(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】工作機械、工作機械の設定方法、及び、設定プログラム
(51)【国際特許分類】
B23B 25/06 20060101AFI20241115BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20241115BHJP
G05B 19/401 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B23B25/06
B23Q17/22 D
G05B19/401
(21)【出願番号】P 2023097045
(22)【出願日】2023-06-13
【審査請求日】2023-06-13
(32)【優先日】2022-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2022年6月14日ー2022年6月15日、SYNCREX生産棟において開催されたOPEN HOUSEにて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142871
【氏名又は名称】和田 哲昌
(74)【代理人】
【識別番号】100094743
【氏名又は名称】森 昌康
(74)【代理人】
【識別番号】100175628
【氏名又は名称】仁野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】ストレック ドナルド トーマス
(72)【発明者】
【氏名】リンダー レム
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-203392(JP,A)
【文献】特表2017-518487(JP,A)
【文献】特開2016-083729(JP,A)
【文献】実開昭55-169303(JP,U)
【文献】特開2020-082263(JP,A)
【文献】特開2021-000665(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0292854(US,A1)
【文献】中国実用新案第202180213(CN,U)
【文献】特許第7301241(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q17/22
B23Q17/24
B23B17/00
B23B25/00-25/06
G05B19/401
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを回転軸の周りに回転可能に把持する第1主軸装置の第1把持部に前記ワークの代わりに第1プローブを取り付け、
前記第1主軸装置に対して治具を相対的に移動させて前記第1プローブに前記治具を当接させることにより、前記第1プローブを較正し、
刃物台に前記ワークを加工するための工具を取り付け、
前記第1主軸装置に対して前記刃物台を相対的に移動させて前記第1プローブに前記工具を当接させて、前記第1プローブの較正情報に基づいて前記工具のオフセット値を設定することを含
み、
前記第1プローブを較正することは、
前記第1主軸装置に対して前記治具を相対的に移動させて前記第1プローブに前記
治具を当接させることにより、前記第1プローブの姿勢を調整することを含む、
工作機械の設定方法。
【請求項2】
前記第1主軸装置は、前記回転軸に沿う方向に延びる長尺のワークを前記回転軸に沿う方向に移動させることが可能であって、
前記刃物台は、複数の前記工具を並列に取り付けることが可能である、
請求項1に記載の設定方法。
【請求項3】
前記第1主軸装置に対して前記治具を相対的に移動させることは、前記治具が取り付けられた前記刃物台を前記第1主軸装置に対して相対的に移動させることを含む、
請求項1に記載の設定方法。
【請求項4】
前記第1プローブを較正することは、
前記回転軸に対して垂直な径方向に前記第1主軸装置に対して前記治具を相対的に移 動させて前記治具を前記第1プローブの2つの当接点に当接させて、前記2つの当接点 の前記径方向の位置を測定し、
前記2つの当接点の前記位置に基づいて、前記第1プローブの位置を代表する基準の 前記径方向の位置を求めることを含む、
請求項1に記載の設定方法。
【請求項5】
前記第1プローブは端面を含む直方体の形状を有する先端部を含み、
前記第1プローブは、前記端面が前記回転軸に対して実質的に垂直になるように前記第1主軸装置に取付けられており、
前記径方向に前記第1主軸装置に対して前記治具を相対的に移動させて前記治具を前記2つの当接点に当接させることは、前記直方体のうち前記径方向に対向する2つの平面に前記治具を当接させることを含む、
請求項
4に記載の設定方法。
【請求項6】
前記第1プローブを較正することは、
前記回転軸に沿う方向と前記径方向とに垂直な追加径方向に前記第1主軸装置に対し て前記治具を相対的に移動させて前記治具を前記第1プローブの2つの追加当接点に当 接させて、前記2つの追加当接点の前記追加径方向の位置を測定し、
前記2つの追加当接点の前記位置に基づいて前記基準の前記追加径方向の位置を求め る
ことを含む、
請求項
5に記載の設定方法。
【請求項7】
前記追加径方向に前記第1主軸装置に対して前記治具を相対的に移動させて前記治具を前記2つの追加当接点に当接させることは、前記直方体のうち前記追加径方向に対向する2つの平面に前記治具を当接させることを含む、
請求項
6に記載の設定方法。
【請求項8】
前記第1プローブの位置を較正することは、
前記回転軸に沿う方向に前記第1主軸装置に対して前記治具を相対的に移動させて前記治具を前記第1プローブに当接させることで、前記第1プローブの前記回転軸に沿う方向の位置を求めることを含む、
請求項1に記載の設定方法。
【請求項9】
前記工具とは異なる、前記ワークを加工するための複数の他の工具を前記刃物台に取り付け、
前記第1主軸装置に対して前記刃物台を相対的に移動させて前記第1プローブに前記複数の他の工具をそれぞれ当接させて、前記第1プローブの較正情報に基づいて前記複数の他の工具のオフセット値をそれぞれ設定することを含む、
請求項1に記載の設定方法。
【請求項10】
前記工具を、前記
第1主軸装置の前記回転軸に対して垂直に配置される前記ワークの端面を加工するためのマスター工具として選択し、
前記工具の前記オフセット値は、前記
第1主軸装置の前記回転軸に沿うZ軸方向のマスターZ軸工具オフセット値を含み、
前記複数の他の工具の前記オフセット値は、前記マスターZ軸工具オフセット値と前記第1プローブの較正情報とに基づいて求められる、
請求項
9に記載の設定方法。
【請求項11】
前記ワークを前記回転軸の周りに回転可能に把持する第2主軸装置の第2把持部に前記ワークの代わりに第2プローブを取り付け、
前記回転軸に沿う方向の一方に延びる第1精密ピンと前記回転軸に沿う方向の他方に延びる第2精密ピンとを備える前記治具を前記第1主軸装置と前記第2主軸装置とに対して相対的に移動させて、前記第2プローブに前記第2精密ピンを当接させることにより、前記第2プローブを較正し、
前記第2主軸装置に対して前記刃物台を相対的に移動させて前記工具を前記第2プローブに当接させて、前記
第2プローブの較正情報に基づいて前記工具の追加オフセット値を測定することをさらに含む、
請求項1から
10のいずれかに記載の工作機械の設定方法。
【請求項12】
ワークと第1プローブとを選択的に回転軸の周りに回転可能に把持するように構成される第1把持部を備える第1主軸装置と、
工具を取り付け可能な刃物台と、
前記第1プローブを較正するための治具と、
前記第1主軸装置に対して前記刃物台を相対的に移動させ、前記第1主軸装置に対して前記治具を相対的に移動させるように構成される少なくとも1つのアクチュエータと、
前記第1主軸装置に対する前記治具の第1相対位置と前記第1主軸装置に対する前記刃物台の第2相対位置とを測定するように構成される少なくとも1つの位置センサと、
前記少なくとも1つのアクチュエータを制御するように構成されるコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記第1プローブが把持された前記第1主軸装置に対して前記治具を相対移動させて前記治具を前記第1プローブに当接させるように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御し、
前記治具を前記第1プローブに当接させたときの前記第1相対位置に基づいて前記第1プローブの位置を較正して前記第1プローブの較正情報を生成し、
前記第1プローブが把持された前記第1主軸装置に対して前記工具が取り付けられた前記刃物台を相対移動させて前記工具を前記第1プローブに当接させるように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御し、
前記工具を前記第1プローブに当接させたときの前記第2相対位置と前記第1プローブの較正情報とに基づいて前記工具のオフセット値を設定する
ように構成され、
前記第1プローブを較正して前記第1プローブの較正情報を生成することは、
前記第1主軸装置に対して前記治具を相対的に移動させて前記第1プローブに前記
治具を当接させることにより、前記第1プローブの姿勢を調整することを含む、
工作機械。
【請求項13】
前記ワークと第2プローブとを選択的に前記回転軸の周りに回転可能に把持するように構成される第2把持部を備える第2主軸装置をさらに備え、
前記治具は、前記回転軸に沿う方向の一方に延びる第1精密ピンと前記回転軸に沿う方向の他方に延びる第2精密ピンとを備え、
前記少なくとも1つのアクチュエータは、前記第2主軸装置に対して前記刃物台を相対的に移動させるように構成され、
前記少なくとも1つの位置センサは、前記第2主軸装置に対する前記第2精密ピンの第3相対位置と前記第2主軸装置に対する前記刃物台の第4相対位置とを測定するように構成され、
前記第1相対位置は、前記第1主軸装置に対する前記第1精密ピンの相対位置であって、
前記コントローラは、
前記第2プローブが把持された前記第2主軸装置に対して前記治具を相対移動させて前記治具の前記第2精密ピンを前記第2プローブに当接させるように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御し、
前記第2精密ピンを前記第2プローブに当接させたときの前記第3相対位置に基づいて前記第2プローブの位置を較正して、前記第2プローブの較正情報を生成し、
前記第2プローブが把持された前記第2主軸装置に対して前記工具が取り付けられた前記刃物台を相対移動させて前記工具を前記第2プローブに当接させるように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御し、
前記工具を前記第2プローブに当接させたときの前記第4相対位置と前記第2プローブの較正情報とに基づいて前記工具のオフセット値を設定する、
請求項
12に記載の工作機械。
【請求項14】
前記コントローラに動作可能に接続されたユーザインタフェースをさらに備え、前記ユーザインタフェースは、ユーザ入力を受信し、
前記コントローラは、前記ユーザインタフェースがユーザ入力を受け取ると、前記第1プローブを自律的に較正し、工具オフセット値を決定する、
請求項
12または13に記載の工作機械。
【請求項15】
前記刃物台は、前記工具とは異なる複数の他の工具が着脱可能であって、
前記コントローラは、
前記第1主軸装置に対して前記刃物台を相対移動させて前記第1プローブに前記複数の他の工具をそれぞれ当接させたときの前記少なくとも1つの位置センサによって測定された第5相対位置を受け取り、
前記第1プローブの較正情報と前記第5相対位置に基づいて前記複数の他の工具のオフセット値をそれぞれ設定する、
請求項
14に記載の工作機械。
【請求項16】
前記
ユーザインタフェースを介して、前記工具を前記
第1主軸装置の前記回転軸に対して垂直に配置される前記ワークの端面を加工するためのマスター工具とする入力を前記コントローラは受け取り、
前記工具の前記オフセット値は、前記
第1主軸装置の前記回転軸に沿うZ軸方向の
マスターZ軸工具オフセット値を含み、
前記複数の他の工具の前記オフセット値は、前記マスターZ軸工具オフセット値と前記第1プローブの較正情報とに基づいて求められる、
請求項
15に記載の工作機械。
【請求項17】
前記治具の位置を記憶し、前記コントローラに動作可能に接続されるメモリをさらに備え、
前記コントローラは、前記第1プローブ及び前記治具の少なくとも一方を前記第1主軸装置の前記回転軸に沿うZ軸方向の第1距離だけ移動させて、前記第1主軸装置に対して前記刃物台を相対移動させ、
前記コントローラは、前記第1距離および前記メモリに記憶された前記治具の位置に少なくとも部分的に基づいて、前記第1プローブのZ軸オフセット値を決定することを含む前記第1プローブを較正する、
請求項
12に記載の工作機械。
【請求項18】
第1プローブを回転軸の周りに回転させるように構成される第1主軸装置に対して治具を相対的に移動させて前記治具を前記第1プローブに当接させる手順と、
前記治具を前記第1プローブに当接させたときの前記第1主軸装置と前記治具との第1相対位置を少なくとも1つの位置センサから受け取る手順と、
前記第1相対位置に基づいて前記第1プローブの位置を較正して前記第1プローブの較正情報を生成する手順と、
前記第1プローブが把持された前記第1主軸装置に対し
て工具が取り付けられ
た刃物台を相対移動させて前記工具を前記第1プローブに当接させる手順と、
前記工具を前記第1プローブに当接させたときの前記少なくとも1つの位置センサによって測定された第2相対位置を受け取る手順と、
前記第1プローブの較正情報と前記第2相対位置とに基づいて前記工具のオフセット値を設定する手順と、
を工作機械のプロセッサに実行させるための設定プログラム
であって、
前記第1プローブを較正して前記第1プローブの較正情報を生成する手順は、
前記第1主軸装置に対して前記治具を相対的に移動させて前記第1プローブに前記
治具を当接させることにより、前記第1プローブの姿勢を調整することを含む、
設定プログラム。
【請求項19】
前記工具とは異なる
、ワークを加工するための複数の他の工具が取り付けられた前記刃物台を前記第1主軸装置に対して相対的に移動させて前記第1プローブに前記複数の他の工具をそれぞれ当接させて、前記第1プローブの較正情報に基づいて前記複数の他の工具のオフセット値をそれぞれ設定する手順を、
工作機械のプロセッサにさらに実行させるための請求項
18に記載の設定プログラム。
【請求項20】
前記工具が前記
第1主軸装置の前記回転軸に対して垂直に配置される前記ワークの端面を加工するためのマスター工具であることを登録する入力を
ユーザインタフェースから受け取る手順を工作機械のプロセッサにさらに実行させるためのプログラムであって、
前記工具の前記オフセット値は、前記
第1主軸装置の前記回転軸に沿うZ軸方向のマスターZ軸工具オフセット値を含み、
前記複数の他の工具の前記オフセット値は、前記マスターZ軸工具オフセット値と前記第1プローブの較正情報とに基づいて求められる、
請求項
19に記載の設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械、工作機械の設定方法、及び、工作機械の設定プログラムに関し、より具体的にはスイス型工作機械、スイス型工作機械の設定方法、及び、スイス型工作機械の設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スイス型工作機械は、ワークを回転軸回りに回転させる主軸装置と、回転するワークに接触してワークを加工する工具とを有する。スイス型工作機械の主軸装置は、ワークの一端を自由端とし、その反対の他端を把持するシャフトを含む。スイス型工作機械の主軸モータは、シャフトおよびそれに把持されたワークを回転軸回りに回転させる。スイス型工作機械は、シャフトを回転軸方向に移動させることで、ワークを回転軸方向に移動する。このワークの回転軸方向の移動により、スイス型工作機械は、工具によって加工されるワークを位置決めすることができる。典型的には、スイス型工作機械は、複数の工具を並列に取り付けることが可能な刃物台を備える。この刃物台は、取り付けた工具によってワークを加工するため、ワークを回転軸回りに回転させる主軸装置に対して回転軸に垂直なX軸およびY軸に移動する。また、主軸装置は、刃物台に取り付けられた工具によってワークを加工するため、刃物台に対して回転軸に沿うZ軸方向に移動する。
【0003】
主軸装置は、ワークが回転しながら回転軸方向に移動する際にワークを支持するガイドブッシュを有する。刃物台は、主軸装置の回転軸方向においてガイドブッシュの近傍に配置される。そのため、長尺のワークであっても、ワークのごく一部のみがガイドブッシュを越えて突出した状態でワークを加工できる。したがって、スイス型工作機械は、長尺のワークを加工するのに特に有効である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スイス型工作機械によってワークを加工する前に、ユーザは、刃物台に取り付けた工具の位置を登録することを含めて、スイス型工作機械の設定を行う。1つの方法として、ユーザは、工具を刃物台に取り付け、ダミーワークを主軸装置に把持させる。ユーザは、キーボードを利用して、ダミーワークに関する情報(例えば、直径および長さ)を入力し、ダミーワークを回転させながら、刃物台を主軸装置に対して移動することで、工具をダミーワークに切り込ませる。ユーザは、工具がダミーワークに切り込んだ後に動作を停止し、ダミーワークの切込み深さを測定し、キーボードを介して測定した値を工作機械に入力する。
【0005】
工作機械は、ダミーワークの切り込み深さと工具の位置情報とを用いて、主軸装置に対する工具の位置を算出する。次いで、ユーザは、ワークを加工するために使用される刃物台内の他の工具に対して同様のプロセスを繰り返す。一般に、スイス型工作機械は、ワークを加工する際に多くの工具を使用するため、従来のスイス型工作機械では、加工前の工作機械の設定に多くの時間を費やし、工作機械の設定にかかるユーザの負担が大きくなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、工作機械の設定方法は、ワークを回転軸の周りに回転可能に把持する第1主軸装置の第1把持部にワークの代わりに第1プローブを取り付け、第1主軸装置に対して治具を相対的に移動させて第1プローブに治具を当接させることにより第1プローブを較正し、刃物台にワークを加工するための工具を取り付け、第1主軸装置に対して刃物台を相対的に移動させて第1プローブに工具を当接させて、第1プローブの較正情報に基づいて工具のオフセット値を設定することを含む。
【0007】
本開示の別の態様によれば、工作機械は、第1主軸装置と、刃物台と、治具と、少なくとも1つのアクチュエータと、少なくとも1つの位置センサと、コントローラと、を備える。第1主軸装置は、ワークと第1プローブとを選択的に回転軸の周りに回転可能に把持するように構成される第1把持部を備える。刃物台は、工具を取り付け可能である。治具は、刃物台に取付けられる第1プローブを較正するためのものである。少なくとも1つのアクチュエータは、第1主軸装置に対して刃物台を相対的に移動させ、第1主軸装置に対して治具を相対的に移動させるように構成される。少なくとも1つの位置センサは、第1主軸装置に対する治具の第1相対位置と第1主軸装置に対する刃物台との第2相対位置とを測定するように構成される。コントローラは、少なくとも1つのアクチュエータを制御するように構成される。コントローラは、第1プローブが把持された第1主軸装置に対して治具を相対移動させて治具を第1プローブに当接させるように少なくとも1つのアクチュエータを制御する。コントローラは、治具を第1プローブに当接させたときの第1相対位置に基づいて第1プローブの位置を較正して第1プローブの較正情報を生成する。コントローラは、第1プローブが把持された第1主軸装置に対して工具が取り付けられた刃物台を相対移動させて工具を第1プローブに当接させるように少なくとも1つのアクチュエータを制御する。コントローラは、工具を第1プローブに当接させたときの第2相対位置と第1プロ-ブの較正情報とに基づいて工具のオフセット値を設定する。
【0008】
さらに別の態様では、以下の手順を工作機械のプロセッサに実行させるための設定プログラムである。その手順は、第1プローブを回転軸の周りに回転させるように構成される第1主軸装置に対して治具を相対的に移動させて前記治具を前記第1プローブに当接させる手順と、治具を第1プローブに当接させたときの第1主軸装置と治具との第1相対位置を少なくとも1つの位置センサから受け取る手順と、第1相対位置に基づいて第1プローブの位置を較正して第1プローブの較正情報を生成する手順と、第1プローブが把持された第1主軸装置に対して工具が取り付けられた刃物台を相対移動させて工具を第1プローブに当接させる手順と、工具を第1プローブに当接させたときの少なくとも1つの位置センサによって測定された第2相対位置を受け取る手順と、第1プロ-ブの較正情報と第2相対位置とに基づいて工具のオフセット値を設定する手順とを含む。
【発明の効果】
【0009】
上述する工作機械、工作機械の設定方法、及び、設定プログラムは、ダミーワークを利用した従来の方法に比べ、設定時間を短縮し、工作機械の設定にかかるユーザの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は、
図1の一点鎖線で示された工作機械の加工領域であって、ワークを受け入れて第1刃物台及び第2刃物台に対してワークを回転させる第1主軸装置及び第2主軸装置を有する加工領域の内部の図である。
【
図3】
図3は、
図1の工作機械の第1刃物台の正面図であり、第1主軸装置によって把持されたワークを加工するための第1刃物台を示している。
【
図4】
図4は、第2主軸装置によって支持されたワークを機械加工するための第2刃物台の工具を示す、
図1の工作機械の第2刃物台の正面図である。
【
図5A】
図5Aは、第1主軸装置のコレットに接続されるアダプタを有するプローブの側面図であり、第1プローブ30は、工具プリセット動作中に第1刃物台の工具に接触するためのボール先端を備えたスタイラスを有する。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aのプローブとともに使用されるスタイラスの別の構成の側面図である。
【
図6】
図6は、
図1の工作機械の第1主軸装置の断面図であり、第1主軸装置のスピンドルシャフトと、スピンドルシャフトに接続された取り外し可能なガイドブッシュと、スピンドルシャフトに対して軸方向に移動可能であり且つスピンドルシャフトと共に回転可能な主軸のスプラインシャフトと、スプラインシャフトのコレットとを含む主軸を示す。
【
図7】
図7は、
図6の取り外し可能なガイドブッシュの拡大断面図であり、ガイドブッシュをスピンドルシャフトに固定するか、非固定にするかを変更できる戻り止め機構を示す。
【
図8】
図8は、
図1の工作機械のプリセット動作のフロー図である。
【
図9】
図9は、引っ込んだ位置にあるスプラインシャフトおよびスピンドルシャフトに固定されたガイドブッシュを示す、主軸装置の一部の断面図である。
【
図10】
図10は、
図9と同様の図であり、スピンドルシャフトの内部へのアクセスを可能にするためにガイドブッシュが取り外されたスピンドルシャフトを示す。
【
図11】
図11は、第2位置にあるスプラインシャフトと、スプラインシャフトに接続された
図5Aのプローブとを示す、
図10と同様の図である。
【
図12】
図12は、
図11と同様の図であり、第2位置から第1位置まで引っ込んだ位置にあるスプラインシャフトと、スピンドルシャフトの内部に引っ込んだプローブと、第1刃物台の工具と径方向に一致した、スピンドルシャフトから突出されたスタイラスのボール先端とを示す。
【
図13】
図13は、
図12と同様の図であり、工具をスピンドルシャフトの中心軸に対する径方向の下方に移動させてプローブのボール先端に接触させた状態を示す図である。
【
図14】
図14は、
図6の第1主軸装置の概略図であり、スピンドルシャフトを直接回転させるとともに、スピンドルシャフトとスプラインシャフトとの間のスプラインアダプタを介してスプラインシャフトを間接的に回転させる第1主軸装置の主軸モータを示す図である。
【
図15】
図15は、スピンドルシャフトの回転をスリーブの回転に変換するためにスピンドルシャフトと主軸装置のスリーブとの間に第1のギヤ接続を有するスイス型工作機械用の別の主軸装置の概略図である。
【
図16】
図16は、スピンドルシャフトの回転をスリーブの回転に変換するためにスピンドルシャフトと主軸装置のスリーブとの間に第2のギヤ接続を有するスイス型工作機械用の別の主軸装置の概略図である。
【
図17】
図17は、主軸装置のスピンドルシャフトを駆動する第1の主軸モータと主軸装置のスリーブを駆動する第2の主軸モータとを有するスイス型工作機械用の別の主軸装置の概略図である。
【
図18】
図18は、スプラインナット、ボールベアリング、およびボールスプライン結合のスプラインシャフトを示すために接続の一部が非表示にされたボールスプライン結合の斜視図である。
【
図19】
図19は、スプラインナットと、スプラインシャフトと、スプラインナットおよびスプラインシャフトのスプラインの側面部に係合するボールベアリングとを含むボールスプライン結合の断面図である。
【
図20A】
図20Aは、
図1の工作機械の第1主軸装置のコレット、第2主軸装置のワークホルダ、および第1刃物台および第2刃物台の斜視図である。
【
図20B】
図20Bは、工作機械のプローブを較正するために使用される治具を示す、
図1の工作機械の機械加工領域の内部の一部の図である。
【
図21】
図21は、
図20Aの刃物台のうちの1つの刃物台に工具を位置決めするために刃物台に取り付けられた工具設定治具との立面図である。
【
図22】
図22は、プローブを較正するために、
図20Bの治具の・の端面と当接するように前進された第1主軸装置のプローブの概略図である。
【
図23】
図23は、プローブを較正するために、治具の精密ピンの外面によって接触される平坦な側面を有するプローブの立方体先端を示す、
図22と同様の概略図である。
【
図24】
図24は、ピンが円筒形であるように治具の精密ピンの外面を円形として示し、プローブの立方体先端の平坦な側面が精密ピンの円筒形外面の4つの四分円に接触できることを概略的に示す、精密ピンの端面図である。
【
図25A】
図25Aは、マスター工具のZ軸工具オフセット値を設定するためにマスター工具と当接するように移動する第1主軸装置に取付けられたプローブの概略図である。
【
図25B】
図25Bは、工具のX軸工具オフセット値およびY軸工具オフセット値を設定するプロセスの一部として、プローブの立方体先端に接触するようにX軸方向およびY軸方向移動している第1刃物台に取り付けられた工具の概略図である。
【
図26A】
図26Aは、異なるサイズの工具取付ブロックおよび異なるサイズの工具を収容するための異なる構成の調整可能な工具設定治具の概略図である。
【
図26B】
図26Bは、異なるサイズの工具取付ブロックおよび異なるサイズの工具を収容するための異なる構成の調整可能な工具設定治具の概略図である。
【
図26C】
図26Cは、異なるサイズの工具取付ブロックおよび異なるサイズの工具を収容するための異なる構成の調整可能な工具設定治具の概略図である。
【
図26D】
図26Dは、異なるサイズの工具取付ブロックおよび異なるサイズの工具を収容するための異なる構成の調整可能な工具設定治具の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
旋盤の刃物台に取付けられた工具の刃先位置を計測する刃先位置計測センサを較正可能な工作機械として、特開2003―019644号公報に示された工作機械が知られている。この工作機械では、ワークを回転させるワーク主軸の回転軸上に配置可能な刃先位置計測用センサによって刃先位置が計測される。刃先位置計測用センサを較正するため、工作機械は、刃物台に取り付けられた位置計測用センサを有する。当該位置計測用センサを刃物台に取り付けられた工具に当接させることによって、工作機械の所定位置を基準とする座標系における工具の刃先位置が計測される。当該位置計測用センサを刃先位置計測用センサに当接させることによって、当該座標系における刃先位置計測用センサが較正される。これによって、加工中の切削熱等の外乱により変位した刃先位置計測用センサの較正が可能となる。
【0012】
特開2003―019644号公報に係る工作機械は、内部にワークを加工している間、刃先位置計測用センサを退避させる空間を設けることが必要なため、工作機械の内部空間が大きくなる。複数の工具を並列に取り付けることが可能な刃物台を備える工作機械において、このように内部空間を不必要に大きくすることは好ましくない。また、刃先位置計測用センサが装着されるセンサアームは、加工中の切削熱等の外乱により変位することから、工作機械の状態に応じて刃先位置計測用センサの校正が必要となり工作機械の設定にかかるユーザの負担が増してしまう。以下に開示される工作機械、工作機械の設定方法、及び、設定プログラムは、複数の工具を並列に取り付けることが可能な刃物台を備える工作機械において、工作機械の内部空間を小さくしつつ、ユーザの負担を軽減した工作機械の設定を可能とする。
【0013】
図1には、このような課題を解決するための加工領域を有する工作機械、例えばスイス型の工作機械10が示されている。工作機械10は、工作機械を動作させるために、工作機械10の様々な主軸モータおよび構成要素を操作できるように繋がれたコントローラ11を有する。工作機械10は、ユーザからの入力を受けて、ユーザに情報を伝えるために、スクリーン、キーボード、マイクロフォン、および/またはスピーカなどのユーザインタフェース13を有する。コントローラ11は、1つまたは複数のマクロなど、工作機械を動作させるための命令を記憶するメモリ115と、命令を実行するプロセッサ17とを含む。工作機械10は、取り付けた工具のオフセット値の迅速な設定を可能にし、いくつかの実施形態では、工具のオフセット値の自動設定を可能にする。工作機械10は、第1プローブ30を第1主軸装置14のスプラインシャフト104に接続できるようにするために第1主軸装置14のスピンドルシャフト102(
図6参照)から取り外し可能な、ガイドブッシュ70(
図7参照)などのワーク支持体を含む第1主軸装置14を有する。工作機械10は、第1プローブ30を利用して、第1主軸装置14に対する工具の位置を特定するために、第1刃物台(
図3参照)または第2刃物台(
図4参照)に取り付けられた工具が第1主軸装置14に取り付けられた第1プローブ30に接触するときを検出する。
【0014】
より具体的には、工作機械10は、例えばコントローラ11を介して、第1主軸装置14に関連付けられた工具に関する工具データを、工作機械10及びそのコントローラ11のユーザインタフェース13又は通信回路19を介して受信する。通信回路19は、例えば、ローカル有線または無線ネットワークに接続するためのネットワーク接続、工具のRFIDタグを読み取るためのRFIDリーダ等の短距離無線インタフェース、各工具のメモリからデータを受信するための有線インタフェース、および/または工具のバーコード等の機械読み取り可能な表示情報を検出するための光学リーダのうちの1つ以上を含んでもよい。コントローラ11は、1つまたは複数の刃物台駆動装置18A(
図3参照)(少なくとも1つのアクチュエータの一例)に、工具18Cを退避位置である初期位置から、工具台18Bが第1主軸装置14に取り付けられたワークの機械加工位置またはその近傍に位置する第1プローブ30に接触するまで進み寄せるように動作させることができる。刃物台駆動装置18Aは、たとえば、電気モータ、リニアアクチュエータ、ボールねじ駆動装置を含む。コントローラ11は、工具18Cを初期位置から移動させて第1プローブ30と接触させることにより、工具のオフセット値を設定し、その後、工具をその初期位置に戻す。工作機械10は、機械加工動作のために利用されるべき1つまたは複数の他の工具について同様のプロセスを繰り返す。コントローラ11が工具のオフセット値を設定すると、ガイドブッシュ70はスプラインシャフト104上に再度取り付けられる。工作機械10は、材料および直径などのワークに関するデータ、ならびにワークを機械加工するためのプロセス命令を受信する。コントローラ11は、工具のオフセット値を含む設定データを用いて加工指令を実行し、ワークを加工する。
【0015】
図2を参照すると、加工領域12の内部が示されている。工作機械10は、第1主軸装置14と第2主軸装置16とを備えている。第1主軸装置14は、長尺のワーク、典型的にはバー材を把持して、ワークを第1刃物台18(
図3も参照)の工具によって機械加工できるようにワークを回転させる。第2主軸装置16は、第1主軸装置14に保持されたワークの端部を支持して加工を補助したり、第1主軸装置14と独立して単独で加工したりすることもできる。第2主軸装置16に把持されたワークは、第2刃物台20(
図4参照)の工具によって機械加工することができる。第1刃物台18は、第2刃物台20の工具台を含んでもよく、その逆でもよい。第1刃物台18及び第2刃物台20の正面図を
図3及び
図4に示す。
【0016】
図2を参照すると、工作機械10は、第2刃物台20に取り付けられた工具を利用して第2主軸装置16でワークを機械加工するための工作機械10の設定に利用される第2プローブ32を有する。コントローラ11は、第1主軸装置14の設定と同様に、刃物台駆動装置20Aにより工具20Cを移動させ、第2プローブ32の先端ボール40に工具20Cを接触させる。プロセッサは、工具が先端ボール40に接触すると、工具ホルダ20Bの移動および第2プローブ32からの信号に基づいて工具20Cのオフセット値を設定する。
【0017】
第1プローブ30、第2プローブ32は類似しており、
図5Aを参照すると、第1プローブ30、第2プローブ32のそれぞれが、感知および通信回路を含む本体36と、スタイラス38と、第1主軸装置14のコレットアセンブリ106(コレット109)または第2主軸装置16の第2把持部(コレット)によってワークの代わりに取り付けられるように構成されたプローブアダプタ42とを含む。スタイラス38は細長く、その先端部に先端ボール40を有する。本体36およびスタイラス38は、着脱可能に接続されてもよい。
図5Bを参照すると、特定の用途に応じて使用することができる異なるスタイラス38Aが設けられている。第1プローブ30、第2プローブ32は、既製品であってもよい。
【0018】
工作機械10の設定中、第1プローブ30、第2プローブ32は第1主軸装置14のコレットアセンブリ106のコレット109(第1把持部)および第2主軸装置16のコレット(第2把持部)にワークの代わりに取り付けられる。刃物台駆動装置18A、20Aは、第1刃物台18および第2刃物台20を回転軸に垂直なそれぞれの平面内でX1、Y1およびX2、Y2方向に移動させるように操作可能である。いくつかの実施形態では、刃物台駆動装置18A、20Aは、1つまたは複数の工具台18Bを枢動させて、ワークに接触するように工具台18Bの工具を位置決めする。コントローラ11は、第1刃物台18および第2刃物台20を自動的に移動させ、第1刃物台18および第2刃物台20の工具を第1プローブ30、第2プローブ32の先端ボール40のそれぞれと接触させるようにプログラムされる。工具が先端ボール40に接触すると、第1プローブ30、第2プローブ32は、接触を示す無線通信を通信回路19に送信する。一実施形態では、無線通信はBluetooth(登録商標)プロトコルを使用して実行される。
【0019】
コントローラ11は、工具のオフセット値を設定し、次いで、コントローラは、ワークが第1主軸装置14の第1把持部(コレット109)または第2主軸装置16の第2把持部(コレット)に把持されると、その設定を利用して工具をワークと接触させるために必要とされる位置を決定する(設定を完了することは、ユーザが、ワークの材料、ワークの長さ、およびワークの外径等のワークに関する情報を入力することを意味する)。コントローラ11は、先端ボール40の外径などの第1プローブ30、第2プローブ32のパラメータを利用して、特定の直径を有する球体に接触するためにコントローラ11が工具をX方向およびY方向にどれだけ移動させなければならないかを決定する。次に、コントローラ11は、先端ボール40の直径よりも大きさが異なる外径を有するワークに接触するように工具をX方向及びY方向にどれだけ移動させるかを決定することができる。センサ球体直径を含む第1プローブ30、第2プローブ32のパラメータは、ユーザが第1プローブ30、第2プローブ32の製造業者およびモデル番号を入力すること、および/または第1プローブ30、第2プローブ32がそれらのパラメータをコントローラ11に無線で通信することなどによって、コントローラ11に伝達される。
【0020】
より具体的には、
図6を参照すると、第1主軸装置14は、ワークを回転させ、回転軸に沿った軸方向に移動させるための少なくとも1つの駆動装置を含む。一実施形態では、少なくとも1つの駆動装置は、モータ100を有する第1駆動装置97(少なくとも1つのアクチュエータの別の一例)を含む。第1主軸装置14は、スピンドルシャフト102の形態のワーク支持シャフト(外管状シャフト)およびスプラインシャフト104の形態のワーク保持シャフト(管状シャフト)を含む主軸アセンブリ99と、スプラインシャフト104の内面と係合する第1把持部106とをさらに含む。スプラインシャフト104のうち、コレットアセンブリ106が係合される部分を第1端、回転軸15に沿う軸方向において前記第1端と反対の端を第2端と呼ぶ。コレットアセンブリ106は、スプラインシャフト104の径方向内面に係合するためのコレットアダプタ107などのアダプタと、ワークを把持するためのコレット109とを含む。コレット109は、第1把持部と呼称してもよい。スプラインシャフト104は、ワークを受け入れる内部スリーブ108を有する。モータ100は、10,000RPM以上などの高速でスピンドルシャフト102およびスプラインシャフト104を回転させることができる。
【0021】
工作機械10は、スピンドルシャフト102およびスプラインシャフト104の一方または両方などの主軸アセンブリ99の位置を検出するように構成された回転位置センサ199(
図1参照)(少なくとも1つの位置センサの一例)を含む。回転位置センサ199は、いくつかの例として、モータ100の構成要素または別個の構成要素であってもよい。コントローラ11は、回転位置センサ199からのデータを利用してワークの回転位置を決定し、モータ100を動作させてワークの回転位置を調整する。したがって、工作機械10は、モータ100を動作させて、自動運転中に第1刃物台18の工具に対して高速でワークを回転させるとともに、第1刃物台18の工具に対するワークの高精度の回転位置決めを提供する。
【0022】
一実施形態では、回転位置センサ199は、アブソリュートエンコーダおよび/またはインクリメンタルエンコーダなどのエンコーダを含む。エンコーダは、いくつかの例として、角度エンコーダおよび/またはロータリエンコーダを含み得る。回転位置センサ199は、1つ以上のセンサを含んでもよい。例えば、回転位置センサ199は、エンコーダ及びレーザ測定装置を含むことができる。レーザ測定装置は、スピンドルシャフト102のインデクサと、レーザ光源と、レーザ検出器とを含む。レーザ源はレーザをインデクサに向け、レーザはインデクサから反射し、反射されたレーザはレーザ検出器で受光される。
【0023】
一実施形態では、コントローラ11は、レーザ源及びレーザ検出器からのデータを利用して入力値を決定する。コントローラ11は、エンコーダからのデータと入力補正値とのうちの少なくとも一部に基づいて、主軸アセンブリ99および主軸アセンブリ99に把持されたワークの位置を決定する。入力補正値は、いくつかの例として、機械セットアップ動作、工具交換、または主軸アセンブリ99の回転方向の変化ごとなどに、連続的または周期的に計算され得る。
【0024】
第1主軸装置14は、スプラインシャフト104の回転を可能にする軸受アセンブリ112を有する支持アセンブリ110を含む。支持アセンブリ110は、キャリッジ114などの支持体をさらに含む。工作機械10は、工作機械10のフレーム124のレール122に沿った方向118、120にキャリッジ114を移動させるように操作可能な第2駆動装置111(少なくとも1つのアクチュエータの別の一例)を含む。第2駆動装置111は、一例として、モータ及びボールねじ伝動装置を含むことができる。スプラインシャフト104は、支持アセンブリ110に回転可能に取り付けられているが、スプラインシャフト104は、回転軸15に沿った方向118、120にも支持アセンブリ110を移動できるように支持アセンブリ110に取り付けられている。したがって、支持アセンブリ110が方向118、120へ移動すると、スプラインシャフト104、第1把持部(コレット)109、および第1把持部(コレット)109に把持されたワークもそれに伴って回転軸に沿った方向118、120へ移動する。
【0025】
スピンドルシャフト102およびスプラインシャフト104は、それらの間に、スプラインシャフト104がスピンドルシャフト102に対して回転軸に沿った方向118、120に移動することを可能にするスライド接続部130を有する。さらに、スピンドルシャフト102及びスプラインシャフト104の回転軸に沿って延在するスプラインを含む。スピンドルシャフト102及びスプラインシャフト104のスプラインによって、スピンドルシャフト102とスプラインシャフト104とが互いに回転軸方向に摺動可能であるように係合されるが、スピンドルシャフト102とスプラインシャフト104とが一体的に回転するように固定される。このようにして、スピンドルシャフト102の回転は、スプラインシャフト104の回転を引き起こす。したがって、スプラインシャフト104は、スピンドルシャフト102と一緒に回転しながら、支持アセンブリ110の移動を介して回転軸に沿った方向118、120移動できる。
【0026】
図6および
図7に見られるように、ガイドブッシュ70は、スピンドルシャフト102の貫通孔142に嵌合するような大きさの本体140を含む。ガイドブッシュ70は、径方向外方に突出してガイドブッシュ70をスピンドルシャフト102内に着脱可能に留めるロック144を有する。ロック144は、ボール146などの1つまたは複数の戻り止め部材を含む戻り止め機構145を含む。ロック144は、ボール146が半径方向外側に付勢されてガイドブッシュ70をスピンドルシャフト102内に固定する固定位置と、ボール146が半径方向内側に移動してガイドブッシュ70をスピンドルシャフト102から引き出して取り外すことができる固定解除位置とを有する。ボール146が半径方向外側の固定位置にあるとき、ボール146は、スピンドルシャフト102の半径方向内方に向いた環状の溝204(
図9参照)に係合し、ガイドブッシュ70をスピンドルシャフト102にこれらの間の相対的な軸方向運動に対して動かないように固定する。戻り止め機構145は、ボール146を半径方向外側の固定位置に固定するために締め付けられる止めねじ(押圧部材)148を含む。一実施形態では、止めねじ148は、テーパ付きカム面148Aを備えた先端部を有し、その結果、止めねじ148が螺入されると、テーパ付きカム面148Aは、ボール146の外面に係合してボール146を径方向外方に押し出し、スピンドルシャフト102の溝204内においてボールを止めねじ148のテーパ付きカム面148Aとスピンドルシャフト102とのそれぞれに押し付けてガイドブッシュ70を固定する。止めねじ148を緩めて退出させ、ボール146を半径方向内方に固定解除位置まで移動させ、ガイドブッシュ70をスピンドルシャフト102から取り外すことができる。
【0027】
ガイドブッシュ70は、ワークを受け入れる中空部152を備えたガイドコレット150を更に有している。スプラインシャフト104のコレット109(第1把持部)は、は、ワークを相対的な軸方向および回転運動に抗してスプラインシャフト104に固定するために利用される。ガイドブッシュ70のガイドコレット150は、所望の長さのガイドがガイドブッシュ70から露出して第1刃物台18の工具によって加工できるように、スプラインシャフト104の軸方向移動を介してワークが中空部152内で軸方向に移動することを可能にする。
【0028】
工作機械10を用いてワークを加工する前に、ユーザは、工作機械10の設定を行う。最初に、ユーザは、ガイドブッシュ70をスピンドルシャフト102から取り外す。次に、ユーザは、工作機械10のユーザインタフェース13を操作し、スプラインシャフト104内のコレット109(第1把持部)がスピンドルシャフト102の前端210(貫通孔142の一端)に隣接するまで、第2主軸装置16に対して、方向120に支持アセンブリ110をジョグ移動させる。方向120を前方、方向118を後方と呼び、方向120に移動することを前進、方向118に移動することを後退と呼んでもよい。次に、ユーザは、第1プローブ30のプローブアダプタ42をコレットアセンブリ106のコレット109(第1把持部)に挿入し取り付ける。ユーザはまた、第2プローブ32を第2主軸装置16の第2把持部(コレット)に取り付ける。
【0029】
プローブアダプタ42がコレットアセンブリ106のコレット109(第1把持部)を介してスプラインシャフト104に固定されると、工作機械10のコントローラ11は、第1プローブ30の先端ボール40が
図13に示される位置にくるまで支持アセンブリ110およびスプラインシャフト104を方向118に後退させ、先端ボール40は第1刃物台18の工具と径方向に位置合わせされる。そして、工作機械10のコントローラ11は、第1刃物台18をX方向及びY方向に自動的に移動させて、各工具を先端ボール40に接触させる。コントローラ11は、第1刃物台18が移動して各工具を第1プローブ30の先端ボール40と接触させ、各工具のオフセット値を設定するために、第1刃物台18の位置の変化を監視する。コントローラ11は、同様のプロセスを実行して、第2刃物台20に取り付けられた各工具を第2プローブ32の先端ボール40と接触させ、各工具のオフセット値を設定する。各工具のオフセット値を設定するコントローラの自動化されたプロセスによって、前述したように、ユーザのかなりの時間を節約できる。
【0030】
第1プローブ30の本体36は、ガイドブッシュ70の中空部152(従来のガイドブッシュの中空部と同様のサイズを有する)の直径よりも大きい直径を有し、その結果、第1プローブ30は、ガイドブッシュ70の中空部152を通ってコレット109(第1把持部)に嵌合することができず、スピンドルシャフト102の貫通孔142内に移動することができない。しかしながら、ガイドブッシュ70を取り外すことにより、第1プローブ30の本体36は、第1プローブ30の先端ボール40が第1刃物台18の工具206と径方向に一致するまでスピンドルシャフト102の貫通孔142内に引っ込めることができる。したがって、取り外し可能なガイドブッシュ70は、第1プローブ30が第1主軸装置14に取り付けられることを可能にし、工作機械10の自動化された工具のオフセット値の設定を容易にする。
【0031】
図8を参照すると、工作機械10を設定する方法200が提供され、
図9~
図13に関して説明される。方法200は、工具データおよびプローブデータを受信するステップ202を含む。データを受信するステップ202は、ユーザがユーザインタフェース13を使用して工作機械10のコントローラ11に1つまたは複数の工具および第1プローブ30に関するデータを入力することを含むことができる。工具データは、例えば、工具のタイプ、サイズ、材料、および製造業者を識別する情報を含み得る。プローブデータは、例えば、第1プローブ30の製造業者、型番、スタイラス、及び/又は無線通信プロトコルに関する情報を含むことができる。いくつかの実施形態では、工作機械10またはそのコントローラ11は、有線通信または無線通信を介して、工具データおよびプローブデータを受信する。例えば、工具のRFIDタグから工具データを受信し、Bluetooth(登録商標)接続を使用することなどによって第1プローブ30とペアリングしてプローブデータを受信する。
【0032】
図9を参照すると、ガイドブッシュ70は、スピンドルシャフト102に固定された状態で示されており、ガイドブッシュ70の戻り止め機構145は、ボール146が径方向外方に付勢されて部分的にガイドブッシュ70に対して径方向外方に突出し、部分的にスピンドルシャフト102の溝204内に入ってスピンドルシャフト102とガイドブッシュ70との両方から押し込まれてスピンドルシャフト102とガイドブッシュ70とを固定するような固定形態にある。ボール146の上半分は、溝204の径方向に延びる溝側面215と径方向に重なる。溝側面215は、環状の溝204を構成する面のうち、貫通孔142から径方向に延びる面である。ガイドブッシュ70の軸方向内端部217がスピンドルシャフト102の着座面219に着座するようにガイドブッシュ70が貫通孔142に挿入され、ボール146が溝204の径方向に延びる溝側面215に係合した状態でロック144が固定位置にあるとき、ガイドブッシュ70は、スピンドルシャフト102に対する軸方向移動に移動しないように固定される。さらに、第1刃物台18の工具206は、そのワーク係合または切削部分208がスピンドルシャフト102の前端210に近接するように配置される。
【0033】
方法200は、ガイドブッシュ70を取り外すステップ212を含む。例えば、ガイドブッシュ70を取り外すステップ212は、ユーザが止めねじ148を緩めてボール146から離して、ボール146が径方向内向きに移動して溝204から出ることを可能にするステップを含む。スピンドルシャフト102は、ガイドブッシュ70とスピンドルシャフト102との間の相対回転をさらに抑制するために、ガイドブッシュ70の軸方向キー溝213(
図7参照)に係合するキー211を含むことができる。したがって、ガイドブッシュ70を取り外すステップ212はまた、キー211を軸方向キー溝213から係合解除することを含むことができる。
図10を参照すると、スピンドルシャフト102およびスプラインシャフト104は、ガイドブッシュ70が取り外された状態で示されている。
【0034】
方法200は、
図11に示すように、スプラインシャフト104をスピンドルシャフト102に対して延出された第2位置に移動させるステップ220を含む。第2位置では、スプラインシャフト104は、スピンドルシャフト102の前端210と同じ高さであるか、又はわずかに軸方向外側若しくは内側にある前端222を有する。
【0035】
方法200は、第1プローブ30をスプラインシャフト104に接続するステップ224を含む。第1プローブ30を接続するステップ224は、第1プローブ30のプローブアダプタ42をスプラインシャフト104のコレット109(第1把持部)内に固定するステップを含むことができる。
図11は、プローブアダプタ42がコレット109内に固定された後のスプラインシャフト104を示す。
【0036】
方法200は、
図12に示されるように、スプラインシャフト104を第2位置から第1位置まで引っ込めるステップ230を含む。第1位置では、スプラインシャフト104は、それに取り付けられた第1プローブ30がスピンドルシャフト102の貫通孔142内に部分的に引き込まれるように位置決めされる。
図12に示されるように、第1プローブ30の本体36の全体は、スピンドルシャフト102の貫通孔142内に受容され、先端ボール40を含むスタイラス38の前方部分232は、スピンドルシャフト102の前端210の前方に突出する。スプラインシャフト104が第1位置にある状態で、第1プローブ30の先端ボール40は、工具206のワーク係合又は切削部分208と径方向に位置合わせされる。
【0037】
方法200は、工具206を工具の退避位置である初期位置から移動させて第1プローブ30の先端ボール40と接触させるステップ240を含む。ユーザは、ユーザインタフェースを使用して、工具206を第1プローブ30と接触させるように第1刃物台18の移動を指示することなどによって、ステップ240の操作を行ってもよい。一実施形態では、工具206は、第1刃物台18と共にX軸方向及びY軸方向(
図2参照)に移動するように取り付けられ、その結果、工具206は、第1刃物台18をX方向及び/又はY方向に移動させることによって第1プローブ30と接触する。工具206が第1プローブ30に接触すると、第1プローブ30は、通信回路19によって受信される無線通信242(
図11参照)を送信する。通信は、第1プローブ30が先端ボール40に接触する工具206を検出したことを示す。
【0038】
方法200は、工具のオフセット値を設定するステップ250を含む。工具のオフセットを設定するステップ250は、工作機械10が工具206を相対的に移動させて第1プローブ30と接触させる際に第1刃物台18のX座標、Y座標および/またはZ座標または角座標の変化を利用する。
【0039】
方法200は、工具206を初期位置に戻すステップ252を任意選択的に含む。工具206を戻すステップ252は、第1刃物台18の別の工具を第1プローブ30と接触させることができるように、工具206を邪魔にならないように取り外す。
【0040】
方法200は、別の工具を設定するかどうかを決定するステップ254を含む。その場合、方法200は、移動するステップ240、設定するステップ250、および第1刃物台18の次の工具とともに戻るステップ252の動作を実行する。
【0041】
ワークを機械加工するために利用されることになる第1刃物台18の工具のオフセット値が設定されると、方法200は、スプラインシャフト104を
図11に示される位置などのスピンドルシャフト102に対して延出された第2位置に移動するステップ256を含む。例えば、第1プローブ30の本体36がスピンドルシャフト102の前端210を越えるまでスプラインシャフト104を移動させることによって、第1プローブ30がスプラインシャフト104から取り外しやすいようにスプラインシャフト104を第2位置に移動させる。
【0042】
方法200は、スプラインシャフト104から第1プローブ30を取り外すステップ258と、スピンドルシャフト102にガイドブッシュ70を再度取り付けるステップ260とをさらに含む。方法200が完了すると、工作機械10は、機械加工命令を受信してワークを機械加工する準備が整う。
【0043】
方法200の1つまたは複数のステップまたは動作は、工作機械10の設定を自動化するために工作機械10のコントローラ11によって実行されてもよい。一実施形態では、コントローラ11は、方法200の動作を実行し、ステップ212、224、258、および260においてユーザの介入を報知する。これらのステップは、ガイドブッシュ70の取り外しおよび取り付けならびに第1プローブ30の取り付けおよび取り外しを含む。残りの動作は、ユーザの介入なしに自動化された又は自律的な方法で実行されてもよく、これは、工作機械10を設定する時間を短縮することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ11はまた、ロボットアームの動作を調整して、ガイドブッシュ70を取り外し/取り付け、第1プローブ30を取り外し/取り付けることなどによって、ステップ212、224、258、260を実行してもよい。
【0044】
図14を参照すると、上述した第1主軸装置14に多くの点で類似する主軸装置300が示されている。主軸装置300は、スピンドルシャフト304およびスプラインシャフト306を含む主軸302を含む。主軸302は、締結具などによってスピンドルシャフト304に固定されたスプラインアダプタ308を含む。スプラインアダプタ308は、スプラインシャフト306が貫通する中空部314を有する。スプラインアダプタ308は、スプラインシャフト306の雄スプライン312と係合する雌スプライン310を有する。雌スプライン310と雄スプライン312との間の係合により、スプラインシャフト306は、スピンドルシャフト304に対して軸方向内方の引っ込み方向316及び軸方向外方の伸長方向318に軸方向に移動することができる。雌スプライン310と雄スプライン312との間の係合は、スプラインシャフト306とスプラインアダプタ308との相対回転運動を阻止する。主軸装置300は、モータ320のロータをスピンドルシャフト304上に焼嵌めすることなどによってスピンドルシャフト304に接続されたモータ320を含む駆動装置301(少なくとも1つのアクチュエータの別の一例)を有する。モータ320はスピンドルシャフト304を回転させ、スピンドルシャフト304はスプラインアダプタ308を介してスプラインシャフト306を回転させる。
【0045】
主軸装置300は、スピンドルシャフト304に取り付けられ、それと共に回転する、上述のガイドブッシュ70と同様のガイドブッシュ322を含む。ガイドブッシュ70は、把持部324と協働してワーク326を支持する。把持部324は、スプラインシャフト306の内面に係合するコレットアダプタ328と、ワーク326に係合するコレット330(第1把持部)とを有する。ガイドブッシュ322も同様に、ガイドブッシュアダプタ(ワーク支持アダプタ)332と、ガイドコレット334などのワークホルダとを含む。把持部324は、ワーク326に対して軸方向及び回転方向に把持され、一方、ガイドコレット334は、ガイドブッシュ322に対するワーク326の軸方向に摺動可能である。主軸装置300は、スピンドルシャフト304を支持する軸受340、342と、スプラインシャフト306およびそれに固定されたワーク326を軸方向316、318に移動させるために軸方向316、318に移動可能な支持アセンブリ350とを含む。支持アセンブリ350は、スプラインシャフト306の回転を可能にする軸受352を有する。
【0046】
図15を参照すると、上述した主軸装置300と多くの点で類似する主軸装置400が示されており、相違点が描写されている。主軸装置400は、モータ402を含む駆動装置401(少なくとも1つのアクチュエータの別の一例)と、スピンドルシャフト404と、スピンドルシャフト404に対して軸方向に移動可能なスリーブ406とを有する。モータ402は、スピンドルシャフト404を回転させる。
【0047】
スリーブ406は、ワーク410を把持する把持部408を有し、スピンドルシャフト404は、上述したガイドブッシュ70と同様の取り外し可能なガイドブッシュ412を有する。主軸装置400は、スリーブ406を回転可能に支持するためのベアリング416を有する支持アセンブリ414を有する。支持アセンブリ414は、スリーブ406を軸方向420、422に移動させるように軸方向に移動可能である。
【0048】
スピンドルシャフト404の回転をスリーブ406の回転に変換するために、主軸装置400は、スピンドルシャフト404の端部(第2端)に取り付けられて共に回転するスピンドルギヤ424を含む。主軸装置400はさらに、スリーブ406の外側面に取り付けられたスリーブギヤ430と、スピンドルギヤ424とスリーブギヤ430とを接続する中間ギヤアセンブリ432(または中間伝達ギヤアセンブリ432)とを含む。一実施形態では、中間ギヤアセンブリ432は、第1ギヤ434と、第2ギヤ436と、一緒に回転するように相互接続されるように取り付けられた第1ギヤ434および第2ギヤ436を有する回転ギヤシャフト438とを含む。
【0049】
モータ402は、スピンドルシャフト404を回転させ、その回転により、スピンドルシャフト404に取り付けられたスピンドルギヤ424も回転させる。スピンドルギヤ424の回転は、第1ギヤ434、回転ギヤシャフト438、第2ギヤ436、スリーブギヤ430、およびスリーブ406に伝達され、第1ギヤ434、回転ギヤシャフト438、第2ギヤ436、スリーブギヤ430、およびスリーブ406を回転させる。スリーブギヤ430および第2ギヤ436は、スリーブギヤ430、第2ギヤ436の歯の間の係合を維持しながら、軸方向420、422へのスリーブ406を有するスリーブギヤ430の軸方向移動を可能にするように構成される。
【0050】
図16を参照すると、上述した主軸装置400と同様の主軸装置500が示されており、相違点が描写されている。主軸装置500は、スピンドルシャフト504を回転させるモータ502を含む駆動装置501(少なくとも1つのアクチュエータの別の一例)と、スピンドルシャフト504の端部(第2端)に取り付けられたスピンドルギヤ506とを有する。主軸装置500は、スピンドルシャフト504の外側面に取り付けられたスリーブ508をさらに含む。スピンドルシャフト504は、コレットアダプタ514およびコレット516(第1把持部)を有する把持部512を含む。コレット516(第1把持部)は、ワーク518に係合し、スピンドルシャフト504に対してワーク518を回転方向及び軸方向に相対的に回転しないように把持する。主軸装置500は、モータ502およびスピンドルシャフト504を軸方向520、522に移動させることによって、ワーク518の軸方向位置を調整する。
【0051】
主軸装置500は、上述したガイドブッシュ70と同様のガイドブッシュ530を備えたスリーブ508を有している。ガイドブッシュ530は、ガイドコレット534を有する。ガイドブッシュ530は、ワークを支持しながら、ワーク518がスリーブ508に対して軸方向に移動することを可能にする。
【0052】
スピンドルシャフト504とともにスリーブ508を回転させるために、主軸装置500は、スピンドルギヤ506と係合する第1ギヤ542と、スリーブギヤ510と係合する第2ギヤ544と、第1ギヤ542と第2ギヤ544とを接続する回転ギヤシャフト546とを含む中間ギヤアセンブリまたは中間伝達ギヤアセンブリ540を含む。このようにして、スピンドルシャフト504の回転は、スピンドルギヤ506、第1ギヤ542、回転ギヤシャフト546、第2ギヤ544、スリーブギヤ510、およびスリーブ508に伝達され、スピンドルギヤ506、第1ギヤ542、回転ギヤシャフト546、第2ギヤ544、スリーブギヤ510、およびスリーブ508を回転させる。第2ギヤ544およびスリーブギヤ510は、スピンドルシャフト504が軸方向520、522に移動されると、スリーブギヤ510に対する第2ギヤ544の軸方向移動を可能にするように構成される。
図16では、支持アセンブリ550は静止していてもよく、スリーブ508の回転を可能にする軸受552を含む。
【0053】
図17を参照すると、上述した主軸装置と多くの点で類似する主軸装置600が示されており、相違点が描写されている。主軸装置600は、スピンドルシャフト604およびスリーブ610を含む。主軸装置600は、把持部606を含むスピンドルシャフト604を回転させるように操作可能な第1モータ602を含む駆動装置605(少なくとも1つのアクチュエータの別の一例)を有する。把持部606は、ワーク608を把持し、スピンドルシャフト604に対して回転方向及び軸方向に回転しないように固定する。第1モータ602およびスピンドルシャフト604は、ワーク608の軸方向位置を調整するために軸方向607、609に軸方向に移動可能である。
【0054】
主軸装置600の駆動装置605(少なくとも1つのアクチュエータの別の一例)は、プーリ618と係合するタイミングベルト616を駆動する駆動プーリ614を有する第2モータ612を含む。プーリ618はスリーブ610に取り付けられている。したがって、第2モータ612はスリーブ610を回転させ、第1モータ602はスピンドルシャフト604を回転させる。第1モータ602および第2モータ612は、特定の用途に必要とされるように、同一または異なる速度で動作されてもよい。
【0055】
スリーブ610は、上述したガイドブッシュ70と同様のガイドブッシュ630を支持する。ガイドブッシュ630は、ワーク608がスリーブ610に対して軸方向に移動することを可能にする。主軸装置600は、静止したままであり、スリーブ610を回転可能に支持するベアリング634を含む支持アセンブリ632を有する。
【0056】
図6及び
図18を参照すると、スピンドルシャフト102とスプラインシャフト104との間のスライド接続部130は、様々な構成を有することができる。一実施形態では、スライド接続部130は、スプラインシャフト104およびスピンドルシャフト102のスプラインナット702を含むボールスプライン結合700を含む。例えば、スプラインナット702は、スピンドルシャフト102の管状部材に取り付けられてもよい。
【0057】
スプラインナット702は、スプラインナット702の内壁部分に形成されるスプライン704を含む。スプラインシャフト104は、その外周面にスプライン708を有する。ボールスプライン結合700は、スピンドルシャフト102とスプラインナット702との間に形成されたポケット712内に受け入れられたボールベアリング710のような複数のローラ要素を有している。ボールベアリング710は、ポケット712内で転動して、スピンドルシャフト102およびスプラインシャフト104が相対的に軸方向に移動することを可能にすることができる。
【0058】
スプラインナット702は、ボールベアリング710に対して径方向内向きに圧縮力を加える。一手法では、スプラインナットを加熱してスプラインナットを膨張させ、スプラインシャフトとボールベアリングが組まれた後に冷却する。そのあと、常温状態になるとスプラインナットがわずかに(例えば、数ミクロン)収縮するため、ボールベアリングに圧縮力が発生する。
【0059】
スプラインシャフト104、ボールベアリング710、およびスプラインナット702がしっかりと係合されると、スプラインシャフト104およびスプラインナット702を相対的に回転しないようにしっかりと固定される。そのようなしっかりとした係合によって、ボールスプライン結合700を介してスピンドルシャフト102の回転をバックラッシュなしにスプラインシャフト104に伝達することができる。ボールベアリング710は、スプラインシャフト104及びスプラインナット702としっかりと係合しているにもかかわらず、ポケット712の表面に沿って転動してスプラインシャフト104及びスプラインナット702の相対的な軸方向運動を可能にすることができる。バックラッシュのないボールスプライン結合700によって、スプラインシャフト104に固定されたワークの非常に正確な回転位置を決定することを可能にする。
【0060】
いくつかの実施形態では、ボールスプライン結合700は、スナップリング720、シール722、およびリテーナ724などのスペーサを含む。リテーナ724は、ボールベアリング710間の接触を制限する。
【0061】
図19を参照すると、上述のボールスプライン結合700と多くの点で同様であり、工作機械10又は本明細書に開示される別の工作機械と共に利用することができるボールスプライン結合800の断面が示されている。ボールスプライン結合800は、スプラインナット802と、スプラインシャフト804と、ボールベアリング806とを備えている。スプラインナット802はその内周面にスプライン810を有し、スプラインシャフト804は、スプラインシャフト804の凹部814間の凸部に設けられたスプライン812を有する。スプラインナット802の内周とスプラインシャフト804の外周との間に、ポケット816が設けられ、その中で、ボールベアリング806は、スプラインナット802およびスプラインシャフト804の相対的な軸方向移動時に転動する。
【0062】
スプラインナット802のスプライン810は、テーパ側面部分820A、820Bなどのテーパ側面部分820を有し、スプラインシャフト804のスプライン812は、表面部分824を有する。ボールベアリング806は、スプラインシャフト804およびスプラインナット802の相対的な回転軸に沿う軸方向移動に伴って、テーパ側面部分820A、820Bおよびテーパ側面部分820に沿って転動する外面822を有する。
【0063】
スプラインナット802が方向830に回転すると、テーパ側面部分820Aはボールベアリング806Aの外面822に係合する。テーパ側面部分820Aは、ボールベアリング806Aを径方向内方にカム作用で付勢してスプラインシャフト804とより隙間なく係合させる。ボールベアリング806Aは、カム作用に強固に抵抗し、スプラインシャフト804を、スプラインナット802と共に方向830に回転させる。逆に、スプラインナット802を方向832に回転させると、テーパ側面部分820Bがボールベアリング806Bと係合し、ボールベアリング806Bをカム作用により径方向内方に付勢してスプラインシャフト804とより隙間なく係合させる。ボールベアリング806Bは、カム作用に強固に抵抗し、スプラインシャフト804を、スプラインナット802と共に方向832に回転させる。
【0064】
図20Aを参照すると、第1主軸装置14のコレット109(第1把持部)、第2主軸装置16、第1刃物台18、および、第2刃物台20が示されている。第1刃物台18は、第1主軸装置14によって保持されたワークを機械加工するための1つ以上の工具ホルダを含み、第2刃物台20は、第2主軸装置16によって保持されたワークを機械加工するための工具を受容する1つ以上の工具ホルダを含む。例えば、第1刃物台18は、工具ホルダアセンブリ214A、214C、214D、214E、工具台18B、および、工具取付ブロック18Dを含み、個々の工具ホルダ5は、第1主軸装置14によって保持されたワークを機械加工するために工具7が取り付けられている。各工具ホルダ5は、それぞれの工具7を受け入れ、工具7を工具ホルダ5内に固定するための構造を有する。例えば、工具ホルダアセンブリの工具台18B、工具取付ブロック18Dはそれぞれの工具を受容するためのチャネルと、工具7をチャネル内に固定するように締め付けられる係止部材とを含む。さらなる例として、工具ホルダアセンブリ214A、214C、216B、214D、216A、および214Eの工具ホルダは、それぞれのビットを工具ホルダ5内に固定するためのコレットを含んでもよい。
【0065】
工具ホルダアセンブリ214Eは、第2刃物台20の構成要素であってもよい。第2刃物台20は、第2主軸装置16に把持されたワークを加工するための工具ホルダアセンブリ216A、216Bを含む。
図20Aに示されるように、第1主軸装置14、第2主軸装置16、ならびに、第1刃物台18および第2刃物台20は、軸X1、X2、Y1、Y2、Z1、Z2を中心として、方向B1、C1、C2に、ワークおよび工具を移動させるように動作可能である。第1主軸装置14がワークをZ1軸回りにC1方向に回転させ、Z1軸に沿って移動させるのに対して、第2主軸装置16は、ワークをZ2軸回りにC2方向に回転させ、Z2軸に沿って移動させ、X2軸に沿って移動させる。
【0066】
図20Bに関して、工作機械10は、工作機械10の設定中に第1主軸装置14の第1プローブおよび第2主軸装置16の第2プローブを較正するために工作機械10が使用する加工領域12内の治具913を含む。治具913は、コントローラ11がプローブの位置を計算する際に利用するための基準位置を提供する、工作機械10のメモリ115に記憶された既知の位置を有する較正面を有する。
【0067】
複数のプローブは、第2主軸装置16の第2プローブ850と、第1主軸装置14の第1プローブ907(
図22参照)とを含んでいてもよい。第1プローブ907、第2プローブ850は、それぞれ上述の第1プローブ30、第2プローブ32と同様である。第2主軸装置16は、第2プローブ850および治具913の遮られないビューを提供するために、
図20Bには示されていない。図示の形態では、治具913は第1刃物台18に取り付けられており、X1軸およびY1軸に沿って移動可能である。一例として、治具913(
図20B参照)は、工具ホルダアセンブリ214D、216Aを支持するブロック本体218(
図20Aおよび20B参照)(刃物台の別の一例)に取り付けられてもよい。コントローラ11は、刃物台駆動装置18Aなどの治具アクチュエータを動作させて治具913を移動させることによって、または第2駆動装置111などの第1主軸装置アクチュエータを動作させて第1主軸装置14およびそれに取り付けられた第1プローブ907を移動させることによって、あるいはその両方を行って第1プローブ907および治具913を互いに接触するように移動させることによって、第1プローブ907を較正する。較正プロセスは自動化されてもよく、第1プローブ907のZ位置ならびに第1プローブ907の軸方向に延びる中心線(第1プローブ907の位置を代表する基準)を決定することを含む。第1プローブ907と治具913とを互いに接触させるのに必要な相対運動は、治具913をX1軸および/またはY1軸に沿ってシフトさせ、第1プローブ907をZ1軸に沿ってシフトさせることによって生成することができる。
【0068】
第1プローブ907が較正されると、コントローラ11は、治具913を邪魔にならないように移動させ、次いで、第1主軸装置14および刃物台駆動装置18Aを相対的に移動させて、第1刃物台18の工具を第1プローブ907の先端911と接触させるように動作可能である。先端911は、一実施形態では、図示される立方体構成等の多角形断面構成を有する(
図22の先端911の側面図および
図25Bの先端911の立面図を参照)。第1プローブ907の先端911が工具7の1つに接触すると、第1プローブ907は無線周波数信号を送信し、可聴表示、例えばビープ音を発する。コントローラ11は、通信回路19を介して無線周波数信号を受信し、第1プローブ907に対する工具ホルダ5の位置の変化、ならびに第1プローブ907の較正からのデータを使用して、X1軸、Y1軸、およびZ1軸に対する各工具のXオフセット値、Yオフセット値、および/またはZオフセット値など、工具の工具オフセット値を決定する。したがって、上述の自動較正手順により、コントローラ11は、工具7と主軸装置に保持されたワークとの間の異なる直交軸における正確な距離を迅速に学習して、その正確な機械加工を可能にすることができる。
【0069】
一実施形態では、工作機械10の工具オフセット値は、工具が取り付けられる刃物台18の端面から推奨される突き出し長さに対するズレをオフセットする値を含む。例えば、
図21を参照すると、工具950の工具オフセット値は、工具950の先端973と工具取付ブロック18Dの前縁975から推奨される工具950の先端973の突き出し長さ971に対するズレをオフセットするX軸オフセット値を含んでもよい。工具取付ブロック18Dの前縁975は、刃物台18を原点に移動させたときの主軸装置の回転軸中心までの既知の位置を有する。工具950の工具オフセット値はまた、例えば、Y1軸に沿った工具の先端973の位置を示すY軸工具オフセット値を含んでもよい。コントローラ11は、オペレータがユーザインタフェース13を用いて工具950が保持される工具取付ブロック18Dのチャネル956を入力することに応答して、Y軸工具オフセット値を決定してもよい。工具オフセット値はまた、Z1軸に沿った工具のZ軸オフセット値を含んでもよい。
【0070】
オペレータは、工具オフセット値に関連するユーザ入力をユーザインタフェース13に提供することができる。一実施形態では、ユーザ入力は、工作機械10の1つ以上の工具のZシフト距離を含んでもよい。例えば、マスター工具が左利き用工具であり、第2工具が右利き用工具である場合、オペレータは、左利き用マスター工具に対する第2右利き用工具のZシフト距離を提供することができる。このようにして、コントローラ11は、工具の先端973が、Z1軸に沿って左手用マスター工具とは異なる位置で右手用工具に接触することを期待する。
【0071】
図20Cを参照すると、このプロセスの多くの態様を自動化する工作機械10をセットアップするための方法900が提供される。コントローラ11は、オペレータによる特定の活動(例えば、動作902、903、904、920、922、および924)を促すことと、決定動作908、第1決定動作908Aを含むプローブ較正および工具セットアップ動作905を自律的に実行することとを含む、方法900のステップを促すかまたは実行するように動作可能である。以下の説明は、第1主軸装置14および第1プローブ907に対する方法900を説明するが、方法900は、第1主軸装置14、第2主軸装置16、第1プローブ907、および第2プローブ850の両方を用いて実行され得ることが理解されるであろう。あるいは、方法900は、第1主軸装置14および第1プローブ907に対して実行され、次いで、第1プローブ907を第1主軸装置14から第2主軸装置16に移送した後に、第2主軸装置16および第1プローブ907に対して再び実行されてもよい。
【0072】
方法900は、工作機械10のオペレータが、特定のワークを機械加工するために、1つ以上の工具を第1刃物台18の工具ホルダ5に設置する工具設置作業902を含む。
図20Aおよび
図21を参照すると、工具取付ブロック18Dが、その中に受け入れられた工具950、952、954とともに示されている。工具取付ブロック18Dは、それぞれ、工具950、952、954のうちの個々のものをその中に受容するためのスロットまたはチャネルを含む工具ホルダを有するブロックである。例えば、工具取付ブロック18Dは、凹部958と、凹部958の両側の壁960、962とを有するスロットまたはチャネル956を有する。工具954は、チャネル956内に受容され、壁960、962は、工具954をX1軸に沿ってシフトするように拘束する。
【0073】
工具取付ブロック18Dの工具ホルダ5はそれぞれ、ロックダウンウェッジバー966などのクランプロックを含み、ロックダウンウェッジバー966を開位置またはロック解除位置からロック位置にシフトするための止めねじ968、969などの1つまたは複数のアクチュエータを有する。ロック解除または開位置では、ロックダウンウェッジバー966は、チャネル壁960、962のうちの1つに隣接し、それに対して持ち上げられ、工具954がチャネル956に沿って軸方向970、972に軸方向にシフトされることを可能にする。係止構成では、止めねじ968および969は、締め付け方向に回転させられ、ロックダウンウェッジバー966をチャネル956の中に下方に駆動し、工具954をチャネル956内に締め付ける。1つのアプローチでは、ロックダウンウェッジバー966は、工具954を壁960に対してしっかりと押圧し、工具954をチャネル956内での移動に対して固定するように、工具954と壁962との間で留めておく。別の手法では、クランプロックは、止めねじ968、969を締め付けることによってロック部材が工具954のシャンクをロック部材とチャネル956の床との間にクランプするように、
図21のページの中への方向に工具954に重なるロック部材を有する。
【0074】
工具設置作業902は、チャネル956内に工具954を位置決めすることと、タッチオフ治具980などの工具設定治具を使用してチャネル内に工具954を位置決めすることとを含むことができる。タッチオフ治具980は、工具取付ブロック18D上に嵌合し、工具954を工具取付ブロック18Dに対して既知の位置に設定し、それにより、コントローラ11は、決定動作908中に、工具取付ブロック18Dをシフトさせて、切削先端982を第1プローブ907の立方体の先端911と接触させることができる。
【0075】
図21を参照すると、タッチオフ治具980は、工具取付ブロック18Dの片側の周囲に延在する、第1治具配置部981等の第1ロケータと、工具取付ブロック18Dの反対側の周囲に延在する、第2治具配置部983等の第2ロケータと、工具取付ブロック18Dの正面にわたって延在する、細長い接続部984とを含む。第1治具配置部981および第2治具配置部983は、工具取付ブロック18Dの幅に一致する距離1000だけ分離される。工具954が工具取付ブロック18Dに固定して取り付けられると、工具954は、第2治具配置部983によって係合される工具取付ブロック18Dの前縁975から固定された所定の距離の工具ロケータ部988aを有する。工具設置作業902の一部として、ユーザは、工具954を軸方向970に移動させて、切削先端982を工具ロケータ部988の平坦面1002に当接させる。切削先端982と工具ロケータ部988との当接により、切削先端982は、第2治具配置部983によって係合された工具取付ブロック18Dの側面から固定された所定の距離に位置決めされる。次いで、ユーザは、止めねじ968、969を締め付けて、工具954を定位置に固定する。切削先端982は、タッチオフ治具980を介して工具取付ブロック18Dに対して所定の位置に設置されるので、コントローラ11は、タッチオフ治具980によって設定された工具954の位置に対応する近似工具オフセットで工具取付ブロック18Dを移動させることができる。
【0076】
方法900は、ガイドブッシュ70が第1主軸装置14から取り外されるガイドブッシュ取り外しステップ903と、
図9~
図11に関して上述した動作などを使用して、第1プローブ907が第1主軸装置14のコレット109(第1把持部)に取り付けられるプローブ取り付けステップ904とを含む。
【0077】
工具が工具ホルダに設置され、第1プローブ907が第1主軸装置14に取り付けられると、工作機械10のオペレータは、工作機械10の自動セットアップを進める準備ができているという指示をコントローラ11に提供するユーザ入力をユーザインタフェース13に工作機械10が提供する。この点に関して、コントローラ11は、ユーザ入力を受信すると、動作905が完了するまで、後続のユーザ関与なしに、プローブ較正および工具セットアップ動作905を実行することができる。
【0078】
プローブ較正および工具セットアップ動作905のステップは、治具913を使用するプローブ較正動作906を含む。第1プローブ907は、コレット109(第1把持部)にクランプされるように構成されたアダプタ907Aを有する。アダプタ907Aがコレット109(第1把持部)に取り付けられると、コントローラ11は、第1プローブ907およびアダプタ907Aの型/モデルに基づいて、第1プローブ907の大まかな位置データ(例えば、Z軸オフセットおよび中心線値)を有することができる。プローブ較正動作906は、工作機械10における第1プローブ907の位置決めを高レベルの精度で微調整または決定するために実行される。プローブ較正動作906は、第1プローブ907および第1主軸装置14のアセンブリにおける寸法変動および/または累積を補償し、ならびに第1プローブ907の位置および配向の高精度知識を提供することができる。コントローラ11は、その後、プローブ較正動作906中に決定された第1プローブ907の高精度位置データを決定動作908のために使用し、ここで、以下でより詳細に説明するように、工作機械10の工具に対する工具オフセット値が決定される。
【0079】
図22を参照すると、第1プローブ907は、以下でより詳細に説明するように、工作機械10の治具913によって接触されるための立方体の先端911を含む突出スタイラス909を有する。治具913は、治具本体1037と、第1主軸装置14と共に使用するために治具本体1037の一端から突出する第1精密ピン1020と、第2主軸装置16と共に使用するために治具本体1037の他端から突出する第2精密ピン1022とを含む。なお、第2主軸装置16が存在しない工作機械10においては第2精密ピン1022が省略されてもよい。第1精密ピン1020と、第2精密ピン1022とは、高精度の円筒形外面1026、1028および平坦な端面1030、1032を有する。治具913は、
図20Aに見られるように、ピン1036、1038、位置合わせシム1040、および治具913をブロック本体218に固定するための取付けボルト1042を含む位置合わせ部材を含むことができる。治具913は、第1精密ピン1020の中心軸1043および第2精密ピン1022の中心軸1041が第1主軸装置14および第2主軸装置16のZ1軸およびZ2軸と平行になるように、工作機械10に設置されたブロック本体218に固定される。
【0080】
プローブ較正動作906において、コントローラ11は、第2刃物台20およびそれに取り付けられた治具913をX1軸および/またはY1軸に沿ってシフトさせて、第1精密ピン1020の中心軸1043を第1主軸装置14の回転軸15と同軸整列させる。スプラインシャフト104は、
図12および
図13の位置と同様の後退位置にあり、治具913が
図22に示される同軸位置に移動される際に、立方体の先端911を治具913の邪魔にならない位置に配置する。治具913が第1プローブ907および回転軸15と位置合わせされると、コントローラ11は、第1主軸装置14の第2駆動装置111を動作させ、それにより、スプラインシャフト104および第1プローブ907は、立方体の先端911の平坦な先端面1064が第1精密ピン1020の平坦な端面1030に接触するまで、方向1050に軸方向に前進する。接触すると、第1プローブ907は、第1プローブ907の送信器1056を介して工作機械10の通信回路19に無線周波数信号を送信する。コントローラ11は、治具913の既知の位置及びスプラインシャフト104のZ位置の変化に基づいて、第1プローブ907のZ位置を決定する。
【0081】
プローブ較正動作906において、コントローラ11は、第1プローブ907の中心線1045を決定する。1つの手法では、コントローラ11は、治具913を回転軸15との同軸整列から横方向にシフトさせ、次いで、コントローラ11は、スプラインシャフト104を軸方向に前進させて、立方体の先端911が第1精密ピン1020と半径方向に重なるまで第1プローブ907を方向1050にシフトさせる。次いで、コントローラ11は、第1精密ピン1020の円筒形外面1026が立方体の先端911の平坦な側面1062に接触するまで、治具913を径方向1082に移動させる。接触すると、第1プローブ907は、コントローラ11が平坦な側面1062の位置を決定するために使用する無線周波数信号を送信する。
【0082】
図24を参照すると、治具913が下向きの径方向1082に移動することにより、立方体の先端911の上向きの平坦な側面1062が円筒形外面1026の第1象限1072に接触する。四分円という用語は、中心軸1043の周りに90度延びる円筒形外面1026の弓形表面部など、円筒形外面1026の4分の1を説明するために使用される。プローブ較正動作906において、コントローラ11は、治具913をX1方向およびY1方向に、すなわちX1軸およびY1軸に沿って、立方体の先端911の周りに再配置させ、立方体の先端911の平坦な側面のうちの異なる1つから半径方向外側に、例えば平坦な側面1063の下に配置させる。例えば、治具913が立方体の先端911の下に位置決めされると、コントローラ11は、第1精密ピン1020を方向1083に上向きに移動させて、下向きの平坦な側面1063が円筒形外面1026の第2象限1072に接触するようにする。コントローラ11は、第1精密ピン1020の円筒形外面1026の象限1074、1076を第1プローブ907の他の平坦な側面1065、1067(
図25B参照)と接触させるために、治具913を第1プローブ907の周りでそのいずれかの側に移動させることができる。次いで、コントローラ11は、X1軸およびY1軸に対する第1プローブ907の中心線(第1プローブ907の位置を代表する基準)の正確な位置を、平坦な側面1062と1063との間の中間、および平坦な側面1065と1067との間の中間として決定することができる。
【0083】
1つの手法では、コントローラ11は、上述のように治具913と第1プローブ907とを互いに接触させ、第1プローブ907を180°回転させることによって第1基準中心線を決定し、次いで、上述のように治具913と回転させた第1プローブ907とを互いに接触させることによって第2基準中心線を決定する。次いで、コントローラ11は、第1中心線および第2中心線の位置データを平均化することなどによって、第1および第2基準中心線を使用して第1プローブ907の中心線を決定することができる。さらには、第1プローブ907の平坦な側面1062、1063、1065、1067がX軸またはY軸のいずれかに垂直になるように、コントローラ11は、第1プローブ907を回転させることができる。すなわち、プローブ較正動作906は、第1主軸装置14に対して治具913を相対的に移動させて第1プローブ907に治具913を当接させることにより、第1プローブ907の姿勢を調整することをさらに含んでもよい。
【0084】
プローブ較正動作906を介して第1プローブ907が較正されると、コントローラ11は、次いで、工具オフセット値の設定動作908に進み、コントローラは、1つ以上の工具のための1つ以上の工具オフセット値を決定する。1つのアプローチでは、工具オフセット値の設定動作908は、ユーザによって選択されたマスター工具の工具オフセット値が決定される第1設定動作908Aと、1つ以上の工具に対する1つ以上の工具オフセット値が決定される第2設定動作910とを含む。工具オフセット値は、他の工具の前にマスター工具について決定される。
【0085】
マスター工具は、ワークを面削りするために使用される対向工具であってもよく、工具オフセット値は、マスター工具のZ軸オフセット値を含む。対向工具のZ軸オフセット値は、ワークから機械加工される部品のZ軸(すなわち、回転軸15)に沿ったZ=0位置を設定するように決定される。1つの手法では、未加工ワーク(例えば、棒材)の端部の正面切削または正面削りが、ワークの任意の他の機械加工の前に行われる。未加工ワークを正面切削することによって、機械加工プロセスは、工作機械10のX1軸およびY1軸に対して正確な清浄なワーク端面から開始することができる。対向工具によって切削されるワークの端面の位置は、機械加工される部品に対してZ=0であるので、工作機械10は、対向工具のZ軸位置からZ軸工具オフセット値を測定することによって、残りの工具に対して高い精度の工具オフセット値を提供する。方法900は、マスター工具がワークを正面切削することを含んでもよく、またはマスター工具は、方法900の完了時にワークを正面切削してもよい。
【0086】
より具体的には、
図25Aを参照すると、オペレータは、工具18Cがマスター工具であるというユーザ入力を工作機械10に入力している。第1決定動作908Aの一部として、コントローラ11は、工具18Cの表面1102が回転軸15に沿って立方体の先端911の平坦な先端面1064に重なるように、工具18CをY1軸(
図20A参照)に沿って方向1100に移動させる。表面1102は、一例として、工具18Cの切削先端1080(
図25B参照)の表面であってもよい。次に、コントローラ11は、第1プローブ907の立方体の先端911の平坦な先端面1064が工具18Cの表面1102に接触するまで、第1プローブ907を方向1166に軸方向に移動させる。そのような接触時に、第1プローブ907は、コントローラ11によって受信される無線周波数信号を送信し、コントローラ11は、Z1軸に沿った工具18CのZ軸オフセットを決定するためにそれを使用する。
【0087】
Z軸マスター工具オフセットを決定した後、コントローラ11は、第1プローブ907および/または工具18Cを移動させて、工具18CのX軸オフセットを決定する。例えば、コントローラ11は、工具18CをY1軸に沿った方向1106(
図25A参照)およびX1軸に沿った方向1108(
図25B参照)にシフトさせて、工具18Cを立方体の先端911の邪魔にならないように移動させてもよい。次に、コントローラ11は、第1プローブ907をZ1軸に沿って方向1066にさらに移動させて、工具18Cの切削先端1080を第1プローブ907の立方体の先端911と垂直に整列させる。次に、コントローラ11は、切削先端1080が立方体の先端911の平坦な側面1062に接触するまで、工具18Cを経路1110に沿って下方に移動させる。接触すると、第1プローブ907は、コントローラ11によって受信され、X1軸に沿った工具18Cの工具オフセット値を決定するために使用される無線周波数信号を送信する。いくつかのアプローチでは、第1決定動作908Aはまた、Y1軸に沿った工具18Cの工具オフセット値を決定するために、切削先端1080を立方体の先端911の上部平坦な側面1062と接触させるように、経路1112に沿って工具18Cを移動させることを含んでもよい。
【0088】
コントローラ11がマスター工具の1つ以上の工具オフセット値を決定すると、コントローラ11は、1つ以上の工具のための1つ以上の工具オフセット値を決定するために、工具オフセット値の決定動作910を行う。工具オフセット値の決定動作910は、マスター工具18Cについて上述した技術と同様の方法で第1プローブ907が工具の各々と接触するように、コントローラ11が第1プローブ907および/または工具を移動させることを含む。次いで、コントローラ11は、第1決定動作908Aで決定されたマスター工具18Cの工具オフセット値と、X1、Y1、および/またはZ1軸に沿って第1プローブ907および/または工具が移動した距離とを使用して、工具の工具オフセット値を計算する。
【0089】
図20Aを参照すると、1つのアプローチでは、コントローラ11は、工具台18B、工具取付ブロック18Dの工具に対するX軸およびZ軸工具オフセット値、工具ホルダブロック214Aの工具に対するX軸工具オフセット値、工具ホルダアセンブリ214Eの工具に対するZ軸工具オフセット値、工具ホルダアセンブリ214Dの工具に対するX軸およびZ軸工具オフセット値、および工具ホルダアセンブリ214Cの工具に対するZ軸工具オフセット値を決定することの一部として、第1プローブ907および第1刃物台18を移動させて、第1プローブ907および工具を互いに接触させる。
【0090】
コントローラ11は、治具913を使用するプローブ較正動作906と、較正された第1プローブ907を使用する工具オフセット値の決定動作908とを介して、工作機械10内の工具の位置を自律的に決定し、メモリ115に記憶する。次に、コントローラ11は、(例えば、ユーザインタフェース13によって表示されるグラフィカルユーザインタフェースを介して)ユーザに、第1プローブ907を第1主軸装置14のコレット109(第1把持部)から除去し920、ガイドブッシュ70を接続する922ように促し得る。ガイドブッシュ70が設置されると、コントローラ11は、ワークを第1主軸装置14のコレット109(第1把持部)を取り付ける924ようにユーザに促してもよい。方法900の前、間、または後に、ユーザは、外径などのワークに関する情報をコントローラ11に提供し、それにより、コントローラ11は、工具オフセット情報およびワーク外径を使用して、工具を前進させてワークと接触させることができる。
【0091】
第2主軸装置16がワークを機械加工するために使用される場合、第1プローブ907と同一の先端911を有する第2プローブ850は第2主軸装置16に設置され、方法900は、当該第2プローブ850および第1主軸装置14に関して上述したプローブ較正動作906と同様の方法で、治具913の第2精密ピン1022を使用して当該第2プローブ850を較正することを含む。本方法は、第1主軸装置14の工具に関して上述した決定動作908と同様に、工具ホルダアセンブリ216A、216Bの工具など、第2主軸装置に関連付けられた工具の工具オフセット値を決定する決定動作908をさらに含む。いくつかの状況では、方法900は、第1主軸装置14およびその工具が使用されない場合、第2主軸装置16に対して方法900の動作を実行することのみを含むことができる。
【0092】
図26A~
図26Dを参照すると、上述したタッチオフ治具980と多くの点で類似している調整可能なタッチオフ治具1200が示されている。タッチオフ治具1200は、第1治具位置決め部1206を伴う本体1202を有する。タッチオフ治具1200は、第2治具位置決め部1208と、工具位置決め部1204と、細長い接続部1210とをさらに含む。タッチオフ治具1200は、同じ機械の異なる工具取付ブロックまたは異なる機械の工具取付ブロックなど、様々な幅の工具取付ブロック上に取り付けられるように調整可能である。タッチオフ治具1200はまた、所与の工具ホルダ内に受容される異なるサイズの工具に適応するように調節可能である。
【0093】
タッチオフ治具1200は、工具位置決め部1204と本体1202との間の第1スライド接続部1212と、第2治具位置決め部1208と本体1202との間の第2スライド接続部1214とを含む。第1スライド接続部1212および第2スライド接続部1214は、工具位置決め部1204および第2治具位置決め部1208が本体1202に対して独立して移動することを可能にする。一実施形態では、第1スライド接続部1212、第2スライド接続部1214は、チャネル1216と、チャネル1216内の工具位置決め部1204の細長い部1220と、チャネル1216内の第2治具位置決め部1208の細長い部1224とを含む。タッチオフ治具1200は、本体1202に対して工具位置決め部1204および第2治具位置決め部1208を固定するためのロックを含む。一実施形態では、ロックは、工具位置決め部1204の止めねじ1230と、第2治具位置決め部1208の止めねじ1232とを含む。
【0094】
図26Aを参照すると、工具位置決め部1204および第2治具位置決め部は、第1治具位置決め部1206と第2治具位置決め部1208との間に第1距離1240が存在するような後退位置で示されている。第1距離1240は、第1治具位置決め部1206と第2治具位置決め部1208とが標準的な工具取付ブロックの両側に位置付けられることを可能にするようにサイズ決定され得る。
【0095】
図26Bでは、止めねじ1232が緩められ、第2治具位置決め部1208が第1治具位置決め部1206から離れて移動され、止めねじ1232が締め付けられている。
図26Bの構成では、第1治具位置決め部1206および第2治具位置決め部1208は、第1距離1240よりも長い第2距離1242を有する。これにより、タッチオフ治具1200は、
図26Aの構成よりも
図26Bの構成の方が広い工具取付ブロックに取り付けることができる。
【0096】
図26Cを参照すると、工具位置決め部1204および第2治具位置決め部1208が本体1202に対して後退している、
図26Aと同じ構成のタッチオフ治具1200が示されている。工具位置決め部1204は、工具取付ブロック接触面1254から長手方向に距離1252だけ離れた工具接触面1250を有する。タッチオフ治具1200が工具取付ブロックに取り付けられると、ユーザは、工具取付ブロック内の工具を移動させて、工具の先端を工具位置決め部1204と接触させてもよい。タッチオフ治具1200は、工具位置決め部1204に接触する工具の先端が、工具接触面1250と工具取付ブロック接触面1254との間の距離1252により、工具取付ブロックの側面から距離1252になるように構成される。このようにして、ユーザがタッチオフ治具1200を使用して工具取付ブロックに工具を設置する場合、コントローラ11が第1プローブ907を移動させて工具と接触させると、工具は、コントローラ11によって予想される大まかな位置を有することになる。これにより、タッチオフ治具1200は、工具ホルダ内の工具を所定の位置に位置決めすることによって、工具オフセット値の正確かつ効率的な決定を容易にする。コントローラ11は、コントローラ11が予期する前に(例えば、工具先端が工具取付ブロックから外側に離れすぎていた)、またはコントローラ11が予期した後に(例えば、工具先端が工具取付ブロック内で内側に離れすぎていた)、第1プローブ907が工具に接触する場合等、工具が不正確に設置されている場合、ユーザに警告してもよい。
【0097】
図26Cおよび26Dを参照すると、止めねじ1230が緩められ、工具位置決め部1204が第1治具位置決め部1206から離れるように移動され、止めねじ1230が締められて、タッチオフ治具1200を
図26Dの伸長位置にロックする。工具位置決め部1204が伸長位置にある状態で、タッチオフ治具1200は、工具位置決め部1204の工具接触面1250と第1治具位置決め部1206の工具取付ブロック接触面1254との間に距離1260を有する。それによって、工具位置決め部1204は、特定の実施形態に望まれるように、より長い工具を工具ホルダ内に収容するために、または工具の先端を工具取付ブロックからさらに外側に位置決めするために、延長され得る。
【0098】
本開示の一態様によれば、管状シャフトと、外管状シャフトと、外管状シャフトによって支持されるワークを加工可能な少なくとも1つの工具を保持するための工具ホルダとを含むスイス型工作機械が提供される。工作機械は、管状シャフト及び外管状シャフトを軸の周りに回転させる駆動装置を備えている。管状シャフトは、ワークを把持するように構成されたコレットなどのワークホルダを有する。管状シャフトと外管状シャフトとは、外管状シャフトに対するワークの位置を調整するために、相対的に軸方向に移動可能である。工作機械は、外管状シャフトに分離可能に取り付けられ、それとともに回転するように取り付けられたガイドブッシュなどのワーク支持体をさらに含む。ワーク支持体は、ワークに摺動可能に接触し、ワーク支持体に対するワークの軸方向移動を可能にする。ユーザは、外管状シャフトからワーク支持体を取り外すことで、管状シャフトへアクセスすることができる。さらに、外管状シャフトからワーク支持体を除いた状態で、管状シャフトを外管状シャフトに対して軸方向に延在された位置に移動させることで、プローブを管状シャフトに装着できる。このようにして、外管状シャフトと工具ホルダとが軸方向に近接していても、プローブを使用して工作機械のプリセットプロセスを自動化することができる。
【0099】
本開示はまた、主軸と、主軸に取り付けられたワークを加工可能な工具を保持するための少なくとも1つの刃物台と、軸の周りで主軸を回転させるように動作可能な駆動装置とを含む工作機械を対象とする。主軸は、中空部およびワークホルダを含む。工作機械は、主軸のワークホルダに装着できるように取り付けられ、主軸の中空部に合う大きさのプローブをさらに含む。ワークホルダは、ワークホルダがプローブを取り付けられるように配置される第2位置と、プローブの少なくとも一部がスピンドルアセンブリの中空部内にある第1位置とを有する。第2位置にあるワークホルダは、プローブのワークホルダへの取り付けを容易にする。プローブがワークホルダに接続されると、ワークホルダは引っ込められ、プローブの少なくとも一部が主軸内に位置する。主軸の中空部内にプローブの少なくとも一部を挿入することによって、プローブが主軸の前方に突出する軸方向距離は、最小限にされることができ、プローブの感知部分が、軸に沿って主軸に隣接し得る刃物台と該軸に対する径方向に一致させることを可能にする。
【0100】
別の態様では、管状シャフトと、外管状シャフトと、管状シャフトのワークホルダとを含む工作機械が開示される。工作機械は、管状シャフト及び外管状シャフトを軸周りに回転させる少なくとも1つの駆動装置を備える。駆動装置はさらに、管状シャフトおよび外管状シャフトを相対的に軸方向に移動させるように動作可能である。工作機械は、外管状シャフトよって支持されるワークを加工可能な少なくとも1つの工具を保持するための刃物台と、刃物台を移動させる刃物台駆動装置とを備えている。工作機械は、ユーザがワークを機械加工するために特定の工具を使用するように工作機械を設定したい場合などに、設定コマンドを受信するためのユーザインタフェースを有する。工作機械は、ユーザインタフェースを介してセットアップコマンドを受信すると、駆動装置に管状シャフトを第2位置に移動させて、プローブを管状シャフト501に接続させるよう指令するコントローラをさらに含む。コントローラは、刃物台駆動装置に刃物台を移動させて工具をプローブと接触させるようにさらに構成される。次いで、コントローラは、プローブからの信号および刃物台の移動情報に基づいて工具のオフセット値を設定する。このようにして、工作機械は、工具を移動させてプローブと接触させることにより、刃物台とプローブとの相対位置を自律的に学習し、プローブが取り外されてワークと交換された後に、工作機械を設定してワークを加工することができる。そのため20以上の工具を使用する工作機械において迅速な設定が容易である。
【0101】
本開示はまた、機械加工動作中に軸を中心に回転可能な管状シャフト及び外管状シャフトを有する工作機械を動作させる方法を対象とする。この方法は、管状シャフトを外管状シャフトに対して軸方向に延出された第2位置に位置決めするために、管状シャフトと外管状シャフトとを相対的に軸方向に移動させることを含む。管状シャフトは、管状シャフトが第2位置にある状態でプローブを取り付けられるように配置されたワークホルダを含む。この方法は、管状シャフトを外管状シャフトに対して軸方向に引っ込んだ第1位置に位置決めするために、プローブがワークホルダに接続された状態で、管状シャフトおよび外管状シャフトを相対的に軸方向に移動させることを含む。工作機械の工具ホルダを移動させて、刃物台に支持された工具をプローブの感知部分に接触させる。さらに、本方法は、プローブからの信号と刃物台の移動とのうちの少なくとも一部に基づいて、工具のオフセット値を設定することを含む。プローブはワークホルダに取り付けられているので、プローブは管状シャフトと共に第1位置に移動する。プローブを第1位置に引き込めることによって、プローブの軸方向の長さがプローブの径方向の長さの2倍以上の場合でも、プローブの感知部分が管状シャフトを越えた短い距離で位置決めできる。
【0102】
別の態様では、本開示は、工作機械のプロセッサによって実行されると、工作機械に、工作機械の管状シャフト及び外管状シャフトを相対的に軸方向に移動させて、管状シャフトを外管状シャフトに対して延出された第2位置に位置決めすることを含む動作を実行させる命令を記憶したコンピュータ読み取り可能な媒体を含む。管状シャフトは、管状シャフトが第2位置にある状態でプローブを取り付けられるように配置されたワークホルダを含む。さらに、プローブをワークホルダに連結した状態で、管状シャフトと外管状シャフトとを軸方向に相対移動させて、管状シャフトを外管状シャフトに対して引っ込んだ第1位置に移動する。工作機械の刃物台を移動させ、刃物台の工具をプローブに接触させる。さらに、動作は、プローブからの信号と刃物台の移動とのうちのに少なくとも一部に基づいて、工具のセットアップデータを決定することを含む。管状シャフトの第1位置への軸方向移動は、プローブを前方の第2位置から刃物台に対して後方に移動させ、プローブの感知部分と刃物台とを一致させることができる。工作機械は、マクロを利用して、工具を自動で移動させてプローブの感知部分と接触させ、工具をプローブの感知部分と接触させるために使用される移動パラメータを記憶することができる。自動工具学習プロセスは、上述のようにダミーワークを使用してスイス型工作機械をセットアップするための集中的に発生する大きな時間を要する従来の方法を避ける。
【0103】
本開示はまた、管状シャフトと、外管状シャフトと、少なくとも1つの工具を保持するための外管状シャフトに対応する刃物台とを有する工作機械を提供する。工作機械は、管状シャフトおよび外管状シャフトのいずれか一方を軸周りに回転させる駆動装置を有する。工作機械は、管状シャフトおよび外管状シャフトの一方の回転を管状シャフトおよび外管状シャフトの他方の回転に伝達するように構成された管状シャフトおよび外管状シャフトのボールスプライン結合をさらに含む。ボールスプライン結合は、管状シャフトおよび外管状シャフトの相対的に軸方向の移動を可能にして、外管状シャフトに対するワークの位置を軸方向に調整する一方で、回転方向においてワークを正確に位置決めする。ワークの正確な回転位置決めを提供する。
【0104】
単数形の用語の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含することが意図される。「含む」、「有する」、「含有する」という用語は、オープンエンドの用語として解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、「~のうちの少なくとも1つ」という語句は、別々に解釈されることが意図される。例えば、語句「AおよびBのうちの少なくとも1つ」は、A、B、またはAおよびBの両方を包含することが意図される。
【0105】
上述の実施形態では、本発明の特定の実施形態が図示および説明された。しかし、本発明が上記実施形態の添付の特許請求の範囲内に入るすべての変更および修正を包含することは、当業者には当然理解されるべきである。たとえば、本明細書で開示する方法の様々な動作は、説明した順序とは異なる順序で組み合わせられるかまたは実行され得ることが諒解されよう。一例として、方法900の動作902は、動作903、904の後に実行されてもよい。