(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂および光学部材
(51)【国際特許分類】
C08G 64/06 20060101AFI20241115BHJP
C08G 63/00 20060101ALI20241115BHJP
C08G 63/64 20060101ALI20241115BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20241115BHJP
C07C 43/23 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
C08G64/06
C08G63/00
C08G63/64
G02B1/04
C07C43/23 D CSP
(21)【出願番号】P 2023505249
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2022006251
(87)【国際公開番号】W WO2022190800
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2021037499
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021037501
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】大山 達也
(72)【発明者】
【氏名】布目 和徳
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/226126(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/044214(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63/00-64/42
G02B 1/04
C07C43/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1
b)で表される繰り返し単位を含む熱可塑性樹脂。
【化1】
(式中、環Zは
独立に1,4-フェニレン又は2,6-ナフチレンを示し、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、Ar
1およびAr
2は
フェナントリルであり、L
1およびL
2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1を示し、Wは下記式(2)および下記式(3)で表される群より選ばれる少なくとも1つである。)
【化2】
【化3】
(式中、Xは2価の連結基を示す。)
【請求項2】
前記式(1
b)で表される繰り返し単位が下記式(4)で表される請求項
1に記載の熱可塑性樹脂。
【化2】
(式中、環Zは
独立に1,4-フェニレン又は2,6-ナフチレンを示し、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、L
1およびL
2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1を示し、Wは前記式(2)および前記式(3)で表される群より選ばれる少なくとも1つである。)
【請求項3】
前記式(1
b)で表される繰り返し単位が下記式(5)で表される請求項1
又は2に記載の熱可塑性樹脂。
【化3】
(式中、L
1およびL
2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1を示し、Wは前記式(2)および前記式(3)で表される群より選ばれる少なくとも1つである。)
【請求項4】
前記式(3)中のXがフェニレン基、ナフタレンジイル基、下記式(6)で表される基より選ばれる少なくとも一つを繰り返し単位として含む請求項1~
3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【化4】
(式中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して水素原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基又はハロゲン原子である。)
【請求項5】
式(1
b)で表される繰り返し単位に加え、さらに下記式(7)~(10)で表される単位からなる群より選ばれる少なくとも1つを繰り返し単位として含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【化5】
(式中、R
5およびR
6はそれぞれ独立して水素原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基又はハロゲン原子である。)
【化6】
(式中、R
7およびR
8はそれぞれ独立して水素原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基又はハロゲン原子である。)
【化7】
(式中、R
9およびR
10はそれぞれ独立して水素原子、香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基又はハロゲン原子である。)
【化8】
(式中、R
11およびR
12はそれぞれ独立して水素原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基又はハロゲン原子であり、Uは単結合または2価の連結基である。)
【請求項6】
屈折率が1.650~1.800である請求項1~
5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項7】
比粘度が0.12~0.40である請求項1~
6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項8】
ガラス転移温度が、130~190℃である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項9】
配向複屈折が、5.0×10
-3 以下である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂からなる光学部材。
【請求項11】
光学レンズである請求項
10に記載の光学部材。
【請求項12】
下記式(a
-II)で表される、
熱可塑性樹脂の原料としてのフルオレン骨格を有する化合物。
【化9】
(式中、環Zは
独立に1,4-フェニレン又は2,6-ナフチレンを示し、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、Ar
1およびAr
2は
フェナントリルであり、L
1およびL
2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1である。)
【請求項13】
前記式(a
-II)が下記式(b)で表される請求項
12に記載のフルオレン骨格を有する化合物。
【化10】
(式中、環Zは
独立に1,4-フェニレン又は2,6-ナフチレンを示し、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、L
1およびL
2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1である。)
【請求項14】
前記式(a
-II)が下記式(c)で表される請求項
12又は13に記載のフルオレン骨格を有する化合物。
【化11】
(式中、L
1およびL
2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1である。)
【請求項15】
屈折率が1.70以上である請求項
12~14のいずれか1項に記載のフルオレン骨格を有する化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い屈折率、高耐熱性、低複屈折をバランスさせることができる熱可塑性樹脂、およびこの熱可塑性樹脂の原料として用いることができるフルオレン骨格を有する化合物(以下、フルオレン化合物ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ、ビデオカメラあるいはカメラ付携帯電話、テレビ電話あるいはカメラ付ドアホンなどには、撮像モジュールが用いられている。近年、この撮像モジュールに用いられる光学系では、特に小型化が求められている。光学系を小型化していくと光学系の色収差が大きな問題となる。そこで、光学レンズの屈折率を高く、かつアッベ数を小さくして高分散にした光学レンズ材料と、屈折率を低くかつアッベ数を大きくして低分散にした光学レンズ材料を組み合わせることで、色収差の補正を行うことができることが知られている。
【0003】
光学系の材料として従来用いられていたガラスは要求される様々な光学特性を実現することが可能であると共に、環境耐性に優れているが、加工性が悪いという問題があった。これに対し、ガラス材料に比べて安価であると共に加工性に優れる樹脂が光学部品に用いられてきている。特に、フルオレン骨格やビナフタレン骨格を有する樹脂が、高屈折率である等の理由から使用されている。例えば、特許文献1や特許文献2には、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを用いた屈折率1.64の高屈折率樹脂が記載されている。しかしながら、屈折率が不十分であり、更なる高屈折率化が求められている。また、特許文献3には、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレンを有する熱可塑性樹脂が記載されている。
【0004】
さらに、高屈折率化を達成するため、特許文献4や特許文献5ではフルオレン骨格に芳香環を導入した熱可塑性樹脂が記載されており、高い屈折率、高耐熱化に効果的であるものの、フルオレン部を中心とした共役の広がりによって屈折率の上昇とともに複屈折も増大させてしまい、光学部材としては課題があることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2007/142149号公報
【文献】特開平7-198901号公報
【文献】特開2015-86265号公報
【文献】国際公開第2019/044214号公報
【文献】国際公開第2020/226126号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高屈折率、高耐熱性、低複屈折のバランスに優れた熱可塑性樹脂及びそれを含む光学部材、並びにこのような熱可塑性樹脂の原料として用いることができる新規フルオレン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、フルオレン骨格に3つ以上のベンゼン環が縮環した構造を導入した特定の化合物を用いて製造した熱可塑性樹脂が前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0008】
≪態様1≫
下記式(1)で表される繰り返し単位を含む熱可塑性樹脂。
【化1】
(式中、環Zは(同一または異なって)芳香族炭化水素環を示し、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立にベンゼン環が3つ以上縮環した多環芳香族炭化水素基であり、L
1およびL
2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1を示し、Wは下記式(2)および下記式(3)で表される群より選ばれる少なくとも1つである。)
【0009】
【0010】
【0011】
≪態様2≫
前記式(1)が下記式(1a)~(1d)で表される単位からなる群より選ばれる少なくとも一つである態様1に記載の熱可塑性樹脂。
【化4】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
(式中、環Zは(同一または異なって)芳香族炭化水素環を示し、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、Ar1およびAr2はそれぞれ独立にベンゼン環が3つ以上縮環した多環芳香族炭化水素であり、L1およびL2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1を示し、Wは前記式(2)および前記式(3)で表される群より選ばれる少なくとも1つである。)
【0016】
≪態様3≫
前記式(1)が前記式(1b)である態様2に記載の熱可塑性樹脂。
【0017】
≪態様4≫
前記式(1)中のAr1およびAr2がフェナセン型の多環芳香族炭化水素である態様1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂。
【0018】
≪態様5≫
前記式(1)において、Ar1およびAr2が3つもしくは4つのベンゼン環が縮環した多環芳香族炭化水素である態様1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【0019】
≪態様6≫
前記式(1)において、Ar1およびAr2がフェナントレンである態様1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【0020】
≪態様7≫
前記式(1)で表される繰り返し単位が下記式(4)で表される態様1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【化8】
【0021】
(式中、環Zは(同一または異なって)芳香族炭化水素環を示し、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、L1およびL2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1を示し、Wは前記式(2)および前記式(3)で表される群より選ばれる少なくとも1つである。)
【0022】
≪態様8≫
前記式(1)で表される繰り返し単位が下記式(5)で表される態様1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【化9】
【0023】
(式中、L1およびL2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1を示し、Wは前記式(2)および前記式(3)で表される群より選ばれる少なくとも1つである。)
【0024】
≪態様9≫
前記式(3)中のXがフェニレン基、ナフタレンジイル基、下記式(6)で表される基より選ばれる少なくとも一つを繰り返し単位として含む態様1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【化10】
(式中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して水素原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基又はハロゲン原子である。)
【0025】
≪態様10≫
式(1)で表される繰り返し単位に加え、さらに下記式(7)~(10)で表される単位からなる群より選ばれる少なくとも1つを繰り返し単位として含む態様1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【0026】
【化11】
(式中、R
5およびR
6はそれぞれ独立して水素原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基又はハロゲン原子である。)
【0027】
【化12】
(式中、R
7およびR
8はそれぞれ独立して水素原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基又はハロゲン原子である。)
【0028】
【化13】
(式中、R
9およびR
10はそれぞれ独立して水素原子、香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基又はハロゲン原子である。)
【0029】
【化14】
(式中、R
11およびR
12はそれぞれ独立して水素原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基又はハロゲン原子であり、Uは単結合または2価の連結基である。)
【0030】
≪態様11≫
屈折率が1.650~1.800である態様1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【0031】
≪態様12≫
比粘度が0.12~0.40である態様1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【0032】
≪態様13≫
ガラス転移温度が、130~190℃である、態様1~12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【0033】
≪態様14≫
配向複屈折が、5.0×10-3 以下である、態様1~13のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【0034】
≪態様15≫
態様1~14のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂からなる光学部材。
【0035】
≪態様16≫
光学レンズである態様15に記載の光学部材。
【0036】
≪態様17≫
下記式(a)で表されるフルオレン骨格を有する化合物。
【化15】
【0037】
(式中、環Zは同一または異なる芳香族炭化水素環を示し、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、Ar1およびAr2はベンゼン環が3つ以上縮環した多環芳香族炭化水素基であり、L1およびL2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1である。)
【0038】
≪態様18≫
前記式(a)が下記式(a-I)~(a-IV)で表される化合物からなる群より選ば
れる少なくとも一つである態様17に記載のフルオレン骨格を有する化合物。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
(式中、環Zは同一または異なって芳香族炭化水素環を示し、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、Ar1およびAr2はベンゼン環が3つ以上縮環した多環芳香族炭化水素であり、L1およびL2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1である。)
【0044】
≪態様19≫
前記式(a)が前記式(a-II)である態様18に記載のフルオレン骨格を有する化合
物。
【0045】
≪態様20≫
前記式(a)中のAr1およびAr2がフェナセン型の多環芳香族炭化水素である態様
17~19のいずれか1項に記載のフルオレン骨格を有する化合物。
【0046】
≪態様21≫
前記式(a)において、Ar1およびAr2が3つもしくは4つのベンゼン環が縮環し
た多環芳香族炭化水素である態様17~20のいずれか1項に記載のフルオレン骨格を有する
化合物。
【0047】
≪態様22≫
前記式(a)において、Ar1およびAr2がフェナントレンである態様17~21のいず
れか1項に記載のフルオレン骨格を有する化合物。
【0048】
≪態様23≫
前記式(a)が下記式(b)で表される態様17~22のいずれか1項に記載のフルオレン
骨格を有する化合物。
【化20】
(式中、環Zは同一または異なって芳香族炭化水素環を示し、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、L
1およびL
2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1である。)
【0049】
≪態様24≫
前記式(a)が下記式(c)で表される態様17~23のいずれか1項に記載のフルオレン
骨格を有する化合物。
【化21】
(式中、L
1およびL
2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、mおよびnはそれぞれ独
立に0または1である。)
【0050】
≪態様25≫
屈折率が1.70以上である態様17~24のいずれか1項に記載のフルオレン骨格を有す
る化合物。
【発明の効果】
【0051】
本発明のフルオレン骨格を有する化合物を用いて製造した熱可塑性樹脂は、高屈折率、高耐熱性、低複屈折のバランスに優れるため、光学レンズ、プリズム、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、光学膜、光学フィルター、ハードコート膜等の光学部材に用いることができ、特に携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、車載カメラ、又は監視カメラのいずれかに用いるための光学レンズに極めて有用であり、そのため、その奏する産業上の効果は格別である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】実施例1で得られた9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレンの
1H NMRである。
【
図2】実施例2で得られたポリカーボネート樹脂の
1H NMRである。
【
図3】実施例6で得られたポリエステルカーボネート樹脂の
1H NMRである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明をさらに詳しく説明する。
<熱可塑性樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂は、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む熱可塑性樹脂である。
【化22】
【0054】
(式中、環Zは(同一または異なって)芳香族炭化水素環を示し、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、Ar1およびAr2はそれぞれ独立にベンゼン環が3つ以上縮環した多環芳香族炭化水素基であり、L1およびL2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1を示し、Wは下記式(2)および下記式(3)で表される群より選ばれる少なくとも1つである。)
【0055】
【0056】
【0057】
前記式(1)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立にベンゼン環が3つ以上縮環した多環芳香族炭化水素基であり、ベンゼン環が3つまたは4つ縮環した多環芳香族炭化水素が好ましく、ベンゼン環が3つ縮環した多環芳香族炭化水素がより好ましい。
【0058】
前記式(1)において、Ar1およびAr2の多環芳香族炭化水素は、ベンゼン環がアセン型またはフェナセン型に縮環した構造が好ましく、フェナセン型に縮環した構造がより好ましい。
【0059】
前記式(1)において、Ar1およびAr2は、アントラセン、フェナトレン、ピレン、クリセンが好ましく、フェナトレン、アントラセンがより好ましく、縮環数が増えたときのフロンティア軌道の違いによる安定性の観点からフェナトレンがさらに好ましい。
【0060】
Ar1およびAr2のそれぞれの結合位置はフルオレン骨格の1位と8位(下記式(1a))、2位と7位(下記式(1b))、3位と6位(下記式(1c))、または4位と5位(下記式(1d))であると好ましく、2位と7位、3位と6位、または4位と5位であるとより好ましく、2位と7位であるとさらに好ましい。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
(式中、環Z、R1、R2、Ar1、Ar2、L1、L2、j、k、m、n、Wは前記式(1)と同様である。)
【0066】
前記式(1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環の他、少なくともベンゼン環骨格を有する縮合多環式芳香族炭化水素環が挙げられ、例えば、縮合二環式炭化水素環、縮合三環式炭化水素環等の縮合二乃至四環式炭化水素環等が好ましい。
【0067】
縮合二環式炭化水素環としては、C8-20のインデン環、ナフタレン環等が好ましく、C10-16の縮合二環式炭化水素環がより好ましい。また、縮合三環式炭化水素環としては、アントラセン環、フェナントレン環等が好ましい。
【0068】
環Zのうち、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、より高屈折率を実現する観点からナフタレン環がより好ましい。
【0069】
前記式(1)において環Zで表される芳香族炭化水素環の具体例としては、1,4-フェニレン基、1,4-ナフタレンジイル基または2,6-ナフタレンジイル基が好ましく、2,6-ナフタレンジイル基が好ましい。
【0070】
前記式(1)においてR1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、水素原子、メチル基、フェニル基、ナフチル基が好ましく、水素原子、メチル基、フェニル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0071】
前記式(1)において、L1、L2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、炭素数1~12のアルキレン基であると好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であるとより好ましく、エチレン基であるとさらに好ましい。L1、L2の連結基の長さを調整することによって、樹脂のガラス転移温度(Tg)を調整することができる。
【0072】
前記式(1)において、Wは前記式(2)および前記式(3)で表される群より選ばれる少なくとも1つである。Wが前記式(2)である場合、前記式(1)はカーボネート単位となり、Wが前記式(3)である場合、前記式(1)はエステル単位となる。
【0073】
前記式(1)は、ジヒドロキシ化合物と炭酸エステルなどのカーボネート前駆物質、またはジヒドロキシ化合物とジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とから得ることができる。
【0074】
前記式(1)において、mおよびnはそれぞれ独立に0または1であり、1であることがより好ましい。
【0075】
前記式(1)において、jおよびkはそれぞれ独立1以上の整数であり、1~4の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0076】
前記式(1)で表される繰り返し単位が下記式(4)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0077】
【化29】
(式中、環Z、R
1およびR
2、L
1およびL
2、jおよびk、mおよびn、Wは前記式(1)と同様である。)
【0078】
また、前記式(1)で表される繰り返し単位が下記式(5)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【化30】
(式中、L
1およびL
2、jおよびk、mおよびn、Wは前記式(1)と同様である。)
【0079】
前記式(3)において、Xは2価の連結基を示し、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~30の置換基であることが好ましく、フェニレン基、ナフタレンジイル基、下記式(6)で表される基であることがより好ましい。
【0080】
【化31】
(式中、R
3およびR
4はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1~20の芳香族基を含んでいても良い炭化水素基又はハロゲン原子である。)
【0081】
前記式(6)において、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、水素原子、メチル基、フェニル基、ナフチル基が好ましく、水素原子、メチル基、フェニル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0082】
本発明の効果である高屈折率、高耐熱性、低複屈折を高度にバランスさせることができる理由として以下のことが考えられる。
【0083】
特許文献4には、以下の式を有する9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン(以下、「BPDN2」ともいう)などの、フルオレン骨格の側鎖に炭素原子数6~10の芳香族基を導入した化合物を用いて得られた熱可塑性樹脂が記載されている。
【0084】
【0085】
この特許文献4には、導入した芳香族基とフルオレン部の共役の広がりによって屈折率と複屈折がともに向上するとの記載がある。しかしながら、本発明者らは、フルオレン骨格のポリマーの側鎖に、ベンゼン環が3つ以上縮環した多環芳香族炭化水素基を導入したポリマーにおいて、複屈折を上昇させることなく屈折率は上昇させることができることを新たに見出した。かかる特徴により、従来技術で課題であった屈折率向上の効果と複屈折の増大のトレードオフを解決することができる。
【0086】
Lorentz-Lorenz式として知られている分子構造と屈折率の関係式から、分子の電子密度を上げ、分子体積を減らすことによって物質の屈折率が高くなることが知られている。従来技術であるフルオレン骨格を有する樹脂はこの理論に基づき、分子内に多くの芳香族基を導入することで高屈折率化がなされている。この際、共役状態が広がるように芳香族基が導入された場合、さらに共役状態の形成によって電子密度が増大し、結果として屈折率と複屈折の両方を上昇させる。すなわち、複屈折の制御においては、共役状態を広げることなく分子の電子密度を上げる必要があると考えられる。本発明では、導入する芳香族基をベンゼン環が3つ以上縮環した多環芳香族炭化水素基にすることで、立体的な障害を発生させることでき、共役状態が広がらなくなったため高屈折率と複屈折を高度にバランスさせることができたと考えられる。
【0087】
また、本発明の熱可塑性樹脂は、芳香族基が多く導入されており、耐熱性を高くすることができ、成型性をバランスさせることも可能である。
【0088】
本発明における式(1)で表される熱可塑性樹脂は、前記式(1)で表される繰り返し単位を、5mоl%以上、10mol%以上、15mol%以上、20mol%以上、25mol%以上、30mol%以上で含んでいてもよく、100mol%以下、90mol%以下、80mol%以下、70mol%以下、60mol%以下または50mol%以下で含んでいてもよい。本発明の樹脂は、前記式(1)で表される繰返し単位を、好ましくは10mol%以上100mol%以下、より好ましくは20mol%以上80mol%以下、さらに好ましくは20mol%以上70mol%以下、特に好ましくは20mol%以上60mol%以下で含むことができ、最も好ましくは20mol%以上50mol%以下で含むことができる。前記式(1)で表される繰り返し単位が前記範囲であると屈折率、複屈折、耐熱性と成形性のバランスに優れるため好ましい。
【0089】
本発明の熱可塑性樹脂において、さらに下記式(7)~(10)で表される単位からなる群より選ばれる少なくとも1つを繰り返し単位として含むことができる。
【0090】
【化33】
(式中、R
5およびR
6は前記式(6)のR
3およびR
4と同様である。)
【0091】
【化34】
(式中、R
7およびR
8は前記式(6)のR
3およびR
4と同様である。)
【0092】
【化35】
(式中、R
9およびR
10は前記式(6)のR
3およびR
4と同様である。)
【0093】
【化36】
(式中、R
11およびR
12は前記式(5)のR
3およびR
4と同様であり、Uは単結合または2価の連結基を示す。)
【0094】
前記式(1)で表される繰り返し単位と前記式(7)~(10)で表される単位からなる群との繰り返し単位のmol比が95:5~5:95であることが好ましく、80:20~20:80であるとより好ましく、70:30~30:70であるとさらに好ましい。
前記式(1)で表される繰り返し単位と前記式(7)~(10)で表される単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位とのmol比が、前記範囲内であると、高屈折率であることに加え、複屈折、成形性のバランスにも優れるため好ましい。
【0095】
<熱可塑性樹脂の物性>
本発明の熱可塑性樹脂の比粘度は、0.12~0.40であることが好ましく、0.14~0.35であるとより好ましく、0.16~0.30であるとさらに好ましい。比粘度が上記範囲内であると成形性と機械強度のバランスに優れるため好ましい。
【0096】
比粘度の測定方法は、熱可塑性樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃における比粘度(ηSP)を、オストワルド粘度計にて測定し、以下の式から算出する。
比粘度(ηSP)=(t-t0)/t0
[t0は、塩化メチレンの落下秒数、tは、試料溶液の落下秒数]
【0097】
本発明の熱可塑性樹脂の屈折率は、温度:20℃、波長:587.56nmで測定した場合に、1.650以上であり、1.660以上、1.670以上、1.680以上、1.690以上、又は1.700以上であってもよく、1.800以下であり、1.790以下、1.780以下、1.770以下、1.760以下または1.750以下であってもよい。本発明の熱可塑性樹脂の屈折率は、1.650~1.800であることが好ましく、1.670~1.800であるとより好ましく、1.680~1.800であるとさらに好ましく、1.690~1.800であると特に好ましく、1.700~1.800であると最も好ましい。屈折率が下限以上の場合、光学レンズの球面収差を低減でき、さらに光学レンズの焦点距離を短くすることができる。
【0098】
発明の熱可塑性樹脂は高屈折率であるが、さらに低アッベ数であることが好ましい。
【0099】
本発明の熱可塑性樹脂のアッベ数は、5以上、7以上、9以上、10以上、12以上又は14以上であってもよく、24以下、23以下、22以下、21以下、20以下、19以下又は18以下であってもよい。アッベ数(νd)は、5~22であることが好ましく、7~22であることがより好ましく、10~21であるとさらに好ましい。
【0100】
ここで、アッベ数は、温度:20℃、波長:486.13nm、587.56nm、656.27nmの屈折率から、下記式を用いて算出する:
νd=(nd-1)/(nF-nC)
nd:波長587.56nmにおける屈折率、
nF:波長486.13nmにおける屈折率、
nC:波長656.27nmにおける屈折率を意味する。
【0101】
本発明の熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度(Tg)は130℃以上、135℃以上、140℃以上、145℃以上、または150℃以上であってもよく、190℃以下、185℃以下、180℃以下、175℃以下、170℃以下であってもよい。130~190℃であることが好ましく、140~185℃であるとより好ましく、140~180℃であるとさらに好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であると、耐熱性と成形性のバランスに優れるため好ましい。
【0102】
本発明の熱可塑性樹脂は、配向複屈折の絶対値(|Δn|)は5.0×10-3以下であるであることが好ましく、4.5×10-3以下であることがより好ましく、4.0×10-3以下であることがさらに好ましく、3.5×10-3以下であることが特に好ましく、3.0×10-3以下であることが最も好ましい。|Δn|が上記範囲内であると、光学レンズの光学歪が小さくなるため好ましい。
【0103】
Δnは、本発明の熱可塑性樹脂より得られる厚さ100μmのフィルムをTg+10℃の温度で2倍延伸し、波長589nmにおける位相差を測定して下記式により求める。
|Δn|=|Re/d|
Δn:配向複屈折
Re:位相差(nm)
d:厚さ(nm)
【0104】
本発明の熱可塑性樹脂は、23℃の水に、24時間浸漬した後の吸水率が0.25質量%以下であると好ましく、0.20重量%以下であるとより好ましい。吸水率が上記範囲内であると、吸水による光学特性の変化が小さいため好ましい。
【0105】
<熱可塑性樹脂の原料>
(式(1)のジオール成分)
式(1)の原料となるジオール成分は、主として本発明の式(a)で表されるフルオレン骨格を有する化合物であり、単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0106】
【化37】
(式中、環Z、R
1およびR
2、Ar
1およびAr
2、L
1およびL
2、jおよびk、mおよびnは、前記式(1)と同じである。)
【0107】
前記式(a)で表される化合物は下記式(b)で表されるフルオレン骨格を有する化合物であることが好ましい。
【0108】
【化38】
(式中、環Z、R
1およびR
2、L
1およびL
2、jおよびk、mおよびnは前記式(a)と同じである。)
【0109】
また、前記式(a)で表される化合物は下記式(c)で表されるフルオレン骨格を有する化合物であることがより好ましい。
【0110】
【化39】
(式中、L
1およびL
2、mおよびnは前記式(a)におけるものと同じである。)
【0111】
以下、前記式(a)で表されるジヒドロキシ化合物の代表的な具体例を示すが、本発明の前記式(1)に用いられる原料としては、それらによって限定されるものではない。
【0112】
環Zがベンゼンの場合においては、下記式(a―1)、(a―2)で表される、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,8-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,8-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,8-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,8-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,6-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,6-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,6-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,6-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-1,8-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-1,8-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-1,8-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-1,8-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3,6-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3,6-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3,6-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-3,6-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-4,5-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-4,5-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-4,5-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-4,5-ジ(1-クリシル)フルオレンが挙げられる。
【0113】
【0114】
【0115】
環Zがナフタレンの場合においては、下記式(a―3)、(a―4)で表される、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-1,8-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-1,8-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-1,8-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-1,8-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-3,6-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-3,6-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-3,6-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-3,6-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-4,5-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-4,5-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-4,5-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-4,5-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-1,8-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-1,8-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-1,8-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-1,8-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フェニル)-2,7-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-3,6-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-3,6-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-3,6-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-3,6-ジ(1-クリシル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-4,5-ジ(9-アントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-4,5-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-4,5-ジ(1-ピレニル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-4,5-ジ(1-クリシル)フルオレンが挙げられる。
【0116】
【0117】
【0118】
なかでも下記式(a’-1)~(a’-8)に示す、下記式(a’-1):9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、下記式(a’-2):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、下記式(a’-3):9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、下記式(a’-4):9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、下記式(a’-5):9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジ(1-クリシル)フルオレン、下記式(a’-6):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジ(1-クリシル)フルオレン、下記式(a’-7):9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(1-クリシル)フルオレン、下記式(a’-8):9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジ(1-クリシル)フルオレンがより好ましく、下記式(a’-1):9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、下記式(a’-2):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、下記式(a’-3):9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、下記式(a’-4):9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレンがさらに好ましく、下記式(a’-2):9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン、下記式(a’-4):9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレンが特に好ましい。これらは単独で使用してもよく、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
本発明のフルオレン骨格を有する化合物の純度は、60~100%の広い範囲から選択でき、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上である。純度はHPLCで測定される。
【0128】
本発明のフルオレン骨格を有する化合物は、ジメチルホルムアミドに溶解させた5重量%溶液のハーゼン単位色数(APHA)が500以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましい。APHAが500以下であるとフルオレン骨格を有する化合物の色相が良好となり好ましい。
【0129】
本発明のフルオレン骨格を有する化合物は、屈折率が1.70以上であることが好ましく、1.72以上であることがより好ましく、1.74以上であることがさらに好ましい。屈折率は、フルオレン骨格を有する化合物をジメチルスルホキシドに溶解させ、所定濃度の溶液を作成し、各濃度の溶液の屈折率をATAGO社製DR-M2アッベ屈折計を用い、25℃におけるD線屈折率を測定し、各濃度の測定結果から濃度100%に外挿した値で得られた化合物の屈折率(nD)とした。
【0130】
本発明のフルオレン骨格を有する化合物は、硫黄元素の含有量が200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましく、30ppm以下であることが特に好ましい。硫黄元素の含有量が200ppm以下であるとフルオレン骨格を有する化合物の色相が良好となり好ましい。
【0131】
本発明のフルオレン骨格を有する化合物は、臭素元素の含有量が150ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、20ppm以下であることがさらに好ましい。臭素元素の含有量が150ppm以下であるとフルオレン骨格を有する化合物の色相が良好となり好ましい。
【0132】
<フルオレン骨格を有する化合物の製造方法>
本発明のフルオレン骨格を有する化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、特許文献5に記載のように、下記式(A)で表されるフルオレノン類と下記式(B)で表されるアルコール類とを反応溶媒中、酸触媒の存在下で反応し、下記式(C)で表される化合物を得る工程、下記式(C)で表される化合物とエチレンカーボネートとを反応溶媒中、必要に応じて塩基の存在下で反応し、下記式(D)で表される化合物を得る工程、下記式(D)で表される化合物と下記式(E)で表されるボロン酸類とを反応溶媒中、塩基およびパラジウム系触媒の存在下で反応し、前記式(a)で表される化合物を得る工程により製造することができる。
【0133】
【化52】
(式中、X1は1位、2位、3位または4位の置換基であり、X
2は5位、6位、7位または8位の置換基であり、ハロゲン原子を示す。)
【0134】
【化53】
(式中、環Yは芳香族炭化水素環を示し、R
3は水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、oは1以上の整数である。)
【0135】
【化54】
(式中、環Zは同一または異なって芳香族炭化水素環を示し、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、X
1およびX
2はハロゲン原子である。)
【0136】
【化55】
(式中、環Zは同一または異なって芳香族炭化水素環を示し、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、X
1およびX
2はハロゲン原子であり、L
1およびL
2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1である。)
【0137】
【化56】
(式中、Ar
3はベンゼン環が3つ以上縮環した多環芳香族炭化水素基である。)
【0138】
【化57】
(式中、環Zは同一または異なって芳香族炭化水素環を示し、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、芳香族基を含んでいてもよい炭素原子数1~20の置換基を示し、Ar
1およびAr
2はベンゼン環が3つ以上縮環した多環芳香族炭化水素基であり、L
1およびL
2はそれぞれ独立に2価の連結基を示し、jおよびkはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、mおよびnはそれぞれ独立に0または1である。)
【0139】
前述したフルオレノン類、アルコール類、反応溶媒、酸触媒、塩基の詳細説明や前記式(D)を得るまでの詳細な製造方法については特許文献5に記載の通りである。
【0140】
本発明に使用するボロン酸類は、アントラセンボロン酸、フェナントレンボロン酸、ピレンボロン酸、クリセンボロン酸が好ましく、フェナントレンボロン酸がより好ましく、9-フェナントレンボロン酸が特に好ましい。また、ボロン酸類として、これらの化合物のボロン酸エステルやボロン酸無水物も含まれる。これらのボロン酸類は単独で使用してもよく、または2種以上を混合してもよく、目的により任意に選ぶことができる。
【0141】
本発明に使用するボロン酸類の使用比率は、前記式(D)で表される化合物1モルに対して1.5~3.0モルが好ましく、2.0~2.5モルがより好ましく、2.0~2.3モルが特に好ましい。
【0142】
(前記式(1)のカーボネート成分)
本発明の熱可塑性樹脂の前記式(1)で表される単位に使用するカーボネート成分としては、ホスゲン、カーボネートエステルがあげられる。カーボネートエステルは、置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1~4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(m-クレジル)カーボネート、ジナフチルカーボネートなどの炭酸ジアリール、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどの炭酸ジアルキル、エチルフェニルカーボネート、シクロヘキシルフェニルカーボネートなどの炭酸アルキルアリール、または、ジビニルカーボネート、ジイソプロぺニルカーボネート、ジプロペニルカーボネートなどの炭酸ジアルケニルなどが挙げられ、なかでも炭酸ジアリールが好ましく、ジフェニルカーボネートがより好ましい。
【0143】
(前記式(1)のジカルボン酸成分)
本発明の熱可塑性樹脂の前記式(1)で表される単位に使用するジカルボン酸成分は主として、式(b)で表されるジカルボン酸、またはそのエステル形成性誘導体が好ましく用いられる。
【0144】
【0145】
前記式(b)において、Xは2価の連結基を示し、前記式(3)で説明したことと同様なことが言える。
【0146】
以下、前記式(b)で表されるジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体の代表的具体例を示すが、本発明の前記式(b)に用いられる原料としては、それらによって限定されるものではない。
【0147】
本発明の熱可塑性樹脂に使用するジカルボン酸成分としては、前記式(6)の原料となる2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル、6,6’-ジフェニル-2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル、6,6’-ジブロモ-2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレンのほか、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸成分、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9-ビス(カルボキシメチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(1-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルプロピル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシブチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシ-1-メチルブチル)フルオレン、9,9-ビス(5-カルボキシペンチル)フルオレン、9,9-ビス(カルボキシシクロヘキシル)フルオレン等の多環式芳香族ジカルボン酸成分、2,2’-ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸成分、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-デカリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸成分が挙げられ、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレンが好ましく、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレンがより好ましい。これらは単独または二種類以上組み合わせて用いても良い。また、エステル形成性誘導体としては酸クロライドや、メチルエステル、エチルエステル、フェニルエステル等のエステル類を用いてもよい。
【0148】
(前記式(7)~(10)の成分)
本発明の熱可塑性樹脂は、さらに前記式(7)~(10)の繰り返し単位を有していてもよく、前記式(7)~(10)の原料となるジヒドロキシ化合物成分を下記に示す。これらは単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0149】
本発明の前記式(7)の原料となるジヒドロキシ化合物成分は、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-7,7’-ジフェニル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-3,3’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-6,6’-ジメチル-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-7,7’-ジメチル-1,1’-ビナフチルが挙げられる。
【0150】
本発明の前記式(8)の原料となるジヒドロキシ化合物成分は、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン等が例示され、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレンが特に好ましい。これらは単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0151】
本発明の前記式(9)の原料となるジヒドロキシ化合物成分は、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)―2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレンが挙げられる。
【0152】
本発明の前記式(10)の原料となるジヒドロキシ化合物成分は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アントロン等が例示され、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドが特に好ましい。これらは単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0153】
式(7)~(10)のなかでも、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)―2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレンであると高屈折率、高耐熱性、低複屈折とをバランスさせることができるため特に好ましい。
【0154】
発明の熱可塑性樹脂は、例えばジヒドロキシ化合物成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法やジオール成分にジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を反応させる方法等により製造される。以下にその具体例を示す。
【0155】
<製造方法>
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
本発明の熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である場合はそれ自体公知の反応手段、例えばジヒドロキシ化合物成分とカーボネート前駆物質を界面重合法または溶融重合法によって反応させて得られる。ポリカーボネート樹脂を製造するに当たっては、必要に応じて触媒、末端停止剤、酸化防止剤等を使用してもよい。
【0156】
(ポリエステル樹脂の製造方法)
本発明の熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂である場合はそれ自体公知の反応手段、例えばジヒドロキシ化合物成分とジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とをエステル化反応もしくはエステル交換反応させ、得られた反応生成物を重縮合反応させ、所望の分子量の高分子量体とすればよい。
【0157】
(ポリエステルカーボネート樹脂の製造方法)
本発明の熱可塑性樹脂がポリエステルカーボネート樹脂である場合は、ジヒドロキシ化合物成分およびジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ホスゲンやカーボネートエステルなどのカーボネート前駆物質とを反応させることにより製造することができる。重合方法は前記ポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂と同様の方法を用いることができる。
【0158】
<光学部材>
本発明の光学部材は、上記の熱可塑性樹脂を含む。そのような光学部材としては、上記の熱可塑性樹脂が有用となる光学用途であれば、特に限定されないが、光学レンズ、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、レンズ、プリズム、光学膜、基盤、光学フィルター、ハードコート膜等を挙げることができる。
【0159】
また、本発明の光学部材には、上記の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から構成されていてもよく、その樹脂組成物には、必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
【0160】
<光学レンズ>
本発明の光学部材として、特に光学レンズを挙げることができる。このような光学レンズとしては、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、車載カメラ、監視カメラ等のための光学レンズを挙げることができる。
【0161】
本発明の光学レンズは、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、溶融押出成形、キャスティング等の任意の方法により成形、加工することができるが、射出成形が特に好適である。
【0162】
射出成形の成形条件は特に限定されないが、成形機のシリンダー温度は180~320℃が好ましく、220~300℃がより好ましく、240~280℃が特に好ましい。また、金型温度は70~130℃が好ましく、80~125℃がより好ましく、90~120℃が特に好ましい。射出圧力は5~170MPaが好ましく、50~160MPaがより好ましく、100~150MPaが特に好ましい。
【0163】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例】
【0164】
[実施例1]9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレンの合成
国際公開第2020/226126号公報の実施例II-1に記載の方法で9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジブロモフルオレン(以下、BNDBと省略することがある)を合成した。
【0165】
撹拌機、冷却器、さらには温度計を備え付けたフラスコに、BNDB35.50g(0.05モル)、9-フェナントレンボロン酸24.90g(0.11モル)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.59g(0.51ミリモル)、2M炭酸カリウム水溶液62ml、トルエン232ml、エタノール76mlを加えた後、80℃で3時間撹拌した。反応の進行具合はHPLCにて確認し、BNDBの残存量が0.0%であることを確認し反応を終了させた。反応液に酢酸エチル100ml加え希釈した後、分液ロートへ移し、中性になるまで蒸留水で洗浄した。洗浄後の有機層を活性炭処理した後、エバポレーターで濃縮し、再結晶を行った。得られた結晶を回収し、12時間減圧乾燥し、9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン(以下、BNDPh9と省略することがある)の結晶を収率76%、純度97.58%で得た。また、BNDPh9の屈折率は1.745であった。
【0166】
[実施例2]
9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジ(9-フェナントリル)フルオレン(以下、BNDPh9と省略することがある)を13.40質量部(20mоl%)、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下、BPEFと省略することがある)26.31質量部(80mоl%)、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと省略することがある)16.23質量部(101mоl%)、及び触媒として濃度40mmol/Lの濃度で炭酸水素ナトリウムを6.30×10-5質量部(1.00×10-3mоl%)を加え、窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。その後、5分間かけて減圧度を20kPaに調整した。60℃/hrの昇温速度で250℃まで昇温を行い、フェノールの流出量が70%になった後で60kPa/hrで減圧し、所定の電力に到達するまで重合反応を行い、反応終了後フラスコから樹脂を取り出した。得られたポリカーボネート樹脂を、1H NMRにより分析し、BNDPh9成分が全モノマーに対して20mоl%、BPEF成分が全モノマー成分に対して80mоl%導入されていることを確認した。該ポリカーボネート樹脂を用いて、共重合比、屈折率、アッベ数、Tg、Δnを評価し、結果を表1に示した。
【0167】
【0168】
[実施例3~5]
BNDPh9、BPEFの比率を変更したこと以外は実施例2と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。該ポリカーボネート樹脂を用いて、共重合比、屈折率、アッベ数、Tg、Δnを評価し、結果を表2に示した。
【0169】
[比較例1]
BNDPh9の代わりに9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジフェニルフルオレン(以下、「BPDP2」)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。該ポリカーボネート樹脂を用いて、共重合比、屈折率、アッベ数、Tg、Δnを評価し、結果を表1に示した。なお、BPDP2は、以下の化学構造を有する。
【0170】
【0171】
[比較例2]
BNDPh9の代わりに9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン(以下、「BPDN2」)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。該ポリカーボネート樹脂を用いて、共重合比、屈折率、アッベ数、Tg、Δnを評価し、結果を表1に示した。なお、BPDN2は、以下の化学構造を有する。
【0172】
【0173】
[比較例3]
BNDPh9の代わりに9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジフェニルフルオレン(以下、「BNDP2」)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。該ポリカーボネート樹脂を用いて、共重合比、屈折率、アッベ数、Tg、Δnを評価し、結果を表1に示した。なお、BNDP2は、以下の化学構造を有する。
【0174】
【0175】
[比較例4]
BNDPh9の代わりに9,9-ビス(6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル)-2,7-ジ(2-ナフチル)フルオレン(以下、「BNDN2」)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を製造した。該ポリカーボネート樹脂を用いて、共重合比、屈折率、アッベ数、Tg、Δnを評価し、結果を表1に示した。なお、BNDN2は、以下の化学構造を有する。
【0176】
【0177】
[実施例6]
BNDPh9、2,2’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-1,1’-ビナフチル(以下、BHEBと省略することがある)、2,2’-ビス(カルボキシメトキシ)-1,1’-ビナフチル(以下、BCMBと省略することがある)の比率を変更したことと、DPCを1.64質量部(10.2mоl%)に変更したことと、触媒としてチタンテトラブトキシド1.3×10-2質量部(5.0×10-2mоl%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステルカーボネート樹脂を製造した。該ポリエステルカーボネート樹脂を用いて、共重合比、屈折率、アッベ数、Tg、Δnを評価し、結果を表1に示した。
【0178】
【0179】
[実施例7および8]
BNDPh9、BHEB、BCMBの比率を変更したこと以外は実施例5と同様にして、ポリエステルカーボネート樹脂を製造した。該ポリエステルカーボネート樹脂を用いて、共重合比、屈折率、アッベ数、Tg、Δnを評価し、結果を表1に示した。
【0180】
[比較例5]
BNDPh9の代わりにBPDP2を使用したこと以外は実施例2と同様にして、ポリエステルカーボネート樹脂を製造した。該ポリエステルカーボネート樹脂を用いて、共重合比、屈折率、アッベ数、Tg、Δnを評価し、結果を表1に示した。
【0181】
[比較例6]
BNDPh9の代わりにBPDN2を使用したこと以外は実施例2と同様にして、ポリエステルカーボネート樹脂を製造した。該ポリエステルカーボネート樹脂を用いて、共重合比、屈折率、アッベ数、Tg、Δnを評価し、結果を表1に示した。
【0182】
[比較例7]
BNDPh9の代わりにBNDP2を使用したこと以外は実施例2と同様にして、ポリエステルカーボネート樹脂を製造した。該ポリエステルカーボネート樹脂を用いて、共重合比、屈折率、アッベ数、Tg、Δnを評価し、結果を表1に示した。
【0183】
[比較例8]
BNDPh9の代わりにBNDN2を使用したこと以外は実施例2と同様にして、ポリエステルカーボネート樹脂を製造した。該ポリエステルカーボネート樹脂を用いて、共重合比、屈折率、アッベ数、Tg、Δnを評価し、結果を表1に示した。
【0184】
得られたフルオレン骨格を有する化合物および熱可塑性樹脂について下記の方法で評価を行った。
【0185】
<フルオレン骨格を有する化合物>
(NMR)
日本電子(株)製JNM-ECZ400Sを用い測定した。溶媒はCDCl3を用いた
。
【0186】
(高速液体クロマトグラフ(HPLC)測定)
日立製高速液体クロマトグラフL-2350を用い、下表1の測定条件で測定した。実
施例中、特に断らない限り%はHPLCにおける溶媒を除いて補正した面積百分率値であ
る。
【0187】
【0188】
(屈折率)
測定試料をジメチルスルホキシドに溶解させ、所定濃度の溶液を作成し、各濃度の溶液
の屈折率をATAGO社製DR-M2アッベ屈折計を用い、25℃におけるD線屈折率を
測定した。各濃度の測定結果から濃度100%に外挿した値を実施例で得られた化合物の
屈折率(nD)とした。
【0189】
<熱可塑性樹脂>
<共重合比>
得られた樹脂を日本電子(株)製JNM-ECZ400Sを用いて1H NMR測定することによって、各ポリマーの組成比を算出した。溶媒はCDCl3を用いた。
【0190】
<光学特性>
(屈折率)
各ポリマーの3mm厚試験片を作製し研磨した後、島津製作所製のカルニュー精密屈折計KPR-2000を使用して、20℃における屈折率nd(587.56nm)を測定した。
【0191】
(アッベ数)
アッベ数の測定波長は、486.13nm、587.56nm、656.27nmの屈折率から下記の式を用いて算出した。
νd=(nd-1)/(nF-nC)
nd:波長587.56nmでの屈折率、
nF:波長486.13nmでの屈折率、
nC:波長656.27nmでの屈折率を意味する。
【0192】
(配向複屈折の絶対値)
熱可塑性樹脂を塩化メチレンに溶解した後、ガラスシャーレ上にキャストし、十分乾燥することで厚さ100μmのキャストフィルムを作製した。該フィルムをTg+10℃で2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM-220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折の絶対値(|Δn|)を求めた。
|Δn|=|Re/d|
Δn:配向複屈折
Re:位相差(nm)
d:厚さ(nm)
【0193】
<ガラス転移温度(Tg)>
得られた樹脂をティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製Discovery DSC25Auto型により、昇温速度20℃/minで測定した。試料は5~10mgで測定した。
【0194】
≪結果≫
熱可塑性樹脂に関する具体例の評価の結果を表2に示す。また、実施例1におけるBNDPh9の
1H-NMRスペクトルを
図1に、実施例2、4における熱可塑性樹脂の
1H-NMRスペクトルを
図2~3に示す。
【0195】
【0196】
BNDPh9を用いた実施例2~8は、高い屈折率を有し、かつ耐熱性と複屈折をバランスさせることができ、光学レンズとして優れる結果が得られていることが分かる。
【0197】
比較例1~4は実施例2~5と比較して、芳香族基導入による複屈折の増大が大きい。比較例5~8では、実施例6~8と比較して、屈折率と複屈折のトレードオフとなっている。
【0198】
式(1)の繰り返し単位のようなフルオレン骨格に3つ以上のベンゼン環が縮環した構造を持つことで、分極率の上昇と共役の広がりを高度に両立させることができ、高屈折率、高耐熱性、低複屈折とをバランスさせることに効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明の熱可塑性樹脂は、光学材料に好適に用いられ、具体的には光学レンズ、プリズム、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、光学膜、光学フィルター、ハードコート膜等の光学部材に用いることができ、特に光学レンズに極めて有用である。