は、前記チェックディスクを保持する、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項6】
チェックディスクスプリングは、前記制御ピストンと前記チェックディスクとの間に配置され
る、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項7】
制御ピンスプリングは、前記スレーブピストンと前記制御ピンとの間に配置される
、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項8】
前記マスタピストンと前記スレーブピストンとの間の流体通路をさらに備える、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項9】
前記流体通路は、前記マスタピストン穴
の頂部にベルマウスを備える、請求項
8に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項10】
前記制御ピストンと前記制御ピンは、圧入により動作上接続される、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項11】
前記マスタピストンチャンバと流体連通する、油圧制御回路をさらに備える、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項12】
前記油圧制御回路はアキュムレータを備える、請求項1
1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項13】
前記油圧制御回路はドライスタートリザーバを備える、請求項1
1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項14】
前記油圧制御回路は、前記マスタピストンチャンバへの
及び前記マスタピストンチャンバからの油圧流体の流れを制御するためのソレノイドバルブを備える、請求項1
1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項15】
前記油圧
制御回路は前記ハウジングに統合される、請求項1
1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項16】
前記ハウジングは、エンジンオーバーヘッドアセンブリに取り付けられるようにされる、ロッカシャフト台座である、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項17】
前記ハウジングはロッカ台座であり、エンジンヘッドに取り付けられるようにされるモジュラーアドオンアセンブリを提供するために、
油圧回路は、前記
ロッカ台座に統合される、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項18】
エンジンの少なくとも1つのエンジンバルブの動作を制御するためのエンジンバルブ駆動アセンブリであって、
動作源と、
前記動作源から前記少なくとも1つのエンジンバルブへ動作を伝達するためのエンジンバルブトレインであり、ハウジング
であって、エンジンオーバーヘッドアセンブリに取り付けられるようにされる、ロッカシャフト台座であるハウジングを含むエンジンバルブトレインと、
前記ハウジングに形成されたマスタピストン穴と、
前記マスタピストン穴と協働することによりマスタピストンチャンバを形成するマスタピストンであり、前記動作源から動作を受領するための動作受領界面
であって、プッシュチューブ受領ソケットである動作受領界面を有したマスタピストンと、
前記ハウジングに形成されたスレーブピストン穴と、
前記スレーブピストン穴と協働することによりスレーブピストンチャンバを形成するスレーブピストンであり、前記
エンジンバルブトレインの動作受領構成要素
であって、ロッカアームである動作受領構成要素と前記少なくとも1つのエンジンバルブに対して動作を伝達するための動作伝達界面を有したスレーブピストンであり
、前記スレーブピストンチャンバが前記マスタピストンチャンバに流体連通し
、前記マスタピストンチャンバと前記スレーブピストンチャンバは、軸方向で位置合わせされる、スレーブピストンと、
前記スレーブピストンに形成された制御ピストン穴と、
前記制御ピストン穴と協働することにより、オートラッシュチャンバを形成する制御ピストンと、
前記スレーブピストンチャンバから前記マスタピストンチャンバへの流れを可能にするように配置される
、前記制御ピストンと動作上接続される制御ピン
であって、複数の制御ピンポートを含む制御ピンと、
前記制御ピンと協働するチェックディスクであり、それにより、エンジンバルブ閉鎖中に前記スレーブピストン動作に応答して、前記
複数の制御ピンポートの少なくとも1つ
を通る流れを徐々に閉塞するチェックディスクと、を含む、エンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項19】
エンジンの少なくとも1つのエンジンバルブの動作を制御するためのエンジンバルブ駆動アセンブリであって、
動作源と、
前記動作源から前記少なくとも1つのエンジンバルブへ動作を伝達するためのエンジンバルブトレインであり、ハウジング
であって、エンジンオーバーヘッドアセンブリに取り付けられるようにされる、ロッカシャフト台座であるハウジングを含むエンジンバルブトレインと、
前記ハウジングに形成された
マスタピストン穴と、
前記
マスタピストン穴と協働することにより
マスタピストンチャンバを形成する
マスタピストンであり、
カムである前記動作源から動作を受領するプッシュチューブ受領ソケットを含む、
マスタピストンと、
前記ハウジングに形成されたスレーブピストン穴と、
前
記スレーブピストン穴と協働することによりスレーブピストンチャンバを形成するスレーブピストンであり、前記エンジンバルブトレインの動作受領構成要素であって、ロッカアームである動作受領構成要素と前記少なくとも1つのエンジンバルブに対して動作を伝達するための動作伝達界面を有したスレーブピストンであり、前記スレーブピストンチャンバが前記マスタピストンチャンバに流体連通し、前記マスタピストンチャンバと前記スレーブピストンチャンバは、軸方向で位置合わせされる、スレーブピストンと、
前記ピストンチャンバ内の圧力又は流れを制御するように配置されるバルブキャッチアセンブリであり、それにより前記少なくとも1つのエンジンバルブの動作を制御する、バルブキャッチアセンブリと、を含む、エンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項20】
エンジンの少なくとも1つのエンジンバルブの動作を制御するためのエンジンバルブ駆動アセンブリであって、
動作源と、
前記動作源から前記少なくとも1つのエンジンバルブへ動作を伝達するためのエンジンバルブトレインであり、ハウジングを含むエンジンバルブトレインと、
前記ハウジングに形成されたマスタピストン穴と、
前記マスタピストン穴と協働することによりマスタピストンチャンバを形成するマスタピストンであり、前記動作源から動作を受領するための動作受領界面を有したマスタピストンと、
前記ハウジングに形成されたスレーブピストン穴と、
前記スレーブピストン穴と協働することによりスレーブピストンチャンバを形成するスレーブピストンであり、前記エンジンバルブトレインの動作受領構成要素と前記少なくとも1つのエンジンバルブに対して動作を伝達するための動作伝達界面を有したスレーブピストンであり、前記スレーブピストンチャンバが前記マスタピストンチャンバに流体連通する、スレーブピストンと、
前記スレーブピストンに形成された制御ピストン穴と、
前記制御ピストン穴と協働することによりオートラッシュチャンバを形成する制御ピストンと、
前記制御ピストンと動作上接続される制御ピンであって、前記スレーブピストンチャンバから前記マスタピストンチャンバへの流れを可能にするように配置される複数の制御ピンポートを有する制御ピンと、
前記制御ピンと協働するチェックディスクであって、それにより、エンジンバルブ閉鎖中に前記スレーブピストンの動作に応答して、前記複数の制御ピンポートの少なくとも1つを通る流れを徐々に閉塞するチェックディスクと、
、を含み、前記少なくとも1つのエンジンバルブが着座位置にあるときに、前記制御ピンの前記複数の制御ピンポートの少なくとも1つは、前記チェックディスクにより閉塞されない、エンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項21】
前記チェックディスクは、チェックディスク着座面を形成する環状スカートを含む、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項22】
前記複数の制御ピンポートの少なくとも1つは、前記制御ピンと通って半径方向に延びる、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項23】
前記制御ピストンは、前記制御ピンのガイドされた動作を提供するようにされる制御ピンカラーを含む、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項24】
前記スレーブピストンに関して、前記制御ピン上に配置され、付勢力を提供するようにされる、制御ピンスプリングをさらに含む、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項25】
前記制御ピンに関して、前記チェックディスクに配置され、付勢力を提供するようにされる、チェックディスクスプリングをさらに含む、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項26】
前
記制御ピンは、環状制御ピン着座面を形成する、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項27】
前記チェックディスクは、前記複数の制御ピンポートの少なくとも1つを徐々に閉塞するように配置される計量エッジを含む、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【請求項28】
前記複数のピンポートの少なくとも1つは、前記制御ピン内に半径方向に延び、前記制御ピンは、環状制御ピン着座面を形成する、請求項1に記載のエンジンバルブ駆動アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願及び優先権主張
本出願は、「LOST MOTION HYDRAULIC VARIABLE VALVE ACTUATION SYSTEM AND METHOD」と題して2018年9月10日付けで出願された米国仮特許出願シリアル番号第62/729,214号明細書の優先権を主張するものであり、その主題は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、一般に、内燃機関の1つ又は複数のエンジンバルブを駆動するためのシステム及び方法に関する。特に、本開示の実施形態は、エンジンのドライスタートの直後に、可変バルブ駆動(VVA)アセンブリの高信頼性で完全な動作を可能とするためのシステムに関する。本開示の実施形態は、さらに、アドオンVVAアセンブリのためのモジュール式でコンパクトなパッケージングを有したシステムに関する。本開示の実施形態は、さらに、プッシュチューブなどのバルブトレイン構成要素を、マスタ-スレーブVVAアセンブリ内のマスタピストン及び他の構成要素に対して、界面接続するためのシステムに関する。本開示の実施形態は、さらに、ロストモーションVVAデバイスにおいて使用されるマスタ/スレーブピストン構成要素における自己調節型バルブキャッチなどの、ロストモーションシステムにおけるバルブトレイン構成要素の速度を制御するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
内燃機関は、輸送及びトラック輸送を含む多くの用途及び産業において、広く利用されている。これらのエンジンは、エンジンシリンダが燃焼プロセスによって動力を生成する正の動力動作モードを主に促進し得るエンジンバルブ駆動システムを利用している。標準的な燃焼サイクルに関連した吸排気バルブの動作は、典型的には、「主イベント」動作と称される。公知のエンジンバルブ駆動システムは、早期又は遅延の吸気バルブ閉鎖などの、変更された主イベントバルブ動作を提供することができる。主イベント動作に加えて、公知のエンジンバルブ駆動システムは、内燃機関が、他のモードで、あるいは、正の動力生成モードの変形例(例えば、排気ガス再循環(EGR)、早期排気バルブ開放(EEVO)、等)で、動作させ得る補助バルブ駆動動作又は補助バルブ駆動イベントを促進することができる、若しくは、内燃機関が、未給油状態で、実質的に空気圧縮機として動作し、車両の減速を支援するために減速力を発生させるエンジンブレーキを促進することができる。さらにまた、エンジンブレーキを提供するために使用されるバルブ駆動動作の変形例が知られている(例えば、ブレーキガス再循環(BGR)、ブリーダブレーキ、等)。
【0004】
主イベントバルブ動作及び補助イベントバルブ動作の双方について、エンジンシリンダの吸気バルブ及び排気バルブは、それぞれのバルブトレインと相互作用する固定ローブを有したそれぞれの固定プロファイルカムによって開放させることができる。しかしながら、固定プロファイルカムの使用には、限界が存在し得る。例えば、固定プロファイルカムの使用は、エンジン動作における様々な、モード、速度、及び条件での最適な主イベントバルブ動作及び補助バルブ動作のために必要な、バルブタイミング及びリフトなどの、バルブ動作に関する調整を、制限したり、不可能としたり、する可能性がある。
【0005】
従来技術においては、固定カムバルブ動作システムに関連した制限を克服するために、VVAシステムが開発された。VVAシステムは、正動力モード及びエンジンブレーキモードにおける内燃機関の動作を容易とするために、ロストモーション構成要素を含むことができる。ロストモーションとは、カムプロファイルによって支配されるバルブの動作が、バルブトレイン内の可変長さの、機械的リンケージ、油圧的リンケージ、又は他のリンケージによって変更され得る種類の技術的解決策に適用される用語である。ロストモーション構成要素は、当該技術分野においては周知である。これらのデバイスは、典型的には、バルブの動作を変更するために、制御された態様で、バルブトレイン内の隣接する構成要素を折り畳んだり、それらの長さを変更したり、係合/係合解除したり、し得る部材を含む。ロストモーションデバイスは、エンジンサイクル時には、回転カムなどの固定プロファイルを有したバルブ駆動動作源によって指示される動作とは異なる特定のバルブ駆動動作を促進することができる。ロストモーションデバイスは、そのような動作を、選択的に「ロスト」させることができる、すなわち、主イベントのバルブ動作に加えたイベントを達成するためにあるいは主イベントのバルブ動作に変化をもたらすイベントを達成するために、そのような動作を、バルブトレインを介して1つ又は複数のエンジンバルブに対して選択的に伝達されないようにすることができる。VVAロストモーションシステムでは、カムローブは、エンジンの動作モード及び動作条件の全範囲にわたって必要とされる「最大」(最長滞在及び最大リフト)動作を規定することができる。可変長システムを、バルブトレイン内において、開放されるべきバルブとカムとの中間のところに含むことができ、これにより、カムによってバルブに付与されるであろう動作の一部を、差し引くことができるすなわち「ロストさせる」ことができる。
【0006】
うまくないことに、公知のVVAロストモーションシステムは、利点を提供し得るものではあるけれども、それらの実装は、当該技術分野においては、いくつかの点で課題を提起し得るものである。例えば、エンジンのドライスタート又はコールドスタートの際には、公知のVVAロストモーションシステムにおける動作油圧構成要素には、油圧流体(オイル)が存在していないかもしれず、それは、エンジンの動作が停止した後に、油圧流体(オイル)が構成要素から排出され得るからである。そのような油圧流体の損失は、VVAロストモーションシステムの完全な機能が達成されるよりも前に、エンジン再始動時に、数回のエンジンサイクル及び/又はエンジン暖機を必要とする場合がある。
【0007】
当該技術分野における他のニーズは、VVAロストモーションシステムのコンパクトでモジュール式の構成を利点として提供するために、容易に設置し得るような、及び/又は、既存のエンジン構成に対してアドオン構成要素として設置し得るような、VVAロストモーションアセンブリに対する要望に関連する。モジュール式の構成は、取り扱い、出荷、及び設置、が容易であるという利点を提供することができる。関連して、既存のエンジン構造に対して容易に統合され得るとともに、設置前にアセンブリ内の構成部品の保持を提供することのために、VVAロストモーション構成要素に関するコンパクトでモジュール式のパッケージングが要望されている。
【0008】
オーバーヘッドバルブエンジン構成は、エンジンのバルブトレイン内において、プッシュチューブ又はプッシュロッドを利用することができる。これらの構成要素は、マスタピストン/スレーブピストンVVAロストモーションアセンブリ上におけるマスタピストンに対して、界面を構成することができる。設置時には、既存のVVAロストモーションアセンブリは、VVAロストモーションアセンブリ内のマスタピストン又は他の構成要素上におけるそれぞれの動作界面に対してプッシュチューブを位置合わせするために、手作業で多大な労力を必要とする場合がある。その上、位置ずれに加えて、既存のプッシュチューブ界面の構成は、過度の摩擦及び摩耗、潤滑不良、及び、動作中の最適な安定性に満たない、という傾向があり得る。
【0009】
公知のロストモーションVVAシステムは、また、バルブ閉塞動作を制御する上で、すなわちバルブ閉塞速度を制御する上で、さらなる課題を提起する。バルブトレイン内のロストモーション構成要素が、遅延吸気バルブ閉塞においてなど、関連するカム表面によって規定される動作からエンジンバルブ動作を変化させ得ることのために、バルブの閉塞速度が過度となる可能性があり、これは、適切な制御デバイスが存在しない場合には、バルブがバルブ座に対して「衝突」する結果となり得る。その主題が全体的に参照により本明細書に援用される米国特許第6,474,277号に開示されているものなどのバルブキャッチが、従来技術においては、ロストモーションシステムにおける過度のバルブ閉塞速度という問題点に対処するために開発された。しかしながら、そのようなシステムは、いくつかのVVA環境においては、最適の制御を提供し得ない。例えば、そのようなシステムでは、構成要素を非常に小さな公差で製造する必要があり、コスト高となり得る。さらに、マスタ/スレーブピストン構成要素において利用された時には、そのようなシステムは、マスタピストンとスレーブピストンとの間において、大きな油圧抵抗を示し得る。
【0010】
したがって、従来技術における上記の欠点及び他の欠点に対処するシステム及び方法を提供することは有利であろう。
【発明の概要】
【0011】
上記の課題に応答して、本開示は、改良された特徴点及び利点を有したVVAアセンブリ及び他の構成要素に関する様々な実施形態を提供する。
【0012】
本開示の一態様によれば、エンジンのドライスタートに続くロストモーションVVA構成要素の迅速な充填を提供するエンジンバルブ駆動アセンブリが提供される。エンジンバルブトレインにおいて可変バルブ駆動を提供するためのシステムは、ハウジングと、ハウジングに形成されたマスタピストン穴と、マスタピストン穴と協働することによりマスタピストンチャンバを形成するマスタピストンであり、バルブトレインの動作源から動作を受領するための動作受領界面を有したマスタピストンと、ハウジングに形成されたスレーブピストン穴と、スレーブピストン穴と協働することによりスレーブピストンチャンバを形成するスレーブピストンであり、バルブトレインの動作受領構成要素に対して動作を伝達するための動作伝達界面を有したスレーブピストンと、エンジン始動サイクル時にマスタピストンチャンバに対して動作流体を供給するために、マスタピストンチャンバと協働するドライスタート油圧回路と、を含むことができる。
【0013】
ドライスタート油圧回路は、ロストモーションVVAアセンブリのマスタ-スレーブ回路に対しての油圧流体の迅速な供給を容易とする。エンジン及びVVAアセンブリの初期のドライスタートサイクル時には、マスタピストンは、初期的に空となったVVAシステム油圧回路内に低圧を作り出すために使用され、これにより、ドライスタートリザーバから、高圧逆止バルブを介して、マスタ-スレーブ回路内へと、オイルを引き込む。ドライスタート油圧回路内における、ドライスタートリザーバと、低圧及び高圧の逆止バルブと、の構成により、エンジンが動作していない時でも液漏れしない(枯渇しない)油圧流体の供給分をドライスタートリザーバが保持していることが、確保される。加えて、ドライスタート油圧回路のアキュムレータには、初期的なエンジンドライスタート時に発生するようにアキュムレータピストンが穴内で底打ちした時に閉塞される流出オリフィスが設けられている。これにより、ドライスタート油圧回路がドライスタートリザーバ内に充分な油圧流体を保持していて、エンジンの再始動時にロストモーションマスタ-スレーブ回路の完全な機能を迅速に達成することが、さらに確保される。
【0014】
本開示の一態様によれば、VVAアセンブリのマスタピストンには、VVAアセンブリのマスタピストン/プッシュチューブ界面などの、動作の安定性と動作受領界面の耐久性とを確保するための有利な特徴点を設けることができる。エンジンバルブトレインにおいて可変バルブ駆動を提供するためのエンジンバルブ駆動アセンブリは、ハウジングと、ハウジングに形成されたマスタピストン穴と、マスタピストン穴と協働することによりマスタピストンチャンバを形成するマスタピストンであり、バルブトレインの動作源から動作を受領するための動作受領界面を有したマスタピストンと、ハウジングに形成されたスレーブピストン穴と、スレーブピストン穴と協働することによりスレーブピストンチャンバを形成するスレーブピストンであり、バルブトレインの動作受領構成要素に対して動作を伝達するための動作伝達界面を有したスレーブピストンと、を含むことができ、マスタピストンの動作受領界面は、マスタピストン内に、プッシュチューブ端部を受領するためのプッシュチューブ受領ソケットを含み、プッシュチューブ受領ソケットは、動作の全体にわたってプッシュチューブ端部がマスタピストン穴内に配置されたままであるように、マスタピストンの内部において充分な深さまで延びている。プッシュチューブには、その端壁に、わずかに丸められたプッシュチューブキャップを設けることができる。プッシュチューブは、プッシュチューブ(又は、プッシュチューブキャップ)の端部がマスタピストンの高圧面に対して非常に近くに位置するような態様で、マスタピストン上に形成されたプッシュチューブ受領ソケットの内部の奥深くにまで延びることができる。このようにして、プッシュチューブ端部によって印加される力は、マスタピストンの高圧面上へと印加される力に対して非常に近くの位置で適用され、このため、マスタピストン並びに/若しくはプッシュチューブ及び端部キャップ上において、モーメントを生成する可能性を低減させ、そしてその結果として生成する側方荷重を低減させる。これにより、プッシュチューブとマスタピストンとに対して印加される横方向の力を低減させ、より安定した動作を提供するとともに、摩擦損失と摩耗とを低減させる。
【0015】
さらなる態様によれば、VVAアセンブリ上の動作受領界面には、潤滑を増強して接触応力を低減するための特徴点が設けられる。プッシュチューブ/マスタピストン界面に高圧油圧流体を収集するための特徴点が提供される。このような流体は、マスタピストンからの漏れとして流れることができる。プッシュチューブキャップに形成された環状溝並びに1つ又は複数の径方向に延びるポートは、動作時にはマスタピストンのプッシュチューブソケットの内部へとオイルを収集して搬送することができ、これにより、マスタピストン及びプッシュチューブ並びに/若しくはエンドキャップの内部を潤滑することができる。接触応力は、マスタピストンのプッシュチューブソケットの端壁に形成された軸対称の凹面と、プッシュチューブキャップの端部に形成された小さな半径の軸対称の凸面と、によって低減することができる。この構成は、動作時にはマスタピストンソケットに対してプッシュチューブを中心合わせさせる力を提供し、これにより、適切な位置合わせをさらに確保するとともに、プッシュチューブ端部キャップ及びマスタピストンに対しての側方荷重を最小限とする。
【0016】
一態様によれば、VVAシステムは、モジュール式の統合パッケージとして提供することができ、このパッケージは、ドライスタート油圧回路と、マスタピストンプッシュチューブ界面と、を含み、VVAハウジング内にコンパクトな態様で配置されるとともに、ロッカ台座の形態を有することができ、さらに、最小限の締結器具及び組立リソースを使用して、ユニット化されたアセンブリとしてエンジンに上へと取付又は後付けすることができる。
【0017】
一態様によれば、VVAシステムには、スレーブピストンの閉塞速度を制御するために、ひいては1つ又は複数のエンジンバルブの閉塞速度を制御するために、自己調節型バルブキャッチ(SAVC)を設けることができる。バルブキャッチ座は、スレーブピストン穴とマスタピストン穴との間においてハウジングに形成された相補形状のバルブキャッチ座凹所内に、固定することができる。バルブキャッチ座は、環状着座面によって囲まれた中央通路を含むことができる。スレーブピストンは、制御ピンを受領するための内部キャビティを含むことができ、内部キャビティには、制御ピンカラーが設けられている。制御ピンカラーは、キャビティ内における制御ピンのガイドされた動作を可能とし、制御ピンを、中央に保持するように機能する。制御ピンカラーは、制御ピンスプリングと協働する上部スプリングガイドと、チェックディスクスプリングと協働する下部スプリングガイドと、を含む。制御ピンスプリングは、制御ピン上へと、スレーブピストンに関して下向きの(着座する向きの)付勢力を提供する。チェックディスクスプリングは、チェックディスク上へと、環状着座面に向けての、制御ピンカラーの位置に関して下向きの(着座する向きの)付勢力を提供する。制御ピンのポートは、バルブキャッチモードでの動作時には、チェックディスクによって徐々に閉塞することができる。エンジンバルブがエンジンバルブ座に近づくにつれて、特に高速ソレノイドバルブを通しての流れのためにカムから切り離された時には、チェックディスクは、着座することができ、これにより、スレーブピストンプレナムからのオイルは、制御ピンのうちの、チェックディスクの計量エッジによって閉塞されている複数の孔を通して流れることができる。制御ピンの孔は、制御ピンが下降するにつれて徐々に閉塞され、これにより、スレーブピストン圧力の上昇を引き起こし、これによって、エンジンバルブ及び関連するバルブトレイン構成要素が減速する。スレーブピストンには、スレーブピストン穴の頂部と制御ピンカラーとの間に、オートラッシュチャンバを設けることができる。オートラッシュチャンバは、スレーブピストンの制御カラーを超えてくるオイル漏れによって充填することができる。漏れによって充填されたオートラッシュは、エンジンバルブがバルブキャッチ座上に着座する時に、制御ピンがバルブキャッチ座上に着座することを、確保する。SAVCは、制御ピンの閉塞速度が、ひいてはスレーブピストンの閉塞速度が、結果的にエンジンバルブの閉塞速度が、制御ピンが着座面に近づくにつれて許容レベルを超えないことを、確保する。本開示のさらなる態様によれば、チェックディスクスプリング及び制御ピンのガイド機能は、制御ピンポートがスプリングによって接触しないことを確保し、これにより、スプリングによるポートエッジの摩耗を回避する。
【0018】
本開示の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明から、当業者には明らかになるであろうし、上記の態様は、網羅的又は限定的と見なすべきではない。上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、本開示の発明的態様に関する実施例を提供することを意図するものであり、いかなる意味においても、添付の特許請求の範囲に規定された範囲を限定又は制限するものとして解釈されるべきではない。
【0019】
本発明に関する上記の及び他の付随する利点及び特徴点は、複数の図面にわたって同様の参照符号が同様の部材を表している添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することにより、明らかになるであろう。説明及び実施形態が、本開示の態様による例示的な実施例として意図されていること、また、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定することを意図していないことは、理解されるであろう。図面に関する以下の説明では、すべての図示は、特段に明示しない限り、本開示の態様による実施例をなす特徴点に係るものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、例示的なモジュール式ロストモーションVVA(LMVVA)アセンブリと、例示的なエンジンバルブトレイン環境と、を示す図示である。
【
図2】
図2は、
図1に示す例示的なモジュール式LMVVAアセンブリの図示である。
【
図3】
図3は、
図2に示す例示的なLMVVAアセンブリにおける各構成要素を示す詳細な図示である。
【
図4】
図4は、
図2に示す例示的なLMVVAアセンブリにおける、追加的な構成要素と、下側取付面と、を示す図示である。
【
図5】
図5は、例示的なLMVVAアセンブリ及びその構成要素を示す分解図である。
【
図6】
図6は、
図5のLMVVAアセンブリ及びその構成要素を示す別の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1~
図6に図示したものなどのLMVVAアセンブリに実装され得る、例示的な油圧ドライスタート回路を示す概略図である。
【
図11】
図11は、
図1~
図6のLMVVAアセンブリ内における、例示的なスレーブピストン及びバルブキャッチアセンブリを示す詳細な断面図である。
【
図12】
図12は、
図1~
図6のLMVVAアセンブリにおいて使用するのに好適な、例示的なマスタピストン/プッシュチューブ界面構成要素を示す断面図である。
【
図13】
図13は、
図12のマスタピストン/プッシュチューブ界面構成要素に関する詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において使用した際には、「流体連通している」という用語は、2つ以上の構成要素又は部材どうしの間における、流体が定常的に又は断続的に又は選択的に流れ得る関係性を表すことが意図されており、それらの部材又は構成要素どうしの間における直接的なかつ定常的な流れには必ずしも限定されないが、「流体連通している」ものとして記載された2つ以上の構成要素どうしの間において中間介在的に配置され得る、例えば逆止バルブなどの、中間介在的な構成要素を介した流体流通を含むことができる。
【0022】
図1は、エンジンバルブトレイン環境内における例示的なモジュール式ロストモーションVVAアセンブリ100を示している。ロストモーションVVAカム10の形態で示された動作源は、1つ又は複数の動作受領構成要素に対して動作を付与することができ、1つ又は複数の動作受領構成要素は、この例では、カムフォロワ12とすることができ、カムフォロワ12がカム10の動作面又はプロファイルに対して追従し得るように枢動可能に取り付けられ得るカムフォロワアーム14に軸支されているカムフォロワとすることができる。カムフォロワ12は、上向きに延びるとともにVVAアセンブリ100上のマスタピストンアセンブリ200と相互作用し得るプッシュロッド20と、協働する。プッシュチューブ20は、プッシュロッドキャップ22内へと延びることができ、そして、このキャップは、マスタピストンアセンブリ200のマスタピストン210内へと延びることができる。マスタピストン210は、さらに後述するように、ロストモーションを提供するために、スレーブピストンアセンブリ300のスレーブピストン310と相互作用することができる。スレーブピストン310は、そこから延びる旋回フット又は「e-フット」32を介して、ロッカアーム30に対して動作を付与することができる。ロッカアーム30は、バルブブリッジ40を介して、1つ又は複数のエンジンバルブ50、52に対して動作を付与することができる。
【0023】
本開示から認識されるように、VVAアセンブリ100は、ロッカシャフト台座のためのアドオン構成要素又は交換構成要素として、エンジンヘッドアセンブリ(
図1からは明確化のために省略されている)に対して固定することができる。VVAアセンブリ100は、さらに後述するように、揺動動作のためにロッカアーム30を支持するロッカシャフト35を支持するための一体構造を含むことができる。
【0024】
図2~
図4を追加的に参照すると、本開示の態様によれば、VVAアセンブリ100は、コンパクトでモジュール式の構造を有することができる。このような構造は、エンジンヘッド環境においてその近傍に位置し得る他の構成要素と干渉することなくVVAアセンブリをアドオン構成要素として設置し得るような態様で、多数の構成要素を、VVAハウジング110内に統合することを提供する。ハウジング110は、エンジンヘッドから延びる既存の台座又はポストに対して取り付けるように構成することができる。VVAアセンブリ統合構成要素は、ロッカシャフト支持体112と、マスタピストンアセンブリ200と、スレーブピストンアセンブリ300と、ドライスタートサブシステム400と、を含むことができる。さらに後述するように、ドライスタートサブシステム400は、ドライスタートリザーバ410、高速ソレノイドバルブ(HSSV)420、アキュムレータ430、高圧逆止バルブ450、及び低圧逆止バルブ460、の間にわたって流体連通を提供するとともに、それらを接続してハウジング110内へと延びる油圧流体経路を提供する、ドライスタート油圧回路を含むことができる。これらの構成要素及び他の構成要素は、後述するように、有利には、VVAアセンブリハウジング110内に配置されて統合され、これにより、モジュール式ユニットとして便利に輸送されて設置され得るモジュール式でコンパクトなVVAパッケージを提供する。このVVAパッケージ構成は、ここで説明する及び他で説明する利点を達成する。
【0025】
図5及び
図6は、本開示の態様による
図1~
図4の例示的なVVAアセンブリ100を示す分解図である。ハウジング110は、ロッカシャフト支持体112上に配置されたロッカシャフト支持体穴114を含むことができる。取付穴116は、ハウジング110を通して延びることができ、エンジンヘッドアセンブリ(図示せず)内の取付面に対してハウジング110を固定するための固定具(すなわち、ボルト)を受領することができる。一対の位置決めピン111を、ハウジング110の底面115上の取付面115のそれぞれ対応する位置決めピン穴113内に配置することができ、これにより、安定的に位置決めされた取付及び設置を容易とすることができる。ハウジング110は、HSSV420のバルブヘッド426を受領するためのHSSV穴120を含むことができる。取付ブラケット422及びブラケット固定具42
4は、HSSV420をハウジング110に対して固定することができる。認識されるように、HSSV穴120は、この穴120に対して/この穴120から、さらに、バルブの開放状態においては、HSSV420のバルブヘッド426を通して、また、HSSV420のバルブヘッド426を超えて、油圧流体を搬送するために、それらと連通した1つ又は複数の流体通路122を含むことができる。本開示の態様によれば、ドライスタートリザーバ410は、ハウジング110内に形成することができ、リザーバキャップ412によってシールすることができる(すなわち、螺着結合又は圧入を介して)。リザーバキャップ412は、リザーバからの油圧流体の周囲への流出を許容するために、自身に設けられたリザーバ流出オリフィス414を有することができる。この構成は、特に大型の単一シリンダヘッドの製造に際して、有利である。
【0026】
マスタピストン210は、その下部の周囲に延びる環状カラー又は環状ショルダ212と、プッシュチューブ端部又はプッシュチューブキャップを受領するために内部に形成されたマスタピストンソケット217(
図6)と、を含むことができる。環状ショルダ212は、マスタピストンスプリング250のためのスプリング座を形成することができる。他方のスプリング座面123を、スプリング250の反対側の端部と係合するために、マスタピストン穴120の周囲のところにおいて、ハウジング110上に形成することができる。マスタピストン210は、その上部に外側溝213を含むことができ、この外側溝213は、本明細書においてさらに後述するように、マスタピストンの漏れを使用してプッシュチューブ/マスタピストン界面の潤滑を増強させるよう、マスタピストン210の外部から内部ソケット217へとオイルを連通させるために内部に形成された多数の径方向に延びるポート215を含む。マスタピストン保持具260は、ボルトヘッド262がマスタピストン210の環状ショルダ212と係合して保持し得るようにそしてこれによりマスタピストン210及びスプリング250をハウジング110上の設置位置に固定するように、ハウジング110に対して固定され得るネジ山付き固定具を含むことができる。本開示から認識されるように、この構成は、設置時に、例えばマスタピストン穴120に対してマスタピストン210が完全に挿入された位置で保持された状態で、そして、スプリング250が圧縮された状態で、マスタピストン210及びスプリング250を、ハウジング110に対して固定することを可能とする。本開示から認識されるように、VVAアセンブリが設置された後には、マスタピストンスプリング250は、有利には、マスタピストン210(
図1)に対して付勢力を提供するものであり、VVAアセンブリのマスタ-スレーブロストモーション構成要素の動作に関係なく、マスタピストン、プッシュチューブ20、及びカムフォロアの、カム追従動作を提供する。特に、マスタピストン210は、ドライスタート時にカム閉塞プロファイルに従うこととなり、これにより、マスタピストンは、ドライスタートリザーバから高圧回路へとオイルを引き込むポンプとして機能することとなる。
【0027】
なおも
図5及び
図6を参照すると、スレーブピストンアセンブリ300は、スレーブピストン穴130内に設置することができ、これにより、スレーブピストンアセンブリ300は、マスタピストン210と相互作用することが可能とされ、バルブトレイン内の動作受領部材(すなわち、
図1における旋回フット)に対して動作を伝達することができる。スレーブピストンアセンブリ300は、エンジンのバルブ閉塞速度を制御するための自己調節型バルブキャッチ(SAVC)システムを含むことができる。本開示の態様によるマスタ/スレーブピストン相互作用及びSAVCの詳細については、以下において説明する。
【0028】
アキュムレータアセンブリ430は、ハウジングに設けられたアキュムレータ穴140内に設置することができる。アキュムレータアセンブリは、端壁上にシール面433を有したアキュムレータピストン432と、シール面433内の中央に配置された中央流出オリフィス435と、を含むことができる。アキュムレータスプリング434は、アキュムレータピストン432の内部に収容することができ、ピストンの端壁と係合することができる。アキュムレータアセンブリ430は、アキュムレータスプリング434のうちの、ピストン端壁とは反対側の端部と係合するスプリング座/ワッシャ43
6も保持するC字形状クリップ保持具43
8によって、ハウジング110のアキュムレータ穴140内に保持することができる。アキュムレータアセンブリ430は、ピストンがスプリング434の付勢力に抗して動作している通常の(定常状態での)エンジン動作時には、平衡に到達するまで、すなわち、ピストン432及び穴140によって形成されるチャンバ内に所定量のオイルが蓄積されるまで、油圧流体の加圧供給を蓄積するように機能する。本開示の一態様によれば、流出オリフィス435は、主にバルブキャッチ及びHSSV内において発生する熱を除去する目的で、アキュムレータピストン432を通しての油圧流体の流れを提供する。ドライスタートリザーバ通気オリフィスが、いくらかの流出冷却を提供し得るけれども、高圧回路からの高温オイルが主にアキュムレータへと流れることにより、アキュムレータ流出冷却オリフィス435を、より効果的なものとすることができる。しかしながら、本開示のさらなる態様によれば、
図7を参照して以下においてより詳細に説明するように、エンジンの動作が停止した時には、そしてドライスタート(再始動)サイクル時には、スプリング434の付勢力は、ピストン432を、穴140の端壁に対しての係合位置へと移動させ、流出冷却オリフィス435を通してのいかなる流れも防止する。
【0029】
ドライスタート油圧システムに関連した2つの逆止バルブを、ハウジング110内に設置することができる。低圧逆止バルブ(LPCV)440は、低圧逆止バルブ穴170内に配置することができ、LPCVと他のシステム構成要素との間の流体連通を可能とするためのポートを有している。高圧逆止バルブ(HPCV)450は、高圧逆止バルブ穴150内に配置することができ、同様に、HPCV450と他のシステム構成要素との間の流体連通を可能とするためのポートを有することができる。
【0030】
図7は、本明細書において説明する利点を達成するために、ドライスタートサブシステム400(
図2~
図4)の一部として実装され得る例示的なドライスタート油圧回路700を示す概略図である。油圧回路は、部分的には、ハウジング内に設けられた一連の導管又は通路として実装することができ、概略図に図示された構成要素どうしの間において、すなわち、アキュムレータと、逆止バルブと、HSSVと、の間において、流体連通を提供する。一態様によれば、すべての構成要素と、導管又は通路とは、例えばロッカ台座に代えてあるいはロッカ台座に加えて、既存のエンジン上へと後付けし得るモジュール式アセンブリを提供するために、ハウジング内において統合することができる。マスタピストンチャンバ214は、ハウジング110内に形成されたマスタピストン穴120内に配置されたマスタピストン210によって形成することができる。高圧油圧サブ回路710は、マスタピストンチャンバ214から、通常的には開放とされ励起時には閉塞するソレノイドバルブとし得るHSSV420への、第1流体通路と、マスタピストンチャンバ214から高圧逆止バルブ450への第2流体通路714と、を含むことができる。低圧油圧サブ回路720は、VVAアセンブリHSSV420に対してエンジンオイルを提供する流体通路722内に配置された低圧逆止バルブ440と、キャップ412及びオリフィス414を有したドライスタートリザーバ410と、アキュムレータピストン432とシール面433と流出冷却オリフィス435とを有したアキュムレータ430と、を含むことができる。ドライスタートリザーバは、好ましくは、油圧回路内においてHPCVの近くに配置される。認識されるように、低圧油圧サブ回路720は、逆止バルブ450及びHSSV420を介して、高圧油圧サブ回路710から選択的に隔離されている。
【0031】
通常のエンジン動作時には、高速ソレノイドバルブ420を励起することができ、これにより、カムリフトの開始前に閉塞することができる。この構成では、マスタピストン210及びプッシュチューブ20(
図1)は、カム10のプロファイルに対して、ほぼ追従することができる。スレーブピストン310、ひいてはバルブブリッジ40及び吸気バルブ50,52(
図1)は、マスタ-スレーブピストン構成要素内の油圧コンプライアンスのために、より低い開口リフトを有することができる。通常の動作時には、高速ソレノイドバルブ420は、間欠的に励起を解除することができ、これにより、所望の吸気バルブ閉塞タイミングを達成するために、開放することができる。スレーブピストンが閉塞するにつれて、流体は、スレーブピストンチャンバからマスタピストンチャンバ214へと流れ、高速ソレノイドバルブ420を通ってアキュムレータ430へと流れる。アキュムレータ430及びリザーバ410は、それぞれ、アキュムレータ流出冷却オリフィス435及びリザーバ流出オリフィス412を通しての流出フローであって、周囲へと流出させる流出フローを備えている。例えば3.0mmというしきい値をなす吸気バルブリフトを下回ると、スレーブピストンアセンブリ300のうちの、詳細については後述する自己調節型バルブキャッチ(SAVC)が、スレーブピストンプレナムからの流れを徐々に絞ることによって、バルブ着座速度の低下をもたらすことができる。SAVCは、スレーブピストンの圧力を上昇させることができ、これにより、バルブロッカを介して作用する力を提供することができ、これによって、吸気バルブの速度を、許容可能な着座速度にまで減速させることができる。高圧回路710は、カムの閉塞部分で補充され、オイルは、アキュムレータから、HSSV及びHPCVの双方を通って、マスタピストンへと、流れる。アキュムレータ圧力がVVAオイル供給圧力よりも低下すると、補充オイルが、VVAオイル供給源から、アキュムレータ430及びリザーバ410へと、流れることができる。
【0032】
エンジン停止時には、HSSV420が開放され、バルブスプリングは、エンジンバルブを閉塞して、HSSV420を通して高圧回路からオイルが流出した時には、スレーブピストンを、スレーブピストン穴の頂部にまで退避させる。アキュムレータスプリング434は、アキュムレータ流出冷却オリフィス435を通して低圧回路からオイルが流出した時には、アキュムレータピストン432を退避させる。エンジン停止時の高圧回路内のオイル量は、マスタピストンの位置に応じて変化することとなり、カムピークリフト時に最小のオイル量となる。長時間にわたってエンジンが停止された場合には、さらなるオイルが、油圧回路から漏れ出し得る。LPCV、HPCV、及びアキュムレータ流出冷却オリフィス435、が閉塞していることにより、オイルは、ドライスタートリザーバ内に保持される。
【0033】
ドライスタート時には、初期状態は、典型的には、吸気バルブが閉塞していて、カムが任意のリフトとされることができ、油圧回路が、ドライスタートリザーバ410を除いて、ほとんどオイルを有していないものとされ得る、状態であろう。これは、エンジン停止後には、VVAシステムからのオイル排出が起こり得るからである。よって、マスタ-スレーブ回路内の油圧流体がない場合、VVA補充に関する最悪のケースは、カムがピーク滞在にある場合に発生する。通路722内のVVA供給油圧が、アキュムレータ430のピストンを駆動するのに必要な圧力を下回っている時には、アキュムレータ流出冷却オリフィス435が、アキュムレータピストンによって閉塞され、これにより、オイルは、アキュムレータからは流出し得ない。本開示から認識されるように、アキュムレータスプリング434は、油圧が高圧回路を補充するのに充分なレベルにある時には、アキュムレータピストン432がアキュムレータ穴149内で底に留まったままであることを確保するために、予荷重を印加して設置することができる。アキュムレータスプリングの予荷重は、オイル供給圧力が、周囲圧力と、低アイドリング時の最小オイル供給圧力よりも著しく低いレベルと、の間にあり、かつ、高圧回路を補充するのに充分ではない時に、ドライスタート時にのみ、ドライスタート時にのみ、アキュムレータピストンを穴の頂部に保持するように、設定される。言い換えれば、アキュムレータピストンの補充圧力は、典型的には、高圧回路の補充に必要な圧力よりも大きな圧力に設定されることとなる。
【0034】
HSSV420は、高圧回路710内にオイルを保持するために、ドライスタート時には閉塞位置に保持される。始動時にエンジンが回転を開始すると、マスタピストンは、マスタピストンチャンバ内を往復動することができ、これにより、マスタピストンプレナム内に、典型的には0.3バールというHPCVクラッキング圧力に打ち勝つために周囲よりも充分に小さな圧力を生成する。これにより、オイルを、マスタピストンによって、ドライスタートリザーバ410からHPCV450を通して引き込むことができる。ドライスタートリザーバは、HPCVの近くに配置され、これにより、システム内に空気を引き込み得るようなLPCVクラッキング圧力に打ち勝つことを回避する。アキュムレータピストンは、穴の頂部に位置することとなり、これにより、流出冷却オリフィス435を閉塞する。カム開口プロファイル時には、マスタピストン逆止バルブが閉塞し、マスタピストン内のすべてのオイルは、スレーブピストンに対してポンピングされることとなる。スレーブピストンが充分に充填された時に、エンジンバルブが駆動されることとなる。その後のサイクル時には、より多くのオイルが、カム閉塞プロファイル上のマスタピストンによってリザーバから吸引される。よって、吸気バルブのリフトは、より多くのオイルがマスタピストンチャンバ内へと引き込まれるにつれて、各サイクルでラッシュが徐々に減少する(リフトが増加する)フルカムリフトとなる。このようにして、ロストモーションシステムは、エンジン始動後には、ドライスタート下で(すなわち、完全な動作を可能とするには、マスタ-スレーブピストン構成要素内の油圧流体が不充分である)長時間にわたって動作するのではなく、マスタ-スレーブピストン構成要素が充分な油圧流体を受領していてフルVVAカムリフトを提供し得る状態へと、迅速に到達することができる。
【0035】
好ましい実装では、ドライスタートリザーバは、マスタピストンポートよりも高い位置に配置されることとなる。しかしながら、システムが、リザーバとマスタピストンポートとの間の小さなヘッド差に打ち勝ち得ることにより、ドライスタートリザーバに関する他の相対的高さを、VVAハウジング110内において実装することができる。HPCVがドライスタート油圧回路において利点を提供すること、すなわち、HPCVの存在により、HSSVがドライスタート中に閉塞状態にあることを可能とし、HPCVが高圧回路内にオイルを充填して保持するために使用され得ることは、本開示から認識されるであろう。別の言い方をすれば、HPCVがない場合には、カムが閉塞していれば、ドライスタートリザーバから高圧回路へのオイルの引き込みを可能とするためにHSSVを開放するように、また、カムが開放していて任意のピーク滞在にあるならば、高圧回路内にオイルを保持するためにHSSVを閉塞するように、ドライスタート時にHSSVを制御することが必要とされる。
【0036】
図8~
図10は、
図1~
図7の例示的なVVAアセンブリにおける異なる平面を通しての断面図であり、例示的なマスタピストンアセンブリ200及びスレーブピストンアセンブリ300に関する詳細をさらに図示している。
図8は、アキュムレータ430を統合したハウジング110を示す側方からの図である。この図は、また、マスタピストン210と、マスタピストンチャンバ120と、プッシュチューブ受領ソケット217と、このプッシュチューブ受領ソケット217への入口のところに設けられたテーパー形状の環状位置合わせ面222と、複数のマスタピストンポート215のうちの1つと、ピストン保持具262と、を含むマスタピストンアセンブリ200に関するさらなる詳細を示している。HSSV420及びスレーブピストンアセンブリ300も、また、ハウジング110内における設置位置で示されている。
図9は、マスタピストンチャンバ120とHSSV420との間の高圧油圧通路712の平面内における断面図である。この図では、アキュムレータ430の端部を見ることができる。
図10は、HPCV450とピストンチャンバ120との間の高圧油圧通路714を示す別の断面図である。
【0037】
図11は、本開示の態様による例示的なスレーブピストン及びSAVCに関する断面図である。スレーブピストン310は、VVAハウジング110内のスレーブピストン穴130内に配置することができ、スレーブピストン穴とともに、マスタピストンチャンバ214と流体連通する膨張可能なスレーブピストンチャンバ314を形成する。バルブキャッチ座318は、ハウジング内においてスレーブピストン穴130とマスタピストン穴120との間に形成された相補形状のバルブキャッチ座凹所132内に固定されている。バルブキャッチ座318は、環状着座面321によって囲まれた中央通路319を含む。スレーブピストン310は、制御ピン340を受領するための内部キャビティ330を含むことができ、このキャビティ330には、その上に圧入され得るあるいは保持ピン(図示せず)に対して固定され得る制御ピンカラー342が設けられている。制御ピンカラー342は、制御ピストンとして機能することができ、スレーブピストン穴又はキャビティ330内における制御ピン340のガイドされた動作を可能とし、制御ピン340を、スレーブピストンキャビティ330内において中央に保持する。制御ピン340は、この制御ピン340に対してのチェックディスク350の下向き移動を制限するチェックディスク係止部345を含む。制御ピン340は、制御ピンカラー342の確実な位置決め及び設置を提供するために、ショルダ349を含むことができる。制御ピンカラー342は、制御ピンスプリング354と協働する上部スプリングガイド344と、チェックディスクスプリング356と協働する下部スプリングガイド346と、を含む。制御ピンスプリング354は、制御ピン340上へと、スレーブピストン310に関して下向きの(着座する向きの)付勢力を提供する。スプリング356は、チェックディスク350上へと、環状着座面321に向けての、制御ピンカラー342の位置に関して下向きの(着座する向きの)付勢力を提供する。チェックディスク350は、制御ピン340上において、スライド可能に配置することができる。本開示の一態様によれば、制御ピン/カラーアセンブリは、スレーブピストン310の内部キャビティ330の頂部のところに、オートラッシュチャンバ355を形成する。オイルは、制御ピンカラー342の各端部によって形成されたチャンバどうしの間の相対圧力に応答して、制御ピンカラー342とスレーブピストン310との間の隙間を介して、スレーブピストン310とオートラッシュチャンバ355との間にわたって、流れることができる(漏れることができる)。
【0038】
制御ピン340は、バルブキャッチ座環状着座面321と係合する環状制御ピン着座面341を含む。バルブキャッチ座環状着座面321は、このようにして、制御ピンの確実な係止を提供する。オートラッシュチャンバ355を油圧流体によって充填し得ることにより、着座面321の確実な係止は、制御ピン340のオートラッシュ動作を制限するように動作する。同様に、チェックディスク350は、バルブキャッチ座環状面321と係合する環状チェックディスク着座面351を含む。制御ピン340は、制御ピン340を通しての流れを可能とする複数の制御ピンポート343であって、丸型、スロット型、又は他の形状、とし得る複数の制御ピンポート343を含む。チェックディスク350は、制御ピンポート343を通しての流れを案内するように動作し、制御ピン340がチェックディスク350に対して(下向きに)移動する際に、制御ピンポート343を徐々に閉塞させるように動作する計量エッジ357を含む。チェックディスク350は、チェックディスク350と制御ピン343との双方が共通の着座面321を利用することによって計量エッジ357と制御ピンポート343との間の正確な関係を維持する外側スカート353を含む。この構成は、計量エッジ357と制御ピンポート343との間の精度に影響を与えてしまうこととなる公差スタックという問題点を、排除する。
【0039】
本開示の一態様によれば、自己調節型バルブキャッチは、スレーブピストンの過度の閉塞速度(
図11における下向き)を防止し、これにより、バルブトレイン内の動作受領部材の過度の閉塞動作を防止し、したがって、バルブトレインに関連した1つ又は複数のエンジンバルブの過度の閉塞速度を防止する。本開示の別の態様によれば、バルブキャッチチェックディスク及び制御ピンは、共通の着座面を共有する。この共通の着座構成は、協働部品の公差スタックを低減し、バルブリフト着座プロファイル及び着座速度制御を、制御ピン及びチェックディスクの寸法偏差(すなわち、製造公差)の影響を受けにくいものとする。
【0040】
制御ピンポート343は、後述するように、バルブキャッチモードの動作時には、チェックディスク350によって徐々に閉塞することができる。マスタ-スレーブ油圧回路の通常のバルブリフト動作時には(すなわち、カム10のプロファイルによって規定されるように)、マスタピストンの上向き移動に起因するマスタピストンチャンバ214内の油圧上昇は、スレーブピストン及び制御ピンを、共に上向きに移動させ、エンジンバルブを開放させる。スレーブピストン及び制御ピンは、スレーブピストンとオートラッシュチャンバとの間の漏洩流が少ないことのために、実質的に一緒に移動する。チェックディスクは、最初は制御ピンに対して上向きに移動することができ、スレーブピストンチャンバ内への流れを可能とする。スレーブピストンのリフトが増加するにつれて、チェックディスクは、制御ピンに対して下向きに移動し、制御ピン係止部345に対して接触する。エンジンバルブは、カムプロファイルのためにあるいはHSSVの開放のために、閉塞することができる。エンジンバルブが最初に閉塞する際には、スレーブピストン及び制御ピンは、一緒に移動し、チェックディスクは、制御ピンチェックディスク係止部345に対して接触したままである。典型的には3mmというエンジンバルブリフトでは、チェックディスク着座面351は、バルブキャッチ座環状着座面321に対して接触し、スレーブピストンチャンバから、制御ピン径方向孔343を通しての、流れを案内する。初期的には、チェックディスクが、制御ピンチェックディスク係止部345に対して接触していることのために、孔を通しての流れ面積は、流れを著しく制限することはない。エンジンバルブがゼロリフトに近づくにつれて、チェックディスクは、制御ピンに対して移動し、チェックディスク計量エッジ357は、径方向孔を徐々に閉塞する。典型的には0.3mm~0.5mmというエンジンバルブリフトでは、径方向孔は、完全に閉塞され、チェックディスク350と制御ピン340との間の直径方向隙間を通してスレーブピストンから流れが案内される。閉塞される孔の面積と、リフトプロファイルと、の関係は、カムプロファイル閉塞特性の加速部分と同様であり、チェックディスクと制御ピンとの間の直径方向隙間の流れの面積は、カムプロファイルの一定速度傾斜と同様である。
【0041】
バルブリフトイベント時には、また、バルブ着座時には、オートラッシュチャンバの圧力は、スプリング力のために及びピストン直径のために、スレーブピストンの圧力よりも低い。これにより、制御ピストン穴とカラーとの間の直径方向隙間を介して、オイルは、スレーブピストンから、オートラッシュチャンバへと、漏れる。典型的には0.1mm未満というエンジンバルブリフトでは、制御ピン着座面は、バルブキャッチ座環状着座面に対して接触する。これにより、スレーブピストンチャンバの圧力が、ほぼ常圧にまで低下し、エンジンバルブスプリング荷重のために、オートラッシュチャンバの圧力が上昇する。オイルは、エンジンバルブが着座してバルブスプリングの荷重がなくなるまで、オートラッシュから、スレーブピストンチャンバへと、漏れる。これは、エンジンバルブの追加的な減速と、エンジンバルブがエンジンバルブ座に対してほぼ接触した時に制御ピンがバルブキャッチ座に対して接触するというオートラッシュ機能と、の双方を提供する。本開示のさらなる態様によれば、チェックディスクスプリング356及び制御ピンの案内特性は、制御ピンポートがスプリング356によって接触しないことを確保し、これにより、スプリング356によるポートエッジの摩耗を回避する。制御ピン-チェックディスクの直径方向隙間は、摩擦力に基づいてチェックディスク-制御ピンがロックしてしまうことを防止するのに充分に大きなものであるとともに、オイルの粘度に対しての許容可能な感度を提供するために充分に大きなものである。
【0042】
図12及び
図13は、例示的なプッシュチューブ/マスタピストン界面の詳細を示す断面図である。本開示の態様によれば、VVAアセンブリのマスタピストンには、VVAアセンブリに関する動作の安定性及び動作受領界面の耐久性を確保するための有利な特徴点を設けることができる。プッシュチューブ20は、プッシュチューブ20の端部と係合するとともにマスタピストンプッシュチューブソケット217内へとかなりの深さにまで延びるプッシュチューブキャップ22と協働することができ、これにより、プッシュチューブキャップ22の端部24は、マスタピストン端壁219の外面221に対して近接するものとされる。好ましくは、その深さは、プッシュチューブ端部24とマスタピストン端壁219との間の界面を、ハウジング110のマスタピストン穴120内へと位置させるのに充分なものであるべきである。ソケットの深さは、プッシュチューブとマスタピストンとの間の界面(すなわち、マスタピストン端壁の厚さ)が好ましくはピストンの直径よりも小さなものとされ得るようなものとすることができる。この構成は、プッシュチューブのキャップに対して、存在するとしても最小の側方荷重しか提供しない。すなわち、プッシュチューブ20及びプッシュチューブキャップ22によって印加される力は、外面221に対して印加される高圧力と組み合わせても、特に端壁219の近傍では、プッシュチューブキャップ22上において何らの感知可能な側方荷重を生じさせることがない。これは、プッシュチューブとキャップとマスタピストンとに対して印加される横方向の力を低減させ、より安定した動作を提供するとともに、摩擦損失及び摩耗を低減させる。
【0043】
マスタピストンのプッシュチューブソケット217内におけるプッシュチューブキャップ22の位置合わせをさらに増強するために、プッシュチューブキャップ22には、位置合わせにおける非常にわずかな角度変化に対応するようにそして接触応力を小さなものに維持するために、端部24上に小さな半径を設けることができる。さらなる手段として、マスタピストン端壁219には、好ましくはプッシュチューブキャップ端部24に設けられた半径よりも大きい半径を有した、平坦な又はわずかに凹状の表面を設けることができ、これにより、接触応力をさらに低減させ得るとともに、マスタピストンプッシュチューブソケット217内におけるプッシュチューブキャップ24の位置合わせを確保することができる。位置合わせをさらに増強するために、プッシュチューブキャップ22には、マスタピストンソケット内におけるプッシュチューブキャップの軸方向の位置合わせを提供する半径方向に延びた環状突起又はバンプ29を設けることができる。この構成は、プッシュチューブキャップ22のうちの、端壁24に対向した端部に対して、中心合わせ力を提供する。プッシュチューブ端部/プッシュチューブキャップ端部は、マスタピストンのプッシュチューブ受領ソケットとともに、トロイド環状形状を形成することができる。
【0044】
本開示の態様によれば、例示的なVVAアセンブリは、マスタピストン/プッシュチューブ界面において、増強された潤滑能力を提供することができる。
図13を参照して、再び
図5、
図6、及び
図8~
図10を参照すると、マスタピストン上の環状溝213及び半径方向に延びるポート215は、マスタピストンのプッシュチューブソケット217に対して、ひいてはプッシュチューブ/マスタピストン界面に対して、エンジンオイルを供給することができる。本開示の一態様によれば、マスタピストン及びマスタピストン穴のそれぞれの寸法は、マスタピストンチャンバ内の高圧力の下で、環状空間内へとオイルの流出又は漏れを提供する環状隙間を提供するように構成されており、そして、オイルは、マスタピストンの環状溝によって集められ、マスタピストンプッシュチューブ受領ソケット内へと向けられる。オイルは、マスタピストンチャンバに由来することができ、マスタピストン210の側方外面とマスタピストンチャンバ120との間に漏れることができる。よって、溝213は、マスタピストンチャンバからこの空間内へと漏れ出たオイルを収集又は「捕捉」するように機能し得るとともに、そのオイルを、プッシュチューブ/マスタピストン界面へと搬送するように、機能することができる。上述した半径方向における中心合わせ機能は、プッシュチューブの凸状ピストン面を、マスタピストンの内部において中心合わせ状態に維持し得るとともに、また、高圧回路から漏れ出た油圧流体膜を含むように周囲を維持することができる。
【0045】
本実装について、特定の例示的な実施形態を参照して説明したけれども、特許請求の範囲に記載された本発明のより広範な精神及び範囲から逸脱することなく、これら実施形態に対して様々な改変及び変更を追加し得ることは、明らかであろう。したがって、本明細書及び図面は、制限的な意味合いではなく例示的な意味合いで捉えられるべきである。