(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ヘッダー加工機
(51)【国際特許分類】
B21K 1/62 20060101AFI20241115BHJP
H01H 11/04 20060101ALI20241115BHJP
B21K 1/48 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B21K1/62 A
H01H11/04 B
B21K1/48 C
(21)【出願番号】P 2023199315
(22)【出願日】2023-11-24
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】523445748
【氏名又は名称】佐藤 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100198890
【氏名又は名称】森戸 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-305329(JP,A)
【文献】特開平04-143039(JP,A)
【文献】実公昭57-008988(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21K 1/62
B21K 1/48
H01H 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属線材を、それぞれ線材カッターにより切断し、切断片同士をパンチ及びダイスにより接合し成型することで、リベット型の電気接点を製造するヘッダー加工機において、
水平方向とその逆方向に往復直線運動する、
円筒形状部を有する少なくとも一部が円筒形状の外形であって
、該円筒形状部の中心軸方向と
該往復直線運動の方向は一致し、
該円筒形状部のダイス側の円面に、丸穴の凹部と、
該凹部の底面に該凹部と同じ中心軸の丸穴の貫通孔を有するスライドヘッドと、
2つの径の異なる円筒を同一の中心軸上に連ねた外形を有するパンチホルダを備え、
該パンチホルダは、該往復直線運動の方向を回転軸方向とし
該スライドヘッドに対し回転摺動可能に、
大径円筒部が該凹部と、小径円筒部が該貫通孔に篏合し、
該スライドヘッドの円筒形状部の中心軸と、該パンチホルダの回転軸は一致し、
該パンチホルダの回転軸を中心とする点対称、または中心角が120°となる位置に保持する複数のパンチが、該パンチホルダの回転または反転により切り替わることを特徴とするヘッダー加工機。
【請求項2】
複数の金属線材を、それぞれ線材カッターにより切断し、切断片同士をパンチ及びダイスにより接合し成型することで、リベット型の電気接点を製造するヘッダー加工機において、
水平方向とその逆方向に往復直線運動する、円筒形状部を有する少なくとも一部が円筒形状の外形であって、該円筒形状部の中心軸方向と該往復直線運動の方向は一致し、該円筒形状部のダイス側の円面に、丸穴の凹部と、該凹部の底面に該凹部と同じ中心軸の丸穴の貫通孔を有するスライドヘッドと、
2つの径の異なる円筒を同一の中心軸上に連ねた外形を有するパンチホルダを備え、
該パンチホルダは、該往復直線運動の方向を回転軸方向とし該スライドヘッドに対し回転摺動可能に、大径円筒部が該凹部と、小径円筒部が該貫通孔に篏合し、
該パンチホルダは複数のパンチを保持し、
該パンチホルダの回転軸が、該スライドヘッドの円筒形状部の中心軸と該パンチホルダの回転軸が一致する所から、該複数のパンチのうち一のパンチの中心軸と該スライドヘッドの円筒形状部の中心軸が一致するようオフセットされていることで、該パンチホルダの回転または反転により切り替わるパンチの中心軸と
該スライドヘッドの円筒形状部の中心軸が一致した状態で成型を行うことを特徴とするヘッダー加工機。
【請求項3】
前記凹部の端にオイルシールを備えることを特徴とする請求項
1または
2に記載のヘッダー加工機。
【請求項4】
前記スライドヘッドは、両端が筐体に支持される複数のガイドシャフトにより案内され、
該スライドヘッドは、その円筒形状部の中心軸からそれぞれ均等間隔かつ等しい中心角となる位置に、前記往復直線運動の方向に貫通する
該ガイドシャフトのための複数の貫通孔を有し、
該複数の貫通孔のプレス方向側の端の全てにオイルシールを備えることを特徴とする請求項
3に記載のヘッダー加工機。
【請求項5】
筐体前部を前記スライドヘッドの円筒形状部が貫通可能な丸穴を有するオイルシール蓋で覆い、
該オイルシール蓋は
該丸穴の内側端にオイルシールを備え、
また、
該筐体は、前記線材カッターを格納するための線材カッターユニットを支持し、
該線材カッターユニットは、
該線材カッターを挿通するための貫通孔を有し、
該貫通孔の内側の端にオイルシールを備えることを、
特徴とする請求項
4に記載のヘッダー加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リベット型の電気接点を製造するヘッダー加工機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属線材を切断し、その切断片を冷間圧延加工により塑性変形させて、リベット型の電気接点を製造する技術が従来から知られており、その製造装置は、一般にヘッダー機またはヘッダー加工機等と称されている。
【0003】
加工の主要は、2種類の往復直線運動により可動するパンチと、パンチを受けるダイスによる異種金属同士の接合と成型である。2種類の往復直線運動とは、1つのダイスに対し、複数のパンチからパンチを切り替えるための可動と、パンチのプレス動作による可動を意味し、それぞれの運動方向は互いに直交する(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-143039号公報
【文献】特開平4-305329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘッダー加工機により製造されるリベット型の電気接点は、主に、自動車や一般電化製品のリレー部品等の電気接点として用いられるものである。その性質上、接点不良は許されものではなく、特に自動車に供給する場合は、この接点不良が重大事故の原因になる可能性もあることから、100%の良品の供給が求められる。
【0006】
ところが、従来技術においては、パンチホルダ等の摺動部に注油されている潤滑油が摺動時に飛散し、これが接点部に付着して接点不良の原因となる問題がある。
【0007】
例えば、順送プレス加工によって製造されるコネクタ部品の電気接点等は、通常、異種金属同士の接合加工を必要としないから洗浄やエアブローの工程により電気接点部に付着した油等の異物を除去できるため、この問題は生じにくい。
【0008】
しかし、ヘッダー加工によって異種金属同士を接合する場合は、その際に、接合部に入り込み金属間に付着した油をその後の洗浄等で除去することができず、また、従来技術による装置においては、その構造上オイルシールの付加等、油の飛散を防ぐための封止もできない。
【0009】
本発明の目的は、リベット型の電気接点における潤滑油による接点不良の問題を解決するために、潤滑油の飛散を防止する構造を備えるヘッダー加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の金属線材をそれぞれ線材カッターにより切断し切断片同士をパンチ及びダイスにより接合し成型することでリベット型の電気接点を製造するヘッダー加工機において、水平方向とその逆方向に往復直線運動する、外形の少なくとも一部が円筒形状であってその中心軸方向と往復直線運動の方向は一致し、円筒形状部のダイス側の円面に、中心軸を一とする丸穴の凹部とその底面の丸穴の貫通孔を有するスライドヘッドと、往復直線運動の方向を回転軸方向とし、スライドヘッドに対し回転摺動可能にその凹部と貫通孔に篏合するパンチホルダを備えることを特徴とするヘッダー加工機に関するものである。
【0011】
ここで、「外形の少なくとも一部が円筒形状」とは、例えば、内燃エンジン用ピストンのように、シリンダー内面と接する円筒形状部分とコンロット連結部の円筒形状部分ではない部分から構成される内燃エンジン用ピストンのように部分的に円筒形状が含まれる場合と全体的に円筒外形と認識できる場合が含まれることを意味する。
【0012】
また、本発明は、上記スライドヘッドの円筒形状部の中心軸と、上記パンチホルダの回転軸が一致することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記パンチホルダは複数のパンチを支持し、そのうちの一のパンチの中心軸と上記スライドヘッドの円筒形状部の中心軸が一致した状態で成型を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記凹部の端にオイルシールを備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記スライドヘッドは、両端が筐体に支持される複数のガイドシャフトにより案内され、そのスライドヘッドは、その円筒形状部の中心軸からそれぞれ均等間隔かつ等しい中心角となる位置に、上記往復直線運動の方向に貫通するそのガイドシャフトのための複数の貫通孔を有し、その複数の貫通孔のプレス方向側の端の全てにオイルシールを備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、筐体前部を上記スライドヘッドの円筒形状部が貫通可能な丸穴を有するオイルシール蓋で覆い、そのオイルシール蓋は丸穴の内側端にオイルシールを備え、また、筐体は、線材カッターを格納するための線材カッターユニットを支持し、その線材カッターユニットは、線材カッターを挿通するための貫通孔を有し、その貫通孔の内側の端にオイルシールを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パンチホルダとスライドヘッド間の摺動面は、常に双方から覆われている状態にある。すなわち、いかなるパンチホルダの回転変位状態においても潤滑油付着面が露出しない。よって、この摺動面からの潤滑油飛散を防止することができる。
【0018】
本発明によれば、パンチホルダの回転軸とスライヘッドの中心軸が一致するため、偏心状態の摺動に起因する部品のガタツキ、不均一な摩耗等、製品精度への影響を抑制することができる。
【0019】
本発明によれば、加圧するパンチの中心軸とスライドヘッドの中心軸が一致するため、偏心加圧に起因するパンチの撓みや破損を抑制することができる。
【0020】
本発明によれば、パンチホルダとスライドヘッド間の摺動面において、スライドヘッドのプレス方向側の端にオイルシールを備えるため、この摺動面からの潤滑油の漏れ、飛散を防止することができる。
【0021】
本発明によれば、スライドヘッドは、スライドヘッドの中心軸から対称に配置される複数のガイドシャフトによって精密に案内されるため、ダイスに対するパンチの位置ずれを微調整のためのスペーサーを必要とせず、部品のガタツキ、不均一な摩耗等、製品精度への影響を抑制しすることができる。
【0022】
本発明によれば、複数のガイドシャフトが挿通するスライドヘッドの貫通孔全てにおいて、プレス方向側の端にオイルシールを備えるため、ガイドシャフトとスライドヘッド間の摺動面からの潤滑油の漏れ、飛散を防止することができる。
【0023】
本発明によれば、筐体前部を、オイルシールを備えるオイルシール蓋で覆うため、スライドヘッド周辺の可動部、例えば、コンロッド、クランク軸等からの潤滑油の飛散を防止することができる。
【0024】
本発明によれば、線材カッターユニットの内側の端にオイルシールを備えるため、線材カッター可動部からの潤滑油の飛散を防止することができる。
【0025】
本発明によれば、筐体内部に形成された潤滑油からの封止領域で、異種金属同士を接合し成型するため、潤滑油付着に起因する接点不良の問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図3-1】
図3-1から
図3-8は加工工程を示す斜視図である。
【
図3-2】
図3-1から
図3-8は加工工程を示す斜視図である。
【
図3-3】
図3-1から
図3-8は加工工程を示す斜視図である。
【
図3-4】
図3-1から
図3-8は加工工程を示す斜視図である。
【
図3-5】
図3-1から
図3-8は加工工程を示す斜視図である。
【
図3-6】
図3-1から
図3-8は加工工程を示す斜視図である。
【
図3-7】
図3-1から
図3-8は加工工程を示す斜視図である。
【
図3-8】
図3-1から
図3-8は加工工程を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明を示す上面方向から見た断面図である。
【
図6-1】
図6-1は、異なる実施形態を示す簡略図である。
【
図6-2】
図6-2は、異なる実施形態を示す簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のヘッダー加工機に係る好適な実施形態について、
図1から
図6を参照して説明する。
【0028】
図1、
図2によって、本発明にかかる主要部品の機能、位置等を説明する。
図1の紙面上側は、ヘッダー加工機の上側を示し、紙面下側は、ヘッダー加工機の下側を示している。また、予備成型パンチ15と成型ダイス17を結ぶ方向は水平方向であり、紙面右側をヘッダー加工機の前側、紙面左側をヘッダー加工機の後ろ側とする。なお、
図2における上板90等、いずれの図面も説明上不要な部品を省略している。
【0029】
筐体1は、4本のガイドシャフト6a、6b、6c、6dを支持する。支持方法は、筐体にあらかじめ設けた孔への圧入等、従来技術を用いる。また、筐体1は、ベアリング(図示省略)を介して、クランク軸31を支持する。コンロッド32は、一方でクランク軸31と連結し、他方でスライドヘッド5と連結する。
【0030】
それぞれの連結方法は、フライホイール30を介してクランク軸31に伝達される回転運動を、コンロッド32によって往復直線運動に変換しスライドヘッド5に伝達する従来技術による。往復直線運動の方向は、もちろんパンチとダイスを結ぶ方向である水平方向である。筐体1は、上面の上板90と前面のオイルシール板80により蓋をされ、内部からの潤滑油の飛散がない。
【0031】
スライドヘッド5は、ヘッダー加工機前側と同方向である外形前側に円筒形状部を有し、その中心軸方向は上記往復直線運動の方向と一致する。 つまりスライドヘッド5の外形前面は円形であって、その外周を端とする円筒側面部の少なくとも一部分が、後述するオイルシールと全周に渡って密接する。
【0032】
スライドヘッド5の円筒形状部は、ガイドシャフト6a、6b、6c、6d用の貫通孔を有する。ガイドシャフト6a、6b、6c、6dは、スライドヘッド5の往復直線運動の案内に用いられ、よって、その貫通孔の貫通方向は、往復直線運動の方向、すなわちスライドヘッド5の円筒形状部の中心軸の方向と一致する。
【0033】
ガイドシャフト6a、6b、6c、6dは、従来技術の丸棒のタイプであり、よって上記貫通孔は丸穴である。その4つの貫通孔は、それぞれ上記中心軸から等しい間隔に位置し、また、中心軸と貫通孔の距離を半径と考えたときに、中心軸を中心とした場合の中心角が均等に90度となる位置である。中心軸とガイドシャフトの関係において偏心を防ぐ目的のためである。
【0034】
スライドヘッド5の円筒形状部は、ガイドシャフト6a、6b、6c、6d用の貫通孔の他、上記中心軸を中心とする段付きの丸孔貫通孔を有する。その段付き部は、パンチホルダ10を回転自在に保持する。パンチホルダ10は円筒形状を有し、その回転軸は、スライドヘッド5の中心軸と一致する。これにより、偏心に起因する互いのガタや摩耗を防ぐことができる。
【0035】
ガイドシャフト6a、6b、6c、6d用の貫通孔と上記段付きの貫通孔は互いに干渉せず、スライドヘッド5の前側から見て、段付きの丸穴貫通孔の外側にガイドシャフト6a、6b、6c、6d用の貫通孔がそれぞれ均等の長さを隔てて位置する。
【0036】
なお、 「段付きの丸穴貫通孔」とは、中心軸を一とするスライドヘッド5の外形前面に設けられた丸穴の凹部と、その凹部の底部に設けられた凹部の径よりも小さい径の丸穴貫通孔を意味する。
【0037】
パンチホルダ10は、2つの位置調整用サブパンチホルダ11をいわゆる入れ子方式に保持し、2つの位置調整用サブパンチホルダ11は、予備成型パンチ15及び成型パンチ16をそれぞれ保持する。予備成型パンチ15と成型パンチ16は互いに、パンチホルダ10の回転軸を中心として点対称に位置する。 つまり、パンチホルダ10が180度回転すると、予備成型パンチ15と成型パンチ16の位置が互いに入れ替わる。
【0038】
位置調整用サブパンチホルダ11とは、成型ダイス17との関係において、パンチの位置の微調整に用いるものであり、その調整方法は従来技術によるものであるが、本発明により、偏心や部品のガタ等に起因する位置ずれはほとんど解消され、いわば 「念のため」の位置づけの部品である。
【0039】
ここで、
図3-1から
図3-8を用いて、本発明に係るパンチホルダ10の回転動作を含め、加工工程を説明する。便宜上、位置調整用サブパンチホルダ11等は省略している。
【0040】
図3-1は材料送りを示している。線材2及び線材3は、それぞれのカットダイス41の中心部に設けられた貫通孔を通り、パンチホルダ10の方向へ所定のピッチ分送られる。
【0041】
図3-2は材料カット工程から切断片搬送工程を示している。線材カッター40により、線材2、線材3はそれぞれ切断片にカットされるとともに、成型ダイス17と予備成型パンチ15間の位置へ搬送され、それぞれの切断片は重なった状態で支持される(切断片支持部品は図示省略)。
【0042】
図3-3、
図3-4は予備成型工程を示している。それぞれの切断片は重なった状態で、予備成型パンチ15によって成型ダイス17に押し込まれながら予備成型される。
図3-4において、予備成型パンチ15は下死点に到達することで、切断片は接合し、予備成型が完了する。
【0043】
図3-5はパンチの切り換えを示している。予備成型パンチ15は、予備成型完了後上死点まで移動する。パンチホルダ10が、パンチ側からダイス側を見て反時計回りに180度回転することで、予備成型パンチ15と成型パンチ16の位置が切り替わる。
【0044】
図3-6は本成型工程を示している。成型パンチ16は成型ダイス17に向かって下死点まで移動し本成型が完了する。
【0045】
図3-7はパンチの切り換えを示している。成型パンチ16は、本成型完了後上死点まで移動する。パンチホルダ10が、パンチ側からダイス側を見て反時計回りに180度回転することで、成型パンチ16と予備成型パンチ15の位置が切り替わる。なお、パンチホルダ10の回転方向は反時計回りの回転に限定されるものではなく、また、パンチの切り換えはパンチホルダ10の反転によるものでもよい。
【0046】
図3-8は製品のノックアウトを示す図である。本成型終了後、成型ダイス17内の切断片は製品100として、イジェクターピン等(図示省略)により排出される。その後は再び材料送り工程に移行し、上記工程が繰り返される。
【0047】
【0048】
スライドヘッド5aは略方形状であり、外形側面が筐体1aの内側側面Xに対し摺動し、水平方向に往復直線運動をする。つまり、筐体1aの内側側面Xは、スライドヘッド5aの案内部分である。ちなみに、スライドヘッド押さえ9aによってスライドヘッド5aの垂直方向の動きは規制されている。
【0049】
パンチホルダ10aはサブパンチホルダ11aを介して予備成型パンチ15a、成型パンチ16aを支持し、パンチホルダ10aが垂直方向に摺動、往復直線運動することで、縦列に配置されているそれぞれのパンチを切り替えることができる。パンチホルダ10aは略角柱状であり、両側の側面Yと後面Zが摺動面である。スライドヘッド5aの前面は、パンチホルダ10aを摺動可能に支持するための凹部を有する。
【0050】
以上のように、従来技術のヘッダー加工機は、特に、筐体1aの内側側面X、パンチホルダ10aの外形側面Y、後面Zにおいて、潤滑油付着面が摺動の際に露出してしまう構造であるため、上記摺動部分からの潤滑油の飛散が問題であった。また、その構造上オイルシールを設けることもできなかった。
【0051】
図5は、本発明を示す上面方向から見た断面図である。本発明について引き続き説明する。
【0052】
パンチホルダ10は、2つの径の異なる円筒を同一の中心軸上に連ねた外形を有する。パンチホルダ10の径の大きい方の円筒部は、スライドヘッド5の円筒形状部に有する段付きの丸穴貫通孔の凹部に篏合し、凹部の底面と側面において回転摺動可能に支持される。なお、凹部の周端は全周切り欠き、そこにパンチホルダ用オイルシール70が装着されている。
【0053】
パンチホルダ10の径の小さい方の円筒部は、スライドヘッド5の凹部と同じ中心軸の小さい径の貫通孔に篏合する。小さい径の貫通孔の両周端は全周切り欠き、それぞれラジアルベアリング84が装着されパンチホルダ10の径の小さい方の円筒部を支持する。
【0054】
パンチホルダ10の径の小さい方の円筒部の端は、カップリング85を介し、サーボモータ86に連結するため、スライドヘッド5の貫通孔から突出する。円筒部の端とカップリング85、サーボモータ86との連結方法は従来技術を用いる。
【0055】
スライドヘッド5の円筒部の後側はサーボモータ86を支持する支持部とコンロッド32を連結する連結部を構成する。支持部は、スライドヘッド5の円筒部を形成する後方側円面から水平後方に向かって延伸する4本の支持棒とそれと一体の略直方体の支持台からなる。支持棒のそれぞれは、支持台の四隅で繋がる。
【0056】
連結部は、支持台後方側の面の2つの短辺端から、水平後方に向かって延伸する2本の支持柱とその支持柱に両端支持される軸からなる。それぞれの支持柱は軸を両端支持するための軸孔を有し、それに篏合する軸を介してコンロッド32と連結する。
【0057】
サーボモータ86の支持台への固定及び、スライドヘッド5とコンロッド32の連結については従来技術による。
【0058】
以上から、パンチホルダ10の回転摺動部に付着する潤滑油はいずれの回転変位においても露出することはなく、本箇所からの潤滑油飛散を抑制することができる。更にパンチホルダ用オイルシール70によって封止されるため、ここからの潤滑油の飛散を完全に抑えることができる。
【0059】
筐体1の前面はヘッダー加工機の前側から見てU字形状に開口しており、開口部は、スライドヘッド5との干渉を妨げる程度の径の貫通孔を有するオイルシール板80によって覆われる。オイルシール板80の貫通孔の内側周端は全周切り欠かれ、そこにスライドヘッド5側面との隙間を封じるスライドヘッド用オイルシール71が装着されている。
【0060】
筐体1は、その両側面で線材カッター40を格納するための線材カッターユニットを支持する。線材カッターユニットは、線材カッター40が貫通するための貫通孔を有し、貫通孔は、オイルシール板80と同様の構造の線材カッター用オイルシール73が装着されているカバーで覆われている。これは、線材カッター40の摺動部分からの潤滑油飛散を防ぐものである。
【0061】
また、スライドヘッド5のガイドシャフト6a、6b、6c、6d用の貫通孔は、それぞれ、ヘッダー加工機前面側の周端を全周切り欠き、そこにガイドシャフト用オイルシール72が装着されている。
【0062】
従って、スライドヘッド5前面、ダイス成型面、及び筐体上下面の延長面で囲まれた領域は、スライドヘッド用オイルシール71、ガイドシャフト用オイルシール72、線材カッター用オイルシール73によって、周囲摺動部からの潤滑油が封止される領域となるため、成型時、つまり線材の切断片の接合間の潤滑油の付着を完全に迎えることができる。
【0063】
次に、
図6-1、
図6-2を用いて、異なる実施形態について説明する。
図6-1は、パンチホルダの回転軸位置をスライドヘッド5の円筒形状部の中心軸位置(図左側)から高さ方向にオフセットさせたときの簡略図である。図右側に示すようにスライドヘッド5の中心軸と、一方のパンチの中心軸を一にすることで、高荷重のかかるパンチの撓みや座屈による破損を防ぐことができる。
【0064】
よって、この場合のスライドヘッド5の段付きの丸穴貫通孔の中心は、スライドヘッド5の円筒形状部の中心軸から、高さ方向にパンチの中心軸とスライドヘッド5の中心軸とを一致させる分だけオフセットされることになる。合わせて、サーボモータ86支持台等のスライドヘッド5の円筒形状部の後ろ側も同様にオフセットされる。
【0065】
図6-2は、パンチが3つまたは4つあるとき、すなわち成型工程が3または4あるときのパンチホルダ10上のパンチの配置を示している。中心角が120°となる位置(図左側)、または90°となる位置(図右側)にパンチを配置し、パンチホルダの回転角度を同じ角度に制御することで、3または4の成型工程に対処することができる。
【0066】
以上、本発明のヘッダー加工機における実施形態について説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種変形を行うことができる。
【符号の説明】
【0067】
1筐体
5スライドヘッド
6a~6dガイドシャフト
10パンチホルダ
15予備成型パンチ
16成型パンチ
17成型ダイス
40線材カッター
41カットダイス
【要約】
【課題】
リベット型の電気接点の製造において、部品の摺動時に加工機の潤滑油が飛散し、電気接点部に付着する接点不良の問題を解決するヘッダー加工機を提供する。
【解決手段】
潤滑油が付着する加工機の部品の摺動面を、外部に露出しない構造とすることにより、部品摺動時の潤滑油の飛散を抑制することができる。また、複数のオイルシールにより潤滑油が飛散しない封止領域を確保し、その領域で成型加工を行うことで、金属間接合部への潤滑油の付着を防止することができる。
【選択図】
図1