(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】より安全なインフラストラクチャのためのDFOS自己異常検出システム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/353 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
G01D5/353 B
(21)【出願番号】P 2023540942
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2022013065
(87)【国際公開番号】W WO2022159548
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-04
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ミン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ティン
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-30083(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0313763(US,A1)
【文献】特開2001-343620(JP,A)
【文献】特開2006-307438(JP,A)
【文献】特開平10-68908(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0040046(US,A1)
【文献】特開2001-134851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26-5/38
G08B 13/00-13/26
G02F 1/09
G02B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある長さの光センシングファイバと、
前記ある長さの光センシングファイバと光通信するDFOSインタロゲータ/アナライザであって、質問パルスを生成し、前記生成された質問パルスを前記光センシングファイバに注入し、前記光センシングファイバからの反射/後方散乱信号を検出/分析して、前記光センシングファイバの長さに沿って遭遇する環境条件を決定して出力するように構成されたDFOSインタロゲータ/アナライザと、
前記ある長さの光センシングファイバと光通信し、該光センシングファイバに沿って配置された1つ以上の光磁気スイッチ(OMS)であって、前記DFOSインタロゲータ/アナライザによって検出/分析されるように、該
光磁気スイッチが受ける機械的状態に応じて、前記光センシングファイバ内の光路を変更するように構成された1つ以上の光磁気スイッチと、
を含む、自己異常検出を備えた分散型光ファイバセンシング(DFOS)システム。
【請求項2】
前記1つ以上のOMSは、該1つ以上のOMSに含まれる磁石のモーメントによって前記光路に影響を与える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1つ以上のOMSは、可動機械構造に固定され、前記可動機械構造が移動するにつれて光路を変更する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上のOMSは、3つのポートを備え、前記ポートのうちの2つが前記光センシングファイバに直接接続され、3番目のポートが光アイソレータを介して前記光センシングファイバに接続されるように構成された1×2スイッチである、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記DFOSインタロゲータ/アナライザは、前記
光磁気スイッチが受ける前記機械的状態に起因する検出/分析され変更した光路を報告するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記光センシングファイバは、インタロゲータ/アナライザ信号と同時に電気通信トラフィックを搬送し、同時に反射/散乱されるように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、分散型光ファイバセンシング(DFOS)に関する。より詳細には、本開示は、インフラストラクチャへの侵入を示す可能性のある異常の検出/判定に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には理解されるように、分散型光ファイバセンシング(DFOS)技術は、センシング光ファイバに近接した温度、振動などを含む感覚データを提供することができるので、多種多様な重要な用途において採用されている。このような有用性を考えると、DFOSセンシング技術のさらなる応用は、当技術分野にとって歓迎すべきことである。
【発明の概要】
【0003】
DFOSシステムに統合される光磁気スイッチ(OMC)を使用して異常検出にDFOS技術を有利に拡張するDFOSシステム、方法、および構造を対象とする本開示の態様に従って、当技術分野の進歩がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示のより完全な理解は、添付図面を参照することによって実現され得る。
【0005】
【
図1】当技術分野で知られている例示的なDFOS配置の概略図である。
【0006】
【
図2(A)】DFOSシステムに統合された光磁気スイッチ(OMS)を示す概略図であって、1×2OMSを示す図である。
【
図2(B)】DFOSシステムに統合された光磁気スイッチ(OMS)を示す概略図であって、本開示の態様による2×2OMSを示す図である。
【0007】
【
図3(A)】光磁気スイッチ(OMS)がDFOSシステムに統合された自己異常検出システムを示す概略図であって、正常な動作を示す図である。
【
図3(B)】光磁気スイッチ(OMS)がDFOSシステムに統合された自己異常検出システムを示す概略図であって、本開示の態様によるOMSによってトリガされる異常イベントを示す図である。
【0008】
【
図4(A)】本開示の態様による光磁気スイッチを採用するDFOSシステムにおいて使用することが可能様々な構成要素を概略的に示す図であって、本開示の態様によるファイバ分散ハブを示す図である。
【
図4(B)】本開示の態様による光磁気スイッチを採用するDFOSシステムにおいて使用することが可能様々な構成要素を概略的に示す図であって、本開示の態様によるリモート端末のドア上のOMSを示す図である。
【
図4(C)】本開示の態様による光磁気スイッチを採用するDFOSシステムにおいて使用することが可能様々な構成要素を概略的に示す図であって、本開示の態様によるデータセンター内のキャビネット上のOMSを示す図である。
【
図4(D)】本開示の態様による光磁気スイッチを採用するDFOSシステムにおいて使用することが可能様々な構成要素を概略的に示す図であって、本開示の態様による入口ゲート上のOMSを示す図である。
【0009】
【
図5】本開示の態様による、OMSを備えたDFOSを使用した異常検出の全体処理を示すフロー図である。
【0010】
例示的な実施形態は、図面および詳細な説明によってより完全に説明される。しかしながら、本開示による実施形態は様々な形態で実施することができ、図面および詳細な説明に記載された特定のまたは例示的な実施形態に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
【0012】
さらに、本明細書に記載されているすべての実施例および条件付き用語は、本開示の原理および技術を促進するために発明者によって寄与された概念を読者が理解するのを助けるための教育目的のためだけのものであることを意図しており、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0013】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を記載する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物と、将来開発される等価物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する開発された要素との両方を含むことが意図されている。
【0014】
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図が、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことは、当業者には理解されるであろう。
【0015】
本明細書で特に明記しない限り、図面を構成する図は、縮尺通りに描かれていない。
【0016】
いくつかの追加の背景として、近年、分散型振動センシング(DVS)や分散型音響センシング(DAS)を含む分散型光ファイバセンシング(DFOS)システムが、インフラストラクチャ監視、侵入検出、および地震検出を含むがこれらに限定されない多くの用途で広く受け入れられていることに改めて留意する。DASおよびDVSでは、後方レイリー散乱効果を用いてファイバの歪みの変化を検出し、ファイバ自体が後続の分析のために光センシング信号をインタロゲータに戻す伝送媒体として機能する。
【0017】
いくつかの追加の背景として、また当技術分野で一般に知られている例示的な分散型光ファイバセンシングシステムの概略図である
図1を参照して、まず、分散型光ファイバセンシング(DFOS)は、インタロゲータに順に接続される光ファイバケーブルに沿った任意の場所で環境条件(温度、振動、伸縮レベルなど)を検出するために重要かつ広く使用される技術であることに留意する。知られているように、現代のインタロゲータは、ファイバへの入力信号を生成し、反射/散乱され、その後に受信された信号を検出/分析するシステムである。信号が分析され、ファイバの長さに沿って遭遇する環境条件を示す出力が生成される。このように受信された信号は、ラマン後方散乱、レイリー後方散乱、およびブリリオン後方散乱などのファイバ内の反射から生じ得る。また、複数のモードの速度差を利用した順方向の信号とすることもできる。一般性を失うことなく、以下の説明では、反射信号を想定しているが、同じアプローチを転送信号にも適用することができる。
【0018】
理解されるように、現代のDFOSシステムは、光パルス(または任意の符号化信号)を周期的に生成し、それらを光ファイバに送るインタロゲータを含む。送られた光パルス信号は、光ファイバに沿って伝送される。
【0019】
ファイバの長さに沿った位置では、信号のごく一部が反射してインタロゲータに戻される。反射信号は、例えば、機械的振動を示す電力レベルの変化など、インタロゲータが検出するために使用する情報を搬送する。
【0020】
反射信号は電気領域に変換され、インタロゲータ内で処理される。パルス注入時間と信号が検出された時間とに基づいて、インタロゲータは信号がファイバに沿ったどの位置から来ているかを判断し、ファイバに沿った各位置の活動を感知することができる。
【0021】
図2(A)および
図2(B)は、DFOSシステムに統合された光磁気スイッチ(OMS)を示す概略図であり、
図2(A)は1×2OMSを示し、
図2(B)は本開示の態様による2×2OMSを示す。
【0022】
これらの図を参照すると、OMSは一般に、磁石のモーメントによって光をオン/オフしたり、光路を変更したりする、小型で受動的な低コストの光学デバイスであることに最初に留意されたい。
図2(A)の1×1OMSの場合、光は磁石によってP1からP2に通過するが、磁石無しでは光が通過しないことを示している。
図2(B)の1×2OMSの場合、信号は磁石によってP1からP2に通過し、そうでない場合、信号は、磁石を用いずに(無しで)P1からP3に通過することが示されている。
【0023】
図3(A)および
図3(B)は、光磁気スイッチ(OMS)がDFOSシステムに統合された自己異常検出システムを示す概略図であり、
図3(A)は正常な動作を示し、
図3(B)は本開示の態様によるOMSによってトリガされる異常イベントを示す。
【0024】
これらの図を参照すると、ライブ電気通信または他のトラフィックを伝送することができる、既存の配備された光通信ネットワーク上に重ねられたセンシング層の構成が示されている。分散型光ファイバセンシング(DFOS)システムおよび異常検出器は、集中制御局(CO)に配置されていることが示されており、光ファイバケーブルの経路全体をリモート監視するためのリモート端末を含むことができる。
【0025】
DFOSシステムは、リモートセンシング機能を提供するために、フィールド内の光センシングファイバに光学的に接続される。このような光センシングファイバは、ダークファイバであってもよし、通信サービスプロバイダによって提供される運用可能な電気通信伝送用光ファイバであってもよいことに留意されたい。
【0026】
図に示されるように、
図3(A)および
図3(B)は、それぞれキャビネットのドアが閉じた状態およびキャビネットのドアが開いた状態の検出を示している。保護異常検出を提供するために、1つ以上のOMS、光アイソレータ、90/10光カプラ(OC)、および99/1OCを含む自己保護キットが提供される。理解されるように、OMSは、キャビネット内に取り付けることができ、開/閉状態の発生時に、前述のような光スイッチング動作を提供することができる、小型の受動デバイスである。図示されているように、2つのポート(PlおよびP3)が、それぞれキャビネットの入力コネクタと出力コネクタに接続されている。
【0027】
特定の構成では、キャビネットのドアが閉じられているとき、前述のような磁石の状態になる。センシング(質問)信号は、ポートP1からポートP2に伝わり、フィールド内センシング光ファイバのさらに別のセクションに伝わる。光時間領域反射率測定(OTDR)トレースから、このスイッチの位置から返された(散乱された)実質的な反射信号がないことが分かる。キャビネットが開いている状況では、キャビネットのドアが開くと、磁石(スイッチへの磁気効果)が取り除かれ、スイッチが作動して両側が分離する。次いで、質問センシング信号は、P1からP3に伝わる。P3ポート上の99/1OCおよびP2ポート上の10/90OCを通過することによって、質問センシング信号(99%)はセンシングファイバに送られるが、残りの1%の質問センシング信号は「デッドエンド」となる。
終端装置がないと、オープンエンドのシナリオでは、光の実質的に4%が反射される。したがって、OTDRトレースからの大きな損失を示す大きな反射/散乱信号として観察することができる。中央局内に配置された異常検出器は、これらの反射信号を識別し、ドアが開いていることをオペレータに通知することを含むことができるアラームシーケンスを開始する。
【0028】
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)、および
図4(D)は、本開示の態様による光磁気スイッチを採用するDFOSシステムにおいて使用することが可能様々な構成要素を概略的に示し、
図4(A)は本開示の態様によるファイバ分散ハブを示し、
図4(B)は本開示の態様によるリモート端末のドア上のOMSを示し、
図4(C)は本開示の態様によるデータセンター内のキャビネット上のOMSを示し、
図4(D)は本開示の態様による入口ゲート上のOMSを示す。
【0029】
ファイバ分散ハブ
【0030】
当業者には理解され、認識されるように、分散ファイバからドロップファイバまでのキャリアのネットワークには、何百万ものファイバ分散ハブが存在する。そのほとんどは、茂みの中や木の下に隠れているか、電気のない電柱に取り付けられている。監視カメラを使って技術者が直接施設をチェックするのは、ハブを検査/保護する効率的な方法ではない。したがって、本発明の自己異常検出システムは、ファイバの経路に沿ったハブ全体を自動的に監視するソリューションを提供する
【0031】
リモート端末のドア
【0032】
キャリアネットワークの分散型ファイバルートの場合、数十マイル毎にリモート端末が配置されている。通常、必要なメンテナンス/修理が決定/要求されない限り、技術者がこのようなリモート端末を訪問/検査することはない。したがって、安全な設備を確保するためには、自己異常検出が必要である。リモート端末およびファイバ分散ハブが同じファイバルートにある場合、本開示の態様による異常検出器を備えた1つのDFOSシステムは、有利なことに、関心のある点全体を同時に監視することができる。リモート端末だけでなく、本発明の開示は、保管場所、倉庫、スタジアムなどのあらゆる場所に適している。
【0033】
データセンター内のキャビネット
【0034】
データセンターでは、キャビネットが開いているか閉じているかを検出することは、常に課題となる。なぜなら、そのようなキャビネットに含まれることが多いサーバは、最高レベルのセキュリティを必要とする重要な設備だからである。現在のアプローチの1つは、監視のために戦略的に配置された多数の監視カメラを使用することである。残念ながら、そのような構成は高価であり、依然としてメンテナンスと点検が必要な一方で、必要な監視エリアを完全にカバーすることはできない。本開示の装置および付随する方法を使用することによって、1つのDFOSシステムが、データセンター内の全てのキャビネットを監視して、リモート、電気不要、メンテナンスフリー、デッドゾーンのないソリューションを実現できる。
【0035】
入口ゲート
【0036】
データセンターの問題やアプローチと同様に、入口ゲートは、特に使用頻度が低い場所や遠隔地では、監視に困難な課題をもたらす。幸いなことに、本開示の装置および方法は、既存の光ファイバ設備と有利に統合することができる、効率的な入口ゲート監視のソリューションを提供する。
【0037】
図5は、本開示の態様による、OMSを備えたDFOSを使用した異常検出のための全体処理を示すフロー図である。このフロー図に例示的に示されているように、既存の光通信ネットワークまたは既存のDFOSセンサファイバ設備は、OMS、光カプラ、アイソレータを含む自己保護キットをドア/キャビネット/ゲート/等の適切な側に設置することによって、磁気スイッチがドアまたは他の要素の動作を示すように改造することができる。
【0038】
次に、DFOSが起動され、センサファイバに問い合わせを行う。所定の間隔または別の間隔で、センサファイバからのOTDR信号を測定して、磁気スイッチの作動を検出する。検出された場合は、アラームを有効にして、適切な担当者に通知する。人員に通知された状況では、検出された状態を調査/修復するために保守要員および/または保安要員が派遣されることがある。
【0039】
この時点で、いくつかの具体例を使用して本開示を提示したが、当業者は本教示がそのように限定されないことを認識するのであろう。したがって、本開示は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。