(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】防爆型発光ダイオードユニット
(51)【国際特許分類】
H01L 33/52 20100101AFI20241115BHJP
H01L 33/64 20100101ALI20241115BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20241115BHJP
【FI】
H01L33/52
H01L33/64
H01L33/48
(21)【出願番号】P 2023568807
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2021047248
(87)【国際公開番号】W WO2023119403
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】菱田 徹
(72)【発明者】
【氏名】津山 享平
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207382(JP,A)
【文献】特開2007-184310(JP,A)
【文献】特開2017-022305(JP,A)
【文献】特表2014-515191(JP,A)
【文献】特開2006-310138(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0157596(US,A1)
【文献】特開2007-250513(JP,A)
【文献】特表2019-512862(JP,A)
【文献】特表2013-506251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの発光ダイオードと、この発光ダイオードが実装される基板と、この基板が取り付けられるヒートシンクと、前記発光ダイオードを覆うカバーとを具備しており、前記ヒートシンクは、基板が載置される載置面を有しており、前記カバーは、発光ダイオードの実装パターンに応じて発光ダイオードを格納する発光ダイオード用凹部が形成されたカバー本体部と、このカバー本体部との間に樹脂充填部としての間隙を有して取り囲むように設けられたカバー
外枠と、このカバー外枠と前記カバー本体部とを連結する複数個の連結部と、前記カバー外枠の外側面に形成されたビス連結部とを有しており、前記カバーをビス連結部においてヒートシンクに連結した状態で連結部の間から樹脂材を樹脂充填部に充填することで発光ダイオードが密閉されることを特徴とする防爆型発光ダイオードユニット。
【請求項2】
前記連結部は、厚さ寸法がカバー本体部の厚さ寸法より小さく形成されており、樹脂材は、少なくとも連結部の上面に達するまで樹脂充填部に充填されることを特徴とする請求項1記載の防爆型発光ダイオードユニット。
【請求項3】
前記連結部は、上面が平坦に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の防爆型発光ダイオードユニット。
【請求項4】
前記連結部は、下面が下側に向かって凸になったくさび状に形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の防爆型発光ダイオードユニット。
【請求項5】
少なくとも1つの発光ダイオードと、この発光ダイオードが実装される基板と、この基板が取り付けられるヒートシンクと、前記発光ダイオードを覆うカバーとを具備しており、前記ヒートシンクは、基板が載置される載置面と、この載置面から一段下がって載置面の周囲に形成されたヒートシンク側凹溝とを有しており、前記カバーは、発光ダイオードの実装パターンに応じて発光ダイオードを格納する発光ダイオード用凹部が形成されたカバー本体部と、このカバー本体部より一段下がって形成されたカバー周縁部と、このカバー周縁部の裏面側に形成された充填凹部と、この充填凹部に表面側から連通する注入口とを有しており、カバー本体部で発光ダイオードを覆うとカバー周縁部はヒートシンクのヒートシンク側凹溝内に位置し、注入口から充填凹部内に注入された充填樹脂材によって発光ダイオードが密閉されることを特徴とする防爆型発光ダイオードユニット。
【請求項6】
前記カバーには自身をヒートシンクに固定するための固定ビスが貫通するカバー側貫通孔が開設されており、このカバー側貫通孔を介してヒートシンクに結合された固定ビスは、カバー側貫通孔に充填されるビス用充填樹脂材によって封止されることを特徴とする請求項5記載の防爆型発光ダイオードユニット。
【請求項7】
前記カバーのカバー周縁部とヒートシンクのヒートシンク側凹溝との間には、ガスケットが介在しており、このガスケットは前記充填凹部とは独立して存在していることを特徴とする請求項5又は6記載の防爆型発光ダイオードユニット。
【請求項8】
少なくとも1つの発光ダイオードと、この発光ダイオードが実装される基板と、この基板が取り付けられるヒートシンクと、前記発光ダイオードを覆うカバーとを具備しており、前記ヒートシンクは、基板が載置される載置面と、この載置面から一段下がって載置面の周囲に形成されたヒートシンク側凹溝とを有しており、前記カバーは、発光ダイオードの実装パターンに応じて発光ダイオードを格納する発光ダイオード用凹部が形成されたカバー本体部と、このカバー本体部より一段下がって形成されたカバー周縁部とを有しており、カバー本体部で発光ダイオードを覆うとカバー周縁部はヒートシンクのヒートシンク側凹溝内に位置し、カバーは少なくともカバー周縁部においてヒートシンクに固定ビスで固定されており、前記固定ビスを含めてヒートシンク側凹溝に樹脂材を充填することで発光ダイオードが密閉されることを特徴とする防爆型発光ダイオードユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防爆型の発光ダイオードユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の防爆型の発光ダイオードユニットには,特表2014-515191号公報に記載された『少なくとも1つの発光ダイオード(LED)と、前記LEDに結合されたヒートシンクと、前記LEDを少なくとも発光方向に覆うLEDカバーとを備えた防爆性LEDモジュールであって、前記LEDカバーは、前記ヒートシンクの挿入凹部内に延びていて、外部の、場合によっては爆発性の雰囲気に対してLEDがシールされた状態で、注型材料によって前記挿入凹部内で取り囲まれた』ものがある。
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特表2014-515191号公報の記載の技術では、発光ダイオードを実装した基板が載置されるヒートシンクの冷却面(載置面)を平坦にすることが難しいため、コストの面で不利であった。
また、ヒートシンクの冷却面に対応した形状の基板を使用することが必須となるので、設計の自由度が低くなるという問題もあった。
さらに、ヒートシンクはダイキャスト、押出成形にて製造する必要があったため、これもコスト面や設計、構造の自由度の面から問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、コスト面でも有利で、かつ設計の自由度を高めることができる防爆型発光ダイオードユニットを提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の防爆型発光ダイオードユニットは、少なくとも1つの発光ダイオードと、この発光ダイオードが実装される基板と、この基板が取り付けられるヒートシンクと、前記発光ダイオードを覆うカバーとを備えており、前記ヒートシンクは、基板が載置される載置面を有しており、前記カバーは、発光ダイオードの実装パターンに応じて発光ダイオードを格納する発光ダイオード用凹部が形成されたカバー本体部と、このカバー本体部との間に樹脂充填部としての間隙を有して取り囲むように設けられたカバー外枠と、このカバー外枠と前記カバー本体部とを連結する複数個の連結部と、前記カバー外枠の外側面に形成されたビス連結部とを有しており、前記カバーをビス連結部においてヒートシンクに連結した状態で連結部の間から樹脂材を樹脂充填部に充填することで発光ダイオードが密閉されるようになっている。
【0007】
本発明に係る第2の防爆型発光ダイオードユニットは、 少なくとも1つの発光ダイオードと、この発光ダイオードが実装される基板と、この基板が取り付けられるヒートシンクと、前記発光ダイオードを覆うカバーとを備えており、前記ヒートシンクは、基板が載置される載置面と、この載置面から一段下がって載置面の周囲に形成されたヒートシンク側凹溝とを有しており、前記カバーは、発光ダイオードの実装パターンに応じて発光ダイオードを格納する発光ダイオード用凹部が形成されたカバー本体部と、このカバー本体部より一段下がって形成されたカバー周縁部と、このカバー周縁部の裏面側に形成された充填凹部と、この充填凹部に表面側から連通する注入口とを有しており、カバー本体部で発光ダイオードを覆うとカバー周縁部はヒートシンクのヒートシンク側凹溝内に位置し、注入口から充填凹部内に注入された充填樹脂材によって発光ダイオードが密閉されるようになっている。
【0008】
本発明に係る第3の防爆型発光ダイオードユニットは、少なくとも1つの発光ダイオードと、この発光ダイオードが実装される基板と、この基板が取り付けられるヒートシンクと、前記発光ダイオードを覆うカバーとを備えており、前記ヒートシンクは、基板が載置される載置面と、この載置面から一段下がって載置面の周囲に形成されたヒートシンク側凹溝とを有しており、前記カバーは、発光ダイオードの実装パターンに応じて発光ダイオードを格納する発光ダイオード用凹部が形成されたカバー本体部と、このカバー本体部より一段下がって形成されたカバー周縁部とを有しており、カバー本体部で発光ダイオードを覆うとカバー周縁部はヒートシンクのヒートシンク側凹溝内に位置し、カバーは少なくともカバー周縁部においてヒートシンクに固定ビスで固定されており、前記固定ビスを含めてヒートシンク側凹溝に樹脂材を充填することで発光ダイオードが密閉されるようになっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る防爆型発光ダイオードユニットは、発光ダイオードに被せられるカバーを充填樹脂材で密閉するので確実に発光ダイオードを密閉することができる。
また、ヒートシンクの載置面を平坦にしたので、設計の自由度も向上するとともに、各種の基板を利用することができる。このため、全体のコストを大幅に低減することができるというメリットを有している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニットを構成するカバーの図面であって、同図(A)は概略的平面図、同図(B)は概略的側面図、同図(C)は概略的底面図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニットの要部を示す概略的断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニットの概略的斜視図であって、1つのカバーが取り付けられていない状態の概略的斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニットの一部破断概略的斜視図である。1個のカバーの1辺のカバー外枠を取り除いて連結部が見えるようにしている。
【
図5】本発明の第2の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニットの要部の概略的断面斜視図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニットの概略的斜視図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニットの概略的断面図である。
【
図8】本発明の第3の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニットの要部の概略的断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施に係る防爆型発光ダイオードユニット3000は、複数個の発光ダイオード500と、この発光ダイオード500が実装される基板100と、この基板100が取り付けられるヒートシンク200と、前記発光ダイオード500を覆うカバー300とを備えており、前記ヒートシンク200は、前記基板100が載置される載置面210を有しており、前記カバー300は、発光ダイオード500の実装パターンに応じて発光ダイオード500を格納する発光ダイオード用凹部311が形成されたカバー本体部310と、このカバー本体部310との間に樹脂充填部370としての間隙を有して取り囲むように設けられたカバー外枠350と、このカバー外枠350と前記カバー本体部310とを連結する複数個の連結部360と、前記カバー300の外側面に形成されたビス連結部351とを有しており、前記カバー300をビス連結部351においてヒートシンク200に連結した状態で連結部360の間から充填樹脂材400を樹脂充填部370に充填することで発光ダイオード500が密閉されるようになっている。
【0012】
まず、この防爆型発光ダイオードユニット3000を構成する基板100には、複数個の発光ダイオード500が碁盤目状に実装されている。例えば、この基板100を
図3に示すように田の字状に4個並べて一つの防爆型発光ダイオードユニット3000としている。
また、この基板100の四隅には、基板100自身とともにカバー300を後述するヒートシンク200に固定するための固定ビス450を避けるための略1/4円状の切欠き部111が形成されている。さらに、この基板100の各辺の中央部分には固定ビス450が貫通する基板側貫通孔110が開設されている。かかる切欠き部111や基板側貫通孔110は、実装される発光ダイオード500にかからない位置に開設されていることはいうまでもない。
【0013】
かかる基板100が取り付けられるヒートシンク200は、例えばアルミダイキャスト製であって、防爆型発光ダイオードユニット3000の大部分を占めており、防爆型発光ダイオードユニット3000の本体ケースとしての機能も果たしている。
このヒートシンク200は、
図2等に示すように、基板100が載置される平坦な載置面210を有している。
【0014】
前記載置面210は、基板100が載置される部分であるため、平坦に形成されている。この載置面210の四隅には、基板100の基板側貫通孔に対応した位置に固定ビスに対応したヒートシンク側ビス孔が開設されている。
なお、この載置面210のうち、後述する充填樹脂材400が接する箇所は粗面に仕上げることで充填樹脂材400との密着性を向上させている。
粗面に仕上げるためには各種の方法があるが、例えば、塗装面を艶消しにすることで微小な凹凸を形成するという方法がある。
【0015】
カバー300は、透光性を有する合成樹脂から構成されている。
カバー300のカバー本体部310は、ヒートシンク200の載置面210に載置された基板100を格納する基板用凹部(図示省略)を有している。すなわち、カバー本体部310の裏面側には、基板100の形状、サイズに対応した凹みが基板用凹部として形成されているのである。
また、このカバー本体部310の基板用凹部には、
図1(C)に示すように、基板100に実装された発光ダイオード500の配置パターンに応じた複数個の発光ダイオード用凹部
311が形成されている。この発光ダイオード用凹部
311は、基板用凹部よりさらに表面側に向かって凸の略ドーム状に形成されることになる。
なお、
図1(C)に示した発光ダイオード用凹部
311のパターン,サイズ等は一例であり、本発明がこれらに限定されるものでないことはいうまでもない。
【0016】
カバー300のカバー本体部310の外側には、カバー本体部310との間に間隙を有してカバー外枠350が形成されている。
カバー本体310とカバー外枠350とは、一定間隔で離れて形成された複数個の連結部360によって連結されている。
このカバー本体310とカバー外枠350との間の間隙、より詳しくはカバー本体310とカバー外枠350と、両者を連結する連結部360の下面362と、ヒートシンク200の載置面210との間の間隙が後述する樹脂充填部370として機能する。
【0017】
この連結部360の厚さ寸法は、
図2に示すように、カバー本体部310の厚さ寸法より小さく形成されている。しかも連結部360は、その上面361がカバー外枠350の上縁と一致している。このため、連結部360とヒートシンク200の載置面210との間には隙間が形成されることになる。この隙間は上述したように、カバー本体310とカバー外枠350と、両者を連結する連結部360の下面362と、ヒートシンク200の載置面210との間の間隙となり、樹脂充填部370に相当する。
【0018】
また、連結部360は、上面361が平坦に、かつ下面362が下側に向かって凸になったくさび状に形成されている。
連結部360の上面361が平坦に形成されているのは、連結部360の間の隙間から樹脂充填部370に充填される充填樹脂材400の最小充填量を把握しやすくするためである。すなわち、充填樹脂材400は、少なくとも連結部360の上面361に達するまでは樹脂充填部370に充填される必要があるため、上面631を平坦に形成しておくことで充填樹脂材400が連結部360の上面361にまだ達していない状態を把握しやすくするためである。
【0019】
一方、連結部360の下面362が、下側に向かって凸になったくさび状に形成されているのは、以下の理由による。
すなわち、連結部360の下面362が平坦に形成されていたとすると、樹脂充填部370に充填される充填樹脂材400の流れが下面362の部分で不均一になるおそれがあるためである。もし充填樹脂材400の流れが不均一になると、ある部分では充填樹脂材400が連結部360の上面361を大幅に超過しているにも関わらず、その他の部分では充填樹脂材400が連結部360の上面361にまで達しないという事態が生じるおそれがある。かかる状態であると、発光ダイオード500を確実に密閉することができなくなるそれがある。
しかしながら、連結部360の下面362が下側に向かって凸になったくさび状に形成されていると、充填樹脂材400は連結部360の下面362の形状に沿ってスムーズに流れるため、上述のような問題が生じないのである。
【0020】
さらに、このカバー外枠350の外側面には、
図1(A)、(C)に示すように、合計8個のビス連結部351が形成されている。4個のビス連結部351はカバー外枠350の四隅に、残りの4個のビス連結部351はカバー外枠350の中央位置にそれぞれ形成されている。
このビス連結部351を用いて、ヒートシンク200の載置面210に載置された基板100をカバーした状態でカバー300をヒートシンク200に構造的に連結固定するのである。
もちろん、上述した充填樹脂材400の樹脂充填部370への充填は、カバー300をヒートシンク200に連結固定した状態で行われる。
【0021】
この防爆型発光ダイオードユニット3000のより詳細な組立手順は以下の通りである。
まず、基板100をヒートシンク200の載置面210に載置し、基板100とヒートシンク200とを固定ビス(図示省略)によって連結固定する。
なお、この状態で発光ダイオード500の図示しないケーブルは必要箇所に電気的に接続されるものとする。
【0022】
さらに、ヒートシンク200及び基板100の上にカバー300を被せる。
その際、カバー300のカバー本体部310の基板用凹みに基板100が嵌まり込むので、カバー300は設定された位置に自然と収まる。この状態では、カバー本体部310に形成された発光ダイオード用凹部311に基板100に実装された発光ダイオード500が確実に格納されることになる。
【0023】
カバー300を8個のビス450を8個のビス連結部351に貫通させてヒートシンク200へと連結固定する。
この後、連結部360の間からカバー本体部310とカバー外枠350との間の樹脂充填部370に充填樹脂材400を充填する。この充填に際しては、複数箇所から同時に樹脂材400を充填することが望ましい。なぜならば、複数箇所から同時に充填することにより、樹脂充填部370に対してより均一な充填樹脂材400の充填が可能になるためである。
充填樹脂材400は、少なくともすべての連結部360の上面361に達するまで樹脂充填部370に充填される。
【0024】
その後、充填樹脂材400の性質に応じて充填樹脂材400の硬化作業を行う。紫外線照射によって硬化するタイプのものであれば紫外線照射を、加熱によって硬化するタイプのものであれば加熱を行うことになる。
この充填樹脂材400によって発光ダイオード500が密閉されるため、この防爆型発光ダイオードユニット3000は防爆タイプとなる。
【0025】
なお、上述した実施の形態では、連結部360の上面361は平坦であるとしたが、略蒲鉾状に盛り上がって形成されていてもよい。
上面361が略蒲鉾状に形成されていたとすると、充填樹脂材400が必要量、すなわち連結部360の上面361に達した後にさらに充填した場合、連結部360の上面361が徐々に充填樹脂材400に埋もれていくことになるので、上面361が充填樹脂材400から露出している面積が徐々に小さくなる。この事象が生じたならば、充填樹脂材400の充填量が必要量に達したことを一目で確認することができる。
【0026】
本発明の第2の実施の形態に係防爆型発光ダイオードユニット1000は、複数個の発光ダイオード500と、この発光ダイオードが実装される基板100が取り付けられるヒートシンク200と、前記発光ダイオード500をカバーするカバー300とを備えており、前記ヒートシンク200は、基板100が載置される載置面210と、この載置面210から一段下がって載置面210の周囲に形成されたヒートシンク側凹溝220とを有しており、前記カバー300は、発光ダイオード500パターンに応じて発光ダイオード500を格納する発光ダイオード用凹部311が形成されたカバー本体部310と、このカバー本体部310より一段下がって形成されたカバー周縁部320と、このカバー周縁部320の裏面側に形成された充填凹部321と、この充填凹部321に表面側から連通する注入口322とを有しており、カバー本体部310で発光ダイオード500を覆うとカバー周縁部320はヒートシンク200のヒートシンク側凹溝220内に位置し、注入口322から充填凹部321内に注入された充填樹脂材400によって発光ダイオード500が密閉されるようになっている。
【0027】
まず、この防爆型発光ダイオードユニット1000を構成する基板100には、複数個の発光ダイオード500が碁盤目状に実装されている。例えば、この基板100を
図6に示すように田の字状に4個並べて一つの防爆型発光ダイオードユニット1000としている。
また、この基板100の四隅には、基板100自身とともにカバー300を後述するヒートシンク200に固定するための固定ビス450が貫通する基板側貫通孔110が開設されている。かかる基板側貫通孔110は、実装される発光ダイオード500にかからない位置に開設されていることはいうまでもない。
【0028】
かかる基板100が取り付けられるヒートシンク200は、例えばアルミダイキャスト製であって、防爆型発光ダイオードユニット1000の大部分を占めており、防爆型発光ダイオードユニット1000の本体ケースとしての機能も果たしている。
このヒートシンク200は、図5等に示すように、基板100が載置される載置面210と、この載置面210の周囲に形成されるヒートシンク側凹溝220と、このヒートシンク側凹溝220のより外側周囲に形成された壁部230とが一体に形成されている。
【0029】
前記載置面210は、基板100が載置される部分であるため、平坦に形成されている。この載置面210の四隅には、基板100の基板側貫通孔110に対応した位置に固定ビス450に対応したヒートシンク側ビス孔240が開設されている。
【0030】
一方、前記カバー300は、透光性を有する合成樹脂から構成されている。かかるカバー300のカバー本体部310の裏面側、すなわち発光ダイオード500に向かった面には、基板100に実装された発光ダイオード500の配置位置に対応した発光ダイオード用凹部311が形成されている。この発光ダイオード用凹部311は、基板100に実装された発光ダイオード500を覆うものであって、表面側に向かって凸の略ドーム状に形成されている。
【0031】
また、このカバー300の四隅、すなわち前記基板側貫通孔110に対応した位置には、カバー300をヒートシンク200に固定するための固定ビス450が貫通するカバー側貫通孔330が開設されている。
従って、ヒートシンク200の載置面210に基板100を載置した後、当該基板100をカバー300で覆えば、基板側貫通孔110とカバー側貫通孔330とは同軸となり、ヒートシンク200のヒートシンク側ビス孔240に対応することになる。
【0032】
さらに、このカバー側貫通孔330の表面側周囲には略円筒形状の筒部331が形成されている。この筒部331は、固定ビス450で基板100とカバー300とをヒートシンク200に固定したのち、カバー側貫通孔330と基板側貫通孔110とを密閉するためのビス用充填樹脂材410が充填される部分となる。
【0033】
また、このカバー300のカバー周縁部320には、ヒートシンク200のヒートシンク側凹溝220に連なる複数個の注入口322が開設されている。この注入口322は、カバー周縁部320の裏面側に設けられた充填凹部321に充填樹脂材400を注入する部分となっている。 この注入口322から注入された充填樹脂材400は、カバー300の充填凹部321とヒートシンク200のヒートシンク側凹溝220とによって囲まれた空間に充填され、外部と発光ダイオード500との間を気密に遮断して発光ダイオード500を密閉することになる。
【0034】
さらに、ヒートシンク200のヒートシンク側凹溝220とカバー300との間には、密閉性をより確実にするためのガスケット470が介在される。
【0035】
なお、充填樹脂材400が接する箇所、例えば充填凹部321やヒートシンク側凹溝220は粗面に仕上げることで充填樹脂材400との密着性を向上させている。なお、この粗面仕上げは、後述する第3の実施の形態でも同様である。
粗面に仕上げるためには各種の方法があるが、例えば、塗装面を艶消しにすることで微小な凹凸を形成するという方法がある。
【0036】
上記構成の防爆型発光ダイオードユニット1000は、以下のようにして組み立てられる。
複数個の発光ダイオード500が実装された基板100をヒートシンク200の載置面210に載置する。この際、基板100の基板側貫通孔110と、ヒートシンク200のヒートシンク側ビス孔240とを一致させる。
なお、この状態で発光ダイオード500の図示しないケーブルは必要箇所に電気的に接続されるものとする。
基板100のヒートシンク200に対する設置と平行して、ヒートシンク200のヒートシンク側凹溝220にガスケット470を位置させる。
【0037】
次に基板100の上にカバー300を載置する。カバー300のカバー本体部310が基板100に、カバー300のカバー周縁部320がヒートシンク200のヒートシンク側凹溝220にそれぞれ位置するようにする。さらに、カバー側貫通孔330は、前記基板側貫通孔110及びヒートシンク側ビス孔240に一致させる。
これで、カバー300のカバー本体部310の裏面側に形成された発光ダイオード用凹部311が、基板100に実装された基板発光ダイオード500に一致することになる。
【0038】
この状態を維持したまま、カバー側貫通孔330、基板側貫通孔110を介して固定ビス450をヒートシンク200のヒートシンク側ビス孔240に螺合させる。
この固定ビス450の螺合により、基板100とカバー300とはヒートシンク200に対して構造的に連結固定されたことになる。
【0039】
次に発光ダイオード500の密閉を完全にするために、カバー300の注入口322から充填樹脂材400を注入する。注入された充填樹脂材400は、カバー300の充填凹部321とヒートシンク200のヒートシンク側凹溝220とで囲まれた空間に充填される。充填凹部321とヒートシンク側凹溝220とによって囲まれた空間に充填樹脂材400が完全に充填されると、注入口322にまで充填樹脂材400が及ぶため、前記空間が充填樹脂材400によって完全に充填されたことが容易に判明する。
なお、充填樹脂材400の充填をより確実にするため、注入口322は複数箇所に設け、その複数の注入口322から充填樹脂材400を同時に充填することが望ましい。
【0040】
さらには、筒部331にビス用充填樹脂材410を充填する。
その後、充填樹脂材400、ビス用充填樹脂材410の性質に応じて充填樹脂材400、ビス用充填樹脂材410の硬化作業を行う。紫外線照射によって硬化するタイプのものであれば紫外線照射を、加熱によって硬化するタイプのものであれば加熱を行うことになる。
この充填樹脂材400とビス用充填樹脂材410、さらにはガスケット470によって発光ダイオード500は密閉されるため、この防爆型発光ダイオードユニット1000は防爆タイプとなる。
【0041】
本発明の第3の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニット2000は、複数個の発光ダイオード500と、この発光ダイオード500が実装される基板100と、この基板100が取り付けられるヒートシンク200と、前記発光ダイオード500を覆うカバー300とを備えており、前記ヒートシンク200は、基板100が載置される載置面210と、この載置面210から一段下がって載置面210の周囲に形成されたヒートシンク側凹溝220とを有しており、前記カバー300は、発光ダイオード500の実装パターンに応じて発光ダイオード500を格納する発光ダイオード用凹部311が形成されたカバー本体部310と、このカバー本体部310より一段下がって形成されたカバー周縁部320とを有しており、カバー本体部310で発光ダイオード500を覆うとカバー周縁部320はヒートシンク200のヒートシンク側凹溝220内に位置し、カバー300は少なくともカバー周縁部320においてヒートシンク200に固定ビス451で固定されており、前記固定ビス451を含めてヒートシンク側凹溝220に充填樹脂材430を充填することで発光ダイオード500が密閉されるようになっている。
【0042】
なお、上述した第1、第2の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニット3000、1000と実質的に同一の部材については同一の番号を付して説明を行う。
例えば、基板100、この基板100に実装される発光ダイオード500、カバー300、ヒートシンク200の如きである。
【0043】
かかる防爆型発光ダイオードユニット2000が上述した第2の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニット1000と大きく相違する点は、充填樹脂材400が上述の空間のように閉ざされた箇所に充填されるのではなく、開放された箇所に充填される点にある。
【0044】
カバー300は、透光性を有する合成樹脂から構成されている。
かかるカバー300は、
図7等に示すように、発光ダイオード用凹部311が裏面側に形成されたカバー本体部310と、このカバー本体部310の周囲に一段下がって形成されたカバー周縁部320とを有している。カバー周縁部320は、ヒートシンク200の載置面210から一段下がって載置面210の周囲に形成されたヒートシンク側凹溝220に嵌まり込むようになっている。
【0045】
カバー本体部310には、発光ダイオード用凹部311を避けた位置に複数個のカバー本体側貫通孔330が開設されている。さらに、カバー周縁部320にも複数個のカバー周縁部側貫通孔323が開設されている。カバー周縁部320にカバー周縁部側貫通孔323が開設されている点が、上述した第2の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニット1000と異なる点である。
もちろん、ヒートシンク200には、両貫通孔330に対応した位置にヒートシンク側ビス孔240が開設されている。
【0046】
なお,基板100には,上述した第2の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニット1000と同様に、複数個の発光ダイオード500が碁盤目状に実装されている。例えば、この基板100を第1の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニット3000や第2の実施の形態に係る防爆型発光ダイオードユニット1000と同様に田の字状に4個並べて一つの防爆型発光ダイオードユニット2000としている。
また、この基板100の四隅には、基板100自身をヒートシンク200に固定するための固定ビス450が貫通する基板側貫通孔110が開設されている。かかる基板側貫通孔110は、実装される発光ダイオード500にかからない位置に開設されていることはいうまでもない。
もちろん、カバー本体側貫通孔330と、基板側貫通孔110と、それに対応するヒートシンク側ビス孔240とは一致するように設定されている。
【0047】
また、ヒートシンク200のヒートシンク側凹溝220には、カバー300のカバー周縁部側貫通孔323に対応したヒートシンク側凹溝ビス孔221が開設されている。
【0048】
このように構成された防爆型発光ダイオードユニット2000は、下のようにして組み立てられる。
まず、基板100をヒートシンク200の載置面210に載置する。すると、基板100の基板側貫通孔110とそれに対応するヒートシンク側ビス孔240とは一致する。
なお、この状態で発光ダイオード500の図示しないケーブルは必要箇所に電気的に接続されるものとする。
【0049】
次に、カバー300を基板100に被せる。すなわち、カバー300のカバー本体部310で基板100を覆い、カバー周縁部320をヒートシンク側凹溝220に位置させる。この状態では、カバー300のカバー本体側貫通孔330と基板100の基板側貫通孔110とがヒートシンク200のヒートシンク側ビス孔240と一致し、かつカバー300のカバー周縁部側貫通孔323とヒートシンク200のヒートシンク側凹溝ビス孔221とが一致する。
【0050】
カバー本体側貫通孔330、基板側貫通孔110を介してヒートシンク側ビス孔240に固定ビス450を螺合する。それと同時に、カバー周縁部側貫通孔323を介して固定ビス451をヒートシンク側凹溝ビス孔221に螺合する。
この2種類の固定ビス450、451によって、基板100及びカバー300はヒートシンク200に対して構造的に連結固定されたことになる。
【0051】
さらに、充填樹脂材430をヒートシンク側凹溝220に充填する。
この充填樹脂材430をヒートシンク側凹溝220に充填すると、カバー周縁部320と、カバー周縁部320に開設されたカバー周縁部側貫通孔323と、カバー周縁部側貫通孔323を貫通した固定ビス541までもが充填樹脂材430によって覆われ、発光ダイオード500が密閉されるため、この防爆型発光ダイオードユニット2000は防爆タイプとなる。
【0052】
なお、上述した3つの実施例では、4個の基板100をヒートシンク200に田の字状に並べるとしたが、本発明は限定されることなく、任意のパターンで基板100を配置することができるし、1個の基板100のみから構成することができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0053】
100 基板
200 ヒートシンク
210 載置面
220 ヒートシンク側凹溝
300 カバー
310 カバー本体部
311 発光ダイオード用凹部
350 カバー外枠
351 ビス連結部
360 連結部
370 樹脂充填部
400 充填樹脂材
500 発光ダイオード