(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ナノメタログラフィのためのシリカ封入顔料
(51)【国際特許分類】
B41M 1/22 20060101AFI20241115BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241115BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20241115BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20241115BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B41M1/22
B05D7/24 303B
B05D7/24 303C
B05D7/24 303H
C09D7/62
C09D183/04
C09D17/00
(21)【出願番号】P 2023541791
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2021087314
(87)【国際公開番号】W WO2022148658
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-09-05
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502099902
【氏名又は名称】エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ベトフォルト
(72)【発明者】
【氏名】ディーター プレルス
(72)【発明者】
【氏名】オリバー シュトルック
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン ベーマー
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517596(JP,A)
【文献】特開2020-023708(JP,A)
【文献】特表2017-533982(JP,A)
【文献】特表2005-532895(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0079251(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104403407(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102010017429(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B41M 1/00- 3/18
7/00- 9/04
C02F 1/58- 1/64
C09C 1/00- 3/12
C09D 1/00- 10/00
15/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面にプリントする方法であって、
この方法は、
下記の工程a、b及びc:
a. ドナー表面を提供すること、
b. 前記ドナー表面をコーティングステーションに通過させること、前記ドナー表面は、別個の粒子でコーティングされて前記コーティングステーションから出る、及び、
c. 下記の工程
(i)~(iii)を繰り返し実行すること:
(i.)基材の表面を処理して、前記基材の前記表面のうちの少なくとも選択領域に対する前記粒子の親和性が、前記ドナー表面への前記粒子の親和性よりも大きくなるようにすること、
(ii.)前記基材の前記表面を前記ドナー表面と接触させて、粒子が、前記ドナー表面から、前記基材の前記表面の処理された前記選択領域にのみ
移動するようにし、
前記粒子の当該移動の結果として、前記ドナー表面の領域のう
ち前記基材上の対応する領域へと粒子が移った領域を露出させ、かつ
前記粒子の当該移動の結果として、前記基材の処理された前記表面に接着した複数の別個の粒子を形成すること、
(
iii)前記ドナー表面を前記コーティングステーションに戻し
て前記粒子
を補充することによって、基材の表面上への後の画像のプリントを可能にすること、
を含み、
前記別個の粒子の少なくとも50重量%が、フレーク状の金属基質と前記金属基質の表面処理とを含む金属顔料であり、前記金属基質の前記表面処理が、金属酸化物を含有し前記金属基質を取り囲む少なくとも1つのコーティング層、及び前記コーティング層の表面修飾を含み、この表面修飾が、少なくとも1つのヘテロポリシロキサン、又は互いに同一若しくは異なっておりかつスペーサによって隔てられている少なくとも2つの末端官能基を有する化合物を有すること、を特徴とし、少なくとも1つの末端官能基が、前記コーティング層に化学的に結合できる、
方法。
【請求項2】
前記表面修飾が、金属酸化物の上面に結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程bにおいて、前記ドナー表面が、別個の粒子の単層でコーティングされて前記コーティングステーションから出る、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記フレーク状の金属基質が、10~500nmの範囲の平均厚み(h50値)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フレーク状の金属基質が、1500:1~10:1の範囲のアスペクト比を有し、このアスペクト比は、平均顔料直径(D50値)と平均顔料厚み(h50値)との間の比として定義される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フレーク状の金属基質が、アルミニウム、銅、亜鉛、金青銅、クロム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉄、及び鋼、又は、これらの金属の合金のフレーク状基質又は顔料から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フレーク状の金属基質が、PVD法によって形成さ
れる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのコーティング層が、前記金属基質を取り囲む第1のコーティング層
を含み、
この第1のコーティング層が、この第1のコーティング
層の重量に基づいて、少なくとも60重量%の量で金属酸化物を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記
金属基質を取り囲む前記少なくとも1つのコーティング層に含まれる前記金属酸化物が、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、ホウ素酸化物、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、鉄酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、スズ酸化物、亜鉛酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、及び、これらの酸化水和物、及びこれらの水酸化物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヘテロポリシロキサンを、少なくとも1つのアミノシラン成分及び少なくとも1つのアルキルシラン成分を含む複数成分から調製する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング層の前記表面修
飾が、互いに異なっておりかつスペーサによって隔てられている少なくとも2つの末端官能基を有する化合物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
受容層及び/又は接着層を、工程iにおいて、前記基材上に適用する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ドナー表面が、疎水性表面で
ある、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
粒子の使用であって、
前記粒子の少なくとも50重量%が、フレーク状の金属基質と前記金属基質の表面処理とを含むフレーク状の金属顔料であり、前記金属基質の前記表面処理が、金属酸化物を含有し前記金属基質を取り囲む少なくとも1つのコーティング層、及び前記コーティング層の表面修飾層を含み、この表面修飾層が、少なくとも1つのヘテロポリシロキサン、又は互いに同一若しくは異なっておりかつスペーサによって隔てられている少なくとも2つの末端官能基を有する化合物を含み、少なくとも1つの末端官能基が、前記コーティング層に化学的に結合でき、
基材の表面にプリントする方法において、この方法が、
下記の工程a、b及びc:
a. ドナー表面を提供すること、
b. 前記ドナー表面をコーティングステーションに通過させること、前記ドナー表面は、別個の粒子でコーティングされて前記コーティングステーションから出る、及び
c. 下記の工程
(i)~(iii)を繰り返し実行すること:
(i.)基材の表面を処理して、前記基材の前記表面のうちの少なくとも選択領域に対する前記粒子の親和性が、前記ドナー表面への前記粒子の親和性よりも大きくなるようにすること、
(ii.)前記基材の前記表面を前記ドナー表面と接触させて、粒子が、前記ドナー表面から、前記基材の前記表面のうち処理された前記選択領域にのみ
移動されるようにし、
前記粒子の当該移動の結果として、前記ドナー表面の領域のう
ち前記基材上の対応する領域へと粒子が移った領域を露出させ、かつ
前記粒子の当該移動の結果として、前記基材の処理された前記表面に接着した複数の別個の粒子を形成すること、
(
iii.)前記ドナー表面を前記コーティングステーションに戻し
て前記粒
子を補充することによって、基材の表面上への後の画像のプリントを可能にすること、
を含む、
使用。
【請求項15】
請求項2~13のいずれか一項に記載のプリント方法における、請求項14に記載の粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材にプリントするための方法に関し、特には、金属外観を有する層を基材に適用することができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材、例えば、紙又はプラスチックフィルムの、金属外観を有する層をプリントするための種々のシステムが本分野で知られている。これらのシステムは、2つの大きなカテゴリーに属し、すなわち、箔スタンプ又は箔融合である。これらの方法の主要な不利な点のうちの1つは、これらの方法において廃棄される大量の箔であり、これはなぜならば、所望の画像を形成するために基材上に移されない箔領域は、同じ方法における使用のために回収できないからである。金属箔は高価なので、これらの方法は、比較的コストが高く、なぜならば、箔は、1回のみ用いることができ、金属のうちのごく小さい部分のみが基材に有効に移されるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
WO2016/189515A9では、新規のプロセスが開示されており、これは、はるかによりコスト効率的に、金属又は金属性の箔のいかなる廃棄もなく、金属外観を有する層を基材にプリントすることを可能にする。このプロセスでは、別個の金属粒子が、ドナーロールを通じて基材上に移され、このドナーロール上の金属粒子は、繰り返すプロセスにおいて補充される。このプロセスは、箔スタンプ又は箔溶融プロセスのすべての不利な点を有してはいないが、このプロセスを介して得られる金属層がそれほど高グロスでなく、かつ/又は時間とともに劣化を示すことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
驚くべきことに、上記のプロセスの種々の不利な点を示さない方法が見いだされ、特に、本発明に係る方法は、金属外観を有する層を基材上にプリントするために提供され、この層は、時間とともにいかなる劣化も示さない高いグロスレベルを有する。
【0005】
本発明に係る方法は、基材の表面にプリントする方法に関し、この方法は、下記を含む:
a.ドナー表面を提供すること、
b.ドナー表面をコーティングステーションに通過させること、ドナー表面は、そこから、別個の粒子でコーティングされて出てくる、並びに、
c.下記の工程を繰り返し実行すること:
i.基材の表面を処理して、基材の表面のうちの少なくとも選択領域に対する粒子の親和性が、ドナー表面に対する粒子の親和性よりも大きくなるようにすること、
ii.基材の表面をドナー表面と接触させて、粒子が、ドナー表面から、基材の表面のうち処理された選択領域のみに移るようにさせ、これによって、ドナー表面の領域のうち基材の対応する領域へと粒子が移る領域を、露出させ、かつ
iii.このようにして、基材の処理された表面に接着した複数の別個の粒子を形成すること、
iv.ドナー表面をコーティングステーションに戻して、粒子の単層を連続的にし、それによって、基材の表面上における後の画像のプリントを可能にすること、
ここで、少なくとも50重量%の粒子が、金属基質とこの金属基質の表面処理とを含む金属顔料であり、金属基質の表面処理が、金属基質を取り囲んでおり金属酸化物を含有する少なくとも1つのコーティング層、及び、このコーティング層の表面修飾を含み、コーティング層のこの表面修飾が、少なくとも1つのヘテロポリシロキサン、又は、互いに同一又は異なっておりかつスペーサによって隔てられている少なくとも2つの末端官能基を有する化合物を有し、
少なくとも1つの末端官能基が、コーティング層に化学的に結合できる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
この方法は、さらに、洗浄工程を有してよく、この工程の間に、基材との接触後のドナー表面に残留している粒子を、ドナー表面から除去し、そのようにして、次の洗浄ステーション通過の前に、ドナー表面が、粒子を実質的に有しないようにする。そのような洗浄工程は、それぞれのプリントサイクルの間に行ってよく、又は、断続的に、例えば、プリント作業の間、粒子の交換の際などに、行ってよい。プリントサイクルは、ドナー表面上の参照点が後にコーティングステーションを通過する時点の間の時間間隔に対応し、そのような通過は、ドナー表面がコーティングステーションに対して移動可能であることによって生じる。
【0007】
粒子でコーティングされたドナー表面は、箔画像化(foil imaging)において用いられる箔に類似した様式で用いられる。しかしながら、箔画像化とは異なり、それぞれの印刷に起因してドナー表面上で生じる粒子層の連続性へのダメージは、ドナー表面の領域のうち、事前適用された層が基材の選択領域への移動によって剥がされた露出領域を再コーティングするのみで、修復できる。
【0008】
それぞれの印刷の後でドナー表面上の粒子層を修復できる理由は、粒子が、粒子同士が互いに接着しあうよりも強くドナー表面に接着するように選択されていることによる。これは、適用された層が、実質的に、別個の粒子の単層であることをもたらす。
【0009】
好ましくは、工程bにおいて、ドナー表面が、粒子の単層でコーティングされた状態で、コーティングステーションから出る。本開示において、用語「単層」は、ドナー表面上の粒子の層を記載するために用いられ、この層では、少なくとも60%の粒子が、ドナー表面に直接に接触しており、いくつかの実施態様では、70~100%の粒子が、ドナー表面と直接に接触しており、さらなる実施態様では、85~100%の粒子が、ドナー表面と直接に接触している。そのような表面に接触する粒子の間でいくつかの重なり合いが起こりうる一方で、層は、表面の面積の大部分にわたって、1粒子の深さのみでありうる。本開示における単層は、ドナー表面と十分に接触している粒子から形成され、したがって、典型的には、単一粒子の厚みである。直接の接触とは、コーティングステーションの出口において、例えば、余剰抽出、艶出し、又は任意の他の類似の工程の後で、粒子が、ドナー表面に付着したままであることを意味している。
【0010】
基材(の選択された部分)の上のミラー状の高いグロスを有する領域を得るために、選択された表面(選択表面)が、粒子で十分に覆われる必要があり、これは、少なくとも70%の選択された表面が、粒子で覆われることを意味し、又は、少なくとも80%、若しくは少なくとも90%、若しくは少なくとも95%の選択された表面が、粒子で覆われることを意味する。特定の対象表面のうち粒子によって覆われる面積の割合は、当業者に公知の多数の方法によって評価でき、例えば、既知の被覆点の校正曲率の決定と随意に組み合わされた光学密度の決定によって、基材が十分に透明である場合には透過光の測定によって、又は、粒子の反射性に基づく反射光の計測によって、評価できる。
【0011】
粒子によって覆われた対象表面の面積割合を決定する好ましい方法は、下記のとおりである。1cm辺を有する正方形サンプルを、評価する表面から切り出す(例えば、ドナー表面又は印刷された基材から切り出す)。サンプルを、顕微鏡(レーザー共焦点顕微鏡(オリンパス(商標)、LEXT OLS30ISU)又は光学顕微鏡(オリンパス(商標)BX61 U-LH100-3))によって、100倍までの倍率(少なくとも約128.9μm×128.6μmの視野をもたらす)で分析する。少なくとも3つの代表画像を、反射モードで取得する。取得した画像を、imageJ(米国のNational Institute of Health(NIH)によって開発されたパブリックドメインのJava(登録商標)画像処理プログラム)を用いて分析した。画像は、8ビットのグレースケールで表示し、反射性粒子(比較的明るいピクセル)と、隣接又は近接する粒子の間に存在しうる隙間(このような空隙は比較的暗いピクセルとして現れる)との間で区別をつける、反射率のしきい値を、プログラムに提案させる。習熟した操作者は、提案されたしきい値を必要に応じて調節できるが、典型的には、それを追認する。そして、画像分析プログラムが、粒子を示すピクセルの量と、粒子間空隙の非コーティング領域を示すピクセルの量との計測に進み、これから、被覆の面積割合を容易に計算できる。同一サンプルの異なる画像部分において行った計測を平均する。サンプルが透明基材(例えば半透明プラスチック箔)上にプリントされている場合には、同様の分析を、透過モードで行うことができ、粒子は、比較的暗いピクセルとして現れ、空隙は、比較的明るいピクセルとして現れる。そのような方法によって得られた結果、又は当業者に公知の実質的に同様の分析技術によって得られた結果は、光学表面被度として言及され、パーセント又は比として表現できる。
【0012】
プリントを基材の全表面上で行う場合には、(例えば接着性でありうる)受容層を、工程Iの間にローラーによって、基材に、それがドナー表面に対して押し付けられる前に、適用してよい。
【0013】
最も好ましくは、受容層及び/又は接着層を、工程iにおいて基材上に適用する。
【0014】
特に、他方で、プリントを基材の選択された領域(選択領域)上でのみ行う場合には、接着層又は受容層を、任意の慣用的なプリント方法によって、例えば、型若しくはプリントプレートによって、又は基材の表面に受容層を噴射することによって、適用できる。他の実施態様では、受容層を、基材表面に、間接プリント法、例えば、オフセットプリント、スクリーンプリント、フレキソプリント、又はグラビアプリントによって、適用する。
【0015】
さらなる代替法として、基材の全表面を、活性化可能な受容層でコーティングでき、活性化可能な受容層は、適切な活性化手段によって選択的に「粘着性」にできる。選択的に適用される場合であっても又は選択的に活性化される場合であっても、そのような場合の受容層は、基材上にプリントされる画像の少なくとも一部を構成する。
【0016】
用語「粘着性」は、本開示において、印刷ステーションにおいてドナー表面及び基材を互いに対して押し付けたときに、基材表面又はその任意の選択された領域が、ドナー表面から粒子を分離するのに十分な、かつ/又は粒子を基材上に保持するのに十分な、粒子への親和性を有することを示すためにのみ用いられ、触れたときに粘着性を有する必要は必ずしもない。基材の選択された領域におけるパターンのプリントを可能にするために、必要に応じて活性化された受容層の、粒子に対する親和性が、覆われていない基材の、粒子に対する親和性よりも、大きい必要がある。本開示に関して、基材は、場合により、受容層を有しない場合又は適切に活性化された受容層を有しない場合に、「覆われていない」との用語が使われる。覆われていない基材は、大部分の目的のためには、粒子への親和性を実質的に有しない必要があるが、受容層の選択的な親和性を可能にするために、特定の印刷効果に関しては、いくらかの残存親和性が(例えば視覚的に検出できないにせよ)許容されてよく、又はさらには所望されてよい。
【0017】
受容層は、例えば、ドナー表面に対して押し付けられる前に、放射(例えば、UV、IR及び近IR)への曝露によって活性化されてよい。受容層活性化の他の手段としては、温度、圧力、湿分(例えば再湿化可能接着剤のための湿分)、及びさらには超音波が挙げられ、基材の受容層表面を処理するそのような手段は、組み合わせてよく、それによって、適合する受容層が粘着性にされる。
【0018】
基材の表面に適用される受容層の性質は、中でも、基材と基材とで、適用の様式及び/又は選択された活性化手段に関して異なっていてよいが、そのような処方は、当業者に知られており、本発明のプリント方法及びシステムの理解のためにさらに詳述される必要はない。簡単に述べると、意図される基材に適合性であり、かつ、随意に活性化後に、想定される粒子に対して十分な粘着性、相対的な親和性を示す、熱可塑性、熱硬化性、又はホットメルトのポリマーを、本開示の実施のために用いてよい。好ましくは、受容層は、所望のプリント効果(例えば、クリア、透明、及び/又は無色)を妨害しないように選択される。
【0019】
適切な接着剤の所望の特徴は、受容層を活性化するために必要な比較的短期の期間に関係し、すなわち、受容層を選択的に非粘着状態から粘着状態へと変化させること、基材の選択された領域の親和性を増加させ、それにより、粒子に対して十分に接着するようにし、それによって、粒子をドナー表面から分離させること、に関係する。早い活性化時間は、受容層を、高速プリントで用いることを可能にする。本開示の実施のために適切な接着剤は、好ましくは、基材が活性化ステーションから印刷ステーションにまで移動するのにかかる時間よりも長くない期間のうちに活性化できる。
【0020】
いくつかの実施態様では、受容層の活性化が、印刷の際に実質的に瞬間的に起こってよい。他の実施態様では、活性化ステーション又は活性化工程が、印刷よりも先であってよく、この場合には、受容層を、10秒未満、又は1秒未満の期間内、特には、約0.1秒未満、さらには0.01秒未満の期間内に、活性化してよい。この期間は、本開示において、受容層の「活性化時間」として言及される。
【0021】
上述したように、適切な受容層は、本開示に係る単層が形成されるために十分な、粒子との親和性を有する必要がある。この親和性は、2つの間の親和的な接触として代替的にみなすことができ、受容層の表面上に粒子を保持するために十分な必要があり、層と粒子との相対的な物理的かつ/又は化学的な特性から生じてよい。例えば、受容層は、満足のいくプリント品質を提供するために十分に高い硬度である一方で層への粒子の接着を許容する程度に十分に低い硬度を、有してよい。そのような最適な範囲は、粒子のスケールで、受容層が「局所的に変形可能である」ことを可能にするものとしてみることができ、それにより、十分な接触が形成される。そのような親和性又は接触は、追加的に、化学結合によって増加されてよい。例えば、受容層を形成する材料を選択し、それにより、可逆的な結合(非共有的な静電的相互作用、水素結合、及びファンデルワールス相互作用を支持する結合)によって、又は共有結合によって、粒子を保持するために適切な官能基を有するようにしてよい。同様に、受容層は、意図されるプリント基材に適切である必要があり、これらのすべての考慮は、当業者に知られている。
【0022】
受容層は、例えばプリント基材に応じてかつ/又は所望のプリント効果に応じて、幅広い範囲の厚みを有してよい。比較的厚い受容層は、「エンボス」態様のために提供でき、装飾が、周囲の基材の表面よりも上方に隆起する。比較的薄い受容層は、プリント基材の表面の輪郭に従ってよく、例えば、粗い基材に対して、マット態様を可能にする。グロス態様に関して、受容層の厚みは、典型的には、基材の粗さを隠すために選択され、そのようにして、平坦な表面が提供される。例えば、非常に平滑な基材に関して、例えばプラスチックフィルムに関して、受容層は、数十ナノメートルのみの厚みを有してよく、例えば、50nmの表面粗さを有するポリエステルフィルム(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)箔)に関して、約100nmの厚みを有してよい。より平滑なPETフィルムは、さらに薄い受容層の使用を可能にする。ミクロン又は数十ミクロン範囲の比較的粗い表面を有する基材は、グロス効果、したがって基材粗さのいくらかの平坦化/マスキング化が所望される場合には、同一サイズ範囲又は同様のサイズ範囲の厚みを有する受容層が有利である。したがって、基材及び/又は所望の効果に応じて、受容層は、少なくとも10nm、又は少なくとも50nm、又は少なくとも100nm、又は少なくとも500nm、又は少なくとも1000nmの厚みを有してよい。触覚及び/又は視覚的な検出によって認識できる効果のために、受容層が、さらには、少なくとも1.2マイクロメートル(μm)、少なくとも1.5μm、少なくとも2μm、少なくとも3μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm、少なくとも20μm、少なくとも30μm、少なくとも50μm、又は少なくとも100μmの厚みを有してよい。いくつかの効果及び/又は基材(例えば段ボール、カートン、繊維、レザーなど)は、ミリメートル範囲の厚みを有する受容層を必要としうるが、受容層の厚みは、典型的には、800マイクロメートル(μm)を超えず、最大600μm、最大500μm、最大300μm、最大250μm、最大200μm、又は最大150μmである。
【0023】
プリントが行われた後で、すなわち、押し付けの際に粒子がドナー表面から処理された基材表面の粘着領域(すなわち受容層)へと移った後で、基材を、さらに処理してよく、例えば、熱及び/又は圧力の適用によってさらに処理してよく、それによって、プリントされた画像を固定又は艶出ししてよく、かつ/又はワニス(例えば、無色又は有色で、透明、半透明、又は不透明のオーバーコート)でコーティングしてよく、それによってプリント表面が保護されるようにしてよく、かつ/又は、異なる色のインクでオーバープリント(重ね印刷)されて(例えば前景画像を形成して)よい。いくつかの後転写工程(例えばさらなる圧力)を、プリントされた基材の全表面に実行してよく、他の工程を、選択された部分のみに適用してよい。例えば、ワニスを、画像の部分に選択的に適用してよく、例えば、粒子でコーティングされた選択領域に選択的に適用してよく、随意に、さらに、色効果を付与する。
【0024】
そのような後転写工程を実行するのに適している任意の装置を、後転写装置として言及できる(例えば、コーティング装置、艶出し装置、押圧装置、加熱装置、硬化装置、等)。後転写装置は、追加的に、プリントシステムで慣用的に用いられる任意の仕上げ装置を含んでよい(例えば、積層処理装置、切断処理装置、トリミング処理装置、穴あけ処理装置、エンボス処理装置、穿孔処理装置、クリーシング処理装置、結合処理装置、折たたみ処理装置、等)。後転写装置は、任意の適切な慣用的な設備であってよく、本プリントシステムにおけるそれらの統合は、さらなる詳細な記述がなくとも、当業者に明らかである。
【0025】
本発明に係る方法では、粒子が少なくとも50%のフレーク状の金属基質を含有し、好ましくは、粒子の75%が、フレーク状の金属基質を有し、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは95~100%の粒子が、フレーク状の金属基質を含有する。
【0026】
本発明に係る方法の1つの実施態様では、金属基質が、フレーク状の金属基質である。さらなる実施態様では、フレーク状の金属基質が、10~500nmの範囲の、より好ましくは20~300nmの、最も好ましくは30~100nmの範囲の平均厚み(h50値)を有する。
【0027】
一般に、金属又は金属性の粒子の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって決定できる。この目的のために、粒子を、約10重量%の濃度で、スリーブブラシで、2成分クリアコート(Sikkens社のAutoclear Plus HS)に組み込み、スパイラルアプリケータによってフィルムに適用し(湿フィルム厚み26μm)、乾燥させる。24hの乾燥時間の後で、これらのアプリケータのドローダウンの横断切片を作成した。横断切片を、SEM(Zeiss supra35)によって、SE(二次電子)検出器を用いて、分析した。プレートレット粒子(小板粒子)の価値分析のためには、粒子は、基質に対して平面平行で良好に配向している必要があり、それによって、良好に配向しないフレークによって発生する傾斜角度の定誤差が最小化される。
【0028】
ここで、粒子の十分な数が測定される必要があり、そのようにして、代表的な平均値が提供されるようにする。慣用的には、約100粒子を計測する。h50値は、この方法で計測される粒子厚分布のメジアン値である。このh50値は、平均厚みの測定値として用いることができる。
【0029】
本発明に係る方法の実施態様のうちの1つでは、フレーク状の金属性基質が、1500:1~10:1、好ましくは1000:1~50:1、より好ましくは800:1~100:1の範囲のアスペクト比を有し、アスペクト比は、平均顔料直径(D50値)と平均顔料厚み(h50値)との間の比として定義される。
【0030】
顔料サイズは、典型的には、D値を用いて示され、これは、頻度表示における体積平均粒子サイズ分布の分位値を表す。ここで、この数は、体積平均粒子サイズ分布に含まれる、特定のサイズよりも小さい粒子の割合を示す。例えば、D50値は、粒子の50%よりも大きいサイズを示す。これらの測定は、例えば、Sympatec社によって製造される粒子サイズ分析器(モデル:Helos/BR)を用いて、レーザー粒度分布測定によって行われる。計測は、製造者からのデータに従って行う。
【0031】
本発明に係る方法の実施態様のうちの1つでは、フレーク状の金属状基質が、アルミニウム、銅、亜鉛、金青銅、クロム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉄、及び鋼のフレーク状の基質、又はこれらの金属の合金の顔料から選択される。好ましい実施態様では、フレーク状の金属基質が、アルミニウム、金青銅、又は銅であり、最も好ましい実施態様では、フレーク状の金属基質が、アルミニウムである。
【0032】
コーティングが金属酸化物を含有しているとしても、金属基質は、30重量%以下の同一金属の酸化物を含有してもよい。したがって、アルミニウム基質は、30重量%以下のアルミニウム酸化物を含有しうる。
【0033】
金属基質は、ミリング法によって又はPVD法(物理気相成長、Physical Vapor Deposition)によって製造されてよい。より好ましいものは、PVD法によって製造されたフレーク状の金属基質であり、最も好ましくは、そのようなフレーク状の金属基質が、アルミニウム顔料である。
【0034】
本発明に係る方法の実施態様のうちの1つでは、コーティング層の金属酸化物が、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、ホウ素酸化物、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、鉄酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、スズ酸化物、亜鉛酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択される。そのような酸化物は、金属基質の表面を、腐食プロセスに対して安定化し、本発明の方法によって処理された基材の比較的高いグロスレベルに寄与し、さらには、このグロスレベルは、時間の経過にわたってより安定的である。
【0035】
コーティング層のより好ましい金属酸化物は、ケイ素酸化物、モリブデン酸化物、アルミニウム酸化物、及びこれらの混合物である。最も好ましいものは、ケイ素酸化物又はモリブデン酸化物である。コーティング層の別の実施態様では、モリブデン酸化物であり、その上に、ケイ素酸化物を含有するさらなる金属酸化物がコーティングされる。
【0036】
本発明において、用語「金属酸化物」は、特定の金属に関して、その金属酸化物の任意のもの、その金属水酸化物の任意のもの、その酸化金属水和物の任意のもの、及びそれらの混合物、を含むために用いられる。
【0037】
本発明によれば、コーティング層の金属酸化物が、金属基質それ自体とは異なる金属に基づいている。いくつかの金属基質は、周囲雰囲気条件下で、自然酸化物を形成する。しかしながら、これらの自然金属酸化物は、十分な腐食安定性又は機械的剛性を金属基質に提供しない。最も顕著な例は、アルミニウムであり、これは、酸素及び/又は湿分と接触したときに、数ナノメートル厚のアルミニウム酸化物/水酸化物のコーティング(被覆層)を形成する。
【0038】
疑義を回避するために、周囲雰囲気条件下で金属基質の上に形成される自然酸化物のそのような層は、本発明に係る金属基質の表面処理とはみなされない。
【0039】
1つの実施態様では、基質が、第1コーティング層としてのケイ素酸化物又はモリブデン酸化物及び第2コーティング層としてのケイ素酸化物でコーティングされたアルミニウム基質である。
【0040】
さらなる実施態様では、コーティング層が、金属酸化物、好ましくはケイ素酸化物、より好ましくは二酸化ケイ素を、それぞれ、金属酸化物又はケイ素酸化物含有コーティングの合計重量に基づいて、少なくとも60重量%、さらに好ましくは少なくとも70重量%、さらに好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%の量で、含有する。
【0041】
別の実施態様では、金属酸化物コーティング層における100重量%までの残りの化合物が、ケイ素酸化物とは異なるさらなる金属酸化物を含有し又はそれからなり、フレーク状の金属基質を取り囲む混合金属酸化物層をもたらす。
【0042】
別の実施態様では、金属酸化物コーティング層における100重量%までの残りの化合物が、有機材料を含み又は有機材料からなり、そのようにして、ハイブリッド金属酸化物/有機コーティング層、を形成する。
【0043】
特定の実施態様では、この有機材料が、有機オリゴマー及び/又はポリマーを含有し、又は有機オリゴマー及び/又はポリマーからなる。すなわち、金属酸化物コーティングは、金属酸化物コーティングと有機オリゴマー及び/又は有機ポリマーのハイブリッド層として形成されてよく、これらは、好ましくは、互いに浸透しあう。そのようなタイプのハイブリッドコーティングは、同時の、金属酸化物コーティングの形成、(好ましくはゾルゲル合成による)及びポリマー又はオリゴマーの形成によって、形成できる。したがって、ハイブリッド層は、好ましくは、本質的に均一な層であり、この層において、金属酸化物コーティング、及び、1若しくは複数の有機オリゴマー及び/又は1若しくは複数の有機ポリマーが、コーティング内で、本質的に均一に分布している。そのようなハイブリッド層でコーティングされた金属エフェクト顔料は、EP1812519B1又はWO2016/120015A1で開示されている。そのようなハイブリッド層は、コーティング層の機械特性を向上させる。
【0044】
本発明の別の実施態様によれば、金属酸化物ハイブリッドコーティング層が、70~95重量%、好ましくは80~90重量%の、ケイ素酸化物、好ましくは二酸化ケイ素を含有し、かつ5~30重量%、好ましくは10~20重量%の有機オリゴマー及び/又は有機ポリマーを含有し、それぞれ、金属酸化物コーティング層の合計重量に基づく。
【0045】
1又は複数の有機官能性シランが、そのようなハイブリッド層における有機ネットワーク形成剤として用いられるために好ましい。1又は複数の有機官能性シランは、加水分解可能基(加水分解性基)の加水分解に続いて、ケイ素酸化物ネットワークに結合できる。加水分解によって、加水分解可能基が、通常、OH基によって置換され、そして、これが、縮合によって、無機シリカネットワークにおけるOH基と共有結合を形成する。加水分解可能基は、好ましくは、ハロゲン、ヒドロキシル、又は、1~10炭素原子好ましくは1~2炭素原子を有しており直鎖若しくは炭素鎖において分岐してよいアルコキシ、及びこれらの混合物である。
【0046】
適切な有機官能性シランは、例えば、Evonikによって製造される数多くの代表的なものであり、商品名「Dynasylan」の下で販売されている製品である。例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MEMO)を用いて、(メタ)アクリレート又はポリエステルを形成でき、ビニルトリエトキシシラン又はビニルトリメトキシシラン(Dynasylan VTMO又はVTEO)を用いてビニルポリマーを形成でき、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン又は3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MTMO又は3201)を、ゴムポリマーにおける共重合に用いることができ、アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan AMMO)又はN2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan DAMO)を用いて、β-ヒドロキシルアミンを形成でき、又は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan GLYMO)を用いて、ウレタンネットワーク又はポリエーテルネットワークを形成できる。
【0047】
ビニル又は(メタ)アクリレート官能基を有するシランの他の例は、下記である:イソシアナートトリエトキシシラン、3-イソシアナートプロポキシルトリエトキシシラン、ビニルエチルジクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、フェニルビニルジエトキシシラン、フェニルアリルジエトキシシラン、フェニルアリルジクロロシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリ-エトキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリ-メトキシシラン、2-アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2-アクリロキシエチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリス(メトキシ-エトキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピルトリス(ブトキシエトキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピルトリス(プロポキシ)シラン、又は3-メタクリロキシプロピルトリス(ブトキシ)シラン。
【0048】
本発明の好ましい発展態様では、ケイ素酸化物、好ましくは二酸化ケイ素、並びに、オリゴマー及び/又はポリマーの有機ネット―ワークが、いずれも、互いに浸透するネットワークとして存在する。
【0049】
本発明の目的に関して、ハイブリッド層における「有機オリゴマー」は、ポリマー化学で通常用いられる用語を意味するものと理解され、すなわち、2~20のモノマー単位からの結合体である(Hans-Georg Elias、「Makromolekule」第4版、1981、Huethig&Wepf Verlag Basel)。ポリマーは、20超のモノマー単位の結合体である。
【0050】
有機部分の平均鎖長は、モノマー濃度の、有機ネットワーク形成剤の濃度に対する比を変更することによって、種々の値にできる。有機部分の平均鎖長は、2~10,000モノマー単位、好ましくは3~5,000モノマー単位、より好ましくは4~500モノマー単位、さらにより好ましくは5~30モノマー単位である。さらには、他の実施態様では、有機成分としての使用のために、有機ポリマーが、21~15,000モノマー単位、より好ましくは50~5,000モノマー単位、最も好ましくは100~1,000モノマー単位の平均鎖長を有する。
【0051】
本発明の別の実施態様では、金属酸化物含有コーティング層が、金属酸化物コーティング、好ましくはケイ素酸化物、より好ましくは二酸化ケイ素と、有機官能型シランとの混合層からなり、有機官能型シランは、重合化又はオリゴマー化されていない官能基を有する。そのような有機官能型シランは、ネットワーク修飾剤と呼ばれる。
【0052】
好ましくは、ネットワーク修飾剤が、下記の式を有する有機官能型シランである:
【0053】
【0054】
式中、zは、1~3の整数であり、Rは、置換されていない、分岐していない、又は分岐している、1~24のC原子を有するアルキル鎖、又は6~18のC原子を有するアリール基、又は7~25のC原子を有するアリールアルキル基、又はこれらの混合物であり、Xは、ハロゲン基及び/又は好ましくはアルコキシ基である。好ましくは、1~18Cの原子の範囲のアルキル鎖を有するアルキルシラン、又はフェニル基を有するアリールシランである。Rは、環状的にSiに結合されてもよく、この場合にはzは典型的には2である。Xは、最も好ましくはエトキシ又はメトキシである。
【0055】
異なるz値を有する有機官能型シランの混合物を用いてもよい。そのようなネットワーク修飾有機官能型シランの好ましい例は、アルキルシラン又はアリールシランである。このようなシランの例は、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、及びこれらの混合物である。
【0056】
本発明に係る方法の1つの実施態様では、金属基質が、互いに同一又は異なっておりかつスペーサによって隔てられている少なくとも2つの末端官能基を有する化合物の第2コーティング層を含む。少なくとも1つの官能基が、金属酸化物の第1コーティング層を有する金属基質に結合することが見いだされた。少なくとも1つの他の官能基が、基材の処理された表面に向かって外向きに向く。
【0057】
コーティングされたフレーク状の金属基質の表面修飾
そして、金属酸化物及び随意のさらなるコーティング層を含むコーティング層で処理されたフレーク状の粒子の表面を、少なくとも1つのヘテロポリシロキサン又は互いに同一若しくは異なっておりかつスペーサで隔てられている少なくとも2つの末端官能基を有する化合物である表面修飾によってさらに修飾し、少なくとも1つの末端官能基は、金属酸化物を含有するコーティング層に化学的に結合できる。大部分の好ましい実施態様では、表面修飾が、金属酸化物の上面に結合する。
【0058】
この表面修飾は、例えば親和性かつ疎水性の表面特性に関して、金属酸化物の表面を変更することを可能にし、かつ制御することを可能にする。したがって、最適なバランスを、コーティングされた粒子のそれぞれの親和性に関して見出すことができ、特に、コーティングされたフレーク状の金属エフェクト顔料の、ドナーへの親和性、及び基材表面への親和性に関して、最適なバランスを見出すことができる。
【0059】
末端官能基として、アルコキシシリル基(例えばメトキシ及びエトキシシラン)、ハロシラン(例えばクロロシラン)又はリン酸エステル又は亜リン酸エステル及び亜リン酸エステルの酸の群が考慮できる。記載された基は、比較的長い又は比較的短いスペーサによって、第2の、ラッカー適合基に連結される。スペーサは、非反応性アルキル鎖、シロキサン、ポリエーテル、チオエーテル、若しくはウレタン、又は、一般式(C,Si)nHm(N、O、S)x、n=1~50、m=2~100かつx=0~50の、これらの群の組み合わせを含む。ラッカー適合基は、好ましくは、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、アミノ基若しくはシアノ基、イソシアナート、エポキシ基、カルボキシ基、又はヒドロキシ基を含む。
【0060】
特定の実施態様では、特には基材に接着した金属粒子の焼成又は硬化の際に、これらの基が、既知の化学反応機構に従って、架橋反応において、基材とフレーク状の金属顔料との間に位置する反応層と化学的に反応してよい。
【0061】
本発明に係る方法で用いる粒子は、まず、好ましくはゾルゲル合成によって、金属基質を金属酸化物でコーティングすることによって製造される。ここで、フレーク状の金属エフェクト顔料は、溶媒中に分散され、溶媒は、好ましくは、アルコール性の溶媒であり、例えばエタノール又はイソプロパノールである。金属酸化物の前駆体、例えばテトラエトキシシラン、及び水を添加し、塩基又は酸の添加によってゾルゲル合成を触媒する。また、2成分触媒作用を用いてもよく、例えば、WO2011/095341A1に記載されているように、まず酸を添加し、そして塩基を添加することによって、2成分触媒作用を用いてもよい。
【0062】
特定の実施態様では、酸性触媒として用いられる有機酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、これらの酸の無水物、及びこれらの混合物から選択される。ギ酸、酢酸、又はシュウ酸及びそれらの混合物を用いることが特に好ましい。本発明の特定の実施態様では、アミン触媒が、ジメチルエタノールアミン(DMEA)、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン(EDA)、tert-ブチルアミン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア、ピリジン、ピリジン誘導体、アニリン、アニリン誘導体、クロリン、クロリン誘導体、尿素、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、及びこれらの混合物から選択される。
【0063】
ゾルゲル反応のための塩基アミン系触媒として、エチレンジアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア、又はこれらの混合物を用いることが特に好ましい。
【0064】
フレーク状の金属エフェクト顔料を金属酸化物でコーティングした後に、金属酸化物の表面を、表面修飾剤でコーティングする。この工程は、金属酸化物が形成されたのと同じ容器内で行ってよく、又は異なる工程で行ってよい。例えば、最初にコーティングされたフレーク状の粒子を攪拌し、有機溶媒中で加熱し、水又は他の溶媒中の塩基の溶液と混合し、表面修飾剤を添加し、反応混合物を、15分から24時間の反応時間の後で冷却し、エフェクト顔料を、吸引除去によって分離する。得られたろ過ケークを、真空中で約60~130℃で乾燥してよい。いくつかの表面修飾剤では、混合物を加熱することは必要ではなく、これらの材料に関しては、単純な混合で十分でありうる。
【0065】
シランに基づく表面修飾剤は、例えば、DE4011044C2に記載されている。リン酸に基づく表面修飾剤は、とりわけ、例えば、Lubrizol(商標)2061として、かつLUBRIZOL(商標)2063(Langer&Co)から入手可能である。
【0066】
表面修飾剤は、コーティングされた粒子上に直接に、化学反応によって、適切な開始物質から製造することもできる。この場合には、コーティングされた粒子を、また、攪拌し、有機溶媒中で加熱する。随意に、その後に、それらを、塩基の溶液と混合し、例えば、有機アミンと混合し、これは、修飾反応のための一種の触媒として作用しうる。基本的に、金属酸化物の形成のために用いたのと同じ触媒を用いてよい。約1~6時間の反応時間の後で、懸濁体を冷却し、フレーク状のエフェクト顔料の吸引除去に供する。このようにして得られるろ過ケークを、真空中で60~130℃で乾燥してよい。反応は、コーティングされた粒子が後にペーストとして形成されかつ用いられる溶媒中で行ってもよい。この場合には、乾燥工程が不必要になる。
【0067】
表面修飾剤の言及しうる特定の例は、例えば、架橋可能な有機官能型シランであり、これは、加水分解操作の後で、その反応性Si-OH単位で、エフェクト顔料の酸化性表面上に固定される。潜在的に架橋可能な有機基は、後に、プリント基材の処理された部分の反応剤と反応できる。適切な架橋可能な有機官能シランの例は、下記である:
ビニルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N-エチルアミノ-N-プロピルジメトキシシラン、イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルエチルジクロロシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメトキシジクロロシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、フェニルビニルジエトキシシラン、フェニルアリルジクロロシラン、3-イソシアナートプロポキシルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロぺニルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、1,2-エポキシ-4-(エチルトリエトキシシリル)-シクロヘキサン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-アクリロキシエチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、2-アクリロキシエチルtri-エトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルtris(メトキシエトキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピルtristブトキシエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルtris(プロポキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピルtris(ブトキシ)シラン、3-アクリロキシプロピルtris(メトキシエトキシ)シラン、3-アクリロキシプロピルtris(ブトキシエトキシ)シラン、-アクリロキシプロピルtris(プロポキシ)シラン、3-アクリロキシプロピルtris(ブトキシ)シラン。3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、が特に好ましい。
【0068】
これらのかつ他のシランは、例えば、ABCR社、D-76151 カールスルーエから、Evonik、エッセン、ドイツから「Dynasylan」の商標の下で、又はSovento Chemie社、D-40468デュッセルドルフから市販され入手可能である。ビニルホスホン酸又はビニルホスホン酸ジエチルエステルを、結合剤(Evonik製、エッセン、ドイツ)としてここに列挙することもできる。
【0069】
最初にコーティングされた粒子の表面を、1以上の上記の疎水性アルキルシラン(例えばEP0634459A2に記載されているもの)及び少なくとも1つの他の反応種を隣り合わせて有している層で修飾することもできる。顔料に課される特定の要件に応じて、当該層における本開示に記載の表面修飾剤の割合は、基本的に、10%~100%であってよい。しかしながら、反応種、好ましくは反応性シラン種の割合が、表面修飾剤の合計量に基づいて、10、30、50、75又は100重量%であれば、特に好ましい。反応種の、例えば疎水性アルキルシランに対するそのような種々の比率は、ドナー基材の表面又はプリント基材の処理された部分の表面のいずれへの有効結合力も徐々に変化させることを提供する。
【0070】
本発明に係る方法の1つの実施態様では、金属基質又はコーティングされた金属基質が、ヘテロポリシロキサンの表面修飾を含み、ヘテロポリシロキサンは、少なくとも1つのアミノシラン成分及び少なくとも1つのアルキルシラン成分を含む成分から調製される。
【0071】
ヘテロポリシロキサンは、事前縮合されたヘテロポリシロキサンであってよく、これは、アミノアルキルアルコキシシランとアルキルトリアルコキシシラン及び/又はジアルキルジアルコキシシランとを混合し、この混合物を水と混合し、反応混合物のpHを1~8の値に調節し、かつ反応中に存在するかつ/又は反応中に生成されるアルコールを除去することによって、調製される。これらの事前縮合されたヘテロポリシロキサンは、本質的に有機溶媒を有しない。事前縮合されたヘテロポリシロキサンを調製するために用いることができるアミノアルキルアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、及びジアルキルジアルコキシシランは、水溶性であってよく、又は非水溶性であってよい。好ましいヘテロポリシロキサンは、Evonik Industries AG、45128、エッセン、ドイツから得ることができ、Dynasylan Hydrosil 2627、Dynasylan Hydrosil 2776、Dynasylan Hydrosil 2909、Dynasylan 1146、及びDynasylan Hydrosil 2907の商品名の下で入手可能である。特に好ましい水に基づくヘテロポリシロキサンは、Dynasylan Hydrosil 2627、Dynasylan Hydrosil 2776、Dynasylan Hydrosil 2907、及びDynasylan Hydrosil 2909である。本発明の好ましい変形態様によれば、事前縮合されたヘテロポリシロキサンが、Dynasylan Hydrosil 2627、Dynasylan Hydrosil 2776、Dynasylan Hydrosil 2909、Dynasylan 1146、Dynasylan Hydrosil 2907、及びこれらの混合物から構成される群から選択される。
【0072】
ヘテロポリシロキサンは、好ましくは、少なくとも500g/mol、特に好ましくは少なくとも750g/mol、最も特に好ましくは少なくとも1000g/molの平均分子量を有する。平均分子量は、例えば、NMR分光法、例えば、29Si-NMRによって、随意に1H-NMRと組み合わせて、決定できる。そのような方法の記載は、例えば、「Organofunctional alkoxysilanes in dilute aqueous solution:New accounts on the dynamic structural mutability」、Journal of Organometallic 5 Chemistry、625(2001)、208-216、等の文献で見ることができる。
【0073】
ヘテロポリシロキサンは、種々の様式で適用してよい。コーティングされる金属顔料を含有する懸濁体への、好ましくは溶解した又は分散した形態での、ポリシロキサンの添加が、特に有利であることが見いだされた。コーティングされる金属性基質を含む懸濁物を提供するために、例えば、前のコーティング工程から得られる反応生成物を、金属酸化物、特にはケイ素酸化物と一緒に用いてよい。
【0074】
本発明に係る事前縮合されたヘテロポリシロキサンの構造は、鎖状、はしご状、環状、架橋された構造、又はこれらの混合であってよい。さらには、さらなる実施態様において、ヘテロポリシロキサンが、ヘテロポリシロキサンの合計重量に対して、少なくとも87重量%、好ましくは少なくとも93重量%、より好ましくは少なくとも97重量%の、シランモノマー成分から構成されることが好ましく、シランモノマー成分は、アミノシラン、アルキルシラン、ビニルシラン、アリールシラン、及びこれらの混合物から構成される群から選択される。特に、ヘテロポリシロキサンが、アミノシラン及びアルキルシラン成分から、上記の量で、構成されていることが好ましい。
【0075】
シランモノマーは、例えば、アルコキシドの形態で用いられる。このアルコキシドは、オリゴマー化又は重合を開始するために切断され、縮合工程の結果として、シランモノマーが、対応するヘテロポリシロキサンへと変換され、又は架橋される。好ましくは、本発明において、メトキシド及びエトキシドをアルコキシドとして用いる。別段の記載がない限り、本発明の意味において、ヘテロポリシロキサン中のシランモノマー成分の重量%は、ヘテロポリシロキサンへの縮合によって切断される成分、例えばアルコキシ基、の無いシランモノマーの重量に基づく。そのようなポリシロキサンの製造は、文献に記載されている。例えば、対応する製造方法が、US5,808,125A、US5,679,147、及びUS5,629,400で見られる。Siあたり1又は2のアミノ基を有するアミノシランが、本発明のヘテロポリシロキサンを形成するために特に有利であることが見いだされた。さらなる実施態様では、少なくとも92重量%、好ましくは少なくとも97重量%の、ヘテロポリシロキサン中に含有されるアミノシラン成分が、1又は2つのアミノ基を有するアミノシランから選択され、それぞれ、ヘテロポリシロキサンに含有されるアミノシラン成分の合計重量に対する重量%である。
【0076】
例えば、(H2N(CH2)3Si(OCH3)3)、((3-アミノプロピル1)(トリメトキシ)シラン、AMMO)、(H2N(CH2)3Si(OC2H5)3((3-アミノプロピル/(トリエトキシシラン、AMEO)、(H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、((N-2-アミノエチル)―3-アミノプロピル)(トリメトキシシラン)、(DAMO))、(H2N(CH2)2NH(CH2)3)Si(0C2H5)3、((N-(2-アミノエチル1-3-アミノプロピル)(トリエトキシ)シラン)、及びこれらの混合物が、有利であることが見いだされた。さらなる実施態様では、ヘテロポリシロキサン中に含有されるアミノシラン成分が、少なくとも92重量%好ましくは少なくとも97重量%で、上記の群及びその混合物から選択され、それぞれ、ヘテロポリシロキサン中に含有されるアミノシラン成分の合計重量に対する量である。
【0077】
さらなる実施態様では、本発明に従って用いられるヘテロポリシロキサンが、ごく少量のエポキシシランを含有し、又はエポキシシランを全く含有しないことが好ましい。従来の湿式コーティング系における対応するヘテロポリシロキサンは、典型的に、比較的良好な接着性を示す。特に、さらなる実施態様では、ヘテロポリシロキサンが、10重量%以下、好ましくは6重量%以下、より好ましくは4重量%以下、さらにより好ましくは微量以下の、エポキシシラン成分を含有することが好ましく、それぞれ、ヘテロポリシロキサンの合計量に対する量である。
【0078】
ヘテロポリシロキサンのごく少量が典型的には十分であることが見いだされている。さらなる実施態様では、少なくとも1つ好ましくは1つのみのヘテロポリシロキサンを含有する表面修飾が、20nm以下、より好ましくは10nm以下、の平均厚みを有する。特には、少なくとも1つ好ましくは1つのみのヘテロポリシロキサンが、本質的に単層の形態で存在することが好ましい。少なくとも1つのヘテロポリシロキサンが、ケイ素酸化物を含有する周囲コーティング層に適用される場合に、特に有利であることが見いだされた。少なくとも1つの金属酸化物から本質的に構成されるコーティング層の適用は、好ましくは、ゾルゲル法によって行われる。
【0079】
本発明の1つの態様に従って用いられるヘテロポリシロキサンは、例えばアルキルシラン及びアミノシランの縮合によって製造できる。しかしながら、当業者は、同一のヘテロポリシロキサンを、他の方法によっても、例えば、少なくとも1つのアルキルシラン、少なくとも1つのハロゲンアルキルシラン、及び少なくとも1つのアミンの反応によっても、製造できることを認識している。そのようなヘテロポリシロキサンは、対応するアルキルシラン及びアミノシランの縮合産物であると形式的に考えることもでき、本発明に含まれる。当業者は、本発明の知見及び既知の専門知識に基づいて、種々の逆合成経路から選択できる。
【0080】
さらなる実施態様では、ヘテロポリシロキサンの合計重量に対して、シランモノマー成分の1重量%以下が、フッ素化シランであることも好ましい。フッ素化シラン成分は、好ましくは、適用されたヘテロポリシロキサン層中にごく微量のみで含有され、又はより好ましくは、この層に存在しない。
【0081】
本発明に関して、用語「アミノシラン」は、関係するシランが少なくとも1つのアミノ基を有することを示している。このアミノ基は、シリル基のケイ素原子に直接結合している必要はない。適切なアミノシランの例は、例えば、US9,624,378B2で見ることができる。
【0082】
本発明に係る方法で用いることができる市販のアルミニウム顔料の例は、Hydrolan(商標)タイプの製品、Hydroshine(商標)タイプの製品、及びAquashineタイプの製品であり、これらはすべてECKART社であり、又は、Emeral(商標)(すべて、東洋アルミニウム社、日本)、又はSilbercote(商標)(すべて、前Silberline Manufacturing社)である。
【0083】
ドナー表面
好ましい実施態様におけるプリント方法のドナー表面は、疎水表面であり、本開示で記載されているような特性を有するように適合されていてよいエラストマーで典型的にはできており、一般的に、シリコーンに基づく材料から調製される。ポリ(ジメチル-シロキサン)ポリマーは、シリコーンに基づいており、適切であることが見いだされている。1つの実施態様では、液体状硬化性組成物が、3つのシリコーンに基づくポリマーを組み合わせることによって形成された:すなわち、合計組成物(重量%)に対して約44.8重量%の量でのビニル末端ポリジメチルシロキサン 5000 cSt(DMS V35、Gelest(商標)、CAS、No.68083-19-2)、約19.2重量%の量での末端及び側鎖のビニル基を有するビニル官能性ポリジメチルシロキサン(ポリマーXP RV5000、Evonik(商標)Hanse、CAS No.68083-18-1)、並びに、約25.6重量%の量での分岐構造ビニル官能性ポリジメチルシロキサン(VQMレジン-146、Gelest(商標)、CAS No.68584-83-8)。ビニル官能性ポリジメチルシロキサンの混合物に、下記を添加した:白金触媒、例えば、約0.1重量%の量での白金ジビニルテトラメチルジシロキサン複合体(SIP6831.2、Gelest(商標)、CAS No.68487-92-2)、約2.6重量%の量での、硬化条件をよりよく制御するための阻害剤、Evonik(商標)Hanseのインヒビター600、かつ最後に、反応性架橋剤、例えば、約7.7重量%の量でのメチルヒドロシロキサンジメチルシロキサン共重合体(HMS301、Gelest(商標)、CAS No.68037-59-2)、これは、添加硬化を開始する。この添加硬化性組成物を、そのすぐ後に、平滑な平坦化ナイフを用いて、ドナー表面の支持体(例えば、ドラム10に取り付け可能なエポキシスリーブ)の上に適用し、そのような支持体は随意に(例えばコロナによって又はプライマー物質で)処理されて、ドナー表面材料の、その支持体への接着性を向上させる。適用された流体を、換気された炉内で2時間にわたって100~120℃で硬化し、それにより、ドナー表面を形成する。
【0084】
この疎水性は、裂けることなく、受容層保持基材上に形成される粘着性のフィルムによる選択的な剥ぎ取りに粒子を露出することを可能にするものであり、それによって、基材への明瞭な転写がなされる。
【0085】
ドナー表面は、疎水性である必要があり、すなわち、粒子の水性キャリアとのぬれ角が90°超である必要がある。ぬれ角は、液体/空気/固体の界面でメニスカスによって形成される
角度であり、これが90°超である場合には、水が玉状になる傾向があり、ぬれず、したがって、表面に接着しない。ぬれ角又は均衡接触角Θ0は、後退(最小)接触角Θrと、前進(最大)接触角ΘAとの間に含まれ、かつこれらから計算でき、方法の操作条件に関係する所与の温度及び圧力で評価できる。これは、慣用的に、ゴニオメーター又は液滴形状分析器を用いて、5μlの体積を有する液体の液滴から、液体-蒸気界面が固体ポリマー表面に会う箇所で、周囲の温度(約23℃)及び圧力(約100kPa)で、計測される。接触角計測は、例えば、接触角分析器-Kruss(商標)、「Easy Drop」FM40Mk2を用いて、希釈水を標準液体として用いて、実行できる。
【0086】
この疎水性は、ドナー表面を形成するポリマーの内在的な特性であってよく、又は、ポリマー組成中への疎水性添加剤の追加によって促進されてよい。ポリマー組成物の疎水性を促進しうる添加剤は、例えば、オイル(例えば、合成オイル、天然オイル、植物オイル、又はミネラルオイル)、ワックス、可塑剤、及びシリコーン添加剤であってよい。そのような疎水性添加剤は、それらのそれぞれの化学的性質又は量がドナー表面の適切な形成を阻害せず、かつ例えばポリマー材料の適切な硬化を阻害しない限り、任意のポリマー性材料と適合性であってよい。
【0087】
ドナー表面の粗さ又は仕上げは、プリントされた金属性表面に再現されるであろう。したがって、鏡面仕上げ又は高グロス外観が要求される場合には、ドナー表面は、マット又はサテン外観が所望される場合よりも平滑である必要がある。これらの視覚的な影響は、印刷基材及び/又は受容層の粗さからも生じうる。
【0088】
ドナー表面は、ドラムの外側表面であってよく、しかしながら、これは必須ではなく、なぜならば、これは、代替的には、エンドレス輸送部材の表面であってよく、これは、ガイドローラーにわたって誘導されるベルトの形態を有しており、少なくともコーティング装置を通過する間において適切な張力下で維持される。追加的な構造は、ドナー表面及びコーティングステーションの、互いに対する相対的な動きを可能にしうる。例えば、ドナー表面は、静的なコーティングステーションの下方を繰り返し通過しうる移動可能な平面を形成してよく、又は、静的な平面を形成してよく、コーティングステーションは、この平面の一方の端部から他方へと繰り返し移動し、それによって、ドナー表面を粒子で全体的に覆う。想定されるものとしては、ドナー表面及びコーティングステーションのいずれもが、互いに対して移動してよく、かつ空間における静止点に対して移動してよく、そのようにして、コーティングステーションによって提供される粒子でドナー表面の全体的なコーティングを達成するためにかかるであろう時間を低減する。そのようなドナー表面の形態のすべては、コーティングステーションに対して移動可能(例えば、回転的に、環状的に、エンドレスに、繰り返し、移動可能である、など)であると言うことができ、そのような通過するドナー表面が、粒子でコーティングされうる(又は露出された領域において粒子で補充される)
【0089】
ドナー表面は、追加的に、プリントシステムの特定の構造から生じる実際的又は特定の考慮に対応しうる。例えば、それは、ドラム上に取りつけられるために十分に柔軟であってよく、十分な摩耗耐性を有してよく、用いられる粒子及び/若しくは流体に対して不活性であってよく、かつ/又は関係する任意の操作条件(例えば、圧力、熱、張力、など)に対して抵抗性であってよい。そのような特性のいずれかを満たすことは、ドナー表面の耐用期間を有利に増加させる傾向がある。
【0090】
ドナー表面は、ドラムにわたるスリーブとして形成されている場合であっても又はガイドローラーにわたるベルトとして形成されている場合であっても、粒子受容外側層の反対側に、本体を有していてよく、これは、ドナー表面と一緒に、転写部材として言及されうる。本体は、異なる複数の層を有してよく、これらのそれぞれが、全体的な転写部材に、1以上の所望の選択される特性を提供し、これは、例えば、機械的耐性、熱伝導性、(例えば、ドナー表面と印刷シリンダーとの間の「巨視的な」接触を改善するための)圧縮特性、(例えば、ドナー表面と、印刷シリンダー上のプリント基材との間の「微視的な」接触を改善するための)順応性、及び、プリント転写部材の、当業者に容易に理解される任意の特性から選択される。
【0091】
本発明のさらなる態様は、粒子の使用に向けられており、粒子の少なくとも50重量%が、フレーク状の金属顔料であり、これは、フレーク状の金属性基質及びこの金属性基質の表面処理とを含み、金属基質の表面処理が、金属酸化物を含む金属基質を取り囲む少なくとも1つのコーティング層を含み、コーティングの表面修飾層が、少なくとも1つのヘテロポリシロキサン、又は、互いに同一若しくは異なっておりかつスペーサによって隔てられている少なくとも2つの末端官能基を有する化合物を有し、少なくとも1つの末端官能基が、コーティング層に化学的に結合でき、
基材の表面にプリントする方法において、この方法が、下記を含む:
(a.)ドナー表面を提供すること、
(b.)コーティングステーションにドナー表面を通過させること、ドナー表面は、コーティングステーションから、別個の粒子でコーティングされて出てくる、並びに、
(c.)下記の工程を繰り返し実行すること:
(i.)基材の表面を処理して、基材の表面のうち少なくとも選択された領域の、粒子への親和性を、粒子の、ドナー表面への親和性よりも大きくすること、
(ii.)基材の表面をドナー表面に接触させて、粒子が、ドナー表面から、基材の表面の処理された選択された領域のみへと移されるようにし、そのようにして、基材上の対応する領域へと粒子が移されたドナー表面の領域を露出させ、かつ
(iii.)そのようにして、基材の処理された表面に接着した複数の別個の粒子を形成すること、
(iv.)ドナー表面をコーティングステーションに戻し、それによって、粒子の単層を連続的にし、そのようにして、基材の表面への後の画像のプリントを可能にすること。
【0092】
本発明に係るプリントの方法と関連する記載で上述したすべての態様は、前述のパラグラフで概要を記載した基材の表面へのプリント方法における粒子の使用にも同様に適用される。
【実施例】
【0093】
【0094】
例1
35.49pbwのAF1及び43.09pbwのイソプロパノールを、分散体が得られるまで十分に混合した。0.02pbwのペルオキソモリブデン酸溶液(1pbwのモリブデン酸と3pbwの30%の過酸化水素溶液とを混合することによって得られたもの)を添加し、混合を継続した。そして、この分散体を80℃にまで加熱し、3.71pbwのTEOS、5.20pbwの水、及び0.56pbwの酢酸を添加した。この混合物を、一定時間にわたって、温度を80℃に維持した状態で、攪拌した。
【0095】
80℃で攪拌している間に、間隔をおいて、0.28pbwのエチレンジアミン及び3.55pbwのイソプロパノールを添加し、合計で0.84pbwのエチレンジアミンを添加した。そして、混合物が攪拌されかつ80℃に保持されている状態で、0.35pbwのSD2及び0.09pbwのSD3を添加した。80℃での攪拌を、数時間にわたって継続した。その後に、混合物を冷却し、溶媒の一部を除去し、封入アルミニウム粒子のペーストを得た。
【0096】
例2
13.23pbwのAF2、67.53pbwのイソプロパノール、4.31pbwの水、及び0.07pbwのDisperbyk118を、分散体が得られるまで十分に混合した。5.03pbwのTEOSを添加し、混合の間に、分散体を80℃にまで加熱した。80℃での攪拌を行う一方で、間隔をあけて、0.13pbwのエチレンジアミン、3.32pbwのイソプロパノール、及び0.21pbwの水を添加し、合計で0.39pbwのエチレンジアミンを添加した。そして、混合物を攪拌しかつ80℃に保持しつつ、0.25pbwのSD4及び0.25pbwのSD5を添加した。80℃での攪拌を、一定時間にわたって継続した。その後に、混合物を冷却し、溶媒の一部を除去し、封入アルミニウム顔料のペーストを得た。
【0097】
例3
例1と同様であるが、シランSD2及びSD3の代わりに0.50pbwのSD1を、表面の修飾として用いた。
【0098】
例4
例1~3のそれぞれで得られたアルミニウム粒子のペーストを、水に分散させ、WO2016/189515に記載されている方法を用いて、基材に適用した。
【0099】
比較例1として、アルミニウムフレーク(アルミニウムパウダー6150、Quanzhou Manfong Metal Powder社、中国、によって供給されたもの)のペーストを、水に分散させ、WO2016/189515に記載の方法を用いて、基材に適用した。
【0100】
比較例2として、脂肪酸でコーティングされたアルミニウムフレークAF2(Silvershine S1100、Eckart社)のペーストを用いた。
【0101】
比較例3として、比較例2のアルミニウムペーストを、例1の手順に従ってSiO2でコーティングした。しかしながら、シランSD2及びSD3は、添加せず、したがって、アルミニウムフレークは、SiO2のみでコーティングされた。
【0102】
このようにして調製されたサンプルのグロス、グロス保持、及び腐食安定性を、計測した。グロス保持によって意味しているものは、プリント手順を繰り返し一定期間にわたって行った後でグロスを計測することである。例えば、プリント後の1日後、2日後、かつ最終的に30日後までのグロスを計測した。
【0103】
例1~3のアルミニウム粒子で調製されたサンプルは、すべて、高い初期グロスレベルを示し、良好なグロス保持及び良好な腐食安定性を示した。特に、例1及び3に係るコーティングされた金属エフェクト顔料は、Byk-microTRIグロスを用いて20°で計測される約800グロス単位の平均グロスを示した。比較例1及び2でプリントされた基材は、高い初期グロスレベルを示したが、グロス保持は劣っており、なぜならば、このサンプルは、適用後2日以内に腐食を示したからである。
【0104】
他の本発明に係る実施例並びに比較例1及び2とは対照的に、比較例3のエフェクト顔料は、ドナー表面に十分な量で転写されず(移されず)、したがって、基材のプリント結果は、満足のいくものではなかった。
本開示は、下記の態様を含む:
<態様1>
基材の表面にプリントする方法であって、
この方法は、
a. ドナー表面を提供すること、
b. 前記ドナー表面をコーティングステーションに通過させること、前記ドナー表面は、別個の粒子でコーティングされて前記コーティングステーションから出る、及び、
c. 下記の工程を繰り返し実行すること:
(i.)基材の表面を処理して、前記基材の前記表面のうちの少なくとも選択領域に対する前記粒子の親和性が、前記ドナー表面への前記粒子の親和性よりも大きくなるようにすること、
(ii.)前記基材の前記表面を前記ドナー表面と接触させて、粒子が、前記ドナー表面から、前記基材の前記表面の処理された前記選択領域にのみ移るようにし、そのようにして、前記ドナー表面の領域のうち、そこから前記基材上の対応する領域へと粒子が移った領域を露出させ、かつ
(iii.)そのようにして、前記基材の処理された前記表面に接着した複数の別個の粒子を形成すること、
(iv.)前記ドナー表面を前記コーティングステーションに戻して、前記粒子の単層を連続的にし、それによって、基材の表面上への後の画像のプリントを可能にすること、
を含み、
前記別個の粒子の少なくとも50重量%が、フレーク状の金属基質と前記金属基質の表面処理とを含む金属顔料であり、前記金属基質の前記表面処理が、金属酸化物を含有し前記金属基質を取り囲む少なくとも1つのコーティング層、及び前記コーティング層の表面修飾を含み、この表面修飾が、少なくとも1つのヘテロポリシロキサン、又は互いに同一若しくは異なっておりかつスペーサによって隔てられている少なくとも2つの末端官能基を有する化合物を有すること、を特徴とし、少なくとも1つの末端官能基が、前記コーティング層に化学的に結合できる、
方法。
<態様2>
前記表面修飾が、金属酸化物の上面に結合している、態様1に記載の方法。
<態様3>
前記工程bにおいて、前記ドナー表面が、別個の粒子の単層でコーティングされて前記コーティングステーションから出る、態様1又は2に記載の方法。
<態様4>
前記フレーク状の金属基質が、10~500nmの範囲の平均厚み(h50値)を有する、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
<態様5>
前記フレーク状の金属基質が、1500:1~10:1の範囲のアスペクト比を有し、このアスペクト比は、平均顔料直径(D50値)と平均顔料厚み(h50値)との間の比として定義される、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
<態様6>
前記フレーク状の金属基質が、アルミニウム、銅、亜鉛、金青銅、クロム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉄、及び鋼、又は、これらの金属の合金のフレーク状基質又は顔料から選択される、態様1~5のいずれか一項に記載の方法。
<態様7>
前記フレーク状の金属基質が、PVD法によって形成され、好ましくはアルミニウム顔料である、態様1~6のいずれか一項に記載の方法。
<態様8>
前記金属基質を取り囲む第1のコーティング層が、この第1のコーティングの重量に基づいて、少なくとも60重量%の量で金属酸化物を含有する、態様1~7のいずれか一項に記載の方法。
<態様9>
前記第1のコーティング層の前記金属酸化物が、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、ホウ素酸化物、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、鉄酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、スズ酸化物、亜鉛酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、及び、これらの酸化水和物、及びこれらの水酸化物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、態様1~8のいずれか一項に記載の方法。
<態様10>
前記ヘテロポリシロキサンを、少なくとも1つのアミノシラン成分及び少なくとも1つのアルキルシラン成分を含む複数成分から調製する、態様1~9のいずれか一項に記載の方法。
<態様11>
前記表面修飾層が、互いに異なっておりかつスペーサによって隔てられている少なくとも2つの末端官能基を有する化合物を含む、態様1~9のいずれか一項に記載の方法。
<態様12>
受容層及び/又は接着層を、工程iにおいて、前記基材上に適用する、態様1~11のいずれか一項に記載の方法。
<態様13>
前記ドナー表面が、疎水性表面であり、好ましくは、ポリ(ジメチルシロキサン)ポリマーから調製されるエラストマーによって形成される、態様1~12のいずれか一項に記載の方法。
<態様14>
粒子の使用であって、
前記粒子の少なくとも50重量%が、フレーク状の金属基質と前記金属基質の表面処理とを含むフレーク状の金属顔料であり、前記金属基質の前記表面処理が、金属酸化物を含有し前記金属基質を取り囲む少なくとも1つのコーティング層、及び前記コーティング層の表面修飾層を含み、この表面修飾層が、少なくとも1つのヘテロポリシロキサン、又は互いに同一若しくは異なっておりかつスペーサによって隔てられている少なくとも2つの末端官能基を有する化合物を含み、少なくとも1つの末端官能基が、前記コーティング層に化学的に結合でき、
基材の表面にプリントする方法において、この方法が、
a. ドナー表面を提供すること、
b. 前記ドナー表面をコーティングステーションに通過させること、前記ドナー表面は、別個の粒子でコーティングされて前記コーティングステーションから出る、及び
c. 下記の工程を繰り返し実行すること:
(i.)基材の表面を処理して、前記基材の前記表面のうちの少なくとも選択領域に対する前記粒子の親和性が、前記ドナー表面への前記粒子の親和性よりも大きくなるようにすること、
(ii.)前記基材の前記表面を前記ドナー表面と接触させて、粒子が、前記ドナー表面から、前記基材の前記表面のうち処理された前記選択領域にのみ移されるようにし、そのようにして、前記ドナー表面の領域のうち、そこから前記基材上の対応する領域へと粒子が移った領域を露出させ、かつ、
(iii.)そのようにして、前記基材の処理された前記表面に接着した複数の別個の粒子を形成すること、
(iv.)前記ドナー表面を前記コーティングステーションに戻して、前記粒子の単層を連続的にし、それによって、基材の表面上への後の画像のプリントを可能にすること、
を含む、
使用。
<態様15>
態様2~13のいずれか一項に記載のプリント方法における、態様14に記載の粒子の使用。