(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】非接触電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20241115BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241115BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20241115BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241115BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20241115BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20241115BHJP
【FI】
H02J7/34 D
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/12
B60L50/60
B60L53/12
B60L58/12
(21)【出願番号】P 2023050158
(22)【出願日】2023-03-27
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】浅見 記吉
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0339694(US,A1)
【文献】特開2019-213385(JP,A)
【文献】特開2023-17352(JP,A)
【文献】特開2013-90360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0126825(US,A1)
【文献】特開2021-78292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/34
H02J 7/00
H02J 50/12
B60L 50/60
B60L 53/12
B60L 58/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置から非接触で伝送される交流電力を受け取る受電部と、
前記受電部が受け取る前記交流電力を直流電力に変換する電力変換部と、
前記電力変換部に接続される蓄電装置と、
車両の走行駆動力を発生させるとともに、前記蓄電装置との間で電力を授受する回転電機と、
前記電力変換部の動作及び前記蓄電装置と前記回転電機との間の電力授受を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記蓄電装置の残容量が所定閾値よりも大きい場合に前記受電部による前記交流電力の受け取りを規制し、
前記車両の速度の増大に伴って前記所定閾値を低下傾向に変化させる
非接触電力伝送システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記蓄電装置の入出力端での電力収支をゼロにするとともに、前記受電部が受け取る電力と前記走行駆動力に要する電力とを一致させる
請求項1に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記受電部の短絡によって前記交流電力の受け取りを規制する
請求項1又は請求項2に記載の非接触電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池を搭載する車両での充給電に関する研究開発が行われている。
従来、非接触での電力伝送により車両の外部から車両に電力を供給する非接触電力伝送システムでは、電力伝送区間の終了位置で蓄電装置の充電率が所定値以上になるように、電力伝送区間での蓄電装置の充電率に応じて電力伝送の実行及び停止を制御するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池を搭載する車両での充給電に関する技術においては、車両全体でのエネルギー損失の増大を抑制することが望まれている。例えば、上記従来技術等の非接触電力伝送システムでは、車両の走行状態にかかわらずに電力伝送区間の終了位置で蓄電装置の充電率が所定値以上に設定されることにより、電力伝送区間の通過後に発生する回生電力を蓄電装置に貯えることができないおそれがある。電力伝送区間の通過後に発生する回生電力の全てを蓄電装置に貯えることができない場合、回生電力を熱として外部に放出する必要が生じ、車両全体でのエネルギー効率が低下するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、システム全体でのエネルギー損失の増大を抑制することができる非接触電力伝送システムを提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1):本発明の一態様に係る非接触電力伝送システム(例えば、実施形態での非接触電力伝送システム1)は、送電装置(例えば、実施形態での送電装置2)から非接触で伝送される交流電力を受け取る受電部(例えば、実施形態での受電部15)と、前記受電部が受け取る前記交流電力を直流電力に変換する電力変換部(例えば、実施形態での受電電力変換部16)と、前記電力変換部に接続される蓄電装置(例えば、実施形態での蓄電装置11)と、車両の走行駆動力を発生させるとともに、前記蓄電装置との間で電力を授受する回転電機(例えば、実施形態での回転電機14)と、前記電力変換部の動作及び前記蓄電装置と前記回転電機との間の電力授受を制御する制御装置(例えば、実施形態での制御装置17)とを備え、前記制御装置は、前記蓄電装置の残容量が所定閾値(例えば、実施形態での充電上限SOC)よりも大きい場合に前記受電部による前記交流電力の受け取りを規制し、前記車両の速度の増大に伴って前記所定閾値を低下傾向に変化させる。
【0007】
(2):上記(1)に記載の非接触電力伝送システムでは、前記制御装置は、前記蓄電装置の入出力端での電力収支をゼロにするとともに、前記受電部が受け取る電力と前記走行駆動力に要する電力とを一致させてもよい。
【0008】
(3):上記(1)又は(2)に記載の非接触電力伝送システムでは、前記制御装置は、
前記受電部の短絡によって前記交流電力の受け取りを規制してもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)によれば、蓄電装置の残容量に対して設定する所定閾値を車両の速度の増大に伴って低下傾向に変化させる制御装置を備えることによって、車両減速時の回転電機の回生動作によって得られる減速回生エネルギーを蓄電装置に貯えることができる。例えば、減速回生エネルギーを熱として放出する必要無しに、システム全体でのエネルギー損失の増大を抑制することができる。
【0010】
上記(2)の場合、蓄電装置の残容量(SOC)に加えて、送電装置からの電力伝送を仮想的なSOCとすることによって、蓄電装置の発熱及び寿命低下等の問題発生を抑制することができる。
【0011】
上記(3)の場合、二次側の受電部及び電力変換部によって一次側の送電装置での電流を制御することができ、二次側での独立した電力制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムの構成を示す図。
【
図2】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムの構成の詳細を示す図。
【
図3】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムでの送電部及び受電部の構成を示す図。
【
図4】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムでの車速と減速回生エネルギーとの対応関係の一例を示すグラフ図。
【
図5】本発明の実施形態の非接触電力伝送システムでの車速と充電上限SOCとの対応関係の一例を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る非接触電力伝送システムについて、添付図面を参照しながら説明する。
図1及び
図2は、実施形態の非接触電力伝送システム1の構成を示す図である。
図3は、実施形態での非接触電力伝送システム1の送電部8及び受電部15の構成を示す図である。
実施形態の非接触電力伝送システム1は、例えば、非接触での電力伝送により車両等の移動体の外部から移動体に電力を供給する。車両は、例えば、電気自動車、ハイブリッド車両及び燃料電池車両等の電動車両である。
【0014】
(非接触電力伝送システム)
図1及び
図2に示すように、実施形態の非接触電力伝送システム1は、例えば、車両の走行路等に設置される送電装置2と、車両等の移動体に搭載される駆動制御装置3及び受電装置4とを備える。移動体は、少なくとも減速回生エネルギーを発生させる車両等である。なお、実施形態の非接触電力伝送システム1は、少なくとも、移動体に搭載される構成要素(例えば、駆動制御装置3及び受電装置4)のみを備えてもよく、移動体の外部の構成要素(例えば、送電装置2)と移動体に搭載される非接触電力伝送システム1との組み合わせによって非接触での電力伝送が実行されてもよい。
【0015】
送電装置2は、例えば、電源部6と、送電電力変換部7と、送電部8とを備える。なお、送電装置2は、例えば、車両の走行路等での所定の電力伝送区間に複数の少なくとも送電部8を備えてもよい。
電源部6は、例えば、商用電源等の交流電源と、交流電力を直流電力に変換するAC-DCコンバータと、電力平滑用のキャパシタとを備える。電源部6は、交流電源から供給される交流電力をAC-DCコンバータによって直流電力に変換する。
【0016】
送電電力変換部7は、例えば、直流電力を交流電力に変換するインバータを備える。送電電力変換部7のインバータは、例えば2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成されるブリッジ回路と、電圧平滑用のキャパシタとを備える。各スイッチング素子は、例えば、SiC(Silicon Carbide)のMOSFET(Metal Oxide Semi-conductor Field Effect Transistor)等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ7a,7bである。整流素子は、例えば、各トランジスタ7a,7bに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ7cは、ブリッジ回路に並列に接続される。
【0017】
送電部8は、例えば、磁界共鳴又は電磁誘導等の磁界結合により、高周波の磁界の変化によって電力を送る。
図3に示すように、送電部8は、例えば、直列に接続される一次側コイル8a、一次側抵抗8b及び一次側キャパシタ8cによって形成される共振回路を備える。送電部8は、例えば、共振回路に流れる電流Itを検出する電流センサ等のセンサを備える。
【0018】
例えば、送電装置2は、予め設定される駆動周波数又は受電装置4から受け取る要求周波数の情報に応じて、送電電力変換部7の各スイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)のスイッチングを制御することによって、車両の受電装置4への電力伝送を行う。
【0019】
図1及び
図2に示すように、車両等の移動体の駆動制御装置3は、例えば、蓄電装置11と、蓄電電圧変換部12と、電力変換部13と、回転電機14とを備える。移動体の受電装置4は、例えば、受電部15と、受電電力変換部16とを備える。駆動制御装置3及び受電装置4は、例えば、共通の制御装置17を備える。
なお、例えば蓄電装置11を動力源として駆動する電気自動車等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていなくてもよい。例えば蓄電装置11及び内燃機関を動力源として駆動するハイブリッド車両等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていてもよい。
【0020】
蓄電装置11は、蓄電電圧変換部12に接続される。蓄電装置11は、車両の外部の送電装置2から非接触で伝送される電力によって充電される。蓄電装置11は、蓄電電圧変換部12及び電力変換部13を介して回転電機14との間で電力を授受する。
蓄電装置11は、例えば、リチウムイオンバッテリ等のバッテリと、バッテリの電流を検出する電流センサ及びバッテリの電圧を検出する電圧センサとを備える。
なお、例えば電気自動車等において蓄電電圧変換部12を備えていない場合、蓄電装置11は、後述する電力変換部13及び受電電力変換部16に接続される。
【0021】
蓄電電圧変換部12は、電力変換部13及び受電電力変換部16に接続される。蓄電電圧変換部12は、例えば、昇圧及び降圧の双方向の電圧変換を行う電圧制御器を備える。電圧制御器は、双方向の電圧変換によって蓄電装置11の充電及び放電時に入力電力及び出力電力を変換する。蓄電電圧変換部12の電圧制御器は、例えば、1対の第1リアクトルと、第1素子モジュールと、電圧平滑用のキャパシタとを備える。
【0022】
1対の第1リアクトル12a,12aは、相互に逆極性に磁気結合されることによって複合型リアクトルを形成する。1対の第1リアクトル12a,12aは、第1素子モジュールの各相のハイサイドアームとローサイドアームとの接続点に接続される。
第1素子モジュールは、例えば2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第1ブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ12b,12cである。整流素子は、例えば、各トランジスタ12b,12cに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ12dは、蓄電装置11に並列に接続される。
蓄電電圧変換部12は、直列に接続される抵抗12e及びトランジスタ12fを備える。抵抗12e及びトランジスタ12fは、第1ブリッジ回路に並列に接続される。
【0023】
電圧制御器の1対の第1リアクトル12a,12a及び第1素子モジュールは、いわゆる2相のインターリーブによって電圧変換を行う。2相のインターリーブでは、1対の第1リアクトル12a,12aに接続される2相のトランジスタ12b,12cのうちで第1の相のトランジスタ12b,12cのスイッチング制御の1周期と、第2の相のトランジスタ12b,12cのスイッチング制御の1周期とは、相互に半周期だけずらされる。
【0024】
電力変換部13は、回転電機14に接続される。電力変換部13は、例えば、直流電力と交流電力との変換を行う電力変換器を備える。電力変換器は、例えば、第2素子モジュールと、電圧平滑用のキャパシタとを備える。
第2素子モジュールは、例えば、3相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第2ブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ13a,13bである。整流素子は、例えば、各トランジスタ13a,13bに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ13cは、第2ブリッジ回路に並列に接続される。
【0025】
第2素子モジュールは、電力の授受によって回転電機14の動作を制御する。第2素子モジュールは、例えば回転電機14の力行時には、正極及び負極の直流端子13p,13nから入力される直流電力を3相交流電力に変換して、3相交流電力を3相の交流端子13dから回転電機14に供給する。第2素子モジュールは、回転電機14の3相のステータ巻線への通電を順次転流させることによって回転駆動力を発生させる。
第2素子モジュールは、例えば回転電機14の回生時には、回転電機14の回転に同期がとられた各相のスイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)の駆動によって、3相のステータ巻線から入力される3相交流電力を直流電力に変換する。第2素子モジュールは、3相交流電力から変換された直流電力を、蓄電電圧変換部12を介して蓄電装置11に供給することが可能である。
【0026】
回転電機14は、例えば、車両の走行駆動用に設けられる3相交流のブラシレスDCモータである。回転電機14は、界磁用の永久磁石を有する回転子と、回転子を回転させる回転磁界を発生させる3相のステータ巻線を有する固定子とを備える。3相のステータ巻線は、電力変換部13の3相の交流端子13dに接続される。
回転電機14は、電力変換部13から供給される電力により力行動作することによって回転駆動力を発生させる。回転電機14は、例えば、車両の車輪に連結可能である場合、電力変換部13から供給される電力により力行動作することによって走行駆動力を発生させる。回転電機14は、車両の車輪側から入力される回転動力により回生動作することによって発電電力を発生させてもよい。回転電機14は、車両の内燃機関に連結可能である場合、内燃機関の動力によって発電してもよい。
【0027】
受電部15は、受電電力変換部16に接続される。受電部15は、例えば、磁界共鳴又は電磁誘導などの磁界結合により、送電部8から伝えられる高周波の磁界の変化によって電力を受け取る。
図3に示すように、受電部15は、例えば、直列に接続される二次側コイル15a、二次側抵抗15b及び二次側キャパシタ15cによって形成される共振回路を備える。受電部15は、例えば、共振回路に流れる電流Irを検出する電流センサ等のセンサを備える。
【0028】
図1及び
図2に示す受電電力変換部16は、電力変換部13に接続される。受電電力変換部16は、交流電力を直流電力に変換する、いわゆるフルブリッジレス型(又はブリッジレス及びトーテムポール型)の力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路を備える。いわゆるブリッジレスPFCは、ブリッジ接続される複数のダイオードによるブリッジ整流器を備えていないPFCであって、いわゆるトーテムポールPFCは、同方向に直列に接続(トーテムポール接続)される同一導電型の一対のスイッチング素子を備えるPFCである。
【0029】
受電電力変換部16は、例えば、2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成される第3ブリッジ回路と、電圧平滑用のキャパシタとを備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ16a,16bである。整流素子は、例えば、各トランジスタ16a,16bに並列に接続される還流ダイオードである。電圧平滑用のキャパシタ16cは、第3ブリッジ回路に並列に接続される。
【0030】
例えば、受電部15及び受電電力変換部16を備える受電装置4は、送電装置2による電力伝送の周波数の情報に応じて、受電電力変換部16の各スイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)のスイッチングを制御することによって、送電装置2から伝送される電力を受け取る。
【0031】
制御装置17は、例えば、車両等の移動体の駆動制御装置3及び受電装置4を統合的に制御する。制御装置17は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECUである。なお、制御装置17の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0032】
制御装置17は、例えば、各スイッチング素子をオン(導通)及びオフ(遮断)に駆動するタイミングを示す制御信号を生成するとともに、制御信号に基づいて各スイッチング素子を実際にオン及びオフに駆動するためのゲート信号を生成する。
例えば、制御装置17は、受電装置4の各スイッチング素子のスイッチングを制御することによって、送電装置2から受け取る交流電力を直流電力に整流しつつ、入力電圧及び入力電流の力率改善を行う。
【0033】
例えば、制御装置17は、受電装置4の複数のスイッチング素子を同期的にオン及びオフに駆動する同期整流動作と、二次側コイル15aを短絡する短絡動作とによって、目標出力に応じた出力を制御する。
例えば、制御装置17は、送電装置2から送られる電力によって受電部15に発生する電流、つまり二次側コイル15aに流れる電流Irの大きさ及び位相に応じて同期整流動作を制御する。制御装置17は、受電電力変換部16の複数のスイッチング素子を、いわゆるゼロ電圧スイッチング(ZVS:Zero Voltage Switching)のソフトスイッチングで制御する。ゼロ電圧スイッチング(ZVS)では、各スイッチング素子は、各相のデッドタイム期間のオフ状態での出力容量(寄生容量)の放電によって両端電圧がゼロにされてからターンオン(オフ状態からオン状態への切り換え)が実行される。
例えば、制御装置17は、受電電力変換部16の各相のハイサイドアームでゼロ電圧スイッチング(ZVS)の同期整流動作を継続させつつ、各相のローサイドアームのみオンにすることで短絡動作を制御する。
【0034】
例えば、制御装置17は、蓄電装置11の残容量(SOC:State Of Charge)が所定閾値よりも大きい場合に受電装置4による交流電力の受け取りを規制する。制御装置17は、受電装置4及び蓄電装置11を搭載する移動体の速度(例えば、車両の速度である車速等)の増大に伴って、残容量(SOC)に対する所定閾値を低下傾向に変化させる。
図4は、実施形態の非接触電力伝送システム1での車速と減速回生エネルギーとの対応関係の一例を示すグラフ図である。
図5は、実施形態の非接触電力伝送システム1での車速と充電上限SOCとの対応関係の一例を示すグラフ図である。
図4に示すように、車速が増大することに伴い、車両の減速時に回転電機14の回生動作によって得られる減速回生エネルギーは増大傾向に変化する。制御装置17は、例えば、減速回生エネルギーの全てを蓄電装置11に貯えることができるように、
図5に示すように、車速が増大することに伴い、蓄電装置11の残容量(SOC)の上限値(充電上限SOC)を低下傾向に変化させる。
【0035】
制御装置17は、蓄電装置11の残容量(SOC)を規制する場合、例えば、残容量(SOC)を充電上限SOC以下に低下させる又は残容量(SOC)を維持する。制御装置17は、例えば、残容量(SOC)を維持する場合、蓄電装置11の入出力端での電力収支をゼロにするとともに、受電部15が受け取る電力と車両の走行駆動力に要する電力とを一致させる。制御装置17は、車両の走行駆動力に要する電力を、例えば、車両の走行状態又は回転電機14の状態に関する各種のセンサの出力に基づいて算出する。各種のセンサは、例えば、車両の速度を検出する速度センサ及びアクセル操作量を検出するアクセルポジションセンサ等と、回転電機14の状態を把握するための電流センサ、電圧センサ及び温度センサ等とである。
制御装置17は、受電部15が受け取る電力を規制する場合、例えば、送電装置2に発電停止若しくは出力低減を指示又は受電装置4の二次側コイル15aを短絡する短絡動作の実行を指示する。
【0036】
上述したように、実施形態の非接触電力伝送システム1によれば、蓄電装置11の残容量(SOC)に対して設定する充電上限SOCを車両の速度の増大に伴って低下傾向に変化させる制御装置17を備えることによって、車両減速時の回転電機14の回生動作によって得られる減速回生エネルギーを蓄電装置11に貯えることができる。例えば、減速回生エネルギーを熱として放出する必要無しに、システム全体でのエネルギー損失の増大を抑制することができる。
【0037】
制御装置17は、蓄電装置11の入出力端での電力収支をゼロにするとともに、受電部15が受け取る電力と車両の走行駆動力に要する電力とを一致させることにより、蓄電装置11の残容量(SOC)に加えて、送電装置2からの電力伝送を仮想的なSOCとすることによって、蓄電装置11の発熱及び寿命低下等の問題発生を抑制することができる。
【0038】
制御装置17は、受電装置4の二次側コイル15aを短絡する短絡動作によって受電部15が受け取る電力を規制するので、二次側の受電部15及び受電電力変換部16によって一次側の送電装置2での電流を制御することができ、二次側での独立した電力制御を行うことができる。
【0039】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
上述した実施形態では、非接触電力伝送システム1は、蓄電装置11の入出力電力を変換する蓄電電圧変換部12を備えるとしたが、これに限定されず、蓄電電圧変換部12は省略されてもよい。
例えば、蓄電装置11及び内燃機関を動力源として駆動するハイブリッド車両等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備え、蓄電装置11を動力源として駆動する電気自動車等の場合、駆動制御装置3は蓄電電圧変換部12を備えていなくてもよい。
【0040】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
1…非接触電力伝送システム、2…送電装置、3…駆動制御装置、4…受電装置、6…電源部、7…送電電力変換部、8…送電部、11…蓄電装置、12…蓄電電圧変換部、13…電力変換部、14…回転電機、15…受電部、16…受電電力変換部(電力変換部)、17…制御装置。