(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】複合窓枠
(51)【国際特許分類】
E06B 1/32 20060101AFI20241115BHJP
E06B 1/36 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
E06B1/32
E06B1/36 Z
(21)【出願番号】P 2023172472
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2019178448の分割
【原出願日】2019-09-30
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005005
【氏名又は名称】不二サッシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 慎吾
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-182433(JP,A)
【文献】特開2002-168059(JP,A)
【文献】特開2004-36176(JP,A)
【文献】特開2015-196972(JP,A)
【文献】特開2016-56608(JP,A)
【文献】特開2016-160674(JP,A)
【文献】特開2017-180055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形状に枠組みされる金属枠と、その金属枠の室内側に取付けられる樹脂枠とを備えた複合窓枠であって、
前記金属枠は、前記樹脂枠を取付けるネジが螺合するネジ軸部螺合片と、そのネジ軸部螺合片から室外側方向へ所定間隔だけ離れた位置に前記ネジの軸部が通される通し孔が設けられたネジ軸部通し片とを備え、
前記金属枠のネジ軸部螺合片とネジ軸部通し片の間には、その間の間隔よりも厚さが薄い前記樹脂枠の過大通し部片が設けられており、その過大通し部片には、前記ネジの軸部の外径および前記ネジ軸部通し片の通し孔の内径よりも内径が大きい過大通し部が設けられ、
その過大通し部は前記金属枠のネジ軸部螺合片とネジ軸部通し片の間において前記ネジ軸部通し片の通し孔を通り前記ネジ軸部螺合片に螺合する前記ネジの軸部が通されることを特徴とする複合窓枠。
【請求項2】
請求項1記載の複合窓枠において、
前記ネジの軸部が前記金属枠のネジ軸部螺合片に螺合した際、前記ネジの軸部は室内側を向き、前記ネジの頭部は室外側を向くことを特徴とする複合窓枠。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の複合窓枠において、
前記ネジの軸部は、ワッシャを介して前記金属枠のネジ軸部通し片の通し孔から通され、前記ネジの頭部は、前記ワッシャを介して前記金属枠のネジ軸部通し片の通し孔周縁を圧接することを特徴とする複合窓枠。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一の請求項に記載の複合窓枠において、
前記樹脂枠の過大通し部片には、前記過大通し部から離れた位置に係合部が設けられている一方、
前記金属枠のネジ軸部通し片には、前記通し孔から離れた位置に前記係合部に係合する被係合部が設けられていることを特徴とする複合窓枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の窓開口部に装着される方形状に枠組みされた金属枠と、その金属枠の室内側に取付けられる樹脂枠とを備えた複合窓枠に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窓枠の断熱性を維持しながらも冬季の結露を防止できるように建物の窓開口部に装着される方形状に枠組みされた金属枠と、その金属枠の室内側に取付けられる樹脂枠とを備えた複合窓枠の採用が増加している。
このような複合窓枠では、例えば、金属枠と樹脂枠の取付作業を簡略にする一方で、複合枠全体としての強度を向上させ、また各樹脂枠のみの交換を可能とするため、樹脂枠を構成する樹脂上下枠および左右の樹脂縦枠をネジ等の固定具により各金属枠にそれぞれ個別的に固定している(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1の複合窓枠は、金属枠のみならず樹脂枠もタッピングネジにより樹脂上下枠と左右の樹脂縦枠が固定されているため方形状となり、樹脂枠を交換する際は方形状のまま金属枠から取外さねばならず、室内額縁を取外す等、躯体に影響を与える可能性がある。
【0005】
また、工場等で金属枠に樹脂枠を取付る複合形材を製作する場合、金属枠と樹脂枠をネジで固定すると、材質の違いから長手方向におけるネジの下孔位置が合わない箇所が発生し易く、作業性が悪くなることがある。
【0006】
また、樹脂枠は金属枠よりも熱膨張性係数が4~5倍と大きいが、金属枠と樹脂枠をネジ等の固定具によりそれぞれ個別に固定した場合、通常の使用時における温度変化により樹脂枠が変形するという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するためなされたもので、樹脂枠の交換に際し、躯体に極力影響を与えることなく樹脂枠を取外すと共に、通常の使用時における温度変化による樹脂枠の変形も極力抑えることができる複合窓枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る複合窓枠は、方形状に枠組みされる金属枠と、その金属枠の室内側に取付けられる樹脂枠とを備えた複合窓枠であって、前記金属枠は、前記樹脂枠を取付けるネジが螺合するネジ軸部螺合片と、そのネジ軸部螺合片から室外側方向へ所定間隔だけ離れた位置に前記ネジの軸部が通される通し孔が設けられたネジ軸部通し片とを備え、前記金属枠のネジ軸部螺合片とネジ軸部通し片の間には、その間の間隔よりも厚さが薄い前記樹脂枠の過大通し部片が設けられており、その過大通し部片には、前記ネジの軸部の外径および前記ネジ軸部通し片の通し孔の内径よりも内径が大きい過大通し部が設けられ、その過大通し部は前記金属枠のネジ軸部螺合片とネジ軸部通し片の間において前記ネジ軸部通し片の通し孔を通り前記ネジ軸部螺合片に螺合する前記ネジの軸部が通されることを特徴とする。尚、本発明におけるネジには、ビスやボルト等の固定具も含むものとする。
また、本発明に係る複合窓枠では、前記ネジの軸部が前記金属枠のネジ軸部螺合片に螺合した際、前記ネジの軸部は室内側を向き、前記ネジの頭部は室外側を向くことも特徴とする。
また、本発明に係る複合窓枠では、前記ネジの軸部は、ワッシャを介して前記金属枠のネジ軸部通し片の通し孔から通され、前記ネジの頭部は、前記ワッシャを介して前記金属枠のネジ軸部通し片の通し孔周縁を圧接することも特徴とする。
また、本発明に係る複合窓枠では、前記樹脂枠の過大通し部片には、前記過大通し部から離れた位置に係合部が設けられている一方、前記金属枠のネジ軸部通し片には、前記通し孔から離れた位置に前記係合部に係合する被係合部が設けられていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る実施形態の複合窓枠では、
金属枠は、樹脂枠を取付けるネジが螺合するネジ軸部螺合片と、そのネジの軸部が通される通し孔が設けられたネジ軸部通し片とを備え、そのネジ軸部螺合片とネジ軸部通し片の間に、その間の間隔よりも厚さが薄くネジの軸部の外径よりも内径が大きい過大通し部
を有する樹脂枠の過大通し部片を備え、ネジの軸部はネジ軸部通し片の通し孔と過大通し部片の過大通し部を通ってネジ軸部螺合片に螺合する。
そのため、樹脂枠は装着される金属枠にネジにより共締めされていない。よって、金属枠との係合だけで各金属枠毎にそれぞれ樹脂枠を取り付けることができるので、複合形材の製作時における作業性が向上する。
また、樹脂枠は金属枠のネジ孔に螺合するネジに当該ネジの軸部の外径より大きい内径を有する過大通し部で留められるため、ネジの軸部と過大通し部との間に遊びが設けられ、樹脂枠が温度変化により膨張や収縮した場合でも樹脂枠の温度変化による変形を極力抑えることができる。更に、樹脂枠の面内方向(
図1における奥行き方向、
図3における左右方向)の動きに対して、ネジの軸部が過大通し部に当接するので、樹脂枠が金属枠から抜け出ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る実施形態の複合窓枠を採用した縦すべり出し窓における縦断面図である。
【
図2】
図1における金属上枠に対する樹脂上枠の取付け状態を示す要部拡大図である。
【
図3】
図1に示す本発明に係る実施形態の複合窓枠を採用した縦すべり出し窓の戸先側の縦枠側近傍における横断面図である。
【
図4】
図3における戸先側の縦枠の金属縦枠に対する樹脂縦枠の取付け状態を示す要部拡大図である。
【
図5】(a)~(c)それぞれは、本発明に係る実施形態の複合窓枠において樹脂枠を過大通し部にネジを通す際に使用するシールワッシャの正面図、側面図、A-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態の複合窓枠1について、縦すべり出し窓の窓枠を一例として図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態はあくまで本発明の一例であり、本発明が下記に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0012】
<実施形態の複合窓枠1の構成>
図1は本発明に係る実施形態の複合窓枠1を採用した縦すべり出し窓における縦断面図、
図2は実施形態の複合窓枠1における金属上枠1a1に対する樹脂上枠1a2の取付け状態を示す要部拡大図、
図3は戸先側の縦枠1c側近傍における横断面図、
図4は金属縦枠1c1に対する樹脂縦枠1c2の取付け状態を示す要部拡大図である。
【0013】
縦すべり出し窓は、
図1に示すように複合窓枠1を構成する上枠1aと下枠1bと、障子2を構成する上框2aと下框2bとの間にそれぞれ設けた上下1対のステー(図示せず。)により、障子2を室外側(屋外側)にすべり出して開閉させる周知のもので、
図1~
図4に示すように建物の窓開口部に装着される方形状に枠組みされた金属上枠1a1、金属下枠1b1および金属縦枠1c1の金属枠1a1~1c1と、その金属枠1a1~1c1の室内側にそれぞれ取付けられる樹脂上枠1a2、樹脂下枠1b2および樹脂縦枠1c2の樹脂枠1a2~1c2とを備えている。尚、金属枠1a1~1c1はアルミ等の押し出し型材から成型され、また樹脂枠1a2~1c2は塩化ビニルやアクリル樹脂等から押し出し成型される。
【0014】
また、
図1~
図4において、2a1は上框2aを構成するアルミ等の金属上框、2a2は上框2aを構成する樹脂上框、2b1は下框2bを構成する金属下框、2b2は下框2bを構成する樹脂下框で、2c1は縦框2cを構成する金属縦框2c1、2c2は縦框2cを構成する樹脂縦框2c2であり、これら上框2a、下框2bおよび左右の縦框2cによって複層ガラス等を支持するように構成されているが、本発明の特徴は障子2の構成とは関係がないため、複層ガラス等は図示を省略する。
【0015】
<上枠1a>
上枠1aは、
図1や
図2に示すように金属上枠1a1の室内側に樹脂上枠1a2を取付けて構成されている。
【0016】
(金属上枠1a1)
金属上枠1a1は、
図1に示すようにその断面形状が上部開口でほぼ長方形状の形材で構成されており、下方に障子2の上框2aを収容すると共に、室内側下端部に樹脂上枠1a2を装着できるように、鉛直方向に延びる室外側対向面部1a11および室内側対向面部1a12と、障子2に対向するように見込み方向に延びる見込み面部1a13と、傾斜面を有し樹脂上枠1a2が装着される樹脂上枠装着部1a14とを有すると共に、見込み面部1a13の室内側端部には下方に垂れ下がり、金属上枠1a1に樹脂上枠1a2を取付けるネジ3が螺合するネジ軸部螺合片1a15と、そのネジ軸部螺合片1a15から室外側方向へ所定間隔だけ離れた位置から下方に垂れ下がり、ネジ3の軸部3aが通されるネジ軸部通し片1a16等を備えている。
【0017】
また、金属上枠1a1には、室内側対向面部1a12下端部に第1被係合部1a17と、第1被係合部1a17から室外側方向へ所定間隔だけ離れた位置に第2被係合部1a18とを有すると共に、ネジ軸部通し片1a16下部に第3被係合部1a19を有している。
【0018】
そして、第2被係合部1a18と第3被係合部1a19が設けられたネジ軸部通し片1a16との間で下方へ垂れ下がるネジ軸部螺合片1a15には、
図2に示すようにネジ3の軸部3aが螺合するネジ孔1a15aが設けられている一方、ネジ軸部通し片1a16における第3被係合部1a19より上位の位置にはネジ3の軸部3aが通ると共に、頭部3bが後述するワッシャ4を介して圧接する通し孔1a16aが設けられている。
【0019】
尚、見込み面部1a13には、障子2の室外側上端部に当接する水切り材(図示せず。)を嵌め入れる水切り材嵌入溝1a13a(
図1参照。)や、金属上枠1a1を金属縦枠1c1に固定するためのネジ(図示せず。)が挿入されるタッピングホール1a13b(
図1,
図2参照。)等が設けられている。
【0020】
また、ネジ軸部通し片1a16における第3被係合部1a19の反対側には、障子2の室内側上端部に当接する戸当り気密材(図示せず。)を嵌め入れる気密材嵌入溝1a16b(
図1,
図2参照。)が設けられている。
【0021】
(樹脂上枠1a2)
樹脂上枠1a2は、
図1や
図2等に示すように、室内側へ突出する室内突出上板部1a21が設けられていると共に、金属上枠1a1の第1被係合部1a17、第2被係合部1a18および第3被係合部1a19それぞれに対向するように第1係合部1a22、第2係合部1a23および第3係合部1a24を有すると共に、第2係合部1a23と第3係合部1a24との間で上方へ延びる過大通し孔片1a25にはネジ孔1a15aおよび通し孔1a16aよりも内径が大きい過大通し部として過大通し孔1a25aが形成されている。
【0022】
そのため、
図1や
図2に示すよう金属上枠1a1に樹脂上枠1a2を装着すると、第1係合部1a22は第1被係合部1a17に係合し、第2係合部1a23は第2被係合部1a18に係合し、第3係合部1a24は第3被係合部1a19に係合することにより金属上枠1a1に樹脂上枠1a2が取り付けられる。
【0023】
また、ネジ3は、その軸部3aに後述するシールワッシャ4が予め通されており、シールワッシャ4を介し金属上枠1a1のネジ軸部通し片1a16の通し孔1a16aに通し、通し孔1a16aを通ったネジ3の軸部3aが樹脂上枠1a2の過大通し孔1a25aを螺合することなく通り抜けネジ孔1a15aに螺合することにより、金属上枠1a1に樹脂上枠1a2を取り付ける。
【0024】
そのため、樹脂上枠1a2は金属上枠1a1に対し第1係合部1a22、第2係合部1a23および第3係合部1a24がそれぞれ第1被係合部1a17、第2被係合部1a18および第3被係合部1a19に係合するだけで取付けることができるので、複合形材の製作時における作業性が向上する。
【0025】
また、通し孔1a16aの内径は、例えば、ネジ3の軸部3aの外径の4.0mmよりも大きい4.5mmであるのに対し、過大通し孔1a25aの内径は、ネジ3で留められた樹脂上枠1a2および金属上枠1a1がそれぞれ温度変化により膨張や収縮した場合でも、過大通し孔1a25aとネジ3の軸部3aとの間の遊び(隙間)により樹脂上枠1a2と金属上枠1a1との間の膨張率または収縮率の差を吸収して、金属上枠1a1に取付けた樹脂上枠1a2が温度変化により変形しないよう、通し孔1a16aの内径の4.5mmよりもさらに大きい6.0mmとしている。
【0026】
そのため、ネジ3で留められた金属上枠1a1および樹脂上枠1a2が温度変化により膨張や収縮した場合でも、ネジ3の軸部3aが通る樹脂上枠1a2の過大通し孔1a25aには遊び(隙間)が確保されているので、樹脂上枠1a2の温度変化による変形を極力抑えることができる。また、樹脂上枠1a2の面内方向(下枠2b側)への動きに対して、ネジの軸部3aが過大通し孔1a25aの内径に当接するので、樹脂上枠1a2が面内方向に抜け出ることを防止する抜け止め機能も備えている。
【0027】
<下枠1b>
下枠1bは、
図1に示すように金属下枠1b1の室内側に樹脂下枠1b2を取付けて構成されている。
【0028】
(金属下枠1b1)
金属下枠1b1は、
図1に示すような断面形状に形成されており、その室内側上端部には第1被係合部1b11と、第1被係合部1b11から室外側に向かって所定間隔だけ離れて第2被係合部1b12が設けられていると共に、第2被係合部1b12の反対側となる室外側には障子2の室内側下端部に当接する戸当り気密材(図示せず。)を嵌め入れる気密材嵌入溝1b13が設けられ、さらには金属下枠1b1を金属縦枠1c1に固定するためのネジ(図示せず。)が挿入されるタッピングホール1b14等が設けられている。
【0029】
(樹脂下枠1b2)
樹脂下枠1b2は、
図1に示すような断面形状に形成されており、室内側へ突出する樹脂上枠1a2の室内突出上板部1a21に対向するように突出する室内突出下板部1b21が設けられていると共に、金属下枠1b1の第1被係合部1b11および第2被係合部1b12それぞれに対向するように第1係合部1b22および第2係合部1b23が設けられており、金属下枠1b1に樹脂下枠1b2を装着すると、第1係合部1b22は第1被係合部1b11に係合し、第2係合部1b23は第2被係合部1a12に係合することにより金属下枠1b1に樹脂下枠1b2を取り付けることができる。
【0030】
つまり、下枠1bの場合、上枠1aや縦枠1cの場合とは異なり金属下枠1b1に対し樹脂下枠1b2を装着する際にネジ3を使用しない。
【0031】
<縦枠1c>
縦枠1cは、
図3および
図4に示すように金属縦枠1c1に樹脂縦枠1c2を取付けて構成される。尚、
図3および
図4は、戸先側の縦枠1c側近傍の断面構成を図示しているが、戸尻側の縦枠1cの構成も、戸先側の縦枠1cを構成する金属縦枠1c1および樹脂縦枠1c2と同様に構成される。
【0032】
(金属縦枠1c1)
金属縦枠1c1は、
図3および
図4に示すような断面形状に構成されており、室内側に樹脂縦枠1c2を装着して縦枠1cを構成するもので、室外側対向面部1c11と、室内側対向面部1c12と、障子2に対向して見込み方向に延びる見込み面部1c13とを有すると共に、見込み面部1c13から障子2側に向かって見付け方向に延び、金属縦枠1c1に樹脂縦枠1c2を固定するネジ3の軸部3aが通るネジ軸部通し片1c14と、ネジ軸部通し片1c14の中間から室内方向へ所定長さだけ延びた後、障子2側に向かって見付け方向に延び、ネジ3が螺合するネジ軸部螺合片1c15と、見込み面部1c13とネジ軸部通し片1c14とに接続してホロー部を形成するホロー部形成片1c16等を有している。
【0033】
また、金属縦枠1c1には、見込み面部1c13における障子2側には、室内側から第1被係合部1c17と、第1被係合部1a17から室外側方向へ所定間隔だけ離れた位置に第2被係合部1c18が設けられていると共に、ネジ軸部通し片1c14の障子2側の見付け方向端部に第3被係合部1c19を有している。
【0034】
そして、ネジ軸部通し片1c14には、第3被係合部1c19の反対側となる屋外側に障子2の戸先側が当たる戸当り気密材(図示せず。)が嵌め入れられる戸当り気密材嵌入溝1c14aが設けられ、また第3被係合部1c19よりも見込み面部1c13側にネジ3の軸部3aが通ると共に、頭部3bが後述するワッシャ4を介して圧接する通し孔1c14bが設けられている一方、その通し孔1c14bに対向するネジ軸部螺合片1c15には、ネジ3の軸部3a先端のネジ部が螺合するネジ孔1c15aが設けられている。
【0035】
(樹脂縦枠1c2)
樹脂縦枠1c2は、
図3や
図4等に示すように、室内側へ突出する室内突出縦板部1c21が設けられていると共に、金属縦枠1c1の第1被係合部1c17、第2被係合部1c18および第3被係合部1c19それぞれに対向するように第1係合部1c22、第2係合部1c23および第3係合部1c24が設けられていると共に、第2係合部1c23と第3係合部1c24との間で金属縦枠1c1に向かって見付け方向に延びる過大通し孔片1c25にはネジ孔1c15aおよび通し孔1c14bよりも内径が大きい過大通し部として過大通し孔1c25aが形成されている。
【0036】
そのため、上枠1aの樹脂上枠1a2と金属上枠1a1の場合と同様に、樹脂縦枠1c2は金属縦枠1c1に、第1係合部1c22、第2係合部1c23および第3係合部1c24と第1被係合部1c17、第2被係合部1c18および第3被係合部1c19との、第2係合部1c23および第3係合部1c24の係合だけで取付けることができるので、複合形材の製作時における作業性が向上する。
【0037】
また、過大通し孔1c25aの内径は、ネジ3で留められた樹脂縦枠1c2および金属縦枠1c1がそれぞれ温度変化により膨張や収縮した場合でも、過大通し孔1c25aとネジ3の軸部3aとの間の遊び(隙間)により樹脂縦枠1c2と金属縦枠1c1との間の膨張率または収縮率の差を吸収して樹脂縦枠1c2が温度変化により変形しないよう、通し孔1c14bの内径の4.5mmよりも大きい6.0mmとしている。尚、本実施形態では、過大通し孔1a25a,1c25aの内径を同一としたが、内径が異なってもよい。
【0038】
そのため、ネジ3で留められた金属縦枠1c1および樹脂縦枠1c2が温度変化により膨張や収縮した場合でも、樹脂縦枠1c2の温度変化による変形を極力抑えることができる。また、樹脂縦枠1c2の面内方向(戸尻側の縦枠1c側)への動きに対して、ネジの軸部3aが過大通し孔1c25aの内径に当接するので、樹脂縦枠1c2が面内方向に抜け出ることを防止する抜け止め機能も備えている。
【0039】
<ネジ3およびシールワッシャ4>
ネジ3は、
図1~
図4に示すようにネジ山が形成され軸部3aと、頭部3bとを有する。
【0040】
シールワッシャ4は、
図5(a)~(c)に示すような形状のもので、ステンレス製等のワッシャ4aの裏側にネオブレンゴム等のラバー4bが接着されたものである。
【0041】
ワッシャ4aには、
図5(a)~(c)に示すようにネジ3の軸部3aを隙間を空けて通すように軸部3aの外径よりやや大きい内径を有するワッシャ孔4a1が設けられている一方、ラバー4bには、シール効果を発揮するためネジ3の軸部3aに密接して通すように軸部3aの外径以下の内径を有するラバー孔4b1が設けられていると共に、湾曲した凹部4b2が設けられている。そのため、室外側からの雨水等の吹き込みが、通し孔から室内側に侵入することを防止できる。
【0042】
<実施形態の複合窓枠1における樹脂枠1a2~1c2の交換>
躯体に取付けた複合窓枠1の金属枠1a1~1c1から樹脂枠1a2~1c2を取外して新しい樹脂枠1a2~1c2に交換する場合、例えば、次に示すような順序で樹脂枠1a2~1c2を取外していく。
【0043】
(1)まずは左右の金属縦枠1c1それぞれに取付けていた樹脂縦枠1c2のシールワッシャ4付きのネジ3を外す。その際、室内突出上板部1a21、室内突出下板部1b21および室内突出縦板部1c21が室内額縁(図示せず。)等にネジ固定されている場合は、そのネジを外す。
【0044】
(2)次に、樹脂縦枠1c2を面内方向に向けズラして、金属縦枠1c1の第1被係合部1c17、第2被係合部1c18および第3被係合部1c19それぞれと樹脂縦枠1c2の第1係合部1c22、第2係合部1c23および第3係合部1c24との係合を解除し、金属縦枠1c1から樹脂縦枠1c2を取外す。その際、必要あれば、樹脂縦枠1c2を面外方向(
図1における左右方向、
図3における上下方向)に若干回転させながら面内方向にズラし金属縦枠1c1から取外す。
【0045】
(3)次に、縦枠1cの場合と同様に、金属上枠1a1に取付けていた樹脂上枠1a2のネジ3を外す。
【0046】
(4)そして、樹脂上枠1a2を面外方向または鉛直(下)方向に向けズラして、金属上枠1a1の第1被係合部1a17、第2係合部1a18および第3被係合部1a19と、樹脂上枠1a2の第1係合部1a22、第2係合部1a23および第3係合部1a24との係合を解除し、金属上枠1a1から樹脂上枠1a2を取外す。その際、必要あれば、樹脂上枠1a2を面外方向に若干回転させながら面外方向または鉛直(下)方向にズラし金属上枠1a1から取外す。
【0047】
(5)最後に、下枠1bの樹脂下枠1b2を取外すが、下枠1bはネジ3等で樹脂下枠1b2を金属下枠1b1に固定していないため、樹脂下枠1b2を面外方向または鉛直(上)方向に向けズラして、金属下枠1b1の第1被係合部1a11および第2被係合部1a12と樹脂下枠1b2の第1係合部1b22および第2係合部1b23との係合を解除し、金属下枠1b1から樹脂下枠1b2を取外す。尚、その際も必要あれば、樹脂下枠1b2を面外方向に若干回転させながら面外方向または鉛直(上)方向にズラし金属下枠1b1から取外す。
【0048】
以上で、躯体に取付けた複合窓枠1の金属枠1a1~1c1から既設の樹脂枠1a2~1c2が取外せたため、これとは逆の手順、つまり樹脂下枠1b2、樹脂上枠1a2および左右の樹脂縦枠1c2の順に新しい樹脂枠1a2~1c2を金属枠1a1~1c1に取付けていく。その際、樹脂上枠1a2および左右の樹脂縦枠1c2については、金属上枠1a1および左右の金属縦枠1c1側の被係合部にそれぞれの係合部を係合した後、シールワッシャ4に通したネジ3をそれぞれの過大通し孔片1a25,1c25に通して金属上枠1a1および左右の金属縦枠1c1に固定する。
【0049】
<実施形態の複合窓枠1を採用した縦すべり出し窓の主な効果>
従って、実施形態の複合窓枠1は、方形状に枠組みされる金属枠1a1~1c1と、その金属枠1a1~1c1の室内側にそれぞれ取付けられる樹脂枠1a2~1c2とを備え、その内、金属上枠1a1のネジ軸部螺合片1a15および左右の金属縦枠1c1のネジ軸部螺合片1c15には、それぞれ、見込み方向に向かうネジ3が螺合するネジ孔1a15a,1c15aを設ける一方、樹脂上枠1a2および樹脂縦枠1c2におけるネジ軸部螺合片1a15とネジ軸部螺合片1c15に対向する過大通し孔片1a25,1c25には、ネジ3の軸部3aの外径および通し孔1a16a,1c14bの内径よりも内径が大きい過大通し孔1a25a,1c25aが設けられており、その過大通し孔1a25a,1c25aにネジ3の軸部3aが螺合することなく通される。尚、下枠1bを構成する金属下枠1b1と樹脂下枠1b2とは第1被係合部1b11および第2被係合部1b12と第1係合部1b22および第2係合部1b23との係合のみでネジ3等の固定具は使用しない。
【0050】
そのため、実施形態の複合窓枠1では、樹脂枠1a2~1c2は金属枠1a1~1c1に係合するだけで取付けることができるので、複合形材の製作時における作業性が向上する。
【0051】
また、樹脂上枠1a2および樹脂縦枠1c2は、金属上枠1a1および金属縦枠1c1それぞれに遊び(隙間)を有する過大通し孔1a25a,1c25aにネジ3の軸部3aを通して取付けられるため、樹脂上枠1a2および樹脂縦枠1c2が温度変化により膨張や収縮した場合でも樹脂上枠1a2および樹脂縦枠1c2の温度変化による変形を極力抑えることができる。また、樹脂枠1a2~1c2の面内方向の動きに対して、ネジの軸部3aが過大通し孔1a25a,1c25aの内径に当接するので、樹脂枠1a2~1c2が面内方向に抜け出ることを防止できる。
【0052】
特に、金属上枠1a1には、その室内側端部から所定間隔を空けて下方へ延びる第1被係合部1a17、第2被係合部1a18および第3被係合部1a19が設けられ、第2被係合部1a18と第3被係合部1a19との間で下方へ垂れ下がるネジ軸部螺合片1a15にはネジ3が螺合するネジ孔1a15aが設けられている一方、第3被係合部1a19が設けられたネジ軸部通し片1a16にはネジが通る通し孔1a16aが設けられ、樹脂上枠1a2には、第1被係合部1a17、第2被係合部1a18および第3被係合部1a19それぞれに対向するように第1係合部1a22、第2係合部1a23および第3係合部1a24を有すると共に、第2係合部1a23と第3係合部1a24との間で上方へ延びる過大通し孔片1a25にはネジ孔1a15aおよび通し孔1a16aよりも内径が大きい過大通し孔1a25aが形成され、第1係合部1a22は第1被係合部1a17に係合し、第2係合部1a23は第2被係合部1a18に係合し、第3係合部1a24は第3被係合部1a19に係合し、通し孔1a16aから通したネジ3は、過大通し孔1a25aを介してネジ孔1a15aに螺合するように構成されている
【0053】
そのため、金属枠1a1~1c1と樹脂枠1a2~1c2の係合箇所およびネジ止め箇所は全て室内側のため、樹脂枠1a2~1c2の交換は室内側から行なうことができる。よって、作業性が向上すると共に、安全に作業を行なうことができる。
【0054】
また、樹脂枠1a2~1c2は金属枠1a1~1c1に対して、各枠毎にそれぞれ取外すことができるので、室内額縁等の内装仕上げに極力影響を与えることなく交換作業を行なうことができる。
【0055】
尚、実施形態の説明では、金属上枠1a1および金属縦枠1c1のネジ軸部螺合片1a15,1c15それぞれに予めネジ孔1a15a,1c15aを設けて説明したが、本発明ではこれに限らず、ネジ3としてテクスネジ(ドリルネジ)等を使用する場合には予めネジ孔1a15a,1c15aを設ける必要がなくなる。また、過大通し部1a25a,1c25aは通し孔で説明したが、ネジ3が螺号することなく軸部3aが通り抜ければ、形状は限定されない。
【0056】
また、実施形態の説明では、本発明に係る複合窓枠1を建物の窓開口部に装着される縦すべり出し窓に採用して説明したが、本発明ではこれに限らず、横すべり出し窓や縦軸回転窓、横軸回転窓、外倒し窓等の他の開き窓や、引き違い窓、はめ殺し窓等の他の複合窓枠、さらには室内建具の複合窓枠にも採用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 複合窓枠
1a 上枠
1a1 金属上枠(金属枠)
1a11 室外側対向面部
1a12 室内側対向面部
1a13 見込み面部
1a13a 水切り材嵌入溝
1a13b タッピングホール
1a14 樹脂上枠装着部
1a15 ネジ軸部螺合片
1a15a ネジ孔
1a16 ネジ軸部通し片
1a16a 通し孔
1a16b 気密材嵌入溝
1a17 第1被係合部
1a18 第2被係合部
1a19 第3被係合部
1a2 樹脂上枠(樹脂枠)
1a21 室内突出上板部
1a22 第1係合部
1a23 第2係合部
1a24 第3係合部
1a25 過大通し孔片
1a25a 過大通し孔(過大通し部)
1b 下枠
1b1 金属下枠(金属枠)
1b11 第1被係合部
1b12 第2被係合部
1b2 樹脂下枠(樹脂枠)
1b21 室内突出下板部
1b22 第1係合部
1b23 第2係合部
1c 縦枠
1c1 金属縦枠(金属枠)
1c2 樹脂縦枠(樹脂枠)
1c11 室外側対向面部
1c12 室内側対向面部
1c13 見込み面部
1c14 ネジ軸部通し片
1c14a 戸当り気密材嵌入溝
1c14b 通し孔
1c15 ネジ軸部螺合片
1c15a ネジ孔
1c16 ホロー部形成片
1c17 第1被係合部
1c18 第2被係合部
1c19 第3被係合部
1c2 樹脂縦枠
1c21 室内突出縦板部
1c22 第1係合部
1c23 第2係合部
1c24 第3係合部
1c25 過大通し孔片
1c25a 過大通し孔(過大通し部)
2 障子
2a 上框
2b 下框
2c 縦框
2e 複層ガラス
3 ネジ
3a 軸部
3b 頭部
4 シールワッシャ
4a ワッシャ
4b ラバー