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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】非接触電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20241115BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20241115BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241115BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20241115BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20241115BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20241115BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/40
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J7/10 N
B60L53/12
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023045638
(22)【出願日】2023-03-22
(65)【公開番号】P2024135110
(43)【公開日】2024-10-04
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】勝谷 仁
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-163405(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114157045(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114374278(CN,A)
【文献】特開2011-211854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 50/40
H02J 7/00
H02J 7/10
B60L 53/12
B60M 7/00
B60L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に露出する表面を有する筐体と、
前記筐体の内部に配置されるとともに、送電装置から非接触で伝送される交流電力を受け取るコイルと、
前記筐体の内部で前記コイルに対して設けられる磁性部材と、
前記筐体の内部で電子部品が実装される基板と
を備えるコイルユニットと、
前記筐体の前記表面に触れる外気の温度を検出する第1温度センサと、
前記基板の温度を検出する第2温度センサと、
前記コイルユニットの熱モデルと、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサの各々から出力される温度の検出値とに基づいて、少なくとも前記コイルの温度を推定するとともに、
前記コイルの温度に応じて、前記送電装置による電力伝送の要求周波数及び前記コイルが前記送電装置から受け取る電力を制御する制御装置と
を備える
非接触電力伝送システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記熱モデルにおいて、
前記外気と前記筐体とを、順次に放熱部材と前記電子部品と前記基板とを介して及び直接的に接続し、
前記筐体と前記コイルとを、前記磁性部材を介して接続する
請求項1に記載の非接触電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池を搭載する車両での充給電に関する研究開発が行われている。
従来、非接触での電力伝送により車両の外部から車両に電力を供給する非接触電力伝送システムでは、送電コイルの損出電力と、受電装置の発熱量とに基づいて、受電コイルの周辺の温度を推定するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/162940号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池を搭載する車両での充給電に関する技術においては、受電装置の冷却用に液冷等の追加的な冷却装置を備える必要無しに、例えば車両走行時に受ける風(走行風)等の空冷によって冷却必要量を確保することで装置構成の複雑化及び重量増を抑制することが望まれている。例えば、上記従来技術の非接触電力伝送システムでは、受電コイルの周辺温度に限らず、受電装置の熱伝達経路での複数個所の温度を精度良く推定することによって、冷却必要量の低減のための出力制御を精度良く行うことが望まれている。
【0005】
本発明は、受電側での温度推定の精度を向上させ、出力制御を精度良く行うことができる非接触電力伝送システムを提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1):本発明の一態様に係る非接触電力伝送システム(例えば、実施形態での非接触電力伝送システム1)は、外部に露出する表面(例えば、実施形態での表面21A)を有する筐体(例えば、実施形態での筐体21)と、前記筐体の内部に配置されるとともに、送電装置(例えば、実施形態での送電装置2)から非接触で伝送される交流電力を受け取るコイル(例えば、実施形態での二次側コイル15a)と、前記筐体の内部で前記コイルに対して設けられる磁性部材(例えば、実施形態でのコア部材22)と、前記筐体の内部で電子部品(例えば、実施形態での素子26)が実装される基板(例えば、実施形態での基板25)とを備えるコイルユニット(例えば、実施形態でのコイルユニット18)と、前記筐体の前記表面に触れる外気(例えば、実施形態での外気35)の温度を検出する第1温度センサ(例えば、実施形態での第1温度センサ35a)と、前記基板の温度を検出する第2温度センサ(例えば、実施形態での第2温度センサ25a)と、前記コイルユニットの熱モデル(例えば、実施形態での熱モデル20)と、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサの各々から出力される温度の検出値とに基づいて、少なくとも前記コイルの温度を推定するとともに、前記コイルの温度に応じて、前記送電装置による電力伝送の要求周波数及び前記コイルが前記送電装置から受け取る電力を制御する制御装置(例えば、実施形態での制御装置17)とを備える。
【0007】
(2):上記(1)に記載の非接触電力伝送システムでは、前記制御装置は、前記熱モデルにおいて、前記外気と前記筐体とを、順次に放熱部材(例えば、実施形態での放熱部材21a)と前記電子部品と前記基板とを介して及び直接的に接続し、前記筐体と前記コイルとを、前記磁性部材を介して接続してもよい。
【発明の効果】
【0008】
上記(1)によれば、制御装置は、受電側の熱伝達経路の熱モデルにより、少なくともコイルの温度を推定することによって、空冷の場合での出力制御を適正に実行することができる。コイルの温度に応じた出力制御によって冷却必要量の増大を抑制し、例えば液冷等の追加的な冷却装置を備える必要無しに、空冷によって所望の冷却必要量を確保することができる。
【0009】
上記(2)の場合、筐体の内部でのコイル及び磁性部材の発熱に加えて、筐体の内部での電子部品の発熱を考慮する熱モデルによって、コイルの温度を精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムの構成を示す図。
図2】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムの構成の詳細を示す図。
図3】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムでの送電部及び受電部の構成を示す図。
図4】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムでの受電装置のコイルユニットの構成を示す断面図。
図5】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムでのコイルユニットの熱モデルの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る非接触電力伝送システムについて、添付図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、実施形態の非接触電力伝送システム1の構成を示す図である。図3は、実施形態での非接触電力伝送システム1の送電部8及び受電部15の構成を示す図である。図4は、実施形態の非接触電力伝送システム1での受電装置4のコイルユニット18の構成を示す断面図である。
実施形態の非接触電力伝送システム1は、例えば、非接触での電力伝送により車両等の移動体の外部から移動体に電力を供給する。車両は、例えば、電気自動車、ハイブリッド車両、プラグインハイブリッド車両及び燃料電池車両等の電動車両である。
【0012】
(非接触電力伝送システム)
図1及び図2に示すように、実施形態の非接触電力伝送システム1は、例えば、車両の走行路等に設置される送電装置2と、車両等の移動体に搭載される駆動制御装置3及び受電装置4とを備える。なお、実施形態の非接触電力伝送システム1は、少なくとも、移動体に搭載される構成要素(例えば、駆動制御装置3及び受電装置4)のみを備えてもよく、移動体の外部の構成要素(例えば、送電装置2)と移動体に搭載される非接触電力伝送システム1との組み合わせによって非接触での電力伝送が実行されてもよい。
【0013】
送電装置2は、例えば、電源部6と、送電電力変換部7と、送電部8とを備える。なお、送電装置2は、例えば、車両の走行路等での所定の電力伝送区間に複数の少なくとも送電部8を備えてもよい。
電源部6は、例えば、商用電源等の交流電源と、交流電力を直流電力に変換するAC-DCコンバータと、電力平滑用のキャパシタとを備える。電源部6は、交流電源から供給される交流電力をAC-DCコンバータによって直流電力に変換する。
【0014】
送電電力変換部7は、例えば、直流電力を交流電力に変換するインバータを備える。送電電力変換部7のインバータは、例えば2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成されるブリッジ回路と、電圧平滑用のキャパシタとを備える。各スイッチング素子は、例えば、SiC(Silicon Carbide)のMOSFET(Metal Oxide Semi-conductor Field Effect Transistor)等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ7a,7bである。整流素子は、例えば、各トランジスタ7a,7bに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ7cは、ブリッジ回路に並列に接続される。
【0015】
送電部8は、例えば、磁界共鳴又は電磁誘導等の磁界結合により、高周波の磁界の変化によって電力を送る。図3に示すように、送電部8は、例えば、直列に接続される一次側コイル8a、一次側抵抗8b及び一次側キャパシタ8cによって形成される共振回路を備える。送電部8は、例えば、共振回路に流れる電流Itを検出する電流センサ等のセンサを備える。
【0016】
例えば、送電装置2は、予め設定される駆動周波数又は受電装置4から受け取る要求周波数の情報に応じて、送電電力変換部7の各スイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)のスイッチングを制御することによって、車両の受電装置4への電力伝送を行う。
【0017】
図1及び図2に示すように、車両等の移動体の駆動制御装置3は、例えば、蓄電装置11と、蓄電電圧変換部12と、電力変換部13と、回転電機14とを備える。移動体の受電装置4は、例えば、受電部15と、受電電力変換部16とを備える。駆動制御装置3及び受電装置4は、例えば、共通の制御装置17を備える。
なお、例えば蓄電装置11を動力源として駆動する電気自動車等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていなくてもよい。例えば蓄電装置11及び内燃機関を動力源として駆動するハイブリッド車両等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていてもよい。
【0018】
蓄電装置11は、蓄電電圧変換部12に接続される。蓄電装置11は、車両の外部の送電装置2から非接触で伝送される電力によって充電される。蓄電装置11は、蓄電電圧変換部12及び電力変換部13を介して回転電機14との間で電力を授受する。
蓄電装置11は、例えば、リチウムイオンバッテリ等のバッテリと、バッテリの電流を検出する電流センサ及びバッテリの電圧を検出する電圧センサとを備える。
なお、例えば電気自動車等において蓄電電圧変換部12を備えていない場合、蓄電装置11は、後述する電力変換部13及び受電電力変換部16に接続される。
【0019】
蓄電電圧変換部12は、電力変換部13及び受電電力変換部16に接続される。蓄電電圧変換部12は、例えば、昇圧及び降圧の双方向の電圧変換を行う電圧制御器を備える。電圧制御器は、双方向の電圧変換によって蓄電装置11の充電及び放電時に入力電力及び出力電力を変換する。蓄電電圧変換部12の電圧制御器は、例えば、1対の第1リアクトルと、第1素子モジュールと、電圧平滑用のキャパシタとを備える。
【0020】
1対の第1リアクトル12a,12aは、相互に逆極性に磁気結合されることによって複合型リアクトルを形成する。1対の第1リアクトル12a,12aは、第1素子モジュールの各相のハイサイドアームとローサイドアームとの接続点に接続される。
第1素子モジュールは、例えば2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第1ブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ12b,12cである。整流素子は、例えば、各トランジスタ12b,12cに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ12dは、蓄電装置11に並列に接続される。
蓄電電圧変換部12は、直列に接続される抵抗12e及びトランジスタ12fを備える。抵抗12e及びトランジスタ12fは、第1ブリッジ回路に並列に接続される。
【0021】
電圧制御器の1対の第1リアクトル12a,12a及び第1素子モジュールは、いわゆる2相のインターリーブによって電圧変換を行う。2相のインターリーブでは、1対の第1リアクトル12a,12aに接続される2相のトランジスタ12b,12cのうちで第1の相のトランジスタ12b,12cのスイッチング制御の1周期と、第2の相のトランジスタ12b,12cのスイッチング制御の1周期とは、相互に半周期だけずらされる。
【0022】
電力変換部13は、回転電機14に接続される。電力変換部13は、例えば、直流電力と交流電力との変換を行う電力変換器を備える。電力変換器は、例えば、第2素子モジュールと、電圧平滑用のキャパシタとを備える。
第2素子モジュールは、例えば、3相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第2ブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ13a,13bである。整流素子は、例えば、各トランジスタ13a,13bに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ13cは、第2ブリッジ回路に並列に接続される。
【0023】
第2素子モジュールは、電力の授受によって回転電機14の動作を制御する。第2素子モジュールは、例えば回転電機14の力行時には、正極及び負極の直流端子13p,13nから入力される直流電力を3相交流電力に変換して、3相交流電力を3相の交流端子13dから回転電機14に供給する。第2素子モジュールは、回転電機14の3相のステータ巻線への通電を順次転流させることによって回転駆動力を発生させる。
第2素子モジュールは、例えば回転電機14の回生時には、回転電機14の回転に同期がとられた各相のスイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)の駆動によって、3相のステータ巻線から入力される3相交流電力を直流電力に変換する。第2素子モジュールは、3相交流電力から変換された直流電力を、蓄電電圧変換部12を介して蓄電装置11に供給することが可能である。
【0024】
回転電機14は、例えば、車両の走行駆動用に設けられる3相交流のブラシレスDCモータである。回転電機14は、界磁用の永久磁石を有する回転子と、回転子を回転させる回転磁界を発生させる3相のステータ巻線を有する固定子とを備える。3相のステータ巻線は、電力変換部13の3相の交流端子13dに接続される。
回転電機14は、電力変換部13から供給される電力により力行動作することによって回転駆動力を発生させる。回転電機14は、例えば、車両の車輪に連結可能である場合、電力変換部13から供給される電力により力行動作することによって走行駆動力を発生させる。回転電機14は、車両の車輪側から入力される回転動力により回生動作することによって発電電力を発生させてもよい。回転電機14は、車両の内燃機関に連結可能である場合、内燃機関の動力によって発電してもよい。
【0025】
受電部15は、受電電力変換部16に接続される。受電部15は、例えば、磁界共鳴又は電磁誘導などの磁界結合により、送電部8から伝えられる高周波の磁界の変化によって電力を受け取る。図3に示すように、受電部15は、例えば、直列に接続される二次側コイル15a、二次側抵抗15b及び二次側キャパシタ15cによって形成される共振回路を備える。受電部15は、例えば、共振回路に流れる電流Irを検出する電流センサ等のセンサを備える。
【0026】
図4に示すように、受電装置4の一部を構成するコイルユニット18は、例えば、二次側コイル15aと、筐体21と、コア部材22と、バック部材23と、カバー部材24と、基板25と、素子26とを備える。
【0027】
二次側コイル15aの外形は、例えば中心軸線の周りに渦巻状に形成されている。
筐体21は、例えば、外部に露出する表面21Aに対する裏側の内面21Bから内部に突出する複数の放熱部材21aを備える。放熱部材21aの外形は、例えば板状のフィン型である。複数の放熱部材21aは二次側コイル15aに接触する。
コア部材22は、例えば、板状部と、板状部から突出して二次側コイル15aの空芯領域に配置されるコア部とを備える。コア部材22は、例えば珪素鋼板等の電磁鋼板のような磁性材料によって形成されている。
【0028】
バック部材23は、例えば、二次側コイル15a及びコア部材22を収容した筐体21の第1収容部Aの開口端を塞ぐ。
カバー部材24は、例えば、基板25及び素子26を収容した筐体21の第2収容部Bの開口端を塞ぐ。
基板25は、例えば、受電装置4の一部を構成する複数の電子部品を固定する。
素子26は、例えばキャパシタ、スイッチング素子及び整流素子等である。素子26は基板25に実装されている。
【0029】
図1及び図2に示す受電電力変換部16は、電力変換部13に接続される。受電電力変換部16は、交流電力を直流電力に変換する、いわゆるフルブリッジレス型(又はブリッジレス及びトーテムポール型)の力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路を備える。いわゆるブリッジレスPFCは、ブリッジ接続される複数のダイオードによるブリッジ整流器を備えていないPFCであって、いわゆるトーテムポールPFCは、同方向に直列に接続(トーテムポール接続)される同一導電型の一対のスイッチング素子を備えるPFCである。
【0030】
受電電力変換部16は、例えば、2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第3ブリッジ回路と、電圧平滑用のキャパシタとを備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ16a,16bである。整流素子は、例えば、各トランジスタ16a,16bに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ16cは、第3ブリッジ回路に並列に接続される。
【0031】
例えば、受電部15及び受電電力変換部16を備える受電装置4は、送電装置2による電力伝送の周波数の情報に応じて、受電電力変換部16の各スイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)のスイッチングを制御することによって、送電装置2から伝送される電力を受け取る。
【0032】
制御装置17は、例えば、車両等の移動体の駆動制御装置3及び受電装置4を統合的に制御する。制御装置17は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECUである。なお、制御装置17の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0033】
制御装置17は、例えば、各スイッチング素子をオン(導通)及びオフ(遮断)に駆動するタイミングを示す制御信号を生成するとともに、制御信号に基づいて各スイッチング素子を実際にオン及びオフに駆動するためのゲート信号を生成する。
例えば、制御装置17は、受電装置4の各スイッチング素子のスイッチングを制御することによって、送電装置2から受け取る交流電力を直流電力に整流しつつ、入力電圧及び入力電流の力率改善を行う。
【0034】
例えば、制御装置17は、受電装置4の複数のスイッチング素子を同期的にオン及びオフに駆動する同期整流動作と、二次側コイル15aを短絡する短絡動作とによって、目標出力に応じた出力を制御する。
例えば、制御装置17は、送電装置2から送られる電力によって受電部15に発生する電流、つまり二次側コイル15aに流れる電流Irの大きさ及び位相に応じて同期整流動作を制御する。制御装置17は、受電電力変換部16の複数のスイッチング素子を、いわゆるゼロ電圧スイッチング(ZVS:Zero Voltage Switching)のソフトスイッチングで制御する。ゼロ電圧スイッチング(ZVS)では、各スイッチング素子は、各相のデッドタイム期間のオフ状態での出力容量(寄生容量)の放電によって両端電圧がゼロにされてからターンオン(オフ状態からオン状態への切り換え)が実行される。
例えば、制御装置17は、受電電力変換部16の各相のハイサイドアームでゼロ電圧スイッチング(ZVS)の同期整流動作を継続させつつ、各相のローサイドアームのみオンにすることで短絡動作を制御する。
【0035】
例えば、制御装置17は、コイルユニット18の熱モデル20に基づいて、二次側コイル15aの温度を推定する。
図5は、実施形態の非接触電力伝送システム1でのコイルユニット18の熱モデル20の例を示す図である。
図5に示すように、コイルユニット18の熱モデル20は、例えば、二次側コイル15aと、筐体21の表面21Aに触れる外気35との間の熱勾配に対して設定される。熱モデル20は、例えば、二次側コイル15aと外気35との間の複数の要素と、隣り合う各要素間の熱抵抗とによって構成される。
例えば、二次側コイル15aの素線は熱抵抗を介して二次側コイル15aの被覆31に接続される。被覆31は、各熱抵抗を介してコア部材22、雰囲気32及び冷却シート33に接続される。コア部材22、雰囲気32及び冷却シート33の各々は、各熱抵抗を介して筐体21に接続される。筐体21は、各熱抵抗を介して基板25及び外気35に接続される。基板25は熱抵抗を介して素子26のスイッチング損失及び導通損失による電力損失34に接続される。電力損失34は熱抵抗を介して放熱部材21aに接続される。放熱部材21aは熱抵抗を介して外気35に接続される。
【0036】
例えば、制御装置17は、熱モデル20において、外気35の温度を検出する第1温度センサ35a及び基板25に設けられる第2温度センサ25aの各々から出力される温度の検出値と、各要素間の熱抵抗及び各要素の熱容量とに基づいて、二次側コイル(素線)15aを含む各要素の温度を推定する。
例えば、制御装置17は、受電装置4の動作点での電力に応じて、二次側コイル15aの銅損、コア部材22の鉄損及び素子26の損失等による各要素での発熱量(受熱量)と、外気35等による各要素での抜熱量(放熱量)とを算出する。制御装置17は、例えば熱モデル20での熱勾配に応じて順次に、各要素での発熱量又は抜熱量と熱容量とによって得られる温度変化に基づいて各要素の温度を推定する。
【0037】
例えば、制御装置17は、熱モデル20での各要素の温度に応じて、二次側コイル15aが送電装置2から受け取る電力(つまり電力伝送の出力)を制御する。
制御装置17は、例えば、送電装置2の送電部8及び受電装置4の受電部15の各々での磁性体及びコイル等の組み合わせに応じて異なる特性を示す電力伝送の周波数と出力との対応関係のデータに基づき、送電装置2の電力伝送に対して要求される電力に対応する周波数(要求周波数)を算出する。制御装置17は、例えば、送電装置2と移動体との間の適宜の通信によって、移動体が送電装置2の各電力伝送区間に到達するよりも前の各タイミングで算出した要求周波数を送電装置2に送信する。送電装置2と移動体との間の通信は、例えば、送電装置2及び受電装置4の各コイル8a,15a間での誘起電圧による通信、送電部8及び受電部15の各電流センサによって検出される電流値による通信又は送電装置2及び移動体の各々に追加的に設けられる通信装置による無線通信等である。
また、制御装置17は、例えば、受電装置4の二次側コイル15aを短絡する短絡動作の実行によって、二次側コイル15aが送電装置2から受け取る電力を規制してもよい。
【0038】
上述したように、実施形態の非接触電力伝送システム1によれば、制御装置17は、受電側の熱伝達経路の熱モデル20により、少なくとも二次側コイル15aの温度を含む熱伝達経路での複数個所の温度を推定することによって、空冷の場合での出力制御を適正に実行することができる。熱モデル20での各要素の温度に応じた出力制御によって冷却必要量の増大を抑制し、例えば液冷等の追加的な冷却装置を備える必要無しに、空冷によって所望の冷却必要量を確保することができる。
熱伝達経路での複数個所の温度を推定することによって、例えば温度上昇が抑制されている状態等において、過剰な出力制限が実行されることを防ぎ、適正に出力を増大させることができる。例えば、受電部15の複数の素子及び磁性部材等の各々の温度特性に応じて、インダクタンス、キャパシタンス及び抵抗値等の各状態量並びに共振回路の固有値(周波数)が変化する場合であっても、送電装置2による電力伝送の要求周波数へのフィードバック又は要求周波数の補正等を行うことができ、受電側での温度の変動に起因する電力伝送の出力低下及び損失増大を抑制することができる。
制御装置17は、例えば、熱モデル20において、外気35と筐体21とを、順次に放熱部材21aと素子26と基板25とを介して及び直接的に接続するとともに、筐体21と二次側コイル15aとを、コア部材22を介して接続することによって、少なくとも二次側コイル15aの温度を精度良く推定することができる。
【0039】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
上述した実施形態では、制御装置17は、熱モデル20に基づいて受電側の熱伝達経路での複数個所の温度を推定するとしたが、これに限定されない。例えば、制御装置17は、熱モデル20とは異なる複数の要素の組み合わせによる他の熱モデルと、各温度センサ35a,25aの出力とによって、少なくとも二次側コイル15aの温度を推定してもよい。
【0040】
上述した実施形態では、非接触電力伝送システム1は、蓄電装置11の入出力電力を変換する蓄電電圧変換部12を備えるとしたが、これに限定されず、蓄電電圧変換部12は省略されてもよい。
例えば、蓄電装置11及び内燃機関を動力源として駆動するハイブリッド車両等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備え、蓄電装置11を動力源として駆動する電気自動車等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていなくてもよい。
【0041】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
1…非接触電力伝送システム、2…送電装置、3…駆動制御装置、4…受電装置、6…電源部、7…送電電力変換部、8…送電部、8a…一次側コイル、11…蓄電装置、12…蓄電電圧変換部、13…電力変換部、14…回転電機、15…受電部、15a…二次側コイル(コイル)、16…受電電力変換部、17…制御装置、18…コイルユニット、20…熱モデル、21…筐体、21a…放熱部材、21A…表面、22…コア部材(磁性部材)、25…基板、25a…第2温度センサ、26…素子(電子部品)、35…外気、35a…第1温度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5