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特許7588712バイタル検出装置、バイタル検出方法及び車載装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】バイタル検出装置、バイタル検出方法及び車載装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20241115BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20241115BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
A61B5/00 G
A61B5/11 110
A61B5/02 310Z
A61B5/00 101A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023508373
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012896
(87)【国際公開番号】W WO2022201496
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼本 周作
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-202603(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0071177(US,A1)
【文献】特許第6373450(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/03
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者のバイタルサインをセンシングする生体センサのセンシング結果を示すセンサ信号を取得するセンサ信号取得部と、
前記センサ信号取得部により取得されたセンサ信号の周波数スペクトルを算出するスペクトル算出部と、
前記スペクトル算出部により算出された周波数スペクトルに含まれている複数の周波数成分の中で、前記被測定者のバイタルサインを示している可能性がある1つ以上の周波数成分を特定する周波数成分特定部と、
前記生体センサのセンシング結果を示すセンサ信号に混入している可能性のあるノイズを観測するノイズ観測器の観測結果を示すノイズ信号から、前記ノイズが存在している周波数帯域であるノイズ帯域を特定するノイズ帯域特定部と、
前記周波数成分特定部により特定された1つ以上の周波数成分の中で、前記ノイズ帯域特定部により特定されたノイズ帯域に含まれている周波数成分を除去するノイズ除去部と
を備え
前記ノイズ帯域特定部は、
前記ノイズ信号の周波数スペクトルに含まれている1つ以上の周波数成分のうち、予め定められた閾値よりも大きな周波数成分の周波数帯を前記ノイズ帯域であると特定することを特徴とする、
バイタル検出装置。
【請求項2】
前記ノイズ観測器が、前記生体センサのセンシング結果を示すセンサ信号に混入している可能性のあるノイズとして、前記被測定者が乗車している車両の振動を観測する車載センサを含んでおり、
前記ノイズ帯域特定部は、前記ノイズ信号として、前記車載センサにより観測された車両の振動を示す振動信号を取得し、前記振動信号に基づいて、前記ノイズ帯域を特定することを特徴とする請求項1記載のバイタル検出装置。
【請求項3】
前記ノイズ観測器が、前記生体センサのセンシング結果を示すセンサ信号に混入している可能性のあるノイズとして、前記被測定者の体動を観測する被測定者観測器を含んでおり、
前記ノイズ帯域特定部は、前記ノイズ信号として、前記被測定者観測器により観測された被測定者の体動を示す体動信号を取得し、前記体動信号に基づいて、前記ノイズ帯域を特定することを特徴とする請求項1記載のバイタル検出装置。
【請求項4】
前記周波数成分特定部により特定された1つ以上の周波数成分の中で、前記ノイズ除去部により除去されずに残っている周波数成分を時間領域の信号に変換する信号変換部を備えたことを特徴とする請求項1記載のバイタル検出装置。
【請求項5】
センサ信号取得部が、被測定者のバイタルサインをセンシングする生体センサのセンシング結果を示すセンサ信号を取得し、
スペクトル算出部が、前記センサ信号取得部により取得されたセンサ信号の周波数スペクトルを算出し、
周波数成分特定部が、前記スペクトル算出部により算出された周波数スペクトルに含まれている複数の周波数成分の中で、前記被測定者のバイタルサインを示している可能性がある1つ以上の周波数成分を特定し、
ノイズ帯域特定部が、前記生体センサのセンシング結果を示すセンサ信号に混入している可能性のあるノイズを観測するノイズ観測器の観測結果を示すノイズ信号から、前記ノイズが存在している周波数帯域であるノイズ帯域を特定し、
ノイズ除去部が、前記周波数成分特定部により特定された1つ以上の周波数成分の中で、前記ノイズ帯域特定部により特定されたノイズ帯域に含まれている周波数成分を除去し、
前記ノイズ帯域特定部が、前記ノイズ信号の周波数スペクトルに含まれている1つ以上の周波数成分のうち、予め定められた閾値よりも大きな周波数成分の周波数帯を前記ノイズ帯域であると特定する
バイタル検出方法。
【請求項6】
被測定者のバイタルサインをセンシングする生体センサと、
前記生体センサのセンシング結果を示すセンサ信号に混入している可能性のあるノイズを観測するノイズ観測器と、
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載のバイタル検出装置と
を備えた車載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バイタル検出装置及びバイタル検出方法と、バイタル検出装置を備える車載装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
被測定者のバイタルサインをセンシングする生体センサがある。生体センサは、バイタルサインのセンシング結果を示すセンサ信号を出力する。生体センサによりセンシングされるバイタルサインとしては、被測定者の呼吸数、又は、被測定者の脈拍数等がある。生体センサから出力されるセンサ信号にノイズが混入することによって、バイタルサインのセンシング結果の精度が低下してしまうことがある。
【0003】
生体センサから出力されるセンサ信号に混入しているノイズの除去に関する技術として、特許文献1に開示された生体情報検出装置がある。当該生体情報検出装置は、センサ信号の周波数スペクトルを算出し、周波数スペクトルに含まれている複数の周波数成分の中で、被測定者のバイタルサインを示している可能性がある1つ以上の周波数成分を特定する。そして、当該生体情報検出装置は、特定した1つ以上の周波数成分の中で、バイタルサインを示す周波数成分の想定最大値よりも大きな周波数成分、又は、バイタルサインを示す周波数成分の想定最小値よりも小さな周波数成分を除去する。したがって、当該生体情報検出装置では、ノイズの周波数成分が、想定最大値よりも大きな周波数成分、又は、想定最小値よりも小さな周波数成分であれば、除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-126407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている生体情報検出装置では、被測定者のバイタルサインを示している可能性がある1つ以上の周波数成分の中で、想定最大値以下の大きさを有し、かつ、想定最小値以上の大きさを有する周波数成分が除去されることがない。したがって、当該バイタル検出装置では、想定最大値以下の大きさを有し、かつ、想定最小値以上の大きさを有する周波数成分が、ノイズの周波数成分であったとしても除去されることがないという課題があった。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、想定最大値以下の大きさを有し、かつ、想定最小値以上の大きさを有する、ノイズの周波数成分を除去することができるバイタル検出装置及びバイタル検出方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るバイタル検出装置は、被測定者のバイタルサインをセンシングする生体センサのセンシング結果を示すセンサ信号を取得するセンサ信号取得部と、センサ信号取得部により取得されたセンサ信号の周波数スペクトルを算出するスペクトル算出部と、スペクトル算出部により算出された周波数スペクトルに含まれている複数の周波数成分の中で、被測定者のバイタルサインを示している可能性がある1つ以上の周波数成分を特定する周波数成分特定部と、生体センサのセンシング結果を示すセンサ信号に混入している可能性のあるノイズを観測するノイズ観測器の観測結果を示すノイズ信号から、ノイズが存在している周波数帯域であるノイズ帯域を特定するノイズ帯域特定部と、周波数成分特定部により特定された1つ以上の周波数成分の中で、ノイズ帯域特定部により特定されたノイズ帯域に含まれている周波数成分を除去するノイズ除去部とを備え、前記ノイズ帯域特定部は、前記ノイズ信号の周波数スペクトルに含まれている1つ以上の周波数成分のうち、予め定められた閾値よりも大きな周波数成分の周波数帯を前記ノイズ帯域であると特定するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、想定最大値以下の大きさを有し、かつ、想定最小値以上の大きさを有する、ノイズの周波数成分を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るバイタル検出装置3を含む車載装置を示す構成図である。
図2】実施の形態1に係るバイタル検出装置3を構成図である。
図3】実施の形態1に係るバイタル検出装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図4】バイタル検出装置3が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
図5】バイタル検出装置3の処理手順であるバイタル検出方法を示すフローチャートである。
図6図6Aは、被測定者のバイタルサインの周波数成分として、呼吸数の周波数成分と脈拍数の周波数成分とを含んでいる周波数スペクトルを示す説明図、図6Bは、呼吸数の周波数成分と脈拍数の周波数成分とのほかに、ノイズの周波数成分を含んでいる周波数スペクトルを示す説明図である。
図7】ノイズ除去部15によって、ノイズ帯域に含まれている周波数成分が除去されても残っている周波数成分を示す説明図である。
図8】実施の形態2に係るバイタル検出装置3を含む車載装置を示す構成図である。
図9】実施の形態2に係るバイタル検出装置3を構成図である。
図10】実施の形態2に係るバイタル検出装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示をより詳細に説明するために、本開示を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るバイタル検出装置3を含む車載装置を示す構成図である。
図1に示す車載装置は、生体センサ1、ノイズ観測器2、バイタル検出装置3、バイタル診断装置4及び表示器5を備えている。
図1に示すバイタル検出装置3は、車載装置に搭載されている。バイタル検出装置3は、車載装置に搭載されているものに限るものではなく、病院又は公共施設等に設置されているものであってもよい。
【0012】
車載装置は、被測定者が乗車している車両に搭載されている。
生体センサ1は、例えば、映像機器、又は、電波式センサによって実現される。
生体センサ1は、被測定者のバイタルサインをセンシングし、センシング結果を示すセンサ信号をバイタル検出装置3に出力する。
【0013】
ノイズ観測器2は、生体センサ1のセンシング結果を示すセンサ信号に混入している可能性のあるノイズを観測する。
ノイズ観測器2は、ノイズの観測結果を示すノイズ信号をバイタル検出装置3に出力する。
図1に示すバイタル検出装置3では、ノイズ観測器2が車載センサ2aを含んでいる。
車載センサ2aは、車両のヨーレートセンサ、又は、加速度センサ等によって実現される。
車載センサ2aは、センサ信号に混入している可能性のあるノイズとして、被測定者が乗車している車両の振動を観測する。
車載センサ2aは、ノイズ信号として、車両の振動を示す振動信号をバイタル検出装置3に出力する。
なお、ヨーレートセンサは、車両の進行方向を検出するセンサである。車両は、進行方向の変化に伴って振動する。したがって、ヨーレートセンサのセンシング結果を解析することで、車両の振動を観測することができる。
加速度センサは、車両の加速度を検出するセンサである。車両は、加速度の変化に伴って振動する。したがって、加速度センサのセンシング結果を解析することで、車両の振動を観測することができる。
【0014】
バイタル検出装置3は、生体センサ1から出力されたセンサ信号に基づいて、被測定者のバイタルサインを検出する。
バイタル診断装置4は、バイタル検出装置3により検出されたバイタルサインに基づいて、被測定者を診断する。
表示器5は、バイタル検出装置3により検出された被測定者のバイタルサインをディスプレイに表示させる。
【0015】
図2は、実施の形態1に係るバイタル検出装置3を示す構成図である。
図3は、実施の形態1に係るバイタル検出装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図2に示すバイタル検出装置3は、センサ信号取得部11、スペクトル算出部12、周波数成分特定部13、ノイズ帯域特定部14、ノイズ除去部15及び信号変換部16を備えている。
センサ信号取得部11は、例えば、図3に示すセンサ信号取得回路21によって実現される。
センサ信号取得部11は、生体センサ1から出力されたセンサ信号を取得する。
センサ信号取得部11は、センサ信号をスペクトル算出部12に出力する。
【0016】
スペクトル算出部12は、例えば、図3に示すスペクトル算出回路22によって実現される。
スペクトル算出部12は、センサ信号取得部11により取得されたセンサ信号の周波数スペクトルを算出する。例えば、スペクトル算出部12は、センサ信号をFFT(Fast Fourier Transform)することによって、周波数スペクトルを算出する。
スペクトル算出部12は、周波数スペクトルを周波数成分特定部13に出力する。
【0017】
周波数成分特定部13は、例えば、図3に示す周波数成分特定回路23によって実現される。
周波数成分特定部13は、スペクトル算出部12により算出された周波数スペクトルに含まれている複数の周波数成分の中で、被測定者のバイタルサインを示している可能性がある1つ以上の周波数成分を特定する。
即ち、周波数成分特定部13は、周波数スペクトルに含まれているそれぞれの周波数成分と第1の閾値Thとを比較する。周波数成分特定部13は、複数の周波数成分の中で、第1の閾値Thよりも大きな周波数成分を、被測定者のバイタルサインを示している可能性がある周波数成分として特定する。第1の閾値Thは、周波数成分特定部13の内部メモリに格納されていてもよいし、バイタル検出装置3の外部から与えられるものであってもよい。
周波数成分特定部13は、特定した1つ以上の周波数成分をノイズ除去部15に出力する。
【0018】
ノイズ帯域特定部14は、例えば、図3に示すノイズ帯域特定回路24によって実現される。
ノイズ帯域特定部14は、ノイズ観測器2からノイズ信号を取得し、ノイズ信号に基づいて、ノイズが存在している周波数帯域であるノイズ帯域を特定する。
即ち、ノイズ帯域特定部14は、車載センサ2aから、ノイズ信号として振動信号を取得する。ノイズ帯域特定部14は、振動信号の周波数スペクトルを算出し、振動信号の周波数スペクトルから、ノイズ帯域として、車両の振動を示す周波数の帯域を特定する。
ノイズ帯域特定部14は、ノイズ帯域をノイズ除去部15に出力する。
【0019】
ノイズ除去部15は、例えば、図3に示すノイズ除去回路25によって実現される。
ノイズ除去部15は、周波数成分特定部13により特定された1つ以上の周波数成分の中で、ノイズ帯域特定部14により特定されたノイズ帯域に含まれている周波数成分を除去する。
ノイズ除去部15は、周波数成分特定部13により特定された1つ以上の周波数成分の中で、ノイズ帯域に含まれている周波数成分を除去しても残っている周波数成分を信号変換部16に出力する。
【0020】
信号変換部16は、例えば、図3に示す信号変換回路26によって実現される。
信号変換部16は、周波数成分特定部13により特定された1つ以上の周波数成分の中で、ノイズ除去部15により除去されずに残っている周波数成分を時間領域の信号に変換する。例えば、信号変換部16は、残っている周波数成分を逆FFTすることによって、残っている周波数成分を時間領域の信号に変換する。時間領域の信号は、センサ信号取得部11により取得されたセンサ信号から、ノイズが除去された信号に相当する。
信号変換部16は、ノイズ除去後のセンサ信号を、バイタル診断装置4又は表示器5に出力する。
【0021】
図2では、バイタル検出装置3の構成要素であるセンサ信号取得部11、スペクトル算出部12、周波数成分特定部13、ノイズ帯域特定部14、ノイズ除去部15及び信号変換部16のそれぞれが、図3に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、バイタル検出装置3が、センサ信号取得回路21、スペクトル算出回路22、周波数成分特定回路23、ノイズ帯域特定回路24、ノイズ除去回路25及び信号変換回路26によって実現されるものを想定している。
センサ信号取得回路21、スペクトル算出回路22、周波数成分特定回路23、ノイズ帯域特定回路24、ノイズ除去回路25及び信号変換回路26のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0022】
バイタル検出装置3の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、バイタル検出装置3が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして、コンピュータのメモリに格納される。コンピュータは、プログラムを実行するハードウェアを意味し、例えば、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)が該当する。
【0023】
図4は、バイタル検出装置3が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
バイタル検出装置3が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、センサ信号取得部11、スペクトル算出部12、周波数成分特定部13、ノイズ帯域特定部14、ノイズ除去部15及び信号変換部16におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムがメモリ31に格納される。そして、コンピュータのプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
【0024】
また、図3では、バイタル検出装置3の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図4では、バイタル検出装置3がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、バイタル検出装置3における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0025】
次に、図1に示す車載装置の動作について説明する。
図5は、バイタル検出装置3の処理手順であるバイタル検出方法を示すフローチャートである。
生体センサ1は、被測定者のバイタルサインをセンシングし、センシング結果を示すセンサ信号をバイタル検出装置3に出力する。
【0026】
生体センサ1が映像機器によって実現される場合、生体センサ1は、被測定者を撮影し、被測定者の映像に基づいて、被測定者のバイタルサインをセンシングする。
被測定者の肌に光が照射されると、肌に照射された光は、被測定者の肌で鏡面反射する光と、被測定者の肌で拡散反射する光と、被測定者の肌で散乱する光とに分かれる。
被測定者の肌で散乱する光の中には、肌を透過して血管に到達したのち、再度、肌の表面から出ていく散乱光がある。このような散乱光は、脈拍数に関する情報を含んでいる。
血管に到達した光の一部は、血液に含まれているヘモグロビンに吸収される。血液に含まれているヘモグロビンの量は、血流の脈動によって変化するため、血管内で吸収される光の量も脈動に応じて変化する。したがって、散乱光は、脈動に応じて変化する成分を有している。
映像機器によって実現されている生体センサ1は、被測定者の映像が示す肌表面の輝度値から、散乱光に含まれている、脈動に応じて変化する成分を抽出することで、脈拍数を推定することができる。肌表面の輝度値から脈拍数を推定する処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0027】
生体センサ1が電波式センサによって実現される場合、生体センサ1は、マイクロ波を被測定者の体表面に照射し、体表面による反射後のマイクロ波である反射波を受光する。人の体は、心拍、又は、呼吸によって振動しているため、反射波の位相は、時間の経過に伴って変化する。生体センサ1は、反射波の位相変化を検出することで、脈拍数及び呼吸数を推定することができる。反射波の位相変化から脈拍数等を推定する処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0028】
車載センサ2aは、生体センサ1のセンシング結果を示すセンサ信号に混入している可能性のあるノイズとして、被測定者が乗車している車両の振動を観測する。
車載センサ2aは、ノイズ信号として、車両の振動を示す振動信号をバイタル検出装置3に出力する。
【0029】
バイタル検出装置3のセンサ信号取得部11は、生体センサ1から、センサ信号を取得する(図5のステップST1)。センサ信号は、被測定者のバイタルサインを示す周波数成分を含んでいる。また、センサ信号には、ノイズの周波数成分が混入していることがある。
センサ信号取得部11は、センサ信号をスペクトル算出部12に出力する。
【0030】
スペクトル算出部12は、センサ信号取得部11から、センサ信号を取得する。
スペクトル算出部12は、例えば、センサ信号をFFTすることによって、センサ信号の周波数スペクトルを算出する(図5のステップST2)。
スペクトル算出部12は、周波数スペクトルを周波数成分特定部13に出力する。
図6は、スペクトル算出部12により算出される周波数スペクトルの一例を示す説明図である。
図6Aは、被測定者のバイタルサインの周波数成分として、呼吸数の周波数成分と脈拍数の周波数成分とを含んでいる周波数スペクトルを示している。
図6Bは、呼吸数の周波数成分と脈拍数の周波数成分とのほかに、ノイズの周波数成分を含んでいる周波数スペクトルを示している。
図6A及び図6Bにおいて、横軸は周波数、縦軸はスペクトル強度である。
車両が振動している場合、車両の振動がノイズとしてセンサ信号に混入し、図6Bに示すようなノイズの周波数成分が周波数スペクトルに現れることがある。
【0031】
周波数成分特定部13は、スペクトル算出部12から、周波数スペクトルを取得する。
周波数成分特定部13は、周波数スペクトルに含まれている複数の周波数成分の中で、被測定者のバイタルサインを示している可能性がある1つ以上の周波数成分を特定する(図5のステップST3)。
即ち、周波数成分特定部13は、周波数スペクトルに含まれているそれぞれの周波数成分と第1の閾値Thとを比較する。周波数成分特定部13は、複数の周波数成分の中で、第1の閾値Thよりも大きな周波数成分を、被測定者のバイタルサインを示している可能性がある周波数成分として特定する。
図6Bの例では、周波数成分特定部13が、被測定者のバイタルサインを示している可能性がある周波数成分として、呼吸数の周波数成分と、脈拍数の周波数成分と、ノイズの周波数成分とを特定している。
周波数成分特定部13は、特定した1つ以上の周波数成分をノイズ除去部15に出力する。
【0032】
ノイズ帯域特定部14は、車載センサ2aから、ノイズ信号として、振動信号を取得する。
ノイズ帯域特定部14は、例えば、振動信号をFFTすることによって、振動信号の周波数スペクトルを算出する。
ノイズ帯域特定部14は、振動信号の周波数スペクトルから、ノイズ帯域として、車両の振動を示す周波数の帯域を特定する(図5のステップST4)。
ノイズ帯域特定部14は、ノイズ帯域をノイズ除去部15に出力する。
【0033】
以下、ノイズ帯域特定部14によるノイズ帯域の特定処理を具体的に説明する。
ノイズ帯域特定部14は、例えば、振動信号をFFTすることによって、振動信号の周波数スペクトルを算出する。
ノイズ帯域特定部14は、振動信号の周波数スペクトルに含まれている1つ以上の周波数成分と第2の閾値Thとを比較する。
ノイズ帯域特定部14は、振動信号の周波数スペクトルに含まれている1つ以上の周波数成分のうち、第2の閾値Thよりも大きな周波数成分の周波数帯域が、車両の振動を示している周波数の帯域、即ち、ノイズ帯域であると判断する。第2の閾値Thは、ノイズ帯域特定部14の内部メモリに格納されていてもよいし、バイタル検出装置3の外部から与えられるものであってもよい。
図6Bの例では、周波数帯域FBが、ノイズ帯域である。
【0034】
ノイズ除去部15は、周波数成分特定部13から、被測定者のバイタルサインを示している可能性がある1つ以上の周波数成分を取得する。
ノイズ除去部15は、ノイズ帯域特定部14から、ノイズ帯域を取得する。
ノイズ除去部15は、被測定者のバイタルサインを示している可能性がある1つ以上の周波数成分の中で、ノイズ帯域に含まれている周波数成分を除去する(図5のステップST5)。
ノイズ除去部15は、バイタルサインを示している可能性がある1つ以上の周波数成分の中で、ノイズ帯域に含まれている周波数成分を除去しても残っている周波数成分を信号変換部16に出力する。
図7は、ノイズ除去部15によって、ノイズ帯域に含まれている周波数成分が除去されても残っている周波数成分を示す説明図である。
図7の例では、車両の振動であるノイズが除去され、呼吸数の周波数成分と脈拍数の周波数成分とが残っている。
図7において、横軸は周波数、縦軸はスペクトル強度である。
【0035】
信号変換部16は、ノイズ除去部15から、残っている周波数成分を取得する。
信号変換部16は、残っている周波数成分を逆FFTすることによって、残っている周波数成分を時間領域の信号に変換する(図5のステップST6)。時間領域の信号は、センサ信号取得部11により取得されたセンサ信号から、ノイズが除去された信号に相当する。
信号変換部16は、ノイズ除去後のセンサ信号を、バイタル診断装置4又は表示器5に出力する。
【0036】
バイタル診断装置4は、バイタル検出装置3からノイズ除去後のセンサ信号を受けると、ノイズ除去後のセンサ信号が示すバイタルサインに基づいて、被測定者を診断する。
表示器5は、バイタル検出装置3からノイズ除去後のセンサ信号を受けると、ノイズ除去後のセンサ信号が示すバイタルサインをディスプレイに表示させる。
【0037】
以上の実施の形態1では、被測定者のバイタルサインをセンシングする生体センサ1のセンシング結果を示すセンサ信号を取得するセンサ信号取得部11と、センサ信号取得部11により取得されたセンサ信号の周波数スペクトルを算出するスペクトル算出部12と、スペクトル算出部12により算出された周波数スペクトルに含まれている複数の周波数成分の中で、被測定者のバイタルサインを示している可能性がある1つ以上の周波数成分を特定する周波数成分特定部13と、生体センサ1のセンシング結果を示すセンサ信号に混入している可能性のあるノイズを観測するノイズ観測器2の観測結果を示すノイズ信号から、ノイズが存在している周波数帯域であるノイズ帯域を特定するノイズ帯域特定部14と、周波数成分特定部13により特定された1つ以上の周波数成分の中で、ノイズ帯域特定部14により特定されたノイズ帯域に含まれている周波数成分を除去するノイズ除去部15とを備えるように、バイタル検出装置3を構成した。したがって、バイタル検出装置3は、想定最大値以下の大きさを有し、かつ、想定最小値以上の大きさを有する、ノイズの周波数成分を除去することができる。
【0038】
実施の形態2.
実施の形態2では、ノイズ帯域特定部17が、ノイズ信号として、被測定者観測器2bにより観測された被測定者の体動を示す体動信号を取得し、体動信号に基づいて、ノイズ帯域を特定するバイタル検出装置3について説明する。
【0039】
図8は、実施の形態2に係るバイタル検出装置3を含む車載装置を示す構成図である。図8において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
図8に示す車載装置は、生体センサ1、ノイズ観測器2、バイタル検出装置3、バイタル診断装置4及び表示器5を備えている。
図8に示すバイタル検出装置3は、車載装置に搭載されている。バイタル検出装置3は、車載装置に搭載されているものに限るものではなく、病院又は公共施設等に設置されているものであってもよい。
図8に示すバイタル検出装置3では、ノイズ観測器2が被測定者観測器2bを含んでいる。
被測定者観測器2bは、例えば、映像機器によって実現される。
被測定者観測器2bは、被測定者を撮像し、被測定者の映像データに基づいて、センサ信号に混入している可能性のあるノイズとして、被測定者の体動を観測する。
被測定者観測器2bは、被測定者の体動を示す体動信号をバイタル検出装置3に出力する。
【0040】
図9は、実施の形態2に係るバイタル検出装置3を構成図である。
図10は、実施の形態2に係るバイタル検出装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図9及び図10において、図2及び図3と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
【0041】
バイタル検出装置3は、センサ信号取得部11、スペクトル算出部12、周波数成分特定部13、ノイズ帯域特定部17、ノイズ除去部15及び信号変換部16を備えている。
ノイズ帯域特定部17は、例えば、図10に示すノイズ帯域特定回路27によって実現される。
ノイズ帯域特定部17は、ノイズ観測器2からノイズ信号を取得し、ノイズ信号から、ノイズが存在している周波数帯域であるノイズ帯域を特定する。
即ち、ノイズ帯域特定部17は、被測定者観測器2bから、ノイズ信号として体動信号を取得する。ノイズ帯域特定部17は、体動信号に基づいて、ノイズ帯域として、体動を示す周波数の帯域を特定する。
ノイズ帯域特定部17は、ノイズ帯域をノイズ除去部15に出力する。
【0042】
図9では、バイタル検出装置3の構成要素であるセンサ信号取得部11、スペクトル算出部12、周波数成分特定部13、ノイズ帯域特定部17、ノイズ除去部15及び信号変換部16のそれぞれが、図10に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、バイタル検出装置3が、センサ信号取得回路21、スペクトル算出回路22、周波数成分特定回路23、ノイズ帯域特定回路27、ノイズ除去回路25及び信号変換回路26によって実現されるものを想定している。
センサ信号取得回路21、スペクトル算出回路22、周波数成分特定回路23、ノイズ帯域特定回路27、ノイズ除去回路25及び信号変換回路26のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0043】
バイタル検出装置3の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、バイタル検出装置3が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
バイタル検出装置3が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、センサ信号取得部11、スペクトル算出部12、周波数成分特定部13、ノイズ帯域特定部17、ノイズ除去部15及び信号変換部16におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが図4に示すメモリ31に格納される。そして、図4に示すプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
【0044】
また、図10では、バイタル検出装置3の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図4では、バイタル検出装置3がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、バイタル検出装置3における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0045】
次に、図8に示す車載装置の動作について説明する。ただし、被測定者観測器2b及びノイズ帯域特定部17以外は、図1に示す車載装置と同様であるため、ここでは、被測定者観測器2b及びノイズ帯域特定部17の動作のみを説明する。
【0046】
被測定者観測器2bは、被測定者を撮像し、被測定者の映像データに基づいて、生体センサ1のセンシング結果を示すセンサ信号に混入している可能性のあるノイズとして、被測定者の体動を観測する。
被測定者観測器2bは、被測定者の体動を示す体動信号をバイタル検出装置3に出力する。
人の体は、心拍、又は、呼吸によって振動しているため、被測定者観測器2bが、被測定者の映像データを監視すれば、被測定者の体動を観測することができる。
【0047】
ノイズ帯域特定部17は、被測定者観測器2bから、ノイズ信号として体動信号を取得する。
ノイズ帯域特定部17は、体動信号に基づいて、ノイズ帯域として、体動を示す周波数の帯域を特定する。
即ち、ノイズ帯域特定部17は、体動信号に基づいて、被測定者の或る部位の一定時間当りの変化量を測定する。或る部位としては、被測定者の頭、胸、又は、腕等が考えられる。
ノイズ帯域特定部17は、一定時間当りの変化量から、被測定者の体動を示す周波数の帯域を特定する。一定時間当りの変化量から体動を示す周波数の帯域を特定する処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
ノイズ帯域特定部17は、ノイズ帯域をノイズ除去部15に出力する。
【0048】
以上の実施の形態2では、ノイズ帯域特定部17が、ノイズ信号として、被測定者観測器2bにより観測された被測定者の体動を示す体動信号を取得し、体動信号に基づいて、ノイズ帯域を特定するように、図9に示すバイタル検出装置3を構成した。したがって、図9に示すバイタル検出装置3は、図2に示すバイタル検出装置3と同様に、想定最大値以下の大きさを有し、かつ、想定最小値以上の大きさを有する、ノイズの周波数成分を除去することができる。
【0049】
図2に示すバイタル検出装置3では、ノイズ帯域特定部14が、車載センサ2aから出力された振動信号に基づいて、生体センサ1のセンシング結果を示すセンサ信号に混入している可能性のあるノイズとして、被測定者が乗車している車両の振動を観測している。図9に示すバイタル検出装置3では、ノイズ帯域特定部17が、被測定者観測器2bから出力された体動信号に基づいて、センサ信号に混入している可能性のあるノイズとして、被測定者の体動を観測している。
しかし、これらは一例に過ぎず、車載装置のノイズ観測器2が、例えば、車両に実装されている電源等から出力されるノイズの周波数帯域を測定するノイズ測定器を備え、ノイズ帯域特定部14、又は、ノイズ帯域特定部17が、ノイズ帯域として、当該ノイズ測定器により測定されたノイズの周波数帯域を取得するようにしてもよい。
【0050】
なお、本開示は、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示は、バイタル検出装置及びバイタル検出方法に適している。
本開示は、バイタル検出装置を備える車載装置に適している。
【符号の説明】
【0052】
1 生体センサ、2 ノイズ観測器、2a 車載センサ、2b 被測定者観測器、3 バイタル検出装置、4 バイタル診断装置、5 表示器、11 センサ信号取得部、12 スペクトル算出部、13 周波数成分特定部、14,17 ノイズ帯域特定部、15 ノイズ除去部、16 信号変換部、21 センサ信号取得回路、22 スペクトル算出回路、23 周波数成分特定回路、24,27 ノイズ帯域特定回路、25 ノイズ除去回路、26 信号変換回路、31 メモリ、32 プロセッサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10