(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-14
(45)【発行日】2024-11-22
(54)【発明の名称】磁気歯車装置
(51)【国際特許分類】
F16H 49/00 20060101AFI20241115BHJP
H02K 7/10 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
F16H49/00 A
H02K7/10 A
(21)【出願番号】P 2023576863
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2023001629
(87)【国際公開番号】W WO2023145629
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2022009267
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乙坂 純香
(72)【発明者】
【氏名】鬼橋 隆之
(72)【発明者】
【氏名】亀山 正樹
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-135014(JP,A)
【文献】特開2015-061422(JP,A)
【文献】国際公開第2014/109268(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第2545154(GB,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0117887(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 49/00
H02K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側ロータ、
前記内側ロータと離間して配置され、磁性体からなる複数のポールピースと複数の非磁性体部とが周方向に交互に配置されているポールピースモジュール、及び
前記ポールピースモジュールと離間して配置され、周方向に配置された複数の外側ロータ磁石を有する外側ロータを、軸の径方向に備えた磁気歯車装置であって、
前記軸方向の断面において、それぞれの前記ポールピースは外径側幅Rp_outを有する第1の辺、
及び内径側幅Rp_inを有する第2の
辺を有する形状であり、前記外側ロータ磁石の周方向の最大幅をLm_out、前記非磁性体部の外径側幅をRa_outとすると、
前記ポールピースの外径側幅Rp_outよりも前記ポールピースの内径側幅Rp_inが大きく、
前記外側ロータ磁石の周方向の最大幅Lm_outは前記ポールピースの外径側幅Rp_outよりも大きく、前記非磁性体部の外径幅Ra_outよりも小さいことを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項2】
前記ポールピースの内径側幅Rp_inが前記外側ロータ磁石の周方向の最大幅Lm_outより大きいことを特徴とする請求項1に記載の磁気歯車装置。
【請求項3】
前記ポールピースモジュールは、前記軸方向の両端部を固定部材により固定されていることを特徴とする請求項
1に記載の磁気歯車装置。
【請求項4】
前記軸方向の断面の前記ポールピースの形状において、前記ポールピースの径方向中央部は前記第1の辺の両端からそれぞれ軸中心に向かう線の内側に配置されたことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気歯車装置。
【請求項5】
前記軸方向の断面の前記ポールピースの形状において、前記第1の辺及び前記第2の辺を径方向に
繋ぐ第3の辺
及び第4の辺は、径方向においてそれぞれ窪み部またはへこみ部を有する形状である、請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気歯車装置。
【請求項6】
前記軸方向の断面の前記ポールピースの形状において、前記第1の辺及び前記第2の辺を径方向に繋ぐ前記第3の辺及び前記第4の辺は、径方向中央部においてそれぞれ窪み部またはへこみ部を有する形状である、請求項5に記載の磁気歯車装置。
【請求項7】
前記軸方向の断面の前記ポールピースの形状において、前記第1の辺及び前記第2の辺を径方向に繋ぐ前記第3の辺及び前記第4の辺のうち一方の辺は、径方向外側において窪み部またはへこみ部を有し、他方の辺は径方向内側において窪み部またはへこみ部を有する形状である、請求項5に記載の磁気歯車装置。
【請求項8】
前記ポールピースモジュールは、前記軸方向の断面の前記ポールピースの形状において、前記第1の辺及び前記第2の辺を径方向に繋ぐ前記第3の辺及び前記第4の辺に設けられた窪み部またはへこみ部の位置が異なる前記ポールピースを含む、請求項5に記載の磁気歯車装置。
【請求項9】
前記軸方向の断面の前記ポールピースの形状において、前記第1の辺及び前記第2の辺を径方向に
繋ぐ第3の辺
及び第4の辺は、径方向においてそれぞれ膨らみ部を有する形状である、請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気歯車装置。
【請求項10】
前記軸方向の断面の前記ポールピースの形状において、前記第1の辺及び前記第2の辺を径方向に繋ぐ前記第3の辺及び前記第4の辺は、径方向中央部においてそれぞれ膨らみ部を有する形状である、請求項9に記載の磁気歯車装置。
【請求項11】
前記第1の辺及び前記第2の辺を径方向に繋ぐ前記第3の辺及び前記第4の辺のうち一方の辺は、径方向外側において膨らみ部を有し、他方の辺は径方向内側において膨らみ部を有する形状である、請求項9に記載の磁気歯車装置。
【請求項12】
前記ポールピースモジュールは、前記軸方向の断面の前記ポールピースの形状において、前記第1の辺及び前記第2の辺を径方向に繋ぐ前記第3の辺及び前記第4の辺に設けられた膨らみ部の位置が隣接する前記ポールピースにおいて異なることを特徴とする、請求項9に記載の磁気歯車装置。
【請求項13】
前記軸方向の断面の前記ポールピースの形状は、前記ポールピースの軸方向両端部においては、前記第1の辺及び前記第2の辺を径方向に繋ぐ第3の辺及び第4の辺を有する台形形状であり、前記ポールピースの軸方向中央部においては、前記第1の辺及び前記第2の辺を径方向に繋ぐ前記第3の辺及び前記第4の辺は、径方向においてそれぞれ窪み部またはへこみ部を有する形状である、請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気歯車装置。
【請求項14】
前記ポールピースモジュールの前記非磁性体部に、前記ポールピースと離間しかつ前記軸方向に貫通していない空隙部を備えたことを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の磁気歯車装置。
【請求項15】
前記空隙部の内側と外側とが締結部材により締結され、前記非磁性体部を固定していることを特徴とする請求項14に記載の磁気歯車装置。
【請求項16】
前記ポールピースは前記軸方向の位置に前記軸方向の両端部の周方向の幅よりも太い箇所を有することを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の磁気歯車装置。
【請求項17】
前記ポールピースは圧粉鉄心からなることを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の磁気歯車装置。
【請求項18】
前記ポールピースモジュールの前記非磁性体部と、前記ポールピースモジュールを固定する前記固定部材とは同じ樹脂で構成され、前記ポールピース、前記非磁性体部及び前記固定部材が一体成形されていることを特徴とする請求項3に記載の磁気歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、磁気歯車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高トルク密度を実現した磁束変調型の磁気歯車装置(磁気ギア)が研究開発されている。そして、この磁気歯車装置と巻線型ステータを一体にした磁気ギアードモータ(磁気ギアード回転電機)の研究開発も進められている。
【0003】
この磁気ギアードモータでは、内部に配置されたステータコイルによって高速側ロータが回転し、その高速側ロータに配置された磁石の磁束をポールピース(変調磁極)で変調させることで、低速側ロータを回転させる。この動作によって、低速側ロータには高速側ロータの速度比(減速比)だけ増加したトルクを得ることができるので、高トルク密度な機器を得ることができる。
【0004】
しかし、従来の磁気歯車装置及び磁気ギアード回転電機は、磁石使用量に比べて伝達トルクが低いという問題点がある。またポールピースモジュールの固定構造及び強度確保に課題がある。
【0005】
この課題に対し、例えば、特許文献1においては、伝達トルクを向上できる磁気歯車装置の構造が開示されている。すなわち、ポールピースの断面形状に関する3つの変数を条件式によってそれぞれ限定することで、ロータ間に位置するポールピース形状を改善し、ロータとポールピース間とのエアギャップに磁束を集中させることができ、伝達トルクを向上させることが記載されている。
【0006】
また、特許文献2に開示される磁気歯車装置においては、ポールピースに軸方向で貫通する非磁性体の金属ロッドを有し、ポールピースモジュール(文献内では低速ロータ)の強度を確保することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2016-533706号公報
【文献】特開2016-135014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来はポールピース形状またはポールピースモジュールを工夫し、伝達トルクを向上させる、あるいはポールピースの強度を確保していた。
一方、モータシステムにおいてはより小型軽量化が求められており、磁気歯車装置に対しても小型化とともにより高い伝達トルクが求められている。
【0009】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、伝達トルクがより高く、小型軽量化が可能な構造をもつ磁気歯車装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示される磁気歯車装置は、
内側ロータ、
前記内側ロータと離間して配置され、磁性体からなる複数のポールピースと複数の非磁性体部とが周方向に交互に配置されているポールピースモジュール、及び
前記ポールピースモジュールと離間して配置され、周方向に配置された複数の外側ロータ磁石を有する外側ロータを、軸の径方向に備えた磁気歯車装置であって、
前記軸方向の断面において、それぞれの前記ポールピースは外径側幅Rp_outを有する第1の辺、及び内径側幅Rp_inを有する第2の辺を有する形状であり、前記外側ロータ磁石の周方向の最大幅をLm_out、前記非磁性体部の外径側幅をRa_outとすると、
前記ポールピースの外径側幅Rp_outよりも前記ポールピースの内径側幅Rp_inが大きく、
前記外側ロータ磁石の周方向の最大幅Lm_outは前記ポールピースの外径側幅Rp_outよりも大きく、前記非磁性体部の外径幅Ra_outよりも小さく、構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示される磁気歯車装置によれば、内側ロータ磁石の磁束をより多く拾い主磁束を増やせるとともに、外側ロータ磁石の漏れが少なくでき主磁束が増やせる。これにより、より少ない磁石とポールピース材により、伝達トルクをより大きく得ることが可能である。また、小型軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る磁気歯車装置の構成を示す軸方向に垂直な面での一部断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る磁気歯車装置の構成を示す軸方向に平行な面での断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る磁気歯車装置のポールピースモジュールの一部拡大図である。
【
図4】実施の形態2に係るポールピースモジュールの一部拡大図である。
【
図5】実施の形態2に係る別のポールピースモジュールの一部拡大図である。
【
図6】実施の形態2に係るさらに別のポールピースモジュールの一部拡大図である。
【
図7】実施の形態3に係るポールピースモジュールの一部拡大図である。
【
図8】実施の形態4に係るポールピースモジュールの一部拡大図である。
【
図9】実施の形態5に係るポールピースモジュールの例を説明するための一部拡大図である。
【
図10】実施の形態5に係るポールピースモジュールの例を説明するための軸方向に平行な面での断面図である。
【
図11】実施の形態5に係る別のポールピースモジュールの例を説明するための軸方向に平行な面での断面図である。
【
図12】実施の形態5に係るさらに別のポールピースモジュールの例を説明するための図である。
【
図13】実施の形態5に係るさらに別のポールピースモジュールの例を説明するための図で、
図11の変形例を示す図である。
【
図14】実施の形態1に係る別のポールピースモジュールの例を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、磁気歯車装置の一例として磁気減速機について説明するが、磁気減速機に限定されるものではない。磁気増速機であっても、磁気ギアード回転電機であっても主要な動作は同様である。なお、各図中、同一符号は、同一または相当部分を示すものとする。
【0014】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係る磁気減速機を例とした磁気歯車装置について
図1から
図3を用いて説明する。
図1は、実施の形態1に係る磁気歯車装置の構成を示す軸方向に垂直な面での一部断面図、
図2は
図1のA-A方向の断面で軸方向に平行な面での断面図、
図3はポールピースモジュールの一部拡大図である。
【0015】
図1に示すように、磁気歯車装置100には、回転軸の中心O側から径方向外側に向かって、内側ロータ1、ポールピースモジュール2、外側ロータ3の順に互いに離間して配置されている。
内側ロータ1は、回転軸の中心Oに内側ロータシャフト11と、内側ロータシャフト11の外周に固定された内側ロータコア12と、内側ロータコア12の外周に永久磁石からなる内側ロータ磁石13と、を備え、内側ロータ磁石13は等間隔に複数配置されている。内側ロータ1の径方向外側に一定幅の空気のギャップ層(エアギャップ層とも言う)を介して、ポールピースモジュール2が配置される。
【0016】
ポールピースモジュール2は、
図1に示されるように、電磁鋼板を軸方向に積層したポールピース21と非磁性体部22とが周方向に交互に配置される。また、
図2に示されるように、ポールピースモジュール2は、軸方向の両端で樹脂またはアルミなどの非磁性材からなる固定部材23により固定され、外部の固定台(図示せず)に繋がり固定される構造を有する。ポールピースモジュール2の径方向外側に一定幅の空気のギャップ層を介して、外側ロータ3が配置される。
【0017】
ポールピース21は磁極片とも言い、磁性体として内側ロータ1から外側ロータ3に、又は外側ロータ3から内側ロータ1に、磁束を伝達する役割を有する。ポールピースモジュール2のポールピース21は、電磁鋼板を軸方向に積層したものと上述したが、径方向に積層してもよいし圧粉鉄心でもよく、磁性体であればよい。
【0018】
ポールピース21、非磁性体部22、軸方向の固定部材23は一体成形されて、構成されていてもよい。一体成形する際のモールド樹脂は、PPS(Polyphenylenesulfide:ポリフェニレンスルファイド)樹脂、PBT(Polybutyleneterephthalate:ポリブチレンテレフタレート)樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いればよい。このモールド樹脂はポールピース21以外の非磁性体部22、軸方向の固定部材23を構成し、ポールピース21の固定に使用しているため、非導電性材料でかつ非磁性材料とすることが望ましい。このように構成することで渦電流を抑制し機器の効率向上に寄与することができる。さらに、モールドで一体成形されることで、別々に組立てる場合に比べ、各ポールピース21の位置決め精度を高くでき、磁気特性を高くできるだけでなく樹脂の強度を強くできる。
【0019】
空気のギャップ層を介して、ポールピースモジュール2の径方向外側に配置された外側ロータ3は、外側ロータコア31及び永久磁石からなる外側ロータ磁石32を有する。外側ロータ磁石
32は、複数周方向に配置される。また、
図2に示すように、外側ロータコア31は、内側ロータシャフト11と同軸の軸を有する外側ロータシャフト33に固定されている。あるいは、外側ロータコア31は外側ロータシャフト33と一体物で構成されていてもよい。さらに、外側ロータ磁石32のコアバックに該当する部分のみが電磁鋼板で構成されており、その他の部分は加工しやすく安価な鉄鋼材(例えばS45C,SS400など)で構成されていてもよい。また、ポールピース21を固定する固定部材23と内側ロータ1及び外側ロータ3はベアリングを介して回転自在に保持されている。
【0020】
内側ロータ1の極対数をNh、ポールピースモジュール2のポールピースの磁極数をNp、外側ロータ3の極対数をNlとするとき、以下の式(1)の関係となっている。
Np=Nl+Nh・・・式(1)
このとき、減速比をGrとすると、減速比Grは外側ロータ3の極対数Nlを内側ロータ1の極対数をNhで除した、
Gr=Nl/Nh・・・・式(2)
となる。内側ロータ1の速度がGr分の1倍されて外側ロータ3に伝わり、内側ロータ1のトルクがGr倍されて外側ロータ3に伝わる。
【0021】
本実施の形態1では、Nl=26、Np=30、Nh=4の例であるので、減速比Gr=6.5となる。また、式(1)がNp=Nl―Nhとなる、例えばNl=26、Np=22、Nh=4であっても成立し、式(1)、(2)を満たす全ての組合せをとることができる。
【0022】
本実施の形態では、ポールピースモジュール2を固定する機構を特徴としており、内側ロータ1と外側ロータ3は、同一方向に回転し内側ロータ1から外側ロータ3に回転力を伝達する。ポールピースモジュール2を固定しない場合つまり外側ロータ3を固定してポールピースモジュール2を回転させる場合に比べて、伝達トルクが低下するものの、ポールピースモジュール2を固定することで遠心力対策が不要となる。ポールピースモジュール2を固定しない場合は、遠心力によるポールピースモジュール2の径方向の変位を考慮して、例えば、ポールピース21の外径面、内径面に連結部品を設ける必要がある。しかし、ポールピースモジュール2を固定する本実施の形態においてはこのような対策は不要であり、最小のエアギャップ層の幅で外側ロータと内側ロータを設けることができ、磁束密度が向上し伝達トルクを向上できる効果がある。
【0023】
なお、
図1に示す、本実施の形態1に係る磁気歯車装置100は、例えば円筒回転型であるが、円板回転型、平板リニア型、円筒リニア型でも製作が可能である。
【0024】
次に、本実施の形態1に係る磁気歯車装置100のポールピースモジュール2におけるポールピース21の形状について
図1及び
図3を用いて説明する。
ポールピース21の軸方向に垂直な面での断面形状は、外径側の円弧211、内径側の円弧212、及びそれら円弧を径方向に繋ぐ辺213、214で囲まれた領域で表され、径方向中央部に窪み部21aを有する鼓のような形をしている。ここで、辺213、214は、周方向に並んでいる。また、周方向におけるポールピース21の外径側の円弧211の長さである外径側幅をRp_out、内径側の円弧212の長さである内径側幅をRp_in、周方向における非磁性体部22の外径側幅をRa_out、内径側幅をRa_in、外側ロータ3の外側ロータ磁石32の周方向の最大幅をLm_outとする。Rp_outよりRp_inが大きく、Rp_inよりRa_outが大きく、Lm_outはRp_outより大きくRa_outより小さい。Rp_outとRp_inの直径によっては、Rp_inとRa_outが同じ長さであってもよい。これらは以下の関係式を満たす。
Rp_out < Rp_in
Rp_in ≦ Ra_out
Rp_out < Lm_out< Ra_out ・・・式(3)
【0025】
さらに、前述したように、各ポールピース21は、周方向両側の辺の径方向中央部が窪んだ形状を有する。内側ロータ磁石13は8極(Nh×2)で少極、外側ロータ磁石32は52極(Nl×2)で多極ある。そのため、Rp_inをRp_outより大きくすることで周方向幅が多極側の磁石の周方向幅よりも大きい少極側の磁石から出た磁束を飽和させることなくより多く拾うことができる。また、多極側は隣同士通しの磁石が近いため磁束が回り漏れ磁束が増えやすい。そこで、Rp_out < Lm_out< Ra_outを満たすようにすることで磁石とポールピースが重なる面積を減らし、磁石(N極)からポールピースを経由して磁石(S極)に至るような漏れ磁束を減らすことができる。
【0026】
また、内側ロータ磁石13と外側ロータ磁石32の極対数の違いから、内側ロータ磁石13の外径側幅は、Lm_outより必ず大きい。Rp_inは隣のポールピース21同士で漏れない程度に、内側ロータ磁石13の外径側幅に合わせて大きくすることで、内側ロータ1とポールピース21との間の漏れ磁束を低減することができる。従って、Rp_inをLm_outより大きくすることで漏れ磁束を低減でき、よりトルク密度を高くできる。
【0027】
また、ポールピース21の径方向中央部において外径側と内径側の円孤の長さより窪ませることにより、磁束の流れる方向を統一することができるため、内側ロータ磁石13から外側ロータ磁石32までの磁路がより短くなるようにして磁束を導くことができ、磁気抵抗がより低い磁路が実現され、パーミアンスが高くなる。
【0028】
また、
図3においては各ポールピース21の窪み部21aが外径側の円弧及び内径側の円弧よりも内側に配置され、各ポールピース21の外径側の円弧211の周方向両端から、外側ロータ3及び内側ロータ1の円中心O(回転軸の中心)に向かってそれぞれ引いた架空の線Lo(一点鎖線)より内側に、ポールピース21の径方向中央部が配置されている。このように配置することで、よりトルク密度を向上させることができる。これは磁束が円中心Oに向かうわけではなくパーミアンス分布によるためであり、このように配置することで、内側ロータ磁石13から外側ロータ磁石32までの磁路が最短となるように導くことができ磁気抵抗が最も低い磁路で伝わりパーミアンスをより高くできる。
【0029】
ポールピースモジュール2の非磁性体部22を樹脂などの絶縁材で構成する場合、ポールピース21の径方向中央部を外径側と内径側の孤の長さより窪ませることにより、ポールピース21が外径側に引かれる磁気力に対して、ポールピース21自身を支える面積が増えるため強度を強くできる。また、ポールピース21の径方向中央部よりも外径側または内径側の周方向幅が大きくなる場合は、くさび効果により周方向幅が大きい側から径方向中央部に向かう方向にポールピース21が移動するのを制限することができる。さらに、ポールピース21の周方向両側の辺が直線状である時に比べて非磁性体部22に触れる表面積が大きくなるため、冷却効果も向上する。
【0030】
図14(a)、(b)、(c)はそれぞれ別のポールピース21の例を示す図で、それぞれ上面図及び展開した斜視図を含む。なお、上面図において軸方向中央部210bは破線で示している。
図14(a)、(b)、(c)において、ポールピース21の軸方向両端部210aはその軸方向断面形状を外径側の円弧211、内径側の円弧212、及びそれら円弧を径方向に繋ぐ辺213、214で囲まれた領域が台形であり、軸方向中央部210bのみを周方向両側の辺の径方向中央部を窪ませた形状とし、それらを積み重ねて構成している。
【0031】
軸方向両端部210aを構成する辺213、214は、
図14(a)では外径側の円弧211と内径側の円弧212の両端を繋いでおり、軸方向両端部210a及び軸方向中央部210bの外径側の円弧211は等しく、さらに内径側の円弧212同士も等しく、軸方向中央部210bのみを周方向両側の辺の径方向中央部を窪ませた形状である。一方、
図14(b)では、軸方向両端部210a及び軸方向中央部210bの内径側の円弧212を等しくして、軸方向両端部210aの辺213、214は、内径側から軸方向中央部210bの辺213、214に沿わせるとともに内径側の円弧212から外径側に延長させた線分で構成した。従って、上面図からわかるように軸方向中央部210bの外径側の円弧211は軸方向両端部210aの外径側の円弧211より長い。また、
図14(c)では、軸方向両端部210a及び軸方向中央部210bの外径側の円弧211を等しくして、軸方向両端部210aの辺213、214は、外径側から軸方向中央部210bの辺213、214に沿わせるとともに外径側の円弧211から内径側に延長させた線分で構成した。従って、上面図からわかるように軸方向中央部210bの内径側の円弧212は軸方向
両端部210aの内径側の円弧212より長い。
【0032】
このように、軸方向両端部210aは単純な形状の台形のため、軸方向中央部210bの形状よりも歩留まりの高い工程で製造できるので、これらを組み合わせたポールピース21は、トルク密度が高く外径側への遠心力耐力も高くなるとともに、歩留まりを高くすることができる。
【0033】
外側ロータ3とポールピースモジュール2を構成するポールピース21、非磁性体部22、軸方向の固定部材23を樹脂等のモールドで一体成形し、組立後に外側ロータ3とポールピースモジュール2を切り離して製造してもよい。この場合、ポールピース21と外側ロータ3間は周方向の複数箇所がペンチで切れるほどのモールド樹脂で繋がっている。この時、外側ロータ3とポールピースモジュール2とはモールド樹脂で一定の間隔が保たれた状態である。別々に組立てる場合に比べ、組立時の部品点数を削減できることから加工費の低減が可能である。さらに、組立時に径方向の位置決め精度を高くでき、外側ロータ3とポールピースモジュール2の隙間であるギャップ幅をより小さくすることができる。これにより、使用する磁石量を減らすことができ、コストを削減することが可能である。さらに、位置決め精度が高いので軸ぶれの抑制も可能となる。また、軸方向の位置決め精度も高くできるため、設計時に想定した以上の漏れ磁束が生じる恐れもない。
【0034】
また、外側ロータコア31、ポールピース21、内側ロータコア12の材料は電磁鋼板、圧粉鉄心、アモルファス金属、パーメンジュールなどの軟磁性材料で構成される。しかし、仕様によっては鉄鋼材(例えばS45C,SS400など)である強磁性材料を用いることが可能な場合もある。電磁鋼板は磁束変化による渦電流を防止するために、薄い板を複数枚積層して構成される。
【0035】
また、本実施の形態に係る磁気歯車装置100においては、ブラケット(図示せず)を絶縁性の樹脂で構成することもできる。前述した、モールドによる一体成形と合わせ、モールド材、ブラケットを絶縁性の樹脂で構成することにより、軸受の内輪と外輪が導通する電食を防止することができ、磁気歯車装置の品質をより高めることが可能である。
【0036】
以上のように、本実施の形態1に係る磁気歯車装置によれば、軸中心側から径方向外側に向かって、内側ロータ1、ポールピースモジュール2、外側ロータ3が順に配置され、ポールピースモジュール2を固定するようにしたので、最小のギャップ幅で外側ロータ3及び内側ロータ1を設けることができ、磁束密度が向上し伝達トルクを向上できるという効果を奏する。
【0037】
また、ポールピースモジュール2の軸方向断面において、周方向におけるポールピース21の外径側幅Rp_out、内径側幅をRp_in、周方向における非磁性体部22の外径側幅をRa_out、内径側幅をRa_in、外側ロータ3の外側ロータ磁石32の周方向の最大幅をLm_outとした時、Rp_outよりRp_inが大きく、Ra_outがRp_in以上であり、Lm_outはRp_outより大きくRa_outより小さくなるように構成した。この構造により、内側ロータ磁石13の磁束をより多く拾い主磁束を増やすことができるとともに、より少ない磁石とポールピース材により、装置の小型軽量化が可能になるとともに伝達トルクをより大きく得ることが可能となる。
【0038】
また、ポールピースモジュール2の軸方向断面において、ポールピース21の径方向中央部が窪んだ構造を有するので、ポールピース21が外径側に引かれる磁気力に対して、支える面積が増えるため強度を強くできる。また、ポールピース21の周方向両側の辺が直線状である時に比べて非磁性体部22に触れる表面積が大きくなるため、冷却効果も向上する。
【0039】
以上のことから、より小型で安価な磁気歯車装置を提供できる。
【0040】
実施の形態2.
以下に、実施の形態2に係る磁気歯車装置のポールピースモジュールについて、
図4から
図6を用いて説明する。
図4は、実施の形態2に係るポールピースモジュール2の一部拡大図、
図5は別のポールピースモジュール2の一部拡大図、
図6はさらに別のポールピースモジュール2の一部拡大図である。実施の形態1の
図3では、ポールピース21の外径側の円弧と内径側の円弧とを径方向に繋ぐ両辺が径方向中央部で窪み部21aを有する形状であったが、本実施の形態2ではその窪み部21aの位置が径方向中央部ではない例を示している。他の構成は実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0041】
図4において、ポールピース21の外径側の円弧と内径側の円弧とを径方向に繋ぐ両辺における窪み部21aの位置が径方向中央部より
内径側であり、
図5においては径方向中央部より
外径側である。また、
図6は、ポールピース21の外径側の円弧と内径側の円弧とを径方向に繋ぐ両辺における窪み部21aの位置が径方向中央部に対し、内径側と外径側とが交互に配置されている例を示している。
【0042】
各ポールピース21の内外径両側の円弧を径方向に繋ぐ両辺において、径方向のいずれかの箇所を窪ませればよい。外径側への磁気力が小さい場合は窪み部21aを径方向の内周側に設ければよく、一方、外径側への磁気力が大きい場合は窪み部21aを外周側に設けることで、トルク密度の向上とポールピース21の強度向上をバランスさせることが可能となる。また、磁束の飽和についても同様に調整することが可能となり、磁束の飽和の観点からもポールピースによって窪み部21aの径方向位置を変えることで、トルク密度の向上とポールピース21の強度向上をバランスさせることが可能となる。
【0043】
図6では、隣り合うポールピース21の窪み部21aの径方向位置を内径側、外径側と交互にずらした例を示したが、交互でなくてもよい。
【0044】
以上のように、本実施の形態2に係る磁気歯車装置によれば、実施の形態1の効果に加え、各ポールピース21は径方向を繋ぐ両側の辺において、径方向のいずれかの箇所に窪み部21aを有し、磁気力に応じて窪み部21aの径方向の位置を変えることでトルク密度の向上とポールピース21の強度向上をバランスさせることが可能となる。
【0045】
実施の形態3.
以下に、実施の形態3に係る磁気歯車装置のポールピースモジュールについて、
図7を用いて説明する。
図7は、実施の形態3に係るポールピースモジュール2の一部拡大図で、実施の形態1及び2と異なるのは、ポールピース21の内外径両側の円弧を径方向に繋ぐ両辺が、円弧状のような滑らかな曲線であり、へこみ部21bを有することである。他の構成は実施の形態1及び2と同様であるため説明を省略する。
【0046】
図7に示すように、ポールピース21の内外径両側の円弧を径方向に繋ぐ両辺の径方向中央部を円弧によりへこませ、ポールピース21がくびれた形状となることが望ましい。なお、図においてへこみ部21bはポールピース21がくびれた位置を示している。しかし、実施の形態2で説明したように、へこみ部21bの径方向位置が中央部でなくてもよく、また隣り合うポールピース21の間で交互に外周側、内周側にへこみ部21bが位置するようになっていてもよく、交互に限るものでもない。
【0047】
以上のように本実施の形態3によれば、実施の形態1及び2と同様の効果を奏するとともに、内外径両側の円弧を径方向に繋ぐ辺であって周方向両側の辺を滑らかな曲線、例えば円弧状にへこませることで磁束の流れがより滑らかになり、よりトルク密度を向上することできる。
【0048】
実施の形態4.
以下に、実施の形態4に係る磁気歯車装置のポールピースモジュールについて、
図8を用いて説明する。
実施の形態1から3では、ポールピース21は内外径両側の円弧を径方向に繋ぐ両辺において径方向のいずれかの位置で窪んだ形状、あるいはくびれた形状を有する線対称の構造であるものを示した。実施の形態4では、ポールピース21は内外径両側の円弧を径方向に繋ぐ辺であって周方向両側の各辺の窪み部21aの位置が異なる形状の例を説明する。他の構成は実施の形態1から3と同様であるため説明を省略する。
【0049】
図8は、実施の形態4に係るポールピースモジュール2の一部拡大図で、ポールピース21の内外径両側の円弧を径方向に繋ぐ各辺に設けられた窪み部21aの位置が異なっている。一方の辺において窪み部21aは径方向中央部より外径側にあり、他方の辺において窪み部21aは径方向中央部より内径側にある。
【0050】
図3から
図6で示したように、ポールピース21の周方向両側で、窪み部21aの径方向位置が同じ場合と比べ、本実施の形態4のように、ポールピース21の周方向両側で、窪み部21aの径方向位置が異なると、窪み部21aの位置での磁気飽和を緩和できる。すなわち、磁路幅が最小となる箇所を設けることがないので、磁路幅を狭めることなく、より少ない磁性体の表面積で主磁束を増加させることができる。これにより、ポールピース21の軽量化が可能となり、ポールピースモジュール2を固定する固定部材23の簡素化及び磁気減速機そのものの軽量化に繋げることができる。さらに、同じポールピース21内の周方向両側で、窪み部21aの径方向位置が異なることで、ポールピース21の外径側への磁気力にも、内径側への磁気力にも耐えられる強固なポールピースモジュール2を実現とすることが可能となる。
【0051】
図8では軸方向に垂直な面でのポールピース21の断面形状がアルファベットのZ状に窪み部21aを設けているが、窪み部21aがポールピース21内で鏡面対称の位置になるように設けてもよい。
【0052】
また、磁気歯車装置が磁気ギアード回転電機の場合、コギングトルク及びトルクリプルを低減するために、磁石にスキューを設けることがある。スキュー角に合わせて、前述のZ状の形状であるポールピース21に鏡面対称の形状のポールピース21を重ねてもよいし、Z状の形状と鏡面対称の形状とを順番に、あるいはランダムに軸方向に複数積層してもよいし、らせん状に重ねてもよい。
【0053】
なお、
図8では、
図3から6で示したように、ポールピース21の周方向両側に窪み部21aを有する例を示したが、
図7のように、ポールピース21の周方向両側を円弧状のような滑らかな曲線で形成してもよい。この場合、ポールピース21の周方向両側で円弧が径方向から最もポールピース21の内部に入る位置をへこみ部とし、そのへこみ部の形成される位置が両側において径方向で異なるように形成されればよい。
【0054】
以上のように本実施の形態4によれば、ポールピース21における磁路幅を狭めることなく、より少ない磁性体の表面積で主磁束を増加させることができる。これにより、ポールピース21の軽量化が可能となり、磁気歯車装置そのものの軽量化に繋げることができる。さらに、ポールピース21の外径側への磁気力にも、内径側への磁気力にも耐えられる強固なポールピースモジュール2を実現とすることが可能となる。
【0055】
なお、実施の形態1から4では、ポールピース21は内外径両側の円弧を径方向に繋ぐ両辺において径方向のいずれかの位置で窪んだ形状、あるいはくびれた形状を有するものを示したが、一方の辺が窪み部を有する窪んだ形状、他方の辺がへこみ部を有する形状であってもよい。ポールピース21は内外径両側の円弧を径方向に繋ぐ両辺において径方向のいずれかの位置に窪み部またはへこみ部が形成されていればよい。
【0056】
実施の形態5.
以下に、実施の形態5に係る磁気歯車装置について
図9から
図12を用いて説明する。
図9は、実施の形態5に係るポールピースモジュール2の一部拡大図で、
図10中(a)、(b)、(c)はそれぞれ
図9(a)中A-A、B-B、C-C方向断面図で、軸方向に平行な断面を示す図である。実施の形態1から4においては、ポールピース21の軸方向断面形状が、外径側の円弧、内径側の円弧、及びそれら円弧を径方向に繋ぐ両辺で囲まれた領域で表され、径方向中央部に窪み部21aまたはへこみ部21bを有する鼓のような形をしている例を示した。本実施の形態5では、ポールピース21の径方向中央部が膨らみ部21cを有する太鼓形状の例を説明する。他の構成は実施の形態1から4と同様であるため説明を省略する。
【0057】
図9(a)に示すように、各ポールピース21の周方向両側の辺において、径方向のいずれかの箇所を膨らませた膨らみ部21cを有している。図中破線で示しているように、ポールピースモジュール2の非磁性体部22内部に軸方向に貫通していない空隙部6を設けている。
図9(b)は、空隙部6が膨らみ部21cを回避した場所に複数も設けられている例である。また、軸に平行な、
図9(a)中のA-A線の断面図を
図10(a)に、
図9(a)中のB-B線の断面図を
図10(b)に、
図9(a)中のC-C線の断面図を
図10(c)に示す。
図10(b)からわかるように、ポールピース21の膨らみ部21cはポールピース21の部位のうち空隙部6に最も近い位置になる。しかし、空隙部6はポールピース21に接しないように離間して設けられている。
【0058】
ポールピースモジュール2を固定部材23で固定することは
図2で示したが、より強固に固定したい場合には、
図10(a)から
図10(c)で示したように、締結部材4を取り付けて固定することができる。この場合、ポールピースモジュール2の軸方向の両端部に、電気絶縁層5及び固定部品41を用い、空隙部6内の締結部材4と外部側の締結部材4とで非磁性体部22を固定する。
締結部材4を使わない場合は、前述したようにモールド一体成形により製造すればよい。例えば、
図10の断面となるように金型を作り、一体成形すればよい。
【0059】
なお、図に示した空隙部6には空気または熱伝導率の高い材料を充填すれば、ポールピース21効率よく冷却することもできる。
【0060】
また、
図11にさらに別のポールピースモジュール2の拡大図で軸に平行な方向の一部断面図を示している。ポールピース21の周方向両側の面については、
図11に示すように、軸方向中央部を周方向に膨らませた構造としてもよい。軸方向に2か所に分けた空隙部6を設け、軸方向中央部のポールピース21を軸方向の両端部よりも周方向において太くしている。このように構成することで、前述の効果に加えて、軸方向端部の漏れ磁束を低減でき伝達トルクを大きくすることが可能となる。
【0061】
図12は、実施の形態5に係るさらに別のポールピースモジュール2の例を説明するための一部拡大図で、軸方向の断面図である。
図12に示すように、各ポールピース21の周方向両側の辺について、径方向のいずれかの箇所を膨らませ、周方向の隣り合うポールピース21で膨らみ部21cの径方向位置が重ならないように配置した構造でもよい。このように膨らみ部21cの径方向位置を隣り合うポールピース21で重ならないように配置することで、径方向位置を同一にした場合よりも膨らみ部21c同士の距離を大きく確保することができ、膨らみ部21cのそれぞれの間の磁束の短絡をより確実に防ぐことができる。また、膨らみ部21cがない直線形状に比べ、ポールピース21の表面積が大きくなるため、ポールピース21間に空隙部6を設け、空気あるいは熱伝導性の高い材料で充填する場合にポールピース21を冷却する効果が向上する。
【0062】
なお、
図13は、
図11の変形例を示すポールピースモジュール2の拡大図で軸方向の一部断面図であるが、隣接するポールピース21の太い部分の位置が軸方向で異なるように配置してもよい。
【0063】
図11及び
図13で示したようなポールピース21が軸方向に滑らかな曲線を有する構造は、圧粉鉄心により実現することができる。圧粉鉄心を用いることで、任意の形状が作りやすく、軸方向、周方向、径方向全ての方向に磁束が通る磁気歯車装置においては、渦電流損を低減することが可能となる。
【0064】
以上のように、本実施の形態5に係る磁気歯車装置によれば、ポールピースモジュール2においてポールピース21の径方向中央部が膨らみ部21cを有する太鼓形状を有するので、径方向端部の漏れ磁束を低減でき伝達トルクを大きくすることが可能となる。また、ポールピース21の周方向両側の辺が直線状である時に比べて非磁性体部22に触れる表面積が大きくなるため、冷却効果も向上する。
【0065】
さらに、ポールピース21の周方向両側の辺について、径方向のいずれかの箇所を膨らませ、周方向の隣り合うポールピース21で膨らみ部21cの径方向位置が重ならないように配置することで、膨らみ部21c同士の距離を大きく確保することができ、膨らみ部21cのそれぞれの間の磁束の短絡をより確実に防ぐことができる。
【0066】
本実施の形態5に係る磁気歯車装置によれば、ポールピースモジュール2の非磁性体部22内部に軸方向に貫通していない空隙部6を設けたので、空隙部6に空気または熱伝導率の高い材料を充填すれば、ポールピース21効率よく冷却することもできる。
この空隙部6の軸方向の内外に締結部材4を取り付け、ポールピースモジュール2の軸方向の両端部に、電気絶縁層5及び固定部品41を介して締結部材4により締結することで、非磁性体部22を固定することが可能となる。
【0067】
本実施の形態5に係る磁気歯車装置によれば、ポールピース21の軸方向中央部を周方向に膨らませた構造としたので、軸方向の非磁性体部22内部に2か所に分けた空隙部6を設け、軸方向中央部のポールピース21を他の軸方向箇所よりも太くすることが可能となる。これにより、軸方向端部の漏れ磁束を低減でき伝達トルクを大きくすることが可能となる。
【0068】
なお、軸方向の非磁性体部22内部に空隙部6を設ける構造は、実施の形態1から4に係る磁気歯車装置においてポールピース21の径方向中央部が窪み部21aまたはへこみ部21bを有するポールピースモジュールにも適用でき、同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0069】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0070】
1:内側ロータ、 2:ポールピースモジュール、 3:外側ロータ、 4:締結部材、 5:電気絶縁層、 6:空隙部、 11:内側ロータシャフト、 12:内側ロータコア、 13:内側ロータ磁石、 21:ポールピース、 21a:窪み部、 21b:へこみ部、 21c:膨らみ部、 22:非磁性体部、 23:固定部材、 31:外側ロータコア、 32:外側ロータ磁石、 33:外側ロータシャフト、 41:固定部品、 100:磁気歯車装置、 210a:軸方向両端部、 210b:軸方向中央部、 211:外径側の円弧、 212:内径側の円弧、213,214:辺。