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特許7588724計時器部品上に機能的要素を印刷する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】計時器部品上に機能的要素を印刷する方法
(51)【国際特許分類】
   G04D 7/08 20060101AFI20241115BHJP
   G04B 17/06 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G04D7/08
G04B17/06 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023536413
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2021085992
(87)【国際公開番号】W WO2022129229
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】20215110.6
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593198670
【氏名又は名称】セー エス ウー エム・サントル・スイス・デレクトロニク・エ・ドゥ・ミクロテクニク・エス アー・ルシェルシュ・エ・デヴェロプマン
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ラニ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ピュジャン,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクス,ニコラス レイモンド
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/201562(WO,A1)
【文献】特表2019-500601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0054089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04D 1/00 - 99/00
G04B 17/00 - 17/34
C09D 11/00 - 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器(100)の計時器部品(1)の保持領域(3)の表面(5)上に機能的要素(2)を印刷して、前記計時器部品(1)の慣性および/またはアンバランスを変更することで、前記計時器(100)の歩度の設定に寄与する方法であって、
前記機能的要素(2)を構成する材料を含む溶液を調製するステップ(20)であって、
前記溶液の粘度と表面張力に関する、調製基準に基づいて、前記溶液の特定の特性を定義するサブステップ(21)を含み、
前記調製基準は、
前記計時器部品(1)の構造変更特徴と、
前記保持領域(3)上の機能的要素(2)の形成特徴であって、形成される前記機能的要素の外形寸法と、機械的、化学的、および外観的特性とを含む、特徴と、
外観的、物理的、および前記材料の濃度の化学的特性を含む、前記保持領域に塗布される前記材料の構造的特徴と、
機能的要素により被覆され得る前記保持領域の表面の外形寸法、接着力、表面粗さ、および/または表面エネルギーを含む、前記保持領域を構成する材料の機械的および/または化学的特性、前記保持領域の表面の表面張力特性を含む、前記計時器部品(1)の前記保持領域(3)の特徴を含むステップ(20)と、
前記調製された溶液を前記保持領域の前記表面(5)上に堆積するステップ(34)とを含み、
前記定義するサブステップ(21)は、決定する段階(22,25,26,27,28)で推定された、
前記計時器部品(1)の構造変更特徴、
前記保持領域上の前記機能的要素(2)の形成特徴、
前記保持領域(3)に塗布される前記材料の構造的特徴、
前記計時器部品(1)の前記保持領域(3)の特徴、
前記方法で実施される印刷技術に関する特徴、
という前記調製基準から前記特定の特性を生成する段階(29)を含み、
前記生成する段階(29)において、
前記溶液の前記粘度の特性は、前記調製基準から決定され、前記溶液の印刷の際に、標的である前記保持領域(3)外への溶液の噴射による、液滴の拡散さらには飛び散りを防ぐのに十分高く、前記粘度の特性は、前記保持領域(3)のサイズを考慮して、さらに前記機能的要素(2)の最終的な外観に関する外観的基準を考慮して設定され、
前記溶液の前記表面張力の特性は、前記計時器部品の前記保持領域(3)の前記表面エネルギーに応じて調製され、前記溶液の前記表面張力は、前記保持領域(3)の前記表面エネルギーよりも低い、方法。
【請求項2】
前記調製するステップ(20)は、前記溶液の前記定義された特定の特性に基づいて、前記溶液に関する混合物を作製するサブステップ(30)であって、溶媒であるベース液と前記材料とを含む、ベース調剤を生成する段階(31)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調製するステップ(20)は、前記溶液の前記定義された特定の特性に基づいて、前記溶液に関する混合物を作製するサブステップ(30)であって、溶媒であるベース液と前記材料とを含む、ベース調剤を生成する段階(31)を含み、
前記作製するサブステップ(30)は、前記ベース調剤に添加される少なくとも1つの製品を選択する段階(32)であって、前記少なくとも1つの製品は、
湿潤剤である表面張力修正添加剤、および/または
前記材料の粒子の分散の安定に寄与する分散剤から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液を調製するステップ(20)は、溶媒であるベース液と前記材料とを含む、ベース調剤に、少なくとも1つの選択された製品を混合するサブステップ(33)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記堆積するステップ(34)は、前記調製された溶液を、前記保持領域(3)の前記表面(5)全体に塗布するサブステップ(35)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記堆積するステップ(34)は、前記調製された溶液を、前記保持領域(3)の前記表面(5)全体に塗布するサブステップ(35)を含み、
前記塗布するサブステップ(35)は、「エアロゾルジェット」、「高濃度インクジェット」、「空圧吐出」、「押出吐出」、または「スーパーインクジェット」型印刷技術を使用して実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記堆積するステップ(34)は、前記調製された溶液を、前記保持領域(3)の前記表面(5)全体に塗布するサブステップ(35)を含み、
前記印刷技術が、エアロゾルジェットを利用する場合、前記塗布するサブステップ(35)は、前記調製された溶液をエアロゾルに変換する段階(36)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記堆積するステップ(34)は、前記保持領域(3)の前記表面に塗布された前記溶液の前記材料を固化するサブステップ(38)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記堆積するステップ(34)は、前記保持領域(3)の前記表面に塗布された前記溶液の前記材料を固化するサブステップ(38)を含み、
前記固化するサブステップ(38)は、前記塗布するサブステップ(35)と同時、またはほぼ同時に開始し、前記塗布するサブステップ(35)が完了した後に終了することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記定義するサブステップ(21)の前記特定の特性は、さらに前記溶液の濃度に関することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記材料は、少なくとも1つの分子前駆体、または金属または金属酸化物粒子、単結晶または多結晶粒子、非晶質材料粒子、セラミック粒子、ポリマー粒子、着色/有色粒子、無色粒子、半透明/透明粒子、蛍光粒子、または燐光粒子の、少なくとも1つの粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記材料は、ナノ粒子またはマイクロ粒子型の少なくとも1つの粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記計時器(100)の前記計時器部品(1)の前記保持領域(3)上の前記表面(5)に塗布される前記機能的要素(2)は、装飾的/外観的要素、慣性質量の計時器部品の動作を調節する要素、または接合要素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記堆積するステップ(34)を繰り返すステップ(39)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記計時器部品(1)の慣性および/またはアンバランスを変更することで、前記計時器(100)の歩度の調節に寄与する、機能的要素(2)を、前記計時器(100)の前記計時器部品(1)の保持領域(3)の前記表面(5)に対して、エアロゾルジェットにより印刷する方法であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法を利用して、機能的要素(2)が塗布可能な表面(5)が設けられた少なくとも1つの保持領域(3)を備える計時器部品(1)。
【請求項17】
前記計時器(100)のてんぷであって、前記てんぷの慣性および/またはアンバランスを変更することで、前記てんぷの歩度を調節するための前記機能的要素(2)を含み得る、前記少なくとも1つの保持領域(3)が設けられたてんぷであることを特徴とする、請求項16に記載の計時器部品(1)。
【請求項18】
各保持領域(3)の全前記表面(5)が非平坦であることを特徴とする、請求項16に記載の計時器部品(1)。
【請求項19】
請求項16に記載の前記計時器部品(1)を含む計時器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器の計時器部品の保持領域の表面に、機能的要素を印刷する方法、ならびにそのような計時器部品、およびこの計時器に関する。
【背景技術】
【0002】
計時器の部品に材料を塗布する様々な方法、特に、時計のムーブメントの歩度を、当該ムーブメントのスプラングてんぷ共振器のてんぷなどの部品の慣性を調整することにより調節することが目的とされる場合の方法が、従来技術において知られている。
【0003】
ここで、これらの方法では従来、まずこのムーブメントの所望の歩度を実現するため、てんぷの慣性に適用される修正値を決定する。この値は、計時器のムーブメントの歩度の測定設定から決定される。次に、決定された修正値に応じて、このてんぷの慣性を調整するため、この材料をてんぷに噴射することで添加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような方法の大きな欠点の1つとして、そのように材料を噴射により添加すると、特にこの材料がてんぷに衝突することで、飛沫が生じることが多い。この飛沫は、広がって、時計用ムーブメントを汚染し得る。したがって、このムーブメントの誤作動を生じる。
【0005】
したがって、本発明の目的の1つは、機能的要素を、計時器部品の所定の保持領域上に、精度よく、狙い通りに塗布する方法を提供することである。この部品は、例えばてんぷであり得る。
【0006】
本発明の別の目的は、そのようなてんぷを有する共振器を備える計時器の調節の可能性を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、制御された量の材料から成る機能的要素を、計時器部品の保持領域上に印刷することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明は、計時器の計時器部品の保持領域の表面上に機能的要素を印刷して、特に上記部品(1)の慣性および/またはアンバランスを変更することで、上記計時器(100)の歩度の調節に寄与する方法であって、
上記機能的要素を構成する材料を含む溶液を調製するステップであって、
上記溶液の粘度と表面張力に関する、調製基準に基づいて、上記溶液の具体的な性質を定義するサブステップを含み、
上記調製基準は、
上記計時器部品の少なくとも1つの構造変更特徴と、
上記保持領域上の機能的要素の少なくとも1つの形成特徴であって、形成される上記機能的要素の外形寸法と、機械的、化学的、および外観的特性とを含む、特徴と、
外観的、物理的、および上記材料の濃度などの化学的特性を含む、上記保持領域に塗布される上記材料の少なくとも1つの構造的特徴と、
機能的要素により被覆され得る上記保持領域の表面の外形寸法、接着力、表面粗さ、および/または表面エネルギーなどの上記領域を構成する材料の機械的および/または化学的特性、上記保持領域の表面の表面張力特性などの、上記部品の上記保持領域の少なくとも1つの特徴を含むステップと、
上記調製された溶液を上記保持領域の上記表面上に堆積するステップとを含む、方法に関する。
【0009】
別の実施形態において、
上記調製するステップは、上記溶液の上記定義された特定の特性に基づいて、上記溶液に関する混合物を作製するサブステップであって、特に溶媒であるベース液と上記材料とを含む、ベース調剤を生成する段階を含み、
上記作製するサブステップ(30)は、上記ベース調剤に添加される少なくとも1つの製品を選択する段階(32)であって、上記少なくとも1つの製品は、湿潤剤などの表面張力修正添加剤から選択され、
上記作製するサブステップは、上記ベース調剤に添加される少なくとも1つの製品を選択する段階であって、上記少なくとも1つの製品は、上記固体材料の粒子の分散の安定に寄与する分散剤から選択され、
上記溶液を調製するステップは、上記ベース調剤に、少なくとも1つの選択された製品を混合するサブステップを含み、
上記堆積するステップは、上記調製された溶液を、上記保持領域の上記表面全体に塗布するサブステップを含み、
上記塗布するサブステップは、「エアロゾルジェット」、「高濃度インクジェット」、「空圧吐出」、「押出吐出」、または「スーパーインクジェット」型印刷技術を使用して実施され、
上記印刷技術が、エアロゾルジェットを利用する場合、上記塗布するサブステップは、上記調製された溶液をエアロゾルに変換する段階を含み、
上記堆積するステップは、上記保持領域の上記表面に塗布された上記溶液の上記材料を固化するサブステップを含み、
上記固化するサブステップは、上記塗布するサブステップと同時、またはほぼ同時に開始し、上記塗布するサブステップが完了した後に終了し、
上記定義するサブステップは、上記計時器部品の上記少なくとも1つの構造変更特徴を決定する段階を含み、
上記定義するサブステップは、上記保持領域上の上記機能的要素の上記少なくとも1つの形成特徴を決定する段階を含み、上記形成特徴は、形成される上記機能的要素の外形寸法、および/または機械的、化学的、および/または外観的特性との内の少なくとも1つを含み、
上記定義するサブステップは、上記保持領域に塗布される上記材料の上記少なくとも1つの構造的特徴を決定する段階を含み、上記構造的特徴は、外観的、物理的、および/または上記材料の濃度などの化学的特性を含み、
上記定義するサブステップは、上記計時器部品の上記保持領域の上記特徴を決定する段階を含み、上記特徴は、上記層により被覆され得る、上記保持領域の上記表面の外形寸法と、上記保持領域の上記表面の接着力、表面粗さ、および/または表面張力特性などの、上記領域を構成する上記材料の、機械的および/または化学的特性との内の少なくとも1つを含み、
上記定義するサブステップの上記特定の特性は、さらに上記溶液の濃度に関し、
上記材料は、少なくとも1つの分子前駆体、または金属または金属酸化物粒子、単結晶または多結晶粒子、非晶質材料粒子、セラミック粒子、ポリマー粒子、着色/有色粒子、無色粒子、半透明/透明粒子、蛍光粒子、または燐光粒子などの、少なくとも1つの粒子を含み、
上記材料は、ナノ粒子またはマイクロ粒子型の少なくとも1つの粒子を含み、
上記計時器の上記計時器部品の上記保持領域上の上記表面に塗布される上記機能的要素は、装飾的/外観的要素、慣性質量などの計時器部品の動作を調節する要素、または接合要素を含み、
上記方法は、上記堆積するステップを繰り返すステップを含み、
上記方法は、特に上記部品の慣性および/またはアンバランスを変更することで、上記計時器の歩度の調節に寄与する、機能的要素を、上記計時器の上記部分の保持領域の上記表面に対して、特にエアロゾルジェットにより印刷する方法である。
【0010】
本発明はさらに、上記方法を利用して、機能的要素が塗布可能な表面が設けられた少なくとも1つの保持領域を備える計時器部品に関する。
【0011】
有利に、上記部品は、上記計時器のてんぷであって、特に上記てんぷの慣性および/またはアンバランスを変更することで、上記てんぷの歩度を調節するための上記機能的要素を含み得る、上記少なくとも1つの保持領域が設けられた調節面を備えるてんぷである。
【0012】
特に、各保持領域の上記表面は非平坦である。
【0013】
本発明はさらに、そのような部品を備える計時器に関する。
【0014】
他の特定の特徴および利点が、以下の説明により明らかになる。説明は、概要として提供されるもので、あらゆる意味で限定的ではなく、以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1、本発明の一実施形態に係る、ここでは例えばそれぞれ機能的要素を保持することが意図された保持領域をふくむてんぷである計時器部品の2つの代替的実施形態の上面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る、ここでは例えばそれぞれ機能的要素を保持することが意図された保持領域をふくむてんぷである計時器部品の2つの代替的実施形態の上面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る、保持領域の3つの代替的実施形態を示す断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る、保持領域の3つの代替的実施形態を示す断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る、保持領域の3つの代替的実施形態を示す断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る、機能的要素を含む保持領域が設けられた上述の計時器部品を有する計時器の概略図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る、計時器部品の各保持領域の保持面上に機能的要素を印刷する方法に関するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図7を参照すると、本発明は、計時器100の計時器部品1の保持領域3の保持面5上に機能的要素2を印刷する方法に関する。なお、このような方法は、好ましくは、エアロゾルジェット印刷方法である。ただし、別の実施形態では、この方法は高濃度インクジェット、空圧吐出、オーガー駆動押出吐出、またはスーパーインクジェット技術など、別の印刷技術を実施し得ることが理解される。方法はさらに、マイクロドロップなどの、吐出装置を使用して、ドットビーズを堆積する印刷技術を実施し得る。後者の印刷技術の場合、これらのドットは、連続線形状に機能的要素2を形成するのに十分なほど互いに近接して配置され得る。
【0017】
したがって、この方法は特に、保持領域3の表面5上に印刷された機能的要素2が、時計分野でのみ、機能的用途がある機能的要素2であることを保証することを目的とする。この機能的要素2は例えば、装飾/美観用要素、計時器部品の動作(例えば慣性質量)を調節/調整するため要素、結合要素、または計時器部品が明確に識別できるようにする要素である。
【0018】
この機能的要素2は、固体材料製である。この材料は非限定的かつ非消尽的に、金属または金属酸化物粒子などの少なくとも1つの分子前駆体または少なくとも1つの粒子、単結晶または多結晶粒子(アルミナまたはシリコンなど)、非晶質材料粒子(ガラス、金属、など)、セラミック粒子、ポリマー粒子、着色/有色粒子、無色粒子、半透明/透明粒子、蛍光粒子または燐光粒子を含み得る。さらに、粒子はナノ粒子またはマイクロ粒子型であり得ることに留意されたい。
【0019】
本発明をより良く理解できるように、ここで説明する実施形態において、保持領域3の表面5上に印刷される機能的要素2は、慣性質量型の調節/調整要素を形成する。この慣性質量2は、具体的には、ここではてんぷである、計時器100の計時器部品1の慣性および/またはアンバランスを変更することで、計時器の歩度の調節に寄与可能とするものである。さらに、本発明は、この文脈において、単独のスプラングてんぷ、または計時器100のムーブメント110内に搭載されたスプラングてんぷの慣性および/またはアンバランスを修正可能とする。ここで、ムーブメント110は修正動作中に、この計時器のケース内に搭載可能である。以下に説明する印刷方法の範囲内で実施されるあらゆる動作は、保持領域3上に印刷される機能的要素2の種類によって変化しないことを明確に理解されたい。
【0020】
したがって、この文脈において、図1は計時器100の時計用ムーブメント110の、スプラングてんぷ型の、共振器120のてんぷ1を示す。このようなてんぷ1は、この計時器100、即ちそのムーブメント110の歩度を調節するための機能的要素2を保持することが意図された上記少なくとも1つの保持領域3が設けられる。このような保持領域3は、
図1から図4に示すてんぷ1の上面4aに画定された凹部、
・このてんぷ1の、底面4d、第1側面4b、および/または第2側面4cに画定された、本明細書においては不図示の凹部、または
図1、2および図5に示す、このてんぷ1の、上面4a、底面4d、第1側面4b、および/または第2側面4cの表面の一部を含み得る。
【0021】
第1側面4bおよび第2側面4cは、てん輪11の外周壁及び内周壁にそれぞれ対応する。保持領域3は、機能的要素2の保持面5を含み得、保持面5は、
図3に示す、保持領域3の別実施形態のように平坦か、
図4に示すように湾曲することで、または図5に示すように、垂直または略垂直に互いにつながった表面小部位を含むことで非平坦であり得る。
【0022】
さらに、保持領域3の全体または一部にわたって、保持面5が画定されていることに留意されたい。
【0023】
図1および図2において、てんぷ1は、てん輪11と、天真に回転可能に取り付けられることが意図されたハブ12と、てん輪11をハブ12に接続する、1つまたは複数のアーム13、例えば、2本、3本、または4本のアーム13とを有する。てんぷ1は、機能的要素2を保持する少なくとも1つの保持領域3を含む調節面を有する。特に、この調節面は、上面4aおよび/または底面4dおよび/または第1側面4bおよび/または第2側面4cを含む。この調節面は、てんぷ1が時計用ムーブメント110内に含まれて、即ち、例えばこのケース内に取り付けられて、各保持領域3が、その保持面5上に機能的要素2を印刷するためアクセス可能な状態で、計時器100のケースの裏側に向けられていることが好ましい。なお、上面4aは、てんぷ1のてん輪11内に含まれた/画定された第1部分と、このてんぷ1のアーム13内の第2部分を含む。このような上面4aは、平坦か略平坦で、天真に直交する平面内で延在する。
【0024】
図3および図4を参照して上述したように、保持領域3は、開口と、略平坦面を有し得る固体の底と、この開口とこの底を繋げる内壁とが設けられた、溝、窪み、または凹み構造などの凹部であり得る。本明細書において、固体の底とは、一切の開口/孔をもたない底を意味することを理解すべきである。この構成において、保持面5は、図3に示すようにこの凹部の底により形成されるか、図4に示すように底と、内壁の一部により形成される。これら図3および図4に示す例において、凹部は、てんぷ1の上面4a、特にてん輪11のみに画定されている。したがって、この面4aは、複数の開口を有し、それを通じて対応する凹部の内部空間にアクセス可能となる。この構成において、各凹部、したがって各対応する内部空間は、慣性質量となる機能的要素2を保持することが意図される。これにより、てんぷ1の慣性および/またはアンバランスが変更される。
【0025】
不図示の別例では、この凹部は貫通し、両端が開口された貫通孔または底がない孔を形成し得る。この構成では、保持面はこの凹部の内壁で形成される。
【0026】
図5に示すさらなる別例では、保持領域3が凹部ではなく、したがって上面4a(または底面4d)の表面の一部と、2つの側面4b、4cの一方の表面の一部に画定され得る。さらなる別例では、保持領域3が上面4aまたは底面4dの表面の一部、または側面4b、4cの表面の一部のみに位置し得る。
【0027】
さらに別例では、保持領域3は、
上面4aの表面の一部、および両側面4b、4cの表面の一部との両方、または、
底面4dの表面の一部、および両側面4b、4cの表面の一部との両方に位置し得る。
【0028】
保持領域3は、てんぷ1において、てん輪11またはアーム13の内の1つ内/上に画定され得る。てんぷ1が複数の保持領域3を有する場合、これらはこのてんぷ1のアーム13内/上のみ、てん輪11内/上のみ、またはこのてんぷ1のアーム13およびてん輪11内/上に分散し得る。或いは、てんぷ1が単一の保持領域3を有する場合、これはてん輪11の外形全体に亘る調節面内に画定され得る。
【0029】
図1において、てん輪11は、てん輪11の外周に沿って分散された、例えば3つの領域である、複数の保持領域3を有する。各保持領域3は、例えば、5°から120°の間、好ましくは20°から60°の間の角度で、円弧状に延在する。図2において、てん輪11は、例えば4つ以上の領域3である、複数の保持領域3を有する。これらは、このてん輪11の外周に沿って分散される。これら保持領域3は、90°未満、好ましくは45°未満の角度で円弧上に延在する。本発明は、単一の保持領域3、2つの保持領域3、または4つ以上の保持領域3を有するてん輪についても実施可能であることを理解されたい。
【0030】
これら2つの実施形態において、保持領域3は、例えば、てんぷ1のてん輪11のこの外周に沿って、等間隔で分散され得る。したがって、保持領域3の全てまたは一部において、印刷された機能的要素2が対称に分散される。これにより、てんぷ1の慣性および/またはアンバランスが変更されることで、ムーブメント110の歩度が正確に調整される。さらなる例において、上述の2つの実施形態において、保持領域3は、てん輪11の外周に沿って、非対称に分散され得る。これにより、保持領域3の全てまたは一部において、機能的要素2を印刷することで、てんぷ1の慣性および/またはアンバランスと、中心質量が変更される。別の例では、てんぷ1の保持領域3は、てんぷ1のてん輪11上に対称に分散し、機能的要素2はこれら保持領域3の内の、互いに非対称構成を有する一部にのみ印刷される。
【0031】
上述のように、各保持領域3は、てんぷ1の調節面に向けて開放している。同面は、上面4aおよび/または2つの側面4b、4cのみからなる場合、時計用ムーブメント110が計時器100のケース内に取付られた状態で、実質的にこのケースの裏側に面するように配置されることが意図される。したがって、このような構成において、時計用ムーブメント110が計時器100の中央部に取り付けられ、その中央部にケースの裏を組付ける前に、時計用ムーブメント110の歩度の最終調節が実行可能となる。これは、自動ムーブメントに関して、ムーブメント110の共振器120から、この計時器100の回転錘が離脱していることを保証したうえで、機能的要素2を塗布する装置をてんぷ1の上方に調整することで行われる。この実施形態において、噴射装置は、エアロゾルジェット型印刷技術を実施可能である。これは、極めて少ない材料の体積で、極めて正確な気化を可能とするものである。
【0032】
図7は、計時器100の計時器部品1の保持領域3の表面5上に、機能的要素2を印刷する方法を示す。より具体的には、本明細書に記載の本発明の実施形態では、てんぷ1またはスプラングてんぷでもあり得る計時器部品1上にこのような機能的要素2を印刷することは、計時器100の歩度調節に寄与する。これら条件下で、この方法はさらに、特にエアロゾルジェットにより、計時器100のこの部品1の保持領域3の表面5上に機能的要素2を印刷して、具体的にはこの部品1の慣性および/またはアンバランスを変更することで、計時器100の歩度調節に寄与する方法である。
【0033】
この方法は、計時器部品1上に印刷される機能的要素2を構成する上記材料を含む溶液を調製するステップ20を含む。このような溶液は、ある程度ペースト状、または粘液状であり得る。したがって、この実施形態において、この材料を含むこの溶液はインクであり得る。即ち、保持領域3上に堆積した後に、気化により乾燥、またはポリマー化により硬化され得る液体としての溶液であり得る。これにより、当該領域3に対する固形材料の塗布が保証される。
【0034】
この調製するステップ20は、調整基準に基づく、溶液の具体的な性質を定義21するサブステップを含む。このサブステップ21において、溶液の具体的な性質は、この溶液の粘度と表面張力に関する。本実施形態において、これらの性質はさらに、当該溶液の濃度にも関する。調製基準は、
計時器部品1の少なくとも1つの構造変更特徴と、
上記保持領域3上の機能的要素2の少なくとも1つの形成特徴と、
上記保持領域3に塗布される機能的要素2を構成する固体材料の少なくとも1つの構造的特徴と、
部品1の上記保持領域3の少なくとも1つの特徴と、
本方法により実施される印刷技術の少なくとも1つの特徴とを含む。
【0035】
定義するサブステップ21は、計時器部品1の上記少なくとも1つの構造変更特徴を決定する段階22を含む。この部品1に機能的要素2を塗布することが計時器100の歩度を調節することを目的としているという本発明のこの実施形態の文脈において、この上記少なくとも1つの構造変更特徴は、時計用ムーブメント110、即ち計時器100の調整済み/修正済み歩度を得るために、てんぷ1の慣性および/またはアンバランスを修正するための修正値から得られた歩度修正値を含む。
【0036】
同じくこの部品1に機能的要素2を塗布することが計時器100の歩度を調節することを目的としているという本発明のこの実施形態の文脈において、この決定する段階22は、時計用ムーブメント110の歩度を測定するサブ段階23を含む。共振器へのアクセスは特に狭いため、この測定は非接触に実施できることが好ましい。したがって、光学的および/または音響的技術を使用した公知の方法で、ムーブメント110の歩度の測定が実施され得る。この測定するサブ段階23は、所望の歩度に対して、測定された歩度を比較可能とする。さらに、てんぷ1のビートを把握可能とする。したがって、それをてんぷ1の各保持領域3の保持面5上の機能的要素2の印刷に同期できる。
【0037】
同じく計時器100の歩度を調節することを目的としたこの実施形態の文脈において、決定する段階22はその後、修正済み歩度を得るために、てんぷ1の慣性の修正値を推定するサブ段階24aを含む。この修正値は以下の公知の式で決定される。
【0038】
スプラング添付型の共振器の場合、てんぷの慣性Iのモーメントにより次の式が成立する。
【0039】
【数1】
【0040】
式中、mは、てんぷ1の質量を示し、rは、てんぷ1の熱膨張係数により、温度に依存もする、その慣性半径を示す。
【0041】
さらに、定数部分を有するてんぷばねの弾性トルクCにより、次の式が成立する。
【0042】
【数2】
【0043】
式中、Eは、使用される材料のヤング率を示し、hは、その高さを示し、eは、その厚さを示し、Lはその伸張長さを示す。
【0044】
最後に、スプラングてんぷを含む共振器120の周波数fにより以下の式が成立する。
【0045】
【数3】
【0046】
決定する段階22はさらに、修正済み歩度を得るために、てんぷ1のアンバランスの修正値を推定するサブ段階24bを含む。この修正値の推定は、従来技術により公知であり、特にWO2012007460およびEP2864844A1という文献に記載されている。
【0047】
定義するサブステップ21は、次に、上記保持領域3上の機能的要素2の上記少なくとも1つの形成特徴を決定する段階25を含む。この段階25において、機能的要素2の外形寸法と、機械的、化学的、および/または外観的特性となどの内の少なくとも1つである形成特徴が決定される。なお、ここで決定される機能的要素2の外形寸法とは、具体的には、歩度修正の値を定義可能とする、この機能的要素2の厚さ、長さ、幅、および/または半形に関するものである。保持領域上に形成される機能的要素2は、矩形部分、または円盤の一部を示す部分を有し得る。この場合、この部分は、溶液の表面張力、または保持領域3の保持面に依存する。
【0048】
この定義するサブステップ21はさらに、上記保持領域3を塗布する材料の上記少なくとも1つの構造的特徴を決定する段階26を含む。この段階26において、この材料の外観的、物理的および/または濃度および表面張力など化学的特性などの構造的特徴が決定される。なお、この材料の濃度とは、保持領域3上に印刷される機能的要素2を構成する同じ材料、したがって、この領域3上のこの要素2の固化の後、特に溶液の溶媒の気化後のものと同じである。
【0049】
定義するサブステップ21はさらに、部品1の上記保持領域3の上記少なくとも1つの特徴を決定する段階27を含む。この段階27において、機能的要素2により被覆され得る、保持領域3の表面の外形寸法などの保持領域3の特徴と、接着力、表面粗さ、および/または表面エネルギーなどのこの領域3を構成する材料の機械的および/または化学的特性と、この保持領域3の表面の表面張力特性5との内の1つまたは複数が決定される。
【0050】
さらに上述したように、印刷方法により、いくつかの印刷技術が実施可能である。これら条件下で、この方法は、定義するサブステップ21において、この方法で実施される印刷技術の少なくとも1つの特徴を決定する段階28を提供する。
【0051】
この参照符号25、26および27が付された決定する段階は、変更対象の計時器部品1の保持領域3の保持面5に等しい基板に対する実験により実施されることが好ましい。これらの段階は、非限定的および非消尽的に、光学顕微鏡による観察動作を含む。これは、接着力テスト、光学または機械的形状測定、走査型電子顕微鏡法(SEM)、エネルギー分散型X線分光法(EDX)、基準液(例えば、水、エチルグリコール)に基づく基板への表面エネルギー測定、溶液に対する表面張力測定、および/または溶液と、保持領域3を構成する基板との間の接触角度測定などの濡れ性テストなどを実施するためである。
【0052】
定義するサブステップ21は次に、先行する決定する段階25、26、27、28により推定された上記調製基準から溶液の具体的特性を生成する段階29を含む。なお、これら調製基準は特に、計時器部品の保持領域の表面に塗布される固体材料の量および性質を、粘度、表面張力、および濃度特性が推定される材料の量および性質に関連して決定可能とする。特に、材料の量および性質は、濃度および粘度特性、および溶液の表面張力を定義するのに寄与する添加物の選択を決定付けるものであることを特に理解されたい。
【0053】
この生成する段階29において、これら調製基準から決定される、溶液の粘度特性は、この溶液の印刷の際の、標的である保持領域3外への溶液の噴射による、液滴の拡散さらには飛び散りを防ぐのに十分高くなるべきである。したがって、この粘度特性は、保持領域3の大きさを考慮し、別の特定の実施形態においては、機能的要素2の最終的な外観に関する外観的基準を考慮して設定される。例えば、約100μmの幅に限定された保持領域3の場合、決定された溶液の粘度特性は、1cPを必ず超え、好ましくは50cPである粘度を定義する。また、印刷方法で実施される印刷技術の種類によっては、極めて高い粘度だと、特に、方法において実施される印刷の速度が変わってしまうことで、この方法の適切な実施が妨げられ得ることに留意されたい。例えば、エアロゾルジェット印刷の範疇で、1,000cPを超える粘度だと、エアロゾルジェットが生成できなくなり得る。
【0054】
この溶液の表面張力特性に関して、この生成する段階29において、このような特性は、保持領域3の基板の表面エネルギーに応じて調整される。この溶液の表面張力は、好ましくは、この基板の表面エネルギーよりも低い。この条件は、両値を測定することで分析可能である。例えば、水、エチルグリコール、またはジヨードメタンなどの溶媒に対する接触角に基づいて基板の表面エネルギーは測定可能である。溶液の表面張力は、例えばペンダントドロップ法で決定できる。或いは、溶液と、基板との間の接触角を直接測定できる。概して、この目的は、良好な濡れ性、即ち、0°から90°の間の接触角を実現することである。この状況を実現するため、湿潤剤(表面張力修正添加剤)を添加する、または保持領域の基板を改修することでその表面エネルギーを変化させることで、溶液の表面張力に作用し得る。この基板の改修が空間的に制御されれば、保持領域3を定義する追加の利点が提供される。
【0055】
溶液の濃度に係る特性は、主にこの溶液を構成する固体材料の質量分率と、この材料固有の濃度により決定される。溶液が高濃度であれば、処理対象の計時器部品に、質量をより迅速に加えられることが理解されよう。これは工業的生産の面で有利である。一方で、固体材料の量も粘度を決定する。極めて大量となると、印刷の精度、ひいては印刷の実現性を制限し得る。
【0056】
調製するステップ20は次に、この溶液に関して既に定義された特定の特性に基づいて、上記溶液に関する混合物を作製するサブステップ30を含む。このようなサブステップ30は、既に決定された性質および量に応じて上記固体材料と、例えば、溶媒または各種溶媒の混合物である、ベース液とを含むベース調剤を作製する段階31を含む。このサブステップ30は次に、上記ベース調剤に添加される少なくとも1つの製品を選択する段階32を含む。上記少なくとも1つの製品は以下の製品から選択される。
・湿潤剤などの表面張力修正添加剤、および/または
・固体材料の粒子の分散の安定に寄与する分散剤
【0057】
溶液を調製するステップ20は次に、任意で、選択された少なくとも1つの製品をベース調剤に混合するサブステップ33を含み得る。このサブステップ33において、1つまたは複数の修正添加剤および/または分散剤が、溶液に対して既に定義された特定の特性に基づいて、ベース調剤に添加される。より具体的には、この混合するサブステップ33において、溶剤は、
・材料の量と性質に基づいて、混合物の1つまたは複数の選択された製品、主に溶媒の割り合いを変化させることで、決定された粘度に応じてこの溶液の粘度を調整する、
・材料の量と性質に基づいて、混合物の1つまたは複数の選択された製品、主に添加物の割り合いを変化させることで、決定された表面張力に応じてこの溶液の表面張力を調整する、
・材料の量と性質に基づいて、または混合物の1つまたは複数の選択された製品、主に粒子の割り合いを変化させることで、決定された濃度に応じて、この溶液の濃度を調整する、
ことにより得られるべきである。
【0058】
方法は次に、保持領域3の表面5全体上に、調製された溶液を堆積するステップ34を含む。この実施形態において、このステップ34は、歩度修正値に応じて、このてんぷ1の慣性および/またはアンバランスを変更するために、てんぷ1の1つまたは複数の保持領域3上に機能的要素2を構成することに寄与する。この堆積するステップ34は、部品1の保持領域3の表面5全体に、調整された溶液を塗布するサブステップ35を含む。このサブステップ35は、材料を含む溶液を、機能的要素2を形成するために、部品1上に塗布することに寄与する。このような塗布するサブステップ35は、エアロゾルジェットが印刷技術に使用される場合、調整された溶液をエアロゾルに変換する段階36を含む。この段階36は、調整された溶液を気化するサブ段階37を含む。これは、この溶液をエアロゾルに変換することに寄与する。
【0059】
堆積するステップ34は次に、保持領域3の表面に塗布された溶液の材料を固化するサブステップ38を含む。このサブステップ38は、部品1の保持領域3上に塗布されたこの機能的要素2の形成を完成することを目的とする。このサブステップ38は、塗布サブステップ35が実施されると即開始する、溶液の溶媒の気化を継続すること、機能的要素2を構成する材料を熱硬化すること、または保持領域3の表面5上のこの材料を架橋することから成り得る。上述のように、この固化するサブステップ38は好ましくは、塗布するサブステップ35と同時または略同時に開始し、この塗布するサブステップ35完了後に終了することが好ましい。これにより、保持領域3における機能的要素2の配置精度を向上する。
【0060】
方法は、堆積するステップ34を繰り返すステップ39を実施し得る。当該ステップは、計時器部品1の保持領域3上に機能的要素2を構成するのに必要な回数だけ実施される。この機能的要素2は、一体形成、または例えば互いに離間した一連のドットのような、複数の個別部分により形成され得る。
【0061】
したがって、特に計時器部品1に塗布される材料を含む溶液の調製および特定の組成により、方法は有利に、この部品1上に機能的要素2を、的を絞って、高い精度で印刷可能とする。配置に関して、約5μmの体積センタリング精度が実現できる。最終的混合物の標的に対する吐出よりも、モータ駆動微小位置決めシステムによりこれはさらに絞られる。添加される材料の量は、時計用途に対する感度閾値よりもかなり低い、ナノグラム範囲で制御され得る。
【0062】
さらに、この慣性質量型の機能的要素2の印刷は、計時器部品1の製造で想定されるような、堆積後の飛沫/はみ出しが生じることなく、堆積された慣性質量が高度に制御されて実施される。なお、このような堆積時の飛沫/飛び散りは、時計用ムーブメント110の汚染、ならびにその故障可能性の原因となることが多い。さらに、この方法は、保持領域3の表面5が平坦か非平坦かに関わらず、計時器部品1上の材料の均一の塗布、したがって質量の均一な分散を可能とする。言い換えると、機能的要素2が、固定された、または移動する計時器部品1の三次元保持面5全体に均一に、そして同じ解像度で印刷可能である。さらに、このように設計された溶液は、
保持領域3の表面5上の機能的要素2の位置の幾何学的定義、
保持面5上の機能的要素2の外観向上、
この表面5の作製に一切無関係な、この表面5への機能的要素2の接着力向上、
繰り返し可能な印刷方法の提案、および
工業利用可能な印刷方法の提案に寄与することにも留意されたい。
【0063】
一例において、このような発明は、スプラングてんぷ型時計用共振器の慣性モーメントの調整の範囲内で実施可能である。このような調整は、共振器の歩度に対して、一日約マイナス5秒という修正量を目的とする。なによりも、本発明の材料の添加は、てんぷの慣性モーメントを増加することのみ可能であるため、ここでの負の記号は、歩度が共振周波数を低減することによりのみ修正可能であることを示唆することを理解されたい。この文脈において、一般的な時計用てんぷのてん輪の質量と半径を考える場合、約10μgの質量の固体材料を含む、てんぷのてん輪上に機能的要素を印刷することは、上述した程度での歩度の上記修正を可能とするものと推定され得る。この目的のため、上記機能的要素を含む溶液は、95重量パーセントのベース調剤を含む。これは即ち、20重量パーセントの水などの溶媒と、75重量パーセントの、US Research Nano Materials社により製造され、150nmから200nmの間のサイズを有する少なくとも1つの炭化タングステンナノ粒子とである。さらに、5重量パーセントの、製品名olsperse(登録商標)J948のLubrizol製のポリウレタン添加材を含む。
【0064】
このような溶液は、「エアロゾル」型印刷技術のために構成される。したがって、固体材料の流量を、炭化タングステン毎秒約2μgとすることを可能とする。この溶液の粘度と表面張力は、てんぷのてん輪の弧部分に対して、300μmの厚さで、堆積の標的を絞ることを可能とする。したがって、時計用共振器の歩度は、数秒内に修正できる。さらに、75重量パーセントの炭化タングステン(濃度15.6g/ml)、25重量パーセントの水、および5重量パーセントのポリウレタン(濃度最大1g/ml)により、ここでの溶液の濃度は、約3.4g/mlとなることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7