(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】光検出装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/02 20060101AFI20241115BHJP
H01L 31/08 20060101ALI20241115BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H01L31/02 B
H01L31/08 L
H01L27/146 D
H01L27/146 F
(21)【出願番号】P 2023145582
(22)【出願日】2023-09-07
(62)【分割の表示】P 2022206660の分割
【原出願日】2018-10-04
【審査請求日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2017196297
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】井上 直
(72)【発明者】
【氏名】小池 亮介
(72)【発明者】
【氏名】中山 晴幸
【審査官】丸橋 凌
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152431(WO,A1)
【文献】特開2009-111089(JP,A)
【文献】特開2008-210846(JP,A)
【文献】特開2006-067604(JP,A)
【文献】特開2009-111090(JP,A)
【文献】特開2004-260138(JP,A)
【文献】特開2005-317745(JP,A)
【文献】特開2014-132644(JP,A)
【文献】特開2014-099468(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061296(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/159512(WO,A1)
【文献】特開2009-170977(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0051859(US,A1)
【文献】特開2004-349463(JP,A)
【文献】特開平6-143884(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0163992(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/024
H01L 31/10-31/119
H01L 27/14-27/148
H01L 23/28-23/31
H01L 33/52-33/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光部を有する裏面入射型の受光素子と、
回路素子と、
前記受光素子と前記回路素子との間に配置され、前記受光素子と前記回路素子とを電気的且つ物理的に接続する接続部材と、
前記受光素子と前記回路素子との間に配置されたアンダーフィルと、
前記受光素子に対する光の入射方向から見た場合に前記受光素子を包囲するように前記回路素子上に配置された枠状の遮光マスクと、を備え、
前記遮光マスクは、内側に前記受光素子が位置する開口が形成された枠体を有し、
前記開口における前記回路素子側の第1開口縁は、前記入射方向から見た場合に前記受光素子の外縁の外側に位置しており、
前記開口は、前記第1開口縁から前記開口における前記回路素子とは反対側の第2開口縁に向かって縮小しており、
前記枠体の幅は、前記第1開口縁から前記第2開口縁に向かって拡大しており、
前記アンダーフィルは、前記受光素子の側面と前記遮光マスクの前記開口の内面との間に至って
おり、
前記アンダーフィルは、前記回路素子と前記遮光マスクにおける前記回路素子側の表面との間に配置された部分を含む、光検出装置。
【請求項2】
前記受光素子は、前記遮光マスクの前記開口の前記内面に接触している、請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記アンダーフィルは、前記遮光マスクの前記開口の前記内面に前記受光素子が接触する位置に至っている、請求項2に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記複数の受光部は、所定方向に沿って配列されており、
前記受光素子及び前記遮光マスクは、前記所定方向を長手方向とする長尺状の形状を呈している、請求項1~3のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記回路素子が有する基板、及び前記枠体は、同一の材料によって形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記回路素子が有する前記基板、及び前記枠体は、シリコンによって形成されている、請求項5に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記受光素子が有する基板は、化合物半導体によって形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記アンダーフィルは、前記受光素子における光入射側の表面と前記受光素子の前記側面とが交わる部分に至っている、請求項1~7のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項9】
前記アンダーフィルは、前記受光素子における光入射側の前記表面の外縁に至っている、請求項8に記載の光検出装置。
【請求項10】
前記第2開口縁のうち前記所定方向における少なくとも一方の端部は、前記入射方向から見た場合に、前記受光素子の前記外縁のうち前記所定方向における少なくとも一方の端部の外側に位置している、請求項4に記載の光検出装置。
【請求項11】
それぞれが複数の受光部を有する複数の裏面入射型の受光素子によって構成された受光素子ユニットと、
回路素子と、
前記受光素子ユニットと前記回路素子との間に配置され、前記受光素子ユニットと前記回路素子とを電気的且つ物理的に接続する接続部材と、
前記受光素子ユニットと前記回路素子との間に配置されたアンダーフィルと、
前記受光素子ユニットに対する光の入射方向から見た場合に前記受光素子ユニットを包囲するように前記回路素子上に配置された枠状の遮光マスクと、を備え、
前記遮光マスクは、内側に前記受光素子ユニットが位置する開口が形成された枠体を有し、
前記開口における前記回路素子側の第1開口縁は、前記入射方向から見た場合に前記受光素子ユニットの外縁の外側に位置しており、
前記開口は、前記第1開口縁から前記開口における前記回路素子とは反対側の第2開口縁に向かって縮小しており、
前記枠体の幅は、前記第1開口縁から前記第2開口縁に向かって拡大しており、
前記アンダーフィルは、前記受光素子ユニットの側面と前記遮光マスクの前記開口の内面との間に至って
おり、
前記アンダーフィルは、前記回路素子と前記遮光マスクにおける前記回路素子側の表面との間に配置された部分を含む、光検出装置。
【請求項12】
前記受光素子ユニットは、前記遮光マスクの前記開口の前記内面に接触している、請求項11に記載の光検出装置。
【請求項13】
前記アンダーフィルは、前記遮光マスクの前記開口の前記内面に前記受光素子ユニットが接触する位置に至っている、請求項12に記載の光検出装置。
【請求項14】
前記複数の受光部は、所定方向に沿って配列されており、
前記受光素子ユニット及び前記遮光マスクは、前記所定方向を長手方向とする長尺状の形状を呈している、請求項11~13のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項15】
前記回路素子が有する基板、及び前記枠体は、同一の材料によって形成されている、請求項11~14のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項16】
前記回路素子が有する前記基板、及び前記枠体は、シリコンによって形成されている、請求項15に記載の光検出装置。
【請求項17】
前記複数の受光素子のそれぞれが有する基板は、化合物半導体によって形成されている、請求項11~16のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項18】
前記アンダーフィルは、前記受光素子ユニットにおける光入射側の表面と前記受光素子ユニットの前記側面とが交わる部分に至っている、請求項11~17のいずれか一項に記載の光検出装置。
【請求項19】
前記アンダーフィルは、前記受光素子ユニットにおける光入射側の前記表面の外縁に至っている、請求項18に記載の光検出装置。
【請求項20】
前記第2開口縁のうち前記所定方向における少なくとも一方の端部は、前記入射方向から見た場合に、前記受光素子ユニットの前記外縁のうち前記所定方向における少なくとも一方の端部の外側に位置している、請求項14に記載の光検出装置。
【請求項21】
複数の受光部を有する裏面入射型の受光素子と、
回路素子と、
前記受光素子と前記回路素子との間に配置され、前記受光素子と前記回路素子とを電気的且つ物理的に接続する接続部材と、
前記受光素子と前記回路素子との間に配置されたアンダーフィルと、
前記受光素子に対する光の入射方向から見た場合に前記受光素子を包囲するように前記回路素子上に配置された枠状の遮光マスクと、を備え、
前記遮光マスクは、内側に前記受光素子が位置する開口が形成された枠体を有し、
前記開口における前記回路素子側の第1開口縁は、前記入射方向から見た場合に前記受光素子の外縁の外側に位置しており、
前記開口は、前記第1開口縁から前記開口における前記回路素子とは反対側の第2開口縁に向かって縮小しており、
前記枠体の幅は、前記第1開口縁から前記第2開口縁に向かって拡大しており、
前記アンダーフィルは、前記受光素子の側面と前記遮光マスクの前記開口の内面との間に至っており、
前記受光素子は、前記遮光マスクの前記開口の前記内面に接触している、光検出装置。
【請求項22】
それぞれが複数の受光部を有する複数の裏面入射型の受光素子によって構成された受光素子ユニットと、
回路素子と、
前記受光素子ユニットと前記回路素子との間に配置され、前記受光素子ユニットと前記回路素子とを電気的且つ物理的に接続する接続部材と、
前記受光素子ユニットと前記回路素子との間に配置されたアンダーフィルと、
前記受光素子ユニットに対する光の入射方向から見た場合に前記受光素子ユニットを包囲するように前記回路素子上に配置された枠状の遮光マスクと、を備え、
前記遮光マスクは、内側に前記受光素子ユニットが位置する開口が形成された枠体を有し、
前記開口における前記回路素子側の第1開口縁は、前記入射方向から見た場合に前記受光素子ユニットの外縁の外側に位置しており、
前記開口は、前記第1開口縁から前記開口における前記回路素子とは反対側の第2開口縁に向かって縮小しており、
前記枠体の幅は、前記第1開口縁から前記第2開口縁に向かって拡大しており、
前記アンダーフィルは、前記受光素子ユニットの側面と前記遮光マスクの前記開口の内面との間に至っており、
前記受光素子ユニットは、前記遮光マスクの前記開口の前記内面に接触している、光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光検出装置として、複数の受光部を有する裏面入射型の受光素子と、回路素子と、受光素子と回路素子との間に配置されたバンプと、受光素子と回路素子との間に配置されたアンダーフィルと、を備えるものが知られている。このような光検出装置においては、受光素子と回路素子との確実な接合のために、受光素子の側面にアンダーフィルが至っている場合がある。
【0003】
しかし、受光素子の側面にアンダーフィルが至っていると、受光素子が裏面入射型であるため、アンダーフィルに入射して屈折した光が受光素子の側面から受光部に入射するおそれがある。そのような光はノイズ光であるため、そのような光が受光部に入射すると、光検出装置の検出精度を低下させることになる。
【0004】
上述した問題を解決するために、遮光性を有するフィラーを含有する樹脂がアンダーフィルとして用いられた光検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、遮光性を有するフィラーを含有する樹脂がアンダーフィルとして用いられても、波長によっては、十分な遮光を実現することができないおそれがある。
【0007】
本発明は、信頼性の高い光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光検出装置は、複数の受光部を有する裏面入射型の受光素子と、回路素子と、受光素子と回路素子との間に配置され、受光素子と回路素子とを電気的且つ物理的に接続する接続部材と、受光素子と回路素子との間に配置されたアンダーフィルと、受光素子に対する光の入射方向から見た場合に受光素子を包囲するように回路素子上に配置された枠状の遮光マスクと、を備え、遮光マスクは、内側に受光素子が位置する開口が形成された枠体と、開口の内面に設けられた遮光層と、を有し、開口における回路素子側の第1開口縁は、入射方向から見た場合に受光素子の外縁の外側に位置しており、開口における回路素子とは反対側の第2開口縁は、入射方向から見た場合に受光素子の外縁の内側に位置しており、開口は、第1開口縁から第2開口縁に向かって縮小しており、枠体の幅は、第1開口縁から第2開口縁に向かって拡大しており、アンダーフィルは、受光素子と開口の内面に設けられた遮光層との間に至っている。
【0009】
この光検出装置では、受光素子が枠体の開口の内側に位置しており、遮光層が枠体の開口の内面に設けられている。しかも、枠体の開口が、回路素子側の第1開口縁から回路素子とは反対側の第2開口縁に向かって縮小している。これにより、枠体の開口の外側から遮光層に光(迷光)が入射したとしても、その光は、例えば、受光素子とは反対側に反射され易くなる。したがって、受光素子の側面から受光部に光が入射して光検出装置の検出精度が低下するのを防止することができる。また、この光検出装置では、アンダーフィルが受光素子と遮光層との間に至っている。このとき、枠体の開口が、回路素子側の第1開口縁から回路素子とは反対側の第2開口縁に向かって縮小しているため、受光素子と遮光層との間に至ったアンダーフィルが安定した状態となり易い。したがって、遮光マスクの全周において安定した固定強度を得ることができる。更に、この光検出装置では、枠体の幅が、回路素子側の第1開口縁から回路素子とは反対側の第2開口縁に向かって拡大している。これにより、受光素子を包囲する遮光マスク自体の強度が高くなる。したがって、受光素子を外力から保護することができる。しかも、受光素子、回路素子及び遮光マスクが、同一の材料であるアンダーフィルによって互いに固定されるため、容易且つ安定的な固定が可能となっている。以上により、信頼性の高い光検出装置を得ることができる。
【0010】
本発明の光検出装置では、受光素子は、開口の内面に設けられた遮光層に接触していてもよい。これにより、受光素子に対する遮光マスクの位置が安定した状態となるため、上述した作用及び効果がより適切に奏され易くなる。
【0011】
本発明の光検出装置では、アンダーフィルは、開口の内面に設けられた遮光層に受光素子が接触する位置に至っていてもよい。これにより、遮光マスクの全周においてより安定した固定強度を得ることができる。更に、受光素子の側面から水分等が侵入して受光素子が劣化するのを防止することができる。
【0012】
本発明の光検出装置では、複数の受光部は、所定方向に沿って配列されており、受光素子及び遮光マスクは、所定方向を長手方向とする長尺状の形状を呈していてもよい。複数の受光部が所定方向に沿って配列されていると、受光素子の側面から全ての受光部に光が入射し易くなり、また、受光素子自体の強度も低くなり易い。したがって、複数の受光部が所定方向に沿って配列されている場合には、遮光マスクが設けられ且つ受光素子と遮光層との間にアンダーフィルが至った構成は、特に有効である。
【0013】
本発明の光検出装置では、回路素子が有する基板、及び枠体は、同一の材料によって形成されていてもよい。これにより、回路素子の基板と遮光マスクの枠体との間の熱膨張係数の差に起因して回路素子及び遮光マスクの少なくとも一方が変形するのを防止することができる。
【0014】
本発明の光検出装置では、回路素子が有する基板、及び枠体は、シリコンによって形成されていてもよい。これにより、回路素子の基板と遮光マスクの枠体との間の熱膨張係数の差に起因して回路素子及び遮光マスクの少なくとも一方が変形するのを、汎用性の高い材料で防止することができる。
【0015】
本発明の光検出装置では、受光素子が有する基板は、化合物半導体によって形成されていてもよい。受光素子の基板が化合物半導体によって形成されていると、受光素子の基板の側面が欠け易い。したがって、受光素子の基板が化合物半導体によって形成されている場合には、受光素子の基板の側面が欠けるのを抑制する上で、遮光マスクが設けられ且つ受光素子と遮光層との間にアンダーフィルが至った構成は、特に有効である。更に、受光素子の基板が化合物半導体によって形成されていると、製造された時点で受光素子の基板の側面に欠け等が発生している場合が多いため、迷光が入射すると、乱反射等によって複数の受光部間のユニフォミティが低下し易い。したがって、受光素子の基板が化合物半導体によって形成されている場合には、複数の受光部間のユニフォミティを確保する上で、遮光マスクが設けられ且つ受光素子と遮光層との間にアンダーフィルが至った構成は、特に有効である。
【0016】
本発明の光検出装置では、遮光層は、枠体における回路素子側の表面に設けられていてもよい。これにより、例えば、枠体における回路素子側の表面を介して回路素子に入射した光が散乱して受光素子の受光部に入射するのを防止することができる。
【0017】
本発明の光検出装置では、アンダーフィルは、受光素子における光入射側の表面と受光素子の側面とが交わる部分に至っていてもよい。これにより、受光素子の側面を覆うことができるため、受光素子を安定して固定することができる。更に、受光素子の実装面に水分が侵入するのを確実に抑制することができる。
【0018】
本発明の光検出装置では、アンダーフィルは、受光素子における光入射側の表面の外縁に至っていてもよい。これにより、受光素子における光入射側の表面と受光素子の側面とが交わる部分を覆うことができるため、受光素子をより安定して固定することができる。更に、受光素子の実装面に水分が侵入するのをより確実に抑制することができる。
【0019】
本発明の光検出装置では、第2開口縁のうち所定方向における少なくとも一方の端部は、入射方向から見た場合に、受光素子の外縁のうち所定方向における少なくとも一方の端部の外側に位置していてもよい。これにより、所定方向における受光素子の一方の端部と所定方向における遮光マスクの一方の端部との間の部分を、光検出装置の製造時に、アンダーフィル樹脂の逃がし穴として機能させることができ、製造された光検出装置において、受光素子における光入射側の表面に余分なアンダーフィルがはみ出すのを抑制することができる。
【0020】
本発明の光検出装置は、それぞれが複数の受光部を有する複数の裏面入射型の受光素子によって構成された受光素子ユニットと、回路素子と、前記受光素子ユニットと前記回路素子との間に配置され、前記受光素子ユニットと前記回路素子とを電気的且つ物理的に接続する接続部材と、前記受光素子ユニットと前記回路素子との間に配置されたアンダーフィルと、前記受光素子ユニットに対する光の入射方向から見た場合に前記受光素子ユニットを包囲するように前記回路素子上に配置された枠状の遮光マスクと、を備え、前記遮光マスクは、内側に前記受光素子ユニットが位置する開口が形成された枠体と、前記開口の内面に設けられた遮光層と、を有し、前記開口における前記回路素子側の第1開口縁は、前記入射方向から見た場合に前記受光素子ユニットの外縁の外側に位置しており、前記開口における前記回路素子とは反対側の第2開口縁は、前記入射方向から見た場合に前記受光素子ユニットの前記外縁の内側に位置しており、前記開口は、前記第1開口縁から前記第2開口縁に向かって縮小しており、前記枠体の幅は、前記第1開口縁から前記第2開口縁に向かって拡大しており、前記アンダーフィルは、前記受光素子ユニットと前記開口の前記内面に設けられた前記遮光層との間に至っている。
【0021】
この光検出装置によれば、上述した光検出装置と同様に、信頼性が向上する。更に、歩留まりの低下及び機械的強度の低下を抑制しつつ、受光素子ユニットの大型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、信頼性の高い光検出装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】
図2に示されるIII-III線に沿っての光検出装置の断面図である。
【
図4】
図3に示される光検出装置の拡大断面図である。
【
図5】
図2に示されるV-V線に沿っての光検出装置の拡大断面図である。
【
図9】
図8に示されるIX-IX線に沿っての光検出装置の断面図である。
【
図10】
図9に示される光検出装置の拡大断面図である。
【
図11】第2実施形態の光検出装置の変形例の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
【0025】
図1、
図2及び
図3に示されるように、第1実施形態の光検出装置1Aは、受光素子10と、回路素子20と、複数のバンプ(接続部材)30と、アンダーフィル40と、遮光マスク50と、を備えている。以下、受光素子10に対する光の入射方向をZ軸方向といい、Z軸方向に垂直な一方向をX軸方向といい、Z軸方向及びX軸方向に垂直な方向をY軸方向という。
【0026】
受光素子10は、InGaAs等の化合物半導体によって形成された基板11を有している。基板11は、Z軸方向において互いに対向する主面11a及び主面11bを有している。基板11において主面11aに沿った部分には、複数の受光部12が形成されている。複数の受光部12は、X軸方向(所定方向)に沿って1次元に配列されている。各受光部12は、例えば、第1導電型の基板11において主面11aに沿った部分に第2導電型の領域が形成されることで構成されたフォトダイオードである。受光素子10は、基板11の主面11b側から入射した光を各受光部12において受光する。つまり、受光素子10は、裏面入射型の受光素子である。受光素子10は、X軸方向を長手方向とする長尺状の形状を呈している。一例として、受光素子10は、X軸方向を長手方向とする長方形板状を呈しており、X軸方向における長さ、Y軸方向における幅、Z軸方向における厚さは、それぞれ、13.18mm、0.7mm、0.3mmである。
【0027】
回路素子20は、シリコンによって形成された基板21を有している。基板21には、信号読出回路、信号処理回路、及び信号出力回路等が形成されている。基板21は、受光素子10が実装される主面21aを有している。回路素子20は、受光量に応じて受光素子10の各受光部12から出力された電気信号を処理する。回路素子20は、例えば、CMOS読出回路(ROIC:readout integrated circuit)である。
【0028】
複数のバンプ30は、受光素子10と回路素子20との間に配置されている。複数のバンプ30は、Z軸方向において向かい合う基板11の主面11aと基板21の主面21aとの間において、受光素子10と回路素子20とを電気的且つ物理的に接続している。より具体的には、基板11の主面11a及び基板21の主面21aのそれぞれには、複数の電極パッド(図示省略)が設けられており、各バンプ30は、Z軸方向において向かい合う電極パッド同士を電気的且つ物理的に接続している。各バンプ30は、例えば、Inバンプである。
【0029】
アンダーフィル40は、少なくとも受光素子10と回路素子20との間に配置されている。アンダーフィル40は、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、若しくはアクリル系樹脂、又はこれらの複合樹脂等によって形成されている。アンダーフィル40は、受光素子10と回路素子20との間の領域に充填されており、複数のバンプ30及び複数の電極パッドを封止している。光検出装置1Aでは、アンダーフィル40によって、各バンプ30の保護、隣り合うバンプ30間での電気絶縁性の確保、受光素子10と回路素子20との固定強度の確保等が図られている。
【0030】
遮光マスク50は、枠状の形状を呈しており、Z軸方向から見た場合に受光素子10を包囲するように回路素子20上(具体的には、基板21の主面21a上)に配置されている。遮光マスク50は、X軸方向を長手方向とする長尺状の形状を呈している。遮光マスク50は、開口51が形成された枠体52と、遮光層53と、を有している。
【0031】
開口51の内側には、受光素子10が位置している。つまり、受光素子10は、第1開口縁51aと第2開口縁51bとの間に位置している。第1開口縁51aは、開口51における回路素子20側の開口縁であり、第2開口縁51bは、開口51における回路素子20とは反対側の開口縁である。第1開口縁51aは、Z軸方向から見た場合に受光素子10の外縁10aの外側に位置しており、第2開口縁51bは、Z軸方向から見た場合に受光素子10の外縁10aの内側に位置している(
図2参照)。なお、基板11の側面11cが、Z軸方向から見た場合に受光素子10の外縁10aに相当する。
【0032】
図3、
図4及び
図5に示されるように、枠体52は、シリコンによって枠状に形成されている。枠体52は、Z軸方向に垂直な表面52a及び表面52b、並びに、Z軸に平行な側面52cを有している。開口51は、回路素子20側の表面52a及び回路素子20とは反対側の表面52bに開口している。開口51は、第1開口縁51aから第2開口縁51bに向かって縮小しており、枠体52の幅Wは、第1開口縁51aから第2開口縁51bに向かって拡大している。開口51の内面51cの傾斜角度(枠体52の表面52bと開口51の内面51cとのなす角度)は、30度以上60度以下の角度(光検出装置1Aでは、54.7度)である。ここで、枠体52の幅Wは、Z軸方向(すなわち、受光素子10に対する光の入射方向)から見た場合における「開口51を囲むように延在する部分(開口51に対して片側の部分)」の「延在方向に垂直な方向における幅」である。
【0033】
枠体52の形状の一例は、次のとおりである。枠体52は、X軸方向を長手方向とする長方形枠状を呈しており、X軸方向における長さ、Y軸方向における幅、Z軸方向における厚さは、それぞれ、15mm、2mm、0.32mmである。開口51は、四角錐台状である。第1開口縁51aは、X軸方向を長手方向とする長方形状を呈しており、X軸方向における長さ、Y軸方向における幅は、それぞれ、13.56mm、1.08mmである第2開口縁51bは、X軸方向を長手方向とする長方形状を呈しており、X軸方向における長さ、Y軸方向における幅は、それぞれ、13.11mm、0.63mmである。このような形状を呈する枠体52は、例えば、単結晶シリコン基板にアルカリエッチングを施すことで得られる。
【0034】
遮光層53は、開口51の内面51c及び枠体52の表面52aに設けられている。つまり、遮光層53は、開口51の内面51cに設けられた第1部分53aと、枠体52の表面52aに設けられた第2部分53bと、を含んで一体的に形成されている。遮光層53のうち回路素子20とは反対側の第2開口縁51bに沿った部分は、受光素子10の外縁部上(具体的には、基板11の主面11bの外縁部上)にせり出している。遮光層53は、Al等の金属によって形成されている。遮光層53の厚さは、迷光を反射するのに十分な厚さであればよく、例えば、1μmである。遮光層53は、例えば、開口51の内面51c及び枠体52の表面52aに金属を蒸着することで得られる。なお、枠体52の表面52aに設けられた遮光層53の厚さは、開口51の内面51cに設けられた遮光層53の厚さよりも大きいことが好ましく、その場合において、開口51の内面51cに設けられた遮光層53の厚さは、第1開口縁51aから第2開口縁51bに向かって減少していることがより好ましい。このように、枠体52の表面52aに設けられた遮光層53の厚さを大きくすることで、第1開口縁51aの角部分を十分な厚さの遮光層53で覆うことができると共に、開口51の内面51cに設けられた遮光層53の厚さを必要以上に大きくすることを避けることができる(つまり、遮光層53の形成に余計に材料を使わなくて済む)。
【0035】
受光素子10は、開口51の内面51cに設けられた遮光層53(すなわち、遮光層53の第1部分53a)に接触している。より具体的には、受光素子10のうち基板11の主面11bと基板11の側面11cとが交わる線である角部11dが遮光層53の第1部分53aに接触している。アンダーフィル40は、受光素子10(具体的には、基板11の側面11c)と遮光層53の第1部分53aとの間に至っており、遮光層53の第1部分53aに受光素子10が接触する位置に至っている。つまり、アンダーフィル40は、受光素子10と遮光層53の第1部分53aとの間の領域に充填されている。更に、アンダーフィル40は、枠体52の表面52aに設けられ遮光層53(すなわち、遮光層53の第2部分53b)と回路素子20の基板21の主面21aとの間の隙間に至っており、当該隙間に充填されている。このように、アンダーフィル40は、受光素子10と回路素子20との間に配置された第1部分41と、受光素子10と遮光層53の第1部分53aとの間に配置された第2部分42と、回路素子20と遮光マスク50との間に配置された第3部分43と、を含んで一体的に形成されている。
【0036】
なお、光検出装置1Aは、次のように製造される。まず、回路素子20上に受光素子10が複数のバンプ30によって実装される。続いて、受光素子10の周囲にアンダーフィル樹脂が塗布される。続いて、受光素子10を覆うように遮光マスク50が回路素子20に搭載される。このとき、受光素子10が遮光層53の第1部分53aに接触するため、遮光マスク50が受光素子10に対して適切に位置決めされる。そして、この状態で、受光素子10と回路素子20との間の領域、受光素子10と遮光層53の第1部分53aとの間の領域、及び回路素子20と遮光層53の第2部分53bとの間の領域に、アンダーフィル樹脂が行き渡る。その一方で、開口51が第1開口縁51aから第2開口縁51bに向かって縮小しており、しかも、受光素子10が遮光層53の第1部分53aに接触しているため、受光素子10の基板11の主面11b上へのアンダーフィル樹脂の流出が抑制される。仮に、アンダーフィル樹脂が、基板11の角部11dを超えて基板11の主面11bに達したとしても、第2開口縁51bが受光素子10の外縁10aの内側に位置しているため、アンダーフィル樹脂が第2開口縁51bに沿ってとどまり易くなり(すなわち、アンダーフィル樹脂が主面11bの外縁部上にとどまり易くなり)、その結果、主面11bにおける複数の受光部12上の領域にまでアンダーフィル樹脂が流出することが抑制される。続いて、アンダーフィル樹脂が熱硬化され、アンダーフィル40によって遮光マスク50が固定されて、光検出装置1Aが得られる。
【0037】
以上説明したように、光検出装置1Aでは、受光素子10が枠体52の開口51の内側に位置しており、遮光層53が枠体52の開口51の内面51cに設けられている。しかも、枠体52の開口51が、回路素子20側の第1開口縁51aから回路素子20とは反対側の第2開口縁51bに向かって縮小している。これにより、枠体52の開口51の外側から遮光層53に光(迷光)が入射したとしても、その光は、例えば、受光素子10とは反対側に反射され易くなる。したがって、受光素子10の側面(光検出装置1Aでは、基板11の側面11c)から受光部12に光が入射して光検出装置1Aの検出精度が低下するのを防止することができる。また、光検出装置1Aでは、アンダーフィル40が受光素子10と遮光層53との間に至っている。このとき、枠体52の開口51が、回路素子20側の第1開口縁51aから回路素子20とは反対側の第2開口縁51bに向かって縮小しているため、受光素子10と遮光層53との間に至ったアンダーフィル40が安定した状態となり易い。したがって、遮光マスク50の全周において安定した固定強度を得ることができる。更に、光検出装置1Aでは、枠体52の幅Wが、回路素子20側の第1開口縁51aから回路素子20とは反対側の第2開口縁51bに向かって拡大している。これにより、受光素子10を包囲する遮光マスク50自体の強度が高くなる。したがって、受光素子10を外力から保護することができる。しかも、受光素子10、回路素子20及び遮光マスク50が、同一の材料であるアンダーフィル40によって互いに固定されるため、容易且つ安定的な固定が可能となっている。以上により、信頼性の高い光検出装置1Aを得ることができる。このような光検出装置1Aの構成は、光検出装置1AをCSP(Wafer level Chip Size Package)として構成する上で極めて有効である。
【0038】
例えば、受光素子10が有する複数の側面にそれぞれ対向するように複数の遮光板が配置されたとしても、各遮光板が精度良く配置され、且つ隣り合う遮光板の間からアンダーフィル40が漏れ出さないように工夫しない限り、受光素子10の各側面に至るアンダーフィル40の量が、受光素子10の側面によって異なったり、或いは、1つの側面内においても場所によって異なったりしてしまう。このような構成では、強度的に強い個所と弱い個所とが発生し、弱い個所から破損し易くなる。これに対し、上記第1実施形態の光検出装置1Aでは、枠状の遮光マスク50が受光素子10を包囲するように配置されているため、受光素子10の各側面に至るアンダーフィル40の量が受光素子10の各側面のどの場所でも均一になる。したがって、上記第1実施形態の光検出装置1Aでは、強度的にも均一となり、破損が抑制される。
【0039】
また、光検出装置1Aでは、受光素子10が、開口51の内面51cに設けられた遮光層53(すなわち、遮光層53の第1部分53a)に接触している。これにより、受光素子10に対する遮光マスク50の位置が安定した状態となるため、上述した作用及び効果がより適切に奏され易くなる。
【0040】
また、光検出装置1Aでは、アンダーフィル40が、開口51の内面51cに設けられた遮光層53(すなわち、遮光層53の第1部分53a)に受光素子10が接触する位置に至っている。これにより、遮光マスク50の全周においてより安定した固定強度を得ることができる。更に、受光素子10の側面から水分等が侵入して受光素子10が劣化するのを防止することができる。
【0041】
また、光検出装置1Aでは、複数の受光部12が、所定方向(光検出装置1Aでは、X軸方向)に沿って配列されており、受光素子10及び遮光マスク50が、当該所定方向を長手方向とする長尺状の形状を呈している。複数の受光部12が所定方向に沿って配列されていると、受光素子10の側面から全ての受光部12に光が入射し易くなり、また、受光素子10自体の強度も低くなり易い。したがって、複数の受光部12が所定方向に沿って配列されている場合には、遮光マスク50が設けられ且つ受光素子10と遮光層53との間にアンダーフィル40が至った構成は、特に有効である。
【0042】
また、光検出装置1Aでは、回路素子20の基板21及び遮光マスク50の枠体52がシリコンによって形成されている。これにより、回路素子20の基板21と遮光マスク50の枠体52との間の熱膨張係数の差に起因して回路素子20及び遮光マスク50の少なくとも一方が変形するのを、汎用性の高い材料で防止することができる。
【0043】
また、光検出装置1Aでは、受光素子10の基板11が化合物半導体によって形成されている。受光素子10の基板11が化合物半導体によって形成されていると、受光素子10の基板11の側面11cが欠け易い。したがって、受光素子10の基板11が化合物半導体によって形成されている場合には、受光素子10の基板11の側面11cが欠けるのを抑制する上で、遮光マスク50が設けられ且つ受光素子10と遮光層53との間にアンダーフィル40が至った構成は、特に有効である。更に、受光素子10の基板11が化合物半導体によって形成されていると、製造された時点で受光素子10の基板11の側面11cに欠け等が発生している場合が多いため、迷光が入射すると、乱反射等によって複数の受光部12間のユニフォミティが低下し易い。しかし、遮光マスク50が設けられることで、遮光マスク50の第2開口縁51bが受光素子10の外縁10aよりも内側に位置することとなり、光が入射する方向から見た場合に受光素子10の外縁10aがカバーされるため、迷光が入射に起因する複数の受光部12間のユニフォミティが低下を抑制することができる。したがって、受光素子10の基板11が化合物半導体によって形成されている場合には、複数の受光部12間のユニフォミティを確保する上で、遮光マスク50が設けられ且つ受光素子10と遮光層53との間にアンダーフィル40が至った構成は、特に有効である。このような効果は、受光素子10の基板11が化合物半導体以外の半導体(例えば、シリコン)によって形成されている場合にも、勿論、有効である。
【0044】
また、光検出装置1Aでは、遮光層53が、開口51の内面51cに加え、枠体52における回路素子20側の表面52aに設けられていている。これにより、例えば、枠体52における回路素子20側の表面52aを介して回路素子20に入射した光が散乱して受光素子10の受光部12に入射するのを防止することができる。
【0045】
また、光検出装置1Aでは、開口51の内面51cの傾斜角度が30度以上60度以下の角度である。当該傾斜角度がこの範囲内の角度である場合は特に、遮光マスク50自体の強度を十分に大きくすることができると共に、アンダーフィル40の這い上がりを適切に制御することができる。なお、当該傾斜角度がこの範囲外の角度であっても、これらの効果は奏される。
【0046】
また、光検出装置1Aでは、アンダーフィル40が、受光素子10における光入射側の表面(光検出装置1Aでは、主面11b)と受光素子10の側面(光検出装置1Aでは、側面11c)とが交わる部分(光検出装置1Aでは、角部11d)に至っている。更に、光検出装置1Aでは、アンダーフィル40が、受光素子19における光入射側の表面の外縁に至っている。これにより、受光素子10の側面は勿論、受光素子10における光入射側の表面と受光素子10の側面とが交わる部分を覆うことができるため、受光素子10をより安定して固定することができる。更に、受光素子10の実装面に水分が侵入するのをより確実に抑制することができる。
【0047】
図6は、比較例の光検出装置の拡大断面図であり、
図4に相当する部分を示している。
図7は、比較例の光検出装置の拡大断面図であり、
図5に相当する部分を示している。
図6及び
図7に示される比較例の光検出装置は、遮光マスク50を備えていない点で、上記第1実施形態の光検出装置1Aと主に相違している。比較例の光検出装置では、受光素子10の周囲において基板11の側面11cにアンダーフィル40がせり上がっている。そのため、次のような問題が発生し得る。
【0048】
図6に示されるように、アンダーフィル40のうちX軸方向において受光素子10の両側に位置する部分44に光が入射すると、当該光が、部分44の表面、及び部分44と基板11の側面11cとの界面で屈折し、基板11の側面11cから両端の受光部12に入射するおそれがある。この場合、両端の受光部12でノイズ光が検出されることになるため、X軸方向に沿って1次元に配列された複数の受光部12間のユニフォミティが低下する。これは、裏面入射型の受光素子10に特有の課題である。
【0049】
また、
図7に示されるように、アンダーフィル40のうちY軸方向において受光素子10の両側に位置する部分44に光が入射すると、当該光が、部分44の表面、及び部分44と基板11の側面11cとの界面で屈折し、基板11の側面11cから受光部12に入射するおそれがある。このような現象は、X軸方向に沿って1次元に配列された複数の受光部12の全てで発生し得る。この場合、Y軸方向に沿って物体を相対的に移動させて当該物体の2次元像を取得すると、物体の像に対してY軸方向に相当する方向の前後にゴースト像が出現する。これは、裏面入射型の受光素子10に特有の課題である。
【0050】
比較例の光検出装置に対し、上記第1実施形態の光検出装置1Aは、遮光マスク50を備えている。そのため、上記第1実施形態の光検出装置1Aによれば、ユニフォミティの低下、ゴースト像の出現といった問題(裏面入射型の受光素子10に特有の課題)を解決することができる。
[第2実施形態]
【0051】
図8及び
図9に示されるように、第2実施形態の光検出装置1Bは、複数の受光素子10によって受光素子ユニット100が構成されている点、及び遮光マスク50の第2開口縁51bの一部が受光素子ユニット100の外縁100aの外側に位置している点で、第1実施形態の光検出装置1Aと主に相違している。これらの相違点を除けば、第1実施形態の光検出装置1Aにおける1つの受光素子10を、第2実施形態の光検出装置1Bにおける受光素子ユニット100と読み替えることができる。したがって、第2実施形態の光検出装置1Bによれば、第1実施形態の光検出装置1Aと同様の作用及び効果が奏される。以下、上述した相違点について詳細に説明する。
【0052】
光検出装置1Bでは、2つの受光素子10がX軸方向に沿って1次元に配列されている。各受光素子10が有する基板11において主面11aに沿った部分には、複数の受光部12が形成されている。複数の受光部12は、X軸方向に沿って1次元に配列されている。各受光素子10は、X軸方向を長手方向とする長尺状の形状を呈している。一例として、各受光素子10は、X軸方向を長手方向とする長方形板状を呈している。このように、各受光素子10は、1次元のイメージセンサであり、2つの受光素子10は、複数の画素として機能する複数の受光部12が配列される方向において並置されている。なお、隣り合う受光素子10間には、例えば5μm程度の隙間が形成されており、当該隙間には、アンダーフィル40が入り込んでいる。つまり、隣り合う受光素子10間には、アンダーフィル40が配置されている。各受光素子10においては、当該隙間に最も近い受光部12をダミーとし、当該受光部12から出力される電気信号をイメージの生成に使用しなくてもよい。
【0053】
遮光マスク50の第2開口縁51bのうちX軸方向における両方の端部は、Z軸方向から見た場合に、受光素子ユニット100の外縁100aのうちX軸方向における両方の端部の外側に位置している。これにより、X軸方向における受光素子ユニット100の一方の端部とX軸方向における遮光マスク50の一方の端部との間の部分、及び、X軸方向における受光素子ユニット100の他方の端部とX軸方向における遮光マスク50の他方の端部との間の部分を、光検出装置1Bの製造時に、アンダーフィル樹脂の逃がし穴として機能させることができ、製造された光検出装置1Bにおいて、各受光素子10における光入射側の表面に余分なアンダーフィル40がはみ出すのを抑制することができる。なお、Z軸方向から見た場合における受光素子ユニット100の外縁100aは、Z軸方向から見た場合における各受光素子10の外縁10aのうち、互いに隣り合う内側部分を除く外側部分によって、画定される。
【0054】
一例として、第2開口縁51bのうちY軸方向において互いに対向する一対の辺54は、Z軸方向から見た場合に、受光素子ユニット100の外縁100aのうちY軸方向において互いに対向する一対の辺14の内側に位置している。一方、第2開口縁51bのうちX軸方向において互いに対向する一対の辺55は、Z軸方向から見た場合に、受光素子ユニット100の外縁100aのうちX軸方向において互いに対向する一対の辺15の外側に位置している。
【0055】
図10に示されるように、X軸方向における遮光マスク50の両方の端部において、アンダーフィル40の第2部分42は、基板11の側面11c及び遮光層53の第1部分53aの表面を這い上がっている。基板11の側面11cを這い上がっている第2部分42は、基板11の角部11dに至っている。基板11の側面11cを這い上がっている第2部分42と、遮光層53の第1部分53aの表面を這い上がっている第2部分42との間には、溝状の凹部が形成されている。光検出装置1Bの製造時に、アンダーフィル樹脂が遮光層53の第1部分53aの表面を這い上がる場合には、製造された光検出装置1Bにおいて、各受光素子10における光入射側の表面に余分なアンダーフィル40がはみ出すのをより確実に抑制することができる。ただし、アンダーフィル40の第2部分42は、基板11の側面11c及び遮光層53の第1部分53aの表面を這い上がっており、基板11の側面11cを這い上がっている第2部分42と、遮光層53の第1部分53aの表面を這い上がっている第2部分42との間に、溝状の凹部が形成されていない場合もある。また、アンダーフィル40の第2部分42は、基板11の側面11cを這い上がっており、遮光層53の第1部分53aの表面を這い上がっていない場合もある。
【0056】
図8に示されるように、遮光マスク50の第1開口縁51aのうちX軸方向において互いに対向する一対の辺56のそれぞれは、Z軸方向から見た場合に、受光素子ユニット100の外縁100aのうちX軸方向において互いに対向する一対の辺15のそれぞれから距離Dだけ離れている。
図10に示されるように、距離Dが200μm未満であると、基板11の側面11cから両端の受光部12に光が入射するのを抑制することができ、その結果、X軸方向に沿って1次元に配列された複数の受光部12間のユニフォミティが低下するのを抑制することができる。
【0057】
一方、
図11に示されるように、距離Dが200μm以上であると、光検出装置1Bの製造時に、アンダーフィル樹脂の逃がし穴としての機能を確実に発揮させることができ、製造された光検出装置1Bにおいて、各受光素子10における光入射側の表面に余分なアンダーフィル40がはみ出すのをより確実に抑制することができる。なお、
図10及び
図11に示されるいずれの場合にも、各受光素子10においては、X軸方向における両端の受光部12をダミーとし、当該受光部12から出力される電気信号をイメージの生成に使用しなくてもよい。
[変形例]
【0058】
本発明は、上述した第1及び第2実施形態に限定されない。例えば、各部の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。一例として、受光素子10の基板11の材料は、InGaAs等の化合物半導体に限定されず、シリコン等であってもよい。また、回路素子20の基板21及び遮光マスク50の枠体52は、シリコン以外の材料(例えば、樹脂、セラミック等)によって形成されていてもよい。ただし、回路素子20の基板21及び遮光マスク50の枠体52が同一の材料によって形成されていれば、回路素子20の基板21と遮光マスク50の枠体52との間の熱膨張係数の差に起因して回路素子20及び遮光マスク50の少なくとも一方が変形するのを防止することができる。
【0059】
また、開口51の内面51cの傾斜角度は、一定である必要はなく、例えば、第1開口縁51aから第2開口縁51bに向かって傾斜角度が減少又は増加していてもよい。例えば、開口51の内面51cがZ軸方向に平行な断面において凹曲面である場合には、第1開口縁51aから第2開口縁51bに向かって傾斜角度が減少する。例えば、開口51の内面51cがZ軸方向に平行な断面において凸曲面である場合には、第1開口縁51aから第2開口縁51bに向かって傾斜角度が増加する。また、開口51の形状は、例えば、垂直孔とテーパ孔とを組み合わせたような形状であってもよい。つまり、第1開口縁51aから第2開口縁51bに向かって縮小する開口51とは、全体的に縮小していれば、一部に一定の部分があったり、一部に拡大する部分があったりしてもよい。ただし、開口51が、第1開口縁51aから第2開口縁51bに向かって連続的に縮小していると、遮光マスク50の機械的な強度を確保しつつ、適切な量のアンダーフィル40を受光素子10と遮光層53の第1部分53aとの間に至らせることができる。更に、開口51の形状に余計な部分がないため、光検出装置1A,1Bの小型化を図ることもできる。
【0060】
また、枠体52の幅Wについても、第1開口縁51aから第2開口縁51bに向かって全体的に拡大していれば、一部に一定の部分があったり、一部に縮小する部分があったりしてもよい。ただし、枠体52の幅Wが、第1開口縁51aから第2開口縁51bに向かって連続的に拡大していると、遮光マスク50の機械的な強度を確保しつつ、光検出装置1A,1Bの小型化を図ることができる。また、枠体52の幅Wは、全ての部分において一定である必要はない、
図4に示される枠体52の幅Wと、
図5に示される枠体52の幅Wとは、同じ高さにおいてでも、互いに異なっていてもよい。
【0061】
また、上記第1及び第2実施形態の光検出装置1A,1Bにおいて、アンダーフィル40は、回路素子20と遮光層53の第2部分53b(すなわち、枠体52の表面52aに設けられた遮光層53)との間の領域に至っていなくてもよい。また、遮光層53は、開口51の内面51cに設けられていれば、枠体52の表面52aに設けられていなくてもよい。これらの場合にも、上記第1及び第2実施形態の光検出装置1A,1Bと同様の作用及び効果が奏される。
【0062】
上記第1及び第2実施形態の光検出装置1A,1Bでは、受光素子10が遮光層53の第1部分53aに接触しており、遮光マスク50の底面(枠体52の表面52a又は遮光層53の第2部分53b)が回路素子20から離れていたが、光検出装置1A,1Bは次のように構成されてもよい。すなわち、受光素子10が遮光層53の第1部分53aから離れており、遮光マスク50の底面が回路素子20に接触していてもよい。或いは、受光素子10が遮光層53の第1部分53aに接触しており、遮光マスク50の底面が回路素子20に接触していてもよい。或いは、受光素子10が遮光層53の第1部分53aから離れており、遮光マスク50の底面が回路素子20から離れていてもよい。いずれの場合にも、アンダーフィル40は、受光素子10と遮光層53の第1部分53aとの間に至っていれば、受光素子10における光入射側の表面の外縁に至っていなくてもよいし、更に、受光素子10における光入射側の表面と受光素子10の側面とが交わる部分に至っていなくてもよい。また、アンダーフィル40は、遮光マスク50の底面と回路素子20との間に至っていなくてもよい。受光素子10が遮光層53の第1部分53aに接触している場合には、アンダーフィル40は、受光素子10と遮光層53の第1部分53aとの間に至っていれば、受光素子10が遮光層53の第1部分53aに接触する位置に至っていなくてもよい。つまり、アンダーフィル40は、少なくとも受光素子10の側面(光検出装置1A,1Bでは、基板11の側面11c)の一部と遮光層53の第1部分53aの少なくとも一部との間に至っていればよい(接触していればよい)。
【0063】
なお、受光素子10が遮光層53の第1部分53aに接触する場合であっても、例えば、受光素子10の基板11の角部11dの全体において遮光層53の第1部分53aに接触している必要はない。本明細書において「接触」との表現は、少なくとも一部同士が物理的に触れていることを示す。
【0064】
また、受光素子10は、複数の受光部12が2次元に配列されて構成されたものであってもよい。また、受光素子10は、第1導電型の基板11において主面11aに沿った部分に第2導電型の領域が形成されたものに限定されず、例えば、第1導電型の基板11において主面11aに沿った部分に第2導電型の領域が形成され、更に当該領域内に第1導電型の領域が形成されたものであってもよい。つまり、受光素子10は、裏面入射型の受光素子であれば、どのように構成されたものであってもよい。また、回路素子20は、単純に配線が形成された部材であってもよい。また、回路素子20が、半導体材料以外の材料によって形成された基板を有していてもよい。また、回路素子20の形状は、基板に限定されず、例えば、凹部が形成された筐体のような形状であってもよい。
【0065】
また、枠体52の表面52b上に、フィルタ等の光学素子が搭載されてもよい。また、遮光層53は、光を反射する機能を有するもの(光反射層)に限定されず、光を吸収する機能を有するもの(光吸収層)であってもよい。例えば、ITO(スズ酸化インジウム)、ATO(アンチモン酸化スズ)、LaB6(六ホウ化ランタン)、セシウム酸化タングステン等によって遮光層53を形成することで、遮光層53を光吸収層とすることができる。ただし、発熱を抑制する観点では、遮光層53は、光反射層であることが好ましい。また、バンプ30に代えて、例えば、異方性導電樹脂層によって、受光素子10と回路素子20とが電気的且つ物理的に接続されていてもよい。その場合、異方性導電樹脂層のうち、Z軸方向において向かい合う電極パッドの間の部分が接続部材として機能し、当該接続部材以外の部分がアンダーフィル40として機能する(つまり、受光素子10と回路素子20との間だけでなく、受光素子10と遮光層53の第1部分53aとの間に至る)。
【0066】
また、アンダーフィル40は、回路素子20と遮光マスク50との間の領域を介して、回路素子20の基板21の主面21aと遮光マスク50の枠体52の側面52cとで形成される隅部に至っていてもよい。これにより、回路素子20に対する遮光マスク50の固定が補強され、装置としての安定性が向上する。
【0067】
また、上記第1実施形態の光検出装置1Aでは、第2開口縁51bの全部が、Z軸方向から見た場合に受光素子10の外縁10aの内側に位置していたが、第2開口縁51bの一部は、Z軸方向から見た場合に受光素子10の外縁10aの外側に位置していてもよい。つまり、第2開口縁51bの少なくとも一部が、Z軸方向から見た場合に受光素子10の外縁10aの内側に位置していればよい。上記第1実施形態の光検出装置1Aでは、第2開口縁51bのうちX軸方向における一方の端部が、Z軸方向から見た場合に、受光素子10の外縁10aのうちX軸方向における一方の端部の外側に位置していてもよい。これにより、X軸方向における受光素子10の一方の端部とX軸方向における遮光マスク50の一方の端部との間の部分を、光検出装置1Aの製造時に、アンダーフィル樹脂の逃がし穴として機能させることができ、製造された光検出装置1Aにおいて、受光素子10における光入射側の表面に余分なアンダーフィル40がはみ出すのを抑制することができる。なお、装置としての安定性を考慮すると、第2開口縁51bのうちX軸方向における両方の端部が、Z軸方向から見た場合に、受光素子10の外縁10aのうちX軸方向における両方の端部の外側に位置していることが好ましい。
【0068】
また、上記第2実施形態の光検出装置1Bでは、X軸方向に沿って1次元に配列された2つの受光素子10によって受光素子ユニット100が構成されていたが、受光素子ユニット100は、回路素子20における受光素子ユニット100側の表面に沿って1次元又は2次元に配列された複数の受光素子10によって構成されたものであればよい。これにより、歩留まりの低下及び機械的強度の低下を抑制しつつ、受光素子ユニット100の大型化を図ることができる。なお、その場合にも、各受光素子10は、複数の受光部12が2次元に配列されて構成されたものであってもよい。また、1つの受光素子ユニット100を構成する複数の受光素子10のサイズは、同一でなくてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1A,1B…光検出装置、10…受光素子、10a…外縁、11…基板、12…受光部、20…回路素子、21…基板、30…バンプ(接続部材)、40…アンダーフィル、50…遮光マスク、51…開口、51a…第1開口縁、51b…第2開口縁、51c…内面、52…枠体、52a…表面、53…遮光層。